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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147825
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/42 20060101AFI20220929BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20220929BHJP
【FI】
B60N2/42
B60N2/90
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021049249
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】石塚 喬
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087CD03
3B087DE08
3B087DE09
(57)【要約】
【課題】衝撃吸収部材がセンサ部材の導通部の配策に影響を与えることが抑制された乗物用シートの提供。
【解決手段】シートクッションS1を備えた車両用シートSであって、シートクッションは、センサ部材30と、シートクッションパッドS11と、シートクッションパッドの下方に設けられた衝撃吸収部材20と、を有し、センサ部材は、着座者の状態を検出する検出部31と、検出部により検出された信号を出力する外部出力部32と、検出部と外部出力部との間を導通する導通部33と、を備え、シートクッションパッドS11には、表面S11a側から裏面S11b側に貫通形成された貫通孔S11dが形成されており、この貫通孔S11dに、導通部33が挿通されており、前後方向又はシート幅方向において、衝撃吸収部材20は貫通孔11dと異なる位置に配置されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションを備えた乗物用シートであって、
前記シートクッションは、センサ部材と、シートクッションパッドと、前記シートクッションパッドの下方に設けられた衝撃吸収部材と、を有し、
前記センサ部材は、
着座者の状態を検出する検出部と、
前記検出部により検出された信号を出力する外部出力部と、
前記検出部と前記外部出力部との間を導通する導通部と、を備え、
前記シートクッションパッドには、着座面側から裏面側に貫通形成された貫通孔が形成されており、
前記シートクッションパッドの前記貫通孔に、前記導通部が挿通されており、
前記乗物用シートの前後方向又は幅方向において、前記衝撃吸収部材は前記貫通孔と異なる位置に配置されていることを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記衝撃吸収部材は、前記貫通孔より前方に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記衝撃吸収部材は、前記乗物用シートの幅方向において、前記貫通孔と異なる位置に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記導通部は、前記貫通孔の内部で下方に延在し、前記シートクッションパッドの裏面において、前記衝撃吸収部材とは反対の方向に延在していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記衝撃吸収部材は、前記乗物用シートの前後方向において、前記検出部とは異なる位置に配置されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記シートクッションパッドの裏面には、前記導通部を受容する溝部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記貫通孔は、前記検出部よりも後方に配置されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項8】
前記シートクッションは、前記シートクッションパッド及び前記検出部を覆う表皮材を有していることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項9】
前記シートクッションパッドの前記着座面側には、前記表皮材を吊り込むための第1吊りこみ溝及び第2吊りこみ溝が前記乗物用シートの幅方向に延在して形成されており、
前記第1吊りこみ溝は、前記第2吊りこみ溝よりも前方に形成されており、前記第1吊りこみ溝よりも前に前記衝撃吸収部材が配置されていることを特徴とする請求項8に記載の乗物用シート。
【請求項10】
前記衝撃吸収部材、前記導通部及び前記シートクッションパッドは、下方から支持部材によって支持されていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートに係り、特に衝突などの衝撃発生時に着座者に加わる衝撃を吸収することが可能な乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、着座センサを備えた車両用シートに関して、パッド部材を貫通する抜き穴に着座センサの導通部(ハーネス)を通して配策して、パッド部材の裏面にコネクタ部(カプラ)を配置する技術が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、車両の座席に関して、ハニカム構造体からなるインサート材である衝撃吸収部材を、シートクッションパッドの下方に備える技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-95373号公報
【特許文献2】実開昭58-161600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両用シートがセンサ部材と、衝撃吸収部材の両方を備える場合、センサ部材の導通部の配策に衝撃吸収部材が影響を与える可能性がある。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、衝撃吸収部材がセンサ部材の導通部の配策に影響を与えることが抑制された乗物用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明の乗物用シートによれば、シートクッションを備えた乗物用シートであって、前記シートクッションは、センサ部材と、シートクッションパッドと、前記シートクッションパッドの下方に設けられた衝撃吸収部材と、を有し、前記センサ部材は、着座者の状態を検出する検出部と、前記検出部により検出された信号を出力する外部出力部と、前記検出部と前記外部出力部との間を導通する導通部と、を備え、前記シートクッションパッドには、着座面側から裏面側に貫通形成された貫通孔が形成されており、前記シートクッションパッドの前記貫通孔に、前記導通部が挿通されており、前記乗物用シートの前後方向又は幅方向において、前記衝撃吸収部材は前記貫通孔と異なる位置に配置されていることにより解決される。
【0008】
上記のように構成された本発明の乗物用シートでは、衝撃吸収部材が、乗物用シートの前後方向又は左右方向において、貫通孔とずれた位置に配置されているため、衝撃吸収部材が導通部の配策に影響を与えることが抑制される。
【0009】
また、上記の構成において、前記衝撃吸収部材は、前記貫通孔より前方に配置されているとよい。
上記の構成では、衝撃吸収部材が、乗物用シートの前後方向において、貫通孔より前方の位置に配置されているため、衝撃吸収部材が導通部の配策に影響を与えることが適切に抑制される。
【0010】
また、上記の構成において、前記衝撃吸収部材は、前記乗物用シートの幅方向において、前記貫通孔と異なる位置に配置されているとよい。
上記の構成では、衝撃吸収部材が、乗物用シートの幅方向において、貫通孔とずれた位置に配置されているため、衝撃吸収部材が導通部の配策に影響を与えることが適切に抑制される。
【0011】
また、上記の構成において、前記導通部は、前記貫通孔の内部で下方に延在し、前記シートクッションパッドの裏面において、前記衝撃吸収部材とは反対の方向に延在しているとよい。
上記の構成では、センサ部材の導通部がシートクッションパッドの裏面へと向かい、衝撃吸収部材とは反対の方向に延在しているため、導通部を適切に配策することが可能となる。
【0012】
また、上記の構成において、前記衝撃吸収部材は、前記乗物用シートの前後方向において、前記検出部とは異なる位置に配置されているとよい。
上記の構成では、衝撃吸収部材が、乗物用シートの前後方向において、センサ部材の検出部とずれた位置に配置されているため、衝撃吸収部材が検出部における着座者の状態検出に影響を与えることが抑制される。
【0013】
また、上記の構成において、前記シートクッションパッドの裏面には、前記導通部を受容する溝部が形成されているとよい。
上記の構成では、シートクッションパッドの裏面の溝部によって、導通部を適切に案内することが可能となる。
【0014】
また、上記の構成において、前記貫通孔は、前記検出部よりも後方に配置されているとよい。
上記の構成では、貫通孔が、乗物用シートの前後方向において、センサ部材の検出部よりも後方に配置されているため、貫通孔が検出部における着座者の状態検出に影響を与えることが抑制される。
【0015】
また、上記の構成において、前記シートクッションは、前記シートクッションパッド及び前記検出部を覆う表皮材を有しているとよい。
上記の構成では、衝撃吸収部材が導通部の配策に影響を与えることが抑制されたシートクッションを提供することが可能となる。
【0016】
また、上記の構成において、前記シートクッションパッドの前記着座面側には、前記表皮材を吊り込むための第1吊りこみ溝及び第2吊りこみ溝が前記乗物用シートの幅方向に延在して形成されており、前記第1吊りこみ溝は、前記第2吊りこみ溝よりも前方に形成されており、前記第1吊りこみ溝よりも前に前記衝撃吸収部材が配置されているとよい。
上記の構成では、衝撃吸収部材が、乗物用シートの前後方向において、前方の第1吊りこみ溝よりも前方の位置に配置されているため、吊りこみ溝が衝撃吸収部材による衝撃吸収に影響を与えることが抑制される。
【0017】
また、上記の構成において、前記衝撃吸収部材、前記導通部及び前記シートクッションパッドは、下方から支持部材によって支持されているとよい。
上記の構成では、衝撃吸収部材、導通部及びシートクッションパッドが下方から支持部材によって支持されていることで、衝撃吸収部材による衝撃吸収が安定するとともに、シートクッションパッドにおける導通部の配策が安定する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の乗物用シートによれば、衝撃吸収部材が、乗物用シートの前後方向又は左右方向において、貫通孔とずれた位置に配置されているため、衝撃吸収部材が導通部の配策に影響を与えることが抑制される。
また、本発明の乗物用シートによれば、衝撃吸収部材が、乗物用シートの前後方向において、貫通孔より前方の位置に配置されているため、衝撃吸収部材が導通部の配策に影響を与えることが適切に抑制される。
また、本発明の乗物用シートによれば、衝撃吸収部材が、乗物用シートの幅方向において、貫通孔とずれた位置に配置されているため、衝撃吸収部材が導通部の配策に影響を与えることが適切に抑制される。
また、本発明の乗物用シートによれば、センサ部材の導通部がシートクッションパッドの裏面へと向かい、衝撃吸収部材とは反対の方向に延在しているため、導通部を適切に配策することが可能となる。
また、本発明の乗物用シートによれば、衝撃吸収部材が、乗物用シートの前後方向において、センサ部材の検出部とずれた位置に配置されているため、衝撃吸収部材が検出部における着座者の状態検出に影響を与えることが抑制される。
また、本発明の乗物用シートによれば、シートクッションパッドの裏面の溝部によって、導通部を適切に案内することが可能となる。
また、本発明の乗物用シートによれば、貫通孔が、乗物用シートの前後方向において、センサ部材の検出部よりも後方に配置されているため、貫通孔が検出部における着座者の状態検出に影響を与えることが抑制される。
また、本発明の乗物用シートによれば、衝撃吸収部材が導通部の配策に影響を与えることが抑制されたシートクッションを提供することが可能となる。
また、本発明の乗物用シートによれば、衝撃吸収部材が、乗物用シートの前後方向において、前方の第1吊りこみ部よりも前方の位置に配置されているため、吊りこみ部が衝撃吸収部材による衝撃吸収に影響を与えることが抑制される。
また、本発明の乗物用シートによれば、衝撃吸収部材、導通部及びシートクッションパッドが下方から支持部材によって支持されていることで、衝撃吸収部材による衝撃吸収が安定するとともに、シートクッションパッドにおける導通部の配策が安定する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る車両用シートの外観図である。
図2】車両用シートが備える衝撃吸収部材及びセンサ部材の位置を示す模式的な外観図である。
図3図1のA-A断面図であって、本発明の実施形態に係る車両用シートが備える衝撃吸収部材及びセンサ部材の周囲の構造を示す説明図である。
図4】シートクッションパッドの上面図である。
図5】シートクッションパッドの下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図1乃至図5を参照しながら、本発明の実施形態(以下、本実施形態)に係る乗物用シートについて説明する。本実施形態に係る乗物用シートとして、車両に搭載される車両用のリアシートを例に挙げて説明することとするが、自動車・鉄道など車輪を有する地上走行用乗物に搭載される車両用のリアシートに限定されるものではなく、車両用のフロントシートや3列シートの2列目のシート、地上以外を移動する航空機や船舶などに搭載されるシートであってもよい。
【0021】
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、以下に説明する部材の形状、寸法、配置等については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0022】
本明細書における方向を示す用語に関し、図1のように各方向を定義する。具体的には、以下の説明中、「前後方向」とは、車両用シートの着座者から見たときの前後方向を意味し、車両の走行方向と一致する方向である。「シート幅方向」とは、車両用シートの横幅方向を意味し、車両用シートの着座者から見たときの左右方向と一致する。また、「上下方向」とは、車両用シートの高さ方向を意味し、車両用シートを正面から見たときの上下方向と一致している。
【0023】
[1.車両用シートSの構成]
本実施形態に係る車両用シートSは、図1に図示した外観を有している。なお、図1中、車両用シートSの一部(具体的には、シートクッションS1の前端角部)については、図示の都合上、トリムカバーS12を外した構成にて図示している。
【0024】
車両用シートSは、着座者の臀部を支える着座部分となるシートクッションS1、着座者の背部を支える背もたれ部分となるシートバックS2、及び、シートバックS2の上部に配され、着座者の頭部を支えるヘッドレストS3を主な構成要素として有する。
【0025】
シートクッションS1は、シートクッションパッドS11をトリムカバーS12で覆うことで構成されている。シートバックS2は不図示のシートバックフレームに不図示のクッションパッドを載置して、トリムカバーS12で覆うことで構成されている。ヘッドレストS3は、不図示の芯材に不図示のパッド材を配して、トリムカバーS12で被覆して形成されている。
【0026】
シートクッションS1のシートクッションパッドS11やシートバックS2のシートバックパッドはウレタン発泡材を用いて、発泡成型により成型されたウレタン基材である。
【0027】
シートクッションS1のトリムカバーS12には、シートクッション前側に設けられシート幅方向に延在する第1吊りこみ部T1(前側吊りこみ部)、シートクッション後側に設けられシート幅方向に延在する第2吊りこみ部T2(後側吊りこみ部)、シートクッション右側に設けられ前後方向に延在する第3吊りこみ部T3(右側吊りこみ部)、シートクッション左側に設けられ前後方向に延在する第4吊りこみ部T4(左側吊りこみ部)がそれぞれ設けられている。
【0028】
また、図4に示されるように、シートクッションパッドS11の各吊りこみ部T1~T4に対応する位置には、第1吊りこみ溝t1、第2吊りこみ溝t2、第3吊りこみ溝t3、第4吊りこみ溝t4が形成されることで、厚みが周囲よりも薄く形成された薄肉部がそれぞれ設けられている。
【0029】
[2.本実施形態のシートクッションS1]
図2乃至図5を参照しながら、本実施形態に係る車両用シートSのシートクッションS1の構成について説明する。なお、図3では、トリムカバーS12の図示を省略している。図3図1のA-A断面図を示すように、シートクッションパッドS11の下方に衝撃吸収部材20が設けられている。
【0030】
(衝撃吸収部材20)
衝撃吸収部材20は、図3及び図4に示されるように、上下方向の上面21及び下面22と、前後方向の前面23a及び後面23bと、シート幅方向の右側面24a及び左側面24bとによって囲まれた中空形状を有している。また、衝撃吸収部材20の上面21には、後方に向かうにつれて下方へと傾斜した傾斜面21aが形成されている。衝撃吸収部材20の前面23aは、上下方向における中間領域から上方の領域が後方に向かって傾斜している。
【0031】
衝撃吸収部材20は、シート幅方向において、互いに離間して設けられた一対の吊りこみ部、つまり、第三吊りこみ部T3及び第四吊りこみ部T4よりも内側に配置されている(図2)。より詳細には、衝撃吸収部材20は、シートクッションパッドS11の下方かつ、シート幅方向において、第三吊りこみ部T3及び第四吊りこみ部T4の間の略中央の位置に配置されている。
【0032】
衝撃吸収部材20は、中空形状のブロー成形品であり、ウレタンパッドであるシートクッションパッドS11よりも硬度が高く、一定の荷重値を超えると潰れて衝撃吸収を行うように形成されている。
【0033】
衝撃吸収部材20の下面22は下方から支持部材である板状部材10によって面で支持されている。板状部材10は、車両用のリアシートを下方から支持するフロアを構成する板状の部材であり、平坦部11の上に衝撃吸収部材20が載置されている。また、板状部材10の前端には、平坦部11に対して上方に突出した突出部12(前方位置規制部)が形成されている。
【0034】
板状部材は、シートクッションフレームの一部でも良く、材質も金属に限定されることなく樹脂からなる部材でも良い。また、支持部材は衝撃吸収部材20を支持できれば、板状部材でなくても、例えばSバネやワイヤーのような線状部材でも良く、布状支持部材のような面状弾性体でも良い。このような構造とすることで、簡易構造で衝撃吸収部材20を支持することが可能となる。
【0035】
衝撃吸収部材20の前面23aは、突出部12に当接している。衝撃吸収部材20の前面23aが突出部12に前方から面で支持されるため、衝撃吸収効果が安定して発揮される。
【0036】
図3に示されるように、シートクッションパッドS11は、その裏面S11bに上方に向かって(表面S11aに向かって)窪んだパッド凹部S11cが形成されている。衝撃吸収部材20は、上面21の少なくとも一部が、シートクッションパッドS11のパッド凹部S11cに収納されているため、シートクッションパッドS11に対する衝撃吸収部材20の位置が安定したものとなる。
【0037】
上方に突出する突出部12(前方位置規制部)は、シート幅方向に延在しており、車両が前突した際に、車両用シートSに着座した着座者の体が前下方に滑り落ちるサブマリン現象を抑制するための沈み込み抑制部材として機能する。衝撃吸収部材20は、シート幅方向に延在する突出部12よりも後方に配置されているため、衝撃吸収時の荷重が衝撃吸収部材20に伝達される際に、突出部12の影響が抑制される。なお、沈み込み抑制部材は、シート前端付近においてシート幅方向に延在するパイプ部材(例えば、サブマリンパイプ)であってもよい。
【0038】
また、衝撃吸収部材20の上面21とシートクッションパッドS11の裏面S11bとの間には、シートフレーム部材などの金属製部材が配置されていない。衝撃吸収部材20の上方においてシートクッションパッドS11との間に金属製部材が配置されていないため、乗員からの荷重が衝撃吸収部材20に安定的に伝達される。
【0039】
(センサ部材30)
センサ部材30は、着座者(乗員)の状態を検出する検出部31と、検出部31により検出された信号を出力するコネクタ(カプラ)である外部出力部32と、検出部31と外部出力部32との間を導通する配線部材としての導通部33(ハーネス)と、を備えている(図3)。
【0040】
センサ部材30は、着座者(乗員)の状態を検出できるものであれば、その種類は特に限定されるものではなく、メンブレンスイッチなどの感圧センサ、インピーダンス変動を計測する電極式センサ、圧電素子を備える圧力センサ、空気圧を測定するエアチューブ式センサ、静電容量の変化を測定する静電容量センサ、ヘモグロビン濃度による吸光率変動を利用した光学式センサ、電波式センサなどが例示される。
【0041】
また、センサ部材30で検出する、着座者(乗員)の状態としては、特に限定されるものではなく、着座者の着座の有無、着座状態、心拍の状態、呼吸の状態、血流やヘモグロビン濃度などの生体情報の値などが例示される。つまり、センサ部材30は、検出する着座者の状態に応じて、適宜選択される。
【0042】
センサ部材30が着座センサ(例えば、シートベルトリマインダ)である場合には、検出部31として、メンブレンスイッチを利用することが可能である。センサ部材30としては、感圧点を複数配置し、その出力分布より乗員が着座しているか否かを検出する感圧フィルムセンサなど従来公知の様々なセンサが使用可能である。
【0043】
検出部31と外部出力部32との間は、導通部33によって電気的に接続されている。外部出力部32は、検出部31で検出された信号を出力するものであり、出力電極が形成されている。この外部出力部32はコネクタを備えており、コネクタは着座者の状態を測定する不図示の電気的回路を備えるECU(Electronic Control Unit)に連結されている。
【0044】
図3に示されるように、シートクッションパッドS11の表面S11a側(着座面側)に、検出部31が配置されている。検出部31から後方に向かって延在する導通部33は、シートクッションパッドS11に形成された貫通孔である貫通孔S11dに挿通されて第1屈曲部33aにて下方へと屈曲している。貫通孔S11dに挿通されてシートクッションパッドS11の裏面S11bへと達した導通部33は、第2屈曲部33bにて後方に向かって屈曲して延びている。
【0045】
[3.シートクッションS1の特徴]
図4及び図5は、シートクッションパッドS11の上面図(表面図)及び下面図(裏面図)である。以下、主に図4及び図5を参照して、本実施形態の車両用シートSが備えるシートクッションS1の特徴を説明する。なお、車両用シートSは、3つの着座部を備えているが、以下の説明では、そのうちの1つに着目をして説明を行うことにする。
【0046】
シートクッションS1は、センサ部材30と、シートクッションパッドS11と、シートクッションパッドS11の下方に設けられた衝撃吸収部材20と、を有している。
【0047】
また、センサ部材30は、着座者の状態を検出する検出部31と、検出部31により検出された信号を出力する外部出力部32と、検出部31と外部出力部32との間を導通する導通部33と、を備えている。
【0048】
シートクッションパッドS11には、表面S11a(着座面)側から裏面S11b側に貫通形成された貫通孔S11dが形成されている。シートクッションパッドS11の貫通孔S11dには、センサ部材30の導通部33が挿通されており、前後方向及びシート幅方向において、衝撃吸収部材20は貫通孔S11dと異なる位置に配置されている。
【0049】
具体的には、前後方向において、衝撃吸収部材20は貫通孔S11dを避けた位置、より詳細には、衝撃吸収部材20の後面23b(後端)が、貫通孔S11dよりも前方に配置されている。また、シート幅方向において、衝撃吸収部材20は貫通孔S11dを避けた位置、より詳細には、衝撃吸収部材20の右側面24a及び左側面24bが、貫通孔S11dよりも側方(シート幅方向における外側)に配置されている。
【0050】
このような構成によれば、衝撃吸収部材20が、前後方向又はシート幅方向(左右方向)において、貫通孔S11dとずれた位置に配置されているため、衝撃吸収部材20が導通部33の配策に影響を与えることが抑制される。
【0051】
また、衝撃吸収部材20は、貫通孔S11dより前方に配置されている。このような構成によれば、衝撃吸収部材20が、前後方向において、貫通孔S11dより前方の位置に配置されているため、衝撃吸収部材20が導通部33の配策に影響を与えることが適切に抑制される。
【0052】
また、衝撃吸収部材20は、シート幅方向において、貫通孔S11dと異なる位置に配置されている。具体的には、衝撃吸収部材20が、貫通孔S11dよりも側方(シート幅方向における外側)に配置されているとよい。このような構成によれば、衝撃吸収部材20が、シート幅方向において、貫通孔S11dとずれた位置に配置されているため、衝撃吸収部材20が導通部33の配策に影響を与えることが適切に抑制される。
【0053】
また、導通部33は、貫通孔S11dの内部で下方に延在し、シートクッションパッドS11の裏面S11bにおいて、衝撃吸収部材20とは反対の方向(つまり、後方)に延在している(図3)。このような構成によれば、センサ部材30の導通部33がシートクッションパッドS11の裏面S11bへと向かい、衝撃吸収部材20とは反対の方向(つまり後方)に延在しているため、導通部33を適切に配策することが可能となる。
【0054】
また、衝撃吸収部材20は、前後方向において、検出部31とは異なる位置に配置されている。より詳細には、衝撃吸収部材20の後面23b(後端)が、検出部31よりも前方に配置されている。このような構成によれば、衝撃吸収部材20が、前後方向において、センサ部材30の検出部31とずれた位置に配置されているため、衝撃吸収部材20が検出部31における着座者の状態検出に影響を与えることが抑制される。
【0055】
また、シートクッションパッドS11の裏面には、導通部33を受容する溝部として配策溝部S11eが形成されている(図5)。このような構成によれば、シートクッションパッドS11の裏面S11bの配策溝部S11eによって、導通部33を適切に案内することが可能となる。
【0056】
また、貫通孔S11dは、検出部31よりも後方に配置されている。このような構成によれば、貫通孔S11dが、前後方向において、センサ部材30の検出部31よりも後方に配置されているため、貫通孔S11dが検出部31における着座者の状態検出に影響を与えることが抑制される。
【0057】
また、車両用シートSは、シートクッションパッドS11及び検出部31を覆う表皮材としてトリムカバーS12を有している。このような構成によれば、衝撃吸収部材20が導通部33の配策に影響を与えることが抑制されたシートクッションS1を提供することが可能となる。
【0058】
また、シートクッションパッドS11の表面S11a(着座面)側には、トリムカバーS12を吊り込むための第1吊りこみ溝t1(前側吊りこみ溝)及び第2吊りこみ溝t2(後側吊りこみ溝)が、乗物用シートの幅方向に延在して形成されており、第1吊りこみ溝t1は、第2吊りこみ溝t2よりも前方に形成されており、第1吊りこみ溝t1よりも前に衝撃吸収部材20が配置されている。このような構成によれば、衝撃吸収部材20が、前後方向において、前方の第1吊りこみ溝t1よりも前方の位置に配置されているため、吊りこみ溝(つまり吊りこみ部)が衝撃吸収部材20による衝撃吸収に影響を与えることが抑制される。
【0059】
また、衝撃吸収部材20、導通部33及びシートクッションパッドS11は、下方から支持部材としての板状部材10によって支持されている。このような構成によれば、衝撃吸収部材20、導通部33及びシートクッションパッドS11が下方から板状部材10によって支持されていることで、衝撃吸収部材に20よる衝撃吸収が安定するとともに、シートクッションパッドS11における導通部33の配策が安定する。
【0060】
[4.変形例]
本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。例えば、上記の実施形態では、衝撃吸収部材20が、前後方向及びシート幅方向の両方向において貫通孔S11dを避けた位置に配置されていたが、衝撃吸収部材20が、前後方向において貫通孔S11dを避けた位置に配置されていれば、衝撃吸収部材20がシート幅方向において貫通孔S11dと重なっていてもよい。
【0061】
上記の実施形態では、衝撃吸収部材20が前後方向において、検出部31とは異なる位置(検出部31の前方)に配置されていたが、衝撃吸収部材20の一部が前後方向において、検出部31と重なる位置(検出部31の下方)に配置されていても良い。
【0062】
以上、本実施形態に係る乗物用シートについて、車両用シートを例として説明した。本実施形態に係るシートクッションは、着座者に衝撃が発生しうるシートのシートクッション、特に、衝撃発生時に着座者の腰部に対して沈み込みが発生し得るシートのシートクッションであれば、特に用途についての制限はない。例えば、本発明のシートクッションは、車両以外の乗物内で使用される乗物用シートのシートクッションとしても利用可能である。
【符号の説明】
【0063】
S 車両用シート(乗物用シート)
S1 シートクッション
S11 シートクッションパッド
S11a 表面(上面)
S11b 裏面(下面)
S11c パッド凹部
S11d 貫通孔
S11e 配策溝部(溝部)
t1 第1吊りこみ溝(前側吊りこみ溝)
t2 第2吊りこみ溝(後側吊りこみ溝)
t3 第3吊りこみ溝(右側吊りこみ溝)
t4 第4吊りこみ溝(左側吊りこみ溝)
S12 トリムカバー(表皮材)
T1 第1吊りこみ部(前側吊りこみ部)
T2 第2吊りこみ部(後側吊りこみ部)
T3 第3吊りこみ部(右側吊りこみ部)
T4 第4吊りこみ部(左側吊りこみ部)
S2 シートバック
S3 ヘッドレスト
10 板状部材(支持部材)
11 平坦部
12 突出部(沈み込み抑制部材)
13 前方折り曲げ部(折り曲げ部)
20 衝撃吸収部材
21 上面
21a 傾斜面
22 下面
23a 前面
23b 後面
24a 右側面
24b 左側面
30 センサ部材
31 検出部
32 外部出力部
33 導通部(ハーネス、配線部材)
33a 第1屈曲部
33b 第2屈曲部
図1
図2
図3
図4
図5