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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147750
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】シートシステム
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/90 20180101AFI20220929BHJP
   B60N 2/06 20060101ALI20220929BHJP
   B60N 2/22 20060101ALN20220929BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/06
B60N2/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021049132
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 生佳
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087AA02
3B087BA02
3B087BB02
3B087BD03
3B087DE08
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】リクライニング処理の実行によるシートの動作が障害物で規制されるのを抑制すること。
【解決手段】シートシステムは、自動運転と非自動運転を切替可能な車両に搭載され、シートクッションと回動可能なシートバックを備え、通常状態と、通常状態よりもシートバックが後ろに倒れたリラックス状態に切替可能なシートと、通常状態からリラックス状態に切り替わるまでのシートの軌跡内にある障害物を検出する障害物検出センサと、シートの状態を通常状態からリラックス状態に変更するリクライニング処理の実行の可否を決定する制御部を備える。制御部は、自動運転への切替または乗員の要求によってリクライニング処理の実行を決定すると(S4)、リクライニング処理の開始前に、シートの軌跡内に障害物があるか否かを判定し(S5)、障害物がない場合にはリクライニング処理を開始し、障害物がある場合にはリクライニング処理を開始しない。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転と非自動運転とを切替可能な車両に搭載されるシートであって、シートクッションと、前記シートクッションに対して回動可能なシートバックとを備え、乗員が着座可能な通常状態と、前記通常状態よりもシートバックが後ろに倒れたリラックス状態と、に切替可能なシートと、
前記通常状態から前記リラックス状態に切り替わるまでの前記シートの軌跡内にある障害物を検出する障害物検出センサと、
前記シートの状態を前記通常状態から前記リラックス状態に変更するリクライニング処理を実行可能であり、前記リクライニング処理の実行の可否を決定する制御部と、を備えたシートシステムであって、
前記制御部は、
前記非自動運転から前記自動運転への切替によって、または、乗員の要求によって前記リクライニング処理を実行することを決定した場合には、前記リクライニング処理を開始する前に、前記障害物検出センサからの情報に基づいて前記軌跡内に障害物があるか否かを判定し、
障害物がないと判定した場合には、前記リクライニング処理を開始し、
障害物があると判定した場合には、前記リクライニング処理を開始しないことを特徴とするシートシステム。
【請求項2】
前記シートの後ろに配置される後部シートをさらに備え、
前記障害物検出センサは、前記後部シートの座面上の物の有無を検出することを特徴とする請求項1に記載のシートシステム。
【請求項3】
前記リラックス状態において、前記シートは、前記通常状態よりも後ろに配置されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシートシステム。
【請求項4】
前記制御部は、前記障害物があると判定して前記リクライニング処理を開始しないことを決定した場合には、前記リクライニング処理が実行されないことを示す非実行情報を乗員に報知することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のシートシステム。
【請求項5】
前記制御部は、乗員が所持可能な携帯端末によって前記非実行情報を報知することを請求項4に記載のシートシステム。
【請求項6】
前記制御部は、前記障害物がないと判定して前記リクライニング処理を開始することを決定した場合には、前記リクライニング処理が実行されることを示す実行情報を乗員に報知することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のシートシステム。
【請求項7】
前記制御部は、乗員が所持可能な携帯端末によって前記実行情報を報知することを請求項6に記載のシートシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートの状態を変更させる制御部を備えたシートシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シートシステムとして、非自動運転から自動運転に切り替わった後に、自動で、または、乗員からの要求によって、シートバックを後ろに傾動させるリクライニング処理を実行するものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-138721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、リクライニング処理が実行された際に、動作対象となるシートバックの回動軌跡上に障害物があると、シートバックの回動が障害物で規制されてしまい、シートバックを回動させるモータ等に余計な負荷がかかるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、リクライニング処理の実行によって動作するシートの動きが障害物で規制されるのを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係るシートシステムは、自動運転と非自動運転とを切替可能な車両に搭載されるシートであって、シートクッションと、前記シートクッションに対して回動可能なシートバックとを備え、乗員が着座可能な通常状態と、前記通常状態よりもシートバックが後ろに倒れたリラックス状態と、に切替可能なシートと、前記通常状態から前記リラックス状態に切り替わるまでの前記シートの軌跡内にある障害物を検出する障害物検出センサと、前記シートの状態を前記通常状態から前記リラックス状態に変更するリクライニング処理を実行可能であり、前記リクライニング処理の実行の可否を決定する制御部と、を備える。
前記制御部は、前記非自動運転から前記自動運転への切替によって、または、乗員の要求によって前記リクライニング処理を実行することを決定した場合には、前記リクライニング処理を開始する前に、前記障害物検出センサからの情報に基づいて前記軌跡内に障害物があるか否かを判定し、障害物がないと判定した場合には、前記リクライニング処理を開始し、障害物があると判定した場合には、前記リクライニング処理を開始しない。
【0007】
この構成によれば、リクライニング処理を開始する前に、障害物検出センサからの情報に基づいて軌跡内に障害物があるか否かを判定し、障害物があると判定した場合には、リクライニング処理を開始しないので、リクライニング処理の実行によって動作するシートの動きが障害物で規制されるのを抑制することができる。
【0008】
また、前記シートシステムは、前記シートの後ろに配置される後部シートをさらに備え、前記障害物検出センサは、前記後部シートの座面上の物の有無を検出してもよい。
【0009】
この構成によれば、障害物検出センサとして、例えば後部シートに乗員が座っているか否かを検出する、シートベルトリマインダのセンサと兼用することができるので、コストの低下を図ることができる。
【0010】
また、前記リラックス状態において、前記シートは、前記通常状態よりも後ろに配置されていてもよい。
【0011】
この構成によれば、通常状態よりもシートの前の空間を大きくすることができるので、乗員をよりリラックスさせることができる。
【0012】
また、前記制御部は、前記障害物があると判定して前記リクライニング処理を開始しないことを決定した場合には、前記リクライニング処理が実行されないことを示す非実行情報を乗員に報知してもよい。
【0013】
この構成によれば、リクライニング処理が実行されないことを乗員が知ることができる。
【0014】
また、前記制御部は、乗員が所持可能な携帯端末によって前記非実行情報を報知してもよい。
【0015】
この構成によれば、乗員が携帯する携帯端末によって非実行情報を報知するので、例えば車両の内部スピーカによって非実行情報を報知する場合と比べ、車両の内部スピーカで流している音楽を一旦止めるなどの制御を行う必要がない。
【0016】
また、前記制御部は、前記障害物がないと判定して前記リクライニング処理を開始することを決定した場合には、前記リクライニング処理が実行されることを示す実行情報を乗員に報知してもよい。
【0017】
この構成によれば、リクライニング処理が実行されることを乗員が知ることができる。
【0018】
また、前記制御部は、乗員が所持可能な携帯端末によって前記実行情報を報知してもよい。
【0019】
この構成によれば、乗員が携帯する携帯端末によって実行情報を報知するので、例えば車両の内部スピーカによって実行情報を報知する場合と比べ、車両の内部スピーカで流している音楽を一旦止めるなどの制御を行う必要がない。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、リクライニング処理の実行によって動作するシートの動きが障害物で規制されるのを抑制することができる。
【0021】
また、障害物検出センサを、シートの後ろに配置される後部シートの座面上の物の有無を検出するセンサとすることで、例えば後部シートに乗員が座っているか否かを検出する、シートベルトリマインダのセンサと兼用することができるので、コストの低下を図ることができる。
【0022】
また、リラックス状態においてシートが通常状態よりも後ろに配置されることで、通常状態よりもシートの前の空間を大きくすることができるので、乗員をよりリラックスさせることができる。
【0023】
また、リクライニング処理が実行されないことを示す非実行情報を乗員に報知する構成とすることで、リクライニング処理が実行されないことを乗員が知ることができる。
【0024】
また、乗員が所持可能な携帯端末によって非実行情報を報知する構成とすることで、例えば車両の内部スピーカによって非実行情報を報知する場合と比べ、車両の内部スピーカで流している音楽を一旦止めるなどの制御を行う必要がない。
【0025】
また、リクライニング処理が実行されることを示す実行情報を乗員に報知する構成とすることで、リクライニング処理が実行されることを乗員が知ることができる。
【0026】
また、乗員が所持可能な携帯端末によって実行情報を報知する構成とすることで、例えば車両の内部スピーカによって実行情報を報知する場合と比べ、車両の内部スピーカで流している音楽を一旦止めるなどの制御を行う必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】一実施形態に係るシートシステムを示す図である。
図2】シートが通常状態からリラックス状態に切り替わった状態を示す図である。
図3】制御部の動作を示すフローチャートである。
図4】制御部の動作の具体例を示す図(a),(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付の図面を参照しながら発明の一実施形態について説明する。
図1に示すように、シートシステム1は、シート10と、後部シートRSと、障害物検出センサ20と、制御部30とを備えている。
【0029】
シート10および後部シートRSは、自動運転と非自動運転とを切替可能な車両50に搭載されている。車両50のシート構成は2列仕様であり、シート10は、運転席や助手席などの1列目のシートである。後部シートRSは、2列目のシートであり、シート10の後ろに配置されている。
【0030】
シート10および後部シートRSは、それぞれ、シートクッション11と、シートバック12と、ヘッドレスト13とを備えている。シートクッション11、シートバック12およびヘッドレスト13は、それぞれ、骨格を構成するフレームと、フレームを覆うパッドと、パッドを覆う表皮とを有している。
【0031】
シートバック12は、シートクッション11に回動可能に支持されている。シート10は、図示せぬスライドレールにより、前後方向に移動可能となっている。シート10は、シートバック12を回動させる図示せぬモータ等の第1駆動源を備えている。シート10または車両50は、シート10を前後方向に移動させる図示せぬモータ等の第2駆動源を備えている。第1駆動源および第2駆動源は、制御部30によって制御される。
【0032】
シート10は、図1に示す通常状態と、図2に示すリラックス状態とに切替可能となっている。通常状態は、乗員が着座可能な状態、つまり、シートクッション11に対してシートバック12が起立した状態であり、シート10が最も後方の位置以外の位置に位置している状態をいう。リラックス状態は、通常状態よりもシートバック12が後ろに倒れ、かつ、シート10が、通常状態よりも後ろ、詳しくは最も後方の位置に配置された状態をいう。そして、リラックス状態においては、シート10のシートバック12が、後部シートRSのシートクッション11の上に位置している。
【0033】
障害物検出センサ20は、通常状態からリラックス状態に切り替わるまでのシート10の軌跡内にある障害物を検出するセンサである。本実施形態では、障害物検出センサ20は、後部シートRSのシートクッション11の表皮とパッドの間に配置され、シートクッション11の座面上の物の有無を検出する。
【0034】
障害物検出センサ20は、例えば、圧力センサである。本実施形態では、障害物検出センサ20は、シートに乗員が座っているか否かを検出するシートベルトリマインダ用のセンサとしても利用されている。
【0035】
制御部30は、図示しないCPU、ROM、RAM、書換可能な不揮発性メモリ等を有し、予め記憶されたプログラムに基づいて処理を実行する。制御部30は、乗員が所持可能な携帯端末の一例としてのスマートフォンSPと通信可能となっている。
【0036】
制御部30は、車両50に設けられていてもよいし、シート10に設けられていてもよい。なお、制御部30とスマートフォンSPとを通信可能にする設定は、乗員によって制御部30およびスマートフォンSPに対して予め行われているものとする。
【0037】
制御部30は、シート10の状態を通常状態からリラックス状態に変更するリクライニング処理を実行可能となっている。具体的に、制御部30は、リクライニング処理の実行の可否を決定する機能を有する。詳しくは、制御部30は、非自動運転から自動運転への切替によって、または、乗員の要求によって、リクライニング処理を実行することを決定する。
【0038】
本実施形態では、制御部30は、車両50の図示せぬECU(Electronic Control Unit)から、非自動運転から自動運転に切り替わったことを示す情報を受けたという第1条件と、乗員の要求があったという第2条件が満たされた場合に、リクライニング処理を実行することを決定することとする。なお、乗員の要求は、例えば、車内に設けられた操作部を乗員が操作することで制御部30に出力されてもよいし、乗員がスマートフォンSPを操作することで制御部30に出力されてもよい。なお、スマートフォンSPの操作は、乗員の声による操作であってもよい。
【0039】
制御部30は、リクライニング処理を実行することを決定した場合には、リクライニング処理を開始する前に、障害物検出センサ20からの情報に基づいてシート10の軌跡内に障害物があるか否かを判定する機能を有する。制御部30は、障害物がないと判定した場合には、リクライニング処理を開始し、障害物があると判定した場合には、リクライニング処理を開始しない。
【0040】
制御部30は、障害物があると判定してリクライニング処理を開始しないことを決定した場合には、リクライニング処理が実行されないことを示す非実行情報を、スマートフォンSPによって乗員に報知する機能を有する。非実行情報としては、例えば、スマートフォンSPのスピーカから発せられる「シートをリラックスモードに変更できませんでした。」といった音声の情報であってもよいし、警告音などの音情報であってもよいし、スマートフォンSPの画面に表示されるメッセージや画面の色を赤くするなどの警告表示などの画像情報であってもよい。
【0041】
制御部30は、障害物がないと判定してリクライニング処理を開始することを決定した場合には、リクライニング処理が実行されることを示す実行情報を、スマートフォンSPによって乗員に報知する機能を有する。実行情報としては、例えば、スマートフォンSPのスピーカから発せられる「シートをリラックスモードに変更しました。」といった音声の情報であってもよいし、警告音などの音情報であってもよいし、スマートフォンSPの画面に表示されるメッセージや画面の色を青くするなどの成功表示などの画像情報であってもよい。
【0042】
なお、リラックス状態から通常状態へ戻す場合には、例えば、制御部30が、乗員からの要求によって、シート10を動作させればよい。乗員からの要求は、例えば、車内に設けられた操作部を乗員が操作することで制御部30に出力されてもよいし、乗員がスマートフォンSPを操作することで制御部30に出力されてもよい。また、乗員が、リクライニング機構を動作させるレバーやスライド移動のロックを解除するレバーなどを操作することで、手動でリラックス状態から通常状態へ戻してもよい。
【0043】
次に、制御部30の動作について詳細に説明する。
図3に示すように、制御部30は、図示せぬECUからの情報に基づいて、自動運転中であるか否かを判定する(S1)。ステップS1において自動運転中でないと判定した場合には(No)、制御部30は、本処理を終了する。
【0044】
ステップS1において自動運転中であると判定した場合には(Yes)、制御部30は、乗員から、シート10の状態をリラックス状態に切り替えるための要求(情報)があるか否かを判定する(S2)。ステップS2において要求がないと判定した場合には(No)、制御部30は、本処理を終了する。ステップS2において要求があると判定した場合には(Yes)、制御部30は、シート10の状態がリラックス状態であるか否かを判定する(S3)。
【0045】
ステップS3においてリラックス状態であると判定した場合には(Yes)、制御部30は、リクライニング処理を実行しないことを決定して、本処理を終了する。ステップS3においてリラックス状態でないと判定した場合には(No)、制御部30は、リクライニング処理を実行することを決定する(S4)。
【0046】
ステップS4の後、制御部30は、障害物検出センサ20からの情報に基づいて、シート10の移動軌跡内に障害物がないか否かを判定する(S5)。ステップS5において障害物がないと判定した場合には(Yes)、制御部30は、実行情報をスマートフォンSPに送信する(S6)。ステップS6の後、制御部30は、リクライニング処理を実行して(S7)、本処理を終了する。ステップS5において障害物があると判定した場合には(No)、制御部30は、非実行情報をスマートフォンSPに送信し(S8)、リクライニング処理を実行することなく、本処理を終了する。
【0047】
次に、制御部30の動作の具体例について説明する。
図1に示すように、制御部30は、リクライニング処理を実行することを決定した場合には、リクライニング処理を開始する前に、障害物検出センサ20からの情報に基づいて、シートバック12の回動軌跡上に障害物がないか否かを判定する。
【0048】
図1に示すようにシート10の移動軌跡上に障害物がない場合には、図4(a)に示すように、制御部30は、リクライニング処理を実行して、シート10をリラックス状態に切り替える。具体的には、制御部30は、シートバック12を後ろに倒した後、シート10を後方に移動させる。また、この際、制御部30は、実行情報を乗員のスマートフォンSPに送信し、スマートフォンSPは、実行情報を音声、画像、振動等により乗員に報知する。
【0049】
ここで、制御部30からスマートフォンSPに送信する実行情報は、例えば、リクライニング処理を実行することを示すフラグなどの情報であればよい。この場合、スマートフォンSPは、制御部30から送られてくる情報を受けると、「シートをリラックスモードに変更しました。」といった音声の情報などの実行情報を乗員に報知する。
【0050】
図4(b)に示すように、シート10の移動軌跡上、詳しくは後部シートRSのシートクッション11の座面に人などの障害物がある場合には、制御部30は、リクライニング処理を実行することを決定したのにも関わらず、リクライニング処理を実行しない。また、この際、制御部30は、非実行情報を乗員のスマートフォンSPに送信し、スマートフォンSPは、非実行情報を音声、画像、振動等により乗員に報知する。
【0051】
ここで、制御部30からスマートフォンSPに送信する非実行情報は、例えば、リクライニング処理を実行しないことを示すフラグなどの情報であればよい。この場合、スマートフォンSPは、制御部30から送られてくる情報を受けると、「シートをリラックスモードに変更できませんでした。」といった音声の情報などの非実行情報を乗員に報知する。
【0052】
以上によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
リクライニング処理を開始する前に、障害物検出センサ20からの情報に基づいてシート10の移動軌跡内に障害物があるか否かを判定し、障害物があると判定した場合には、リクライニング処理を開始しないので、リクライニング処理の実行によって動作するシート10の動きが障害物で規制されるのを抑制することができる。そのため、シート10を動作させるためのモータ等の駆動源に負荷がかかるのを抑制することができる。
【0053】
障害物検出センサ20を、シートベルトリマインダのセンサと兼用するので、コストの低下を図ることができる。
【0054】
リラックス状態においてシート10が通常状態よりも後ろに配置されることで、通常状態よりもシート10の前の空間を大きくすることができるので、乗員をよりリラックスさせることができる。
【0055】
シート10の移動軌跡上に障害物がある場合に非実行情報が乗員に報知されるので、リクライニング処理が実行されないことを乗員が知ることができる。
【0056】
シート10の移動軌跡上に障害物がない場合には、実行情報が乗員に報知されるので、リクライニング処理が実行されることを乗員が知ることができる。
【0057】
乗員が携帯するスマートフォンSPによって非実行情報または実行情報を報知するので、例えば車両50の内部スピーカによって非実行情報または実行情報を報知する場合と比べ、車両50の内部スピーカで流している音楽を一旦止めるなどの制御を行う必要がない。
【0058】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
前記実施形態では、リラックス状態を、シートバックが後ろに倒され、かつ、シートが最も後方の位置に配置された状態としたが、本発明はこれに限定されない。例えば、リラックス状態は、通常状態よりもシートバックが倒され、かつ、通常状態と前後方向の位置が同じ状態であってもよい。
【0059】
また、本発明の対象となるシートは、前席に限らず、後席であってもよい。車両のシートが3列仕様の場合には、本発明の対象となるシートは、3列目のシートであってもよい。3列目のシートなどの、車両の後部の荷室の前にあるシートを、リクライニング処理の対象とする場合には、障害物検出センサで荷室内にあるものを検出してもよい。
【0060】
障害物検出センサは、カメラ、電波センサ、静電容量センサなどであってもよい。カメラや電波センサを用いる場合には、シートのスライド移動の範囲にある障害物を検出することができる。また、障害物検出センサは、カメラなどのセンサを複数組み合わせることで構成してもよい。これによれば、より正確に障害物を検出することができる。
【0061】
非実行情報・実行情報の報知は、車両の内部スピーカやルームランプなどで行ってもよい。
【0062】
リクライニング処理の実行によるシートの移動中にシートが障害物に引っ掛かった場合には、制御部は、シートの移動を中止して、元の状態に復帰させてもよい。
【0063】
携帯端末は、タブレット端末などのスマートフォンSP以外の端末であってもよい。
【0064】
シートを動作させる駆動源、制御部、障害物検出センサに異常が生じた場合には、制御部は、リクライニング処理を実行することを禁止してもよい。
【0065】
前記実施形態では、第1条件と第2条件が満たされた場合に、リクライニング処理を実行することを決定したが、本発明はこれに限定されない。例えば、制御部は、車両のECUから、非自動運転から自動運転に切り替わったことを示す情報を受けた場合に、乗員の要求がなくても、リクライニング処理を実行することを決定することができる。また、制御部は、自動運転か非自動運転かに限らず、停車中も含め、乗員の要求があった場合に、リクライニング処理を実行することを決定することができる。
【0066】
車両のECUは、自動運転中において道路上に分離帯があるか否かを判定し、分離帯があると判定した場合に、シートの状態をリラックス状態に切り替えるため要求を制御部に出力するように構成されていてもよい。なお、制御部は、車両のECUであってもよい。この場合、制御部は、非自動運転から自動運転に切り替えられたという条件と、分離帯があるという条件が満たされた場合に、リクライニング処理を実行することを決定してもよい。
【0067】
シートは、第1状態と、第2状態とに切替可能であってもよい。障害物検出センサは、第1状態から第2状態に切り替わるまでのシートの軌跡内にある障害物を検出してもよい。制御部は、シートの状態を第1状態から第2状態に変更する姿勢変更処理を実行可能であってもよい。制御部は、姿勢変更処理を実行することを決定した場合には、姿勢変更処理を開始する前に、障害物検出センサからの情報に基づいてシートの軌跡内に障害物があるか否かを判定し、障害物がないと判定した場合には、姿勢変更処理を開始し、障害物があると判定した場合には、姿勢変更処理を開始しないように構成されていてもよい。
【0068】
前記した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 シートシステム
10 シート
11 シートクッション
12 シートバック
20 障害物検出センサ
30 制御部
50 車両
図1
図2
図3
図4