(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147805
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】流体圧緩衝器
(51)【国際特許分類】
F16F 9/34 20060101AFI20220929BHJP
F16F 9/19 20060101ALI20220929BHJP
F16F 9/32 20060101ALI20220929BHJP
F16F 9/46 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
F16F9/34
F16F9/19
F16F9/32 N
F16F9/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021049215
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 一樹
【テーマコード(参考)】
3J069
【Fターム(参考)】
3J069AA50
3J069CC15
3J069DD50
3J069EE10
3J069EE35
(57)【要約】
【課題】流体圧緩衝器において減衰弁の設置スペースを確保する。
【解決手段】ショックアブソーバ100は、シリンダチューブ10と、シリンダチューブ10に進退自在に挿入されるピストンロッド20と、ピストンロッド20に連結されシリンダチューブ10内をロッド側室2とボトム側室1とに区画するピストン30と、ロッド側室2とボトム側室1との間の作動流体の流れに対して抵抗を付与して減衰力を発生する減衰部50と、を備え、ピストンロッド20は、ピストン30に連結されシリンダチューブ10に摺動自在に支持されるロッド部21と、シリンダチューブ10の外部に露出するヘッド部23と、を有し、減衰部50は、ピストンロッド20のヘッド部23に設けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダチューブと、
前記シリンダチューブに進退自在に挿入されるピストンロッドと、
前記ピストンロッドに連結され前記シリンダチューブ内をロッド側室とボトム側室とに区画するピストンと、
前記ロッド側室と前記ボトム側室との間の作動流体の流れに対して抵抗を付与して減衰力を発生する減衰部と、を備え、
前記ピストンロッドは、
前記ピストンに連結され前記シリンダチューブに摺動自在に支持されるロッド部と、
前記シリンダチューブの外部に露出するヘッド部と、を有し、
前記減衰部は、前記ピストンロッドの前記ヘッド部に設けられることを特徴とする流体圧緩衝器。
【請求項2】
請求項1に記載の流体圧緩衝器であって、
前記ピストンロッドには、前記ロッド部の内部に形成されるロッド内空間と、前記ロッド側室と前記ロッド内空間との間で作動流体を導く第1連通路と、前記ロッド内空間と前記減衰部との間で作動流体を導く第2連通路と、が形成され、
前記ピストンロッドは、前記ロッド内空間に収容され前記ボトム側室と前記減衰部との間で作動流体を導く流路部をさらに有することを特徴とする流体圧緩衝器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の流体圧緩衝器であって、
前記減衰部は、それぞれ作動流体の流れに対して抵抗を付与する第1抵抗部及び第2抵抗部を有し、
前記第1抵抗部は、前記ロッド側室及び前記ボトム側室の一方から他方に向かう作動流体の流れに対してのみ抵抗を付与することを特徴とする流体圧緩衝器。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載の流体圧緩衝器であって、
前記減衰部は、通過する作動流体の流れに付与する抵抗が可変の可変絞り部を有することを特徴とする流体圧緩衝器。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の流体圧緩衝器であって、
前記減衰部は、
作動流体に付与する抵抗がポジションに応じて変化する減衰弁と、
前記ピストンロッドが前記シリンダチューブ内に進入するのに伴って前記シリンダチューブに押圧されて前記減衰弁のポジションを切り換える切換部と、を有することを特徴とする流体圧緩衝器。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の流体圧緩衝器であって、
前記減衰部は、
作動流体に付与する抵抗がポジションに応じて変化する減衰弁と、
通電によって駆動されて前記減衰弁のポジションを切り換えるソレノイド部と、を有することを特徴とする流体圧緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体圧緩衝器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の流体圧緩衝器では、ピストンロッドは、シリンダの外部へと延出するロッド部と、ロッド部の端部に連結されてシリンダ内を摺動自在に移動し、シリンダ内をボトム側室とロッド側室に区画するピストンと、を有する。ロッド部は、ロッド部の内部に形成されてシリンダのボトム側室と連通するロッド内空間と、ロッド内空間とシリンダのロッド側室とを接続する第1連通路と、第1連通路に交換可能に設けられるオリフィスプラグと、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の流体圧緩衝器は、ロッド部に形成される第1連通路にオリフィスプラグを設けることで、コンパクトな構造で減衰力を発生できるように構成されている。
【0005】
一方、流体圧緩衝器において多様な減衰特性を実現したい場合などには、減衰力を発生する減衰部の構成が大型化したり複雑化したりすることがある。このような場合には、減衰部の設置スペースを確保する必要がある。
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、減衰部の設置スペースを確保できる流体圧緩衝器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、流体圧緩衝器であって、シリンダチューブと、シリンダチューブに進退自在に挿入されるピストンロッドと、ピストンロッドに連結されシリンダチューブ内をロッド側室とボトム側室とに区画するピストンと、ロッド側室とボトム側室との間での作動流体の流れに対して抵抗を付与して減衰力を発生する減衰部と、を備え、ピストンロッドは、ピストンに連結されシリンダチューブに摺動自在に支持されるロッド部と、ロッド部に接続されシリンダチューブの外部に露出するヘッド部と、を有し、減衰部は、ピストンロッドのヘッド部に設けられることを特徴とする。
【0008】
この発明では、ピストンロッドのヘッド部に減衰部が設けられることで、減衰部の設置スペースの確保が容易となる。
【0009】
また、本発明は、ピストンロッドには、ロッド部の内部に形成されるロッド内空間と、ロッド側室とロッド内空間との間で作動流体を導く第1連通路と、ロッド内空間と減衰部との間で作動流体を導く第2連通路と、が形成され、ピストンロッドは、ロッド内空間に収容されボトム側室と減衰部との間で作動流体を導く流路部をさらに有することを特徴とする。
【0010】
この発明では、ボトム側室とロッド側室とを連通する流路が流体圧緩衝器の内部に設けられる、いわゆる内部配管式であっても、減衰部の設置スペースを確保することができる。
【0011】
また、本発明は、減衰部が、それぞれ作動流体の流れに対して抵抗を付与する第1抵抗部及び第2抵抗部を有し、第1抵抗部が、ロッド側室及びボトム側室の一方から他方に向かう作動流体の流れに対してのみ抵抗を付与することを特徴とする。
【0012】
この発明では、減衰部の設置スペースが確保できるため、第1抵抗部及び第2抵抗部の2つの抵抗部を設け、流体圧緩衝器の収縮と伸長とで減衰力を異ならせることができる。
【0013】
また、本発明は、減衰部は、通過する作動流体の流れに付与する抵抗が可変の可変絞り部を有する。
【0014】
この発明では、減衰部が発生する減衰力を調整することができるため、流体圧緩衝器が用いられる製品や使用状況などに合わせた減衰力を発生することができる。
【0015】
また、本発明は、減衰部が、ポジションに応じて作動流体に付与する抵抗が変化する減衰弁と、ピストンロッドがシリンダチューブ内に進入するのに伴ってシリンダチューブに押圧されて減衰弁のポジションを切り換える切換部と、を有することを特徴とする。
【0016】
この発明では、減衰部が発生する減衰力の減衰特性を、流体圧緩衝器のピストンロッドのストロークに応じて変化させることができる。よって、流体圧緩衝器は、ストロークに応じた適切な減衰力を発生することができる。
【0017】
また、本発明は、減衰部が、ポジションに応じて作動流体に付与する抵抗が変化する減衰弁と、通電によって駆動されて減衰弁のポジションを切り換えるソレノイド部と、を有することを特徴とする。
【0018】
この発明では、減衰弁が発生する減衰力をソレノイド部への通電によって任意のタイミングで調整できるため、利便性が向上する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、流体圧緩衝器の減衰部の設置スペースを確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るショックアブソーバの断面図である。
【
図2】第1実施形態に係るショックアブソーバのヘッド部周辺の構造を示す拡大断面図である。
【
図3】第1実施形態の変形例に係る減衰部を模式的に示す構成図である。
【
図4】第2実施形態に係るショックアブソーバの断面図である。
【
図5】第2実施形態の減衰部を模式的に示す構成図である。
【
図6】第2実施形態の変形例に係る減衰部を模式的に示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の各実施形態に係る流体圧緩衝器について説明する。
【0022】
(第1実施形態)
図1及び
図2を参照して、第1実施形態に係る流体圧緩衝器について説明する。以下では、流体圧緩衝器が車両に搭載されるショックアブソーバ100である場合について説明する。
【0023】
ショックアブソーバ100は、例えば、車両の車体と車軸との間に介装され、減衰力を発生させて車体の振動を抑制する装置である。
【0024】
図1に示すように、ショックアブソーバ100は、筒状のシリンダチューブ10と、シリンダチューブ10に進退自在に挿入されシリンダチューブ10の外部へと延出するピストンロッド20と、ピストンロッド20の先端に連結されシリンダチューブ10の内周面に沿って摺動自在に移動するピストン30と、を備える。本実施形態では、ショックアブソーバ100は、シリンダチューブ10が上側、ピストンロッド20が下側となる向きに車両に搭載される。
【0025】
シリンダチューブ10内は、ピストン30によってボトム側室1とロッド側室2とに区画される。ボトム側室1とロッド側室2には、それぞれ作動流体としての作動油が封入される。また、図示は省略するが、ボトム側室1には、シリンダチューブ10に対するピストンロッド20の進入、退出に伴うシリンダチューブ10内の容積変化を利用してばね作用を得るためのガスが作動油と共に封入される。このように、ショックアブソーバ100は、ガスによるばね作用によって車体の支持が可能なエアサスペンションの機能を備える流体圧緩衝器である。この場合、車体を支持するばねを別途設けなくても、ショックアブソーバ100によって減衰力の発生及び車体の支持が可能となる。
【0026】
なお、これに限らず、シリンダチューブ10内にガスが封入されなくてもよい。また、ボトム側室1の内部に移動自在に設けられ、ボトム側室1を作動油が充填される液室とガスが封入される気室とに隔てるフリーピストンが設けられてもよい。この場合、ピストン30は、液室に面するように構成される。フリーピストンを設けることによって、気室のガスが後述する減衰部50に導かれないため、ショックアブソーバ100は、シリンダチューブ10が下側、ピストンロッド20が上側となる向きで使用することも可能となる。つまり、ショックアブソーバ100の鉛直方向に対する姿勢が限定されない。
【0027】
シリンダチューブ10は、有底筒状部材であり、その開口端はピストンロッド20が摺動自在に挿通するシリンダヘッド11によって閉塞される。シリンダヘッド11は、ボルト(図示省略)にてシリンダチューブ10の端部に締結されることによって、シリンダチューブ10に固定される。シリンダヘッド11の内周面には、ピストンロッド20の外周面に摺接するシール部材(図示省略)やダストシール(図示省略)が設けられる。
【0028】
シリンダチューブ10の閉塞端(シリンダヘッド11とは逆側の端部)には、ショックアブソーバ100を車両に取り付けるための取付部10aが設けられる。
【0029】
ピストンロッド20は、ピストン30に連結されシリンダチューブ10のシリンダヘッド11に摺動自在に支持されるロッド部21と、シリンダチューブ10の外部に露出するヘッド部23と、ロッド部21の内側に設けられる流路部としてのパイプ部27と、を有する。
【0030】
ロッド部21には、ピストン30側の端面に開口する凹部21aが形成される。ロッド部21の内部には、凹部21aによってロッド内空間としてのロッド内室2aが形成される。ロッド部21の端部は、ボルト(図示省略)によってピストン30に連結される。
【0031】
ヘッド部23は、ロッド部21よりも大径に形成され、ショックアブソーバ100の伸縮状態(言い換えれば、シリンダチューブ10に対するピストンロッド20のストローク位置)に関わらず、シリンダチューブ10の外部に常時露出する。別の観点でいえば、ヘッド部23は、ピストンロッド20において、シリンダヘッド11に対して摺動しない部分である。ヘッド部23は、例えば、ロッド部21とは別体として形成され、溶接等の方法によってロッド部21の端部に接続される。なお、ロッド部21とヘッド部23とは、別体に形成されて連結される構成に限定されず、一体に形成されるものでもよい。
【0032】
ヘッド部23には、ショックアブソーバ100の収縮作動時のストロークエンドを規定するストッパ部24と、ショックアブソーバ100を車両に取り付けるための取付部20aと、が設けられる。ストッパ部24には、ショックアブソーバ100の収縮作動時にストロークエンドでのシリンダヘッド11とピストンロッド20との衝突を防止する環状のクッションリング15が設けられる。
【0033】
パイプ部27は、軸心方向に沿って貫通穴27aが形成される円筒状の管部材である。パイプ部27の貫通穴27aは、ピストン30に形成されるピストン通路31を通じてボトム側室1に連通する。
【0034】
パイプ部27の一端は、ヘッド部23に形成された挿入穴23aに挿入され、他端はピストン30に形成された挿入穴30aに挿入される。このように、パイプ部27は、ヘッド部23とピストン30によって挟まれるようにして設けられる。ヘッド部23の挿入穴23a及びピストン30の挿入穴30aとパイプ部27との間には、それぞれ隙間を封止するOリング(図示省略)が設けられる。
【0035】
ロッド内室2aは、パイプ部27の外周面、ロッド部21の内周面、ヘッド部23、及びピストン30によって環状の空間として形成される。ロッド内室2aは、ピストンロッド20のロッド部21に形成される複数の第1連通路22によってロッド側室2と連通する。複数の第1連通路22は、ロッド部21の周方向に並びロッド部21の内外周面に開口するように径方向に貫通して形成される。ロッド内室2aが設けられることで、ショックアブソーバ100が高速で収縮作動する際や、最伸長状態から収縮作動する際には、ロッド内室2aの作動油が速やかにロッド側室2へ導かれる。これにより、ロッド側室2の急激な圧力低下が抑制される。
【0036】
ショックアブソーバ100は、ロッド側室2とボトム側室1との間での作動油の流れに対して抵抗を付与して減衰力を発生する減衰部50をさらに備える。減衰部50は、ピストンロッド20のヘッド部23の内部に設けられる。
【0037】
ヘッド部23には、
図2に示すように、減衰部50を収容する収容穴40と、収容穴40とパイプ部27の貫通穴27aとを連通する接続穴45と、収容穴40とロッド内室2aとを連通する第2連通路46a,46bと、が形成される。
【0038】
ボトム側室1とロッド側室2とは、ピストン通路31(
図1参照)、パイプ部27の貫通穴27a、接続穴45、収容穴40、第2連通路46a,46b、ロッド内室2a、及び第1連通路22(
図1参照)によって構成される流路により連通する。このように、ショックアブソーバ100は、ボトム側室1とロッド側室2とを連通する流路がショックアブソーバ100の内部に設けられる、いわゆる内部配管式のものである。なお、ショックアブソーバ100は、ボトム側室1とロッド側室2とを連通する流路の一部がショックアブソーバ100の外部に設けられる、いわゆる外部配管式のものであってもよい。
【0039】
減衰部50は、
図1及び
図2に示すように、それぞれ作動油の流れに対して抵抗を付与する第1抵抗部51及び第2抵抗部60を有する。
【0040】
第1抵抗部51は、ボトム側室1からロッド側室2へ向かう作動油の流れに対してのみ抵抗を付与する。第1抵抗部51は、通過する作動油に対して抵抗を付与して減衰力を発生する第1絞り部としての第1オリフィス52と、ボトム側室1からロッド内室2aへの作動油の流れのみを許容する逆止弁55と、を有する。
【0041】
第2抵抗部60は、ボトム側室1とロッド側室2との間の作動油の流れの双方向のいずれに対しても抵抗を付与する。第2抵抗部60は、通過する作動油に対して抵抗を付与して減衰力を発生する第2絞り部としての第2オリフィス61を有する。
【0042】
第1抵抗部51と第2抵抗部60とは、
図1に示すように、互いに並列に設けられる。第1抵抗部51では、第1オリフィス52よりも作動油の流れにおいてボトム側室1側となる位置に逆止弁55が設けられる。
【0043】
以下、減衰部50の具体的構成について、主に
図2を参照して説明する。
【0044】
図2に示すように、減衰部50は、ピストンロッド20のヘッド部23に形成される収容穴40に収容されて、ヘッド部23の内部に設けられる。
【0045】
減衰部50は、第1オリフィス52が設けられる第1オリフィスプラグ53と、第2オリフィス61が設けられる第2オリフィスプラグ62と、を有する。
【0046】
ヘッド部23の収容穴40は、第1オリフィスプラグ53及び逆止弁55を収容する第1収容部41と、第2オリフィスプラグ62を収容する第2収容部42と、第1収容部41と第2収容部42とを連通する連絡部43と、によって構成される。第1収容部41及び第2収容部42は、それぞれヘッド部23の外面に開口しており、それぞれの開口はプラグ80,81によって封止されている。
【0047】
逆止弁55は、弁体としてのボール体56と、ボール体56が着座する着座部57と、を有する。着座部57は、第1収容部41と連絡部43との間に形成される段差部に形成される。着座部57にボール体56が着座することで、第1収容部41から連絡部43へ向かう作動油の流れが遮断される。
【0048】
また、ヘッド部23には、ロッド内室2aと第1収容部41及び第2収容部42とを連通する第2連通路46a,46bが形成される。
【0049】
一方の第2連通路46aは、第1オリフィスプラグ53と第1収容部41の開口を封止するプラグ80との間において、第1収容部41に開口するように形成される。他方の第2連通路46bは、第2オリフィスプラグ62と第2収容部42の開口を封止するプラグ81との間において、第2収容部42に開口するように形成される。言い換えると、ボトム側室1とロッド側室2との間の作動油の流れで見た場合に、一方の第2連通路46aと連絡部43との間に第1オリフィスプラグ53が設けられ、他方の第2連通路46bと連絡部43との間に第2オリフィスプラグ62が設けられる。
【0050】
ショックアブソーバ100が収縮作動した際には、ボトム側室1の圧力が上昇し、ボトム側室1の作動油は、パイプ部27を通じて収容穴40の連絡部43に導かれる。連絡部43に導かれた作動油は、一部が逆止弁55を開弁し第1オリフィス52を通過して第2連通路46aからロッド内室2aに導かれ、残りの一部が第2オリフィス61を通過して第2連通路46bからロッド内室2aに導かれる。ロッド内室2aに導かれた作動油は、第1連通路22を通じてロッド側室2に導かれる。このように、ショックアブソーバ100の収縮作動の際には、ボトム側室1の作動油は、第1オリフィス52及び第2オリフィス61の両方を通過してロッド側室2に導かれる。このため、ショックアブソーバ100では、第1オリフィス52及び第2オリフィス61が全体として発揮する流路抵抗に応じた減衰力が発生される。
【0051】
ショックアブソーバ100が伸長作動した際には、ロッド側室2の圧力が上昇し、ロッド側室2の作動油は、ロッド内室2a及び第2連通路46bを通じて、第2収容部42に導かれる。第2収容部42に導かれた作動油は、第2オリフィス61を通過し、パイプ部27を通じてボトム側室1に導かれる。
【0052】
一方、ロッド側室2の圧力上昇によって逆止弁55は閉弁するため、ロッド側室2の作動油は、第2オリフィス61を通じてはボトム側室1に導かれない。よって、ショックアブソーバ100の伸長作動の際には、第2オリフィス61が発揮する流路抵抗に応じた減衰力が発生される。したがって、収縮作動時には第1オリフィス52を通じたボトム側室1からロッド側室2への作動油の流れが許容される分、ショックアブソーバ100は、伸長作動時の方が収縮作動時よりも大きな減衰力を発生しやすい。これにより、車両が路面上の突起部に乗り上げたような場合には、ショックアブソーバ100は比較的スムーズに収縮作動し、その後、伸長作動する際に大きな減衰力を発生して、路面から車体に入力される振動を効果的に減衰させる。
【0053】
以上の第1実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0054】
ショックアブソーバ100では、減衰部50がピストンロッド20のヘッド部23の内部に設けられる。ヘッド部23は、ロッド部21と比較して、体積を確保しやすく、これに応じて減衰部50の設置スぺースを確保しやすい。このため、減衰部50が比較的複雑な構成や大型な構成となっても、容易にショックアブソーバ100に組み込むことができる。これにより、ショックアブソーバ100において、多様な減衰特性を実現することができる。
【0055】
また、ショックアブソーバ100では、減衰部50がシリンダチューブ10の外部に常時露出するピストンロッド20のヘッド部23に設けられるため、ロッド部21やピストン30に設けられる場合と比較して、ショックアブソーバ100を分解しなくとも調整ができる。具体的には、外部に露出しているプラグ80,81を取り外して第1オリフィスプラグ53及び第2オリフィスプラグ62を交換することで、ショックアブソーバ100の減衰特性を容易に変更できる。
【0056】
次に、本実施形態の変形例について、説明する。以下のような変形例も本発明の範囲内であり、以下の変形例と上記実施形態の各構成とを組み合わせたり、以下の変形例と後述の各実施形態の各構成とを組み合わせたり、以下の変形例同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0057】
上記実施形態では、第1オリフィス52及び第2オリフィス61は、流路抵抗が不変の固定オリフィスである。これに対し、第1オリフィス52及び/又は第2オリフィス61は、流路抵抗が可変である可変オリフィス(可変絞り部)であってもよい。例えば、
図3に示すように、ショックアブソーバ100が可変オリフィスである第2オリフィス61aを有することで、ショックアブソーバ100の減衰力の調整をより一層容易に行うことができる。可変オリフィス及びその調整機構の構成は、公知の構成を採用できるため具体的説明及び図示を省略するが、例えば、手工具によって第2オリフィス61aの開口面積(流路面積)を調整できるように構成される。
【0058】
また、上記実施形態では、第1抵抗部51は、ボトム側室1からロッド側室2へ向かう作動油の流れにのみ抵抗を付与する。これにより、ショックアブソーバ100では、伸長作動時と収縮作動時とで減衰特性が異なる。これに対し、第1抵抗部51が、ロッド側室2からボトム側室1へ向かう作動油の流れにのみ抵抗を付与するものでもよい。また、第1抵抗部51がボトム側室1からロッド側室2へ向かう作動油の流れにのみ抵抗を付与し、第2抵抗部60がロッド側室2からボトム側室1へ向かう作動油の流れにのみ抵抗を付与するものでもよい。この場合には、第1オリフィス52と第2オリフィス61とは、異なる減衰特性を有することが望ましい。さらに、減衰部50が互いに並列に設けられる第1抵抗部51及び第2抵抗部60を有する構成は必須のものではなく、減衰部50は、ショックアブソーバ100に発生させる所望の減衰力に応じて任意の構成とすることができる。例えば、減衰部50は、ショックアブソーバ100の伸長及び収縮に対して、同じ減衰特性によって減衰力を発生するものでもよい。
【0059】
(第2実施形態)
次に、
図4及び
図5を参照して、第2実施形態に係るショックアブソーバ200について説明する。以下では、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明し、上記第1実施形態と同一の構成には同一の符号を付して説明を適宜省略する。具体的には、第2実施形態に係るショックアブソーバ200は、減衰部150の構成が第1実施形態に係るショックアブソーバ100と相違する。
【0060】
第2実施形態に係るショックアブソーバ200の減衰部150は、
図4及び
図5に示すように、第1実施形態と同様、互いに並列に設けられる第1抵抗部51と、第2抵抗部160と、を有する。
【0061】
第1抵抗部51の構成は、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0062】
第2抵抗部160は、
図5に示すように、通過する作動油の流れに付与する抵抗がポジションに応じて変化する減衰弁161を有する。
【0063】
減衰弁161は、通過する作動油の流れに所定の抵抗を付与する第1絞りポジション161Aと、第1絞りポジション161Aによって付与される抵抗とは異なる大きさの抵抗を通過する作動油の流れに付与する第2絞りポジション161Bと、を有する。つまり、第1絞りポジション161Aと第2絞りポジション161Bとは、通過する作動油の流れに対する圧力損失特性が異なっている。減衰弁161は、ポジションを切り換える弁体(図示省略)と、弁体を付勢する付勢部材としてのスプリング162と、を有する。減衰弁161では、第1絞りポジション161Aとなるように弁体がスプリング162によって付勢されている。
【0064】
また、減衰部150は、
図4に示すように、ピストンロッド20がシリンダチューブ10内に進入するのに伴ってシリンダチューブ10に押圧されて減衰弁161のポジションを切り換える切換部165を有する。
【0065】
切換部165は、ピストンロッド20の外部に突出するレバー部166と、レバー部166の切り換えに伴って弁体を押圧する押圧ロッド部167と、を有する。押圧ロッド部167の少なくとも一部は、ピストンロッド20のヘッド部23に挿入される。
【0066】
また、第2実施形態では、
図4に示すように、シリンダチューブ10のシリンダヘッド11には、レバー部166を切り換えるための突出部120が設けられる。
【0067】
ここで、一般に、ショックアブソーバでは、使用されるピストンロッドのストローク領域が、ショックアブソーバが取り付けられる車両や設備といった対象物の状況によって異なることがある。つまり、比較的伸長した状態でショックアブソーバが伸縮する状況と、比較的収縮した状態でショックアブソーバが伸縮する状況との両方が生じることがある。例えば、車両に人や荷物等の積載物が積載された状態と、積載されていない状態とでは、ショックアブソーバのストローク領域が異なる。このようにストローク領域が状況によって異なるような場合には、ストローク領域に合わせてショックアブソーバの減衰特性も異なるように構成することが望まれている。
【0068】
これに対し、ショックアブソーバ200では、比較的伸長した状態では、
図4及び
図5に示すように、減衰部50の減衰弁161は、スプリング162の付勢力によって第1絞りポジション161Aをとる。よって、伸長状態においてショックアブソーバ100が伸縮すると、第1絞りポジション161Aの圧力損失特性に応じた減衰特性に基づいて、減衰力が発生される。
【0069】
ショックアブソーバ200が比較的収縮した状態となると、シリンダチューブ10の突出部120によってレバー部166が押圧されて、減衰弁161は第2絞りポジション161Bに切り換えられる。よって、収縮状態においてショックアブソーバ200が伸縮すると、第2絞りポジション161Bの圧力損失特性に応じた減衰特性に基づいて、減衰力が発生される。
【0070】
このように、ショックアブソーバ200では、減衰部150がヘッド部23に設けられるため、減衰弁161や切換部165などを有する複雑な構成であっても、減衰部150をショックアブソーバ100に容易に組み込むことができる。そして、本実施形態では、ピストンロッド20のストローク領域が変化すると、減衰弁161のポジションが切り換えられて、ショックアブソーバ200が発生する減衰力の減衰特性が変化する。よって、減衰弁161の第1絞りポジション161Aの圧力損失特性をショックアブソーバ100が伸長状態にある場合に適した減衰特性を発生できるように構成し、第2絞りポジション161Bの圧力損失特性をショックアブソーバ100が収縮状態にある場合に適した減衰特性を発生できるように構成することができる。これにより、ショックアブソーバ100が取り付けられる対象物の状況に合わせて適切な減衰力を発生することができる。
【0071】
なお、本実施形態では、レバー部166は、シリンダチューブ10の突出部120が直接接触して突出部120に押圧される構成であるが、これに限らず、例えば、シリンダチューブ10に設けられる磁石の磁力(反発力)によってレバー部166が押圧される構成でもよい。つまり、切換部は、シリンダチューブ10によって非接触に押圧されることで切り換えらえる構成でもよい。
【0072】
次に、
図6を参照して、第2実施形態の変形例について説明する。
【0073】
上記第2実施形態では、減衰部150は、ピストンロッド20がシリンダチューブ10内に進入するのに伴ってシリンダチューブ10に押圧されて減衰弁161のポジションを切り換える切換部165を有する。これにより、ショックアブソーバ200は、比較的伸長した状態と収縮した状態とで異なる減衰特性によって減衰力を発生する。
【0074】
これに対し、
図6に示す変形例に係る減衰部250は、切換部165に代えて、通電によって駆動されて減衰弁161のポジションを切り換えるソレノイド部265を有する。
【0075】
ソレノイド部265は、コントローラ90から電気信号が入力されることによって減衰弁161の弁体をスプリング162の付勢力に抗して移動させる。これにより、減衰弁161のポジションが第1絞りポジション161Aから第2絞りポジション161Bに切り換えられる。ソレノイド部265への通電が遮断された状態では、減衰弁161は、スプリング162の付勢力によって第1絞りポジション161Aに切り換えられる。
【0076】
このような変形例によれば、上記第2実施形態と同様の効果を奏すると共に以下に示す効果を奏する。
【0077】
図6に示す変形例では、ソレノイド部265によって減衰弁161のポジションが切り換えられる構成であるため、ピストンロッド20のストローク領域に限定されず、その他の様々な状況においても、減衰弁161の減衰特性を変えることができる。例えば、車両のステアリング操作や路面状況など車両の走行状態に応じて減衰特性を変更することができる。このように、任意のタイミングでショックアブソーバ200の減衰特性を変更できるため、利便性が向上する。
【0078】
以下、本発明の各実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0079】
ショックアブソーバ100,200は、シリンダチューブ10と、シリンダチューブ10に進退自在に挿入されるピストンロッド20と、ピストンロッド20に連結されシリンダチューブ10内をロッド側室2とボトム側室1とに区画するピストン30と、ロッド側室2とボトム側室1との間の作動流体の流れに対して抵抗を付与して減衰力を発生する減衰部50,150,250と、を備え、ピストンロッド20は、ピストン30に連結されシリンダチューブ10に摺動自在に支持されるロッド部21と、シリンダチューブ10の外部に露出するヘッド部23と、を有し、減衰部50,150,250は、ピストンロッド20のヘッド部23に設けられる。
【0080】
この構成では、ピストンロッド20のヘッド部23に減衰部50,150,250が設けられることで、減衰部50,150,250の設置スペースを容易に確保できる。
【0081】
また、ショックアブソーバ100,200では、ピストンロッド20には、ロッド部21の内部に形成されるロッド内室2aと、ロッド側室2とロッド内室2aとの間で作動油を導く第1連通路22と、ロッド内室2aと減衰部50,150,250との間で作動油を導く第2連通路46a,46bと、が形成され、ピストンロッド20は、ロッド内室2aに収容されボトム側室1と減衰部50,150,250との間で作動油を導くパイプ部27をさらに有する。
【0082】
この構成では、ボトム側室1とロッド側室2とを連通する流路がショックアブソーバ100,200の内部に設けられる、いわゆる内部配管式であっても、減衰部50,150,250の設置スペースを確保することができる。
【0083】
また、ショックアブソーバ100,200では、減衰部50,150,250が、それぞれ作動流体の流れに対して抵抗を付与する第1抵抗部51及び第2抵抗部60,160,260を有し、第1抵抗部51が、ロッド側室2及びボトム側室1の一方から他方に向かう作動油の流れに対してのみ抵抗を付与する。
【0084】
この構成では、減衰部50,150,250の設置スペースが確保できるため、第1抵抗部51及び第2抵抗部60,160,260の2つの抵抗部を設け、ショックアブソーバ100,200の収縮と伸長とで減衰力を異ならせることができる。
【0085】
また、第1実施形態に係るショックアブソーバ100の変形例では、減衰部50は、通過する作動油の流れに付与する抵抗が可変の第2オリフィス61aを有する。
【0086】
この構成では、減衰部50が発生する減衰力を調整することができるため、ショックアブソーバが用いられる製品や使用状況などに合わせた減衰力を発生することができる。
【0087】
また、第2実施形態に係るショックアブソーバ200では、減衰部150が、ポジションに応じて作動流体に付与する抵抗が変化する減衰弁161と、ピストンロッド20がシリンダチューブ10内に進入するのに伴ってシリンダチューブ10に押圧されて減衰弁161のポジションを切り換える切換部165と、を有する。
【0088】
この構成では、減衰部150が発生する減衰力の減衰特性を、ショックアブソーバ100のピストンロッド20のストロークに応じて変化させることができる。よって、ショックアブソーバ200は、ストロークに応じた適切な減衰力を発生することができる。
【0089】
また、第2実施形態の変形離に係るショックアブソーバ200では、減衰部250が、ポジションに応じて作動流体に付与する抵抗が変化する減衰弁161と、通電によって駆動されて減衰弁161のポジションを切り換えるソレノイド部265と、を有する。
【0090】
この発明では、減衰弁161が発生する減衰力をソレノイド部265への通電によって任意のタイミングで調整できるため、利便性が向上する。
【0091】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0092】
100,200…ショックアブソーバ、1…ボトム側室、2…ロッド側室、2a…ロッド内室(ロッド内空間)、10…シリンダチューブ、20…ピストンロッド、21…ロッド部、22…第1連通路、23…ヘッド部、27…パイプ部(流路部)、30…ピストン、46a,46b…第2連通路、50,150,250…減衰部、51…第1抵抗部、60,160,260…第2抵抗部、61a…第2オリフィス(可変絞り部)、161…減衰弁、165…切換部、265…ソレノイド部