IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電気株式会社の特許一覧 ▶ NECプラットフォームズ株式会社の特許一覧

特開2022-147871バイオプラスチックを含むリサイクル樹脂成形体の衝撃試験装置およびそのリサイクル方法
<>
  • 特開-バイオプラスチックを含むリサイクル樹脂成形体の衝撃試験装置およびそのリサイクル方法 図1
  • 特開-バイオプラスチックを含むリサイクル樹脂成形体の衝撃試験装置およびそのリサイクル方法 図2
  • 特開-バイオプラスチックを含むリサイクル樹脂成形体の衝撃試験装置およびそのリサイクル方法 図3
  • 特開-バイオプラスチックを含むリサイクル樹脂成形体の衝撃試験装置およびそのリサイクル方法 図4
  • 特開-バイオプラスチックを含むリサイクル樹脂成形体の衝撃試験装置およびそのリサイクル方法 図5
  • 特開-バイオプラスチックを含むリサイクル樹脂成形体の衝撃試験装置およびそのリサイクル方法 図6
  • 特開-バイオプラスチックを含むリサイクル樹脂成形体の衝撃試験装置およびそのリサイクル方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147871
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】バイオプラスチックを含むリサイクル樹脂成形体の衝撃試験装置およびそのリサイクル方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/30 20060101AFI20220929BHJP
   G01N 3/307 20060101ALI20220929BHJP
   B29B 17/02 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
G01N3/30 N
G01N3/307
B29B17/02 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021049319
(22)【出願日】2021-03-23
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度 環境省 脱炭素社会を支えるプラスチック等資源循環システム構築実証事業(電子機器および住宅設備(インテリア)製品への多糖類系高機能バイオプラスチックの適用とリサイクルシステムの実証事業)産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】志村 緑
(72)【発明者】
【氏名】田中 修吉
(72)【発明者】
【氏名】小澤 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】木野 高秀
【テーマコード(参考)】
2G061
4F401
【Fターム(参考)】
2G061AA13
2G061AB04
2G061BA01
2G061CA10
2G061CB01
2G061EB07
4F401AA15
4F401AA22
4F401BA13
4F401CA38
4F401CA46
4F401CA78
(57)【要約】
【課題】より安価で簡便にリサイクル樹脂成形体を選別でき、多様なリサイクル樹脂成形体の選別に適用できる衝撃試験装置を提供する。
【解決手段】衝撃試験装置1は、直進移動するロッド21を有するリニアアクチュエータと20、リニアアクチュエータ20のロッド21に連結されたストライカアセンブリ30とを有する。ストライカアセンブリ30は、ばねを介してロッド21に連結されているストライカを有し、ストライカによって、バイオプラスチックを含むリサイクル樹脂成形体に衝撃力を付与する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直進移動するロッドを有するリニアアクチュエータと、
前記リニアアクチュエータのロッドに連結され、バイオプラスチックを含むリサイクル樹脂成形体に衝撃力を付与するストライカと、を有し、
前記ストライカは、1つまたは複数の弾性体を介して前記ロッドに連結されている、リサイクル樹脂成形体の衝撃試験装置。
【請求項2】
前記ロッドに固定された第1部材と、
前記ロッドの移動方向に前記第1部材と間隔を開けて配置され、かつ、前記第1部材との間隔を変更可能に連結された第2部材をさらに有し、
前記ストライカは前記第2部材に固定され、
前記弾性体は、前記第1部材と前記第2部材との間に配置された、前記第1部材と前記第2部材との間隔が小さくなることにより弾性変形可能な部材である、
請求項1に記載の衝撃試験装置。
【請求項3】
前記弾性体がばねである、請求項1または2に記載の衝撃試験装置。
【請求項4】
前記ばねがコイルばねである、請求項1~3のいずれか一項に記載の衝撃試験装置。
【請求項5】
複数の前記弾性体を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の衝撃試験装置。
【請求項6】
前記ばねの荷重が100N~4390Nであり、かつ、ストライカの先端部の直径が3mm~40mmである、請求項1~5のいずれか一項に記載の衝撃試験装置。
【請求項7】
ロッドの移動速度が、1.0m/s~6.0m/sである、請求項1~6のいずれか一項に記載の衝撃試験装置。
【請求項8】
前記バイオプラスチックが、セルロース系樹脂を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の衝撃試験装置。
【請求項9】
前記ストライカおよび弾性体の少なくとも一方が交換可能である、請求項1~8のいずれか一項に記載の衝撃試験装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の衝撃試験装置を用いてバイオプラスチックを含むリサイクル樹脂成形体を選別する工程を含む、バイオプラスチックを含むリサイクル樹脂成形体のリサイクル方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオプラスチックを含むリサイクル樹脂成型体の衝撃試験装置およびそのリサイクル方法に関する。
【背景技術】
【0002】
資源有効活用の観点から、電子機器、家電などの耐久性製品に使われる熱可塑性樹脂は、製品使用後にマテリアルリサイクルし、新たな製品として市場に出すことが望ましい。近年、CO排出による地球温暖化や石油資源枯渇などの地球環境問題の解決に寄与する樹脂として、植物成分を原料とするバイオプラスチックが注目されている。バイオプラスチックは、包装、容器、繊維などの一般製品に加え、電子機器、自動車、建材、家具等の耐久製品への利用も開始されている。
【0003】
しかし、バイオプラスチックをリサイクルする際、製品の使用状況(環境、期間など)によって樹脂の劣化度合は大きくばらつくため、回収した樹脂を一律にマテリアルリサイクルすることは困難であり、劣化度合によって樹脂を選別する必要がある。樹脂の劣化度合を把握する方法として、例えば、分子量測定、強度測定、光学測定等が行われている。
【0004】
例えば、特許文献1には、光学式識別装置により選別された選別品を含む複合ポリ乳酸系熱可塑性樹脂組成物を成形してなるマテリアルリサイクル携帯電話筺体が記載されている。また、特許文献2には、FT-IR(赤外線スペクトル)測定により使用済みプラスチック材料を選別する工程を含む、使用済みプラスチック材料のリサイクル方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-246371号公報
【特許文献2】特許第4088952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1および2に記載のリサイクル樹脂成形体の選別に用いられる装置は高価であり、測定に複雑な作業を要するという問題があった。また、特許文献1ではポリ乳酸系熱可塑性樹脂が選別対象であり、特許文献2では選別対象の一部が透明樹脂部であることが求められ、樹脂の種類、外観により選別可能な成形体が限定されていた。したがって、より安価で簡便にリサイクル樹脂成形体を選別でき、多様なリサイクル樹脂成形体の選別に適用できる装置の開発が求められていた。
【0007】
本発明の一態様は、上記事情に鑑み、安価でかつ測定が簡便な、バイオプラスチックを含むリサイクル樹脂成形体の衝撃試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態の一態様は、
直進移動するロッドを有するリニアアクチュエータと、
前記リニアアクチュエータのロッドに連結され、バイオプラスチックを含むリサイクル樹脂成形体に衝撃力を付与するストライカと、を有し、
前記ストライカは、1つまたは複数の弾性体を介して前記ロッドに連結されている、リサイクル樹脂成形体の衝撃試験装置に関する。
【発明の効果】
【0009】
本実施形態によれば、バイオプラスチックを含むリサイクル樹脂成形体の強度を簡単に測定でき、かつ安価な衝撃試験装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態による衝撃試験装置の正面図である。
図2図1に示す衝撃試験装置の側面図である。
図3図1に示すストライカアセンブリの、ばねが荷重を受けていない状態での正面図である。
図4図1に示すストライカアセンブリの、ばねが荷重を受けている状態での正面図である。
図5図3に示すストライカアセンブリを分解した状態で示す正面図である。
図6】ストライカアセンブリの他の形態を示す正面図である。
図7】ストライカアセンブリのさらに他の形態の、第1部材の上方側から見たストライカおよびばねの配置を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<衝撃試験装置>
図1および2を参照すると、樹脂成形体に衝撃(面衝撃)を与えることによって、その成形体がリサイクル可能であるかどうかを選別するのに使用される、本発明の一実施形態による衝撃試験装置1が示されている。衝撃試験装置1は、フレーム10と、フレーム10に固定されたベース部材11と、リニアアクチュエータ20と、ストライカアセンブリ30と、試験体固定具40と、を有する。リニアアクチュエータ20は、直進移動するロッド21を有しており、ストライカアセンブリ30は、リニアアクチュエータ20のロッド21に取り付けられている。
【0012】
リニアアクチュエータ20は、ロッド21を一定速度で直進移動させることのできる任意のアクチュエータであってよく、リニアアクチュエータ20として、例えば、空圧シリンダ、油圧シリンダおよび電動シリンダなどのシリンダ機構を用いることができる。ロッド21の移動速度は、衝撃力を与える対象となる試験体が樹脂材料であることを考慮すると、1.0~6.0m/sの範囲内であることが好ましく、より好ましくは2.0~5.0m/sの範囲内であり、具体的には、例えば3.0m/sであってよい。リニアアクチュエータ20がこの移動速度の範囲で使用されることから、本形態では、リニアアクチュエータ20として、構造が簡単であり、かつ取扱いが容易である空圧シリンダを好ましく用いることができる。また、本形態の衝撃試験装置1の用途では、ロッド21の移動速度が上記の範囲内でよいので、比較的小型のリニアアクチュエータ20を用いることができる。したがって、装置全体の寸法も、高さ:1000mm前後、幅:600mm前後、奥行き:500mm前後と小型の装置を実現することができる。
【0013】
ストライカアセンブリ30は、図3に示すように、第1部材31、第2部材32、弾性体であるばね33、連結部材34、ストライカ35およびストッパ36を有する。
【0014】
第1部材31は、リニアアクチュエータ20のロッド21に固定されている。連結部材34は、棒状の部材であり、その長手方向である軸方向をロッド21の移動方向と一致させて配置されている。連結部材34の一端部には、連結部材34より大径の円柱部およびフランジを有するストッパ部材36が、ボルト等の固定具により着脱自在に取り付けられている。第1部材31には、ストッパ部材36の円柱部が挿入される貫通孔が形成され、連結部材34は、第1部材31に対してロッド21の移動方向と平行に移動可能に設けられている。連結部材34の他端部には、ロッド21の移動方向に第1部材31と間隔をあけて配置される第2部材32が固定されている。したがって、第2部材32は、第1部材31に対して連結部材34が移動することで、第1部材31との間隔を変えることができる。第1部材31と第2部材32との最大間隔は、ストッパ部材36のフランジによって制限される。
【0015】
ばね33は、第1部材31と第2部材32との間に配置されており、第1部材31と第2部材32との間隔が小さくなることにより弾性変形可能な弾性体として機能する。そのような弾性体として、本形態では、連結部材34の外周を取り巻くように配置された圧縮コイルばねを用いている。しかし、弾性体としては、第1部材31と第2部材32との間隔が小さくなることにより弾性変形するものであれば、板ばね、皿ばね、トーションバーおよびゴム部材などを用いることもできる。
【0016】
ストライカ35は、リニアアクチュエータ20のロッド21が前進することによって試験体と衝突し、これによって試験体に衝撃力を付与する棒状の21部品であり、ボルト等の固定具によって第2部材32に着脱可能に固定されている。試験体に衝突するストライカ35の部分である先端部は、試験体と衝突したときに試験体にせん断力が作用しないように、半球形に形成されることが好ましい。また、ストライカ35が試験体に衝突したときに最初に試験体に衝突するストライカ35の部分である衝突点がロッド21の中心軸の延長線上に位置するように、ストライカ35が配置されることが好ましい。このような構成により、ロッド21を前進させたとき、ストライカ35による衝撃力を試験体に効果的に付与することができる。
【0017】
再び図1および図2を参照すると、試験体固定具40は、試験体を固定するための構造を有し、ストライカアセンブリ30の移動方向においてストライカ35と対向する位置でフレーム10に固定されている。
【0018】
以上のとおり構成された衝撃試験装置1は、以下のように使用される。
【0019】
まず、リニアアクチュエータ20のロッド21を後退させた状態で、試験体固定具40に樹脂成形体である試験体Mを固定する(図3参照)。次いで、リニアアクチュエータ20を駆動し、ロッド21を一定の速度で前進させ、ストライカ35を試験体Mに衝突させる(図4参照)。これにより、試験体Mに衝撃力が付与される。ユーザは、試験が終了した試験体Mの損傷状態等を目視で確認し、その損傷状態から試験体Mがリサイクル可能であるかどうかを判断することができる。具体的には、試験体Mが損傷しなければ、その試験体はリサイクル可能であるが、試験体Mが損傷すれば、その試験体Mはリサイクル不可であると判断することができる。
【0020】
しかし、成形体が損傷する衝撃力は、成形に用いた樹脂の材料およびリサイクル回数といった樹脂仕様によって異なる。そこで、衝撃試験装置1は、成形体に与える衝撃力を樹脂仕様に応じて変更できることが好ましい。
【0021】
本形態の衝撃試験装置1では、ストライカ35は、ロッド21に対して相対的に移動可能に支持されており、かつ、ロッド21とストライカ35との間にばね33が配置されている。ストライカ35が試験体に衝突すると、ストライカ35は試験体からの反力を受け、この反力によってばね33が圧縮され、これによって、試験体Mに与えられるエネルギーの一部が吸収される。したがって、ばね33を変更することによって、試験体Mに与える衝撃力の大きさを調整することができる。また、ストライカ35の寸法(例えば、先端の半球形状の部分の直径)によっても試験体に与えられる衝撃力の大きさが変わるので、ストライカ35を変更することによっても、試験体Mに与える衝撃力の大きさを調整することができる。
【0022】
そこで本形態では、前述のとおり、第1部材31と第2部材32との最大間隔を制限するストッパ部材36が、第1部材31と第2部材32とを連結する連結部材34に着脱可能に設けられている。そのため、図5に示すように、連結部材34からストッパ部材36を取り外すことによって、第2部材32を第1部材31から分離することができる。また、第2部材32が分離されることによって、ばね33を連結部材34から引き抜くことができる。さらに、ストライカ35も、固定具を取り外すことによって第2部材32から取り外すことができる。
【0023】
本形態の衝撃試験装置1では、ストライカアセンブリ30は、上記のように分解可能に構成されている。それにより、仕様の異なる複数種類のばね33および寸法の異なる複数種類のストライカ35を予め用意しておき、試験体の材質等に応じて適切なばね33およびストライカ35を選択して使用することができる。ここで、ばねの仕様としては、材質、線径および各部寸法などが挙げられるが、ばねの選択の簡便性を考慮すると、これらのばねで実測したばね荷重の値を、ばね33を選択する際の指標として利用するのが好ましい。
【0024】
ばね荷重は、加圧力計を用いて測定することができる。加圧力計を用いたばね荷重の測定は、以下の手順で行うことができる。まず、加圧力計のセンサ部を、衝撃試験装置1の試験体固定具40に取り付ける。センサ部の取り付け位置は、実際に試験体固定具40に試験体を固定して衝撃試験装置1を作動させたときにストライカ35が試験体と衝突する位置となるよう、試験体の厚さに応じて調整する。また、ばね荷重を測定したいばねをストライカアセンブリ30に組み込む。本形態のようにストライカアセンブリ30に複数個のばねが使用される場合は、複数個のばねを組み込む。加圧力計のセンサ部の試験体固定具40への取り付けおよびストライカアセンブリ30へのばねの組み込みの完了後、衝撃試験装置1を作動させて加圧力計のセンサ部にストライカを衝突させ、このときに加圧力計で測定された加圧力の値を、ばね荷重とする。
【0025】
上記のようにばね荷重を測定したとき、ばね荷重は、100N以上であることが好ましく、150N以上であることがより好ましく、さらに好ましくは200N以上、よりさらに好ましくは250N以上である。ばね荷重が100N未満では、試験体に与える衝撃力が弱すぎ、リサイクルの可否を選別できない可能性がある。一方、ばね荷重は4390N以下であることが好ましく、より好ましくは3500N以下、さらに好ましくは3000N以下である。ばね荷重が4390Nを超えると、試験体に与える衝撃力が強すぎ、リサイクルの可否を選別できない可能性がある。
【0026】
また、ストライカ35の寸法としては、例えば、ストライカ35の先端部が半球形状である場合、その直径とすることができる。一例として、ストライカ35の直径は、3mm~40mmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは5mm~30mmの範囲内である。
【0027】
このように、ストライカアセンブリ30は、ばね33およびストライカ35により試験体に与える衝撃力の大きさを調整できるように構成されるので、調整可能な範囲の自由度を大きくすることができる。
【0028】
図1図4に示した形態では、ストライカアセンブリ30が2個のばね33を有する形態を示した。この場合、試験体に安定した衝撃力を付与するためには、ストライカ35に力が作用したときに2個のばね33が均等に圧縮されるように2個のばね33を配置することが好ましい。具体的には、上述した形態では、ストライカアセンブリ30をリニアアクチュエータ20のロッド21の移動方向から見たとき、2個のばね33の中心軸を結ぶ線分の中点にストライカ35が配置されている。
【0029】
ばね33の数および配置は任意であってよい。例えば、図6に示す形態では、1個のばね33が、ロッド21と同軸上に配置される。この場合、連結部材34と第1部材31とを、ボルト等の固定具によって着脱自在に固定することができる。さらに、第2部材32を、貫通孔が形成されることによって連結部材34が挿入される第1の部分32aと、ロッド21の直進移動方向において第1の部分32aと間隔をあけて位置する第2の部分32bとを有する構造とすることができる。これによって、第2部材32を連結部材34に対して移動可能とし、かつ、第2の部分32aにストライカ35を着脱自在に取り付けることができる。連結部材34には、第1部材31と第2部材32との最大間隔を制限するフランジ状のストッパが固定される。第1の部分32aと第2の部分32bとの間隔は、ストライカ35が試験体に衝突し、ばね33が圧縮されたとしても第1の部分32aと第2の部分32bとの間にある部材が互いに干渉しない間隔とされる。
【0030】
また、図7には、3個のばね33を有する場合の、ばね33およびストライカ35の配置を模式的に示している。この場合も、試験体に安定した衝撃力を付与するためには、ストライカ35に力が作用したときに3個のばね33が均等に圧縮されるように3個のばね33を配置することが好ましい。ばね33の数は4個以上であってもよく、4個以上のばね33を配置する場合も上記の考えを適用してばね33を配置することができる。例えば、ばね33の数をN(Nは3以上の整数)としたとき、リニアアクチュエータ20のロッド21の移動方向から見て、正N角形の中心にストライカ35を配置し、かつ、その正N角形の角部に、ストライカ35からの距離が等しくなるようにN個のばね33を配置することができる。
【0031】
<リサイクル可能な樹脂成形体の選別>
製品に使用される樹脂成形体は、熱や光などによって劣化が生じ、機械的強度が低下する。製品の使用期間、使用環境、リサイクル回数などによって樹脂成形体の劣化度合は変わってくるため、樹脂成形体をマテリアルリサイクルするには、各成形体の劣化度合を把握し選別することが求められる。樹脂成形体の劣化度合を把握するには分子量測定や強度測定が有効であるが、測定は煩雑であり設備サイズが大きくコストも高い。本形態による衝撃試験装置は簡便で設備サイズが小さく安価であることから、製品を回収する現場で用いるのに適している。以下、図1~4に示した衝撃試験装置を用いた、リサイクル可能な樹脂成形体の選別について説明する。
【0032】
まず、選別試験条件を決定するために、選別の対象となる製品に適用可能な強度を有する成形体を用意する。ここで、劣化度合の異なる成形体を数種用意し、劣化度合による製品適用可能の閾値を把握できると、樹脂成形体のリサイクル率が上がるので好ましい。例えば、樹脂混練を複数回行うことで熱履歴の異なる樹脂ペレットを数種準備し、それらを用いて成形体を作成し製品適用試験を実施する。そして、製品に適用可能であった成形体と適用不可であった成形体を選定する(閾値サンプル)。また、例えば、熱履歴の異なる樹脂ペレットを数種準備し、バージン材とある割合で混ぜた樹脂ペレットを用意する。そして、それらを用いて成形体を作成し製品適用試験を実施することで閾値サンプルを選定することもできる。次いで、これらの閾値サンプルについて、上述した衝撃試験装置1による衝撃試験を実施する。この際、閾値サンプルで適用不可の成形体は損傷するが適用可能な成形体は損傷しない結果が得られるような、ばね33、ストライカ35またはこれらの組合せを得る。得られたばね33、ストライカ35またはこれらの組合せを、選別試験条件として決定する。衝撃試験によるサンプルの損傷の有無は、サンプルに穴があいたかどうか、すなわち、ストライカがサンプルを貫通したかどうかを判断基準とすることができる。
【0033】
選別試験条件が決定されたら、選別現場において、選別の対象となる成形体について、この試験サンプルの衝撃試験を、決定した選別試験条件で実施する。衝撃試験の結果、試験サンプルに損傷が生じていれば、その成形体はリサイクル不可と判断する。一方、試験サンプルに損傷が生じていなければ、その成形体はリサイクル可能と判断する。
【0034】
<バイオプラスチックを含むリサイクル樹脂成形体>
本実施形態の衝撃試験装置を用いて選別する対象は、特に限定されないが、バイオプラスチックを含むリサイクル樹脂成形体(単に「成形体」とも記載)であるのが好ましい。
【0035】
成形体の形状は特に限定されず、例えば略板状、箱状等であってよい。また、成形体は平面視において、例えば、略矩形状、円状、楕円状等であってよい。成形体のサイズは特に限定されないが、ストライカ径より大きい面が好ましい。成形体の厚みにより面衝撃エネルギーが異なるため、厚みは、選別する対象樹脂成形体と測定条件により調整するのが好ましい。一態様において、成形体は、例えば厚み0.5~10mmであるのが好ましい。成形体の表面は、平滑であってもよいし、規則的または不規則的な凹凸を有する粗面であってもよい。
【0036】
一態様において、選別される成形体は、使用済みの回収製品より解体された成形体であっても良いし、使用済みのリサイクル樹脂成形体を粉砕後溶融してそれを所定の形状に成形したものであってもよいし、使用済みの製品を所定の形状に破砕したものであってもよい。
【0037】
本実施形態において、リサイクル樹脂成形体はバイオプラスチックを含む。成形体は、バイオプラスチックに加えて、必要に応じて、着色剤(例えばカーボンブラック)等の添加剤等を含んでもよい。特に限定はされないが、成形体は、バイオプラスチックを好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上含む。
【0038】
バイオプラスチックは、廃棄時に環境への負荷の少ない生分解性樹脂、または再生可能な資源から製造されるバイオマス由来の樹脂であるのが好ましい。バイオプラスチックとしては、例えば、ポリヒドロキシブチレート、ポリ(ヒドロキシブチレート/ヒドロキシヘキサノエート)、セルロース系樹脂などの多糖類系樹脂、キトサン、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリビニルアルコール、ポリグリコール酸などが挙げられ、これらを一種単独で含んでも二種以上含んでもよい。
【0039】
本実施形態の一態様においては、リサイクル樹脂成形体が、セルロース系樹脂などの多糖類系樹脂を含むバイオプラスチックを含むのが好適である。デンプン等の食用成分を原料とするバイオマスプラスチックが知られているが、将来の食料不足への懸念から、非食用の植物成分を原料とする多糖類系樹脂、特に木材、わら等を原料とするセルロース系樹脂が注目されている。以下、本実施形態の一態様としてセルロース系樹脂の説明を記載するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0040】
セルロース系樹脂はセルロースのヒドロキシ基がアシル化されたアシル化セルロースであってもよい。セルロースは、木材等に含まれるリグニンやヘミセルロースを、薬剤を用いて除くことで得られる。または、綿はほぼセルロースでできているため、このまま用いることができる。セルロースは、β-1,4グルコースが重合した高分子であるが、ヒドロキシ基に由来する水素結合によって強力な分子間力を持つため熱可塑性がない。また、特殊な溶媒を除き、溶媒溶解性も低い。さらに、親水性基であるヒドロキシ基を多く有するため吸水性が高く、耐水性が低い。このため、セルロース系樹脂は、セルロースのヒドロキシ基の水素原子をアセチル基等の短鎖アシル基で置換してセルロースの分子間力を下げたアシル化セルロースであってもよい。また、アセチル基のような短鎖有機基だけでは熱可塑性や耐水性は不十分である場合等は、短鎖有機基に加えて、より炭素数の多い長鎖有機基をセルロースに導入することが行われる場合もある。導入された長鎖有機基が疎水性の内部可塑剤として機能し、セルロース系樹脂の熱可塑性や耐水性が改良される。成形体は、セルロース系樹脂に所望の添加剤(例えば可塑剤、着色剤等)を加えた樹脂組成物を成形したものであってもよい。本実施形態の一態様において、成形体は、セルロース系樹脂を好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量以上含むのが好ましい。
【0041】
また、本実施形態の一態様は、上記衝撃試験装置を用いてバイオプラスチックを含むリサイクル樹脂成形体を選別する工程を含む、リサイクル方法に関する。
【実施例0042】
以下、具体例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0043】
選別試験条件を決定するための試験サンプルAとして、リサイクル回数が異なるセルロース系樹脂NeCycle(スタンダードタイプ、NECプラットフォームズ社製)の成形体(縦100mm、横100mm、厚み1mmまたは2mmの平板状成形体)を用意した。各試験サンプルについてJIS K7211-2:2006に従い、高速衝撃試験機(島津HYDRO SHOT HITS(島津製作所製))を用いて測定したパンクチャー点での衝撃エネルギー値を面衝撃エネルギー値E(J)とした。各試験サンプルの面衝撃エネルギー値Eを表1に示す。面衝撃エネルギー値Eは、樹脂のリサイクル性と相関性がある。表中、「リサイクル回数」とは、成形体を粉砕後、混練機で再度溶融しペレット化した回数を表す。また、表中、試験サンプルAの表記は、「試験サンプルA(厚み)-(リサイクル回数)」を意味する。
【0044】
比較する試験サンプルX(閾値サンプル)として、劣化が進んでリサイクルに適さない樹脂成形体を(縦100mm、横100mm、厚み1mmまたは2mmの平板状成形体)を用意して、上記試験サンプルと同様に面衝撃エネルギーEを測定した。表中、試験差プルXの表記は、「試験サンプルX(厚み)」を意味する。結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
以下の例においては、図1および図2に示した衝撃試験装置(装置サイズは、高さ:1127mm、幅:580mm、奥行き:500mm)を用いた。ロッド21の移動速度は3.0m/sとし、ストライカ35およびばね33を下記のように選定して測定を行い、成形体の選別ができるかどうか試験を行った。
【0047】
<例1>
ばね1(株式会社アキュレイト製圧縮コイルばね、型番:DC672、材質:SWP-B)および先端が直径20mmの半球形状になるように形成したストライカを装置に設置し、試験サンプルA1-0、A1-5、A1-10、X1について、それぞれ、面衝撃試験を実施した。なお、面衝撃試験に先立ち、本例の面衝撃試験条件にてばね1のばね荷重を予め測定したところ、ばね荷重は270Nであった。ばね荷重の測定は、加圧力計(日本アビオニクス株式会社製デジタル加圧力計、型番:FG-300)を用い、前述した手順に従って行った。また、ばね荷重の測定に際し、先端が直径20mmの半球形状になるように形成したストライカを用いた。各試験サンプルについての面衝撃試験の実施後、下記の基準により成形体の破損状態を判定した(以下の例においても同様)。
【0048】
〇:面衝撃により試験サンプルが破損しなかった(穴が開かなかった)。
×:面衝撃により試験サンプルが破損して穴が開いた。
【0049】
結果を表2に示す。表2に示すとおり、試験サンプルA1-0、A1-5およびA1-10は破損せず、試験サンプルX1は破損したことから、リサイクル樹脂の選別が可能であった。
【0050】
<例2>
ばね1(株式会社アキュレイト製圧縮コイルばね、型番:DC672、材質:SWP-B)および先端が直径5.8mmの半球形状になるようにテーパー状に形成したストライカを装置に設置し、試験サンプルA2-0、A2-5、A2-10、X2を用いた以外は例1と同様にして、面衝撃試験を実施した。結果を表2に示す。
【0051】
表2に示すとおり、試験サンプルA2-0、A2-5およびA2-10は、破損せず、試験サンプルX2は破損したことから、リサイクル樹脂の選別が可能であった。
【0052】
<例3>
ばね2(株式会社アキュレイト製圧縮コイルばね、型番:C266、材質:SUS304WPB)および径20mmのストライカを装置に設置し、試験サンプルA1-0、A1-5、A1-10、X1を用いた以外は例1と同様にして、面衝撃試験を実施した。本例においても、ばね2のばね荷重を例1と同様に測定したところ、ばね荷重は90Nであった。結果を表2に示す。
【0053】
表2に示すとおり、試験サンプルに与える衝撃力が弱すぎるため、いずれの試験サンプルも破損せず、試験サンプルを選別することはできなかった。
【0054】
<例4>
ばね3(株式会社アキュレイト製圧縮コイルばね、型番:P567、材質:SWP-B)および直径5.8mmの半球形状になるように形成したストライカを装置に設置し、試験サンプルA1-0、A1-5、A1-10、X1を用いた以外は例1と同様にして、面衝撃試験を実施した。本例においても、ばね3のばね荷重を例1と同様に測定したところ、ばね荷重は4400Nであった。結果を表2に示す。
【0055】
表2に示すとおり、試験サンプルに与える衝撃力が強すぎるため、いずれの試験サンプルも破損してしまい、試験サンプルを選別することはできなかった。
【0056】
【表2】
【0057】
上記例1および例2のように、ストライカとばね荷重の選定を適切に行うことにより、リサイクル樹脂の選別を簡便に行うことができた。
【0058】
以上、実施形態及び実施例を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態及び実施例に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の範囲内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0059】
上記の実施形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、本出願の開示事項は以下の付記に限定されない。
【0060】
(付記1)
直進移動するロッドを有するリニアアクチュエータと、
前記リニアアクチュエータのロッドに連結され、バイオプラスチックを含むリサイクル樹脂成形体に衝撃力を付与するストライカと、を有し、
前記ストライカは、1つまたは複数の弾性体を介して前記ロッドに連結されている、リサイクル樹脂成形体の衝撃試験装置。
【0061】
(付記2)
前記ロッドに固定された第1部材と、
前記ロッドの移動方向に前記第1部材と間隔を開けて配置され、かつ、前記第1部材との間隔を変更可能に連結された第2部材をさらに有し、
前記ストライカは前記第2部材に固定され、
前記弾性体は、前記第1部材と前記第2部材との間に配置された、前記第1部材と前記第2部材との間隔が小さくなることにより弾性変形可能な部材である、
付記1に記載の衝撃試験装置。
【0062】
(付記3)
前記弾性体がばねである、付記1または2に記載の衝撃試験装置。
【0063】
(付記4)
前記ばねがコイルばねである、付記1~3のいずれか一項に記載の衝撃試験装置。
【0064】
(付記5)
複数の前記弾性体を有する、付記1~4のいずれか一項に記載の衝撃試験装置。
【0065】
(付記6)
前記ばねの荷重が100N~4390Nであり、かつ、ストライカの先端部の直径が3mm~40mmである、付記1~5のいずれか一項に記載の衝撃試験装置。
【0066】
(付記7)
ロッドの移動速度が、1.0m/s~6.0m/sである、付記1~6のいずれか一項に記載の衝撃試験装置。
【0067】
(付記8)
前記バイオプラスチックが、セルロース系樹脂を含む、付記1~7のいずれか一項に記載の衝撃試験装置。
【0068】
(付記9)
前記ストライカおよび弾性体の少なくとも一方が交換可能である、付記1~8のいずれか一項に記載の衝撃試験装置。
【0069】
(付記10)
付記1~9のいずれか一項に記載の衝撃試験装置を用いてバイオプラスチックを含むリサイクル樹脂成形体を選別する工程を含む、バイオプラスチックを含むリサイクル樹脂成形体のリサイクル方法。
【符号の説明】
【0070】
1 衝撃試験装置
10 フレーム
20 リニアアクチュエータ
21 ロッド
30 ストライカアセンブリ
31 第1部材
32 第2部材
33 ばね
34 連結部材
35 ストライカ
36 ストッパ部材
40 試験体固定具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7