(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022014773
(43)【公開日】2022-01-20
(54)【発明の名称】ジュン菜の処理方法
(51)【国際特許分類】
A23B 7/14 20060101AFI20220113BHJP
A23B 7/10 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
A23B7/14
A23B7/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020117312
(22)【出願日】2020-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】597059247
【氏名又は名称】株式会社佐藤運送
(74)【代理人】
【識別番号】100104949
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100074354
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康弘
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 東洋彦
【テーマコード(参考)】
4B169
【Fターム(参考)】
4B169AA04
4B169HA09
4B169KA07
4B169KB03
4B169KC16
4B169KC18
4B169KC34
4B169KC35
(57)【要約】
【課題】ジュン菜に珍重されている独特の風味と食感を失うことなく緑化して高品質で高価格なジュン菜に処理する。
【解決手段】葉緑素に作用してジュン菜を緑化する金属イオンを含有する金属イオン溶液にジュン菜を浸漬する緑化工程でジュン菜を緑化するジュン菜の処理方法であって、緑化工程の前工程において、20℃以下の有機酸液にジュン菜を浸漬して脱水ジュン菜とする脱水工程を設け、緑化工程において使用する金属イオン溶液には、温度が20℃以下であって、脱水工程で使用する有機酸液よりも低いモル濃度の有機酸を含む溶液を使用し、緑化工程において、脱水工程で脱水した脱水ジュン菜を、モル濃度の低い有機酸を含む金属イオン溶液で膨潤し、ジュン菜を膨潤して内部移行する金属イオン溶液でジュン菜を緑化する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
葉緑素に作用してジュン菜を緑化する金属イオンを含有する金属イオン溶液にジュン菜を浸漬する緑化工程でジュン菜を緑化するジュン菜の処理方法であって、
前記緑化工程の前工程において、
20℃以下の有機酸液にジュン菜を浸漬して脱水ジュン菜とする脱水工程を設け、
前記緑化工程において使用する前記金属イオン溶液には、
温度が20℃以下であって、
前記脱水工程で使用する前記有機酸液よりも低いモル濃度の有機酸を含む溶液を使用し、
前記緑化工程において、
前記脱水工程で脱水した前記脱水ジュン菜を、前記モル濃度の低い有機酸を含む前記金属イオン溶液で膨潤し、
ジュン菜を膨潤して内部移行する前記金属イオン溶液でジュン菜を緑化することを特徴とするジュン菜の緑化方法。
【請求項2】
請求項1に記載のジュン菜の処理方法であって、
前記緑化工程において、
前記脱水ジュン菜を浸漬する前記金属イオン溶液の前記有機酸を酢酸とすることを特徴とするジュン菜の処理方法。
【請求項3】
葉緑素に作用してジュン菜を緑化する金属イオンを含有する金属イオン溶液にジュン菜を浸漬する緑化工程でジュン菜を緑化するジュン菜の処理方法であって、
前記緑化工程の前工程において、
20℃以下の有機酸液にジュン菜を浸漬して脱水ジュン菜とする脱水工程を設け、
前記緑化工程において使用する前記金属イオン溶液には、
温度が20℃以下であって、
有機酸を含まず、溶質のモル濃度を前記脱水工程の前記有機酸液よりも低くしてなる溶液を使用し、
前記緑化工程において、
前記脱水工程で脱水した前記脱水ジュン菜を、溶質のモル濃度の低い前記金属イオン溶液で膨潤し、
ジュン菜を膨潤して内部移行する前記金属イオン溶液でジュン菜を緑化することを特徴とするジュン菜の緑化方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載のジュン菜の処理方法であって、
前記脱水工程において、
モル濃度が0.5mol/L以上である前記有機酸液にジュン菜を浸漬して前記脱水ジュン菜とすることを特徴とするジュン菜の緑化方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載のジュン菜の処理方法であって、
前記緑化工程においてジュン菜を浸漬する前記金属イオン溶液が、溶質のモル濃度を前記脱水工程において使用する前記有機酸液のモル濃度の1/3以下とすることを特徴とするジュン菜の処理方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載のジュン菜の処理方法であって、
前記脱水工程において、
ジュン菜を浸漬する前記有機酸液に酢酸、クエン酸、リンゴ酸のいずれかを含む溶液を使用することを特徴とするジュン菜の処理方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載のジュン菜の処理方法であって、
前記脱水工程において、
ジュン菜を前記有機酸液に浸漬する時間を1時間以上とすることを特徴とするジュン菜の処理方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか一項に記載のジュン菜の処理方法であって、
前記緑化工程において、
前記脱水ジュン菜を前記金属イオン溶液に浸漬する時間を1時間以上とすることを特徴とするジュン菜の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジュン菜独特の風味と食感を向上する処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジュン菜は、つるつるした厚いヌメリで覆われた、独特の風味と食感のある高級食材で、ヌルヌルしてツルンとしたのどごしが命である。ジュン菜は、ヌメリが多いほど食感がよく、日本料理に高級食材として使用されている。つるつるしたヌメリは、寒天質の粘液からなる多糖類であって、コアたんぱく質に糖鎖が結合した糖類で、分子量が100万~1000万である糖を多量に含む粘液糖タンパク質の水溶性食物繊維である。
【0003】
ジュン菜は、採取された状態では綺麗な薄緑色をしているが、時間が経過すると自然な緑色が退色して商品価値が低下する。退色したジュン菜の緑色を復元する方法は開発されている。(特許文献1、2参照)
特許文献1と2の緑化方法は、金属イオンで葉緑素の緑色を復元してジュン菜を緑化する。この方法は、水にCu含有酵母とZn含有酵母を添加して、Cu含有酵母からはCuイオンを、Zn含有酵母からはZnイオンを放出させて、CuイオンとZnイオンとを含むイオン水とし、このイオン水にジュン菜を浸漬して緑化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-314300号公報
【特許文献2】特開2016-220563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上の緑化方法は、金属イオンの作用でジュン菜を緑化できるが、ジュン菜の命であるつるつるしたヌメリによる食感を低下させることなく緑化するのが難しく、高級食材であるジュン菜の商品価値が低下する欠点がある。
【0006】
本発明は、以上の欠点を解消することを目的として開発されたもので、ジュン菜を収穫した状態に勝るとも劣らないつるつるしたヌメリのある食感としながら緑化できるジュン菜の処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の側面に係るジュン菜の処理方法は、葉緑素に作用してジュン菜を緑化する金属イオンを含有する金属イオン溶液にジュン菜を浸漬する緑化工程でジュン菜を緑化する。緑化工程の前工程において、20℃以下の有機酸液にジュン菜を浸漬して脱水ジュン菜とする脱水工程を設け、緑化工程において使用する金属イオン溶液には、温度が20℃以下であって、脱水工程で使用する有機酸液よりも低いモル濃度の有機酸を含む溶液を使用し、緑化工程において、脱水工程で脱水した脱水ジュン菜を、モル濃度の低い有機酸を含む金属イオン溶液で膨潤し、ジュン菜を膨潤して内部移行する金属イオン溶液でジュン菜を緑化する。
【0008】
本発明の他の側面に係るジュン菜の処理方法は、緑化工程において、脱水ジュン菜を浸漬する金属イオン溶液の有機酸を酢酸とする
【0009】
本発明の第二の側面に係るジュン菜の処理方法は、葉緑素に作用してジュン菜を緑化する金属イオンを含有する金属イオン溶液にジュン菜を浸漬する緑化工程でジュン菜を緑化する。緑化工程の前工程において、20℃以下の有機酸液にジュン菜を浸漬して脱水ジュン菜とする脱水工程を設け、緑化工程において使用する金属イオン溶液には、温度が20℃以下であって、有機酸を含まず、溶質のモル濃度を脱水工程の有機酸液よりも低くしてなる溶液を使用し、緑化工程において、脱水工程で脱水した脱水ジュン菜を、溶質のモル濃度の低い金属イオン溶液で膨潤し、ジュン菜を膨潤して内部移行する金属イオン溶液でジュン菜を緑化する。
【0010】
本発明の他の側面に係るジュン菜の処理方法は、脱水工程において、モル濃度が0.5mol/L以上である有機酸液にジュン菜を浸漬して脱水ジュン菜とする。
【0011】
本発明の他の側面に係るジュン菜の処理方法は、緑化工程においてジュン菜を浸漬する金属イオン溶液が、溶質のモル濃度を脱水工程において使用する有機酸液のモル濃度の1/3以下とする。
【0012】
本発明の他の側面に係るジュン菜の処理方法は、脱水工程において、ジュン菜を浸漬する有機酸液に酢酸、クエン酸、リンゴ酸のいずれかを含む溶液を使用する。
【0013】
本発明の他の側面に係るジュン菜の処理方法は、脱水工程において、ジュン菜を有機酸液に浸漬する時間を1時間以上とする。
【0014】
本発明の他の側面に係るジュン菜の処理方法は、緑化工程において、脱水ジュン菜を金属イオン溶液に浸漬する時間を1時間以上とする。
【発明の効果】
【0015】
以上の緑化方法は、ジュン菜を収穫した状態に勝るとも劣らないつるつるしたヌメリのある食感としながら緑化できる特長がある。それは以上の処理方法が、ジュン菜を脱水した後、金属イオン溶液で膨潤することで、金属イオンをジュン菜に内部移行して緑化するからである。脱水されたジュン菜は、金属イオン溶液が内部移行しやすく、金属イオン溶液が低い温度で速やかにジュン菜に内部移行して緑化する。さらに内部移行する金属イオン溶液はジュン菜を膨潤して、つるつるしたヌメリを増加する。このため、以上の処理方法でジュン菜を緑化することで、ジュン菜を高品質な高級食材とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。以下に示す実施形態は、本発明の技術思想の具体例を示すものであって、本発明を以下に限定するものではない。また、以下に記載されている材料や条件など特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また、一の実施の形態、実施例において説明する内容は、他の実施の形態、実施例にも適用可能である。
【0017】
本発明の実施態様の緑化方法は、ジュン菜の命であるつるつるしたヌメリを、収穫時に勝るとも劣らない状態としながら綺麗な緑色に処理する。ジュン菜は、緑化工程において、葉緑素に作用して緑色に処理する緑化金属に浸漬して緑化する。この方法は、ジュン菜を金属イオン溶液に浸漬して緑化するが、緑化してつるつるしたヌメリを失うことなく、むしろ増大して食感を向上させるために、ジュン菜を浸漬する金属イオン溶液を、20℃以下の低い温度とする。低温で金属イオン溶液が効率よくジュン菜を緑化するために、緑化する前工程でジュン菜を有機酸液に浸漬して脱水して、金属イオン溶液を速やかにジュン菜に内部移行できる状態とする。
【0018】
したがって、この実施態様のジュン菜の処理方法は、葉緑素に作用してジュン菜を緑化する金属イオンを含有する金属イオン溶液にジュン菜を浸漬する緑化工程でジュン菜を緑化するが、緑化工程の前工程において、20℃以下の有機酸液にジュン菜を浸漬して脱水ジュン菜とする脱水工程を設けている。脱水工程で脱水された脱水ジュン菜は、金属イオン溶液をスムーズに内部移行できる状態にある。したがって、脱水ジュン菜を低温の金属イオン溶液に浸漬して、金属イオン溶液を速やかに内部移行して緑化できる。緑化工程は、浸透圧の作用で脱水ジュン菜を膨潤して、金属イオン溶液を速やかに内部移行するために、金属イオン溶液には、脱水工程で使用する有機酸液よりも低いモル濃度の有機酸を含む溶液、あるいは有機酸を含まない溶液を使用して、金属イオン溶液を速やかにジュン菜に内部移行させて緑化する。緑化工程は、加熱による植物へのダメージを抑制し、ジュン菜の命であるつるつるしたヌメリによる独特の食感を失うことなく緑化するために、金属イオン溶液の温度を20℃以下と低い温度とする。
【0019】
以上の実施態様の脱水工程は、ジュン菜を有機酸液に浸漬して脱水ジュン菜とする。ジュン菜を浸漬する有機酸液は、浸透圧の作用でジュン菜を有効に脱水するために、溶質のモル濃度を高くする。浸透圧でジュン菜を脱水する作用が、溶質のモル濃度に比例して大きくなるからである。したがって、脱水工程でジュン菜を浸漬する有機酸液は、たとえば有機酸のモル濃度を0.5mol/L以上、好ましくは0.8mol/L以上とする。さらに、ジュン菜を浸漬する有機酸液は、加熱による植物へのダメージを抑制し、つるつるしたヌメリの食感の低下を抑制するために、20℃以下、さらに好ましくは18℃よりも低くする。
【0020】
以上の緑化方法は、低温の有機酸液にジュン菜を浸漬して脱水した後、脱水ジュン菜をモル濃度の低い金属イオン溶液に浸漬して、金属イオン溶液をスムーズにジュン菜に内部移行して膨潤する。とくにジュン菜を包囲している独特のつるつるしたヌメリを膨潤して、ジュン菜の風味と食感を向上しなから緑化する。従って、以上の緑化方法は、ジュン菜の命であるつるつるしたヌメリを失うことなく、高品質なジュン菜としながら、自然な緑色に処理し、さらに膨潤して重量を増加して商品価値の高いジュン菜に処理できる特長がある。
【0021】
ジュン菜の脱水工程は、ジュン菜を有機酸液に浸漬して浸透圧の作用で脱水する。浸透圧の作用による脱水作用は、浸漬する有機酸液のモル濃度を高くすることで強くなる。ジュン菜を速やかに脱水するために、この工程でジュン菜を浸漬する有機酸液は、有機酸のモル濃度を、好ましくは0.5mol/L以上とする。さらに、ジュン菜を浸漬して温度による弊害を防止するために、有機酸液の温度は20℃以下、好ましくは10℃~18℃に設定する。ジュン菜の浸漬時間は、好ましくは1時間以上、さらに好ましくは3時間以上として、ジュン菜の重量を10%~30%軽量化する。
【0022】
緑化工程でジュン菜を浸漬する金属イオン溶液は、ジュン菜の葉緑素に作用して緑化できる金属イオンを含む全ての溶液を使用できるが、好ましくは、金属含有酵母を加水分解して酵母臭の抑制された金属イオン溶液を使用する。金属含有酵母には、植物の葉緑素に作用して緑化作用のある、Zn、Cu、Fe、Mg、Mnのいずれかの緑化金属を含む酵母が使用できる。酵母を加水分解する工程は、金属含有酵母を酸性液に浸漬して加圧状態で加熱し、加水分解し、その後冷却し、pH調整して高濃度の金属イオンを含む原料金属イオン溶液とする。原料金属イオン溶液を希釈して、ジュン菜を浸漬して緑化する金属イオン溶液とする。希釈して得られる金属イオン溶液は、ジュン菜を浸漬して緑化できるように、例えば金属イオン濃度を1ppm以上であって150ppm以下とする。原料金属イオン溶液は有機酸を含まない水を添加して希釈し、あるいは低濃度の有機酸、たとえば、有機酸のモル濃度を脱水工程において使用する有機酸液のモル濃度の1/3以下とする有機酸液を添加して、ジュン菜を浸漬して緑化する金属イオン溶液とする。
【0023】
以上の緑化方法は、脱水工程において、退色したジュン菜を水洗いした後、有機酸液に浸漬して脱水して脱水ジュン菜とする。脱水工程は、浸透圧の作用で、ジュン菜から有機酸液に水分が移行して、脱水ジュン菜となる。脱水工程は、ジュン菜の水分を有機酸液に移行し、緑化工程で浸漬される金属イオン溶液をジュン菜に移行しやすくする。金属イオン溶液がジュン菜に内部移行することでジュン菜は膨潤して重量が増加し、さらに金属イオンが葉緑素に作用してジュン菜を緑化する。
【0024】
以上の緑化方法は、浸透圧の作用を有効に利用することで、ジュン菜の命であるつるつるしたヌメリを失うことなく、すなわちジュン菜を高級食材の状態に保持しながら緑化する。脱水工程ではジュン菜の水分を有機酸液に移行し、緑化工程では金属イオン溶液をジュン菜に内部移行するからである。脱水されたジュン菜は、金属イオン溶液が内部移行しやすく、ジュン菜に移行した金属イオン溶液がジュン菜を膨潤して重量を増加し、膨潤することでジュン菜のつるつるしたヌメリが増加して高級食材の食感をさらに向上し、しかも金属イオンによって綺麗な緑色となる。
【0025】
とくに、以上の緑化方法は、脱水工程では20℃以下の有機酸液に、緑化工程では20℃以下の金属イオン溶液に浸漬するので、熱に弱いジュン菜表面のつるつるしたヌメリの減少を防止し、さらに緑化工程では、金属イオン溶液をジュン菜に移行させて膨潤させるので、ジュン菜表面のつるつるしたヌメリを増加して、ヌメリ独特の風味と食感を、収穫時に勝るとも劣らない状態にできる。ジュン菜表面の寒天状のつるつるしたヌメリは、熱で溶解しやすい多糖で加熱によって失われるが、以上の緑化方法は、20℃以下の有機酸液と金属イオン溶液で緑化して、つるつるしたヌメリを膨潤するので、重量が増加してジュン菜独特の風味と食感を向上しながら緑化できる。すなわち、以上の処理方法は、ジュン菜を膨潤して綺麗な緑色としながら、ジュン菜の命であるつるつるしたヌメリによる風味と食感を向上するという高級食材であるジュン菜にとって極めて大切な特長を実現する。このことは、ジュン菜の処理方法において極めて高い経済効果を実現する。それは、ジュン菜が重量で販売されることから、ジュン菜の重量を増加しながら高級食材として販売価格を高くできるからである。
【0026】
以下、ジュン菜を膨潤して緑化する、脱水工程、緑化工程をより具体的に詳述する。
(脱水工程)
脱水工程においてジュン菜を浸漬する有機酸液は、酢酸、クエン酸、リンゴ酸などの有機酸に水を添加して調整される。有機酸液は20℃以下であって、好ましくは有機酸液に含まれる有機酸のモル濃度を、0.5mol/L(酢酸では3vol%)以上であって、2mol/L(酢酸では12vol%)以下とする。有機酸液は、有機酸の濃度を高くしてジュン菜の脱水効果を高くできるが、処理コストと脱水効果を考慮して、好ましくは前述の範囲とする。有機酸液の温度は、加熱による植物へのダメージを抑制し、ジュン菜のつるつるしたヌメリに悪影響を与えないように、好ましくは20℃以下、さらに好ましくは約17℃とする。
【0027】
脱水工程において、ジュン菜を浸漬する時間は、有機酸液の濃度と温度を考慮して最適な時間に設定されるが、有機酸液の濃度と温度を前述の範囲として、好ましくは1時間以上としてジュン菜を脱水する。処理時間を長くしてジュン菜の脱水効果は増加するが、浸透圧による水分の移行は、溶質濃度の差が少なくなると減少して平衡状態では停止し、さらに浸漬時間が長すぎると処理時間が長くなって能率よく処理できなくなるので、ジュン菜の浸漬時間は好ましくは1~3時間とする。
【0028】
(緑化工程)
緑化工程で脱水ジュン菜を浸漬する金属イオン溶液は、金属含有酵母を原料として調整する。金属含有酵母は、ジュン菜の葉緑素に作用して緑化する緑化金属、たとえば、Zn、Cu、Fe、Mg、Mn等の金属を含有する母酵を使用する。金属含有酵母を加水分解して金属イオン濃度の高い原料金属イオン溶液とし、原料金属イオン溶液を希釈して所定の金属イオン濃度の金属イオン溶液とする。
【0029】
金属イオン溶液は、ジュン菜を自然な緑色とするために、金属イオン濃度を、例えば1ppm以上、好ましくは3ppm以上とする。さらに、金属イオン溶液は、含有する緑化金属の種類を選択してジュン菜の色彩を調整できる。たとえば、Feイオンを含む金属イオン溶液は、CuイオンやZnイオンの金属イオン溶液に比較して緑色が暗色に近く、Znイオンの金属イオン溶液は淡い緑色となり、Cuイオンは濃い緑色となる。金属イオン溶液は、異なる緑化金属を含む複数の金属イオン溶液を混合して、緑化するジュン菜の色彩を調整できるので、含有する複数の金属イオンの混合比率を調整して、ジュン菜の緑色をより収穫時の緑色に調整することができる。たとえば、Zn含有酵母とCu含有酵母の両方を使用して、収穫時のジュン菜に近い緑色にすることができ、さらにこれ等の金属含有酵母にFeの金属含有酵母を加えることでジュン菜をより濃い緑色に緑化することもできる。
【0030】
金属イオン溶液は、金属含有酵母を加水分解して原料金属イオン溶液とし、原料金属イオン溶液を希釈して、所定の金属イオン濃度の金属イオン溶液とする。金属含有酵母を加水分解して得られる金属イオン溶液は、緑化されるジュン菜の酵母臭を抑制できる。金属含有酵母が加水分解されて、タンパク質が小さい分子のアミノ酸に分解されるからである。
【0031】
金属含有酵母は、酸性液に浸漬し加水分解して原料金属イオン溶液とする。酸性液は、好ましくは塩酸を使用する。加水分解は、12Nの濃塩酸に水を混合して6N規定の塩酸とし、これに金属含有酵母を混合して、120℃で2時間かけて加水分解する。得られた溶液は、塩酸によって強い酸性を示すので、冷却した後、水酸化ナトリウムなどのpH調整剤を添加して、好ましくはpH4~pH5となるようにpH調整して高濃度の金属イオンを含む原料金属イオン溶液とする。原料金属イオン溶液に含まれる緑化金属の濃度は、塩酸に混合する金属含有酵母の混合量と、金属含有酵母の緑化金属含有量でコントロールできる。たとえば、1重量%の緑化金属を含有する金属含有酵母1重量部と、9重量部の塩酸を混合して、原料金属イオン溶液の緑化金属の濃度を0.1重量%に調整できる。
【0032】
原料金属イオン溶液は、水、又は低濃度の有機酸液を添加してジュン菜を緑化できるイオン濃度の金属イオン溶液とする。金属イオン溶液は、浸透圧の作用でスムーズに脱水ジュン菜を膨潤できるように、原料金属イオン溶液に純水、又は低濃度の有機酸液が添加される。原料金属イオン溶液に添加される低濃度の有機酸液は、脱水工程で使用する有機酸液よりもモル濃度の低い有機酸液を使用する。脱水工程はジュン菜を高濃度の有機酸液で脱水し、緑化工程では金属イオン溶液をジュン菜に内部移行して膨潤するためである。原料金属イオン溶液に混合される低濃度の有機酸液は、酢酸、クエン酸、リンゴ酸などの有機酸を水に希釈した溶液が使用できる。原料金属イオン溶液を希釈する低濃度の有機酸液は、モル濃度を脱水工程の有機酸液よりも低くするが、0.5mol/L未満、さらに好ましくは0.3mol/L以下とする。
【0033】
緑化工程で、ジュン菜を浸漬する金属イオン溶液は、ジュン菜を膨潤して緑化するイオン濃度に調整される。金属イオン溶液は、含有する金属イオンの種類と濃度によって、緑化されたジュン菜の緑色は変化するが、全ての緑化金属イオンを含有する金属イオン溶液において、金属イオン濃度を1ppm以上として緑化できる。金属イオン濃度が1ppmよりも低くなるとジュン菜の緑色が薄くなって商品価値が低下する。金属イオン溶液は、例えば金属イオン濃度を1ppm~50ppmの範囲においては、金属イオン濃度を高くしてジュン菜の緑色は次第に濃くなるが、全ての緑化金属において、50ppmを超える領域から緑色の濃度変化は減少し、100ppmないし150ppmの範囲においてはさらに緑色の変化は減少して、150ppmを超えると緑色の変化はほとんど認識できない状態となる。したがって、金属イオン溶液の金属イオン濃度は、ジュン菜の販売地域における消費者の好みと処理コストを考慮して、以上の範囲に設定する。
【0034】
脱水ジュン菜を浸漬して膨潤し、緑化する金属イオン溶液の温度は、好ましくは20℃以下、さらに好ましくは約10℃~17℃とする。金属イオン溶液に浸漬された脱水ジュン菜は、浸透圧の作用で金属イオン溶液がジュン菜に内部移行して膨潤し、金属イオンの作用でジュン菜を緑化する。脱水ジュン菜を浸漬する金属イオン溶液の最適イオン濃度は、含有する緑化金属の種類と、浸漬時間と、要求される緑色を考慮して最適値に調整されるが、イオン濃度を高く、浸漬時間を長くして、脱水ジュン菜を濃い緑色にできるので、緑化金属の種類と要求される緑色を考慮して最適値に設定される。
【実施例0035】
[実施例1]
退色したジュン菜を水洗いして原料のジュン菜とする。原料のジュン菜を、脱水工程と、緑化工程で膨潤して緑化する。
1.脱水工程
この工程において、ジュン菜は、酢酸濃度0.8mol/L(5vol%)とする17℃の有機酸液に浸漬する。ジュン菜の浸漬時間を2時間として脱水ジュン菜とする。この脱水工程において、ジュン菜は重量が15%低下して脱水ジュン菜となる。
2.緑化工程
この工程でジュン菜を浸漬する金属イオン溶液は以下の工程で調整する。この工程は、金属含有酵母を酸性液に浸漬して加水分解する。金属含有酵母には、5重量%のZnを含有するZn含有酵母を使用する。Zn含有酵母には、例えば、「米国 Grow Company,Inc.製」を使用するが、Zn含有酵母には、Znを含有する他の金属含有酵母も使用できる。酸性液は、12Nの濃塩酸に水を混合して6N規定の塩酸の酸性液を使用する。酸性液とZn含有酵母は、9重量部の酸性液に1重量部のZn含有酵母を添加して、120℃で2時間かけてZn含有酵母を加水分解して、酵母臭の脱臭された原料金属イオン溶液とする。加熱状態で加水分解された原料金属イオン溶液は、冷却した後、pH調整剤として水酸化ナトリウムを添加して、pH4~pH5に調整して、Znイオンを含む金属イオン溶液とする。この溶液は、0.5重量%の金属イオン(Znイオン)を含有する。原料金属イオン溶液に有機酸を含まない水を添加して、Znイオン濃度を5ppmとする金属イオン溶液に調整する。この希釈工程は、金属イオン溶液の金属イオン濃度を0.5重量%から5ppmに希釈するので、約1000倍の水を添加して金属イオン溶液とする。原料金属イオン溶液を1000倍に希釈した金属イオン溶液は、溶質濃度が極めて低く、浸透圧の作用で脱水ジュン菜に速やかに浸漬してジュン菜を膨潤し、緑化し、重量を増加する。以上の工程で得られた金属イオン溶液100mLに、50gの脱水ジュン菜を3時間浸漬して緑化する。ただし、ジュン菜を浸漬する金属イオン溶液は、温度を17℃とする。
【0036】
以上の工程で処理された原料のジュン菜は、金属イオン溶液で膨潤されて、自然な緑色に緑化される。膨潤したジュン菜は、重量も増加する。ジュン菜の重量増加は、原料のジュン菜に対して約7%と極めて大きく、とくにジュン菜表面を覆うつるつるしたヌメリであるムコ多糖を膨潤して、ジュン菜の命である風味と食感が向上する。したがって、以上の実施例で処理されたジュン菜は、ジュン菜の命であるつるつるしたヌメリによる独特の風味と食感があり、さらに重量も増加して高級食材のジュン菜となる。
【0037】
[実施例2]
脱水工程において、ジュン菜を浸漬する有機酸液の酢酸濃度を0.5mol/L、浸漬時間を3時間として脱水する以外、実施例1と同様にして、ジュン菜を処理する。この実施例で処理されたジュン菜は、実施例1で処理したジュン菜に匹敵する緑色に緑化されて、重量は約5%増加して、ジュン菜独特のつるつるしたヌメリによる風味と食感が向上して、高級食材のジュン菜に処理される。
【0038】
[実施例3、4]
脱水工程において、ジュン菜を浸漬する有機酸液の酢酸濃度を1.5mol/L(実施例3)、2mol/L(実施例4)、浸漬時間を1時間とする以外、実施例1と同様にして、ジュン菜を処理する。この実施例で処理されたジュン菜は、実施例1で処理したジュン菜に匹敵する緑色に緑化されて、重量は約8%も増加して、ジュン菜独特のつるつるしたヌメリによる風味と食感が向上して、高級食材のジュン菜に処理される。
【0039】
[実施例5、6、7]
脱水工程において、ジュン菜を浸漬する有機酸液にクエン酸液を使用して、クエン酸のモル濃度を0.5mol/L(実施例5)、1mol/L(実施例6)、2mol/L(実施例7)とし、ジュン菜をクエン酸液に浸漬する時間を5時間とする以外、実施例1と同様にして、ジュン菜を処理する。この実施例で処理されたジュン菜は、実施例1で処理したジュン菜に匹敵する緑色に緑化されて、重量は約4%~6%増加して、ジュン菜独特のつるつるしたヌメリによる風味と食感が向上して、高級食材のジュン菜に処理される。
【0040】
[実施例8、9、10]
脱水工程において、ジュン菜を浸漬する有機酸液にリンゴ酸液を使用して、リンゴ酸のモル濃度を0.5mol/L(実施例8)、1mol/L(実施例9)、2mol/L(実施例10)とし、ジュン菜をリンゴ酸液に浸漬する時間を5時間とする以外、実施例1と同様にして、ジュン菜を処理する。この実施例で処理されたジュン菜は、実施例1で処理したジュン菜に匹敵する緑色に緑化されて、重量は約5%~7%増加して、ジュン菜独特のつるつるしたヌメリによる風味と食感が向上して、高級食材のジュン菜に処理される。
【0041】
[実施例11]
この実施例は、緑化工程において、脱水ジュン菜を浸漬する金属イオン溶液に、Znイオン濃度を1ppmとする金属イオン溶液を使用して、浸漬時間を5時間とする以外は、実施例1と同様にしてジュン菜を処理する。この実施例で処理されたジュン菜は、実施例1で処理したジュン菜に匹敵する緑色に緑化されて、重量は約5%~8%も増加して、ジュン菜独特のつるつるしたヌメリによる風味と食感が向上して、高級食材のジュン菜として販売価格を向上できる。
【0042】
[実施例12]
この実施例は、緑化工程において、脱水ジュン菜を浸漬する金属イオン溶液に、Znイオン濃度を20ppmとする金属イオン溶液を使用して、浸漬時間を1時間とする以外は、実施例1と同様にしてジュン菜を処理する。この実施例で処理されたジュン菜は、実施例1で処理したジュン菜に匹敵する緑色に緑化されて、重量は約3%~5%増加して、ジュン菜に独特の風味と食感が向上して、ジュン菜としての品質と販売価格を向上できる。
【0043】
[実施例13]
この実施例は、緑化工程においてジュン菜を浸漬する金属イオン溶液をCuイオン濃度を5ppmとする金属イオン溶液を使用する以外は、実施例1と同様にしてジュン菜を処理する。ただし、実施例1のZn含有酵母に代わって、Cuイオンを含む金属イオン溶液は、5重量%のCuを含有するCu含有酵母を使用して、原料金属イオン溶液を調整する。Cu含有酵母には、例えば、「米国 Grow Company,Inc.製 Soluble Copper Yeast」を使用するが、Cu含有酵母には、Cuを含有する他のCu含有酵母も使用できる。金属イオン溶液は、5重量%のCuを含有するCu含有酵母を使用し、1重量部のCu含有酵母と、9重量部の酸性液を混合して加水分解するので、得られる原料金属イオン溶液のCuイオン濃度は0.5重量%となる。この原料金属イオン溶液を希釈工程で希釈して、Cuイオン濃度を5ppmとする金属イオン溶液とし、この金属イオン溶液100mLに、50gの脱水ジュン菜を1~5時間浸漬して緑化する。この実施例で得られるジュン菜は、退色していた状態から綺麗な緑色に緑化され、さらに膨潤して実施例1と同様に重量も増加する。この実施例で処理されるジュン菜も、風味と食感を向上して綺麗な緑色に緑化されて、商品価値を向上しながら重量増加によって販売価格を向上できる。
【0044】
[実施例14]
この実施例は、緑化工程にFeイオンを含有する金属イオン溶液を使用する以外、実施例1と同様にして、原料のジュン菜を処理する。Feイオンを含む金属イオン溶液は、実施例1のZn含有酵母に代わって、5重量%のFeを含有するFe含有酵母を使用して、原料金属イオン溶液を調整する。Fe含有酵母には、例えば、「米国 Grow Company,Inc.製」を使用するが、Fe含有酵母には、Feを含有する他の金属含有酵母も使用できる。金属イオン溶液は、5重量%のFeを含有するFe含有酵母を使用し、1重量部のFe含有酵母と、9重量部の酸性液を混合して加水分解して、金属イオン溶液のFeイオン濃度を0.5重量%とする原料金属イオン溶液を生成し、原料金属イオン溶液を水で希釈して、Feイオン濃度を1ppmとする金属イオン溶液とする。この金属イオン溶液100mLに、50gの脱水ジュン菜を1~5時間浸漬して緑化する。この実施例で得られるジュン菜は、退色していた状態から緑色に緑化され、さらに膨潤して重量も実施例1と同じように増加する。この実施例で処理されたジュン菜は、実施例1~13で処理されたジュン菜に比較して、わずかに濃い緑色となり、緑色が暗色に近くなる。この実施例で処理されるジュン菜も、風味と食感を向上して緑化されて、商品価値を向上しながら重量増加によって販売価格を向上できる。
【0045】
[実施例15]
この実施例は、緑化工程においてMgイオンを含有する金属イオン溶液を使用する以外、実施例1と同様にして、ジュン菜を処理する。Mgイオンを含む金属イオン溶液は、実施例1のZn含有酵母に代わって、5重量%のMgを含有するMg含有酵母を加水分解して原料金属イオン溶液とする。原料金属イオン溶液は、5重量%のMgを含有するMg含有酵母を原料に使用し、1重量部のMg含有酵母と、9重量部の酸性液を混合して加水分解して生成されるので、Mgイオン濃度は0.5重量%となる。この原料金属イオン溶液を希釈して、Mgイオン濃度を5ppmとする金属イオン溶液とし、この金属イオン溶液100mLに、50gの脱水ジュン菜を1~5時間浸漬して緑化する。この実施例で得られるジュン菜は、退色していた状態から綺麗な緑色に緑化され、さらに膨潤して重量も実施例1と同等に増加する。この実施例で処理されるジュン菜も、風味と食感を向上して綺麗な緑色に緑化されて、商品価値を向上しながら重量増加によって販売価格を向上できる。
【0046】
[実施例16]
この実施例は、緑化工程においてMnイオンを含有する金属イオン溶液を使用する以外、実施例1と同様にして、ジュン菜を処理する。緑化工程においてジュン菜を浸漬する金属イオン溶液は、実施例1のZn含有酵母に代わって、5重量%のMnを含有するMn含有酵母を使用して、金属イオン溶液を調整する。金属イオン溶液は、5重量%のMnを含有するMn含有酵母を使用し、1重量部のMn含有酵母と、9重量部の酸性液を混合して加水分解するので、得られる原料金属イオン溶液のMnイオン濃度は0.5重量%となる。この原料金属イオン溶液を希釈工程で希釈して、Mnイオン濃度を1ppmとする金属イオン溶液とし、この金属イオン溶液100mLに、50gの脱水ジュン菜を2~8時間浸漬して緑化する。この実施例で得られるジュン菜は、退色していた状態から綺麗な緑色に緑化され、さらに膨潤して重量も実施例1と同様に増加する。この実施例で処理されるジュン菜も、風味と食感を向上して綺麗な緑色に緑化されて、商品価値を向上しながら重量増加によって販売価格を向上できる。
【0047】
[実施例17]
この実施例は、緑化工程において、ジュン菜を浸漬する金属イオン溶液に、ZnイオンとCuイオンの両方を含む金属イオン溶液を使用する以外、実施例1と同様に、退色されたジュン菜を緑化する。緑化工程においてジュン菜を浸漬する金属イオン溶液は、実施例1のZn含有酵母に代わって、5重量%のZnを含有するZn含有酵母と、5重量%のCuを含有するCu含有酵母を混合して使用する。金属イオン溶液は、実施例1と同様に、12Nの濃塩酸に水を混合して6N規定の塩酸の酸性液を使用するが、金属含有酵母と酸性液の混合率は、0.5重量部のZn含有酵母と、0.5重量部のCu含有酵母を、9重量部の酸性液に混合して加水分解して原料金属イオン溶液を調整する。生成した原料金属イオン溶液を、希釈工程で希釈して、5ppmのZnイオンと、5ppmのCuイオンを含有する常温の金属イオン溶液とし、この金属イオン溶液100mLに、50gの脱水ジュン菜を1~5時間浸漬して緑化する。この実施例で得られるジュン菜は、退色していた状態から綺麗な緑色に緑化され、さらに膨潤して実施例1と同様に重量も増加する。この実施例で処理されるジュン菜も、風味と食感を向上して綺麗な緑色に緑化されて、商品価値を向上しながら重量増加によって販売価格を向上できる。
【0048】
[実施例18]
この実施例は、緑化工程において、金属イオン溶液に、Zn含有酵母とCu含有酵母とFe含有酵母を使用する以外は実施例1と同様に、退色されたジュン菜を処理する。金属イオン溶液は、実施例1のZn含有酵母に代わって、5重量%のZnを含有するZn含有酵母と、5重量%のCuを含有するCu含有酵母と、5重量%のFeを含有するFe含有酵母を混合して、原料金属イオン溶液とし、原料金属イオン溶液を希釈して調整する。金属含有酵母の加水分解は、実施例1と同様に、12Nの濃塩酸に水を混合して6N規定の塩酸の酸性液を使用するが、金属含有酵母と酸性液の混合率は、0.34重量部のZn含有酵母と、0.33重量部のCu含有酵母と、0.33重量部のFe含有酵母を、9重量部の酸性液に混合して加水分解して原料金属イオン溶液を生成する。得られた原料金属イオン溶液を希釈して、2.5ppmのZnイオンと、2.5ppmのCuイオンと、2.5ppmのFeイオンを含有する常温の金属イオン溶液とし、この金属イオン溶液100mLに、50gの脱水ジュン菜を1~5時間浸漬して緑化する。この実施例で得られるジュン菜は、退色していた状態から濃い緑色に緑化され、さらに膨潤して重量も実施例1と同じように増加する。この実施例で処理されるジュン菜も、風味と食感を向上して綺麗な緑色に緑化されて、商品価値を向上しながら重量増加によって販売価格を向上できる。
【0049】
[実施例19~23]
この実施例は、緑化工程において使用する金属イオン溶液の金属イオン濃度を50ppmとして、金属イオンをZnイオン(実施例19)、Cuイオン(実施例20)、Feイオン(実施例21)、Mgイオン(実施例22)、Mnイオン(実施例23)とし、ジュン菜を金属イオン溶液に浸漬する時間を1時間とする以外は、実施例1と同様にしてジュン菜を処理する。これ等の実施例で得られるジュン菜は、退色していた状態から濃い緑色に緑化され、さらに膨潤して重量が増加し、風味と食感が向上して商品価値が向上する。
【0050】
[実施例24~28]
この実施例は、緑化工程において使用する金属イオン溶液の金属イオン濃度を100ppmとして、金属イオンをZnイオン(実施例24)、Cuイオン(実施例25)、Feイオン(実施例26)、Mgイオン(実施例27)、Mnイオン(実施例28)とし、ジュン菜を金属イオン溶液に浸漬する時間を1時間とする以外は、実施例1と同様にしてジュン菜を処理する。これ等の実施例で得られるジュン菜は、退色していた状態から濃い緑色に緑化され、さらに膨潤して重量が増加し、風味と食感が向上して商品価値が向上する。
【0051】
[実施例29~33]
この実施例は、緑化工程において使用する金属イオン溶液の金属イオン濃度を150ppmとして、金属イオンをZnイオン(実施例29)、Cuイオン(実施例30)、Feイオン(実施例31)、Mgイオン(実施例32)、Mnイオン(実施例33)とし、ジュン菜を金属イオン溶液に浸漬する時間を1時間とする以外は、実施例1と同様にしてジュン菜を処理する。これ等の実施例で得られるジュン菜は、退色していた状態から濃い緑色に緑化され、さらに膨潤して重量が増加し、風味と食感が向上して商品価値が向上する。
【0052】
以上の実施例は、原料金属イオン溶液を水で希釈して金属イオン溶液とするが、原料金属イオン溶液の希釈には低濃度の有機酸液を使用することもできる。低濃度の有機酸液は、酢酸、クエン酸、リンゴ酸などの溶液を使用できるが、これ等の有機酸液は、浸漬するジュン菜に金属イオン溶液を速やかに内部移行して膨潤できるように、モル濃度を0.5mol/L未満、さらに好ましくは0.3mol/L以下とする。