(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147752
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】シートシステム
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20220929BHJP
B60N 2/14 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021049134
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 生佳
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087AA02
3B087BA06
3B087DE08
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】シート向き変更処理の実行によって動作するシートの動きが障害物で規制されるのを抑制することを目的とする。
【解決手段】シートシステムは、鉛直方向に沿った軸を中心に回動可能であって、第1の向きと第2の向きとの間で回動するシートと、第1の向きから第2の向きに切り替わるまでのシートの軌跡内にある障害物を検出する障害物検出センサと、シートの向きを第1の向きから第2の向きに変更するシート向き変更処理を実行可能であり、シート向き変更処理の実行の可否を決定する制御部と、を備える。制御部は、シート向き変更処理を実行することを決定した場合には(S4)、シート向き変更処理を開始する前に、障害物検出センサからの情報に基づいて軌跡内に障害物があるか否かを判定し(S5)、障害物がないと判定した場合には、シート向き変更処理を開始し(S7)、障害物があると判定した場合には、シート向き変更処理を開始しない。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に沿った軸を中心に回動可能なシートであって、第1の向きと、前記第1の向きとは異なる第2の向きとの間で回動するシートと、
前記第1の向きから前記第2の向きに切り替わるまでの前記シートの軌跡内にある障害物を検出する障害物検出センサと、
前記シートの向きを前記第1の向きから前記第2の向きに変更するシート向き変更処理を実行可能であり、前記シート向き変更処理の実行の可否を決定する制御部と、を備えたシートシステムであって、
前記制御部は、
前記シート向き変更処理を実行することを決定した場合には、前記シート向き変更処理を開始する前に、前記障害物検出センサからの情報に基づいて前記軌跡内に障害物があるか否かを判定し、
障害物がないと判定した場合には、前記シート向き変更処理を開始し、
障害物があると判定した場合には、前記シート向き変更処理を開始しないことを特徴とするシートシステム。
【請求項2】
前記制御部は、
乗員同士がコミュニケーションを取りやすい状態にするべきか否かを判定可能であり、
乗員同士がコミュニケーションを取りやすい状態にするべきだと判定した場合には、前記シート向き変更処理を実行することを決定することを特徴とする請求項1に記載のシートシステム。
【請求項3】
前記シートは、自動運転で走行可能な車両に搭載され、
前記制御部は、
自動運転中における乗員からの要求に基づいて前記シート向き変更処理を実行することを決定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシートシステム。
【請求項4】
前記制御部は、前記障害物があると判定して前記シート向き変更処理を開始しないことを決定した場合には、前記シート向き変更処理が実行されないことを示す非実行情報を乗員に報知することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のシートシステム。
【請求項5】
前記制御部は、乗員が所持可能な携帯端末によって前記非実行情報を報知することを請求項4に記載のシートシステム。
【請求項6】
前記制御部は、前記障害物がないと判定して前記シート向き変更処理を開始することを決定した場合には、前記シート向き変更処理が実行されることを示す実行情報を乗員に報知することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のシートシステム。
【請求項7】
前記制御部は、乗員が所持可能な携帯端末によって前記実行情報を報知することを請求項6に記載のシートシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートの状態を変更させる制御部を備えたシートシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動運転中において、乗員同士がコミュニケーションを取りやすい状態にするべきか否かを判定し、するべきと判定した場合に、乗員同士が向き合うようにシートを回動させるシート向き変更処理を実行可能なものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、シート向き変更処理が実行された際に、動作対象となるシートの回動軌跡上に障害物があると、シートの回動が障害物で規制されてしまい、シートを回動させるモータ等に余計な負荷がかかるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、シート向き変更処理の実行によって動作するシートの動きが障害物で規制されるのを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係るシートシステムは、鉛直方向に沿った軸を中心に回動可能なシートであって、第1の向きと、前記第1の向きとは異なる第2の向きとの間で回動するシートと、前記第1の向きから前記第2の向きに切り替わるまでの前記シートの軌跡内にある障害物を検出する障害物検出センサと、前記シートの向きを前記第1の向きから前記第2の向きに変更するシート向き変更処理を実行可能であり、前記シート向き変更処理の実行の可否を決定する制御部と、を備える。
前記制御部は、前記シート向き変更処理を実行することを決定した場合には、前記シート向き変更処理を開始する前に、前記障害物検出センサからの情報に基づいて前記軌跡内に障害物があるか否かを判定し、障害物がないと判定した場合には、前記シート向き変更処理を開始し、障害物があると判定した場合には、前記シート向き変更処理を開始しない。
【0007】
この構成によれば、シート向き変更処理を開始する前に、障害物検出センサからの情報に基づいて軌跡内に障害物があるか否かを判定し、障害物があると判定した場合には、シート向き変更処理を開始しないので、シート向き変更処理の実行によって動作するシートの動きが障害物で規制されるのを抑制することができる。
【0008】
また、前記制御部は、乗員同士がコミュニケーションを取りやすい状態にするべきか否かを判定可能であり、乗員同士がコミュニケーションを取りやすい状態にするべきだと判定した場合には、前記シート向き変更処理を実行することを決定してもよい。
【0009】
また、前記シートは、自動運転で走行可能な車両に搭載され、前記制御部は、自動運転中における乗員からの要求に基づいて前記シート向き変更処理を実行することを決定してもよい。
【0010】
この構成によれば、非自動運転中、または、乗員から要求がない場合に、シートの向きが変更されるのを抑制することができる。
【0011】
また、前記制御部は、前記障害物があると判定して前記シート向き変更処理を開始しないことを決定した場合には、前記シート向き変更処理が実行されないことを示す非実行情報を乗員に報知してもよい。
【0012】
この構成によれば、シート向き変更処理が実行されないことを乗員が知ることができる。
【0013】
また、前記制御部は、乗員が所持可能な携帯端末によって前記非実行情報を報知してもよい。
【0014】
この構成によれば、乗員が携帯する携帯端末によって非実行情報を報知するので、例えば車両の内部スピーカによって非実行情報を報知する場合と比べ、車両の内部スピーカで流している音楽を一旦止めるなどの制御を行う必要がない。
【0015】
また、前記制御部は、前記障害物がないと判定して前記シート向き変更処理を開始することを決定した場合には、前記シート向き変更処理が実行されることを示す実行情報を乗員に報知してもよい。
【0016】
この構成によれば、シート向き変更処理が実行されることを乗員が知ることができる。
【0017】
また、前記制御部は、乗員が所持可能な携帯端末によって前記実行情報を報知してもよい。
【0018】
この構成によれば、乗員が携帯する携帯端末によって実行情報を報知するので、例えば車両の内部スピーカによって実行情報を報知する場合と比べ、車両の内部スピーカで流している音楽を一旦止めるなどの制御を行う必要がない。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、シート向き変更処理の実行によって動作するシートの動きが障害物で規制されるのを抑制することができる。
【0020】
また、自動運転中における乗員からの要求に基づいてシート向き変更処理を実行する構成とすることで、非自動運転中、または、乗員から要求がない場合に、シートの向きが変更されるのを抑制することができる。
【0021】
また、シート向き変更処理が実行されないことを示す非実行情報を乗員に報知する構成とすることで、シート向き変更処理が実行されないことを乗員が知ることができる。
【0022】
また、乗員が所持可能な携帯端末によって非実行情報を報知する構成とすることで、例えば車両の内部スピーカによって非実行情報を報知する場合と比べ、車両の内部スピーカで流している音楽を一旦止めるなどの制御を行う必要がない。
【0023】
また、シート向き変更処理が実行されることを示す実行情報を乗員に報知する構成とすることで、シート向き変更処理が実行されることを乗員が知ることができる。
【0024】
また、乗員が所持可能な携帯端末によって実行情報を報知する構成とすることで、例えば車両の内部スピーカによって実行情報を報知する場合と比べ、車両の内部スピーカで流している音楽を一旦止めるなどの制御を行う必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】一実施形態に係るシートシステムを示す図である。
【
図2】シートが第1の向きから第2の向きに切り替わった状態を示す図である。
【
図4】制御部の動作の具体例を示す図であり、助手席と2列目の2つのシートが対象シートとなり、2列目の2つのシートが回動対象シートとなる例を示す図である。
【
図5】シート向き変更処理が実行された状態を示す図である。
【
図6】障害物の存在によりシート向き変更処理が実行されなかった状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付の図面を参照しながら発明の一実施形態について説明する。
図1に示すように、シートシステム1は、シート10と、障害物検出センサ20と、制御部30とを備えている。
【0027】
シート10は、自動運転と非自動運転とを切替可能な車両50に搭載されている。車両50のシート構成は2列仕様であり、シート10は、1列目に2つ、2列目に2つ、それぞれ、左右に間隔を空けて並ぶように設けられている。以下の説明では、運転席を第1シート10A、助手席を第2シート10B、運転席の後ろの席を第3シート10C、助手席の後ろの席を第4シート10Dとも称する。
【0028】
シート10は、シートクッション11と、シートバック12と、ヘッドレスト13とを備えている。シートクッション11、シートバック12およびヘッドレスト13は、それぞれ、骨格を構成するフレームと、フレームを覆うパッドと、パッドを覆う表皮とを有している。
【0029】
シート10は、鉛直方向に沿った軸を中心に回動可能となっている。シート10は、図示せぬモータ等の駆動源によって、
図1に示す第1の向きと、
図2に示す第2の向きとの間で回動可能となっている。第1の向きは、シートバック12の座面が前を向く向きである。第2の向きは、シートバック12の座面が第1の向きよりも車両50の左右方向内側を向く向きである。
【0030】
障害物検出センサ20は、第1の向きから第2の向きに切り替わるまでのシート10の軌跡内にある障害物を検出するセンサである。本実施形態では、障害物検出センサ20は、車両50の天井であって、各シート10A~10Bの左右方向内側の空間(各シート10A~10Bの軌跡の範囲)を撮影可能なカメラとする。
【0031】
制御部30は、図示しないCPU、ROM、RAM、書換可能な不揮発性メモリ等を有し、予め記憶されたプログラムに基づいて処理を実行する。制御部30は、乗員が所持可能な携帯端末の一例としてのタブレット端末TBと通信可能となっている。
【0032】
制御部30は、車両50に設けられていてもよいし、シート10に設けられていてもよい。なお、制御部30とタブレット端末TBとを通信可能にする設定は、乗員によって制御部30およびタブレット端末TBに対して予め行われているものとする。また、制御部30は、各タブレット端末TBと各シート10を対応付けて記憶している。これらの対応付けの設定も、乗員によって制御部30に対して予め行われているものとする。
【0033】
制御部30は、各シート10A~10Dに対して、シート10の向きを第1の向きから第2の向きに変更するシート向き変更処理を実行可能となっている。具体的に、制御部30は、各シート10A~10Dに対して、シート向き変更処理の実行の可否を決定する機能を有する。詳しくは、制御部30は、第1条件と第2条件が満たされた場合に、シート向き変更処理を実行することを決定する。
【0034】
第1条件は、乗員同士がコミュニケーションを取りやすい状態にするべき、という条件である。具体的には、制御部30は、乗員同士がコミュニケーションを取りやすい状態にするべきか否かを判定可能であり、乗員同士がコミュニケーションを取りやすい状態にするべきだと判定した場合に、第1条件が満たされたと判定する。ここで、乗員同士がコミュニケーションを取りやすい状態にするべきかの判定は、例えば、複数のタブレット端末TBに略同一のコンテンツが表示されている場合に、略同一のコンテンツを表示しているタブレット端末TBを所持している乗員同士がコミュニケーションを取りやすい状態にすべきだと判定する方法が挙げられる。
【0035】
以下、各乗員が所持するタブレット端末TBで表示されたコンテンツに基づいてシート10を回動させるモードを、コミュニケーションモードとも称する。コミュニケーションモードの実行は、制御部30またはタブレット端末TBに対して予め行われる乗員によるモード選択によって、許可または禁止される。
【0036】
第2の条件は、自動運転中において乗員からの要求があるという条件である。本実施形態では、第2の条件は、自動運転中であるという条件と、コミュニケーションモードの実行が許可されているという条件を有する。なお、自動運転中であるかの判定は、車両50の図示せぬECU(Electronic Control Unit)から取得する、非自動運転から自動運転に切り替わったことを示す情報に基づいて判定することができる。
【0037】
制御部30は、シート向き変更処理を実行することを決定した場合には、シート向き変更処理を開始する前に、障害物検出センサ20からの情報に基づいてシート10の軌跡内に障害物があるか否かを判定する機能を有する。制御部30は、障害物がないと判定した場合には、シート向き変更処理を開始し、障害物があると判定した場合には、シート向き変更処理を開始しない。
【0038】
制御部30は、障害物があると判定してシート向き変更処理を開始しないことを決定した場合には、シート向き変更処理が実行されないことを示す非実行情報を、タブレット端末TBによって乗員に報知する機能を有する。非実行情報としては、例えば、タブレット端末TBのスピーカから発せられる「シートをコミュニケーションモードに変更できませんでした。」といった音声の情報であってもよいし、警告音などの音情報であってもよいし、タブレット端末TBの画面に表示されるメッセージや画面の色を赤くするなどの警告表示などの画像情報であってもよい。
【0039】
制御部30は、障害物がないと判定してシート向き変更処理を開始することを決定した場合には、シート向き変更処理が実行されることを示す実行情報を、タブレット端末TBによって乗員に報知する機能を有する。実行情報としては、例えば、タブレット端末TBのスピーカから発せられる「シートをコミュニケーションモードに変更しました。」といった音声の情報であってもよいし、警告音などの音情報であってもよいし、タブレット端末TBの画面に表示されるメッセージや画面の色を青くするなどの成功表示などの画像情報であってもよい。
【0040】
なお、シート10の向きを第2の向きから第1の向きへ戻す場合には、例えば、制御部30が、乗員からの要求によって、シート10を動作させればよい。乗員からの要求は、例えば、車内に設けられた操作部を乗員が操作することで制御部30に出力されてもよいし、乗員がタブレット端末TBを操作することで制御部30に出力されてもよい。なお、タブレット端末TBの操作は、乗員の声による操作であってもよい。また、乗員が、シート10を回動させる機構を動作させるレバーなどを操作することで、手動でシート10の向きを第2の向きから第1の向きへ戻してもよい。
【0041】
次に、制御部30の動作について詳細に説明する。
図3に示すように、制御部30は、図示せぬECUからの情報に基づいて、自動運転中であるか否かを判定する(S1)。ステップS1において自動運転中でないと判定した場合には(No)、制御部30は、本処理を終了する。
【0042】
ステップS1において自動運転中であると判定した場合には(Yes)、制御部30は、コミュニケーションモードの実行が許可されているシート10(以下、「対象シート」ともいう。)が複数あるか否かを判定する(S2)。ステップS2において対象シートが複数ないと判定した場合には(No)、制御部30は、本処理を終了する。ステップS2において対象シートが複数あると判定した場合には(Yes)、制御部30は、複数の対象シート上の乗員のうちコミュニケーションを取るべき状態の乗員(以下、「対象乗員」ともいう。)が複数いるか否かを判定する(S3)。
【0043】
ステップS3において対象乗員が複数いないと判定した場合には(No)、制御部30は、本処理を終了する。ステップS3において対象乗員が複数いると判定した場合には(Yes)、制御部30は、複数の対象乗員に対応したシート10(以下、「回動対象シート」ともいう。)のそれぞれに対してシート向き変更処理を実行することを決定する(S4)。
【0044】
ステップS4の後、制御部30は、障害物検出センサ20からの情報に基づいて、複数の回動対象シートの移動軌跡内に障害物がないか否かを判定する(S5)。ステップS5において障害物がないと判定した場合には(Yes)、制御部30は、実行情報を対象乗員のタブレット端末TBに送信する(S6)。ステップS6の後、制御部30は、シート向き変更処理を実行して(S7)、本処理を終了する。ステップS5において障害物があると判定した場合には(No)、制御部30は、非実行情報を対象乗員のタブレット端末TBに送信し(S8)、シート向き変更処理を実行することなく、本処理を終了する。
【0045】
次に、制御部30の動作の具体例について説明する。
図4に示すように、自動運転中において、コミュニケーションモードが許可されているシート10が、第2シート10B、第3シート10Cおよび第4シート10Dである場合には、制御部30は、第2シート10B、第3シート10Cおよび第4シート10Dを対象シートとして特定する。なお、図において、対象シートの輪郭を太線で示す。
【0046】
次に、制御部30は、例えば対象シート(10B~10D)上の乗員が所持しているタブレット端末TBが現在表示している画像の情報を、各タブレット端末TBから取得し、各タブレット端末TBの表示が略同一のコンテンツであるか否かを判定することで、対象シート上の乗員同士がコミュニケーションを取るべき状態であるか否かを判定する。
【0047】
図示のように、第3シート10Cに対応したタブレット端末TBの表示と、第4シート10Dに対応したタブレット端末TBの表示とが、略同一のコンテンツである場合、制御部30は、第3シート10C上の乗員と第4シート10Dを、複数の回動対象シートとして特定する。なお、図において、回動対象シートにはドットのハッチングを施す。そして、制御部30は、複数の回動対象シートに対してシート向き変更処理を実行することを決定する。
【0048】
制御部30は、シート向き変更処理を実行することを決定すると、シート向き変更処理を開始する前に、障害物検出センサ20からの情報に基づいて、回動対象シート(10C,10D)の移動軌跡上に障害物がないか否かを判定する。
図4の例では、回動対象シート(10C,10D)の移動軌跡上に障害物がないので、
図5に示すように、制御部30は、シート向き変更処理を実行して、各回動対象シート(10C,10D)の向きを第2の向きに切り替える。また、この際、制御部30は、実行情報を各対象乗員のタブレット端末TBに送信し、タブレット端末TBは、実行情報を音声、画像、振動等により各対象乗員に報知する。
【0049】
ここで、制御部30からタブレット端末TBに送信する実行情報は、例えば、シート向き変更処理を実行することを示すフラグなどの情報であればよい。この場合、タブレット端末TBは、制御部30から送られてくる情報を受けると、「シートをコミュニケーションモードに変更しました。」といった音声の情報などの実行情報を各対象乗員に報知する。
【0050】
なお、この例では、第2シート10Bの移動軌跡上に鞄などの障害物があるが、第2シート10Bは回動対象シートではないので、第2シート10Bの移動軌跡上の障害物の有無は判定されない。また、第1シート10Aに対応したタブレット端末TBの表示は、第3シート10Cおよび第4シート10Dに対応した各タブレット端末TBの表示と略同一のコンテンツであるが、第1シート10Aは対象シートではないので、第1シート10A上の乗員が対象乗員であるかも判定されない。
【0051】
図6に示すように、回動対象シートである第4シート10Dの移動軌跡上に鞄などの障害物がある場合には、制御部30は、シート向き変更処理を実行することを決定したのにも関わらず、シート向き変更処理を実行しない。また、この際、制御部30は、非実行情報を各対象乗員のタブレット端末TBに送信し、タブレット端末TBは、非実行情報を音声、画像、振動等により各対象乗員に報知する。
【0052】
ここで、制御部30からタブレット端末TBに送信する非実行情報は、例えば、シート向き変更処理を実行しないことを示すフラグなどの情報であればよい。この場合、タブレット端末TBは、制御部30から送られてくる情報を受けると、「シートをコミュニケーションモードに変更できませんでした。」といった音声の情報などの非実行情報を各対象乗員に報知する。
【0053】
以上によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
シート向き変更処理を開始する前に、障害物検出センサ20からの情報に基づいて回動対象シートの移動軌跡内に障害物があるか否かを判定し、障害物があると判定した場合には、シート向き変更処理を開始しないので、シート向き変更処理の実行によって動作する回動対象シートの動きが障害物で規制されるのを抑制することができる。そのため、回動対象シートを動作させるためのモータ等の駆動源に負荷がかかるのを抑制することができる。
【0054】
自動運転中における乗員からの要求(コミュニケーションモードの選択)に基づいてシート向き変更処理の実行が決定されるので、非自動運転中、または、乗員から要求がない場合に、シート10の向きが変更されるのを抑制することができる。
【0055】
回動対象シートの移動軌跡上に障害物がある場合に非実行情報が対象乗員に報知されるので、シート向き変更処理が実行されないことを対象乗員が知ることができる。
【0056】
回動対象シートの移動軌跡上に障害物がない場合には、実行情報が対象乗員に報知されるので、シート向き変更処理が実行されることを対象乗員が知ることができる。
【0057】
対象乗員が携帯するタブレット端末TBによって非実行情報または実行情報を報知するので、例えば車両50の内部スピーカによって非実行情報または実行情報を報知する場合と比べ、車両50の内部スピーカで流している音楽を一旦止めるなどの制御を行う必要がない。
【0058】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
前記実施形態では、第1の向きを前方、第2の向きを第1の向きよりも車両50の左右方向内側の向きとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、第1の向きを、前方よりも車両50の左右方向外側を向いた向きとし、第2の向きを、前方よりも車両50の左右方向内側を向いた向きとしてもよい。この場合、制御部は、乗員同士がコミュニケーションを取るべき状態でないと判定したときに、シートを第1の向きとし、コミュニケーションを取るべき状態であると判定したときに、シートを第2の向きとしてもよい。これによれば、乗員同士がコミュニケーションを取るべき状態でない場合、具体的には例えば乗員が所持するタブレットの表示が異なるコンテンツである場合には、乗員同士を左右方向外側に向けて、各乗員のプライベートを確保することができる。
【0059】
また、本発明の対象となるシートは、全席に限らず、例えば、1列目のシートのみを対象としてもよいし、2列目のシートのみを対象としてもよい。また、車両のシートが3列仕様の場合には、本発明の対象となるシートは、3列目のシートであってもよい。また、本発明の対象となるシートは、複数でなく、1つのみであってもよい。この場合、シート向き変更処理を実行する制御部を、複数のシートに対して1つずつ設けてもよい。
【0060】
障害物検出センサは、圧力センサ、電波センサ、静電容量センサなどであってもよい。圧力センサや静電容量センサを用いる場合には、シートの移動範囲に複数センサを設けてもよい。また、障害物検出センサは、圧力センサとカメラなど、複数のセンサを組み合わせることで構成してもよい。これによれば、より正確に障害物を検出することができる。
【0061】
非実行情報・実行情報の報知は、車両の内部スピーカやルームランプなどで行ってもよい。
【0062】
シート向き変更処理の実行によるシートの移動中にシートが障害物に引っ掛かった場合には、制御部は、シートの移動を中止して、元の状態に復帰させてもよい。
【0063】
携帯端末は、スマートフォンなどのタブレット端末TB以外の端末であってもよい。
【0064】
シートを動作させる駆動源、制御部、障害物検出センサに異常が生じた場合には、制御部は、シート向き変更処理を実行することを禁止してもよい。
【0065】
前記実施形態では、第1条件と第2条件が満たされた場合に、シート向き変更処理を実行することを決定したが、本発明はこれに限定されない。例えば、制御部は、車両のECUから、非自動運転から自動運転に切り替わったことを示す情報を受けたことのみを条件として、シート向き変更処理を実行することを決定することができる。また、制御部は、自動運転か非自動運転かに限らず、停車中も含め、乗員の要求があった場合に、シート向き変更処理を実行することを決定することができる。
【0066】
シートは、車両に設けられるシートに限らず、例えば部屋などに設置されるシートであってもよい。
【0067】
前記した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 シートシステム
10 シート
20 障害物検出センサ
30 制御部