(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147816
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】共振器、フィルタおよび通信装置
(51)【国際特許分類】
H01P 7/04 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
H01P7/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021049231
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】吉川 博道
【テーマコード(参考)】
5J006
【Fターム(参考)】
5J006HA05
5J006LA01
5J006MB02
5J006NA08
5J006NE02
5J006PA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電気特性の優れた共振器、それを用いたフィルタおよび通信装置を提供する。
【解決手段】共振器Rは、第1誘電体部1と、導体部2と、接合材部4と、第2誘電体部5と、シールド筐体6と、を備える。第1誘電体部1は、第1面11と、第1面11と反対側の第2面12と、を有する。導体部2は、第1誘電体部1の第1面11から第2面12にわたって位置する。第2誘電体部5は、第1面11から離間して位置し、第1面11に対向する第3面51と、第3面51と反対側の第4面52と、を有する。接合材部4は、導体部2の第1面11側の端面と、第2誘電体部5の第3面51と、を接合する。第2誘電体部5の第3面51は、接合材部4が接合された接合領域5bと、接合領域5bの周囲に位置する凹溝5aと、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と、前記第1面と反対側の第2面と、を有する第1誘電体部と、
前記第1誘電体部の前記第1面から前記第2面にわたって位置する柱状の導体部と、
前記第1面から離間して位置し、前記第1面に対向する第3面と、前記第3面と反対側の第4面と、を有する第2誘電体部と、
前記導体部の前記第1面側の端面と、前記第2誘電体部の第3面と、を接合する接合材部と、
前記第2誘電体部の前記第4面を覆う第1部分と、前記第1部分に連なり、前記第1誘電体部および前記第2誘電体部を外囲する第2部分と、を有するシールド筐体と、
を備え、
前記第2誘電体部の前記第3面は、前記接合材部が接合された接合領域と、前記接合領域の周囲に位置する凹溝と、を有する共振器。
【請求項2】
前記第1誘電体部は、前記第1面から前記第2面に貫通する貫通孔を有し、
前記シールド筐体は、前記第2部分に連なり、前記第1誘電体部の前記第2面を覆う第3部分を有する、請求項1記載の共振器。
【請求項3】
前記接合材部は、はんだまたは金属ろう材を含む、請求項1または2記載の共振器。
【請求項4】
前記第2誘電体部は、セラミック材料を含む、請求項1~3のいずれか1つに記載の共振器。
【請求項5】
前記第1誘電体部は、樹脂材料を含む、請求項1~4のいずれか1つに記載の共振器。
【請求項6】
一面が開放されたシールド筐体と、
前記シールド筐体の開放面を覆う誘電体部と、
前記誘電体部の内面から前記シールド筐体の底面にわたって位置する柱状の導体部と、
前記導体部と前記誘電体部の内面とを接合する接合材部と、
を備え、
前記誘電体部の内面は、前記接合材部が接合された接合領域と、前記接合領域の周囲に位置する凹溝と、を有する共振器。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1つに記載の共振器と、
前記共振器に、電気的または電磁気的に接続される端子部と、を備えるフィルタ。
【請求項8】
アンテナと、通信回路と、前記アンテナおよび前記通信回路に接続された請求項7に記載のフィルタと、を備える通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共振器、それを用いたフィルタおよび通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
貫通孔が設けられた誘電体ブロックの外面に導電体膜を形成し、誘電体ブロックの外形寸法、貫通孔の大きさおよび形成位置によって共振周波数を設定する共振器が知られている(たとえば、特許文献1を参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されるような従来技術の共振器では、高次モードの共振周波数が基本モードの共振周波数に近接し、帯域外特性が低下するという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、帯域外特性の優れた共振器、それを用いたフィルタおよび通信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の共振器は、第1面と、前記第1面と反対側の第2面と、を有する第1誘電体部と、
前記第1誘電体部の前記第1面から前記第2面にわたって位置する柱状の導体部と、
前記第1面から離間して位置し、前記第1面に対向する第3面と、前記第3面と反対側の第4面と、を有する第2誘電体部と、
前記導体部の前記第1面側の端面と、前記第2誘電体部の第3面と、を接合する接合材部と、
前記第2誘電体部の前記第4面を覆う第1部分と、前記第1部分に連なり、前記第1誘電体部および前記第2誘電体部を外囲する第2部分と、有するシールド筐体と、
を備え、
前記第2誘電体部の前記第3面は、前記接合材部が接合された接合領域と、前記接合領域の周囲に位置する凹溝と、を有する。
【0007】
本開示の共振器は、一面が開放されたシールド筐体と、
前記シールド筐体の開放面を覆う誘電体部と、
前記誘電体部の内面から前記シールド筐体の底面にわたって位置する柱状の導体部と、
前記導体部と前記誘電体部の内面とを接合する接合材部と、
を備え、
前記誘電体部の内面は、前記接合材部が接合された接合領域と、前記接合領域の周囲に位置する凹溝と、を有する。
【0008】
本開示のフィルタは、上記の共振器と、
前記共振器に、電気的または電磁気的に接続される第1端子部と、
前記共振器に、電気的または電磁気的に接続される第2端子部と、を備える。
【0009】
本開示の通信装置は、アンテナと、通信回路と、前記アンテナおよび前記通信回路に接続された上記のフィルタと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本開示の共振器によれば、電気特性の優れた共振器を得ることができる。本開示のフィルタによれば、電気特性の優れたフィルタを得ることができる。本開示の通信装置によれば、通信品質の優れた通信装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態の共振器を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図1に示す共振器を切断面線II-IIから見た断面図である。
【
図3】第2誘電体部の第3面を上に向けた状態の斜視図である。
【
図4】第2実施形態の共振器を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図4の切断面線V-Vから見た断面図である。
【
図6】第3実施形態のフィルタを模式的に示す断面図である。
【
図7】
図6の切断面線VII-VIIから見た断面図である。
【
図8】第4実施形態のフィルタを模式的に示す断面図である。
【
図9】第5実施形態のフィルタを模式的に示す断面図である。
【
図10】
図9の切断面線X-Xから見た断面図である。
【
図11】第6実施形態のフィルタを模式的に示す断面図である。
【
図12】
図11の切断面線XII-XIIから見た断面図である。
【
図13】第7実施形態の共振器を模式的に示す断面図である。
【
図15】実施例1および比較例のフィルタ特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る共振器、フィルタおよび通信装置について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0013】
・共振器
<第1実施形態>
図1は第1実施形態の共振器を模式的に示す断面図であり、
図2は
図1の切断面線II-IIから見た断面図である。本実施形態の共振器Rは、第1誘電体部1と、導体部2と、接合材部4と、第2誘電体部5と、シールド筐体6と、を備える。シールド筐体6は、内部に共振空間としての空洞を有する直方体の箱状の形状を有しており、基準電位に接続される。基準電位は、グランド電位、アース電位または接地電位とも呼ばれる電位をいう。第1誘電体部1と、導体部2と、接合材部4と、第2誘電体部5と、は、シールド筐体6の空洞内に位置している。
【0014】
本実施形態の第1誘電体部1は、例えば、直方体形状を有し、第1面11と、第1面11と反対側の第2面12と、第1面11と第2面12との間に位置する側面13と、を有する。第1誘電体部1は、誘電体材料で構成されている。誘電体材料は、例えば、樹脂材料であってもよく、セラミック材料であってもよい。樹脂材料としては、例えば、エポキシ樹脂またはポリイミド樹脂などを用いることができる。セラミック材料としては、例えば、BaTiO3、Pb4Fe2Nb2O12、TiO2などを含有する強誘電性セラミック材料を用いることができる。第1誘電体部1は、上記の誘電体材料からなるブロック体であってもよく、上記の誘電体材料を層状に重ねた積層体であってもよい。また、誘電体材料が空気であってもよく、この場合、第1誘電体部1は、例えば、中空の箱体であり、内部に空気を含んでいる。
【0015】
第1誘電体部1が直方体形状である場合、例えば、縦および横の長さがそれぞれ5~20mm、高さが2~5mmである。第1誘電体部1をこのような寸法とすることで、高さ方向を小型化した上で帯域外特性の改善ができる。
【0016】
導体部2は、第1誘電体部1の第1面11から第2面12にわたって位置する柱状部材である。第1誘電体部1が、誘電体材料のブロック体または積層体である場合は、導体部2は、第1誘電体部1に埋設されており、第1面11から第2面12に貫通している。第1誘電体部1が、中空の箱体である場合は、導体部2は、箱体内に立設されている。導体部2は、第1誘電体部の第1面11および第2面12において、端面が露出している。導体部2は、柱状であればよく、円柱状であっても角柱状であってもよい。
【0017】
導体部2は、導電性材料で構成されている。導電性材料は、金属材料であってもよく、非金属導電性材料であってもよい。導電性材料としては、例えば、Ag、Ag-Pd、Ag-PtなどのAg合金を主成分とする材料、またはCu系、W系、Mo系、Pd系材料などを用いることができる。
【0018】
導体部2は、第1誘電体部1の第1面11側に露出する端面を覆う導体層3を有していてもよい。導体層3は、例えば、導体部2と同じ導電性材料で構成されている。導体層3は、導体部2の端面全体を覆う大きさであればよく、端面と同じ大きさであってもよく、端面より大きくてもよい。本実施形態では、導体部2は円柱状であり、導体層3は、導体部2と同心の円板状であり、導体層3の直径が導体部2の直径よりも大きい。
【0019】
導体部2が、円柱状である場合、例えば、その直径は、1~3mmであり、長さは、第1誘電体部1の高さ寸法と同じである。共振器Rの基本的な原理は同軸共振器であるため、外形と導体部2の寸法比でQ値の最大値が決定される。導体部2をこのような寸法とすることで、Q値の最適化が図れる。Q値(Quality Factor)は、誘電損失(tanδ)の逆数(1/tanδ)で表されるエネルギ蓄積能力を示す無次元のパラメータ指数であり、この値が高いほど誘電損失が少ないことを意味する。
【0020】
第2誘電体部5は、第1誘電体部1の第1面11から離間して位置しており、第1面11に対向する第3面51と、第3面51と反対側の第4面52と、を有する。第2誘電体部5は、第3面51と第4面52との距離である厚さが、第1誘電体部1の第1面11と第2面12との距離である厚さよりも小さい。第2誘電体部5は、例えば、板状であってもよい。
【0021】
第2誘電体部5は、誘電体材料で構成されている。誘電体材料は、例えば、第1誘電体部1と同様に、樹脂材料であってもよく、セラミック材料であってもよい。本実施形態では、第1誘電体部1が樹脂材料で構成されており、第2誘電体部5がセラミック材料で構成されている。
【0022】
第1誘電体部1と第2誘電体部5とは、第1面11と第3面51との間に間隙を有しており、導体部2の第1面11側の端面と、第2誘電体部5の第3面51とは接合材部4によって接合されている。接合材部4を構成する材料は、導体部2と第2誘電体部5とを接合可能な接合材であればよい。接合材としては、例えば、はんだまたは金属ろう材を用いることができる。なお、本実施形態のように、導体部2が導体層3を有している場合、導体層3と第2誘電体部5とを接合すればよい。接合材部4は、第1誘電体部1と第2誘電体部5との間隙の大きさに応じて、例えば、柱状であってもよく、板状であってもよい。
【0023】
図3は、第2誘電体部の第3面を上に向けた状態の斜視図である。第2誘電体部5の第3面51は、接合材部4が接合された接合領域5bを有している。接合領域5bは、接合材部4が接合された部分を含んでいればよく、接合材部4が接合された部分より大きくてもよい。第3面51は、この接合領域5bの周囲に位置する凹溝5aを有している。凹溝5aの平面形状および接合領域5bの平面形状は、特に限定されない。本実施形態では、導体部2の端面が円形状であって、接合領域5bも同じ円形状であるが、これに限らず、導体部2の端面形状と接合領域5bの形状とは、異なっていてもよい。本実施形態では、凹溝5aは、円形状の接合領域5bに沿って一定の溝幅で円環状に設けられているが、これに限らず、溝幅が異なっていてもよく、環状の一部が途切れていてもよい。なお、環状の一部が途切れている場合は、途切れている部分(凹溝5aが無い部分)が、接合領域5bの外周長の20%以下であればよく、10%以下とするのが好ましい。凹溝5aの断面形状も特に限定されない。本実施形態では、断面形状が矩形状であるが、これに限らず、半円状、U字状またはV字状などであってもよい。
【0024】
接合領域5bには、例えば、めっき層が設けられていてもよい。めっき材料としては、例えば、銀、銅などの金属材料を用いることができる。めっき層は、接合材との濡れ性を向上させ、接合材部4と第2誘電体部5との接合強度を高めることができる。
【0025】
シールド筐体6は、第2誘電体部5の第4面52を覆う第1部分6aと、第1部分6aに連なり、第1誘電体部1および第2誘電体部5を外囲する第2部分6bとを、有する。また、本実施形態では、シールド筐体6は、第2部分6bに連なり、第1誘電体部1の第2面12を覆う第3部分6cをさらに有する。上記のように、シールド筐体6は、直方体形状であるので、例えば、第1部分6aが上壁部分であり、第2部分6bが側壁部分であり、第3部分6cが底壁部分である。
【0026】
シールド筐体6は、導電性材料を含んで構成される。例えば、シールド筐体6全体が銀、銅、アルミニウムなどの金属材料で構成されていてもよい。導電性材料は、例えば、アルミニウム材料に銀めっきを施したものでも良い。例えば、樹脂材料またはセラミック材料などの非導電性材料と導電性材料を混合し、成形したものであってもよく、非導電性材料を成形し、表面に導電性材料層を設けたものであってもよい。
【0027】
第2誘電体部5の第4面52と第1部分6aとは、全面が隙間なく当接しており、例えば、接着剤などを用いて接合してもよい。第1誘電体部1および第2誘電体部5の各側面と第2部分6bとは、全面が隙間なく当接しており、例えば、接着剤などを用いて接合してもよい。第1誘電体部1の第2面12と第3部分6cとは、全面が隙間なく当接しており、例えば、接着剤などを用いて接合してもよい。
【0028】
本開示の共振器は、高次モードの共振周波数が、従来構造の共振器と比較して、より高い周波数にシフトし、基本モードの共振周波数から離れることで、帯域外特性が向上する。共振器の帯域外特性は、例えば、基本モード共振周波数fと高次モード共振周波数fhとの比fh/fで示すことができる。比fh/fが大きいほど、高次モード周波数が高い周波数であることを示す。
【0029】
本実施形態の共振器Rの変形例として、第2誘電体部5の誘電体材料に比誘電率が比較的低い材料を用いてもよい。第2誘電体部5の比誘電率を低くすることで、良好な帯域外特性を保持したまま、Q値を大きくすることができる。
【0030】
<第2実施形態>
図4は第2実施形態の共振器を模式的に示す断面図であり、
図5は
図4の切断面線V-Vから見た断面図である。本実施形態の共振器Rは、第1誘電体部1が、第1面11から第2面12に貫通する貫通孔1aを有している点で、第1実施形態と異なっているだけで、他の構成は共通している。本実施形態と第1実施形態とで共通する構成には同じ参照符号を付して、説明は省略する。
【0031】
本実施形態の第1誘電体部1は、誘電体材料からなるブロック体または積層体である。このような構成は、誘電体材料が空気である場合に比べて、機械的強度が高い反面、比誘電率が高くなる。第1誘電体部1に貫通孔1aを設けることで、貫通孔1a内を空気に置き換えることができ、第1誘電体部1の見かけの比誘電率を低くすることができる。第1誘電体部1の比誘電率を低くすることで、良好な帯域外特性を保持したまま、Q値をさらに大きくすることができる。
【0032】
貫通孔1aは、第1誘電体部1に1または複数設けられる。貫通孔1aの形状および大きさは、特に限定されず、全貫通孔1aの体積の総和が、第1誘電体部1全体の5~40%であればよい。貫通孔1aをこのように設けることで、帯域外特性がさらに向上する。
【0033】
貫通孔1aを複数設ける場合、全ての貫通孔1aが同一であってもよく、形状または大きさなどが異なっていてもよい。貫通孔1aを設ける位置は、特に限定されず、複数の貫通孔1aを一様に設ければよい。例えば、貫通孔1aを千鳥格子状に配列することでさらなる帯域外特性の向上が図れる。
【0034】
<第3実施形態>
図6は第3実施形態の共振器を模式的に示す断面図であり、
図7は
図6の切断面線VII-VIIから見た断面図である。本実施形態の共振器は、入出力端子まで含めた構成である。なお、前述の共振器の実施形態と同じ構成には、同じ参照符号を付して説明を省略する。本実施形態の共振器Rは、信号の入出力のための端子部7を備える。本実施形態の共振器Rは、2つの端子部7に加えて、2つの端子部7を接続するとともに、導体部2と容量結合する結合配線8と、端子部7に接続されたパッド部9と、をさらに備える。
【0035】
2つの端子部7は、一方が入力用であり、もう一方が出力用である。本実施形態の端子部7は、第1誘電体部1の第1面11から第2面12に貫通する貫通導体である。結合配線8は、第1誘電体部1の第1面11に設けられている。結合配線8は、第1面11に露出した端子部7と接続して導体部2に向かってそれぞれ延びる直線部分と、導体部2と結合するためのギャップを空けて設けられ、2つの直線部分を繋ぐ結合部分と、を有する。本実施形態の共振器Rは、導体部2が、第1面11に円形状の導体層3を有しており、結合部分は、導体層3の外周に沿った円弧状に設けられる。パッド部9は、第2面12に露出した端子部7と接続される。
【0036】
本実施形態の共振器Rは、例えば、ノッチ回路として機能する。一方のパッド部9を介して入力された信号は、一方の端子部7を流れ、結合配線8で導体部2と容量結合し、他方の端子部7を流れて他方のパッド部9から出力される。この出力信号は、入力信号の特定の周波数帯域のみが遮断され、他の周波数帯域が通過される周波数特性を示す。
【0037】
・フィルタ
<第4実施形態>
図8は第4実施形態のフィルタを模式的に示す断面図である。なお、前述の共振器の実施形態と同じ構成には、同じ参照符号を付して、説明は省略する。本実施形態では、2つの端子部7が、第1誘電体部1を貫通せず、一端が第1誘電体部1内にあり、他端が第2面12に露出してパッド部9と接続している。本実施形態のフィルタFは、各端子部7の一端から第1誘電体部1内を延びて導体部2にそれぞれ誘導結合する結合配線10を備える。
【0038】
本実施形態のフィルタFは、例えば、バンドパスフィルタとして機能する。一方のパッド部9を介して入力された信号は、一方の端子部7を流れ、結合配線10で共振器Rと誘導結合し、他方の端子部7を流れて他方のパッド部9から出力される。この出力信号は、入力信号の特定の周波数帯域のみが通過し、他の周波数帯域が遮断された周波数特性を示す。
【0039】
<第5実施形態>
図9は第5実施形態のフィルタを模式的に示す断面図である。
図10は
図9の切断面線X-Xから見た断面図である。なお、前述のフィルタの実施形態と同じ構成には、同じ参照符号を付して説明を省略する。本実施形態のフィルタFは、2つの共振器Rと、一方の共振器Rおよび他方の共振器Rに、電気的または電磁気的にそれぞれ接続される端子部7と、を備える。結合配線8は、2つの共振器R用にそれぞれ備えられる。
【0040】
1つの端子部7は、一方の結合配線8を介して一方の共振器Rと容量結合し、もう1つの端子部7は、他方の結合配線8を介して他方の共振器Rと容量結合する。本実施形態のフィルタFは、例えば、バンドパスフィルタとして機能する。一方のパッド部9を介して入力された信号は、一方の端子部7を流れ、一方の結合配線8で一方の共振器Rと容量結合する。2つの共振器Rは、シールド筐体6内で、電磁気的に結合している。他方の共振器Rは、他方の結合配線8と容量結合し、信号は、他方の端子部7を流れて他方のパッド部9から出力される。この出力信号は、入力信号の特定の周波数帯域のみが通過し、他の周波数帯域が遮断された周波数特性を示す。
【0041】
本実施形態のフィルタFは、2つの導体部2の間に遮蔽部分6dを有している。遮蔽部分6dは、互いに平行な2つの第2部分6bから内方に向かって延びる壁状部分である。2つの遮蔽部分6dの間の開口は導波領域であり、この開口を介して2つの共振器Rが電磁気的に結合する。
【0042】
<第6実施形態>
図11は第6実施形態のフィルタを模式的に示す断面図である。
図12は
図11の切断面線XII-XIIから見た断面図である。なお、前述のフィルタの実施形態と同じ構成には、同じ参照符号を付して説明を省略する。本実施形態のフィルタFは、端子部7、結合配線8およびパッド部9が設けられる位置が第5実施形態と異なっている。本実施形態の端子部7は、第2誘電体部5の第3面51から第4面52に貫通する貫通導体である。結合配線8は、第2誘電体部5の第3面51に設けられている。結合配線8は、第3面51に露出した端子部7と接続される。接続パッド部9は、第4面52に露出した端子部7と接続される。第2誘電体部5は、シールド筐体6の第2部分6b上に位置してよい。この場合、第2誘電体5の第3面51の周縁において、第2部分6bと接合する接合層15を設けてもよい。接合層15は、結合配線8と同様に設けることができる。
【0043】
第6実施形態では、結合配線8が、凹溝5aと同じ第2誘電体部5の第3面51に設けられているので、
図12に示すように、凹溝5aは、結合配線8の円弧状の結合部分を取り囲む円環状であり、円環の一部が途切れている。この途切れ部分に結合配線8の直線部分が位置している。本実施形態のフィルタFは、第5実施形態と同様に、例えば、バンドパスフィルタとして機能する。
【0044】
本実施形態のフィルタFは、2つの共振器Rを備える構成であるが、これに限らず、3つ以上の共振器Rを備えていてもよい。複数の共振器Rが、1列に並んでいてもよく、2列以上に並んでいてもよい。電磁気的に結合させる共振器R間には、遮蔽部分6dを設け、導波領域となる開口を形成すればよい。また、結合させない共振器R間には、一方の第2部分6bから他方の第2部分6bまで内壁部を設け、導波領域となる開口を形成しないように構成すればよい。このように複数の共振器Rを組み合わせることにより、所望の特性を有するフィルタFを実現できる。
【0045】
上記のようなフィルタFは、携帯電話装置に代表されるマイクロ波通信機器のフィルタとして使用され、送受信される信号の必要な周波数帯域のみを通過させ、不要な周波数帯域を遮断することができる。またその他の通信端末装置では、主にデュプレクサなどのアンテナ共用器としても使用される。本実施形態のフィルタは,圧電素子を応用したフィルタとは異なり機械的な振動は全くなく、電磁波自体がシールド筐体6内で共振する。
【0046】
<第7実施形態>
図13は第7実施形態の共振器を模式的に示す断面図である。本実施形態の共振器Rは、シールド筐体6と、誘電体部16と、導体部2と、接合材部4と、を備える。本実施形態と前述の各実施形態とで同様の構成には、同じ参照符号を付して、説明は省略する。シールド筐体6は、内部に共振空間としての空洞を有する直方体の箱状の形状を有しており、一面が開放されている。誘電体部16は、シールド筐体6の開放面を覆うように位置しており、前述の各実施形態における第2誘電体部5に相当する構成である。誘電体部16は、第2誘電体部5と同様の誘電体材料で構成されている。導体部2は、誘電体部16の内面からシールド筐体6の底面にわたって位置する柱状部材である。導体部2と誘電体部16の内面とは接合部4によって接合されている。
【0047】
誘電体部16の内面は、接合材部4が接合された接合領域16bと、接合領域16bの周囲に位置する凹溝16aと、を有している。凹溝16aおよび接合領域16bは、それぞれ第2誘電体部5の凹溝5aおよび接合領域5bに相当する。誘電体部5の内面の周縁において、シールド筐体6と接合する接合層15を設けてもよい。
【0048】
本実施形態の共振器Rも高次モードの共振周波数が、従来構造の共振器と比較して、より高い周波数にシフトし、基本モードの共振周波数から離れることで、帯域外特性が向上する。
【0049】
本実施形態の共振器Rは、誘電体部16の外面を導電体層で被覆してもよい。導電体層は、例えば、めっき層などであってもよく、金属箔または金属板などを貼り付けたものであってもよい。また、導体部2は、シールド筐体6と一体化されていてもよい。例えば、ブロック状の金属体から切削加工によって、導体部2付きシールド筐体6を削り出して作製してもよい。
【0050】
・通信装置
<第8実施形態>
図14はフィルタを備える通信装置を示すブロック図である。本実施形態の通信装置は、アンテナ20と、通信回路21と、アンテナ20および通信回路21に接続されたフィルタFとを有している。フィルタFは、前述の実施形態のフィルタFのいずれかであってよい。アンテナ20および通信回路21は、既知の従来のものを用いることができる。
【0051】
このような構成を有する本実施形態の通信装置は、電気特性が優れた前述のフィルタFを用いて不要な電気信号を除去することから、優れた通信品質を実現する。
【0052】
(評価1)
評価1では、第2誘電体部における凹溝の有無について評価した。実施例1の共振器および比較例の共振器について、シミュレーションによって、電気特性を評価した。実施例1は、第1実施形態の構造に基づき、各寸法および材料物性値などのシミュレーション条件を次のとおりとした。シールド筐体内の寸法を、10mm×8.5mm×4.32mmとし、境界面は全て導体とした。第1誘電体部は、厚さを3.5mmとし、樹脂材料を想定して比誘電率εr=3.4、tanδ=0.001とした。第2誘電体部は、厚さを0.5mmとし、セラミック材料を想定して比誘電率εr=40、tanδ=6.3×10-5とした。第1誘電体部と第2誘電体部との間隔を0.3mmとした。導体部は、直径が2mmの円柱状とし、導体層は、直径が3mm、厚さ0.1mmの円板状とした。接合材部は、接合材としてはんだを想定し、直径が1.3mmの円板状とした。第2誘電体部の第3面において、接合領域を、直径が1.3mmの円形状とした。なお、接合領域には、はんだ接合のために厚さ0.1mmの金属層を設けた。凹溝は、溝幅が2.7mm、深さが0.25mmの円環状とした。
【0053】
比較例は、第2誘電体部に凹溝を設けず、第2誘電体部の第3面を平坦面としたこと以外は実施例1と同じとした。
【0054】
実施例1および比較例のモデルを作成し、ANSYS社製シミュレーションソフトウェアHFSSを用いて、固有値解析の条件で帯域外特性およびQ値を評価した。帯域外特性は、基本モード共振周波数fと高次モード共振周波数fhとの比fh/fを算出した。比fh/fが大きいほど、高次モード周波数が高い周波数であることを示す。
図15に実施例1および比較例のフィルタ特性を示す。
【0055】
実施例1のfh/fは5.35であり、Q値は950であった。第2誘電体部に凹溝を設けない比較例のfh/fは4.97であり、Q値は935であった。これらの結果から実施例1は比較例よりも帯域外特性およびQ値に優れることがわかった。
【0056】
(評価2)
評価2では、第2誘電体部の比誘電率の違いについて評価した。実施例2は、第1実施形態の構造に基づき、各寸法および材料物性値などのシミュレーション条件を次のとおりとした。シールド筐体内の寸法を、10mm×8.5mm×4.32mmとし、境界面は全て導体とした。第1誘電体部は、厚さを3.5mmとし、樹脂材料を想定して比誘電率εr=3.4、tanδ=0.001とした。第2誘電体部は、厚さを0.5mmとし、セラミック材料を想定して比誘電率εr=20、tanδ=6.3×10-5とした。第1誘電体部と第2誘電体部との間隔を0.3mmとした。導体部は、直径が2mmの円柱状とし、導体層は、直径が2.5mm、厚さ0.1mmの円板状とした。接合材部は、接合材としてはんだを想定し、直径が2.0mmの円板状とした。第2誘電体部の第3面において、接合領域を、直径が2.0mmの円形状とした。なお、接合領域には、はんだ接合のために厚さ0.1mmの金属層を設けた。凹溝は、溝幅が1.3mm、深さが0.25mmの円環状とした。
【0057】
実施例1のfh/fは5.35であり、Q値は950であった。第2誘電体部の比誘電率を実施例1より低くした実施例2のfh/fは5.36であり、Q値は1013であった。実施例2は、fh/fを保持したまま、Q値が向上した。
【0058】
(評価3)
評価3では、第1誘電体部における貫通孔の有無について評価した。実施例3は、第1実施形態の構造に基づき、各寸法および材料物性値などのシミュレーション条件を次のとおりとした。実施例3は、第1実施形態の構造に基づき、各寸法および材料物性値などのシミュレーション条件を次のとおりとした。シールド筐体内の寸法を、10mm×8.5mm×4.32mmとし、境界面は全て導体とした。第1誘電体部は、厚さを3.5mmとし、樹脂材料を想定して比誘電率εr=3.4、tanδ=0.001とした。第2誘電体部は、厚さを0.5mmとし、セラミック材料を想定して比誘電率εr=40、tanδ=6.3×10-5とした。第1誘電体部と第2誘電体部との間隔を0.3mmとした。導体部は、直径が2mmの円柱状とし、導体層は、直径が2.5mm、厚さ0.1mmの円板状とした。接合材部は、接合材としてはんだを想定し、直径が1.7mmの円板状とした。第2誘電体部の第3面において、接合領域を、直径が1.4mmの円形状とした。なお、接合領域には、はんだ接合のために厚さ0.1mmの金属層を設けた。凹溝は、溝幅が1.3mm、深さが0.25mmの円環状とした。
【0059】
実施例4は、第2実施形態の構造に基づき、第1誘電体部に貫通孔を設けたこと以外は、実施例3と同じとした。実施例4において、貫通孔を直径0.5mmの空気孔とし、全貫通孔の体積の総和が、第1誘電体部全体の8%となるように設けた。
【0060】
第1誘電体部に貫通孔を設けていない実施例3のfh/fは5.23であり、Q値は946であった。第1誘電体部に貫通孔を設けた実施例4のfh/fは5.20であり、Q値は992であった。実施例4は、fh/fを保持したまま、Q値が向上した。
【符号の説明】
【0061】
1 第1誘電体部
1a 貫通孔
2 導体部
3 導体層
4 接合材部
5 第2誘電体部
5a 凹溝
5b 接合領域
6 シールド筐体
6a 第1部分
6b 第2部分
6c 第3部分
6d 遮蔽部分
7 端子部
8 結合配線
9 パッド部
10 結合配線
11 第1面
12 第2面
13 側面
16 誘電体部
16a 凹溝
16b 接合領域
20 アンテナ
21 通信回路
51 第3面
52 第4面
F フィルタ
R 共振器