(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022014780
(43)【公開日】2022-01-20
(54)【発明の名称】無充電警報器
(51)【国際特許分類】
H02G 1/02 20060101AFI20220113BHJP
【FI】
H02G1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020117324
(22)【出願日】2020-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】高橋 拓
(72)【発明者】
【氏名】宮本 悠平
(72)【発明者】
【氏名】谷花 優樹
【テーマコード(参考)】
5G352
【Fターム(参考)】
5G352AE05
5G352AE11
(57)【要約】
【課題】電線への設置や取り外しの際に落下させる危険性が少なく、電線に強固に固定できるとともに、製品寿命の長い無充電警報器を提供する。
【解決手段】無充電警報器1は本体2と、この本体2に電線を挟持するためのクランプ3が設置された構成となる。このクランプ3は、さらに側面視逆さJ字状をなし一端が本体2に固定されている固定クランプ片4と、固定クランプ片4に対して進退可能な移動クランプ片5とから構成されている。このうち固定クランプ片4には、係止手段により半円柱体の滑り止め部材6が係止されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線から発生する磁場を誘電極により検出し、本体内に収納され前記誘電極と電気的に接続された検知回路が前記電線の無充電状態を検知した場合に警報を発する無充電警報器であって、
側面視逆さJ字状をなす固定クランプ片と、移動クランプ片とからなり、前記電線を挟持するクランプと、
このクランプが設置された前記本体と、
前記クランプに設置された滑り止め部材と、
この滑り止め部材を前記クランプに固定する係止手段と、を備え、
前記固定クランプ片は側面視逆さJ字状の前記誘電極を内蔵し、
側面視円弧をなし内周面が前記本体側を向くように配置された第1の挟持部と、
この第1の挟持部の一端から延設されて前記本体に端部が固定された接続部とからなり、
前記移動クランプ片は、
前記内周面に対向するように配置された第2の挟持部と、
この第2の挟持部に一端が固定されるとともに他端が前記本体に設けられた第1のネジ孔に螺挿されるネジ軸と、からなり、
前記滑り止め部材は、前記第2の挟持部との間で前記電線を挟持可能に前記第1の挟持部の前記内周面に設置されていることを特徴とする無充電警報器。
【請求項2】
前記滑り止め部材が半円柱体であり、前記内周面と対向する周面と、前記半円柱体の中心軸と平行であって、かつ前記第2の挟持部と対向する平面とを有し、
前記係止手段は、
前記第1の挟持部の外周面から前記内周面まで貫通する第1の孔と、
この第1の孔と連通し前記周面上に形成されている第2のネジ孔と、を備え、
前記第1の孔は前記第2のネジ孔に螺挿されているネジを挿通可能に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の無充電警報器。
【請求項3】
前記滑り止め部材が半円柱体であり、前記内周面と対向する周面と、前記半円柱体の中心軸と平行であって、かつ前記第2の挟持部と対向する平面とを有し、
前記係止手段は、
前記第1の挟持部の外周面から前記内周面まで貫通する第3のネジ孔と、
この第3のネジ孔と連通し前記周面上に形成されている凹部と、
前記第3のネジ孔に螺挿され前記凹部内に先端を進退可能なネジと、
前記中心軸と平行な前記平面の一対の端辺に沿って前記内周面上に立設され前記平面と当接している一対のリブと、を備えていることを特徴とする請求項1に記載の無充電警報器。
【請求項4】
前記滑り止め部材が半円柱体であり、前記内周面と対向する周面と、前記半円柱体の中心軸と平行であって、かつ前記第2の挟持部と対向する平面とを有し、
前記係止手段は、
前記第1の挟持部の外周面から前記内周面まで貫通する第2の孔と、
この第2の孔と連通し前記周面に形成されている凹部と、
前記第2の孔に挿通され前記内周面より前記凹部に向けて先端が突出する係止ピンと、
前記中心軸と平行な前記平面の一対の端辺に沿って前記内周面上に立設され前記平面と当接している一対のリブと、
前記第2の孔内に保持され、前記係止ピンが前記内周面側に向かうように付勢するコイルばねと、を備えていることを特徴とする請求項1に記載の無充電警報器。
【請求項5】
前記滑り止め部材の前記平面には前記中心軸と平行に断面円弧状の溝が形成され、前記溝の直径が前記電線の外径と同一であることを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の無充電警報器。
【請求項6】
前記ネジ軸の前記他端に絶縁操作棒を連結するための連結金具が設置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の無充電警報器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間接活線作業を行う際に、電線の充電状態を確認するために使用する無充電警報器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から電線に対して縁切り・縁接続作業、バイパス機材取り付け等を行う場合、作業者は感電防止のため絶縁ヤットコ,絶縁操作棒等を用いて非接触状態で作業を行っていた。このような間接活線作業では、上述する作業用工具に加えて、電線の充電状態を確認・監視するために無充電警報器も使用されている。
この無充電警報器は、電線から発生する電流由来の磁場を測定・検知することができ、特に電線が無充電状態となった際に警報を鳴らして作業者に知らせるための器具である。このような無充電警報器を使用することで、作業者は円滑に間接活線作業を進めることができる。
【0003】
次に、無充電警報器について
図10を用いて説明する。
図10は従来から用いられている無充電警報器の正面図である。この従来から用いられている無充電警報器20は一対のアーム21,21を備え、それぞれのアーム21の中間部分で回動軸22により互いが回動可能に軸支されたものとなる。アーム21は回動軸22によって軸支された位置から一方が円弧状の挟持片21a、他方が操作片21bとなる。この操作片21b側には破線で示す空洞24がアーム21の端部において開口するように形成されている(図示せず)。
さらに、この無充電警報器20は一対の挟持片21a,21aが互いに当接するように弾性材料で付勢され、電線を挟持する一対の挟持片21a,21aのそれぞれの内面21c,21cにはゴム等の滑り止め部材23,23が設置されている。さらに、操作片21bの端部には落下防止用紐25も装着されている。
【0004】
このような無充電警報器20であれば、一対の操作片21b,21bにそれぞれ形成されている空洞24に対し、絶縁ヤットコの一対の把持アームの先端(図示せず)を差し込むことで、絶縁ヤットコが無充電警報器20に係合され、絶縁ヤットコの把持アームの開閉に伴って無充電警報器20の一対の挟持片21a,21aを開閉するという作用を有する。また、滑り止め部材23が設置されることで、挟持する電線と無充電警報器20との間の摩擦力が増加するという作用も有する。また、落下防止用紐25を絶縁ヤットコに掛けて互いを係合させるという作用も有する。
以上の作用により、絶縁ヤットコの操作に連動して一対の挟持片21a,21aが離接可能となるため、遠隔で無充電警報器20を電線に掛けたり外したりすることができ、電線の所望の位置の充電状態を測定・検知することができる。また、滑り止め部材23により無充電警報器20が電線を確りと挟持することで、所望の測定位置からずれたりしなくなる。さらに、落下防止用紐25が無充電警報器20に掛けられるようになっているため、絶縁ヤットコの把持アームから無充電警報器20が誤って外れてしまっても、落下防止用紐25に支持されることで地上への落下を防ぐことができる。
【0005】
以上のように、無充電警報器20は使い勝手の良いものではあるが、一対の操作片21b,21bの挟持力は調整できず、例えば気温が低く電線表面が硬くなったり霜の付着等で滑り易くなっていたりする場合には、無充電警報器20は位置ずれを起こし易くなるという課題があった。また、作業時の絶縁ヤットコとの係合方法が把持アームを空洞24に差し込んで把持することと、落下防止用紐25と係合させることのみであり、無充電警報器20は十分に支持されているとは言い難い。そのため、例えば絶縁ヤットコの把持が弱く落下防止用紐25で十分に係合できていない場合には、誤って無充電警報器20を地上に落下させてしまう可能性があった。さらに、滑り止め部材23の形状から、電線の太さによっては滑り止め部材23との接触面積が減少して電線の固定が十分ではなくなり、位置ずれを起こしてしまうという課題もあった。
加えて、無充電警報器20は、製造技術の向上に伴い故障し難く長寿命化してきているものの、損傷し易い滑り止め部材23を簡単に交換できない構造を有するため、滑り止め部材23が損傷すると、場合によっては無充電警報器20自体を買い替える必要があった。
【0006】
このような課題を解決するための技術として、最近では特許文献1及び特許文献2に記載された発明が開示されている。
まず、特許文献1では、「高圧間接活線用無充電警報器」という名称で、高圧活線作業を行う場合に使用され、絶縁操作具を用いて運搬する際に落下し難く、電線に強固に固定可能な無充電警報器に関する発明が開示されている。
この特許文献1に開示される発明は、内部に制御回路部を収納する弧状アーム部を有する本体と、弧状アーム部の先端面に配置した電線受け具と、弧状アーム部の基端部に揺動自在に枢着された重錘と、本体の先端寄りの部分にその中間部を揺動自在に枢支する操作片とを備え、電線受け具と弧状アーム部との対向面間を電線収容空間とし、操作片での揺動支点の一方に位置する側を電線収容空間に出退する円弧状受け止め部とするともに、操作片の他方に位置する側が絶縁操作具で把持するリング状係着部となっていることを特徴とする。
【0007】
このような構成の特許文献1に開示される発明は、電線収容空間に入った電線に対し、電線受け具の内面及び弧状アーム部の内面、並びに円弧状受け止め部の3点で支持するという作用を有する。また、弧状アーム部の基端部に枢着された重錘が無充電警報器の揺れを打ち消すように揺れるという作用を有する。
上述する作用により、特許文献1に開示される無充電警報器は電線に対して強固に固定され、電線に沿ったスライド移動が規制されるという効果を有する。さらに、本体が大きく揺れなくなり姿勢が安定化するため、絶縁ヤットコ等の絶縁操作具で回収する場合に簡単に把持できるようになる。
【0008】
一方、特許文献2には「間接活線工具用電流計」という名称で、間接活線作業時に電線の電流を計測することができ、絶縁操作棒に連結させて操作可能な電流計に関する発明が開示されている。なお、この発明は本願発明のような無充電警報器ではなく計測した電流値を表示・出力する測定器具であるが、電線を挟持して電流に起因する磁場を検知する点で共通する装置となる。
この特許文献2に開示されている発明は、開閉可能な一対のクランプ片からなり電線を挟持するクランプ部と、絶縁操作棒に連結可能で絶縁操作棒の周方向の回動によって回動する操作部と、この操作部の回動に伴って一対のクランプ片を開閉させる駆動伝達部とを備え、この駆動伝達部は閉じた状態にある一対のクランプ片の更なる閉方向への移動を規制するストッパを有し、一対のクランプ片の対向する面には滑り止め部材が配置されていることを特徴とする。
【0009】
特許文献2に開示される構成の発明によれば、絶縁操作棒に電流計を連結し、絶縁操作棒の回動により電流計の一対のクランプ片を開閉させるという作用を有する。また、駆動伝達部に備わるストッパが一対のクランプ片の過度な接近を規制するという作用も有する。さらに、滑り止め部材が電線との摩擦力を増加させるという作用を有する。
以上の作用により、絶縁操作棒を用いて電流計を運搬することができ、かつ一対のクランプ片を閉じるように絶縁操作棒を回動させるだけで電流計を電線に固定することができる。特に、絶縁操作棒の回動量を大きくすれば、電流計を電線に強固に固定できるという効果も有する。なお、絶縁操作棒の回動量はストッパにより規制されるため、クランプ片が破損しないように細心の注意を払いながら絶縁操作棒を回動させる必要もない。そして、電流計が電線に強固に固定される効果に加えて、滑り止め部材の滑り止め効果も相俟って、電流計の電線に沿った移動が一層抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2011-182546号公報
【特許文献2】特開2017-146143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に開示された発明の場合、確かに
図10の無充電警報器とは異なり電線を3点で支持し、電線に沿った移動の抑制、並びに重錘の揺動による姿勢安定性の向上が期待できる。しかしながら、特許文献1の無充電警報器は絶縁ヤットコを用いて運搬しなければならず、また落下防止用紐も備わっていないため、運搬時に落下させてしまう可能性は十分にあり、従来の無充電警報器の有する課題は解消されていない。加えて、特許文献1に開示された発明では、電線に対する支持点が3点とはなるものの電線と無充電警報器との接触面積は必ずしも大きいとは言えず、電線を挟持する力を大きくするにはリング状係着部等の部品重量を増すこと以外にない。そして、部品重量の増加を行う場合は、設置された電線への負荷の増加に加え、作業性も低下するため現実的ではない。したがって、特許文献1に開示されている無充電警報器を電線に設置した場合には、風の強さ等によっては無充電警報器が電線に沿って移動してしまう可能性もある。加えて、挟持力が3つの支持点に集中するため、挟持力の大きさによっては電線を損傷させてしまうという危険性もある。
【0012】
また、特許文献2に開示される発明であれば、無充電警報器を絶縁操作棒に連結させて運搬することが可能となり、かつ絶縁操作棒の回動により一対のクランプ片の挟持力を調整できるため、無充電警報器を強固に電線に固定することも可能となる。そして滑り止め部材の寄与から、電線に沿った移動が一層制限される。
しかしながら、特許文献2に開示される発明は従来の無充電警報器にあった課題を改善可能であっても、一対のクランプ片に設置されている滑り止め部材は交換可能なものではなく、製品寿命の延長は難しいという課題もあった。また、滑り止め部材の形状にバリエーションがあるわけではなく、電線を収容する断面円弧上の溝の直径より大きい又は小さい外径の電線を挟持する場合には、電線と滑り止め部材との接触面積が小さくなるため、電線の固定が不十分になる可能性があるという課題もある。
【0013】
本発明は上述する課題に対処してなされたものであり、その目的は電線への固定や取り外しの際に落下させる危険性が少なく、電線を強固に挟持して固定できるとともに、製品寿命の長い無充電警報器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、第1の発明は、電線から発生する磁場を誘電極により検出し、本体内に収納され誘電極と電気的に接続された検知回路が電線の無充電状態を検知した場合に警報を発する無充電警報器であって、側面視逆さJ字状をなす固定クランプ片と、移動クランプ片とからなり、電線を挟持するクランプと、このクランプが設置された本体と、クランプに設置された滑り止め部材と、この滑り止め部材をクランプに固定する係止手段と、を備え、固定クランプ片は側面視逆さJ字状の誘電極を内蔵し、側面視円弧をなし内周面が本体側を向くように配置された第1の挟持部と、この第1の挟持部の一端から延設されて本体に端部が固定された接続部とからなり、移動クランプ片は、内周面に対向するように配置された第2の挟持部と、この第2の挟持部に一端が固定されるとともに他端が本体に設けられた第1のネジ孔に螺挿されるネジ軸と、からなり、滑り止め部材は、第2の挟持部との間で電線を挟持可能に第1の挟持部の内周面に設置されていることを特徴とする。
【0015】
このような構成の第1の発明であれば、固定クランプ片に内蔵された誘電極と本体内の検知回路により、電線の磁場を検出するという作用を有する。また、ネジ軸を正逆に回動させることで回動量に比例した分だけ移動クランプ片が固定クランプ片に対し前進又は後退するという作用を有する。また、係止手段により固定クランプ片の第1の挟持部の内周面に設置された滑り止め材により、挟持された電線と第1の挟持部との間の摩擦力が増加するという作用も有する。
なお、ここでの滑り止め部材の係止手段については、特に限定はないが、滑り止め部材が破損しても容易に交換できるように、着脱容易に係止できる手段・機構であることが望ましい。例えば、滑り止め部材と第1の挟持部のそれぞれに設置された面ファスナ、磁石等の接着力を用いたものでもよく、後述するようにネジを介して滑り止め部材を第1の挟持部に固定するものであってもよい。
【0016】
次に、第2の発明は、上述する第1の発明において、滑り止め部材が半円柱体であり、内周面と対向する周面と、半円柱体の中心軸と平行であって、第2の挟持部と対向する平面とを有し、係止手段は、第1の挟持部の外周面から内周面まで貫通する第1の孔と、この第1の孔と連通し周面上に形成されている第2のネジ孔と、を備え、第1の孔は第2のネジ孔に螺挿されているネジを挿通可能に形成されていることを特徴とする。
このような構成の第2の発明であれば、上述する第1の発明の作用に加えて、第1の孔に挿通されたネジの先端部を第2のネジ孔に螺合させることで滑り止め部材が第1の挟持部に固定され、逆にネジと第2のネジ孔との係合を解除すれば滑り止め部材が第1の挟持部から取り外されるという作用を有する。
【0017】
そして、第3の発明は、上述する第1の発明において、滑り止め部材が半円柱体であり、内周面と対向する周面と、半円柱体の中心軸と平行であって、第2の挟持部と対向する平面とを有し、係止手段は、第1の挟持部の外周面から内周面まで貫通する第3のネジ孔と、この第3のネジ孔と連通し周面上に形成されている凹部と、第3のネジ孔に螺挿され凹部内に先端を進退可能なネジと、中心軸と平行な平面の一対の端辺に沿って内周面上に立設され平面と当接している一対のリブと、を備えていることを特徴とする。
このような構成の第3の発明であれば、上述の第1の発明の作用に加えて、一対のリブが滑り止め部材の第2の挟持部側への移動を規制して第1の挟持部に密着させるという作用を有する。そして、滑り止め部材の周面に形成されている凹部内にネジの先端を出入りさせることで、リブに沿った滑り止め部材の移動が規制されたり解除されたりするという作用を有する。すなわち、第3の発明は滑り止め部材をネジにより第1の挟持部に係止したり係止を解除したりするという作用を有する。
【0018】
また、第4の発明は、上述する第1の発明において、滑り止め部材が半円柱体であり、内周面と対向する周面と、半円柱体の中心軸と平行であって、第2の挟持部と対向する平面とを有し、係止手段は、第1の挟持部の外周面から内周面まで貫通する第2の孔と、この第2の孔と連通し周面に形成されている凹部と、第2の孔に挿通され内周面より凹部に向けて先端が突出する係止ピンと、中心軸と平行な平面の一対の端辺に沿って内周面上に立設され平面と当接している一対のリブと、第2の孔内に保持され、係止ピンが内周面側に向かうように付勢するコイルばねを備えていることを特徴としている。
【0019】
このような構成の第4の発明であれば、上述の第1の発明の作用に加えて、一対のリブが滑り止め部材の第2の挟持部側への移動を規制するという作用を有する。そして、滑り止め部材の周面に形成されている凹部内に、第2の孔に挿通された係止ピンの先端を出入りさせることで、リブに沿った滑り止め部材の移動が規制されたり、規制が解除されたりするという作用とを有する。加えて、コイルばねが係止ピンの先端部を滑り止め部材の凹部に向かうように付勢することで、係止ピンを固定クランプ片の外周面側に手指で挟んで引っ張ればその先端部が凹部内から出され、手指の力を取り除けば自然に係止ピンの先端部が凹部内に入るという作用を有する。すなわち、第4の発明は滑り止め部材を係止ピンの操作により簡単に固定クランプ片に係止したり係止を解除したりするという作用を有する。
なお、上述する係止ピンを付勢するコイルばねの設置方法については、特に限定するものではなく、一般に知られた手法を利用することができる。例えば、後述する本願発明の実施例で示すように(
図9参照)、先端部にコイルばねを係止する係止具が設置された係止ピンを用いて、段付き構造の第2の孔内にコイルばねを収容し係止ピンで係止するという方法が挙げられる。
【0020】
加えて、第5の発明は、上述する第2乃至第4の発明のいずれかの発明において、滑り止め部材の平面には中心軸と平行に断面円弧状の溝が形成され、溝の直径が前記電線の外径と同一であることを特徴とする。
このような構成の第5の発明であれば、上述する第2乃至第4の発明のいずれかの作用に加えて、滑り止め部材に形成された電線の外径と「同じ直径」の溝に電線を嵌め込むことで、電線と滑り止め部材との接触面積が増加するという作用を有する。ここで、「同じ直径」というのは、「実質的に同一」であることを意味する。この「実質的に同一」であるとは、設計上又は製造上の誤差及び必要なクリアランスが許容される一方で、滑り止め部材の溝の内周面と電線の外周面との間に隙間が実質的に生じていないことを意味する。この定義は以降の文中で使用される同じ言葉についても用いられるものとする。
【0021】
さらに、第6の発明は、上述する第1乃至第5の発明のいずれかの発明において、ネジ軸の他端に絶縁操作棒を連結するための連結金具が設置されていることを特徴とする。
このような構成の第6の発明であれば、上述する第1乃至第5の発明のいずれかの作用に加えて、ネジ軸と絶縁操作棒が連結するという作用を有する。
【発明の効果】
【0022】
上述するような第1の発明によれば、電線の無充電状態を検知して警報を発することができる。また、ネジ軸の回動量の調整により、電線を挟持するクランプの力の調整を容易に行うことができる。この結果、従来の無充電警報器のように電線の外径によって挟持力が変化する等もなくなり、無充電警報器が強風を受ける環境下に置かれていたり、高低差のある電線に沿って取付けられたりしている場合でも、無充電警報器を電線に強固に固定してスライド移動を抑制することが可能となる。
さらに、第1の挟持部に係止された滑り止め部材により、電線と滑り止め部材との間に大きな摩擦力を生じさせることで、無充電警報器の移動が抑制される。この結果、無充電警報器は一層スライド移動し難いものとなり、回収作業が容易になるとともに保守点検作業の労力の軽減にも繋がると考えられる。
【0023】
次に、第2の発明によれば、第1の発明の効果に加えて、滑り止め部材の第2のネジ孔と第1の孔に挿通されたネジとを螺合させたり螺合を解除したりすることにより、滑り止め部材を第1の挟持部から簡単に着脱することができるようになる。この結果、滑り止め部材が破損した際には交換可能となり、無充電警報器の製品寿命を延長させて、買い替え頻度を低下させることができる。これにより電線の保守点検費用の軽減にも繋がると考えられる。
【0024】
次に、第3の発明によれば、第1の発明の効果に加えて、ネジを正逆いずれかの方向に回動させ、ネジの先端を滑り止め部材に形成された凹部に出し入れさせることで、滑り止め部材が固定クランプ片に着脱されるようになる。このため、滑り止め部材が破損しても新品に交換可能となり、無充電警報器の製品寿命の延長にも繋がる。また、無充電警報器の買い替え頻度を低下させることもできるため、保守点検費用の軽減にも繋がると考えられる。
【0025】
さらに、第4の発明によれば、第1の発明の効果に加えて、係止ピンを手指で操作して滑り止め部材の凹部内に係止ピンの先端部を出し入れさせることで、滑り止め部材が固定クランプ片に着脱されるようになる。特に、係止ピンはコイルばねにより凹部に向かって付勢されているため、滑り止め部材を交換する際には手指で挟んで係止ピンを引っ張るだけでよく、他の工具を必要としない。このため、携行する工具の数を減らすことが可能となり、作業時の労力軽減にも繋がると考えられる。また、滑り止め部材が破損した際には容易に新品へ交換ができるため、無充電警報器の製品寿命の延長にも繋がる。さらに、無充電警報器の買い替え頻度を抑えることができ、保守点検費用の軽減にも繋がると考えられる。
【0026】
さらに、第5の発明によれば、第2乃至第4の発明のいずれかの効果に加えて、電線と滑り止め部材との間の摩擦力は増加する。この結果、無充電警報器の電線に沿ったスライド移動が一層抑えられるという効果を有する。これにより、第2乃至第4の発明における無充電警報器の電線に沿ったスライド移動を抑制する効果を一層発揮させることができる。
【0027】
さらに、第6の発明によれば、第1乃至第5の発明のいずれかの効果に加えて、無充電警報器が絶縁操作棒に固定され、かつ絶縁操作棒の周方向の回動に伴ってネジ軸を周方向に回動させることができる。これにより、落下させる心配なく絶縁操作棒を用いて無充電警報器を運搬でき、かつ電線の所望の位置に絶縁操作棒の回動操作により無充電警報器を設置したり取り外したりできるようになる。すなわち、無充電警報器の設置作業等を安全に行うことができるため、作業の際の事故件数の低減にも繋がると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る無充電警報器の外観斜視図である。
【
図2】(a)は滑り止め部材の外観斜視図であり、(b)は同図(a)の側面図であり、(c)は同図(a)の平面図である。
【
図3】(a)は
図1に示す無充電警報器の断面概略図であり、(b)は
図1の平面図である。
【
図4】
図1に示す無充電警報器が電線を挟持した状態を示す外観斜視図であり、(a)は太径の電線を挟持した場合であり、(b)は細径の電線を挟持した場合である。
【
図5】本発明の第2の実施の形態に係る無充電警報器の外観斜視図である。
【
図6】(a)は滑り止め部材の外観斜視図であり、(b)は同図(a)の側面図であり、(c)は同図(a)の平面図である。
【
図7】(a)は
図5に示す無充電警報器の断面概略図であり、(b)は同図(a)の平面図である。
【
図8】本発明の第3の実施の形態に係る無充電警報器の外観斜視図である。
【
図9】(a)は
図8に示す無充電警報器の断面概略図であり、(b)は同図(a)中の破線で描かれた円内の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の第1の実施の形態に係る無充電警報器に関し、その具体的な構成と、それに基づいて発揮される作用及び効果について、
図1乃至
図4を用いながら説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態に係る無充電警報器の外観斜視図である。なお、図中の破線は固定クランプ片4の説明を行うため便宜的に付したものであり、この破線により側面視した際の固定クランプ片4が側面視円弧となる部位(第1の挟持部4a)と、側面視矩形となる部位(接続部4c)とに分けている。また、本発明の第1の実施の形態に係る無充電警報器1は、
図1乃至
図4に記載されたものに限定されるものではなく、本発明の作用と効果が発揮される範囲内であれば、使用者の所望の構成に変更してもよい。加えて、
図1乃至
図4において、電源スイッチ等の付属装置についても説明上不要なため省略している。
【0030】
図1に示すように、無充電警報器1は本体2と、この本体2に電線を挟持するためのクランプ3が設置された構成となる。このクランプ3は、さらに側面視逆さJ字状をなし一端が本体2に固定されている固定クランプ片4と、固定クランプ片4に対して進退可能な移動クランプ片5とから構成されている。このうち固定クランプ片4には、後述する係止手段により滑り止め部材6が係止されている。なお、固定クランプ片4は従来からある無充電警報器や電流計と同様に、誘電極を内蔵し(図示せず)、挟持した電線から発生する磁場を検知することで電流の有無を確認することができる。
加えて固定クランプ片4は、
図1に示す破線を境界とする2つの部位に分けることができ、一方は側面視円弧をなし内周面4bが本体2側を向くよう配置された第1の挟持部4aと、他方は第1の挟持部4aの一端から延設され本体2に接続している接続部4cとなる。この第1の挟持部4aでは、半円柱体である上述した滑り止め部材6が溝6cの形成された平面6aを移動クランプ片5側に向け、かつその周面6bを内周面4bに密着させながら設置されている(
図2参照)。加えて、第1の挟持部4aには、内周面4bから外周面4dへ貫通する第1の孔4eが形成され(
図3(a)参照)、この第1の孔4eには先端が内周面4bより突出するネジ7が挿通されている。なお、後述するが、滑り止め部材6は、このネジ7により第1の挟持部4aに係合される。
【0031】
次に、移動クランプ片5は、内周面4b(又は滑り止め部材6の平面6a)に対向して配置されている第2の挟持部5aと、この第2の挟持部5aに一端が固定されているネジ軸5bとからなる。そして、このネジ軸5bの他端は、本体2に形成されている第1のネジ孔2aに螺挿されて本体2を貫通し、かつ絶縁操作棒と連結可能にするための連結金具8が設置されている。なお、ネジ軸5bの周面に形成されている雄ネジ面5cは、
図1に示す通りネジ軸5bの周面全体に亘って形成されたものではない。これは、第2の挟持部5aの可動域を考慮すれば、ネジ軸5bの周面全域が螺刻される必要がないためである。しかしながら、ネジ軸5bの周面全体に雄ネジ面5cが螺刻されていてもよい。この場合もネジ軸5bと同じ作用・効果が発揮できるとともに、このようなネジ軸5bの方が流通量も多い場合には、安価に入手できる可能性もあるからである。
【0032】
一方、
図1に示すように無充電警報器1は第2の挟持部5aとともに第1の挟持部4aに向かって進退可能なストッパ9を備えていてもよい。このストッパ9は、本体2内において図示しないストッパ止め具9aによりネジ軸5bに係合され、ネジ軸5b及び第2の挟持部5aの移動に伴って移動させることができる(
図3(a)を参照)。ストッパ9はクランプ3が電線を挟持した際に第1の挟持部4aと当接可能に調整されており、当接後はストッパ9が第2の挟持部5aの第1の挟持部4aへの移動を制限するようになる。すなわち、第2の挟持部5aが意図せず滑り止め部材6及び電線に強い負荷をかけてしまうのを防止することができる。
なお、このストッパ9は、クランプ3が電線を挟持した際に第1の挟持部4aと当接するように設置されておかなければならない。したがって、本願発明のように様々な直径の電線を挟持対象とする場合には、電線毎にストッパ止め具9aの位置を調整したり、電線毎に寸法の異なる専用の滑り止め部材を作製したりする等が必要と考えられる。
このストッパ9の設置は任意であるが、操作ミスによる滑り止め部材6の破損等を防ぐことができるため設置するのが望ましい。
【0033】
次に、滑り止め部材6について、
図2を用いながらその構成を詳細に説明する。
図2は本発明の第1の実施の形態に係る無充電警報器において使用する滑り止め部材であり、
図2(a)は滑り止め部材の外観斜視図であり、
図2(b)は
図2(a)の側面図であり、
図2(c)は
図2(a)の平面図である。なお、
図2(b)での破線は溝6cと第2のネジ孔6dを示しており、
図2(c)の破線は溝6cを示している。
ここで滑り止め部材6は、
図2(a)に示すように、第1の挟持部4aの内周面4bに密接可能な半円柱体である。そして、この半円柱体である滑り止め部材6の中心軸と平行な平面6aには、挟持する電線の外径と同じ大きさの直径を有する、側面視円弧状の溝6cが滑り止め部材6の中心軸と平行に形成されている(
図2(b)及び
図2(c)参照)。さらに、滑り止め部材6の周面6b上には、滑り止め部材6が内周面4bに設置された際に、第1の孔4eと連通する第2のネジ孔6dが形成されている。
【0034】
この滑り止め部材6と第1の挟持部4aとの配置に関し、
図3を用いて詳細に説明する。
図3(a)は
図1で示した本発明の第1の実施の形態に係る無充電警報器の断面概略図であり、
図3(b)は
図1の平面図である。図中の破線は
図1と同様に固定クランプ片4の構成を把握し易いように分けるためのものであり、一点鎖線は無充電警報器1を動作させるための電池及び検知回路、ブザー等を収納する収納部10の概形を表している。なお、
図3では既に説明した構成についての説明は省略する。
滑り止め部材6が第1の挟持部4aに設置されると、周面6b上に形成された第2のネジ孔6dは、第1の挟持部4aに形成された第1の孔4eと連通する。その際、
図3(a)のように第1の挟持部4aの内周面4b側に先端部が突出するようにネジ7を第1の孔4eに挿通させれば、ネジ7の先端部は第2のネジ孔6d内に突出するようになる。なお、第2のネジ孔6dはネジ7と螺合するように形成されており、
図3(b)に示すように、ネジ7の一端にマイナスドライバーを係合可能な溝7aが形成されている場合には、この溝7aにマイナスドライバーの先端部を差し込んでネジ7を正逆に回転させることで、ネジ7は第2のネジ孔6dと螺合したり、螺合を解除したりできる。なお、溝7aの形状は特に制限はなく、ネジ7を回転させることができる構造であればよく、リブのように手指で摘まんで回動させるタイプでもよい。
【0035】
以上から、無充電警報器1は、以下に示す作用を有すると考えられる。まず、ネジ軸5bが正逆に回動されることで、その回動量に比例して移動クランプ片5(第2の挟持部5a)を固定クランプ片4(第1の挟持部4a)に対し進退させるという作用を有する。また、第1の挟持部4aに設置されている滑り止め材6により、第1の挟持部4aと電線との間で発生する摩擦力が増加するという作用も有する。加えて、滑り止め部材6に形成された、電線の外径と「同じ直径」の溝6cに電線を嵌め込めば、電線と滑り止め部材6との間の接触面積を増加させて電線と滑り止め部材6との間の摩擦力を増加させるという作用を有する。
そして、第1の孔4eに挿通されたネジ7の先端部を、滑り止め部材6の第2のネジ孔6dに螺合させることで滑り止め部材6を第1の挟持部4aに係合させたり、逆にネジ7と第2のネジ孔6dとの螺合を解除すれば滑り止め部材6が第1の挟持部4aから容易に取り外せたりするという作用を有する。
【0036】
上述する作用により、無充電警報器1は以下の効果を有する。すなわち、ネジ軸5bの回動量の調整により、クランプ3が電線を挟持する力の調整を容易に行うことができるようになり、従来の無充電警報器に比べ無充電警報器1は電線に強固に固定されることができる。その結果、無充電警報器1が強風を受けるような環境下に置かれていたり、高低差のある電線に沿って取付けられたりしている場合であっても、無充電警報器1が電線に沿ってスライド移動をすることを抑制可能となる。
また、第1の挟持部4aに係止された滑り止め部材6により、電線との間に発生する大きな摩擦力により無充電警報器1のスライド移動が抑制される。加えて、溝6cに電線が嵌め込まれることで電線と滑り止め部材6との間の摩擦力は一層増加するため、無充電警報器1のスライド移動が抑えられるという効果を一層発揮させるものとなる。この結果、回収作業が容易になるとともに保守点検作業の労力の軽減にも繋がると考えられる。
【0037】
一方、無充電警報器1では、第2のネジ孔6dと第1の孔4eに挿通されたネジ7とを螺合させたり螺合を解除したりすることにより、滑り止め部材6を第1の挟持部4aから簡単に着脱することができるようになる。この結果、滑り止め部材6が破損した際には交換が可能となり、無充電警報器1の製品寿命を延長させることができ、買い替え頻度を低下させることができる。これにより電線の保守点検費用の軽減にも繋がると考えられる。さらに、滑り止め部材6が交換可能となるため、電線の外径が様々存在する場合には、電線の外径に合わせた溝6cが形成された滑り止め部材6を設置することが可能となる。すなわち、電線の仕様に合わせ、最適な無充電警報器1を組み立てることができるのである。
【0038】
図4は、
図1の無充電警報器が異なる外径を有する電線を挟持した際の状態を示す外観斜視図であり、
図4(a)は太径の電線を挟持した場合であり、
図4(b)は細径の電線を挟持した場合である。なお、既に説明した構成についての説明は省略するとともに、説明に用いない構成の一部については図が煩雑にならないように符号付けを省略している。
挟持対象となる電線11の外径に太径と細径となる2種類が存在し、例えば太径の電線11を挟持対象とする場合には、太径の電線11と同じ径の溝6cを有する滑り止め部材6を第1の挟持部4aに設置することで、
図4(a)のように太径の電線11を強固に固定することができる。一方、細径の電線11を挟持対象とする場合には、細径の電線11の外径と同じ径の溝6cを有する滑り止め部材6に交換すれば、
図4(b)のように細径の電線11を強固に固定することができるのである。
以上から、滑り止め部材6を第1の挟持部4aに着脱可能に係止できることで、様々な外径を有する電線11に合わせて最適な滑り止め部材6に交換しながら、無充電警報器1のスライド移動を抑制することができる。
【0039】
また、無充電警報器1はネジ軸5bに設置された連結金具8により絶縁操作棒に固定でき、絶縁操作棒の周方向の回動に伴ってネジ軸5bを周方向に回動させることもできる。これにより、無充電警報器1を落下させることなく運搬でき、かつ電線の所望の位置に絶縁操作棒の回動操作により無充電警報器1を設置したり取り外したりできるようになる。すなわち、無充電警報器1の設置・取り外し作業等を安全に行えるため、作業時の事故防止にも繋がる。
【0040】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る無充電警報器について、
図5乃至
図7を用いて説明する。
図5は本発明の第2の実施の形態に係る無充電警報器の概略図である。また、
図6は本発明の第2の実施の形態に係る無充電警報器において使用する滑り止め部材の構造を示し、
図6(a)は滑り止め部材の外観斜視図であり、
図6(b)は
図6(a)の側面図であり、
図6(c)は
図6(a)の平面図である。なお、
図6(b),
図6(c)での破線は溝13cを示している。
図7は本発明の第2の実施の形態に係る無充電警報器であって、
図7(a)は断面概略図であり、
図7(b)は平面図である。
図7に関し、図中の破線は
図1と同様に固定クランプ片4の構成を把握し易いように付した境界線であり、一点鎖線は無充電警報器を作動させるための電池及び検知回路,ブザー等を収納する収納部10の概形を表している。
ここで、本発明の第2の実施の形態に係る無充電警報器12は、上述した無充電警報器1の滑り止め部材と固定クランプ片との係合に関わる構成以外は共通の構成となる。このため、
図5乃至
図7において、共通の構成については同じ名称と符号を用い、それらの説明は省略するものとする。また、共通の構成により生じる作用、効果についての説明も省略する。そして、無充電警報器12は、
図5乃至
図7に記載されたものに限定されるものではない。本発明の作用と効果が発揮される範囲内であれば、使用者の所望の構成に変更してもよい。加えて、
図5乃至
図7において、電源スイッチ等の付属装置についても説明上不要なため省略している。
【0041】
図5に示すように、本発明の第2の実施の形態に係る無充電警報器12では、無充電警報器1の第1の孔4eの代わりに、第3のネジ孔4gが第1の挟持部4aの外周面4dから内周面4bまで貫通するように形成されている(
図7参照)。そして、この第3のネジ孔4gには、ネジ14がその先端を内周面4bから突出可能に螺挿されている。加えて、半円柱体の滑り止め部材13がその周面13bを内周面4bに向け設置される。また、滑り止め部材13の中心軸と平行な平面13aの一対の端辺に沿って、内周面4b上に立設され平面13aと当接する一対のリブ4f,4fを備えている。
次に、滑り止め部材13について
図6を用いながら詳細に説明する。
図6(a)乃至
図6(c)に示すように、半円柱体である滑り止め部材13は、その中心軸と平行な平面13a上に、挟持する電線の外径と同じ大きさの直径を有する側面視円弧状の溝13cが当該中心軸と平行に形成されている(
図6(b)及び
図6(c)参照)。さらに、滑り止め部材13の周面13b上には、滑り止め部材13が内周面4bに設置された際に、第3のネジ孔4gと連通する凹部13dが形成されている(
図7(a)参照)。ここで、この凹部13dの形状に関し、
図6に示すような溝状でなくてもよく、孔であってもよい。なお、凹部13dを溝状とする場合には、
図6に示すように滑り止め部材13の中心軸と平行にならないようにする必要がある。詳細は後述するが、溝状の凹部13dが当該中心軸と平行に形成された場合、凹部13dに入るネジ14により滑り止め部材13の移動を規制できなくなり、滑り止め部材13を固定クランプ片4に係止できなくなるためである。
【0042】
上述した滑り止め部材13と第1の挟持部4aとの配置に関し、
図7を用いて詳細に説明する。
図7(a)に示すように、滑り止め部材13は一対のリブ4f,4fに沿って紙面に垂直な方向から内周面4b上でスライド移動させることでのみ設置できる。このとき周面13b上に形成された凹部13dは第1の挟持部4aに形成された第3のネジ孔4gと連通するようになる。そして、
図7(b)に示すように外周面4d側の一端にマイナスドライバーを係合可能な溝14aが形成されているネジ14であれば、マイナスドライバーを係合させて正逆に回転させれば、ネジ14の先端を第3のネジ孔4gから凹部13d内に進退可能に移動させることができる。なお、溝14aの形状には特に制限はなく、ネジ14を回転させることができる構造であればよい。すなわち、溝状ではなく手指で摘まむことが可能なリブ等が形成されているものでもよい。
【0043】
このような構成の無充電警報器12であれば、一対のリブ4f,4fが滑り止め部材13に対して第2の挟持部5a側への移動を規制しながら支持するという作用を有する。そして、滑り止め部材13の周面13bに形成されている凹部13d内にネジ14の先端を出入りさせることにより、リブ4fに沿った滑り止め部材13の移動を規制したり、移動の規制を解除したりするという作用を有する。すなわち、滑り止め部材13を固定クランプ片4に係止したり係止を解除したりするという作用を有する。
【0044】
以上の作用により、無充電警報器12は、第3のネジ孔4gに螺挿されているネジ14を正逆いずれかの方向に回動させ、ネジ14の先端を滑り止め部材13の凹部13d内に出入りさせるだけで、滑り止め部材13を固定クランプ片4に着脱できるようになる。これにより滑り止め部材13が破損しても容易に新品へ交換可能となり、無充電警報器12の製品寿命の延長にも繋がる。また、無充電警報器12の買い替え頻度を低下させることも可能となるため、保守点検に関する費用の軽減にも繋がると考えられる。
【0045】
次に、本発明の第3の実施の形態に係る無充電警報器について、
図8及び
図9を用いて説明する。
図8は本発明の第3の実施の形態に係る無充電警報器の概略図である。なお、図中の破線は
図1等で付したものと同様、固定クランプ片4の構成を説明し易くするための境界線である。そして、
図9は本発明の第3の実施の形態に係る無充電警報器であって、
図9(a)は断面概略図であり、
図9(b)は
図9(a)中の破線で描かれた円内の拡大図である。図中の円状ではない一方の破線は固定クランプ片4の構成を把握し易いように付したものであり、一点鎖線は無充電警報器を作動させるための電池及び検知回路,ブザー等を収納する収納部10の概形を表している。
本発明の第3の実施の形態に係る無充電警報器15は、滑り止め部材13と固定クランプ片4(第1の挟持部4a)との係合方法に関わる構成以外は、基本的に無充電警報器1,12と共通した構成を有する。このため、
図8及び
図9において、無充電警報器1,12と共通の構成については同じ名称と符号を用い、それら共通する構成の説明は省略する。また、共通の構成により生じる作用、効果についての説明も省略する。加えて、無充電警報器15は、
図8及び
図9に記載されたものに限定されるものではない。本発明と同じ作用と効果が発揮される範囲内であれば、使用者の所望の構成に変更してもよい。なお、
図8及び
図9において、電源スイッチ等の付属装置についても説明上不要なため省略している。
【0046】
図8に示すように、無充電警報器15は、無充電警報器12と同様に滑り止め部材13が一対のリブ4f,4fと当接しながら第1の挟持部4aの内周面4b上に設置される。一方、無充電警報器15は、無充電警報器12の第3のネジ孔4gの代わりに、第1の挟持部4aの外周面4dから内周面4bまで貫通する第2の孔4h(図示せず)を備え、この第2の孔4hには内周面4bより先端部16aが突出可能な係止ピン16が挿通されている(
図9参照)。
【0047】
次に、係止ピン16の固定クランプ片4(第1の挟持部4a)への設置方法等について、
図9を用いながら詳細に説明する。
図9(a),
図9(b)に示すように、係止ピン16が挿通されている第2の孔4hは内周面4b側から大径孔4iと小径孔4jの順に連通した段付き構造となり、大径孔4iは滑り止め部材13の周面13bに形成されている凹部13dと連通するように形成されている。大径孔4iには小径孔4jの径より大きな直径のコイルばね17が係止ピン16に外挿された状態で収容されている。そして、係止ピン16の先端部16aには、コイルばね17が係止ピン16から抜けて大径孔4iより脱落しないように係止具16bが設置されている。
なお、係止具16bの形状については特に指定はなく、コイルばね17の係止ピン16からの抜けを防止可能であるならば形状は任意に決めることができる。例えば、係止ピン16の中心軸に対して垂直に交わるような棒体であってもよく、係止ピン16が中心を貫通する円板体でもよい。
【0048】
また、係止ピン16は内周面4bから先端部16aが突出するようにコイルばね17により付勢され、かつ外周面4d側より引っ張ることで先端部16aが大径孔4i内に完全に収容される構造となっている。なぜなら、付勢力がゼロの場合には係止ピン16の姿勢が安定せず、係止ピン16の操作性が悪くなったり、意図せず破損させたりする可能性があるからである。
さらに、先端部16aが大径孔4i内に収容されない場合には、滑り止め部材13の凹部13dに先端部16aを出し入れすることができず、後述するように滑り止め部材13の交換自体が困難になるからである。
加えて、滑り止め部材13の凹部13dの形状は、無充電警報器12において説明したように、
図6に示すような溝でなくてもよく、孔であってもよい。ここで、凹部13dを溝状とする場合には、
図6に示すように滑り止め部材13の中心軸と平行にならないように注意しなければならないことは既に述べた通りである。
【0049】
上述する構成の無充電警報器15であれば、滑り止め部材13の周面13bに形成されている凹部13d内に、第2の孔4hに挿通された係止ピン16の先端部16aを出入りさせることで、リブ4fに沿った滑り止め部材13の移動を規制したり規制を解除したりするという作用を有する。すなわち、滑り止め部材13を固定クランプ片4(第1の挟持部4a)に係止したり係止を解除したりするという作用を有する。そして、コイルばね17が係止ピン16の先端部16aを滑り止め部材13の凹部13dに向かうように付勢するための、係止ピン16を外周面4d側から手指で挟んで引っ張れば、その先端部16aが凹部13d内から出され、手指の力を取り除けば再び先端部16aが凹部13d内に入るという作用を有する。
【0050】
以上の作用により、無充電警報器15では、滑り止め部材13を着脱する場合、コイルばね17による付勢力に抗して係止ピン16を手指で挟んで引っ張るだけで良い。そして、係止ピン16を引っ張りながら滑り止め部材13を第1の挟持部4aに設置又は第1の挟持部4aから抜き取り、係止ピン16の引っ張りを止めるだけで、滑り止め部材13を係止したり取り外したりすることができる。
したがって、滑り止め部材13の着脱並びに交換が非常に容易になるとともに、交換時にドライバー等の工具が不要なため、現場に携行する工具の数を減らすことができ作業時の労力軽減に繋がる。また、滑り止め部材13が破損しても新品に交換可能なため、製品寿命の延長にも繋がる。さらに、無充電警報器15の買い替え頻度を抑えることができるため、保守点検に要する費用の軽減にも繋がるのである。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上説明したように、本発明は電線の無充電状態を感知して知らせる無充電警報器に関するものであり、電線等の設備の保守管理に関する技術分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0052】
1…無充電警報器 2…本体 2a…第1のネジ孔 3…クランプ 4…固定クランプ片 4a…第1の挟持部 4b…内周面 4c…接続部 4d…外周面 4e…第1の孔 4f…リブ 4g…第3のネジ孔 4h…第2の孔 4i…大径孔 4j…小径孔 5…移動クランプ片 5a…第2の挟持部 5b…ネジ軸 5c…雄ネジ面 6…滑り止め部材 6a…平面 6b…周面 6c…溝 6d…第2のネジ孔 7…ネジ 7a…溝 8…連結金具 9…ストッパ 9a…ストッパ止め具 10…収納部 11…電線 12…無充電警報器 13…滑り止め部材 13a…平面 13b…周面 13c…溝 13d…凹部 14…ネジ 14a…溝 15…無充電警報器 16…係止ピン 16a…先端部 16b…係止具 17…コイルばね 20…無充電警報器 21…アーム 22…回動軸 23…滑り止め部材 24…空洞 25…落下防止用紐