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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147781
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20220929BHJP
   H01L 21/306 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
H01L21/304 644G
H01L21/306 R
H01L21/304 644B
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021049172
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村元 僚
(72)【発明者】
【氏名】中井 仁司
【テーマコード(参考)】
5F043
5F157
【Fターム(参考)】
5F043BB27
5F043DD13
5F043EE07
5F043EE08
5F043EE33
5F043EE36
5F043EE40
5F157AB02
5F157AB16
5F157AB33
5F157AB90
5F157AC01
5F157AC26
5F157BA06
5F157BA31
5F157BB23
5F157CF46
5F157DB02
(57)【要約】
【課題】基板表面の対象領域に対して均一な処理を実現できる基板処理装置および基板処理方法を提供する。
【解決手段】基板処理装置1は、スピンチャック10、砥粒供給機構20、および磁石40を含む。スピンチャック10は、基板Wを水平に保持して鉛直な回転軸線17まわりに回転させる。砥粒供給機構20は、基板Wの上面Wa上に磁性流体砥粒26を供給し担持させる。磁石40は、下面Wb側から上面Waに担持された磁性流体砥粒26に対向して、上面Waに向けて吸引する。磁性流体砥粒26によって、上面Waがスクラブされる。基板処理装置1は、さらに、磁石40を移動させる磁石移動機構50、および砥粒ノズル21を移動させるノズル移動機構30を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を水平に保持し、前記基板の中心を通る鉛直な回転軸線まわりに当該基板を回転する基板保持回転機構と、
前記基板保持回転機構に保持された基板の第1主面上に磁性流体砥粒を供給し、前記第1主面上に前記磁性流体砥粒を担持させる砥粒供給機構と、
前記基板保持回転機構に保持された基板の第2主面側から前記第1主面に担持された前記磁性流体砥粒に対向して、当該磁性流体砥粒を前記基板の前記第1主面に向けて吸引する磁石と、を含む基板処理装置。
【請求項2】
前記磁性流体砥粒が、前記基板保持回転機構に保持された基板の前記第1主面の一部の領域に担持され、
前記磁石が、平面視において前記基板保持回転機構に保持される基板よりも小さく、かつ平面視において当該基板の外周よりも内側に配置される磁極を有する、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記磁石を鉛直方向に移動させる磁石垂直移動機構をさらに含む、請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記磁石を水平方向に移動させる磁石水平移動機構をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記基板保持回転機構に保持された基板の第1主面上で、前記砥粒供給機構によって磁性流体砥粒が供給される砥粒供給位置を回転半径方向に移動させる砥粒供給位置移動機構をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記基板保持回転機構に保持された基板の第1主面上で、前記砥粒供給機構によって磁性流体砥粒が供給される砥粒供給位置を回転半径方向に移動させる砥粒供給位置移動機構と、
前記砥粒供給位置の移動に追従するように、前記基板保持回転機構に保持された基板の第2主面側から前記砥粒供給位置に対向する状態を保つように前記磁石を水平移動させる磁石水平移動機構と、をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記基板保持回転機構の周囲を取り囲み、前記基板保持回転機構に保持された基板から周囲に排出される流体を捕獲するガードをさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記基板保持回転機構に保持された基板から磁性流体砥粒が排出されるときに、前記ガードによって捕獲される前記磁性流体砥粒を回収する回収槽をさらに含む、請求項7に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記基板保持回転機構に保持された基板の第1主面に洗浄液を供給する洗浄液供給機構をさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記洗浄液供給機構が、前記基板の第1主面に前記磁性流体砥粒が担持される領域よりも前記回転軸線に近い領域に洗浄液を供給する、請求項9に記載の基板処理装置。
【請求項11】
基板を水平に保持された基板の第1主面に磁性流体砥粒を供給し、前記第1主面に前記磁性流体砥粒を担持させる工程と、
前記基板の第2主面側から前記第1主面に担持された前記磁性流体砥粒に磁石を対向させ、前記磁石により前記磁性流体砥粒を前記第2主面に向けて吸引する工程と、
前記第1主面に磁性流体砥粒が担持され、かつ前記第2主面側から前記磁性流体砥粒に前記磁石が対向している状態で、前記基板の中心を通る鉛直な回転軸線まわりに前記基板を回転させる工程と、を含む、基板処理方法。
【請求項12】
前記磁性流体砥粒が、前記基板の前記第1主面の一部の領域に担持され、
前記磁石の磁極が、平面視において前記基板よりも小さく、かつ平面視において当該基板の外周よりも内側に配置される、請求項11に記載の基板処理方法。
【請求項13】
前記磁石を鉛直方向に移動させる工程をさらに含む、請求項11または12に記載の基板処理方法。
【請求項14】
前記磁石を回転半径方向に移動させる工程をさらに含む、請求項11~13のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項15】
前記基板の前記第1主面上において前記磁性流体砥粒が供給される砥粒供給位置を回転半径方向に移動させる工程をさらに含む、請求項11~14のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項16】
前記基板の前記第1主面上において前記磁性流体砥粒が供給される砥粒供給位置を回転半径方向に移動させる工程と、
前記砥粒供給位置の移動に追従するように、前記基板の前記第2主面側から前記砥粒供給位置に対向する状態を保つように、前記磁石を回転半径方向に移動させる工程と、をさらに含む、請求項11~13のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項17】
前記基板を回転しながら、前記基板の前記第1主面に前記磁性流体砥粒が担持される領域よりも前記回転軸線に近い領域に洗浄液を供給する工程をさらに含む、請求項11~16のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板を処理する装置および方法に関する。処理対象の基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置および有機EL(Electroluminescence)表示装置等のFPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板等が含まれる。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、基板を鉛直軸まわりに回転するスピンチャックと、スピンチャックに保持された基板をスクラブ洗浄する自公転ブラシ装置とを備えた基板処理装置を開示している。自公転ブラシ装置は、鉛直方向に沿って配置された揺動軸と、その揺動軸まわりに揺動する揺動腕と、その揺動腕の先端付近に下向きに取り付けられた洗浄ブラシと、揺動軸を上下動させる昇降モータとを備えている。昇降モータによって揺動軸を上下動させることによって揺動腕の高さを制御できる。洗浄ブラシを基板の表面に接触させるときの揺動腕の高さを適切に定めることによって、洗浄ブラシが適切な圧力で基板の表面に押し付けられ、良好な洗浄効果が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3540524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、異物除去性能の均一化、基板へのダメージ低減などを目的として、基板に対する洗浄ブラシの押し付け圧力を制御する技術を開示している。
しかし、基板の反りや洗浄ブラシの変形などの影響によって、一定の押し付け圧力を達成できない可能性がある。たとえば、洗浄ブラシの洗浄面内において、圧力が均一にならない場合があり得る。それにより、基板表面の対象領域内において、均一な処理を達成できない可能性がある。
【0005】
そこで、この発明の一実施形態は、基板表面の対象領域に対して均一な処理を実現できる基板処理装置および基板処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の一実施形態は、基板を水平に保持し、前記基板の中心を通る鉛直な回転軸線まわりに当該基板を回転する基板保持回転機構と、前記基板保持回転機構に保持された基板の第1主面上に磁性流体砥粒を供給し、前記第1主面上に前記磁性流体砥粒を担持させる砥粒供給機構と、前記基板保持回転機構に保持された基板の第2主面側から前記第1主面に担持された前記磁性流体砥粒に対向して、当該磁性流体砥粒を前記基板の前記第1主面に向けて吸引する磁石と、を含む基板処理装置を提供する。
【0007】
この構成によれば、砥粒供給機構が基板の第1主面上に磁性流体砥粒を供給し、その供給された磁性流体砥粒が基板の第2主面側から磁石によって吸引される。それにより、磁性流体砥粒は第1主面に向けて吸引され、第1主面に押し付けられる。その状態で基板保持回転機構によって基板が回転されると、磁性流体砥粒と基板の第1主面との相対移動が生じる。つまり、基板を基準に考えると、磁性流体砥粒は、基板の第1主面に押し付けられながら、当該第1主面上で移動する。それにより、基板の第1主面は磁性流体砥粒によってスクラブされ、第1主面上の異物が除去される。
【0008】
磁性流体砥粒は、基板の第2主面側から対向する磁石によって吸引されることにより、第1主面に接した状態に保持される。したがって、基板の反りその他の変形があったとしても、磁性流体砥粒は第1主面の形状に倣い、当該第1主面に接した状態を維持する。それにより、基板の変形によらずに、基板の第1主面の対象領域を磁性流体砥粒によって均一にスクラブすることができる。
【0009】
前記磁石は、永久磁石であってもよいし、電磁石であってもよい。
一つの実施形態においては、前記磁性流体砥粒が、前記基板保持回転機構に保持された基板の前記第1主面の一部の領域に担持され、前記磁石が、平面視において前記基板保持回転機構に保持される基板よりも小さく、かつ平面視において当該基板の外周よりも内側に配置される磁極を有する。
【0010】
この構成によれば、磁性流体砥粒が担持される領域が第1主面の一部であり、かつ磁性流体砥粒を第2主面側から吸引する磁石の磁極が基板よりも小さく、かつ基板の外周よりも内側に配置されるので、磁性流体砥粒によって処理される第1主面上の領域を制御できる。
たとえば、磁石の磁極が、回転軸線まわりの基板の回転半径の一部の領域のみに存在していれば、第1主面の一部の領域(たとえば、基板の周縁近傍の領域)のみを選択的に処理することができる。基板保持回転機構によって基板が回転されるので、磁石の磁極の位置が回転軸線に対して静止している場合には、第1主面上の環状の領域が磁性流体砥粒によるスクラブ処理を受けることになる。磁石の磁極の位置を回転軸線に対して接近/離反させることによって、それに応じて、第1主面上の磁性流体砥粒が吸引される領域も移動する。したがって、磁性流体砥粒による処理を受ける環状の領域が、回転軸線に対して接近/離反する方向、すなわち、回転半径方向に移動する。それにより、基板の第1主面のより広い範囲に対して磁性流体砥粒によるスクラブ処理を施すことができる。
【0011】
磁石の磁極が基板の外周よりも内側にあるので、磁性流体砥粒が基板の周端面を回り込んで第1主面から第2主面へと移動することを抑制または回避できる。それにより、第1主面の処理対象領域を磁性流体砥粒によって確実に処理できる。併せて、磁性流体砥粒が磁石の磁極に付着することを抑制できる。
一つの実施形態においては、前記基板処理装置は、前記磁石を鉛直方向に移動させる磁石垂直移動機構をさらに含む。
【0012】
この構成により、磁石を鉛直方向に移動させて、基板と磁石との間の距離を変化させることができる。それに応じて、第1主面に担持された磁性流体砥粒に作用する磁気吸引力の大きさを変化させることができる。さらに、磁石を基板の第2主面から十分に離間させれば、磁性流体砥粒に対して磁気吸引力が実質的に作用しない状態とすることができる。こうして、磁性流体砥粒によるスクラブ処理の強度を調整したり、実質的にスクラブ処理がされない状態としたりすることができる。また、処理を終えて磁性流体砥粒を第1主面から除去するときには、磁石を基板の第2主面から十分に離間させることにより、磁性流体砥粒に磁気吸引力が実質的に作用しないようにしておけば、磁気吸引力に阻害されることなく、磁性流体砥粒を除去できる。
【0013】
一つの実施形態においては、前記基板処理装置は、前記磁石を水平方向に移動させる磁石水平移動機構をさらに含む。
この構成によれば、磁石を水平移動させることにより、第1主面上に担持された磁性流体砥粒がそれに応じて移動するので、第1主面上の処理対象領域を移動することができる。とくに、回転軸線に対して接近/離間する方向、すなわち、回転半径方向に磁石を水平移動することにより、基板の回転に伴って磁性流体砥粒によるスクラブ処理を受ける円環状の領域を変位させることができる。
【0014】
一つの実施形態においては、前記基板処理装置は、前記基板保持回転機構に保持された基板の第1主面上で、前記砥粒供給機構によって磁性流体砥粒が供給される砥粒供給位置を回転半径方向(前記回転軸線に対して接近/離反する方向)に移動させる砥粒供給位置移動機構をさらに含む。
この構成によれば、第1主面上での磁性流体砥粒の供給位置を回転半径方向に変化させることができるので、処理対象領域に確実に磁性流体砥粒を供給できる。また、処理対象領域外に磁性流体砥粒が供給されることを抑制または防止できるので、処理対象外の領域に対して不所望なスクラブ処理が行われることを抑制または防止できる。
【0015】
一つの実施形態においては、前記基板処理装置は、前記基板保持回転機構に保持された基板の第1主面上で、前記砥粒供給機構によって磁性流体砥粒が供給される砥粒供給位置を回転半径方向(前記回転軸線に対して接離する方向)に移動させる砥粒供給位置移動機構と、前記砥粒供給位置の移動に追従するように、前記基板保持回転機構に保持された基板の第2主面側から前記砥粒供給位置に対向する状態を保つように前記磁石を水平移動させる磁石水平移動機構と、をさらに含む。
【0016】
この構成によれば、磁性流体砥粒の供給位置および磁石の水平方向位置が互いの対向状態を保ちながら移動するので、砥粒供給位置において磁石の吸引力を作用させることができる。それにより、磁性流体砥粒に対して、第1主面に向かう磁気吸引力を作用させて、スクラブ処理に寄与する磁性流体砥粒の割合を高めて、効率的なスクラブ処理を行うことができる。
【0017】
磁性流体砥粒は、一定量だけ供給された後にその供給が停止されてもよいし、間欠的に供給されてもよいし、供給が継続されてもよい。
一つの実施形態においては、前記基板処理装置は、前記基板保持回転機構の周囲を取り囲み、前記基板保持回転機構に保持された基板から周囲に排出される流体を捕獲するガードをさらに含む。
【0018】
この構成によれば、第1主面から磁性流体砥粒を除去するときに、基板保持回転機構によって基板を回転させることによって生じる遠心力を利用でき、その遠心力によって基板から周囲に磁性流体砥粒を排出することができる。その排出された磁性流体砥粒をガードによって捕獲させることにより、基板処理装置の内部の汚染を抑制または回避できる。
一つの実施形態においては、前記基板処理装置は、前記基板保持回転機構に保持された基板から磁性流体砥粒が排出されるときに、前記ガードによって捕獲される前記磁性流体砥粒を回収する回収槽をさらに含む。
【0019】
この構成によれば、ガードによって捕獲された磁性流体砥粒を回収槽に回収できるので、使用後の磁性流体砥粒を適切に処理できる。たとえば、磁性流体砥粒を回収して、再利用してもよい。
一つの実施形態においては、前記基板処理装置は、前記基板保持回転機構に保持された基板の第1主面に洗浄液を供給する洗浄液供給機構をさらに含む。
【0020】
この構成によれば、基板の第1主面に洗浄液を供給することで、第1主面上の磁性流体砥粒を洗い流すことができる。
洗浄液は、洗浄薬液を含んでいてもよい。この場合、洗浄液供給機構は、薬液供給機構を含む。また、洗浄液はリンス液を含んでいてもよい。この場合、洗浄液供給機構は、リンス液供給機構を含む。
【0021】
一つの実施形態においては、前記洗浄液供給機構が、前記基板の第1主面に前記磁性流体砥粒が担持される領域よりも前記回転軸線に近い領域に洗浄液を供給する。
この構成により、磁性流体砥粒の内側に洗浄液を供給できるので、第1主面の磁性流体砥粒を確実に洗い流すことができる。
この発明の一実施形態は、基板を水平に保持された基板の第1主面に磁性流体砥粒を供給し、前記第1主面に前記磁性流体砥粒を担持させる工程と、前記基板の第2主面側から前記第1主面に担持された前記磁性流体砥粒に磁石を対向させ、前記磁石により前記磁性流体砥粒を前記第2主面に向けて吸引する工程と、前記第1主面に磁性流体砥粒が担持され、かつ前記第2主面側から前記磁性流体砥粒に前記磁石が対向している状態で、前記基板の中心を通る鉛直な回転軸線まわりに前記基板を回転させる工程と、を含む、基板処理方法を提供する。
【0022】
一つの実施形態においては、前記磁性流体砥粒が、前記基板の前記第1主面の一部の領域に担持され、前記磁石の磁極が、平面視において前記基板よりも小さく、かつ平面視において当該基板の外周よりも内側に配置される。
一つの実施形態においては、前記基板処理方法は、前記磁石を鉛直方向に移動させる工程をさらに含む。
【0023】
一つの実施形態においては、前記基板処理方法は、前記磁石を回転半径方向に移動させる工程をさらに含む。
一つの実施形態においては、前記基板処理方法は、前記基板の前記第1主面上において前記磁性流体砥粒が供給される砥粒供給位置を回転半径方向に移動させる工程をさらに含む。
【0024】
一つの実施形態においては、前記基板処理方法は、前記基板の前記第1主面上において前記磁性流体砥粒が供給される砥粒供給位置を回転半径方向に移動させる工程と、前記砥粒供給位置の移動に追従するように、前記基板の前記第2主面側から前記砥粒供給位置に対向する状態を保つように、前記磁石を回転半径方向に移動させる工程と、をさらに含む。
【0025】
一つの実施形態においては、前記基板処理方法は、前記基板を回転しながら、前記基板の前記第1主面に前記磁性流体砥粒が担持される領域よりも前記回転軸線に近い領域に洗浄液を供給する工程をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、この発明の一実施形態に係る基板処理装置の構成を説明するための図解的な断面図である。
図2図2は、基板処理の一例を説明するための平面図である。
図3図3は、基板表面での処理の様子を図解的に示す部分拡大図である。
図4図4は、基板処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図5図5は、前述の基板処理装置による他の処理例を説明するための平面図である。
図6図6は、図5の処理例を説明するための図解的な側面図である。
図7図7は、図5の処理例の流れを説明するためのフローチャートである。
図8図8は、この発明の他の実施形態に係る基板処理装置の構成を説明するための図解的な側面図である。
図9図9は、磁石の配置に関する変形例を説明するための平面図である。
図10図10は、磁石の配置に関する他の変形例を説明するための平面図である。
図11図11は、図10の構成の図解的な断面図である。
図12図12は、磁石の配置に関するさらに他の変形例を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る基板処理装置の構成を説明するための図解的な断面図である。基板処理装置1は、基板保持回転機構の一例であるスピンチャック10と、スピンチャック10に保持された基板Wの一つの主面(この実施形態では上面。第1主面の例)Waに磁性流体砥粒26を供給する砥粒供給機構20と、スピンチャック10に保持された基板Wの他の主面(この実施形態では下面。第2主面の例)に対向するように配置された磁石40とを含む。基板処理装置1は、さらに、スピンチャック10に保持された基板Wに薬液を供給する薬液供給機構60を含む。基板処理装置1は、さらに、スピンチャック10に保持された基板Wにリンス液を供給するリンス液供給機構70を含む。薬液供給機構60およびリンス液供給機構70は、洗浄液供給機構の例である。
【0028】
スピンチャック10は、基板Wを水平に保持し、基板Wの中心を通る鉛直な回転軸線17まわりに基板Wを回転する。基板Wは、半導体ウエハに代表される円形の基板Wであってもよい。スピンチャック10は、この実施形態では、バキューム型である。具体的には、スピンチャック10は、基板Wの下面中央を吸着して保持する吸着ヘッド11と、吸着ヘッド11を回転軸線17まわりに回転させるスピンモータ12とを含む。スピンモータ12の回転軸13を通る吸引経路14が設けられており、吸引経路14は、吸引装置15に結合されている。
【0029】
砥粒供給機構20は、磁性流体砥粒26を基板W上に吐出する砥粒ノズル21と、砥粒ノズル21に結合され、磁性流体砥粒供給源24から砥粒ノズル21へと磁性流体砥粒26を供給する砥粒配管22と、砥粒配管22の途中に介装された砥粒バルブ23とを含む。砥粒バルブ23は砥粒配管22の流路を開閉し、それによって、砥粒ノズル21から磁性流体砥粒26を吐出させ、かつその吐出を停止させる。砥粒ノズル21は、スピンチャック10に保持された基板Wの上面Waに磁性流体砥粒26を供給し、当該上面Waに磁性流体砥粒26を担持させる。それにより、基板Wの上面Waに磁性流体砥粒溜まり27が形成される。
【0030】
砥粒ノズル21は、支持アーム33によって支持されている。支持アーム33には、ノズル移動機構30が結合されている。ノズル移動機構30は、支持アーム33を移動させ、それによって、砥粒ノズル21を移動させる。その結果、スピンチャック10に保持されている基板Wの上面Waにおける砥粒供給位置25が変化する。砥粒供給位置25とは、砥粒ノズル21から吐出された磁性流体砥粒26が基板Wの上面Waに到達する位置である。このように、ノズル移動機構30は、砥粒供給位置移動機構の一例である。ノズル移動機構30は、少なくとも砥粒ノズル21を水平方向に移動させ、それによって、砥粒供給位置25の回転半径方向位置を変動させるノズル水平移動機構31を備えている。回転半径方向とは、回転軸線17に平行な鉛直方向から見た平面視において回転軸線17を中心とした放射方向をいう。回転半径方向位置とは、回転半径方向に関する位置をいい、端的には、回転軸線17からの距離によって定義される位置をいう。ノズル移動機構30は、砥粒ノズル21を鉛直方向に移動させるノズル垂直移動機構32を備えていてもよい。
【0031】
磁性流体砥粒26は、磁性粒子(磁性砥粒)を含む液状の流体である。より具体的には、磁性流体砥粒26は、研磨剤(砥粒)としての磁性粒子を脱イオン水等の液体中に分散させたコロイド溶液(いわゆる研磨剤スラリ)の形態を有していてもよい。磁性粒子からなる砥粒(磁性砥粒)の一例は、マグネタイト系粒子などの磁性酸化鉄粒子である。
磁石40は、基板Wの下面Wbに対向する磁極41(たとえば磁極面)を備えている。磁極41は、磁石40において磁力が最も強い箇所を含む点または面である。それにより、磁石40は、基板Wの下面Wb側から基板Wの上面Waに担持された磁性流体砥粒26、すなわち磁性流体砥粒溜まり27に対向し、当該磁性流体砥粒26を基板Wの上面Waに向けて吸引する。磁石40は、永久磁石であってもよいし、電磁石であってもよい。磁石40は、磁石移動機構50に結合されている。磁石移動機構50は、磁石40を垂直方向に移動させる磁石垂直移動機構51を含む。磁石垂直移動機構51は、スピンチャック10に保持された基板Wと磁石40との鉛直方向距離を変化させる。磁石移動機構50は、磁石40を水平方向に移動させる磁石水平移動機構52を含む。磁石水平移動機構52は、磁石40の回転半径方向位置を変化させる。
【0032】
磁石水平移動機構52とノズル水平移動機構31とは、鉛直方向から見た平面視において、磁極41および砥粒供給位置25を実質的に同じ経路上で移動させるように構成されていることが好ましい。それにより、砥粒供給位置25が移動経路上のいずれの位置にあっても、砥粒供給位置25と磁極41とを対向させることができる。
薬液供給機構60は、基板W上の磁性流体砥粒26を洗浄するための洗浄薬液を供給する。薬液供給機構60は、薬液ノズル61と、薬液ノズル61に結合され、薬液供給源64から薬液ノズル61に洗浄薬液を供給する薬液配管62と、薬液配管62の途中に介装された薬液バルブ63とを含む。薬液バルブ63は、薬液配管62の流路を開閉し、それによって、薬液ノズル61から洗浄薬液を吐出させ、かつその吐出を停止させる。洗浄薬液の例としては、SC1、フッ酸、SPM(硫酸過酸化水素水混合液)を挙げることができる。洗浄薬液は、たとえば、磁性流体砥粒26を溶解して金属汚染を抑制または防止する目的で用いられてもよい。
【0033】
リンス液供給機構70は、洗浄薬液で処理した後の基板W上に残る磁性流体砥粒26および洗浄薬液を洗い流すためのリンス液を供給する。リンス液供給機構70は、リンス液ノズル71と、リンス液ノズル71に結合され、リンス液供給源74からリンス液ノズル71にリンス液を供給するリンス液配管72と、リンス液配管72の途中に介装されたリンス液バルブ73とを含む。リンス液バルブ73は、リンス液配管72の流路を開閉し、それによって、リンス液ノズル71からリンス液を吐出させ、かつその吐出を停止させる。リンス液の例としては、DIW(脱イオン水)、炭酸水を挙げることができる。
【0034】
基板処理装置1は、スピンチャック10を収容する処理カップ80を備えている。処理カップ80は、ガード81と、ガード81の下方に配置された液受け82とを含む。ガード81は、スピンチャック10を側方から包囲するように配置されており、スピンチャック10に保持された基板Wから遠心力によって回転半径方向外方に排出される流体を捕獲する。液受け82は、ガード81の円筒状の下部に下方から対向する円環状の溝を形成している。液受け82の底壁には、回収配管83が接続されている。
【0035】
回収配管83は、回収槽84に結合されている。回収槽84は、基板Wの処理に用いられた後の磁性流体砥粒26を回収するための装置である。回収槽84には、たとえば、磁性流体砥粒26中に磁性砥粒を吸着して凝集させるための回収用磁石85が備えられている。回収槽84には、磁性流体砥粒26以外の液体を排液するための排液配管86が結合されている。排液配管86は、たとえば工場の排液設備に接続される。
【0036】
基板処理装置1は、さらに、装置の各部を制御するためのコントローラ90を含む。コントローラ90は、スピンモータ12、ノズル移動機構30、磁石移動機構50、砥粒バルブ23、薬液バルブ63、リンス液バルブ73などを制御するように構成され、かつプログラムされている。
図2は、処理の一例を説明するための平面図である。また、図3は、基板表面での処理の様子を図解的に示す部分拡大図である。この処理例では、磁性流体砥粒26は、砥粒ノズル21から基板Wの上面Waに供給され、基板Wの上面Waの一部の領域に担持されて磁性流体砥粒溜まり27を形成する。この磁性流体砥粒26に基板Wを介して下面側から対向するように磁石40が配置される。磁石40の磁極41は、平面視において、スピンチャック10に保持される基板Wよりも小さく、かつ平面視において基板Wの外周よりも内側に配置されている。さらに具体的には、磁性流体砥粒26が担持される領域は、基板Wの上面Waの外周に近い外周部領域(外周近傍領域)に属する。それに対応するように、磁石40の磁極41は、基板下面Wbの外周に近い外周部領域(外周近傍領域)に対向し、基板下面Wbから所定の隙間42を空けて配置されている。
【0037】
磁性流体砥粒26に含まれる磁性砥粒26aには、基板下面Wb側の磁石40から吸引力が作用し、それによって、磁性砥粒26aは、基板Wの上面Waに向けて吸引され、基板Wの上面Waに押し付けられる。その状態で、スピンチャック10によって回転軸線17まわりに基板Wが回転されると、磁性砥粒26aと基板Wの上面Waとの相対移動が生じる。つまり、基板Wを基準に考えると、磁性砥粒26aは基板Wの上面Waに押し付けられながら、基板Wの上面Wa上で移動する。より微細な観点で表現すれば、磁性砥粒26aは、基板Wの上面Waに押し付けられながら、磁石40の磁極41の上方の領域に留められ、その一方で、基板Wの回転によって基板Wの上面Waが移動する。それにより、磁性砥粒26aは、基板Wの上面Waにおいて、当該上面Waに押し付けられながら摺動および転動する。それにより、基板Wの上面Waの異物が磁性砥粒26aによって削ぎ取られて除去される。
【0038】
こうして、磁性流体砥粒26と基板Wの上面Waとの相対移動によって、磁性流体砥粒26によって基板上面Waがスクラブされ、基板上面Waの異物が除去される。
磁性流体砥粒26は、基板Wの下面Wb側から対向する磁石40によって吸引されることにより、基板上面Waに接した状態に保持される。したがって、基板Wに反り等の変形があったとしても、磁性流体砥粒26は基板上面Waの形状に倣い、基板上面Waに接した状態を維持する。それにより、基板Wの変形によらずに、基板上面Waの対象領域を磁性流体砥粒26によって均一にスクラブすることができる。
【0039】
磁石40が基板下面Wbの外周領域の下方に静止状態で配置されていることにより、磁性流体砥粒26は、磁石40の上方の領域に留まる。その一方で、基板Wが回転軸線17まわりに回転されるので、基板上面Waの外周部(ベベル部)の円環状の処理対象領域28(図2に斜線を付して示す。)が磁性流体砥粒26によるスクラブ洗浄を受けることになる。
【0040】
また、この実施形態では、磁石40の磁極41が基板Wの外周よりも内側にあるので、磁性流体砥粒26が基板Wの周端面を回り込んで上面Waから下面Wbへと移動することを抑制または回避できる。それにより、上面Waの処理対象領域28を磁性流体砥粒26によって確実に処理できる。併せて、磁性流体砥粒26が磁石40の磁極41に付着することを抑制できる。
【0041】
また、この実施形態では、磁石40を鉛直方向に移動させて、磁石40と基板Wとの距離を変動させることができる。それにより、磁性流体砥粒26によるスクラブ処理の強度を調整したり、実質的にスクラブ処理がされない状態としたりすることができる。また、処理を終えて磁性流体砥粒26を上面Waから除去するときには、磁石40を基板Wから十分に離間させた退避位置40wに配置されるので、磁性流体砥粒26に磁気吸引力が実質的に作用しない。それにより、磁石40が発生する磁気吸引力に阻害されることなく、磁性流体砥粒26を除去できる。
【0042】
また、この実施形態では、砥粒ノズル21を移動させて、砥粒供給位置25を回転半径方向に変化させることができる。それにより、磁石40の磁極41に対応する位置に磁性流体砥粒26を確実に供給/補充できる。また、処理対象領域28外に磁性流体砥粒26が供給されることを抑制または防止できるので、処理対象外の領域に対して不所望なスクラブ処理が行われることを抑制または防止できる。
【0043】
図4は、基板処理の流れの一例を示す。基板搬送ロボット(図示せず)によって処理対象の基板Wが搬入され、スピンチャック10に渡される(ステップS1)。スピンチャック10に基板Wが保持されると、ノズル移動機構30は、コントローラ90によって制御され、基板W上の所定の砥粒供給位置25に磁性流体砥粒26を供給できる処理位置(図1に示す位置)まで砥粒ノズル21を移動させる(ステップS2)。また、コントローラ90は、磁石移動機構50を制御し、前記砥粒供給位置25に基板Wの下方から対向する所定高さの処理位置40p(図1および図3に実線で示す。)へと磁石40を移動させる(ステップS3)。
【0044】
これらの移動が完了すると、コントローラ90は、砥粒バルブ23を開き、所定量の磁性流体砥粒26を砥粒ノズル21から基板上面Waの砥粒供給位置25に向けて吐出させる(ステップS4)。これにより、基板上面Waに磁性流体砥粒26が担持されて磁性流体砥粒溜まり27が形成され、磁性流体砥粒26は、基板Wの下面Wb側の磁石40からの吸引力を受けて基板上面Waに向けて吸引される。この状態で、コントローラ90は、スピンモータ12を制御して、スピンチャック10の回転、すなわち基板Wの回転を開始させる(ステップS5)。基板Wの回転速度は、基板Wと磁性流体砥粒26との摩擦力および基板W回転による遠心力に抗して、磁石40からの磁気吸引力により、磁性流体砥粒溜まり27を磁石40の上方の領域にとどめることができる速度に設定される。基板Wが回転されることによって、磁性流体砥粒26中の磁性砥粒26aが基板上面Waを摺動および転動して、円環状の外周部領域である処理対象領域28のスクラブ処理が行われる(ステップS6)。
【0045】
このスクラブ処理の間、砥粒ノズル21からは磁性流体砥粒26が供給されなくてもよい。この場合には、磁性流体砥粒26の吐出を終えた後(ステップS4)、ノズル移動機構30は砥粒ノズル21を基板Wの上方の領域から退避させてもよい。また、スクラブ処理による磁性流体砥粒26の磨耗または遠心力による磁性流体砥粒26の微量の排出に伴う処理効率の低下を補うために、砥粒ノズル21から磁性流体砥粒溜まり27へと磁性流体砥粒26が補充されてもよい。この場合には、ノズル移動機構30は砥粒ノズル21を基板Wの上方に保持する。磁性流体砥粒26の補充は、砥粒ノズル21から間欠的に磁性流体砥粒26を吐出させて行ってもよく、また砥粒ノズル21から微少流量で磁性流体砥粒26を連続吐出させて行ってもよい。
【0046】
所定時間のスクラブ処理の後に、コントローラ90は、磁石移動機構50によって、磁石40を退避位置40w(図1および図3に二点鎖線で示す。)まで移動する(ステップS7)。退避位置40wは、基板上面Waの磁性流体砥粒26に磁気吸引力が実質的に作用しない位置である。具体的には、退避位置40wは、処理位置40pよりも基板下面Wbから離れた位置であり、基板Wの下面Wbから下方に所定距離以上離間した位置である。また、砥粒ノズル21が基板Wの上方の処理位置に位置している場合には、コントローラ90は、ノズル移動機構30によって、砥粒ノズル21を基板Wの上方から退避させて、所定の退避位置に移動させる(ステップS8)。
【0047】
次に、コントローラ90は、薬液バルブ63を開いて、薬液ノズル61から基板Wの上面に向けて洗浄薬液を吐出させ、薬液洗浄処理を行う(ステップS9)。基板W上における薬液の着液位置は、磁性流体砥粒26によるスクラブ洗浄処理を受ける環状の処理対象領域28の内側、たとえば基板Wの回転中心付近であることが好ましい。薬液ノズル61を基板Wの上面に沿って移動させ、薬液の着液位置を基板W上でスキャンしてもよい。この場合、始めの着液位置は、環状の処理対象領域28の内側に設定し、回転半径方向外方に向かって着液位置のスキャンを開始することが好ましい。着液位置のスキャンは、回転半径方向外方に向かう一方向スキャンであってもよいし、回転半径方向に沿って往復する双方向スキャンであってもよい。所定時間の薬液洗浄処理の後、コントローラ90は、薬液バルブ63を閉じて、洗浄薬液の吐出を停止し、薬液洗浄処理を終える。
【0048】
次に、コントローラ90は、リンス液バルブ73を開いて、リンス液ノズル71から基板Wの上面に向けてリンス液を吐出させ、基板上面Wa上の磁性流体砥粒26の残渣および洗浄薬液を洗い流すリンス処理を実行する(ステップS10)。基板W上におけるリンス液の着液位置は、磁性流体砥粒26によるスクラブ洗浄処理を受ける環状の処理対象領域28の内側、たとえば基板Wの回転中心付近であることが好ましい。リンス液ノズル71を基板Wの上面に沿って移動させ、リンス液の着液位置を基板W上でスキャンしてもよい。この場合、薬液洗浄処理の場合と同様に、始めの着液位置は、環状の処理対象領域28の内側に設定し、回転半径方向外方に向かって着液位置のスキャンを開始することが好ましい。着液位置のスキャンは、回転半径方向外方に向かう一方向スキャンであってもよいし、回転半径方向に沿って往復する双方向スキャンであってもよい。所定時間のリンス処理の後、コントローラ90は、リンス液バルブ73を閉じて、リンス液の吐出を停止し、リンス処理を終える。
【0049】
次に、コントローラ90は、スピンモータ12を制御して、スピンチャック10の回転速度、すなわち基板Wの回転速度を加速する。それにより、基板W上のリンス液を遠心力によって振り切る振り切り乾燥処理(スピンドライ)が行われる(ステップS11)。所定時間の振り切り乾燥処理の後、コントローラ90は、スピンモータ12を停止し、基板Wの回転を停止させる(ステップS12)。
【0050】
その後、基板搬送ロボット(図示せず)によって、処理済みの基板Wが搬出される(ステップS13)。
薬液洗浄処理(ステップS9)によって、大部分の磁性流体砥粒26が、洗浄薬液とともに、遠心力によって基板W外へと排出される。また、リンス処理(ステップS10)においては、磁性流体砥粒26の残渣、洗浄薬液およびリンス液が、遠心力によって、基板W外へと排出される。これらの流体は、ガード81に受け止められて液受け82へと流下し、回収配管83へと流れこむ。そして、流体中の磁性流体砥粒26(とくに磁性砥粒26a)は回収槽84において概ね回収され、その他の流体は、排液配管86を通って排液される。回収された磁性流体砥粒26は、適切に処理することができる。たとえば、再利用のために処理されてもよい。
【0051】
図5は、前述の基板処理装置1による他の処理例を説明するための平面図であり、図6は当該処理例を説明するための図解的な側面図である。この処理例では、スピンチャック10によって基板Wを回転させる一方で、磁石移動機構50により、基板上面Waに担持された磁性流体砥粒26に磁気吸引力が作用する処理高さ(図1に実線で示す処理位置40pの高さを参照)を保持して、磁石40を回転半径方向に水平移動させる。基板上面Waの磁性流体砥粒26(磁性流体砥粒溜まり27)は、磁石40からの磁気吸引力によって、磁石40の移動に追従して、回転半径方向に移動する。それにより、磁性流体砥粒溜まり27が存在している処理対象領域28(図5に斜線を付して示す。)が基板上面Waにおいて磁石40の移動範囲に対応する領域を走査することになる。
【0052】
図7は、この処理例の流れを説明するためのフローチャートである。図4のフローチャートと実質的に同じ処理が実行される工程には、図4と同じ符号を付して、説明を省略する。
ステップS1~S4が実行され、磁性流体砥粒26が基板上面Waに供給されて担持され、その磁性流体砥粒26に対して基板下面Wb側から処理位置に配置された磁石40が対向している状態で、基板Wの回転が開始される(ステップS5)。一方、磁石移動機構50は、コントローラ90によって制御されて、磁石40を回転半径方向に移動(スキャン)させる(ステップS21)。磁石40の移動は、たとえば、回転半径方向内方に向かい、所定の反転位置で反転して、回転半径方向外方に向かう。このような往復スキャン動作が所定回数繰り返される。それにより、基板Wの上面では、磁性流体砥粒溜まり27が磁石40と同様に移動する。すなわち、磁性流体砥粒溜まり27の移動は、たとえば、回転半径方向内方に向かい、所定の反転位置で反転して、回転半径方向外方に向かう。このような往復スキャン動作が所定回数繰り返される。
【0053】
磁石40の移動に追従するように、すなわち、磁性流体砥粒溜まり27の基板上面Waでの移動に追従するように、砥粒ノズル21を移動(スキャン)させてもよい(ステップS22)。すなわち、砥粒ノズル21から吐出される磁性流体砥粒26の着液位置と磁石40とが基板Wを挟んで対向する位置関係を保ちながら、砥粒ノズル21を回転半径方向に沿って移動させてもよい。砥粒ノズル21からは、基板上面Waの磁性流体砥粒溜まり27に対して、間欠的に、または微少流量で連続的に、磁性流体砥粒26が補充されてもよい。
【0054】
なお、回転半径方向の移動とは、回転半径方向成分を含む移動という意味であり、必ずしも回転半径方向に平行である必要はない。
このようにして、所定時間に亘って、磁性流体砥粒26で基板Wの上面をスキャンしながら、スクラブ処理が行われる(ステップS6)。このスクラブ処理を終了するときには、コントローラ90は、磁石移動機構50によって、磁石40を基板下面Wbから遠く離隔した退避高さ(図1に示す退避位置40wの高さ参照)まで退避させる(ステップS7)。また、コントローラ90は、ノズル移動機構30によって、砥粒ノズル21を基板Wの上方から退避した退避位置まで移動させる(ステップS8)。
【0055】
この後の処理(ステップS9~S13)は、図4の処理例の場合と同様である。
図8は、この発明の他の実施形態に係る基板処理装置1の構成を説明するための図解的な側面図である。図8において、前述の図1に示された各部の対応部分を同一参照符号で示す。この実施形態では、基板Wの下面Wb(第1主面)に向けて砥粒ノズル21から磁性流体砥粒26が吐出され、基板Wの上面Wa(第2主面)に対向するように磁石40が配置されている。
【0056】
磁石40が基板Wの上面に対して所定の間隔42を空けて接近した処理位置に配置されているときに、砥粒ノズル21から磁性流体砥粒26が、基板下面Wbに向けて吐出される。このときの吐出位置、すなわち、砥粒供給位置25は、磁石40の磁極41に基板Wを介して対向する位置である。すると、磁性流体砥粒26は、磁石40からの磁気吸引力を受けて、基板Wの下面Wbに担持された状態となって磁性流体砥粒溜まり27を形成し、かつ基板Wの下面Wbに向かう吸引力を受ける。
【0057】
そこで、この状態で、スピンチャック10によって基板Wを回転させると、基板Wの下面Wb上で、磁性流体砥粒26に含まれる磁性砥粒が摺動または転動し、基板下面Wbをスクラブ洗浄する。こうして、基板Wの下面Wbを磁性流体砥粒26によってスクラブ洗浄することができる。
基板Wの変形によらずに磁性流体砥粒26が基板下面Wbに倣うことは、第1の実施形態の場合と同様であるから、基板Wの変形によらずに、処理対象領域に対して均一なスクラブ処理を行うことができる。
【0058】
基板Wの下面Wbに磁性流体砥粒26が供給されるので、それに対応するように、薬液ノズル61は基板Wの下面Wbに洗浄薬液を供給するように配置され、リンス液ノズル71は基板Wの下面Wbにリンス液を供給するように配置される。
図9は、磁石40の配置に関する変形例を説明するための平面図である。前述の実施形態では、一つの磁石40が基板Wの一主面(上面または下面)に対向するように配置されているが、この変形例では、基板Wの一主面(上面Waまたは下面Wb)にそれぞれ隙間を空けて対向する複数(図9の例では2つ)の磁石40が設けられており、それらの複数の磁石40が、基板Wの回転方向(基板Wの周方向)に間隔を空けて配置されている。この場合、基板Wの他の主面(下面Wbまたは上面Wa)において、複数(図9の例では2つ)の磁石40にそれぞれ対向する複数の領域に磁性流体砥粒26が供給されて、それぞれの領域に磁性流体砥粒溜まり27が形成される。
【0059】
複数の磁石40を回転軸線17からの距離の等しい位置に配置すれば、スクラブ洗浄の効率(洗浄速度)を向上できる。複数の磁石40を回転軸線17からの距離の異なる位置に配置すれば、同時にスクラブ洗浄できる処理対象領域28を広げることができる。分散配置される磁石40の数は、2つに限らず、3個以上であってもよい。
図9には、基板Wの回転方向(周方向)に間隔を空けて磁石40を配置した例を示すが、回転軸線17から延びる一つの半径に沿って複数の磁石40が配置されてもよい。
【0060】
図10は、磁石40の配置に関する他の変形例を説明するための平面図であり、図11は、その図解的な断面図である。この例では、磁石40は、平面視において無端状である。より具体的には、磁石40は平面視においてリング状(より具体的には円環状)である。磁石40は、この例では、回転軸線17上に中心を有する円周に沿う円環状の磁極41を有しており、その磁極41が基板Wの一主面(この例では下面Wb。第2主面)に隙間を空けて対向している。基板Wの他の主面(この例では上面Wa。第1主面)には、磁極41に対向する領域に磁性流体砥粒26が供給され、それにより、円環状の磁極41に対応した円環状の磁性流体砥粒溜まり27が形成されている。
【0061】
この状態で基板Wを回転軸線17まわりに回転させると、磁性流体砥粒26は、磁石40からの磁気吸引力によって位置を保持しようとするので、磁性流体砥粒26に含まれる磁性砥粒が基板上面Wa上で摺動または転動する。それによって、基板上面Waのスクラブ洗浄を行うことができる。
この構成を図8の構成に倣ってさらに変形し、磁石40を基板Wの上面Waに対向させ、基板Wを挟んで磁石40に対向する下面Wbに磁性流体砥粒26を担持させてもよい。
【0062】
図12は、磁石40の配置に関するさらに他の変形例を説明するための平面図である。この例では、磁石40は、回転半径方向に延びる長尺形状に構成されており、基板Wの一主面(上面Waまたは下面Wb。第2主面)に対向している。基板Wの他の主面(第1主面)には、磁石40に対向する領域に、磁性流体砥粒26が供給され、磁性流体砥粒溜まり27が形成される。したがって、回転半径方向に関して広い処理対象領域28のスクラブ洗浄を同時に行うことができる。
【0063】
以上、この発明の実施形態について説明してきたが、この発明は、さらに他の形態で実施することもできる。
たとえば、前述の実施形態では、磁石40を基板Wの主面に対して接近/離反移動させて、磁石40から磁性流体砥粒26に作用する磁気吸引力を制御している。しかし、電磁石を採用する場合には、通電/遮断によって、磁気吸引力をオン/オフできるので、磁石40の移動は必ずしも必要ではない。電磁石を用いる場合には、表面に適切なコーティングを施しておくことにより、磁性流体砥粒26が磁極41に付着したとしても、通電を遮断し、リンス液等で洗浄することにより、容易に磁性流体砥粒26を除去できる。
【0064】
また、前述の実施形態では、磁性流体砥粒26を洗浄薬液およびリンス液を用いて洗い流しているが、洗浄薬液を用いずに、リンス液のみの供給で磁性流体砥粒26を基板W上から洗い流す構成としてもよい。
さらに、前述の実施形態では、磁性流体砥粒26を洗浄薬液およびリンス液とともに洗い流して回収槽84で回収する構成を示したが、たとえば、磁石40を退避高さ(図1の退避位置40wの高さを参照)まで退避させた後に、回収用磁石を基板上面Waの磁性流体砥粒26に近づけ、この回収用磁石に磁性流体砥粒26を吸着させて回収してもよい。この場合、回収用磁石は、電磁石であることが好ましい。
【0065】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 :基板処理装置
10 :スピンチャック
17 :回転軸線
20 :砥粒供給機構
24 :磁性流体砥粒供給源
25 :砥粒供給位置
26 :磁性流体砥粒
27 :磁性流体砥粒溜まり
28 :処理対象領域
30 :ノズル移動機構
31 :ノズル水平移動機構
32 :ノズル垂直移動機構
40 :磁石
41 :磁極
50 :磁石移動機構
51 :磁石垂直移動機構
52 :磁石水平移動機構
60 :薬液供給機構
70 :リンス液供給機構
80 :処理カップ
81 :ガード
82 :液受け
84 :回収槽
85 :回収用磁石
90 :コントローラ
W :基板
Wa :上面
Wb :下面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12