IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カヤバ工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-ギヤケース 図1
  • 特開-ギヤケース 図2
  • 特開-ギヤケース 図3
  • 特開-ギヤケース 図4
  • 特開-ギヤケース 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147804
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】ギヤケース
(51)【国際特許分類】
   B62D 3/12 20060101AFI20220929BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
B62D3/12 503
B62D5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021049213
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 拓造
(72)【発明者】
【氏名】下田 勝海
(72)【発明者】
【氏名】青山 雅
(72)【発明者】
【氏名】橘田 槙
(72)【発明者】
【氏名】山田 展資
(72)【発明者】
【氏名】蔡 冠華
(72)【発明者】
【氏名】増田 大輝
【テーマコード(参考)】
3D333
【Fターム(参考)】
3D333CB21
3D333CC14
3D333CD09
3D333CD16
3D333CD28
3D333CD39
3D333CE17
(57)【要約】
【課題】ギヤケースの第一ハウジングと第二ハウジングの間のシール性を向上させる。
【解決手段】ギヤケース60は、ラックハウジング70と、ハンドル側ハウジング80と、を備え、ラックハウジング70は、環状の第一シール面73と、第一締結面76と、を有し、ハンドル側ハウジング80は、環状の第二シール面85と、第二締結面88と、を有し、ボルト61により締結されない状態では、第一シール面73と第二シール面85との少なくとも一部が互いに接触した状態で第一締結面76と第二締結面88の間に隙間が形成され、ボルト61により締結された状態では、第一シール面73及び第二シール面85の一方の少なくとも一部が潰された状態で第一シール面73と第二シール面85が互いに接触するとともに第一締結面76と第二締結面88が接触する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ギヤケースであって、
開口部を有しギヤを収容する第一ハウジングと、
締結部材を介して前記第一ハウジングに締結される第二ハウジングと、を備え、
前記第一ハウジングは、
前記開口部を囲うように設けられる環状の第一シール部と、
前記締結部材が挿入される第一挿入穴が設けられる第一締結部と、を有し、
前記第二ハウジングは、
前記第一シール部と接触する環状の第二シール部と、
前記締結部材が挿入される第二挿入穴が設けられ前記締結部材により前記第一締結部と接触する第二締結部と、を有し、
前記締結部材により締結されない状態では、前記第一シール部と前記第二シール部との少なくとも一部が互いに接触した状態で前記第一締結部と前記第二締結部の間に隙間が形成され、前記締結部材により締結された状態では、前記第一シール部及び前記第二シール部の一方の少なくとも一部が潰された状態で前記第一シール部と前記第二シール部が互いに接触するとともに前記第一締結部と前記第二締結部が接触することを特徴とするギヤケース。
【請求項2】
請求項1に記載のギヤケースであって、
前記第一シール部及び前記第二シール部の少なくとも一方は、前記第一締結部及び前記第二締結部のうち前記一方のシール部に対応する締結部よりも突出して形成されることを特徴とするギヤケース。
【請求項3】
請求項1または2に記載のギヤケースであって、
前記締結部材により締結されない状態では、前記第一シール部と前記第二シール部とは互いに平行な平面であることを特徴とするギヤケース。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載のギヤケースであって、
前記第一ハウジングの前記開口部と前記第二ハウジングとの間に圧縮した状態で設けられるシール部材をさらに備え、
前記シール部材は、前記第一シール部及び前記第二シール部よりも径方向内側に設けられることを特徴とするギヤケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギヤケースに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ラック軸の一部の周囲を覆うとともに、電動モータにて回転駆動されるウォームとともに減速部を構成するウォームホイールを収容するハウジングと、ハウジングに形成された開口部を覆うようにハウジングに装着されるカバーと、を備えるステアリング装置が開示されている。カバーは、ハウジングにボルトによって固定される。カバーには、カバーとハウジングとの間の隙間をシールするOリングが設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6592219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のステアリング装置は、ハウジングとカバーがボルトによって固定され、互いの接触面にボルトの軸力が作用することで当該接触面がシールされる。ハウジングとカバーをボルトで締結すると、ボルトに近い接触面ではボルトの軸力が作用しやすいため密着性が高く、ボルトから遠い接触面ではボルトの軸力が作用しづらいため密着性が低い傾向となる。よって、当該接触面でのハウジングとカバーの密着性が周方向において不均一となる場合がある。その場合には、当該接触面においてハウジングとカバーの間のシール性が低くなってしまう。カバーとハウジングの間にはOリングが設けられるものの、Oリングのみでは、ハウジングとカバーの間で高いシール性が得られない可能性がある。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、ギヤケースの第一ハウジングと第二ハウジングの間のシール性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ギヤケースであって、開口部を有しギヤを収容する第一ハウジングと、締結部材を介して第一ハウジングに締結される第二ハウジングと、を備え、第一ハウジングは、開口部を囲うように設けられる環状の第一シール部と、締結部材が挿入される第一挿入穴が設けられる第一締結部と、を有し、第二ハウジングは、第一シール部と接触する環状の第二シール部と、締結部材が挿入される第二挿入穴が設けられ締結部材により第一締結部と接触する第二締結部と、を有し、締結部材により締結されない状態では、第一シール部と第二シール部との少なくとも一部が互いに接触した状態で第一締結部と第二締結部の間に隙間が形成され、締結部材により締結された状態では、第一シール部及び第二シール部の一方の少なくとも一部が潰された状態で第一シール部と第二シール部が互いに接触するとともに第一締結部と第二締結部が接触することを特徴とする。
【0007】
この発明では、第一ハウジングと第二ハウジングの締結前には、第一シール部と第二シール部が互いに接触し、第一締結部と第二締結部の間に隙間が形成される。そして、当該隙間を埋めるように第一ハウジングと第二ハウジングが締結される。第一シール部と第二シール部は、締結部材による締結前は互いに接触している。そのため、締結の初期は第一シール部と第二シール部に締結部材の力が主に作用し、第一シール部と第二シール部の一方が潰れることで、第一シール部と第二シール部が互いに密着する。よって、第一シール部と第二シール部の密着性が高くなる。
【0008】
本発明は、第一シール部及び第二シール部の少なくとも一方は、第一締結部及び第二締結部のうち一方のシール部に対応する締結部よりも突出して形成されることを特徴とする。
【0009】
本発明は、締結部材により締結されない状態では、第一シール部と第二シール部とは互いに平行な平面であることを特徴とする。
【0010】
この発明では、第一ハウジングと第二ハウジングの締結時に第一シール部と第二シール部の接触面に締結部材の力が均一に作用する。これにより、第一シール部及び第二シール部の一方が均一に潰されるようにして第一シール部と第二シール部が互いに密着する。よって、第一シール部と第二シール部が接触面でより確実に密着する。
【0011】
本発明は、第一ハウジングの開口部と第二ハウジングとの間に圧縮した状態で設けられるシール部材をさらに備え、シール部材は、第一シール部及び第二シール部よりも径方向内側に設けられることを特徴とする。
【0012】
この発明では、第一シール部及び第二シール部に加えて、シール部材によっても第一ハウジングと第二ハウジングの間がシールされる。また、シール部材が異物と接触し劣化することが抑制される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ギヤケースの第一ハウジングと第二ハウジングの間のシール性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る電動パワーステアリング装置の構成図である。
図2】第1実施形態におけるギヤケースの部分断面図である。
図3図2に示すAの拡大断面図であり、ボルトにより締結される前の状態を示す。
図4】第2実施形態におけるギヤケースの部分断面図である。
図5図4に示すBの拡大断面図であり、ボルトにより締結される前の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面を参照して、本発明の実施形態に係るギヤケースを備える電動パワーステアリング装置について説明する。
【0016】
<第1実施形態>
まず、図1~3を参照して、本発明の第1実施形態に係るギヤケース60を備える電動パワーステアリング装置100について説明する。
【0017】
図1に示すように、電動パワーステアリング装置100は、運転者によるステアリングホイール1の操舵に応じて回転するステアリングシャフト11と、ステアリングシャフト11に設けられステアリングシャフト11と共に回転する第一ピニオンギヤ16と、第一ピニオンギヤ16に噛み合うラックギヤ12aを有し車輪2を転舵するラックシャフト12と、を備える。
【0018】
ステアリングシャフト11は、運転者がステアリングホイール1を操作するステアリング操作に伴って回転する入力シャフト13と、ラックシャフト12を変位させる出力シャフト15と、入力シャフト13と出力シャフト15を連結するトーションバー14と、により構成される。
【0019】
ラックシャフト12は、車両の左右方向に延びて設けられる軸状部材であり、タイロッド5及びナックルアーム4を介して車輪2に連結される。
【0020】
出力シャフト15とラックシャフト12は、出力シャフト15の端部に設けられる第一ピニオンギヤ16と、ラックシャフト12に設けられるラックギヤ12aと、からなるラックアンドピニオン機構を介して互いに連結される。出力シャフト15のトルクは、互いに噛み合う第一ピニオンギヤ16及びラックギヤ12aを介してラックシャフト12の軸心方向の荷重に変換されてラックシャフト12に伝達される。これにより、ラックシャフト12は、伝達されるトルクにより軸心方向に変位し、タイロッド5を介して車輪2を転舵する。また、ラックシャフト12は、第一付勢機構17(図2参照)により第一ピニオンギヤ16に向けて付勢される。これにより、ラックギヤ12aと第一ピニオンギヤ16の間のバックラッシュが低減され、ラックシャフト12が変位する際の歯打ち音が低減される。
【0021】
電動パワーステアリング装置100は、電動モータ21により操舵補助トルクを発生させるアシスト部20を備える。アシスト部20により、電動モータ21のトルクが出力シャフト15と独立してラックシャフト12に伝達され、運転者のステアリング操作がアシストされる。アシスト部20の詳しい構成は、第2実施形態にて説明する。
【0022】
電動パワーステアリング装置100は、トーションバー14に作用するトルクを検出するトルクセンサ40と、トルクセンサ40の検出値に応じて電動モータ21の駆動を制御するコントローラ30と、を備える。コントローラ30は、トルクセンサ40からの出力信号に基づいて、電動モータ21が出力するトルクを演算し、そのトルクが発生するように電動モータ21の駆動を制御する。
【0023】
このように、上記構成の電動パワーステアリング装置100では、入力シャフト13に付与される操舵トルクをトルクセンサ40にて検出し、その検出結果に基づいて電動モータ21の駆動をコントローラ30にて制御して運転者のステアリング操作をアシストすることが可能である。以上のように、電動パワーステアリング装置100は、運転者による操舵トルクと電動モータ21による操舵補助トルクとがそれぞれ独立してラックシャフト12に入力されるデュアルピニオン式のステアリング装置である。
【0024】
図2に示すように、電動パワーステアリング装置100は、第一ピニオンギヤ16及びラックギヤ12aを収容するギヤケース60を備える。本実施形態においては、第一ピニオンギヤ16及びラックギヤ12aがギヤに相当する。なお、図2は後述するラックハウジング70とハンドル側ハウジング80とがボルト61により締結された後の状態を示す図である。
【0025】
ギヤケース60は、開口部71を有し第一ピニオンギヤ16及びラックギヤ12aを収容する第一ハウジングとしてのラックハウジング70と、締結部材としてのボルト61を介してラックハウジング70に締結される第二ハウジングとしてのハンドル側ハウジング80と、ラックハウジング70の開口部71とハンドル側ハウジング80との間に圧縮した状態で設けられるシール部材としてのOリング90と、を備える。ラックハウジング70とハンドル側ハウジング80は、例えばアルミ等の金属で形成される。
【0026】
ハンドル側ハウジング80には、開口部81,82が同軸上に形成される。ラックハウジング70とハンドル側ハウジング80は、ラックハウジング70の開口部71の内周面と、ハンドル側ハウジング80の開口部82側の端部83の外周面と、が嵌合して、ボルト61により締結される。
【0027】
Oリング90は、ラックハウジング70の開口部71の内周面とハンドル側ハウジング80の外周面との間に設けられる。具体的には、Oリング90は、開口部71の内周面と、当該内周面に設けられる段差と、開口部82側の端部83の外周面と、当該外周面に設けられる段差と、の間で形成される空間に設けられ、開口部71の径方向に圧縮される。なお、Oリング90は、ラックハウジング70とハンドル側ハウジング80の間に軸方向に圧縮されて設けられてもよい。
【0028】
ラックハウジング70には、開口部71を含む空間72が設けられる。また、ハンドル側ハウジング80には、開口部81,82を含む空間84が設けられる。本実施形態におけるギヤケース60は、空間72及び空間84に、ラックシャフト12、入力シャフト13の一部、トーションバー14の一部、出力シャフト15、第一付勢機構17、及びトルクセンサ40が収容される。入力シャフト13及び出力シャフト15は、それぞれ軸受62及び軸受63を介してハンドル側ハウジング80に回転自在に支持される。
【0029】
次に、図2,3を参照してボルト61によりラックハウジング70とハンドル側ハウジング80とを締結する構成について詳しく説明する。以下では、ボルト61によりラックハウジング70とハンドル側ハウジング80とを締結することを、単に「ボルト61による締結」等とも称する。図3は、ボルト61による締結前における、図2にAで示すラックハウジング70とハンドル側ハウジング80の接触面を示す拡大断面図である。
【0030】
図3に示すように、ラックハウジング70は、開口部71を囲うように設けられる環状の第一シール部としての第一シール面73と、ボルト61が挿入される第一挿入穴74が設けられる第一取付部75と、を有する。第一取付部75には、ハンドル側ハウジング80に対向し第一挿入穴74が形成される第一締結部としての第一締結面76が設けられる。言い換えれば、ラックハウジング70は、ボルト61が挿入される第一挿入穴74が設けられる第一締結面76を有する。
【0031】
第一シール面73は、ラックハウジング70の開口部71側の端面のうち、ボルト61により締結された状態で、ハンドル側ハウジング80との密着性が他よりも高くなる部分である。また、第一締結面76は、ラックハウジング70の開口部71側の端面のうち、開口部71の軸方向視においてボルト61の頭部61aと重なる部分である。なお、ボルト61の頭部61aとハンドル側ハウジング80との間に座金が設けられる場合は、第一締結面76は、ラックハウジング70の開口部71側の端面のうち、開口部71の軸方向視において座金と重なる部分となる。第一シール面73は、第一締結面76と同一平面上で第一締結面76よりも開口部71の径方向内側に設けられる。また、第一シール面73と第一締結面76は、ラックハウジング70の開口部71側の同一の端面上に設けられる。第一挿入穴74にはボルト61の雄ねじと螺合する雌ねじ部が設けられる。
【0032】
ハンドル側ハウジング80は、第一シール面73と接触する環状の第二シール部としての第二シール面85と、ボルト61が挿入される第二挿入穴86が設けられる第二取付部87と、を有する。第二取付部87には、第一締結面76に対向し第二挿入穴86が形成される第二締結部としての第二締結面88が設けられる。第二締結面88は、後述するようにボルト61により第一締結面76と接触する。言い換えれば、ハンドル側ハウジング80は、ボルト61が挿入される第二挿入穴86が設けられボルト61により第一締結面76と接触する第二締結面88を有する。
【0033】
ラックハウジング70とハンドル側ハウジング80は、ボルト61によりラックハウジング70の開口部71の軸方向に締結される。ボルト61、第一締結面76、及び第二締結面88は、開口部71の周方向に間隔を空けて複数設けられる。
【0034】
ギヤケース60は、ラックハウジング70の第一シール面73とハンドル側ハウジング80の第二シール面85との接触面にボルト61の軸力が作用することで当該接触面がシールされる。第一シール面73と第二シール面85は互いに平行であり、第二シール面85と第二締結面88は互いに平行である。ボルト61による締結前では、第二シール面85は、第二締結面88よりも突出して形成される。言い換えれば、ボルト61による締結前では、第二シール面85は、第二締結面88よりも第一シール面73に向けて突出した位置に形成される。具体的には、ボルト61による締結前では、第二シール面85は第二締結面88よりも開口部71の軸方向に突出し、その突出量は第二シール面85の周方向の位置によらず一定である。
【0035】
第二挿入穴86は、第二取付部87を軸方向に貫通する。ボルト61は、第二取付部87の第二挿入穴86を挿通し、第一取付部75の第一挿入穴74に設けられる雌ねじ部と螺合して締結される。なお、ボルト61と螺合する雌ねじ部は、第一挿入穴74と第二挿入穴86の両方に設けられてもよい。また、第一挿入穴74と第二挿入穴86の両方に雌ねじ部が設けられなくてもよい。この場合は、第一取付部75を軸方向に貫通するように第一挿入穴74が設けられ、第一挿入穴74及び第二挿入穴86を挿通したボルト61が、ナット等により締結されればよい。
【0036】
ボルト61による締結前(ボルト61により締結されない状態)では、前述のように第二シール面85は第二締結面88よりも突出して形成され、第一シール面73と第二シール面85とが互いに接触する。具体的には、第一シール面73の全体と第二シール面85の全体とが互いに接触する。一方で、第一シール面73は第一締結面76と同一平面上であるため、第一締結面76と第二締結面88は互いに接触せず、両者の間には隙間が形成される。ボルト61による締結は、当該隙間を埋めるようにして行われる。具体的には、ラックハウジング70とハンドル側ハウジング80は、図3に示す状態から図2に示す状態となるように第一締結面76と第二締結面88が互いに接触するまでボルト61により締結されることで固定される。
【0037】
ボルト61による締結時には、ラックハウジング70とハンドル側ハウジング80にボルト61の軸力が作用する。ここで、一般的に、ハウジング同士をボルトで締結すると、ボルトに近い接触面では、作用するボルトの軸力により密着性が高く、ボルトから遠い接触面では、作用するボルトの軸力により密着性が低い傾向となる。よって、当該接触面でのハウジング同士の密着性が不均一となる場合がある。その場合には、当該接触面においてハウジング同士の間のシール性が低くなってしまう。ハウジング同士の間にOリングが設けられても、Oリングのみでは、ハウジング同士の間で高いシール性が得られない可能性がある。
【0038】
これに対して、本実施形態におけるギヤケース60では、ボルト61による締結前では、前述のように、第一締結面76と第二締結面88は互いに接触せず、第一シール面73と第二シール面85が互いに接触する。この状態からボルト61を締めつけると、第一締結面76と第二締結面88が互いに接触するまでは、ボルト61の軸力は第一シール面73と第二シール面85に主に作用する。より具体的には、第一シール面73と第二シール面85の一方が潰れながら、第一締結面76と第二締結面88の間の隙間を埋めるようにしてラックハウジング70とハンドル側ハウジング80がボルト61により締結されていく。そして、第一締結面76と第二締結面88が互いに接触し、ボルト61の締めつけ力が所定のトルクに達すると、ボルト61によるラックハウジング70とハンドル側ハウジング80との締結が完了する。
【0039】
このように、ギヤケース60では、ボルト61による締結の初期は第一シール面73と第二シール面85にボルト61の軸力が主に作用し、第一シール面73と第二シール面85の一方が潰れることで、第一シール面73と第二シール面85が互いに密着する。よって、第一シール面73と第二シール面85の密着性が高くなり、ギヤケース60のラックハウジング70とハンドル側ハウジング80の間のシール性を向上させることができる。
【0040】
言い換えれば、本実施形態におけるギヤケース60は、ボルト61により締結されない状態では、第一シール面73と第二シール面85が互いに接触した状態で第一締結面76と第二締結面88の間に隙間が形成される。そして、ギヤケース60は、第二シール面85を潰すようにボルト61により締結されることにより、第一シール面73と第二シール面85が互いに接触するとともに第一締結面76が第二締結面88に接触して第一シール面73と第二シール面85の間がシールされる。これにより、第一シール面73と第二シール面85の密着性が高い状態で、ラックハウジング70とハンドル側ハウジング80を固定させることができる。
【0041】
したがって、例えば、電動パワーステアリング装置100が金属の腐食を生じさせる融雪剤を受けた場合や、品質試験等で電動パワーステアリング装置100に塩水を噴霧した場合であっても、ラックハウジング70とハンドル側ハウジング80との間のシール性が高いため、ギヤケース60内に塩水が侵入してアルミニウム製のギヤケース60が腐食することを防止することができる。
【0042】
なお、本実施形態では、第一シール面73はラックハウジング70の端面の一部であり、第二シール面85はハンドル側ハウジング80の端面から突出して形成されるものである。そのため、第二シール面85は第一シール面73よりも剛性が低い。そのため、第一シール面73ではなく第二シール面85の全体が潰され、ラックハウジング70とハンドル側ハウジング80がボルト61により締結される。なお、ボルト61による締結後は、第一シール面73と第一締結面76、及び第二シール面85と第二締結面88とは、同一平面上に形成されても、同一平面上に形成されなくてもよい。
【0043】
また、ボルト61により締結されない状態では、第一シール面73と第二シール面85は互いに平行な平面であるため、ラックハウジング70とハンドル側ハウジング80の締結時には第一シール面73と第二シール面85の接触面にボルト61の軸力が均一に作用する。これにより、第二シール面85が均一に潰されるようにして第一シール面73と第二シール面85が互いに密着する。よって、第一シール面73と第二シール面85が接触面でより確実に密着する。なお、第一シール面73と第二シール面85は互いに平行でなくてもよい。
【0044】
また、ギヤケース60は、ラックハウジング70の開口部71の内周面とハンドル側ハウジング80の外周面との間に圧縮した状態で設けられるOリング90を備えるため、第一シール面73と第二シール面85に加えて、Oリング90によってもラックハウジング70とハンドル側ハウジング80の間がシールされる。また、Oリング90は第一シール面73及び第二シール面85よりもラックハウジング70の開口部71の径方向内側に設けられる。これにより、Oリング90が異物と接触し劣化することが抑制される。
【0045】
以上の本実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0046】
ギヤケース60では、ボルト61により締結されない状態では、第一シール面73と第二シール面85が互いに接触した状態で第一締結面76と第二締結面88の間に隙間が形成され、ボルト61により締結された状態では、第二シール面85が潰された状態で第一シール面73と第二シール面85が互いに接触するとともに第一締結面76と第二締結面88が接触する。ボルト61による締結前は、第一シール面73と第二シール面85が互いに接触する。そのため、ボルト61による締結の初期は第一シール面73と第二シール面85にボルト61の軸力が主に作用し、第一シール面73と第二シール面85の一方が潰れることで、第一シール面73と第二シール面85が互いに密着する。よって、第一シール面73と第二シール面85の密着性が高くなり、ギヤケース60のラックハウジング70とハンドル側ハウジング80の間のシール性を向上させることができる。
【0047】
ギヤケース60では、ボルト61により締結されない状態では、第一シール面73と第二シール面85は互いに平行な平面であるため、ラックハウジング70とハンドル側ハウジング80の締結時には第一シール面73と第二シール面85の接触面にボルト61の軸力が均一に作用する。これにより、第二シール面85が均一に潰されるようにして第一シール面73と第二シール面85が互いに密着する。よって、第一シール面73と第二シール面85が接触面でより確実に密着する。
【0048】
また、ギヤケース60は、ラックハウジング70の開口部71の内周面とハンドル側ハウジング80の外周面との間に圧縮した状態で設けられるOリング90を備えるため、第一シール面73と第二シール面85に加えて、Oリング90によってもラックハウジング70とハンドル側ハウジング80の間がシールされる。また、Oリング90は第一シール面73及び第二シール面85よりもラックハウジング70の開口部71の径方向内側に設けられるため、Oリング90が異物と接触し劣化することが抑制される。
【0049】
次に、本実施形態の変形例について、説明する。以下のような変形例も本発明の範囲内であり、以下の変形例と上記実施形態の各構成とを組み合わせたり、以下の変形例と後述の第2実施形態の各構成とを組み合わせたり、以下の変形例同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0050】
<変形例1>
上記実施形態のギヤケース60は、第一シール面73が第一締結面76と同一平面上に形成される。これに対し、第一シール面73は、第一締結面76と同一平面上に形成されず、第一締結面76と軸方向にずれた位置に形成されてもよい。この場合は、ボルト61により締結されない状態では、第一シール面73と第二シール面85が互いに接触した状態で第一締結面76と第二締結面88の間に隙間が形成され、ボルト61により締結された状態では、第一シール面73及び第二シール面85の一方の少なくとも一部が潰されることにより第一締結面76と第二締結面88が接触するとともに第一シール面73と第二シール面85が互いに接触する構成であればよい。具体的には、ボルト61により締結されない状態では、ボルト61の締結方向において、第一締結面76と第二締結面88の間の距離よりも第一シール面73と第二シール面85の間の距離の方が小さければよい。この構成であっても、上記実施形態と同様に、第一シール面73と第二シール面85の密着性が高くなる。
【0051】
<変形例2>
上記実施形態のギヤケース60は、第二シール面85は第二締結面88よりも突出して形成される。ギヤケース60の構成はこれに限らず、第一シール面73が第一締結面76よりも突出して形成されてもよい。言い換えれば、ギヤケース60は、第一シール面73が第一締結面76よりも突出して形成されるか、第二シール面85が第二締結面88よりも突出して形成されればよい。また、第二シール面85が第二締結面88よりも突出して形成されるとともに、第一シール面73が第一締結面76よりも突出して形成されてもよい。この構成であっても、上記実施形態と同様に、第一シール面73と第二シール面85の密着性が高くなる。
【0052】
<変形例3>
上記実施形態のギヤケース60は、ボルト61による締結前は、第二シール面85の突出量は第二シール面85の周方向の位置によらず一定である。これに対し、ボルト61による締結前は、第二シール面85の突出量は第二シール面85の周方向の位置で異なってもよく、第二シール面85の一部のみが突出する構成であってもよい。具体的には、第二締結面88に近い位置で第二シール面85の突出量が小さく、第二締結面88から遠い位置で第二シール面85の突出量が大きく形成されてもよい。前述のように、ボルト61に近い接触面では、作用するボルト61の軸力により密着性が高く、ボルト61から遠い接触面では、作用するボルト61の軸力により密着性が低い傾向となる。このように構成されることで、ボルト61から遠い第二シール面85が先に第一シール面73に接触し、ボルト61の軸力が作用しやすくなるため、ボルト61から遠い位置にある第一シール面73と第二シール面85の密着性が高くなる。
【0053】
<変形例4>
上記実施形態のギヤケース60は、ハンドル側ハウジング80が第二シール部としての第二シール面85を有し、第二シール面85と第二締結面88は互いに平行である。第二シール部の形状はこれに限らず、第二締結面88に対して傾斜したテーパ面であってもよく、図3における断面が半円状や三角形状であってもよい。また、第二シール部は、周方向に沿った溝を挟んで複数箇所が突出して形成されてもよい。この場合は、第一シール面73と第二シール部が当該溝を挟んだ複数箇所で接触する。さらに、第二シール部は段状に形成されてもよい。このように、第二シール部の形状を変えることで、新たに部材を追加することなく第一シール面73と第二シール部の間のシール性を調整することができる。
【0054】
<変形例5>
上記実施形態のギヤケース60は、ボルト61による締結前は、第一シール面73の全体と第二シール面85の全体とが互いに接触する。これに限らず、ギヤケース60は、ボルト61による締結前は、第一シール面73と第二シール面85との少なくとも一部が互いに接触すればよい。
【0055】
<変形例6>
上記実施形態のギヤケース60は、ボルト61による締結後は、第二シール面85の全体が潰される。これに限らず、ギヤケース60は、ボルト61により締結された状態では、第二シール面85の少なくとも一部が潰されればよい。
【0056】
<第2実施形態>
次に、図1,4,5を参照して本発明の第2実施形態に係るギヤケース160について説明する。以下では、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明し、上記第1実施形態に係るギヤケース160と同一の機能を有する構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0057】
ギヤケース160には、アシスト部20が収容される。まず、アシスト部20について説明する。
【0058】
図1,4に示すように、アシスト部20は、電動モータ21により回転駆動される駆動シャフト22と、駆動シャフト22に設けられ駆動シャフト22と共に回転する第二ピニオンギヤ23と、電動モータ21の回転を減速して駆動シャフト22に伝達する減速部50と、を備える。
【0059】
減速部50は、電動モータ21により駆動されるウォームシャフト51と、駆動シャフト22に設けられるウォームホイール52と、からなるウォームギヤ機構である。ウォームシャフト51とウォームホイール52、及び第二ピニオンギヤ23とラックギヤ12aは、それぞれ互いに噛み合っている。電動モータ21のトルクは、ウォームシャフト51、ウォームホイール52、駆動シャフト22、第二ピニオンギヤ23、及びラックギヤ12aを介してラックシャフト12にさらに伝達される。ラックシャフト12は、第二付勢機構53(図4参照)により第二ピニオンギヤ23に向けて付勢される。これにより、ラックギヤ12aと第二ピニオンギヤ23の間のバックラッシュが低減され、ラックシャフト12が変位する際の歯打ち音が低減される。
【0060】
次に、ギヤケース160について説明する。第1実施形態におけるギヤケース60は、第一ピニオンギヤ16及びラックギヤ12aを収容するラックハウジング70及びハンドル側ハウジング80であり、第一シール面73と第一締結面76は、ラックハウジング70の同一の端面上に設けられる。これに対し、第2実施形態におけるギヤケース160は第二ピニオンギヤ23及びラックギヤ12aを収容するラックハウジング70及びアシスト側ハウジング180であり、第一シール面173と第一締結面176は、ラックハウジング70において離れた位置にある異なる端面に設けられる点で第1実施形態と相違する。
【0061】
図4に示すように、ギヤケース160は、開口部171を有し第二ピニオンギヤ23及びラックギヤ12aを収容するラックハウジング70と、ボルト161を介してラックハウジング70に締結されるアシスト側ハウジング180と、ラックハウジング70の開口部171とアシスト側ハウジング180との間に圧縮した状態で設けられるOリング190と、を備える。アシスト側ハウジング180は、ラックハウジング70及びハンドル側ハウジング80と同様に、例えばアルミ等の金属で形成される。アシスト側ハウジング180には、開口部181,182が同軸上に形成される。ラックハウジング70とアシスト側ハウジング180は、ラックハウジング70の開口部171の内周面と、アシスト側ハウジング180の開口部182側の端部183の外周面と、が嵌合してボルト161により締結される。開口部181は、カバー162により封止される。Oリング190は、ラックハウジング70の開口部171の内周面とアシスト側ハウジング180の外周面との間に設けられる。
【0062】
ラックハウジング70には、開口部171を含む空間72が設けられる。また、アシスト側ハウジング180には、開口部181,182を含む空間184が設けられる。本実施形態におけるギヤケース160は、空間72及び空間184に、ラックシャフト12、ウォームシャフト51、ウォームホイール52、駆動シャフト22、及び第二付勢機構53が収容される。駆動シャフト22は、軸受163を介してアシスト側ハウジング180に回転自在に支持される。
【0063】
図5は、後述するボルト161による締結前における、図4にBで示すラックハウジング70とアシスト側ハウジング180の接触面を示す拡大断面図である。
【0064】
図5に示すように、ラックハウジング70は、開口部171を囲うように設けられる環状の第一シール面173と、ボルト161が挿入される第一挿入穴174が設けられる第一取付部175と、を有する。第一取付部175には、アシスト側ハウジング180に対向し第一挿入穴174が形成される第一締結面176が設けられる。言い換えれば、ラックハウジング70は、ボルト161が挿入される第一挿入穴174が設けられる第一締結面176を有する。第一シール面173は、第一締結面176と同一平面上で、第一締結面176よりも開口部171の径方向内側に設けられる。また、第一シール面173と第一締結面176は、ラックハウジング70において離れた位置にある異なる端面に設けられる。
【0065】
アシスト側ハウジング180は、第一シール面173と接触する環状の第二シール面185と、ボルト161が挿入される第二挿入穴186が設けられる第二取付部187と、を有する。第二取付部187には、第一締結面176に対向し第二挿入穴186が形成される第二締結面188が設けられる。第二締結面188は、後述するようにボルト161により第一締結面176と接触する。言い換えれば、アシスト側ハウジング180は、ボルト161が挿入される第二挿入穴186が設けられボルト161により第一締結面176と接触する第二締結面188を有する。ボルト161による締結前は、第二シール面185は、第一シール面173と互いに平行であり、第二締結面188よりも突出して形成される。
【0066】
第2実施形態におけるギヤケース160であっても、第1実施形態におけるギヤケース60と同様にして、ボルト161により締結される。ボルト161による締結前は、第一シール面173と第二シール面185が互いに接触し、一方で、第一締結面176と第二締結面188の間には隙間が形成される。よって、当該隙間を埋めるようにしてボルト161により締結されることで、締結の初期は第一シール面173と第二シール面185にボルト161の軸力が主に作用し、第一シール面173と第二シール面185の一方が潰れることで、第一シール面173と第二シール面185が互いに密着する。よって、第一シール面173と第二シール面185の密着性が高い状態で、ラックハウジング70とアシスト側ハウジング180を固定させることができる。よって、ギヤケース160のラックハウジング70とアシスト側ハウジング180の間のシール性を向上させることができる。
【0067】
なお、電動パワーステアリング装置100において、第1実施形態におけるギヤケース60の構成と、第2実施形態におけるギヤケース160の構成と、を組み合わせてもよい。言い換えれば、電動パワーステアリング装置100は、ラックハウジング70と、第1実施形態に係るハンドル側ハウジング80と、第2実施形態に係るアシスト側ハウジング180と、の三つを備えてもよい。また、ラックハウジング70とハンドル側ハウジング80の間における第一締結面76、第一シール面73、第二締結面88、及び第二シール面85の構成が、ラックハウジング70とアシスト側ハウジング180の間に適用されてもよい。反対に、ラックハウジング70とアシスト側ハウジング180の間における第一締結面176、第一シール面173、第二締結面188、及び第二シール面185のシール構造が、ラックハウジング70とハンドル側ハウジング80との間に適用されてもよい。
【0068】
以上のように構成された本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0069】
ギヤケース60,160は、開口部71,171を有しギヤとしての第一ピニオンギヤ16、第二ピニオンギヤ23、ラックギヤ12aを収容する第一ハウジングとしてのラックハウジング70と、締結部材としてのボルト61,161を介してラックハウジング70に締結される第二ハウジングとしてのハンドル側ハウジング80、アシスト側ハウジング180と、を備え、ラックハウジング70は、開口部71,171を囲うように設けられる環状の第一シール部としての第一シール面73,173と、ボルト61,161が挿入される第一挿入穴74,174が設けられる第一締結部としての第一締結面76,176と、を有し、ハンドル側ハウジング80、アシスト側ハウジング180は、第一シール面73,173と接触する環状の第二シール部としての第二シール面85,185と、ボルト61,161が挿入される第二挿入穴86,186が設けられボルト61,161により第一締結面76,176と接触する第二締結部としての第二締結面88,188と、を有し、ボルト61,161により締結されない状態では、第一シール面73,173と第二シール面85,185との少なくとも一部が互いに接触した状態で第一締結面76,176と第二締結面88,188の間に隙間が形成され、ボルト61,161により締結された状態では、第一シール面73,173及び第二シール面85,185の一方の少なくとも一部が潰された状態で第一シール面73,173と第二シール面85,185が互いに接触するとともに第一締結面76,176と第二締結面88,188が接触する。
【0070】
この構成では、ラックハウジング70とハンドル側ハウジング80、アシスト側ハウジング180の締結前には、第一シール面73,173と第二シール面85,185が互いに接触し、第一締結面76,176と第二締結面88,188の間に隙間が形成される。そして、当該隙間を埋めるようにラックハウジング70とハンドル側ハウジング80、アシスト側ハウジング180が締結される。第一シール面73,173と第二シール面85,185は、ボルト61,161による締結前は互いに接触している。そのため、締結の初期は第一シール面73,173と第二シール面85,185にボルト61,161の軸力が主に作用し、第一シール面73,173と第二シール面85,185の一方が潰れることで、第一シール面73,173と第二シール面85,185が互いに密着する。よって、第一シール面73,173と第二シール面85,185の密着性が高くなる。
【0071】
また、ギヤケース60,160は、第一シール面73,173及び第二シール面85,185の少なくとも一方は、第一締結面76,176及び第二締結面88,188のうち一方のシール面に対応する締結面よりも突出して形成される。
【0072】
また、ギヤケース60,160は、ボルト61,161による締結前は、第一シール面73,173と第二シール面85,185は互いに平行な平面である。
【0073】
この構成では、ラックハウジング70とハンドル側ハウジング80、アシスト側ハウジング180の締結時に第一シール面73,173と第二シール面85,185接触面にボルト61,161の力が均一に作用する。これにより、第一シール面73,173及び第二シール面85,185の一方が均一に潰されるようにして第一シール面73,173と第二シール面85,185が互いに密着する。よって、第一シール面73,173と第二シール面85,185が接触面でより確実に密着する。
【0074】
また、ギヤケース60,160は、ラックハウジング70の開口部71,171とハンドル側ハウジング80、アシスト側ハウジング180との間に圧縮した状態で設けられるOリング90,190をさらに備え、Oリング90,190は、第一シール面73,173及び第二シール面85,185よりも径方向内側に設けられる。
【0075】
この構成では、第一シール面73,173及び第二シール面85,185に加えて、Oリング90,190によってもラックハウジング70とハンドル側ハウジング80、アシスト側ハウジング180の間がシールされる。また、Oリング90,190が異物と接触し劣化することが抑制される。
【0076】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0077】
ギヤケースを備える電動パワーステアリング装置は、デュアルピニオン式のものに限らず、シングルピニオン式のものであってもよい。また、ステアリングホイールとラックシャフトが機械的に連結されていないステアバイワイヤ式の電動パワーステアリング装置であってもよい。
【0078】
ギヤケースは、電動パワーステアリング装置が備えるものに限らず、例えば、他の減速機等が収容されるギヤケースであってもよい。
【符号の説明】
【0079】
60,160・・・ギヤケース、61,161・・・ボルト(締結部材)、70・・・ラックハウジング(第一ハウジング)、71,171・・・開口部、73,173・・・第一シール面(第一シール部)、74,174・・・第一挿入穴、76,176・・・第一締結面(第一締結部)、80・・・ハンドル側ハウジング(第二ハウジング)、85,185・・・第二シール面(第二シール部)、86,186・・・第二挿入穴、88,188・・・第二締結面(第二締結部)、90,190・・・Oリング(シール部材)、180・・・アシスト側ハウジング(第二ハウジング)
図1
図2
図3
図4
図5