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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147749
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】シートシステム
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/90 20180101AFI20220929BHJP
   B60N 2/06 20060101ALI20220929BHJP
   B60N 2/30 20060101ALI20220929BHJP
   B60N 2/856 20180101ALI20220929BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/06
B60N2/30
B60N2/856
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021049131
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 生佳
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BA02
3B087CA11
3B087DE08
3B087DE09
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】シート収納処理の実行によるシートの動作が障害物で規制されるのを抑制することを目的とする。
【解決手段】シートシステムは、乗員の荷物の大きさを認識する認識部を備えた車両に搭載されるシートであって、乗員が着座可能な通常状態と、通常状態よりも車室内の収納空間を大きくする収納状態に切替可能なシートと、通常状態から収納状態に切り替わるまでのシートの軌跡内にある障害物を検出する障害物検出センサと、シートの状態を通常状態から収納状態に変更するシート収納処理を実行可能な制御部を備える。制御部は、認識部からの情報に基づいてシート収納処理を実行することを決定した場合には(S4)、シート収納処理を開始する前に、障害物検出センサからの情報に基づいて軌跡内に障害物があるか否かを判定し(S5)、障害物がないと判定すると、シート収納処理を開始し(S7)、障害物があると判定すると、シート収納処理を開始しない。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員の荷物の大きさを認識する認識部を備えた車両に搭載されるシートであって、乗員が着座可能な通常状態と、前記通常状態よりも車室内の収納空間を大きくする収納状態と、に切替可能なシートと、
前記通常状態から前記収納状態に切り替わるまでの前記シートの軌跡内にある障害物を検出する障害物検出センサと、
前記シートの状態を前記通常状態から前記収納状態に変更するシート収納処理を実行可能であり、前記シート収納処理の実行の可否を決定する制御部と、を備えたシートシステムであって、
前記制御部は、
前記認識部からの情報に基づいて前記シート収納処理を実行することを決定した場合には、前記シート収納処理を開始する前に、前記障害物検出センサからの情報に基づいて前記軌跡内に障害物があるか否かを判定し、
障害物がないと判定した場合には、前記シート収納処理を開始し、
障害物があると判定した場合には、前記シート収納処理を開始しないことを特徴とするシートシステム。
【請求項2】
前記障害物検出センサは、前記シートの座面上の物の有無を検出することを特徴とする請求項1に記載のシートシステム。
【請求項3】
前記シートは、シートクッションと、前記シートクッションに対して回動可能なシートバックとを備え、
前記収納状態において、前記シートバックは、前記シートクッションと対面するように折り畳まれていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシートシステム。
【請求項4】
前記シートは、前記車両の後部に位置する荷室の前に配置され、
前記収納状態において、前記シートは、前記通常状態よりも前に配置されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のシートシステム。
【請求項5】
前記制御部は、前記障害物があると判定して前記シート収納処理を開始しないことを決定した場合には、前記シート収納処理が実行されないことを示す非実行情報を乗員に報知することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のシートシステム。
【請求項6】
前記制御部は、乗員が所持可能な携帯端末によって前記非実行情報を報知することを請求項5に記載のシートシステム。
【請求項7】
前記制御部は、前記障害物がないと判定して前記シート収納処理を開始することを決定した場合には、前記シート収納処理が実行されることを示す実行情報を乗員に報知することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のシートシステム。
【請求項8】
前記制御部は、乗員が所持可能な携帯端末によって前記実行情報を報知することを請求項7に記載のシートシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートの状態を変更させる制御部を備えたシートシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シートシステムとして、車両に乗り込もうとする乗員の荷物の大きさを認識し、大きな荷物である場合にシートのシートバックを折り畳んで荷室スペースを広げるシート収納処理を実行可能なものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-157943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、シート収納処理が実行された際に、折り畳む対象となるシート上に障害物があると、シートバックの回動が障害物で規制されてしまい、シートバックを回動させるモータ等に余計な負荷がかかるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、シート収納処理の実行によって動作するシートの動きが障害物で規制されるのを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係るシートシステムは、乗員の荷物の大きさを認識する認識部を備えた車両に搭載されるシートであって、乗員が着座可能な通常状態と、前記通常状態よりも車室内の収納空間を大きくする収納状態と、に切替可能なシートと、前記通常状態から前記収納状態に切り替わるまでの前記シートの軌跡内にある障害物を検出する障害物検出センサと、前記シートの状態を前記通常状態から前記収納状態に変更するシート収納処理を実行可能であり、前記シート収納処理の実行の可否を決定する制御部と、を備える。
前記制御部は、前記認識部からの情報に基づいて前記シート収納処理を実行することを決定した場合には、前記シート収納処理を開始する前に、前記障害物検出センサからの情報に基づいて前記軌跡内に障害物があるか否かを判定し、障害物がないと判定した場合には、前記シート収納処理を開始し、障害物があると判定した場合には、前記シート収納処理を開始しない。
【0007】
この構成によれば、シート収納処理を開始する前に、障害物検出センサからの情報に基づいて軌跡内に障害物があるか否かを判定し、障害物があると判定した場合には、シート収納処理を開始しないので、シート収納処理の実行によって動作するシートの動きが障害物で規制されるのを抑制することができる。
【0008】
また、前記障害物検出センサは、前記シートの座面上の物の有無を検出してもよい。
【0009】
この構成によれば、障害物検出センサとして、例えばシートに乗員が座っているか否かを検出する、シートベルトリマインダのセンサと兼用することができるので、コストの低下を図ることができる。
【0010】
また、前記シートは、シートクッションと、前記シートクッションに対して回動可能なシートバックとを備え、前記収納状態において、前記シートバックは、前記シートクッションと対面するように折り畳まれていてもよい。
【0011】
この構成によれば、収納状態において、シートバックがシートクッションと対面するように折り畳まれるので、通常状態よりも車室内の収納空間を大きくすることができる。
【0012】
また、前記シートは、前記車両の後部に位置する荷室の前に配置され、前記収納状態において、前記シートは、前記通常状態よりも前に配置されてもよい。
【0013】
この構成によれば、通常状態よりも荷室スペースを大きくすることができる。
【0014】
また、前記制御部は、前記障害物があると判定して前記シート収納処理を開始しないことを決定した場合には、前記シート収納処理が実行されないことを示す非実行情報を乗員に報知してもよい。
【0015】
この構成によれば、例えば車両の外にいる乗員が、非実行情報の報知に基づいて、シートが収納状態になっていないことを車両のドアを開ける前に知ることができるので、車両のドアを開ける前に、持っている荷物を地面に降ろすことができる。そのため、シートが収納状態になっていることを期待して、乗員が、一方の手で荷物を持ち、他方の手で車両のドアを開けるといった無理な動作を行う無駄をなくすことができる。
【0016】
また、前記制御部は、乗員が所持可能な携帯端末によって前記非実行情報を報知してもよい。
【0017】
この構成によれば、乗員が携帯する携帯端末によって非実行情報を報知するので、例えば車両の内部スピーカによって非実行情報を報知する場合と比べ、非実行情報を乗員が確認しやすい。
【0018】
また、前記制御部は、前記障害物がないと判定して前記シート収納処理を開始することを決定した場合には、前記シート収納処理が実行されることを示す実行情報を乗員に報知してもよい。
【0019】
この構成によれば、例えば車両の外にいる乗員が、実行情報の報知に基づいて、シートが収納状態になっていることを車両のドアを開ける前に知ることができるので、乗員が荷物を持ったまま安心して車両のドアを開けることができる。
【0020】
また、前記制御部は、乗員が所持可能な携帯端末によって前記実行情報を報知してもよい。
【0021】
この構成によれば、乗員が携帯する携帯端末によって実行情報を報知するので、例えば車両の内部スピーカによって実行情報を報知する場合と比べ、実行情報を乗員が確認しやすい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、シート収納処理の実行によって動作するシートの動きが障害物で規制されるのを抑制することができる。
【0023】
また、障害物検出センサを、シートの座面上の物の有無を検出するセンサとすることで、例えばシートに乗員が座っているか否かを検出する、シートベルトリマインダのセンサと兼用することができるので、コストの低下を図ることができる。
【0024】
また、収納状態において、シートバックがシートクッションと対面するように折り畳まれることで、通常状態よりも車室内の収納空間を大きくすることができる。
【0025】
また、車両後部の荷室の前に配置されたシートが、前記収納状態において、通常状態よりも前に配置されることで、通常状態よりも荷室スペースを大きくすることができる。
【0026】
また、シート収納処理が実行されないことを示す非実行情報を乗員に報知する構成とすることで、例えば車両の外にいる乗員が、非実行情報の報知に基づいて、シートが収納状態になっていないことを車両のドアを開ける前に知ることができ、車両のドアを開ける前に、持っている荷物を地面に降ろすことができる。
【0027】
また、乗員が所持可能な携帯端末によって非実行情報を報知する構成とすることで、例えば車両の内部スピーカによって非実行情報を報知する場合と比べ、非実行情報を乗員が確認しやすい。
【0028】
また、シート収納処理が実行されることを示す実行情報を乗員に報知する構成とすることで、例えば車両の外にいる乗員が、実行情報の報知に基づいて、シートが収納状態になっていることを車両のドアを開ける前に知ることができるので、乗員が荷物を持ったまま安心して車両のドアを開けることができる。
【0029】
また、乗員が所持可能な携帯端末によって実行情報を報知する構成とすることで、例えば車両の内部スピーカによって実行情報を報知する場合と比べ、実行情報を乗員が確認しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】一実施形態に係るシートシステムを示す図である。
図2】シートが通常状態から収納状態に切り替わった状態を示す図である。
図3】制御部の動作を示すフローチャートである。
図4】制御部の動作の具体例を示す図(a)~(c)である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付の図面を参照しながら発明の一実施形態について説明する。
図1に示すように、シートシステム1は、シート10と、障害物検出センサ20と、制御部30とを備えている。
【0032】
シート10は、乗員の荷物の大きさを認識する認識部51を備えた車両50に搭載されている。認識部51は、車両50の外にいる乗員が所持している荷物を検出するセンサであり、カメラなどからなる。認識部51は、車両50の少なくとも後方の所定領域を撮影して得られた画像を画像解析することにより、荷物を持っている乗員を示す荷物画像であるかを判別する。画像が荷物画像であると判別した場合、認識部51は、荷物画像から荷物の最大長さを特定し、荷物の最大長さを示す荷物情報とともに、乗員が持っている荷物を認識したことを示す認識情報を制御部30に出力する。
【0033】
なお、認識部51の検出は、常時行っていてもよいし、車両50に乗員が近づいたときに行ってもよい。車両50に乗員が近づいたか否かの判定は、例えば、乗員が所持する車両50のキーリモコンの電波に基づいて車両50に近づいたか否かを判定すればよい。
【0034】
シート10は、車両50の後部に位置する荷室52の前に配置されている。シート10は、運転席や助手席などの前列シートFSの後ろに配置されている。車両50は、5ドアタイプの車両であり、車両50の左右に位置する合計4つの図示せぬドアと、荷室52の後ろに位置するバックドア53とを備えている。
【0035】
シート10は、シートクッション11と、シートバック12と、ヘッドレスト13とを備えている。シートクッション11、シートバック12およびヘッドレスト13は、それぞれ、骨格を構成するフレームと、フレームを覆うパッドと、パッドを覆う表皮とを有している。
【0036】
シートバック12は、シートクッション11に回動可能に支持されている。シート10は、図示せぬスライドレールにより、前後方向に移動可能となっている。シート10は、シートバック12を回動させる図示せぬモータ等の第1駆動源を備えている。シート10または車両50は、シート10を前後方向に移動させる図示せぬモータ等の第2駆動源を備えている。第1駆動源および第2駆動源は、制御部30によって制御される。
【0037】
シート10は、図1に示す通常状態と、図2に示す収納状態とに切替可能となっている。通常状態は、乗員が着座可能な状態、つまり、シートクッション11に対してシートバック12が起立した状態であり、シート10が最も前方の位置以外の位置に位置している状態をいう。収納状態は、通常状態よりも車室内の収納空間を大きくする状態である。本実施形態では、収納状態は、シートバック12がシートクッション11と対面するように折り畳まれ、かつ、シート10が最も前方の位置に配置された状態をいう。
【0038】
障害物検出センサ20は、通常状態から収納状態に切り替わるまでのシート10の軌跡内にある障害物を検出するセンサである。本実施形態では、障害物検出センサ20は、シートクッション11の表皮とパッドの間に配置され、シートクッション11の座面上の物の有無を検出する。つまり、障害物検出センサ20は、通常状態から収納状態に切り替わるまでのシートバック12の回動軌跡内にある障害物を検出可能となっている。
【0039】
障害物検出センサ20は、例えば、圧力センサである。本実施形態では、障害物検出センサ20は、シートに乗員が座っているか否かを検出するシートベルトリマインダ用のセンサとしても利用されている。
【0040】
制御部30は、図示しないCPU、ROM、RAM、書換可能な不揮発性メモリ等を有し、予め記憶されたプログラムに基づいて処理を実行する。制御部30は、乗員が所持可能な携帯端末の一例としてのスマートフォンSPと通信可能となっている。
【0041】
制御部30は、車両50に設けられていてもよいし、シート10に設けられていてもよい。なお、制御部30とスマートフォンSPとを通信可能にする設定は、乗員によって制御部30およびスマートフォンSPに対して予め行われているものとする。
【0042】
制御部30は、シート10の状態を通常状態から収納状態に変更するシート収納処理を実行可能となっている。具体的に、制御部30は、認識部51からの情報に基づいて、シート収納処理の実行の可否を決定する機能を有する。詳しくは、制御部30は、認識部51から認識情報と荷物情報を受信すると、荷物の最大長さが所定値よりも大きいか否かを判定する。制御部30は、荷物の最大長さが、所定値よりも大きいと判定した場合にシート収納処理を実行することを決定し、所定値以下であると判定した場合にはシート収納処理を実行しない。ここで、所定値は、シート10の状態が通常状態であり、シート10の位置が最も後方の位置であるときの荷室長であってもよいし、荷室幅であってもよいし、立方体状の荷室空間の対角線の長さであってもよい。
【0043】
制御部30は、シート収納処理を実行することを決定した場合には、シート収納処理を開始する前に、障害物検出センサ20からの情報に基づいてシート10の軌跡内に障害物があるか否かを判定する機能を有する。制御部30は、障害物がないと判定した場合には、シート収納処理を開始し、障害物があると判定した場合には、シート収納処理を開始しない。
【0044】
制御部30は、障害物があると判定してシート収納処理を開始しないことを決定した場合には、シート収納処理が実行されないことを示す非実行情報を、スマートフォンSPによって乗員に報知する機能を有する。非実行情報としては、例えば、スマートフォンSPのスピーカから発せられる「シート収納を行いませんでした。」といった音声の情報であってもよいし、警告音などの音情報であってもよいし、スマートフォンSPの画面に表示されるメッセージや画面の色を赤くするなどの警告表示などの画像情報であってもよい。
【0045】
制御部30は、障害物がないと判定してシート収納処理を開始することを決定した場合には、シート収納処理が実行されることを示す実行情報を、スマートフォンSPによって乗員に報知する機能を有する。実行情報としては、例えば、スマートフォンSPのスピーカから発せられる「シート収納を行いました。」といった音声の情報であってもよいし、警告音などの音情報であってもよいし、スマートフォンSPの画面に表示されるメッセージや画面の色を青くするなどの成功表示などの画像情報であってもよい。
【0046】
なお、収納状態から通常状態へ戻す場合には、例えば、制御部30が、乗員からの要求によって、シート10を動作させればよい。乗員からの要求は、例えば、車内に設けられた操作部を乗員が操作することで制御部30に出力されてもよいし、乗員がスマートフォンSPを操作することで制御部30に出力されてもよい。なお、スマートフォンSPの操作は、乗員の声による操作であってもよい。また、乗員が、リクライニング機構を動作させるレバーやスライド移動のロックを解除するレバーなどを操作することで、手動で収納状態から通常状態へ戻してもよい。
【0047】
次に、制御部30の動作について詳細に説明する。
図3に示すように、制御部30は、シート10の状態が収納状態であるか否かを判定する(S1)。ステップS1において収納状態であると判定した場合には(Yes)、制御部30は、本処理を終了する。
【0048】
ステップS1において収納状態でないと判定した場合には(No)、制御部30は、認識部51が乗員の荷物を認識したか否かを判定する(S2)。詳しくは、制御部30は、ステップS2において、認識部51から認識情報および荷物情報を取得したか否かを判定する。
【0049】
ステップS2において荷物を認識していないと判定した場合には(No)、制御部30は、本処理を終了する。ステップS2において荷物を認識したと判定した場合には(Yes)、制御部30は、荷物の最大長さが所定値より大きいか否かを判定する(S3)。
【0050】
ステップS3において荷物の最大長さが所定値より大きくないと判定した場合には(No)、制御部30は、シート収納処理を実行しないことを決定して、本処理を終了する。ステップS3において荷物の最大長さが所定値より大きいと判定した場合には(Yes)、制御部30は、シート収納処理を実行することを決定する(S4)。
【0051】
ステップS4の後、制御部30は、障害物検出センサ20からの情報に基づいて、シート10の移動軌跡内に障害物がないか否かを判定する(S5)。ステップS5において障害物がないと判定した場合には(Yes)、制御部30は、実行情報をスマートフォンSPに送信する(S6)。ステップS6の後、制御部30は、シート収納処理を実行して(S7)、本処理を終了する。ステップS5において障害物があると判定した場合には(No)、制御部30は、非実行情報をスマートフォンSPに送信し(S8)、シート収納処理を実行することなく、本処理を終了する。
【0052】
次に、制御部30の動作の具体例について説明する。
図4(a)~(c)に示すように、乗員が荷物を持って車両50に近づくと、認識部51は、乗員の持っている荷物を認識して、荷物の大きさを特定し、認識情報と荷物情報を制御部30に送信する。図4(a)に示すように、乗員の荷物が鞄などの小さい荷物である場合には、制御部30は、荷物情報に基づいて、荷物の最大長さが所定値よりも小さいと判定して、シート収納処理を実行しない。
【0053】
図4(b),(c)に示すように、乗員の荷物がスキー板などの大きな荷物である場合には、制御部30は、荷物情報に基づいて、荷物の最大長さが所定値よりも大きいと判定して、シート収納処理を実行することを決定する。次いで、制御部30は、シート収納処理を開始する前に、障害物検出センサ20からの情報に基づいて、シートバック12の回動軌跡上に障害物がないか否かを判定する。
【0054】
図4(b)に示すように、シートバック12の回動軌跡上に障害物がない場合には、制御部30は、シート収納処理を実行して、シート10を収納状態に切り替える。具体的には、制御部30は、シートバック12を前に折り畳んだ後、シート10を前方に移動させる。また、この際、制御部30は、実行情報を乗員のスマートフォンSPに送信し、スマートフォンSPは、実行情報を音声、画像、振動等により乗員に報知する。
【0055】
ここで、制御部30からスマートフォンSPに送信する実行情報は、例えば、シート収納処理を実行することを示すフラグなどの情報であればよい。この場合、スマートフォンSPは、制御部30から送られてくる情報を受けると、「シート収納を行いました。」といった音声の情報などの実行情報を乗員に報知する。
【0056】
図4(c)に示すように、シートバック12の回動軌跡上に人などの障害物がある場合には、制御部30は、シート収納処理を実行することを決定したのにも関わらず、シート収納処理を実行しない。また、この際、制御部30は、非実行情報を乗員のスマートフォンSPに送信し、スマートフォンSPは、非実行情報を音声、画像、振動等により乗員に報知する。
【0057】
ここで、制御部30からスマートフォンSPに送信する非実行情報は、例えば、シート収納処理を実行しないことを示すフラグなどの情報であればよい。この場合、スマートフォンSPは、制御部30から送られてくる情報を受けると、「シート収納を行いませんでした。」といった音声の情報などの非実行情報を乗員に報知する。
【0058】
以上によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
シート収納処理を開始する前に、障害物検出センサ20からの情報に基づいてシート10の移動軌跡内に障害物があるか否かを判定し、障害物があると判定した場合には、シート収納処理を開始しないので、シート収納処理の実行によって動作するシート10の動きが障害物で規制されるのを抑制することができる。そのため、シート10を動作させるためのモータ等の駆動源に負荷がかかるのを抑制することができる。
【0059】
障害物検出センサ20を、シートベルトリマインダのセンサと兼用するので、コストの低下を図ることができる。
【0060】
収納状態において、シートバック12がシートクッション11と対面するように折り畳まれるので、通常状態よりも車室内の収納空間を大きくすることができる。
【0061】
車両50の後部に位置する荷室52の前に配置されるシート10が、収納状態において、通常状態よりも前に配置されるので、通常状態よりも荷室スペースを大きくすることができる。
【0062】
シート10の移動軌跡上に障害物がある場合には、非実行情報が乗員に報知されるので、車両50の外にいる乗員が、非実行情報の報知に基づいて、シート10が収納状態になっていないことを車両50のバックドア53を開ける前に知ることができる。そのため、乗員は、車両50のバックドア53を開ける前に、持っている荷物を地面に降ろすことができる。
【0063】
シート10の移動軌跡上に障害物がない場合には、実行情報が乗員に報知されるので、車両50の外にいる乗員が、実行情報の報知に基づいて、シート10が収納状態になっていることを車両50のバックドア53を開ける前に知ることができる。そのため、乗員は、荷物を持ったまま安心して車両50のバックドア53を開けることができる。
【0064】
乗員が携帯するスマートフォンSPによって非実行情報または実行情報を報知するので、例えば車両の内部スピーカやルームランプ等によって非実行情報または実行情報を報知する場合と比べ、非実行情報または実行情報を乗員が確認しやすい。
【0065】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
前記実施形態では、収納状態を、シートバックが折り畳まれ、かつ、シートが最も前方の位置に配置された状態としたが、本発明はこれに限定されない。収納状態において、シートバックが折り畳まれた状態のシートが、床に形成された凹部に入っていてもよい。詳しくは、シートバックが折り畳まれた状態のシートが、前方および下方に移動可能に構成されており、通常状態から収納状態に切り替えられる過程において、シートバックが折り畳まれた後、シートが前方および下方に移動して凹部に収納されてもよい。
【0066】
また、本発明の対象となるシートは、後席に限らず、運転席や助手席などの前席であってもよい。この場合、シートバックが折り畳まれ、かつ、通常状態と前後方向の位置が同じ状態を、収納状態としてもよい。
【0067】
また、車両のシートが3列仕様の場合には、2列目のシートがヒップアップまたは前方にスライドすることで、通常状態から収納状態に切り替えられてもよい。ここで、ヒップアップとは、シートクッションの後部が通常状態よりも上に位置するように、シートの前方および下方に位置する回動軸を中心にシートが回動した状態をいう。
【0068】
本発明を1列目、2列目のシートに適用する場合には、認識部の検出対象を、車両の左右外側の所定領域としてもよい。また、この場合、乗員は、サイドドアを開けることで、荷物を車内に置くことができる。また、2列目のシートがヒップアップまたは前方にスライドする場合には、乗員は、サイドドアを開けた後、後ろの荷室に荷物を置くこともできる。
【0069】
シート収納処理は、複数のシートに対して行うこともできる。例えば、前記実施形態のような車両のシートが2列仕様である場合には、前席である助手席のシートバックを折り畳んで収納状態とし、後席のシートバックを折り畳んで、かつ、後席を前に移動させることで収納状態としてもよい。この場合には、サーフボードなどのさらに大きな荷物を車内に積み込むことができる。また、複数のシートに対してシート収納処理を行う場合には、荷物の大きさや車外にいる乗員の位置などに応じて、前席または後席のみを収納状態にしたり、前席と後席をともに収納状態にしたりすることができる。
【0070】
具体的には、制御部は、荷物を持った乗員が車両の後ろに位置し、かつ、荷物の大きさが第1閾値より大きい場合には、後席のみを収納状態にする。また、制御部は、荷物を持った乗員が車両の前席に対応したサイドドアの横に位置し、かつ、荷物の大きさが第1閾値より大きい場合には、前席のみを収納状態にする。また、制御部は、荷物の大きさが第1閾値より大きな第2閾値よりも大きい場合には、乗員の位置に関わらず、前席および後席をともに収納状態にする。
【0071】
障害物検出センサは、カメラ、電波センサ、静電容量センサなどであってもよい。カメラや電波センサを用いる場合には、シートのスライド移動の範囲にある障害物を検出することができる。また、障害物検出センサは、カメラなどのセンサを複数組み合わせることで構成してもよい。これによれば、より正確に障害物を検出することができる。
【0072】
認識部は、前記実施形態のように車両の内部に設けられていてもよいし、車両の外側に設けられていてもよい。認識部において、例えば荷物の認識ができないなどのエラーが生じた場合には、制御部は、シート収納処理を実行することを禁止してもよい。
【0073】
シートを動作させる駆動源、制御部、障害物検出センサに異常が生じた場合には、制御部は、リクライニング処理を実行することを禁止してもよい。
【0074】
非実行情報・実行情報の報知は、車両の内部スピーカやルームランプ、車両の外側に設置されたライトなどで行ってもよい。
【0075】
シート収納処理の実行によるシートの移動中にシートが障害物に引っ掛かった場合には、制御部は、シートの移動を中止して、元の状態に復帰させてもよい。
【0076】
シート収納処理を実行するモードと、シート収納処理を実行しないモードが、乗員によって切替可能となっていてもよい。
【0077】
制御部は、シートをコントローラとして利用するアプリケーションプログラムを実行可能であってもよい。この場合、制御部は、シートが収納状態である場合には、アプリケーションプログラムの実行を禁止してもよい。
【0078】
携帯端末は、タブレット端末などのスマートフォンSP以外の端末であってもよい。
【0079】
前記した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0080】
1 シートシステム
10 シート
20 障害物検出センサ
30 制御部
50 車両
51 認識部
図1
図2
図3
図4