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  • 特開-階段構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022014791
(43)【公開日】2022-01-20
(54)【発明の名称】階段構造
(51)【国際特許分類】
   E04F 11/025 20060101AFI20220113BHJP
【FI】
E04F11/025
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020117342
(22)【出願日】2020-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 友規
(72)【発明者】
【氏名】田垣 欣也
(72)【発明者】
【氏名】松下 和輝
(72)【発明者】
【氏名】興津 俊宏
(72)【発明者】
【氏名】神田 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】竹田 勇貴
(72)【発明者】
【氏名】谷本 真一
(72)【発明者】
【氏名】小池 達夫
【テーマコード(参考)】
2E301
【Fターム(参考)】
2E301CC33
2E301CC44
2E301CC47
2E301CD04
2E301CD43
(57)【要約】
【課題】環境温度変化に起因する吊り材の変形を抑制する。
【解決手段】階段構造50は、幅方向の一端側のささら230Aが建物10の梁14に接合された縦材150に固定され、幅方向の他端側のささら230B部が構造躯体から吊られたバックマリオン110に固定された階段200と、階段200の上端部240Uを上階床部210Uに対して上下方向に移動可能とすると共に環境温度の変化に応じて上下方向の間隔が変化する上側離間部260Uと、階段200の下端部240Lを下階床部210Lに対して上下方向に移動可能とすると共に環境温度の変化に応じて上下方向の間隔が変化する下側離間部260Lと、を有する離間機構270と、を備えている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向の一端部が建物の構造躯体に固定され、幅方向の他端部が構造躯体から吊られた吊り材に固定された階段と、
前記階段の上端部を上階床部に対して上下方向に移動可能とすると共に環境温度の変化に応じて上下方向の間隔が変化する上側離間部と、前記階段の下端部を下階床部に対して上下方向に移動可能とすると共に環境温度の変化に応じて上下方向の間隔が変化する下側離間部と、を有する離間機構と、
を備えた階段構造。
【請求項2】
前記吊り材は、前記建物の外壁を構成するカーテンウォールのバックマリオンである、
請求項1記載の階段構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、階段構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、吊り階段構造に関する技術が開示されている。この先行技術では、複数の吊りロッドとこれら複数の吊りロッドの上端部が支持される支持材とこれら複数の吊りロッドの下端部に設けられた固定部材とから成る吊りロッドパネルと、吊りロッドパネルの固定部材に固定される段板と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-26767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
幅方向の一端部が建物の構造躯体に固定された階段が、構造躯体から吊られた吊り材に吊られた吊り階段が知られている。このような吊り階段では、環境温度の変化による吊り材の上下方向の伸縮によって、吊り材に圧縮力が作用し、吊り材が変形する虞がある。
【0005】
本発明は、上記事実を鑑み、環境温度の変化に起因する吊り材の変形を抑制することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上側態様は、幅方向の一端部が建物の構造躯体に固定され、幅方向の他端部が構造躯体から吊られた吊り材に固定された階段と、前記階段の上端部を上階床部に対して上下方向に移動可能とすると共に環境温度の変化に応じて上下方向の間隔が変化する上側離間部と、前記階段の下端部を下階床部に対して上下方向に移動可能とすると共に環境温度の変化に応じて上下方向の間隔が変化する下側離間部と、を有する離間機構と、を備えた階段構造。を備えた階段構造である。
【0007】
第一態様の階段構造では、環境温度の変化により吊り材が上下方向に伸縮しても、離間機構の上側離間部及び下側離間部の間隔が変化することで、吊り材に作用する圧縮力が抑制される。したがって、環境温度変化に起因する吊り材の変形が抑制される。
【0008】
第二態様は、前記吊り材は、前記建物の外壁を構成するカーテンウォールのバックマリオンである、第一態様に記載の階段構造である。
【0009】
第二態様の階段構造では、階段の幅方向の他端部は、カーテンウォールのバックマリオンに固定されている。よって、バックマリオンとは別に階段を吊る吊り材を別途設ける場合と比較し、部材が削減される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、環境温度変化に起因する吊り材の変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態の階段構造を示す斜視図である。
図2】階段構造の要部のY方向に沿った断面図である。
図3】階段構造の要部の伏図である。
図4】階段構造の離間機構を説明するための正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態>
本発明の一実施形態の階段構造が適用された吊り階段について説明する。なお、水平方向の直交する二方向をX方向及びY方向とし、それぞれ矢印X及び矢印Yで示す。また、X方向及びY方向と直交する上下方向をZ方向とし、矢印Zで示す。
【0013】
[構造]
まず、図1に示す本実施形態の階段構造50が適用された建物10の構造について説明する。
【0014】
建物10は、正面部分の外壁がカーテンウォール100で構成されている。なお、カーテンウォール100を正面視した場合の左右方向がX方向であり、カーテンウォール100の壁面の面外方向がY方向である。また、X方向を「横方向」と記す場合がある。
【0015】
別の観点から説明すると、本実施形態の建物10は、構造躯体である柱と梁とが剛接合されたラーメン構造の建物本体12とカーテンウォール100とで構成されている(図2及び図3も参照)。
【0016】
本実施形態のカーテンウォール100は、方立工法で施工され、吊り材の一例としての金属製のバックマリオン110と、金属製の無目112と、パネル材の一例としてのガラスパネル材114と、横材の一例としての金属製の耐風梁120と、を含んで構成されている。
【0017】
バックマリオン110は、X方向に沿って間隔をあけて設けられている(図3及び図4も参照)。各バックマリオン110は、最上階から複数階に跨って、本実施形態では、最上階から二階まで吊られている。
【0018】
図2及び図4に示すように、本実施形態のバックマリオン110は、建物10(建物本体12)における図示されていない最上階部分の柱から跳ね出した梁20の先端部に上端部110Aが固定されて吊られている。また、各バックマリオン110は、建物10(建物本体12)の図示されていない梁又はスラブ等に取付金物で上下方向移動可能に接続されている。
【0019】
図1に示すように、無目112は、X方向に沿って配置されると共に上下方向に間隔をあけて設けられ、バックマリオン110と接合されている。つまり、バックマリオン110と無目112とで格子が形成されている。そして、バックマリオン110と無目112とで形成された格子に、ガラスパネル材114が接合されている(図2及び図3も参照)。なお、ガラスパネル材114以外のパネル材が接合されていてもよい。
【0020】
また、無目112と無目112との間には、X方向に沿って配置された耐風梁120が設けられ、バックマリオン110に接合されている(図2も参照)。
【0021】
カーテンウォール100の室内側(建物本体12側)には、上下方向に沿って配置された棒状の縦材150がY方向に間隔をあけて設けられている。縦材150は、X方向に間隔をあけて設けられている。なお、縦材150のX方向の間隔は、バックマリオン110のX方向の間隔よりも狭い。よって、Y方向から見た正面視では、バックマリオン110とバックマリオン110との間に、複数の縦材150が配置されている。
【0022】
図2に示すように、縦材150は、各階の上下の梁14に、接合部材152によって接合されている。
【0023】
図1及び図2に示すように、カーテンウォール100の室内側(建物本体12側)には、階段200が設けられている。本実施形態の階段200は、構造体部分が鉄骨で構成された鉄骨階段であるが、これに限定されるものではない。なお、図2では、判りやすくするため階段200は、後述する段板222の端面のみを図示している。
【0024】
階段200は、段部220と、段部220の幅方向両側に設けられたささら230A、230Bと、を有して構成されている。段部220は、段板222及び蹴込み板224(図1参照)を有して構成されている。なお、階段200の幅方向は、Y方向に沿っており、幅方向の一端側を室内側(建物本体12側)とし、他端側をカーテンウォール100側とする。
【0025】
階段200における一端側のささら230Aは縦材150に固定部材154によって固定されている。つまり、階段200のささら230Aは、縦材150を介して、構造躯体の一例としての梁14に固定されている。また、階段200における他端側のささら230Bは、カーテンウォール100のバックマリオン110に固定部材156によって固定されている。つまり、階段200のささら230Bは、構造躯体の一例としての最上階の梁20から吊られているバックマリオン110に固定されている。
【0026】
図1及び図3に示すように、階段200は、折り返しのない直階段であるが、途中に踊り場205が設けられている。図1図3及び図4に示すように、階段200は、上階の上階床部210Uと下階の下階床部210Lとの間を上り下りする際に使用される。また、上階床部210U及び下階床部210Lは、建物10の梁、柱及びスラブ等の構造躯体に接合された支持部材212(図4参照)によって支持されている。
【0027】
図4に示すように、階段200には、離間機構270が設けられている。離間機構270は、階段200の上端部240Uと上階床部210U(図1及び図3も参照)との間に形成された上下方向に間隔が開いた上側離間部260Uと、階段200の下端部240Lと下階床部210L(図1及び図3も参照)との間に形成された上下方向に間隔が開いた下側離間部260Lと、を有している。なお、上側の間隔を上側間隔SUとし、下側の間隔を下側間隔SLとする。
【0028】
このように、本実施形態の階段構造50は、階段200の上端部240U及び下端部240Lと、上階床部210U及び下階床部210Lと、の間に設けられた上側離間部260U及び下側離間部260Lによって、階段200の上端部240U及び下端部240Lが、上階床部210U及び下階床部210Lに対して、上下方向に相対移動可能になっている。
【0029】
[作用及び効果]
次に本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0030】
本実施形態の階段200は、一端側のささら230Aが建物10(建物本体12)の梁14に接合された縦材150に固定されていると共に他端側のささら230Bがカーテンウォール100のバックマリオン110に固定されている。また、上階床部210U及び下階床部210Lは、建物10の支持部材212によって支持されている。
【0031】
そして、階段200の上端部240Uと上階床部210U(図1及び図3も参照)との間には上下方向に間隔SUが開いた上側離間部260Uが形成され、階段200の下端部240Lと下階床部210L(図1及び図3も参照)との間には上下方向に間隔SLが開いた下側離間部260Lが形成されている。
【0032】
バックマリオン110は、環境温度変化によって伸縮が生じるため、階段200の上端部240U及び下端部240Lの鉛直方向の位置が変化する。一方、上階床部210U及び下階床部210Lは、建物10の構造躯体に接続された支持部材212に支持されているので、鉛直方向の位置は殆ど変化しない。
【0033】
しかし、バックマリオン110が環境温度変化によって伸縮し、階段200の上端部240U及び下端部240Lの鉛直方向の位置が変化しても、離間機構270の上側離間部260U及び下側離間部260Lの上側間隔SU及び下側間隔SLが変化し、バックマリオン110に作用する圧縮力が抑制される。したがって、バックマリオン110に作用する圧縮力による変形が抑制される。
【0034】
また、本実施形態のバックマリオン110は、カーテンウォール100の方立としての機能と、階段200が固定される吊り材としての機能と、の両方の機能を有している。よって、バックマリオン110とは別に階段200を吊る吊り材を別途設ける場合と比較し、部材が削減される。
【0035】
(環境温度変化と離間部の間隔との関係についての詳細)
次に、本実施形態における環境温度変化と上側離間部260U及び下側離間部260Lの上側間隔SU及び下側間隔SLとの関係について詳しく説明する。
【0036】
環境温度が高くなってバックマリオン110が伸長すると、階段200の上端部240U及び下端部240Lは下方に移動する。よって、上側離間部260Uの上側間隔SUは広くなり、下側離間部260Lの下側間隔SLは狭くなる。
【0037】
逆に環境温度が低くなってバックマリオン110が収縮すると、階段200の上端部240U及び下端部240Lは上方に移動する。よって、上側離間部260Uの上側間隔SUは狭くなり、下側離間部260Lの下側間隔SLは広くなる。
【0038】
このように、本実施形態では、環境温度が高くなると、例えば、気温が上昇する朝から昼にかけては、或いは冬から夏にかけては、上側離間部260Uの上側間隔SUは広くなり、下側離間部260Lの下側間隔SLは狭くなる。逆に環境温度が低くなると、例えば、気温が低下する昼から夜にかけては、或いは夏から冬にかけては、上側離間部260Uの上側間隔SUは狭くなり、下側離間部260Lの下側間隔SLは広くなる。
【0039】
別の観点から説明すると、上側離間部260Uの上側間隔SUは、環境温度が高い場合は、低い場合と比べて広くなる。逆に下側離間部260Lの下側間隔SLは、環境温度が高い場合は、低い場合と比べて狭くなる。
【0040】
<その他>
尚、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0041】
例えば、上記実施形態では、階段200の他方側のささら230Bは、バックマリオン110に固定されていたが、これに限定されない。階段200の他方側のささら230Bは、バックマリオン110とは別に設けた吊り材に固定されていてもよい。
【0042】
また、例えば、建物10の外壁はカーテンウォール100で構成され、階段200は、カーテンウォール100の室内側に設けられていたが、これに限定されない。例えば、外壁が耐力壁で構成され、耐力壁の外側に吊り材で吊られた階段が設けられていてもよい。なお、吊り材は、建物の構造躯体から吊られており、階段が固定され、階段を支持する機能を有していればよい。
【0043】
更に、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得る。複数の実施形態及び変形例等は、適宜、組み合わされて実施可能である。
【符号の説明】
【0044】
10 建物
14 梁(構造躯体の一例)
20 梁(構造躯体の一例)
50 階段構造
100 カーテンウォール
110 バックマリオン(吊り材の一例)
200 階段
210U 上階床部
210L 下階床部
230A ささら(幅方向の一端部の一例)
230B ささら(幅方向の他端部の一例)
240U 上端部
240L 下端部
260U 上側離間部
260L 下側離間部
270 離間機構
SU 上側間隔
SL 下側間隔
図1
図2
図3
図4