(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147837
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】浮体構造体
(51)【国際特許分類】
B63B 35/44 20060101AFI20220929BHJP
B63B 35/00 20200101ALI20220929BHJP
B63B 39/06 20060101ALI20220929BHJP
B63B 35/34 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
B63B35/44 F
B63B35/00 A
B63B39/06 A
B63B35/34 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021049277
(22)【出願日】2021-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】520246892
【氏名又は名称】特定非営利活動法人長崎海洋産業クラスター形成推進協議会
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100191204
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 春彦
(72)【発明者】
【氏名】松浦 正己
(57)【要約】
【課題】効率的に波浪による動揺を抑制して水面を安定的に浮遊することができると共に、単純かつコンパクトな構成で保守性や運搬性に優れた浮体構造物を提供する。
【解決手段】その上面が水上に現れる浮体本体16と、浮体本体16の下部から下方に突出して設けられた浮体凸部18とを具備する浮体12と、浮体凸部18の周囲かつ浮体本体16の外周面より内方に設けられ、波浪による動揺を抑制する動揺抑制板14とを備えた水面を浮遊する浮体構造体10である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水面を浮遊する浮体構造体であって、
その上面が水上に現れる浮体本体と、該浮体本体の下部から下方に突出して設けられた浮体凸部とを具備する浮体と、
前記浮体凸部の周囲かつ前記浮体本体の外周面より内方に設けられ、波浪による動揺を抑制する動揺抑制板と、
を備えていることを特徴とする浮体構造体。
【請求項2】
前記動揺抑制板が、前記浮体凸部の下側側部から外方に隙間を空けて設けられた、周方向に延びる水平板であることを特徴とする請求項1記載の浮体構造体。
【請求項3】
前記動揺抑制板が、前記浮体本体の外側底部から下方に隙間を空けて設けられた、周方向に延びる垂直板であることを特徴とする請求項1記載の浮体構造体。
【請求項4】
前記動揺抑制板が、前記浮体凸部の底面より上方に設けられていることを特徴とする請求項2又は3記載の浮体構造体。
【請求項5】
前記浮体本体及び前記浮体凸部が、それぞれ円柱体であることを特徴とする請求項1~4のいずれか記載の浮体構造体。
【請求項6】
観測用ブイであることを特徴とする請求項1~5のいずれか記載の浮体構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水面を浮遊する浮体構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、海洋、湖沼、河川等の水上の設備として、水面を浮遊する浮体構造物が広く利用されている(特許文献1参照)。このような浮体構造物は、水底に支柱を設置する必要がなく構造を簡素化でき低コストであるが、波浪による動揺の影響を受けるという問題がある。したがって、波浪による動揺を抑制し、安定して水面を浮遊する浮体構造物が求められている。
【0003】
このような浮体構造物としては、具体的に、例えば、海上での気象観測、波浪・津波観測、風況観測、海水調査、水産業・養殖業における環境調査等を目的とした観測用のブイがある(特許文献2参照)。観測用のブイにおいては、波浪による動揺の抑制化に加えて、観測センサーの増加や長期観測のための電源の確保などから、それらの機器を搭載可能な容積の大きなブイが望まれている。また、搭載する機器のメンテナンスを海上で行うことが可能な保守性の高いブイが望まれている。さらに、陸上輸送や水上輸送に対応可能な低コストで単純な構造のブイが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-029065号公報
【特許文献2】特開2001-341693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、効率的に波浪による動揺を抑制して水面を安定的に浮遊することができると共に、単純かつコンパクトな構成で保守性や運搬性に優れた浮体構造物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、浮体を、浮体本体と、その下方に突出した浮体凸部とを具備する構成(浮体の下側周部を欠落した形状)として、その浮体凸部の周囲かつ浮体本体の外周面より内方に動揺抑制板を設けることにより、上記課題を解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の通りのものである。
[1]水面を浮遊する浮体構造体であって、
その上面が水上に現れる浮体本体と、該浮体本体の下部から下方に突出して設けられた浮体凸部とを具備する浮体と、
前記浮体凸部の周囲かつ前記浮体本体の外周面より内方に設けられ、波浪による動揺を抑制する動揺抑制板と、
を備えていることを特徴とする浮体構造体。
[2]前記動揺抑制板が、前記浮体凸部の下側側部から外方に隙間を空けて設けられた、周方向に延びる水平板であることを特徴とする上記[1]記載の浮体構造体。
[3]前記動揺抑制板が、前記浮体本体の外側底部から下方に隙間を空けて設けられた、周方向に延びる垂直板であることを特徴とする上記[1]記載の浮体構造体。
[4]前記動揺抑制板が、前記浮体凸部の底面より上方に設けられていることを特徴とする上記[2]又は[3]記載の浮体構造体。
[5]前記浮体本体及び前記浮体凸部が、それぞれ円柱体であることを特徴とする上記[1]~[4]のいずれか記載の浮体構造体。
[6]観測用ブイであることを特徴とする上記[1]~[5]のいずれか記載の浮体構造体。
【発明の効果】
【0008】
本発明の浮体構造物は、効率的に波浪による動揺を抑制して水面を安定的に浮遊することができると共に、単純かつコンパクトな構成で保守性や運搬性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る浮体構造体の概略側断面図である。
【
図2】
図1に示す第1の実施形態に係る浮体構造体おけるA‐A線概略矢視断面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る浮体構造体が海上に浮遊している様子を示す説明図であり、(a)は二点係留した状態を示し、(b)は一点係留した状態を示す。
【
図4】本発明の第2の実施形態に係る浮体構造体の概略側断面図である。
【
図5】
図4に示す第2の実施形態に係る浮体構造体おけるB-B線概略端面図である。
【
図6】本発明の第3の実施形態に係る浮体構造体の浮体の概略側断面図である。
【
図7】本発明の第4の実施形態に係る浮体構造体の浮体の概略側断面図である。
【
図8】実施例で作製した第5の実施形態に係る浮体構造体の浮体本体を示す写真である。
【
図9】実施例で作製した第5の実施形態に係る浮体構造体を示す写真であり、(a)は斜め上方写真を示し、(b)は斜め下方写真を示す。
【
図10】実施例で作製した第6の実施形態に係る浮体構造体を示す写真であり、(a)は斜め上方写真を示し、(b)は斜め下方写真を示す。
【
図11】実施例で作製した従来型の浮体構造体を示す写真であり、(a)は斜め上方写真を示し、(b)は斜め下方写真を示す。
【
図13】実施例で作製した浮体構造体の動揺特性を測定した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の浮体構造体は、水面を浮遊する浮体構造体であって、その上面が水上に現れる浮体本体と、浮体本体の下部から下方に突出して設けられた浮体凸部とを具備する浮体と、浮体凸部の周囲かつ浮体本体の外周面より内方に設けられ、波浪による動揺を抑制する動揺抑制板とを備えていることを特徴とする。
【0011】
なお、本明細書においては、波の進入方向に対して垂直軸回りの浮体構造物の運動を縦揺れ(ピッチ方向の揺れ)といい、波の進入方向に並行軸回りの浮体構造物の運動を横揺れ(ロール方向の揺れ)ということがある。
【0012】
本発明の浮体構造体においては、浮体凸部の周囲に設けられた動揺抑制板が、波浪による縦揺れ又は横揺れによって生じる浮体構造体下部の流体流れに対して抵抗となり、これにより、動揺を抑制して安定した浮遊を可能とする。また、従来の浮体と比較して、浮体の下側周部といったごく一部が欠落した形状であることから、十分な内部空間を確保でき、安定して浮遊することができる。また、動揺抑制板が浮体本体の外周面より内方に設けられているため、コンパクトであり、動揺抑制板による外部との干渉リスクを抑えることができる。すなわち、水面浮遊時に、メンテナンス船等を近くまで寄せることができ、水上での保守が容易となる。また、船舶等に牽引されて水面を移動する時に、抵抗がなくスムーズに牽引することができる。さらに、トラックや船舶に積載して運搬する時に、破損のおそれがなく、効率的に運搬することができる。
【0013】
本発明の浮体構造体は、例えば、気象、海洋状況、水産業に関わる情報等を得るための観測用ブイの他、航路標識用ブイ、工事用標識ブイ、浮桟橋、はしけ(バージ)等に適用することができる。
【0014】
本発明の浮体構造体の設置方法としては、通常風や波や潮流などの外力に対して位置保持性に優れる多点係留や、外力から受ける力が小さくなるように振れ回る一点係留などが挙げられる。
【0015】
以下、本発明の浮体構造体を、水面に浮遊した状態に基づいて説明する。
【0016】
[浮体]
本発明の浮体は、上記のように、浮体本体と、その下部から下方に突出して設けられた浮体凸部とを具備している。浮体本体及び浮体凸部は、通常、内部空間を有して連通している。この内部空間には、外部からの浸水を防ぐ気密構造となっており、例えば、観測機器等のバッテリー、発電機器、燃料容器等の各種機器や、バラスト、発泡材等の重量調整用部材が収容可能に構成されている。
【0017】
(浮体本体)
浮体本体は、上記のように、内部空間を有する中空体であって、水面浮遊時にその上面が水上に現れる。浮体本体の上面には、例えば、データ収録器、通信機器、気象計、風況観測機器等の観測装置の他、照明、欄干等が搭載される。観測装置等は、必要に応じて、収容容器や覆いによって保護される。
【0018】
浮体本体の形状としては、水面を浮遊可能な形状であれば特に制限されるものではないが、上記のように観測装置等を搭載することから、上面が平坦な形状であることが好ましく、例えば、円筒体、直方体等を挙げることができる。
【0019】
浮体本体の材質としては、防水性(気密性)を有するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、鋼材、アルミ、FRP、ポリエチレン樹脂、PCコンクリート、塩化ビニル樹脂等を挙げることができる。
【0020】
(浮体凸部)
浮体凸部は、浮体本体同様、内部空間を有する中空体であって、浮体本体の下部から下方に突出して設けられている。本発明の浮体は、従来の浮体と比較して、浮体の下側周部といったごく一部が欠落した形状であることから、十分な内部空間を確保でき、安定して浮遊することができ、また、多くの機材を収容することが可能となる。
【0021】
浮体凸部の形状としては、浮体本体に収まる形状であれば特に制限されるものではなく、例えば、円柱体、直方体、逆円錐台、逆角錐台、多段円柱体、多段直方体、多段逆円錐台、多段逆角錐台等を挙げることができる。
【0022】
浮体凸部の材質としては、防水性(気密性)を有するものであれば特に制限されるものではなく、浮体本体と同様である。
【0023】
[動揺抑制板]
動揺抑制板は、浮体凸部の周囲かつ浮体本体の外周面より内方に設けられ、波浪による動揺を抑制する部材である。動揺抑制板が、波浪による縦揺れ又は横揺れによって生じる浮体構造体下部の流体流れに対して抵抗となることにより、動揺を抑制することができ、安定した浮遊を可能とする。浮体本体の外周面より内方とは、浮体本体の外周面を超えない範囲であり、同一面を含む。動揺抑制板が、浮体本体の外周面より内方に設けられていることにより、浮体構造物をコンパクトにすることができ、動揺抑制板が外部と干渉するリスクを減少させることができる。
【0024】
また、動揺抑制板は、浮体凸部の底面より上方に設けられていることが好ましい。すなわち、動揺抑制板が浮体凸部の底面より下方に突出しないことが好ましい。このような構成により、浮体構造物がよりコンパクトになる。
【0025】
また、動揺抑制板は、浮体凸部の全周にわたって連続して設けられるものが好ましいが、間欠的に設けられるものや、所定の辺(例えば、浮体が直方体の場合に、対向する一対の辺のみ)に設けられるものであってもよい。
【0026】
動揺抑制板の材質としては、特に制限されるものではなく、浮体本体と同様のものを挙げることができる。
【0027】
動揺抑制板の具体的な好ましい態様としては、浮体凸部の下側側部から外方に隙間を空けて設けられた、周方向に延びる水平板である態様(
図1参照)や、浮体本体の外側底部から下方に隙間を空けて設けられた、周方向に延びる垂直板である態様(
図4参照)を挙げることができる。なお、本発明における水平板又は垂直板は、水平又は垂直方向から10°以内、好ましくは5°以内の傾斜水平板又は傾斜垂直板を含む概念である。
【0028】
動揺抑制板が、浮体凸部の下側側部から外方に隙間を空けて設けられた、周方向に延びる水平板である態様の場合、浮体凸部との隙間の間隔は、例えば、20~200mm程度であり、20~100mmが好ましく、30~80mmがより好ましく、40~60mmがさらに好ましい。この態様の場合、浮体構造体に揺れが生じた場合、浮体凸部の周囲に滞留する水が、動揺抑制板と浮体凸部との隙間から勢いよく流出し、これにより、縦揺れ又は横揺れを小さくする減衰力が大きくなり、揺動を抑制することができる。また、動揺抑制板の配置位置としては、浮体凸部の底面と面一となる位置に配置されることが好ましい。これにより、浮体構造物表面の凹凸を減少させ、外部との干渉による破損を防止することができる。
【0029】
動揺抑制板が、浮体本体の外側底部から下方に隙間を空けて設けられた、周方向に延びる垂直板である態様の場合、浮体本体との間隔は、例えば、20~200mm程度であり、20~100mmが好ましく、30~80mmがより好ましく、40~60mmがさらに好ましい。この態様の場合、上記水平板が設けられる場合と同様に、縦揺れ又は横揺れを小さくする減衰力を大きくすることができ、揺動を抑制することができる。また、動揺抑制板の配置位置としては、浮体本体の外周面と面一となる位置に配置されることが好ましい。これにより、浮体構造物表面の凹凸を減少させ、外部との干渉による破損を防止することができる。
【0030】
本発明の浮体構造体が円柱型の場合、浮体本体の直径としては、用途等に応じて適宜設定することができるが、例えば、0.3~100mである。観測用ブイの場合、0.5~15mが好ましく、1~10mがより好ましく、2~5mがさらに好ましい。また、浮体凸部の直径としては、浮体本体の直径の50~85%の長さであることが好ましく、60~80%の長さであることがより好ましく、70~80%の長さであることがさらに好ましい。
【0031】
また、浮体の喫水としては、用途等に応じて適宜設定することができるが、例えば、浮体本体の直径に対して20~100%が好ましく、20~70%がより好ましく、30~50%がさらに好ましい。また、浮体凸部の高さとしては、例えば、浮体の喫水の20~50%であることが好ましく、25~45%であることが好ましく、30~40%であることがより好ましい。
【0032】
本発明の浮体構造体が直方型の場合、浮体本体や浮体凸部の大きさは、上記直径を対角線の長さとして、同様に設定することができる。なお、浮体本体の長辺が短辺の3倍以上の長さである場合には、短辺方向中心軸周りの揺れが小さいため、長手方向の両端部に動揺抑制板を必ずしも設ける必要はない。
【0033】
以下、図面を用いて本発明の浮体構造体の一実施形態を具体的に説明するが、本発明は本実施形態に制限されるものではない。
【0034】
ここで、
図1は、本発明の第1の実施形態に係る浮体構造体の概略側断面図である。
図2は、
図1に示す第1の実施形態に係る浮体構造体おけるA‐A線概略矢視断面図である。
図3は、本発明の第1の実施形態に係る浮体構造体が海上に浮遊している様子を示す説明図であり、(a)は二点係留した状態を示し、(b)は一点係留した状態を示す。
図4は、本発明の第2の実施形態に係る浮体構造体の概略側断面図である。
図5は、
図4に示す第2の実施形態に係る浮体構造体おけるB-B線概略端面図である。なお、実施形態において参照する図面は、理解を深めるために模式的に記載したものである。例えば、図面に描画された物体の寸法の比率などは、現実の物体の寸法の比率などとは異なる場合がある。
図1及び
図4における白抜き矢印は、水の流れを表したものである。
【0035】
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る浮体構造体10は、浮体12と、動揺抑制板14とを備えている。
【0036】
浮体12は、その上面が水上に現れる浮体本体16と、浮体本体16の下部から下方に突出して設けられた浮体凸部18とを具備している。
【0037】
浮体本体16は、直径2m、高さ0.9mの鋼製の円柱体である。浮体本体16の下部には、浮体凸部18が設けられている。浮体凸部18は、直径1.5m、高さ0.3mの鋼製の円柱体である。浮体本体16及び浮体凸部18は、その内部が中空に形成され、連通している。
【0038】
図2に示すように、動揺抑制板14は、浮体凸部18の周囲かつ浮体本体16の外周面より内方に、浮体凸部18の下側側部から外方に50mm程度の隙間20を空けて設けられた、周方向に延びる水平板である。動揺抑制板14は、浮体凸部18の周方向に等間隔で設けられたブラケット22によって、浮体凸部18の外周面及び浮体本体12の底面と接続されている。
【0039】
図3に示すように、本発明の第1の実施形態に係る浮体構造体10は、例えば、海上を浮遊する観測用ブイとして用いることができる。浮体構造体10の内部(浮体本体16及び浮体凸部18の内部)には、バラストや観測装置のバッテリーが収容可能となっている。また、浮体構造体10の上部には、観測機器を収容した収容器24などが搭載される。また、海上で浮遊する際には、アンカー26に接続された2本の係留索28で係留される二点係留方式(
図3(a))などの多点係留方式や、アンカー30に接続された1本の係留索32で係留される一点係留方式(
図3(b))を用いることができる。
【0040】
続いて、本発明の第2の実施形態に係る浮体構造体について詳細に説明する。
図4に示すように、本発明の第2の実施形態に係る浮体構造体34は、浮体12と、動揺抑制板36とを備えている。
【0041】
浮体12は、上記第1の実施形態に係る浮体構造体の浮体と同様の構成であるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0042】
図5に示すように、動揺抑制板36は、浮体凸部18の周囲かつ浮体本体16の外周面より内方に、浮体本体16の外側底部から下方に50mm程度の隙間38を空けて設けられた、周方向に延びる垂直板である。動揺抑制板36は、浮体凸部18の周方向に等間隔で設けられたブラケット40によって、浮体凸部18の外周面及び浮体本体16の底面と接続されている。
【0043】
続いて、本発明の第3及び第4の実施形態に係る浮体構造体について説明する。なお、第3及び第4の実施形態に係る浮体構造体は、浮体凸部以外の部材については、上記浮体構造体10と同様の構成であるため、同一符号を付して説明を省略する。また、動揺抑制板を省略して、より容易に理解できるように記載している。ここで、
図6は、本発明の第3の実施形態に係る浮体構造体の浮体の概略側断面図である。
図7は、本発明の第4の実施形態に係る浮体構造体の浮体の概略側断面図である。
【0044】
図6に示すように、本発明の第3実施形態に係る浮体構造体42においては、浮体凸部44が側面視逆台形状の逆円錐台に構成されている。また、
図7に示すように、本発明の第4実施形態に係る浮体構造体46においては、浮体凸部48が側面視階段状の二段円柱に構成されている。
【実施例0045】
[動揺特性試験]
(実施例1)
本発明の第5の実施形態に係る浮体構造体(実施例1)を用いて動揺特性試験を行った。
図8は、実施例で作製した第5の実施形態に係る浮体構造体の浮体本体を示す写真である。
図9は、実施例で作製した第5の実施形態に係る浮体構造体を示す写真であり、(a)は斜め上方写真を示し、(b)は斜め下方写真を示す。
なお、本試験に用いた浮体構造体(実施例1~2、比較例1)は、実機の1/10の縮尺模型を想定したものである。
【0046】
具体的に、浮体としては、直径0.2m、高さ0.09mの塩化ビニル樹脂製の円柱体の浮体本体と、直径0.15m、高さ0.03mの塩化ビニル樹脂製の円柱体の浮体凸部とを備えた浮体を用いた。また、浮体の喫水は、0.08mであった。また、動揺抑制板としては、浮体凸部の周囲かつ浮体本体の外周面より内方であって、浮体凸部の底面と動揺抑制板の底面が面一となる位置に、浮体凸部の下側側部から外方に5mm程度の隙間を空けて設けられた、周方向に延びる厚さ5mmの塩化ビニル樹脂製の水平板を用いた。なお、水平板の外周面は、浮体本体の外周面と面一となっている。
【0047】
(実施例2)
本発明の第6の実施形態に係る浮体構造体(実施例2)を用いて動揺特性試験を行った。
図10は、実施例で作製した第6の実施形態に係る浮体構造体を示す写真であり、(a)は斜め上方写真を示し、(b)は斜め下方写真を示す。
【0048】
具体的に、浮体としては、実施例1と同様にして製造したものを用いた。また、動揺抑制板としては、浮体凸部の周囲かつ浮体本体の外周面より内方であって、浮体本体の外周面と動揺抑制板の外周面が面一となる位置に、浮体本体の外側底部から下方に5mm程度の隙間を空けて設けられた、周方向に延びる厚さ5mmの塩化ビニル樹脂製の垂直板を用いた。なお、垂直板の外周面は、浮体本体の外周面と面一となっている。
【0049】
(比較例1)
浮体が直径0.2m、高さ0.12mの塩化ビニル樹脂製の円柱体である従来型の浮体構造体(比較例1)を製造した。
図11は、実施例で作製した従来型の浮体構造体を示す写真であり、(a)は斜め上方写真を示し、(b)は斜め下方写真を示す。
【0050】
動揺特性試験は、以下の条件で行った。
図12に示すように、長さ60m、幅4m、深さ2.3mの船舶海洋試験水槽において、本実施例に係る浮体構造体の上部に動揺センサーを取り付け、運動に影響を与えないように係留させた状態で、造波装置により波を発生させ、波周期(sec)における浮体構造体のピッチ振幅/波振幅(deg/m)の測定を行った。
その結果を
図13に示す。
【0051】
図13に示すように、実施例に係る浮体構造体(実施例1及び実施例2)は、従来型の浮体構造体(比較例1)よりもピーク時(3s)のピッチ振幅/波振幅が小さく、波浪による動揺を抑制し、安定して浮遊できることが確認できた。