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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147806
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】流体圧緩衝器
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/46 20060101AFI20220929BHJP
   F16F 9/19 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
F16F9/46
F16F9/19
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021049216
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 一樹
【テーマコード(参考)】
3J069
【Fターム(参考)】
3J069AA50
3J069DD21
3J069EE01
3J069EE35
3J069EE36
(57)【要約】
【課題】減衰部のソレノイドバルブを保護しつつ減衰特性の調整が可能な流体圧緩衝器を提供する。
【解決手段】ショックアブソーバ100の減衰部20は、第2流体通路22に設けられ通過する作動油の流れに付与する抵抗がポジションに応じて変化する減衰弁41と、減衰弁41を迂回するように第2流体通路に接続されるバイパス通路51と、バイパス通路51に設けられ、減衰弁41のポジションを切り換えるためのパイロット圧として減衰弁41へ導かれるバイパス通路51の作動油の流れを制御するソレノイドバルブ60と、第2流体通路からソレノイドバルブ60に導かれる作動油の流れに抵抗を付与するボトム側絞り部70aと、バイパス通路51の圧力が所定のリリーフ圧に達すると開弁してバイパス通路51の圧力を第2流体通路22を通じてロッド側室2に逃がすロッド側リリーフ弁72bと、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダチューブと、
前記シリンダチューブに進退自在に挿入されるピストンロッドと、
前記ピストンロッドに連結され前記シリンダチューブ内を第1圧力室と第2圧力室とに区画するピストンと、
前記第1圧力室と前記第2圧力室との間の作動流体の流れに対して抵抗を付与して減衰力を発生する減衰部と、を備え、
前記減衰部は、
前記第1圧力室から前記第2圧力室に向かう作動流体を導く流体通路と、
前記流体通路に設けられ通過する作動流体の流れに付与する抵抗がポジションに応じて変化する減衰弁と、
前記減衰弁を迂回するように前記流体通路に接続されるバイパス通路と、
前記バイパス通路に設けられ、前記バイパス通路の作動流体の一部をパイロット圧として前記減衰弁へ導くソレノイドバルブと、
前記第1圧力室から前記バイパス通路を通じて前記ソレノイドバルブに導かれる作動流体の流れに抵抗を付与する第1絞り部と、
前記バイパス通路の圧力が所定のリリーフ圧に達すると開弁して前記バイパス通路の圧力を前記流体通路を通じて前記第2圧力室に逃がす第1リリーフ弁と、を有することを特徴とする流体圧緩衝器。
【請求項2】
請求項1に記載の流体圧緩衝器であって、
前記流体通路は、前記第2圧力室から前記第1圧力室に向かう作動流体の流れも許容し、
前記減衰部は、
前記第1リリーフ弁に対して並列に前記バイパス通路に設けられ前記第2圧力室から前記流体通路を通じて前記ソレノイドバルブに導かれる作動流体の流れに抵抗を付与する第2絞り部と、
前記第1絞り部に対して並列に前記バイパス通路に設けられ前記バイパス通路の圧力が所定のリリーフ圧に達すると開弁して前記バイパス通路の圧力を前記減衰弁から前記第1圧力室へ向かう前記流体通路に逃がす第2リリーフ弁と、
前記第1絞り部と前記ソレノイドバルブとの間において前記バイパス通路に設けられ前記第1絞り部から前記ソレノイドバルブへ向かう作動流体の流れのみを許容する第1逆止弁と、
前記第2絞り部と前記ソレノイドバルブとの間において前記バイパス通路に設けられ前記第2絞り部から前記ソレノイドバルブへ向かう作動流体の流れのみを許容する第2逆止弁と、を有することを特徴とする流体圧緩衝器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の流体圧緩衝器であって、
前記減衰部は、
前記減衰弁に供給された前記パイロット圧を前記流体通路に還流する環流通路と、
前記環流通路に設けられ通過する作動流体の流れに抵抗を付与する環流絞り部と、をさらに有することを特徴とする流体圧緩衝器。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載の流体圧緩衝器であって、
前記減衰部は、前記バイパス通路に接続され作動流体を蓄圧して貯留するアキュムレータをさらに有することを特徴とする流体圧緩衝器。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載の流体圧緩衝器であって、
前記第1絞り部は、前記減衰弁よりも大きな抵抗を作動流体の流れに対して付与するように構成されることを特徴とする流体圧緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体圧緩衝器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シリンダに進退自在に挿入されたピストンロッドを備える流体圧緩衝器であって、ピストンロッドは、シリンダの外部へと延出するロッド部と、ロッド部の端部に連結されてシリンダ内を摺動自在に移動するピストンと、を有するものが開示されている。このシリンダ装置では、ロッド部は、ロッド部の内部に形成されてシリンダのピストン側室と連通するロッド内空間と、ロッド内空間とシリンダのロッド側室とを接続する第1連通路と、第1連通路に交換可能に設けられるオリフィスプラグと、を有している。ピストン側室とロッド側室との間で流れる作動流体に対してオリフィスプラグによって抵抗が付与されることで、減衰力が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-206374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の流体圧緩衝器では、減衰力を発生するオリフィスプラグを交換することで、発生する減衰力を調整することができる。
【0005】
一方、流体圧緩衝器では、部品の交換等の作業を行わずに減衰特性の調整を行いたいという要望がある。これを実現するには、例えば、減衰特性がポジションに応じて異なる減衰弁に対して第1圧力室と第2圧力室との間で流れる作動流体の一部をパイロット圧として導くように構成し、パイロット圧の供給をソレノイドバルブによって制御することが考えられる。これによれば、ソレノイドバルブの作動を制御することで、減衰弁のポジションを切り換えられるため、部品交換等の作業を行うことなく減衰特性の調整を行うことができる。このような場合、流体圧緩衝器の第1圧力室と第2圧力室との間で導かれる高圧の作動流体からソレノイドバルブを保護することが求められる。
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、減衰部のソレノイドバルブを保護しつつ減衰特性の調整が可能な流体圧緩衝器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、流体圧緩衝器であって、シリンダチューブと、シリンダチューブに進退自在に挿入されるピストンロッドと、ピストンロッドに連結されシリンダチューブ内を第1圧力室と第2圧力室とに区画するピストンと、第1圧力室と第2圧力室との間の作動流体の流れに対して抵抗を付与して減衰力を発生する減衰部と、を備え、減衰部は、第1圧力室から第2圧力室へ作動流体を導く流体通路と、流体通路に設けられ通過する作動流体の流れに付与する抵抗がポジションに応じて変化する減衰弁と、減衰弁を迂回するように流体通路に接続されるバイパス通路と、バイパス通路に設けられ、減衰弁のポジションを切り換えるためのパイロット圧として減衰弁へ導かれるバイパス通路の作動流体の流れを制御するソレノイドバルブと、流体通路からソレノイドバルブに導かれる作動流体の流れに抵抗を付与する第1絞り部と、バイパス通路の圧力が所定のリリーフ圧に達すると開弁してバイパス通路の圧力を減衰弁から第2圧力室へ向かう流体通路に逃がすリリーフ弁と、を有することを特徴とする。
【0008】
この発明では、流体通路からソレノイドバルブへ向かう作動流体の流れに対して第1絞り部によって抵抗が付与されるため、第1圧力室から第2圧力室へ高圧の作動流体が流れる場合でも、ソレノイドバルブに対して高圧が作用することを抑制できる。また、バイパス通路の圧力が高くなると、リリーフ弁によってバイパス通路が接続通路に逃がされるため、バイパス通路に設けられるソレノイドバルブに高圧が作用することが抑制される。
【0009】
また、本発明は、流体通路が、第2圧力室から第1圧力室に向かう作動流体の流れを許容し、減衰部は、第1リリーフ弁に対して並列にバイパス通路に設けられ第2圧力室から流体通路を通じてソレノイドバルブに導かれる作動流体の流れに抵抗を付与する第2絞り部と、第1絞り部に対して並列にバイパス通路に設けられバイパス通路の圧力が所定のリリーフ圧に達すると開弁してバイパス通路の圧力を減衰弁から第1圧力室へ向かう流体通路に逃がす第2リリーフ弁と、第1絞り部とソレノイドバルブとの間においてバイパス通路に設けられ第1絞り部からソレノイドバルブへ向かう作動流体の流れのみを許容する第1逆止弁と、第2絞り部とソレノイドバルブとの間においてバイパス通路に設けられ第2絞り部からソレノイドバルブへ向かう作動流体の流れのみを許容する第2逆止弁と、を有することを特徴とする。
【0010】
この発明では、流体圧緩衝器の伸長時と収縮時のいずれに対しても減衰弁によって減衰力を発生させることができるため、伸長時と収縮時との両方の減衰特性を調整することができる。
【0011】
また、本発明は、減衰部が、減衰弁に供給されたパイロット圧を流体通路に還流する環流通路と、環流通路に設けられ通過する作動流体の流れに抵抗を付与する環流絞り部と、を有することを特徴とする。
【0012】
この発明では、環流絞り部によってパイロット圧の急激な低下が抑制されるため、減衰弁が急に切り換わることが防止される。これにより、流体圧緩衝器が発生する減衰力を安定させることができる。
【0013】
また、本発明は、減衰部が、バイパス通路に接続され作動流体を蓄圧して貯留するアキュムレータをさらに有することを特徴とする。
【0014】
この発明では、バイパス通路の圧力が低下してもアキュムレータによって圧力を補うことができるため、減衰弁へのパイロット圧を確保することができる。
【0015】
また、本発明は、第1絞り部が、減衰弁よりも大きな抵抗を作動流体の流れに対して付与するように構成されることを特徴とする。
【0016】
この発明では、流体通路からバイパス通路に導かれる作動流体の流量が抑制される。このため、第1圧力室から第2圧力室に導かれる作動流体の流れは、主として流体通路を通じて流れるので、減衰弁に導かれる作動流体の流量を確保して減衰力を充分に確保できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、流体圧緩衝器の減衰部におけるソレノイドバルブを保護しつつ減衰特性を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係るショックアブソーバの構成図である。
図2】本発明の実施形態に係るショックアブソーバの第1変形例を示す構成図である。
図3】本発明の実施形態に係るショックアブソーバの第2変形例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の各実施形態に係る流体圧緩衝器について説明する。以下では、流体圧緩衝器が車両に搭載されるショックアブソーバ100である場合について説明する。
【0020】
ショックアブソーバ100は、例えば、車両の車体と車軸との間に介装され、減衰力を発生させて車体の振動を抑制する装置である。
【0021】
図1に示すように、ショックアブソーバ100は、筒状のシリンダチューブ10と、シリンダチューブ10に進退自在に挿入されシリンダチューブ10の外部へと延出するピストンロッド12と、ピストンロッド12の先端に連結されシリンダチューブ10の内周面に沿って摺動自在に移動するピストン14と、を備える。本実施形態では、ショックアブソーバ100は、シリンダチューブ10が上側、ピストンロッド12が下側となる向きに車両に搭載される。なお、これとは反対に、ショックアブソーバ100は、シリンダチューブ10が下側、ピストンロッド12が上側となる向きに車両に搭載されてもよい。また、本実施形態では、ショックアブソーバ100は、ピストンロッド12の先端がシリンダチューブ10の外部に突出する片ロッド型であるが、ピストンロッド12の両端がシリンダチューブ10の外部に突出する両ロッド型でもよい。
【0022】
シリンダチューブ10内は、ピストン14によってボトム側室1とロッド側室2とに区画される。ボトム側室1とロッド側室2には、それぞれ作動流体としての作動油が封入される。また、図示は省略するが、ボトム側室1には、シリンダチューブ10に対するピストンロッド12の進入、退出に伴うシリンダチューブ10内の容積変化を利用してばね作用を得るためのガスが作動油と共に封入される。このように、ショックアブソーバ100は、ガスによるばね作用によって車体の支持が可能なエアサスペンションの機能を備える流体圧緩衝器である。この場合、車体を支持するばねを別途設けなくても、ショックアブソーバ100によって減衰力の発生及び車体の支持が可能となる。
【0023】
なお、これに限らず、シリンダチューブ10内にガスが封入されなくてもよい。また、ボトム側室1の内部に移動自在に設けられ、ボトム側室1を作動油が充填される液室とガスが封入される気室とに隔てるフリーピストンが設けられてもよい。この場合、ピストン14は、液室に面するように構成される。
【0024】
ショックアブソーバ100は、ロッド側室2とボトム側室1との間での作動油の流れに対して抵抗を付与して減衰力を発生する減衰部20をさらに備える。
【0025】
ショックアブソーバ100は、例えば、減衰部20の各構成及び流路が、ショックアブソーバ100を構成する各部品(シリンダチューブ10、ピストン14、ピストンロッド12)の内部に設けられる、いわゆる内部配管式の構造を有する。なお、減衰部20は、一部の構成や流路のみがショックアブソーバ100の構成部品の内部に設けられてもよいし、全部がショックアブソーバ100の外部に設けられてショックアブソーバ100が外部配管式の構造を有していてもよい。
【0026】
減衰部20は、それぞれボトム側室1とロッド側室2とを連通する流体通路である第1流体通路21及び第2流体通路22と、第1流体通路21に設けられ通過する作動油の流れに対して抵抗を付与する第1抵抗部30と、第2流体通路22に設けられ作動油の流れに対して抵抗を付与する第2抵抗部40と、を有する。
【0027】
第1抵抗部30は、ボトム側室1からロッド側室2へ向かう作動油の流れに対してのみ抵抗を付与する。第1抵抗部30は、通過する作動油に対して抵抗を付与して減衰力を発生する減衰絞り部31と、ボトム側室1からロッド側室2への作動油の流れのみを許容する逆止弁32と、を有する。つまり、第1流体通路21では、ボトム側室1からロッド側室2へ向かう作動油の流れのみが許容され、その反対の流れは規制される。減衰絞り部31は、例えば、固定オリフィスである。
【0028】
第2抵抗部40は、ボトム側室1とロッド側室2との間の作動油の流れの双方向のいずれに対しても抵抗を付与する。つまり、第2流体通路22では、ボトム側室1とロッド側室2との間の双方向の作動油の流れが許容される。
【0029】
第2抵抗部40は、通過する作動油の流れに付与する抵抗がポジションに応じて変化する減衰弁41を有する。
【0030】
減衰弁41は、通過する作動油の流れに所定の抵抗を付与する第1絞りポジション41Aと、第1絞りポジション41Aによって付与される抵抗とは異なる大きさの抵抗を通過する作動油の流れに付与する第2絞りポジション41Bと、を有する。つまり、第1絞りポジション41Aと第2絞りポジション41Bとは、通過する作動油の流れに対する圧力損失特性が異なっている。
【0031】
減衰弁41は、ポジションを切り換える弁体(図示省略)と、弁体を付勢する付勢部材としてのスプリング42と、パイロット圧が導かれるパイロット圧室(図示省略)と、を有する。減衰弁41では、第1絞りポジション41Aとなるように弁体がスプリング42によって付勢されている。減衰弁41は、パイロット圧室にパイロット圧が導かれることで、弁体がスプリング42の付勢力に抗してパイロット圧により移動して、第2絞りポジション41Bに切り換えられる。減衰弁41へのパイロット圧の供給が遮断されると、減衰弁41は、スプリング42の付勢力によって第1絞りポジション41Aに切り換えられる。
【0032】
なお、以下では、説明の便宜上、第2流体通路22において、ボトム側室1と減衰弁41とを連通する部分を「ボトム側通路22a」、ロッド側室2と減衰弁41とを連通する部分を「ロッド側通路22b」とする。
【0033】
減衰部20は、減衰弁41のポジションを切り換えるための切換部50をさらに有する。
【0034】
切換部50は、減衰弁41を迂回するように第2流体通路22に接続されるバイパス通路51と、バイパス通路51に設けられ減衰弁41へのパイロット圧の供給を制御するソレノイドバルブ60と、を有する。
【0035】
バイパス通路51は、作動油の流れ方向で見た場合において、減衰弁41とボトム側室1との間において第2流体通路22に接続すると共に、ロッド側室2と減衰弁41との間において第2流体通路22に接続する。つまり、バイパス通路51は、一端が第2流体通路22のボトム側通路22aに接続され、他端がロッド側通路22bに接続される。バイパス通路51は、第2流体通路22に導かれる作動油の一部を減衰弁41を通過させずにボトム側室1とロッド側室2との間で移動させる。
【0036】
以下では、説明の便宜上、バイパス通路51において、第2流体通路22のボトム側通路22aとソレノイドバルブ60とを連通する部分を「ボトム側バイパス通路51a」、ロッド側通路22Bとソレノイドバルブ60とを連通する部分を「ロッド側バイパス通路51b」とする。
【0037】
ソレノイドバルブ60には、減衰弁41にパイロット圧を導くパイロット通路52が接続される。ソレノイドバルブ60は、減衰弁41へのパイロット圧の供給を遮断する遮断ポジション60Aと、パイロット通路52を通じてバイパス通路51の作動油の一部をパイロット圧として減衰弁41に導く供給ポジション60Bと、を有する。遮断ポジション60A及び供給ポジション60Bのいずれにおいても、ソレノイドバルブ60は、バイパス通路51を遮断せずに開放するように構成される。
【0038】
ソレノイドバルブ60は、コントローラ80から入力される電気信号によって作動が制御される。ソレノイドバルブ60は、ポジションを切り換える弁体(図示省略)と、弁体を付勢する付勢部材としてのスプリング61と、通電によって弁体をスプリング61の付勢力に抗して移動させるソレノイド62と、を有する。
【0039】
ソレノイドバルブ60では、遮断ポジション60Aとなるように弁体がスプリング61によって付勢されている。通電によってソレノイド62が励磁されると、弁体がスプリング61の付勢力に抗して移動して、ソレノイドバルブ60は、供給ポジション60Bに切り換えられる。ソレノイド62への通電が遮断されると、ソレノイドバルブ60は、スプリング61の付勢力によって遮断ポジション60Aに切り換えられる。
【0040】
パイロット通路52には、減衰弁41に供給されたパイロット圧をボトム側通路22aに還流する第1環流通路55aと、減衰弁41に供給されたパイロット圧をロッド側通路22bに還流する第2環流通路55bと、が接続される。
【0041】
第1環流通路55aには、通過する作動油の流れに抵抗を付与する第1環流絞り部56aと、減衰弁41のパイロット圧室からボトム側通路22aへ向かう作動油の流れのみを許容する第1環流逆止弁57aと、が設けられる。
【0042】
第2環流通路55bには、通過する作動油の流れに抵抗を付与する第2環流絞り部56bと、減衰弁41のパイロット圧室からロッド側通路22bへ向かう作動油の流れのみを許容する第2環流逆止弁57bと、が設けられる。
【0043】
ボトム側バイパス通路51aには、通過する作動油の流れに抵抗を付与するボトム側絞り部70aと、ボトム側室1からボトム側バイパス通路51aを通じてソレノイドバルブ60に向かう作動油の流れのみを許容するボトム側逆止弁71aと、バイパス通路51の圧力が所定のリリーフ圧に達すると開弁してバイパス通路51の圧力をボトム側通路22aを通じてボトム側室1に逃がすボトム側リリーフ弁72aと、が設けられる。
【0044】
ボトム側絞り部70aとボトム側逆止弁71aとは直列に設けられ、ボトム側リリーフ弁72aは、ボトム側絞り部70a及びボトム側逆止弁71aに対して並列に設けられる。
【0045】
ロッド側バイパス通路51bには、通過する作動油の流れに抵抗を付与するロッド側絞り部70bと、ロッド側室2からロッド側バイパス通路51bを通じてソレノイドバルブ60に向かう作動油の流れのみを許容するロッド側逆止弁71bと、バイパス通路51の圧力が所定のリリーフ圧に達すると開弁してバイパス通路51の圧力をロッド側通路22bを通じてロッド側室2に逃がすロッド側リリーフ弁72bと、が設けられる。
【0046】
ロッド側絞り部70bとロッド側逆止弁71bとは直列に設けられ、ロッド側リリーフ弁72bは、ロッド側絞り部70b及びロッド側逆止弁71bに対して並列に設けられる。
【0047】
ボトム側絞り部70a及びロッド側絞り部70bは、それぞれ減衰弁41の第1絞りポジション41A及び第2絞りポジション41Bよりも大きな抵抗を作動油の流れに対して付与するように構成される。これにより、第2流体通路22からバイパス通路51に導かれる作動油の流量が抑制される。つまり、第2流体通路22からバイパス通路51に導かれる作動油の流量は、ボトム側室1とロッド側室2との間で第2流体通路22を通じて流れる作動油の流量に対して少ない。よって、ボトム側室1とロッド側室2との間での作動油の流れは、主として第1流体通路21及び第2流体通路22を通じた流れになる。このため、減衰弁41に導かれる作動油の流量を確保して減衰力を充分に確保できる。
【0048】
ボトム側リリーフ弁72a及びロッド側リリーフ弁72bのリリーフ圧は、ソレノイドバルブ60を充分に保護できる大きさに設定される。ボトム側リリーフ弁72a及びロッド側リリーフ弁72bのリリーフ圧は、例えば、互いに同じ大きさに設定される。なお、ボトム側リリーフ弁72a及びロッド側リリーフ弁72bのリリーフ圧は、互いに異なる大きさに設定されてもよい。
【0049】
次に、ショックアブソーバ100の作動について説明する。
【0050】
ショックアブソーバ100が収縮作動した際には、ボトム側室1の収縮に伴い、ボトム側室1の圧力が上昇し、ボトム側室1から作動油が排出される。ボトム側室1の作動油は、一部が第1流体通路21の減衰絞り部31を通過し逆止弁32を開弁してロッド側室2に導かれる。ボトム側室1の残りの作動油は、第2流体通路22の減衰弁41を通過してロッド側室2に導かれる。このように、ショックアブソーバ100の収縮作動の際には、ボトム側室1の作動油は、第1流体通路21及び第2流体通路22の両方に導かれ、減衰絞り部31及び減衰弁41の両方を通過してロッド側室2に導かれる。このため、ショックアブソーバ100では、減衰絞り部31及び減衰弁41が全体として発揮する流路抵抗に応じた減衰力が発生される。
【0051】
ショックアブソーバ100が伸長作動した際には、ロッド側室2の収縮に伴い、ロッド側室2の圧力が上昇し、ロッド側室2から作動油が排出される。ロッド側室2の作動油は、減衰弁41を通過してボトム側室1に導かれる。
【0052】
一方、ロッド側室2の圧力上昇によって逆止弁32は閉弁するため、ロッド側室2の作動油は、第1流体通路21の減衰絞り部31を通じてはボトム側室1に導かれない。よって、ショックアブソーバ100の伸長作動の際には、減衰弁41が発生する流路抵抗に応じた減衰力が発生する。したがって、収縮作動時には減衰絞り部31を通じたボトム側室1からロッド側室2への作動油の流れが許容される分、ショックアブソーバ100は、伸長作動時の方が収縮作動時よりも大きな減衰力を発生しやすい。これにより、車両が路面上の突起部に乗り上げたような場合には、ショックアブソーバ100は比較的スムーズに収縮作動し、その後、伸長作動する際に大きな減衰力を発生して、路面から車体に入力される振動を効果的に減衰させる。
【0053】
次に、減衰弁41のポジションを切り換えて、減衰特性を調整する作用について説明する。以下では、主にショックアブソーバ100が収縮作動している場合を例に説明する。
【0054】
減衰弁41の減衰特性を切り換えるには、コントローラ80によってソレノイドバルブ60のソレノイド62への通電と通電の遮断とを切り換える。ソレノイド62へ通電されていない状態では、ソレノイドバルブ60が遮断ポジション60Aとなり、減衰弁41にはパイロット圧は供給されない。このため、減衰弁41は、第1絞りポジション41Aをとる。
【0055】
ソレノイド62へ通電された状態では、ソレノイドバルブ60が供給ポジション60Bとなり、バイパス通路51の圧力がパイロット圧として減衰弁41に供給される。これにより、減衰弁41は、第2絞りポジション41Bに切り換えられる。このように、ソレノイド62へ通電している状態では、減衰弁41は第2絞りポジション41Bとなり、ソレノイド62へ通電していない状態では、減衰弁41は第1絞りポジション41Aとなる。
【0056】
ここで、パイロット圧として減衰弁41に供給されるバイパス通路51の圧力について説明する。本実施形態では、ソレノイドバルブ60によってバイパス通路51から減衰弁41に供給されるパイロット圧を制御する。このため、バイパス通路51の圧力の過度な上昇を抑制して、ソレノイドバルブ60を保護する必要がある。
【0057】
ショックアブソーバ100では、例えば、収縮する速度が比較的遅い場合や負荷の大きさが高くない場合など、ボトム側室1の圧力上昇が比較的大きくなく、ボトム側室1から排出される作動油の圧力も比較的高圧にならない場合がある(以下、「低負荷状態」とも称する。)。この場合、ボトム側室1から排出されてボトム側絞り部70aを通過した作動油の圧力が、バイパス通路51内の圧力よりも小さくなる。よって、ボトム側逆止弁71aは閉弁し、ボトム側室1からソレノイドバルブ60に向かう作動油の流れが生じない。
【0058】
このような、低負荷状態では、ソレノイド62に通電されソレノイドバルブ60が供給ポジション60Bに切り換えられると、バイパス通路51に残存していた圧力がパイロット圧として減衰弁41に導かれる。
【0059】
低負荷状態でソレノイド62への通電を遮断してソレノイドバルブ60が供給ポジション60Bから遮断ポジション60Aに切り換えられると、減衰弁41のパイロット圧室の作動油は、収縮作動に伴って圧力が低下するロッド側室2へ向けて還流される。より具体的には、減衰弁41のパイロット圧室の作動油は、第2環流逆止弁57bを開弁し、第2環流絞り部56bを通過してロッド側室2へ還流される。これにより、パイロット圧室の圧力が低下するため、スプリング42の付勢力によって減衰弁41は第2絞りポジション41Bから第1絞りポジション41Aへと切り換えられる。
【0060】
このように、低負荷状態では、バイパス通路51の残圧がパイロット圧として減衰弁41へ供給又は遮断されることで、減衰弁41のポジションが切り換えられる。
【0061】
一方、例えば、ショックアブソーバ100が収縮する速度が比較的速い場合や負荷が大きい場合などには、ボトム側室1から排出される作動油の圧力が高く、ボトム側絞り部70aを通過した作動油の圧力が、バイパス通路51の残圧よりも高くなることがある。また、ボトム側室1から排出される作動油の圧力が高くなくても、バイパス通路51の残圧が低下して、ボトム側絞り部70aを通過した作動油の圧力が、バイパス通路51の残圧よりも高くなることがある。以下、ボトム側絞り部70aを通過した作動油の圧力が、バイパス通路51の残圧よりも高くなる状態を「高負荷状態」とも称する。
【0062】
このような高負荷状態では、ボトム側絞り部70aを通過した作動油の圧力がバイパス通路51の残圧よりも大きいためにボトム側逆止弁71aが開弁し、ボトム側室1の圧力がバイパス通路51に導かれる。
【0063】
このため、高負荷状態では、ソレノイド62に通電されソレノイドバルブ60が供給ポジション60Bに切り換えられると、ボトム側室1からバイパス通路51に導かれる作動油の圧力がパイロット圧として減衰弁41に導かれる。別の観点からいうと、ボトム側室1から排出される作動油の圧力によってバイパス通路51内の圧力が上昇し、このようにして上昇したバイパス通路51の圧力がパイロット圧として減衰弁41に導かれる。これにより、減衰弁41は、第1絞りポジション41Aから第2絞りポジション41Bへと切り換えられる。
【0064】
ソレノイド62への通電を遮断してソレノイドバルブ60が供給ポジション60Bから遮断ポジション60Aに切り換えられた場合は、低負荷状態と同様、減衰弁41のパイロット圧室の作動油は、収縮作動に伴って圧力が低下するロッド側室2へ向けて還流される。これにより、スプリング42の付勢力によって減衰弁41は第2絞りポジション41Bから第1絞りポジション41Aへと切り換えられる。
【0065】
このように、高負荷状態では、ボトム側室1の作動油がボトム側絞り部70aを通過してバイパス通路51に導かれ、パイロット圧として減衰弁41へ供給又は遮断されることで、減衰弁41のポジションが切り換えられる。
【0066】
ソレノイドバルブ60のポジションに関わらず、高負荷状態において、ボトム側室1からバイパス通路51に作動油が導かれることでバイパス通路51内の圧力がリリーフ圧に達すると、ロッド側リリーフ弁72bが開弁する。これにより、バイパス通路51の圧力を、収縮作動に伴って圧力が低下しているロッド側室2に逃がすことができるため、バイパス通路51の圧力が過剰に上昇することを抑制し、ソレノイドバルブ60を保護することができる。なお、この際、ボトム側室1の圧力は上昇して高圧となっているため、ボトム側リリーフ弁72aは閉弁した状態となる。
【0067】
以上のように、低負荷状態及び高負荷状態のいずれにおいても、ソレノイドバルブ60のソレノイド62への通電とその遮断とを制御することで、バイパス通路51の圧力を減衰弁41にパイロット圧として導くことができる。これにより、減衰弁41のポジションを切り換えて、減衰特性の調整を行うことができる。また、高負荷時であっても、バイパス通路51の圧力がロッド側リリーフ弁72bのリリーフ圧以下に保たれるため、ソレノイドバルブ60を保護しつつ減衰弁41にパイロット圧を供給できる。また、バイパス通路51の残圧が低下した場合であっても、ボトム側室1から作動油の圧力が導かれて圧力が回復するため、減衰弁41へパイロット圧が供給できないといった事態は防止できる。
【0068】
なお、伸長作動時の作用は、収縮作動時と比較して、ボトム側の構成とロッド側の構成とで発揮する機能が入れ替わるだけであるため、詳細な説明は省略する。
【0069】
つまり、収縮作動時には、ボトム側室1が「第1圧力室」、ロッド側室2が「第2圧力室」として機能する。また、ボトム側絞り部70aが「第1絞り部」、ロッド側絞り部70bが「第2絞り部」、ロッド側リリーフ弁72bが「第1リリーフ弁」、ボトム側リリーフ弁72aが「第2リリーフ弁」、ボトム側逆止弁71aが「第1逆止弁」、ロッド側逆止弁71bが「第2逆止弁」として、それぞれ機能する。
【0070】
伸長作動時では、収縮作動時とは反対に、ロッド側室2が「第1圧力室」、ボトム側室1が「第2圧力室」として機能する。また、ロッド側絞り部70bが「第1絞り部」、ボトム側絞り部70aが「第2絞り部」、ボトム側リリーフ弁72aが「第1リリーフ弁」、ロッド側リリーフ弁72bが「第2リリーフ弁」、ロッド側逆止弁71bが「第1逆止弁」、ボトム側逆止弁71aが「第2逆止弁」として、それぞれ機能する。
【0071】
以上の実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0072】
ショックアブソーバ100では、第2流体通路22からソレノイドバルブ60へ向かう作動油の流れに対してボトム側絞り部70a又はロッド側絞り部70bによって抵抗が付与されるため、バイパス通路51の圧力上昇を抑制し、ソレノイドバルブ60に対して高圧が作用することを抑制できる。また、バイパス通路51の圧力が高くなると、ロッド側リリーフ弁72bが開弁することで、低圧となるロッド側室2又はボトム側室1に対してバイパス通路51の圧力が逃がされる。このため、バイパス通路51に設けられるソレノイドバルブ60に高圧が作用することが抑制される。したがって、ソレノイドバルブ60を保護しつつ、部品の交換作業等をしなくともソレノイドバルブ60を制御することで、ショックアブソーバ100の減衰特性を調整することができる。
【0073】
また、ソレノイドバルブ60によって減衰弁41のポジションを切り換えてショックアブソーバ100の減衰特性を調整する構成であるため、例えば、ショックアブソーバ100のストローク領域や、車両のステアリング操作、路面状況など車両の走行状態等に応じて任意のタイミングで減衰特性を変更することができる。したがって、ショックアブソーバ100の利便性が向上する。
【0074】
次に、本実施形態の変形例について、説明する。以下のような変形例も本発明の範囲内であり、以下の変形例と上記実施形態の各構成とを組み合わせたり、以下の変形例と後述の各実施形態の各構成とを組み合わせたり、以下の変形例同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0075】
上記実施形態では、第1抵抗部30は、流路抵抗が固定の減衰絞り部31を有し、第2抵抗部40は、流路抵抗(圧力損失特性)が可変の減衰弁41を有する。これに対し、第1抵抗部30が、減衰絞り部31に代えて、第2抵抗部40の減衰弁41と同様の減衰弁41を備えていてもよい。この場合には、第1流体通路21も「流体通路」として機能する。また、この場合には、第2抵抗部40は、上記実施形態と同様に減衰弁41を有していてもよいし、流路抵抗が固定の減衰絞り部31を減衰弁41に代えて有していてもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、減衰弁41は、2つのポジションを有し、減衰特性が2段階に切り換えられる構成である。これに対し、減衰弁41は、3つ以上のポジションを有して減衰特性を3以上の段階で切り換えるものでもよい。この場合、ソレノイドバルブ60は、減衰弁41に対応したポジションとなるように構成すればよい。
【0077】
以下、図2を参照して、第1変形例について説明する。
【0078】
第1変形例では、第1抵抗部30及び第2抵抗部40のそれぞれが、減衰弁141を有する。第1抵抗部30の減衰弁141と第2抵抗部40の減衰弁141とは同様の構成である。減衰弁141は、第1絞りポジション41A、第2絞りポジション41B、及び第3絞りポジション41Cを有する。減衰弁141は、パイロット圧が供給されない状態では、一対のスプリング42a,42bの付勢力によって第2絞りポジション41Bをとる。一方のパイロット圧室(図示省略)にパイロット圧が供給されると第1絞りポジション41Aに切り換えられ、他方のパイロット圧室(図示省略)にパイロット圧が供給されると第3絞りポジション41Cに切り換えられる。
【0079】
バイパス通路51には、第1抵抗部30の減衰弁41を切り換えるためのソレノイドバルブ160と、第2抵抗部40の減衰弁41を切り換えるためのソレノイドバルブ160と、が設けられる。バイパス通路51に設けられる2つのソレノイドバルブ160は、互いに同様の構成である。ソレノイドバルブ160は、対応する減衰弁141へのパイロット圧の供給を遮断する遮断ポジション60Aと、減衰弁41の一方のパイロット圧室にパイロット圧を供給する第1供給ポジション60Bと、減衰弁41の他方のパイロット圧室にパイロット圧を供給する第2供給ポジション60Cと、を有する。ソレノイドバルブ60は、一対のソレノイド62a,62bが励磁されていない状態では、一対のスプリング61a,61bの付勢力によって遮断ポジション60Aをとる。また、ソレノイドバルブ60は、一方のソレノイド62aが励磁されると第1供給ポジション60Bをとり、他方のソレノイド62bが励磁されると第2供給ポジション60Cをとる。
【0080】
このような第1変形例によれば、減衰特性の調整のバリエーションを増やすことができるため、より様々な状況に対して適切な減衰力を発生させることができる。また、第1抵抗部30が減衰弁41を有するため、ショックアブソーバ100の収縮時の減衰特性だけを個別に調整することができる。
【0081】
なお、図2では、説明の便宜上、第1環流通路55a及び第2環流通路55bの図示を省略しているが、第1変形例においても、上記実施形態と同様に、減衰弁41の各パイロット圧の作動油をボトム側室1又はロッド側室2へ逃がす環流通路を設けることが望ましい。
【0082】
次に、図3を参照して、第2変形例について説明する。
【0083】
図3に示すように、第2変形例では、切換部50は、バイパス通路51の作動油を蓄圧して貯留するアキュムレータ90をさらに有する。このような第2変形例によれば、アキュムレータ90によってバイパス通路51の圧力の急激な変動が抑制されるため、ソレノイドバルブ60がより一層保護される。また、バイパス通路51の圧力が低下してもアキュムレータ90によって圧力を補うことができるため、減衰弁41へのパイロット圧を確保することができる。
【0084】
次に、その他の変形例について説明する。
【0085】
第1抵抗部30及び/又は第2抵抗部40は、単一の減衰弁41を備える構成に限定されず、複数の減衰弁41を備えていてもよい。つまり、第1流体通路21及び/又は第2流体通路22には、2つ以上の減衰弁41が直列に設けられてもよい。第1抵抗部30及び/又は第2抵抗部40が複数の減衰弁41を有することで、各減衰弁41のポジションの組み合わせに応じて多様な減衰特性を実現することができる。
【0086】
また、上記実施形態では、切換部50には、第1環流通路55a及び第2環流通路55bが設けられるが、パイロット圧の作動油を逃がすためには、少なくとも一方が設けられればよい。
【0087】
また、上記実施形態では、収縮作動時には、ボトム側室1の作動油が第1流体通路21及び第2流体通路22の両方を通過してロッド側室2に導かれ、伸長作動時には、ロッド側室2の作動油が第2流体通路22のみを通過してボトム側室1に導かれる。これに対し、第1流体通路21の逆止弁32を廃止して、ロッド側室2からボトム側室1へ向かう作動油の流れのみを許容する逆止弁を第2流体通路22に設けてもよい。
【0088】
以下、本発明の各実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0089】
ショックアブソーバ100は、シリンダチューブ10と、シリンダチューブ10に進退自在に挿入されるピストンロッド12と、ピストンロッド12に連結されシリンダチューブ内を第1圧力室(ボトム側室1,ロッド側室2)と第2圧力室(ロッド側室2,ボトム側室1)とに区画するピストン14と、第1圧力室と第2圧力室との間の作動油の流れに対して抵抗を付与して減衰力を発生する減衰部20と、を備え、減衰部20は、第1圧力室から第2圧力室へ作動油を導く流体通路(第2流体通路22,第1流体通路21)と、流体通路に設けられ通過する作動油の流れに付与する抵抗がポジションに応じて変化する減衰弁41と、減衰弁41を迂回するように流体通路に接続されるバイパス通路51と、バイパス通路51に設けられ、減衰弁41のポジションを切り換えるためのパイロット圧として減衰弁41へ導かれるバイパス通路51の作動油の流れを制御するソレノイドバルブ60と、流体通路からソレノイドバルブ60に導かれる作動油の流れに抵抗を付与する第1絞り部(ボトム側絞り部70a,ロッド側絞り部70b)と、バイパス通路51の圧力が所定のリリーフ圧に達すると開弁してバイパス通路51の圧力を流体通路を通じて第2圧力室に逃がすリリーフ弁(ロッド側リリーフ弁72b,ボトム側リリーフ弁72a)と、を有する。
【0090】
この構成では、流体通路からソレノイドバルブ60へ向かう作動流体の流れに対して絞り部によって抵抗が付与されるため、第1圧力室から第2圧力室へ高圧の作動流体が流れる場合でも、ソレノイドバルブ60に対して高圧が作用することを抑制できる。また、バイパス通路51の圧力が高くなると、リリーフ弁によってバイパス通路51が接続通路に逃がされるため、バイパス通路51に設けられるソレノイドバルブ60に高圧が作用することが抑制される。したがって、ショックアブソーバ100によれば、流体圧緩衝器の減衰部20におけるソレノイドバルブ60を保護しつつ減衰特性を調整することができる。
【0091】
また、ショックアブソーバ100では、流体通路が、第2圧力室から第1圧力室に向かう作動流体の流れも許容し、減衰部20は、第1リリーフ弁に対して並列にバイパス通路51に設けられ第2圧力室から流体通路を通じてソレノイドバルブ60に導かれる作動流体の流れに抵抗を付与する第2絞り部(ロッド側絞り部70b,ボトム側絞り部70a)と、第1絞り部に対して並列にバイパス通路51に設けられバイパス通路51の圧力が所定のリリーフ圧に達すると開弁してバイパス通路51の圧力を減衰弁41から第1圧力室へ向かう流体通路に逃がす第2リリーフ弁(ボトム側リリーフ弁72a,ロッド側リリーフ弁72b)と、第1絞り部とソレノイドバルブ60との間においてバイパス通路51に設けられ第1絞り部からソレノイドバルブ60へ向かう作動流体の流れのみを許容する第1逆止弁(ボトム側逆止弁71a,ロッド側逆止弁71b)と、第2絞り部とソレノイドバルブ60との間においてバイパス通路51に設けられ第2絞り部からソレノイドバルブ60へ向かう作動流体の流れのみを許容する第2逆止弁(ロッド側逆止弁71b,ボトム側逆止弁71a)と、を有する。
【0092】
この構成では、ショックアブソーバ100の伸長時と収縮時のいずれに対しても減衰弁41によって減衰力を発生させることができるため、伸長時と収縮時との両方の減衰特性を調整することができる。
【0093】
また、ショックアブソーバ100では、減衰部20が、減衰弁41に供給されたパイロット圧を流体通路に還流する環流通路(第1環流通路55a、第2環流通路55b)と、環流通路に設けられ通過する作動流体の流れに抵抗を付与する環流絞り部(第1環流絞り部56a、第2環流絞り部56b)と、を有する。
【0094】
この構成では、環流絞り部によってパイロット圧の急激な低下が抑制されるため、減衰弁41が急に切り換わることが防止される。これにより、ショックアブソーバ100が発生する減衰力を安定させることができる。
【0095】
また、ショックアブソーバ100では、減衰部20が、バイパス通路51に接続され作動油を蓄圧して貯留するアキュムレータ90をさらに有する。
【0096】
この構成では、バイパス通路51の圧力が低下してもアキュムレータ90によって圧力を補うことができるため、減衰弁41へのパイロット圧を確保することができる。
【0097】
また、ショックアブソーバ100では、第1絞り部が、減衰弁よりも大きな抵抗を作動流体の流れに対して付与するように構成される。
【0098】
この構成では、流体通路からバイパス通路51に導かれる作動油の流量が抑制される。このため、第1圧力室から第2圧力室に導かれる作動油の流れは、主として流体通路を通じて流れるので、減衰弁41に導かれる作動油の流量を確保して減衰力を充分に確保できる。
【0099】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0100】
100…ショックアブソーバ(流体圧緩衝器)、1…ボトム側室(第1圧力室、第2圧力室)、2…ロッド側室(第1圧力室、第2圧力室)、10…シリンダチューブ、12…ピストンロッド、14…ピストン、20…減衰部、21…第1流体通路(流体通路)、22…第2流体通路(流体通路)、41,141…減衰弁、51…バイパス通路、55a…第1環流通路(環流通路)、55b…第2環流通路(環流通路)、56a…第1環流絞り部(環流絞り部)、56b…第2環流絞り部、60,160…ソレノイドバルブ、70a…ボトム側絞り部(第1絞り部、第2絞り部)、70b…ロッド側絞り部(第1絞り部、第2絞り部)、71a…ボトム側逆止弁(第1逆止弁、第2逆止弁)、71b…ロッド側逆止弁(第1逆止弁、第2逆止弁)、72a…ボトム側リリーフ弁(第1リリーフ弁、第2リリーフ弁)、72b…ロッド側リリーフ弁(第1リリーフ弁、第2リリーフ弁)、90…アキュムレータ
図1
図2
図3