IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社吉野機械製作所の特許一覧

特開2022-147925プレス曲げ加工管製造方法及びプレス曲げ加工管
<>
  • 特開-プレス曲げ加工管製造方法及びプレス曲げ加工管 図1
  • 特開-プレス曲げ加工管製造方法及びプレス曲げ加工管 図2
  • 特開-プレス曲げ加工管製造方法及びプレス曲げ加工管 図3
  • 特開-プレス曲げ加工管製造方法及びプレス曲げ加工管 図4
  • 特開-プレス曲げ加工管製造方法及びプレス曲げ加工管 図5
  • 特開-プレス曲げ加工管製造方法及びプレス曲げ加工管 図6
  • 特開-プレス曲げ加工管製造方法及びプレス曲げ加工管 図7
  • 特開-プレス曲げ加工管製造方法及びプレス曲げ加工管 図8
  • 特開-プレス曲げ加工管製造方法及びプレス曲げ加工管 図9
  • 特開-プレス曲げ加工管製造方法及びプレス曲げ加工管 図10
  • 特開-プレス曲げ加工管製造方法及びプレス曲げ加工管 図11
  • 特開-プレス曲げ加工管製造方法及びプレス曲げ加工管 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147925
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】プレス曲げ加工管製造方法及びプレス曲げ加工管
(51)【国際特許分類】
   B21D 5/02 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
B21D5/02 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021049394
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】500419218
【氏名又は名称】株式会社吉野機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100125818
【弁理士】
【氏名又は名称】立原 聡
(72)【発明者】
【氏名】竹本 武司
(72)【発明者】
【氏名】岡部 太一
(72)【発明者】
【氏名】吉野 靖将
【テーマコード(参考)】
4E063
【Fターム(参考)】
4E063AA01
4E063BA07
4E063CA08
4E063DA13
4E063MA04
(57)【要約】
【課題】溶接を必要としないプレス曲げ加工管製造方法及びプレス曲げ加工管、ならびに、溶接を必要とせず、膨らみを抑制することができるプレス曲げ加工管製造方法及びプレス曲げ加工管を提供する。
【解決手段】逆曲げ加工帯30-8に沿って板材20に凹曲げをする逆曲げ加工工程(第7の工程P7)により、逆曲げ加工帯30-8は、第1の表面23から見て90度より大きい角度をなす2つの領域の間に隣接して配置される。角部加工工程のうちの最後の工程において、下型16と上型15との一方が、折り返し部41と突出部42との間から挿入される。プレス曲げ加工管製造方法は、板材20を弾性変形させて折り返し部41に突出部42を挿入するとともに、第2の連結部加工帯30-6と第3の連結部加工帯30-7とを近づけることにより、板材20を筒状に閉じる閉鎖工程を含む。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属の板材からプレス曲げ加工管を製造するプレス曲げ加工管製造方法であって、
前記板材が、第1の端縁と第2の端縁とをもち、
前記板材が、前記第1の端縁から前記第2の端縁まで広がった第1の表面をもち、
前記板材が、前記第1の表面の反対側において前記第1の端縁から前記第2の端縁まで広がった第2の表面をもち、
前記プレス曲げ加工管製造方法が、前記第1の端縁と前記第2の端縁との間に位置する互いに平行な複数の加工帯に沿って前記板材に曲げを実施することを含み、
前記曲げが、1つ以上の下型のうちの1つと1つ以上の上型のうちの1つとの組み合わせにより前記板材を挟んで前記板材を曲げるプレス加工により実施され、
前記曲げが、前記第1の表面から見て凸状に曲げる凸曲げと、前記第1の表面から見て凹状に曲げる凹曲げとを含み、
前記加工帯が、
前記第1の端縁と前記第2の端縁との間に位置する第1の連結部加工帯と、
前記第1の連結部加工帯と前記第2の端縁との間に位置する第2の連結部加工帯と、
前記第2の連結部加工帯と前記第2の端縁との間に位置する第3の連結部加工帯と、
前記第2の連結部加工帯と前記第3の連結部加工帯との間に位置する3つ以上の角部加工帯と
を含み、
前記プレス曲げ加工管製造方法が、
前記第1の連結部加工帯に沿って前記板材に前記凹曲げをする第1の連結部加工工程と、
前記第2の連結部加工帯に沿って前記板材に前記凸曲げをする第2の連結部加工工程と、
前記第3の連結部加工帯に沿って前記板材に前記凸曲げをする第3の連結部加工工程と、
各前記角部加工帯に沿って前記板材に前記凸曲げをする、前記角部加工帯の個数回の角部加工工程と、
を含み、
前記第1の連結部加工工程と前記第2の連結部加工工程とにより、前記プレス曲げ加工管の内部に収容されるための折り返し部が、前記第1の端縁から前記第2の連結部加工帯までの部分に含められ、
前記第3の連結部加工工程により、前記プレス曲げ加工管の内部に収容されて前記折り返し部と連結するための突出部が、前記第2の端縁から前記第3の連結部加工帯までの部分に含められ、
前記角部加工工程のうちの1つの工程が、前記第1の連結部加工工程と、前記第2の連結部加工工程と、前記第3の連結部加工工程と、他の前記角部加工工程とが全て終了した後に実行され、
前記角部加工工程のうちの前記1つの工程において、前記下型と前記上型との一方が、前記折り返し部と前記突出部との間から挿入され、
前記プレス曲げ加工管製造方法が、更に、前記角部加工工程のうちの前記1つの工程の後に、前記板材を弾性変形させて前記折り返し部に前記突出部を挿入するとともに、前記第2の連結部加工帯と前記第3の連結部加工帯とを近づけることにより、前記板材を筒状に閉じる閉鎖工程を含む、
プレス曲げ加工管製造方法。
【請求項2】
前記加工帯が、前記第2の連結部加工帯と前記第3の連結部加工帯との間に位置する逆曲げ加工帯を含み、
前記プレス曲げ加工管製造方法が、前記逆曲げ加工帯に沿って前記板材に前記凹曲げをする逆曲げ加工工程を含み、
前記逆曲げ加工工程により、前記逆曲げ加工帯が、前記第1の表面から見て90度より大きい角度をなす2つの領域の間に隣接して配置され、
前記角部加工工程のうちの前記1つの工程が、前記第1の連結部加工工程と、前記第2の連結部加工工程と、前記第3の連結部加工工程と、他の前記角部加工工程と、前記逆曲げ加工工程とが全て終了した後に実行される、
請求項1に記載のプレス曲げ加工管製造方法。
【請求項3】
前記3つ以上の角部加工帯が、
前記第2の連結部加工帯と前記第3の連結部加工帯との間に位置する第1の角部加工帯と、
前記第1の角部加工帯と前記第3の連結部加工帯との間に位置する第2の角部加工帯と、
前記第2の角部加工帯と前記第3の連結部加工帯との間に位置する第3の角部加工帯と、
前記第3の角部加工帯と前記第3の連結部加工帯との間に位置する第4の角部加工帯と、
を含み、
前記プレス曲げ加工管製造方法が、
前記第1の角部加工帯に沿って前記板材に前記凸曲げをする第1の角部加工工程と、
前記第2の角部加工帯に沿って前記板材に前記凸曲げをする第2の角部加工工程と、
前記第3の角部加工帯に沿って前記板材に前記凸曲げをする第3の角部加工工程と、
前記第4の角部加工帯に沿って前記板材に前記凸曲げをする第4の角部加工工程と、
を含み、
前記第1の角部加工工程により、前記第1の角部加工帯が、前記第2の表面から見て互いに90度をなす2つの領域の間に隣接して配置され、
前記第2の角部加工工程により、前記第2の角部加工帯が、前記第2の表面から見て互いに90度をなす2つの領域の間に隣接して配置され、
前記第3の角部加工工程により、前記第3の角部加工帯が、前記第2の表面から見て互いに90度をなす2つの領域の間に隣接して配置され、
前記第4の角部加工工程により、前記第4の角部加工帯が、前記第2の表面から見て互いに90度をなす2つの領域の間に隣接して配置され、
前記逆曲げ加工工程により、前記逆曲げ加工帯が、前記第1の表面から見て90度より大きい角度をなす2つの領域の間に隣接して配置され、
前記角部加工工程のうちの前記1つの工程が、前記第2の角部加工工程と前記第3の角部加工工程とのうちの一方である、
請求項2に記載のプレス曲げ加工管製造方法。
【請求項4】
前記第1の角部加工帯と前記第2の連結部加工帯との間の距離が、前記第3の連結部加工帯と前記第4の角部加工帯との間の距離より長く、
前記逆曲げ加工帯が、前記第2の角部加工帯と前記第3の角部加工帯との間に位置し、
前記第2の角部加工帯と前記逆曲げ加工帯との間の距離が、前記逆曲げ加工帯と前記第3の角部加工帯との間の距離より短く、
前記第1の連結部加工工程、前記第2の連結部加工工程、前記第3の連結部加工工程、前記第1の角部加工工程、前記第3の角部加工工程、前記第4の角部加工工程、及び前記逆曲げ加工工程が全て終了した後に前記第2の角部加工工程が実行される、
請求項3に記載のプレス曲げ加工管製造方法。
【請求項5】
前記第1の角部加工帯と前記第2の連結部加工帯との間の距離が、前記第3の連結部加工帯と前記第4の角部加工帯との間の距離より短く、
前記逆曲げ加工帯が、前記第2の角部加工帯と前記第3の角部加工帯との間に位置し、
前記第2の角部加工帯と前記逆曲げ加工帯との間の距離が、前記逆曲げ加工帯と前記第3の角部加工帯との間の距離より長く、
前記第1の連結部加工工程、前記第2の連結部加工工程、前記第3の連結部加工工程、前記第1の角部加工工程、前記第2の角部加工工程、前記第4の角部加工工程、及び前記逆曲げ加工工程が全て終了した後に前記第3の角部加工工程が実行される、
請求項3に記載のプレス曲げ加工管製造方法。
【請求項6】
前記角部加工工程のうちの前記1つの工程の終了時において、挿入された前記下型又は前記上型が前記板材から離隔しているように、前記逆曲げ加工帯に沿った前記凹曲げの角度が設定される、
請求項2から請求項4のいずれか一項に記載のプレス曲げ加工管製造方法。
【請求項7】
前記第2の連結部加工工程、前記第3の連結部加工工程、及び各前記角部加工工程において、前記下型がメス型のダイであり、前記上型がオス型のパンチであり、
前記第1の連結部加工工程、及び前記逆曲げ加工工程において、前記下型がオス型のパンチであり、前記上型がメス型のダイである、
請求項2から請求項5のいずれか一項に記載のプレス曲げ加工管製造方法。
【請求項8】
前記第2の連結部加工工程、前記第3の連結部加工工程、及び各前記角部加工工程において、前記下型がオス型のパンチであり、前記上型がメス型のダイであり、
前記第1の連結部加工工程、及び前記逆曲げ加工工程において、前記下型がメス型のダイであり、前記上型がオス型のパンチである、
請求項2から請求項5のいずれか一項に記載のプレス曲げ加工管製造方法。
【請求項9】
金属の板材から製造されたプレス曲げ加工管であって、
前記板材が、第1の端縁と第2の端縁とをもち、
前記板材が、前記第1の端縁側に位置する折り返し部と、前記第2の端縁側に位置する突出部とを含み、
前記板材が、前記板材に沿った位置関係において前記第1の端縁と前記第2の端縁との間に、曲げ加工された互いに平行な複数の加工帯を含み、
前記加工帯が、
前記プレス曲げ加工管の内部に位置する曲げられた第1の連結部加工帯と、
少なくとも部分的に前記プレス曲げ加工管の外部に位置する曲げられた第2の連結部加工帯と、
少なくとも部分的に前記プレス曲げ加工管の外部に位置する曲げられた第3の連結部加工帯と、
を含み、
前記第2の連結部加工帯と前記第3の連結部加工帯とが隣接していることにより、前記板材が部分的に管状に形成されており、
前記折り返し部が、
前記プレス曲げ加工管の内部において前記第1の端縁と前記第1の連結部加工帯とをつなぐ第1の領域と、
前記プレス曲げ加工管の内部において前記第1の連結部加工帯と前記第2の連結部加工帯とをつなぐ第2の領域と、
を含み、
前記第1の領域と前記第2の領域との間に隙間が存在し、
前記突出部が、前記第3の連結部加工帯と前記第2の端縁とをつなぐように延びており、
前記プレス曲げ加工管の内部において前記突出部が前記隙間内に部分的に位置していることにより、前記第2の連結部加工帯と前記第3の連結部加工帯との間隔を広げる方向への動きが抑制されるように構成されており、
前記加工帯が、前記板材のうち前記プレス曲げ加工管の外部に露出した部分に、3つ以上の角部加工帯を含み、
前記プレス曲げ加工管の外部から見て各前記角部加工帯が凸状に曲げられた形状をもつ、
プレス曲げ加工管。
【請求項10】
前記加工帯が、前記板材のうち前記プレス曲げ加工管の外部に露出した部分に、逆曲げ加工帯を含み、
前記プレス曲げ加工管の外部から見て前記逆曲げ加工帯が凹状に曲げられた形状をもつ、
請求項9に記載のプレス曲げ加工管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス曲げ加工管製造方法及びプレス曲げ加工管に関する。
【背景技術】
【0002】
丸パイプや角パイプに代表される市販の金属管が建築資材や構造物フレームなどに広く用いられている。現場で組み立てて使用される金属管は、組立用のボルト孔などを適宜のピッチで管長方向に形成するために、現場で組み立てる前に予め工場において前加工される場合が多々ある。しかし、そうしたボルト孔などを出来合いの市販の金属管に孔開け加工することは厄介で面倒である。そのため、市販の金属管に代えて平板を用意し、所要の孔開け加工などを施した後、ロール成形又はプレス成形などによる曲げ成形を行って角パイプなどに仕上げる手法が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-92212号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、平板を曲げ成形して管にする場合、管長方向に延びた長い合わせ目の端面同士を溶接してシームレスパイプ状に接合する必要がある(例えば特許文献1参照)。しかし、用いる平板がカラー鋼板の場合、合わせ目を溶接すると熱でカラー表面が焦げて甚だ美観や品質を損ね、また時には管体が熱変形してしまう場合がある。溶接で焦げた部分を塗装などして修復し、あるいは変形を矯正などすればそれだけ手間や時間の作業コストがかかり、管製品コストに反映する不都合がある。
【0005】
サイズなどの仕様が規定された市販の金属管を用いる場合に比べると、平板に所要の前加工を施してから角パイプなどに成形する手法は、合わせ面の接合における前述の不具合を解消できれば、使い勝手や自由度が格段に高まる利点がある。
【0006】
本発明者らは上記利点に着目し、上型と下型とにより板材を上下から挟んで曲げるプレス加工により、板材からプレス曲げ加工管を製造する方法を検討した。しかしながら、プレス曲げ加工管の断面を見たときの四隅を順に90度に曲げるだけでは、最後の曲げ工程を行ったときに、プレス曲げ加工管内部に挿入された上型又は下型を板材の縁部が強く挟む状態になる。その結果、最後に曲げた箇所が鈍角となるので、最終的に板材の縁部を近づけたときに、プレス曲げ加工管の1つ以上の面が外に膨らんで品質を損ない易い。
【0007】
本発明の目的のうちの1つは、溶接を必要としないプレス曲げ加工管製造方法及びプレス曲げ加工管を提供することである。本発明の目的のうちの1つは、溶接を必要とせず、膨らみを抑制することができるプレス曲げ加工管製造方法及びプレス曲げ加工管を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様のプレス曲げ加工管製造方法は、金属の板材からプレス曲げ加工管を製造するプレス曲げ加工管製造方法であって、板材が、第1の端縁と第2の端縁とをもち、板材が、第1の端縁から第2の端縁まで広がった第1の表面をもち、板材が、第1の表面の反対側において第1の端縁から第2の端縁まで広がった第2の表面をもち、プレス曲げ加工管製造方法が、第1の端縁と第2の端縁との間に位置する互いに平行な複数の加工帯に沿って板材に曲げを実施することを含み、曲げが、1つ以上の下型のうちの1つと1つ以上の上型のうちの1つとの組み合わせにより板材を挟んで板材を曲げるプレス加工により実施され、曲げが、第1の表面から見て凸状に曲げる凸曲げと、第1の表面から見て凹状に曲げる凹曲げとを含み、加工帯が、第1の端縁と第2の端縁との間に位置する第1の連結部加工帯と、第1の連結部加工帯と第2の端縁との間に位置する第2の連結部加工帯と、第2の連結部加工帯と第2の端縁との間に位置する第3の連結部加工帯と、第2の連結部加工帯と第3の連結部加工帯との間に位置する3つ以上の角部加工帯とを含み、プレス曲げ加工管製造方法が、第1の連結部加工帯に沿って板材に凹曲げをする第1の連結部加工工程と、第2の連結部加工帯に沿って板材に凸曲げをする第2の連結部加工工程と、第3の連結部加工帯に沿って板材に凸曲げをする第3の連結部加工工程と、各角部加工帯に沿って板材に凸曲げをする、角部加工帯の個数回の角部加工工程と、を含み、第1の連結部加工工程と第2の連結部加工工程とにより、プレス曲げ加工管の内部に収容されるための折り返し部が、第1の端縁から第2の連結部加工帯までの部分に含められ、第3の連結部加工工程により、プレス曲げ加工管の内部に収容されて折り返し部と連結するための突出部が、第2の端縁から第3の連結部加工帯までの部分に含められ、角部加工工程のうちの1つの工程が、第1の連結部加工工程と、第2の連結部加工工程と、第3の連結部加工工程と、他の角部加工工程とが全て終了した後に実行され、角部加工工程のうちの上記1つの工程において、下型と上型との一方が、折り返し部と突出部との間から挿入され、プレス曲げ加工管製造方法が、更に、角部加工工程のうちの上記1つの工程の後に、板材を弾性変形させて折り返し部に突出部を挿入するとともに、第2の連結部加工帯と第3の連結部加工帯とを近づけることにより、板材を筒状に閉じる閉鎖工程を含む、プレス曲げ加工管製造方法である。
【0009】
第1の態様によれば、折り返し部に突出部を挿入することにより板材を筒状に閉じるので、溶接によらなくてもプレス曲げ加工管を製造することができる。
【0010】
第2の態様のプレス曲げ加工管製造方法は、加工帯が、第2の連結部加工帯と第3の連結部加工帯との間に位置する逆曲げ加工帯を含み、プレス曲げ加工管製造方法が、逆曲げ加工帯に沿って板材に凹曲げをする逆曲げ加工工程を含み、逆曲げ加工工程により、逆曲げ加工帯が、第1の表面から見て90度より大きい角度をなす2つの領域の間に隣接して配置され、角部加工工程のうちの上記1つの工程が、第1の連結部加工工程と、第2の連結部加工工程と、第3の連結部加工工程と、他の角部加工工程と、逆曲げ加工工程とが全て終了した後に実行される、第1の態様に記載のプレス曲げ加工管製造方法である。
【0011】
第2の態様によれば、逆曲げ加工帯に凹曲げが実施されるので、逆曲げ加工帯に凹曲げを実施しない場合に比べた場合、3回以上の角部加工工程のうちの最後の1つの角部加工工程において、挿入された下型又は上型が板材に強く接触することを防ぐことができ、結果として意図しない板材の膨らみを抑制することができる。
【0012】
第3の態様のプレス曲げ加工管製造方法は、3つ以上の角部加工帯が、第2の連結部加工帯と第3の連結部加工帯との間に位置する第1の角部加工帯と、第1の角部加工帯と第3の連結部加工帯との間に位置する第2の角部加工帯と、第2の角部加工帯と第3の連結部加工帯との間に位置する第3の角部加工帯と、第3の角部加工帯と第3の連結部加工帯との間に位置する第4の角部加工帯と、を含み、プレス曲げ加工管製造方法が、第1の角部加工帯に沿って板材に凸曲げをする第1の角部加工工程と、第2の角部加工帯に沿って板材に凸曲げをする第2の角部加工工程と、第3の角部加工帯に沿って板材に凸曲げをする第3の角部加工工程と、第4の角部加工帯に沿って板材に凸曲げをする第4の角部加工工程と、を含み、第1の角部加工工程により、第1の角部加工帯が、第2の表面から見て互いに90度をなす2つの領域の間に隣接して配置され、第2の角部加工工程により、第2の角部加工帯が、第2の表面から見て互いに90度をなす2つの領域の間に隣接して配置され、第3の角部加工工程により、第3の角部加工帯が、第2の表面から見て互いに90度をなす2つの領域の間に隣接して配置され、第4の角部加工工程により、第4の角部加工帯が、第2の表面から見て互いに90度をなす2つの領域の間に隣接して配置され、逆曲げ加工工程により、逆曲げ加工帯が、第1の表面から見て90度より大きい角度をなす2つの領域の間に隣接して配置され、角部加工工程のうちの上記1つの工程が、第2の角部加工工程と第3の角部加工工程とのうちの一方である、第2の態様に記載のプレス曲げ加工管製造方法である。
【0013】
第3の態様によれば、逆曲げ加工帯に凹曲げが実施されるので、逆曲げ加工帯に凹曲げを実施しない場合に比べた場合、角部加工工程のうちの最後に行われる第2の角部加工工程又は第3の角部加工工程において、挿入された下型又は上型が板材に強く接触することを防ぐことができ、結果として意図しない板材の膨らみを抑制することができる。
【0014】
第4の態様のプレス曲げ加工管製造方法は、第1の角部加工帯と第2の連結部加工帯との間の距離が、第3の連結部加工帯と第4の角部加工帯との間の距離より長く、逆曲げ加工帯が、第2の角部加工帯と第3の角部加工帯との間に位置し、第2の角部加工帯と逆曲げ加工帯との間の距離が、逆曲げ加工帯と第3の角部加工帯との間の距離より短く、第1の連結部加工工程、第2の連結部加工工程、第3の連結部加工工程、第1の角部加工工程、第3の角部加工工程、第4の角部加工工程、及び逆曲げ加工工程が全て終了した後に第2の角部加工工程が実行される、第3の態様に記載のプレス曲げ加工管製造方法である。
【0015】
第4の態様によれば、第2の角部加工帯と逆曲げ加工帯との間の距離が、逆曲げ加工帯と第3の角部加工帯との間の距離より長い場合と比べたとき、逆曲げ加工帯の両側に隣接した2つの領域のなす角度を同じにしても、第3の連結部加工帯を第2の連結部加工帯から遠ざけることができ、結果として折り返し部と突出部との間の空間を大きく開けて、板材と上型又は下型との強い力による接触を防ぎやすい。
【0016】
第5の態様のプレス曲げ加工管製造方法は、第1の角部加工帯と第2の連結部加工帯との間の距離が、第3の連結部加工帯と第4の角部加工帯との間の距離より短く、逆曲げ加工帯が、第2の角部加工帯と第3の角部加工帯との間に位置し、第2の角部加工帯と逆曲げ加工帯との間の距離が、逆曲げ加工帯と第3の角部加工帯との間の距離より長く、第1の連結部加工工程、第2の連結部加工工程、第3の連結部加工工程、第1の角部加工工程、第2の角部加工工程、第4の角部加工工程、及び逆曲げ加工工程が全て終了した後に第3の角部加工工程が実行される、第3の態様に記載のプレス曲げ加工管製造方法である。
【0017】
第5の態様によれば、第2の角部加工帯と逆曲げ加工帯との間の距離が、逆曲げ加工帯と第3の角部加工帯との間の距離より短い場合と比べたとき、逆曲げ加工帯の両側に隣接した2つの領域のなす角度を同じにしても、第3の連結部加工帯を第2の連結部加工帯から遠ざけることができ、結果として折り返し部と突出部との間の空間を大きく開けて、板材と上型又は下型との強い力による接触を防ぎやすい。
【0018】
第6の態様のプレス曲げ加工管製造方法は、角部加工工程のうちの上記1つの工程の終了時において、挿入された下型又は上型が板材から離隔しているように、逆曲げ加工帯に沿った凹曲げの角度が設定される、第2の態様から第4の態様のいずれか一項に記載のプレス曲げ加工管製造方法である。
【0019】
第6の態様によれば、角部加工工程のうちの上記1つの工程の終了時において、挿入された下型又は上型が板材から離隔しているので、板材と上型又は下型との強い力による接触を防ぎやすい。
【0020】
第7の態様のプレス曲げ加工管製造方法は、第2の連結部加工工程、第3の連結部加工工程、及び各角部加工工程において、下型がメス型のダイであり、上型がオス型のパンチであり、第1の連結部加工工程、及び逆曲げ加工工程において、下型がオス型のパンチであり、上型がメス型のダイである、第2の態様から第5の態様のいずれか一項に記載のプレス曲げ加工管製造方法である。
【0021】
第7の態様によれば、第1の連結部加工工程、第2の連結部加工工程、第3の連結部加工工程、各角部加工工程、及び逆曲げ加工工程の全体を通して、第1の表面と第2の表面との上下の入れ替えを無くし、作業を簡単にすることができる。
【0022】
第8の態様のプレス曲げ加工管製造方法は、第2の連結部加工工程、第3の連結部加工工程、及び各角部加工工程において、下型がオス型のパンチであり、上型がメス型のダイであり、第1の連結部加工工程、及び逆曲げ加工工程において、下型がメス型のダイであり、上型がオス型のパンチである、第2の態様から第5の態様のいずれか一項に記載のプレス曲げ加工管製造方法である。
【0023】
第8の態様によれば、第1の連結部加工工程、第2の連結部加工工程、第3の連結部加工工程、各角部加工工程、及び逆曲げ加工工程の全体を通して、第1の表面と第2の表面との上下の入れ替えを無くし、作業を簡単にすることができる。
【0024】
第9の態様のプレス曲げ加工管は、金属の板材から製造されたプレス曲げ加工管であって、板材が、第1の端縁と第2の端縁とをもち、板材が、第1の端縁側に位置する折り返し部と、第2の端縁側に位置する突出部とを含み、板材が、板材に沿った位置関係において第1の端縁と第2の端縁との間に、曲げ加工された互いに平行な複数の加工帯を含み、加工帯が、プレス曲げ加工管の内部に位置する曲げられた第1の連結部加工帯と、少なくとも部分的にプレス曲げ加工管の外部に位置する曲げられた第2の連結部加工帯と、少なくとも部分的にプレス曲げ加工管の外部に位置する曲げられた第3の連結部加工帯と、を含み、第2の連結部加工帯と第3の連結部加工帯とが隣接していることにより、板材が部分的に管状に形成されており、折り返し部が、プレス曲げ加工管の内部において第1の端縁と第1の連結部加工帯とをつなぐ第1の領域と、プレス曲げ加工管の内部において第1の連結部加工帯と第2の連結部加工帯とをつなぐ第2の領域と、を含み、第1の領域と第2の領域との間に隙間が存在し、突出部が、第3の連結部加工帯と第2の端縁とをつなぐように延びており、プレス曲げ加工管の内部において突出部が隙間内に部分的に位置していることにより、第2の連結部加工帯と第3の連結部加工帯との間隔を広げる方向への動きが抑制されるように構成されており、加工帯が、板材のうちプレス曲げ加工管の外部に露出した部分に、3つ以上の角部加工帯を含み、プレス曲げ加工管の外部から見て各角部加工帯が凸状に曲げられた形状をもつ、プレス曲げ加工管である。
【0025】
第9の態様によれば、プレス曲げ加工管が加工時に折り返し部に突出部を挿入することにより板材を筒状に閉じた形状をもつので、溶接によらなくても製造することができる。
【0026】
第10の態様のプレス曲げ加工管は、加工帯が、板材のうちプレス曲げ加工管の外部に露出した部分に、逆曲げ加工帯を含み、プレス曲げ加工管の外部から見て逆曲げ加工帯が凹状に曲げられた形状をもつ、第9の態様に記載のプレス曲げ加工管である。
【0027】
第10の態様によれば、プレス曲げ加工管が凹状に曲げられた逆曲げ加工帯を含むので、逆曲げ加工帯を含まない場合に比べた場合、最後の角部加工帯の加工時に、挿入された下型又は上型が板材に強く接触することを防ぐことができ、結果として意図しないプレス曲げ加工管の膨らみを抑制することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、溶接を必要としないプレス曲げ加工管製造方法及びプレス曲げ加工管を提供することができる。更に、本発明によれば、溶接を必要とせず、膨らみを抑制することができるプレス曲げ加工管製造方法及びプレス曲げ加工管を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】第1の実施形態に係るプレス曲げ加工管製造方法に使用される例示的なプレス機械の概略正面図である。
図2】第1の実施形態に係るプレス曲げ加工管製造方法の実施中における第0の状態S0~第2の状態S2の板材の側面図である。
図3】第1の実施形態に係るプレス曲げ加工管製造方法の実施中における第3の状態S3~第4の状態S4の板材の側面図である。
図4】第1の実施形態に係るプレス曲げ加工管製造方法の実施中における第5の状態S5~第7の状態S7の板材の側面図である。
図5】第1の実施形態に係るプレス曲げ加工管製造方法の実施中における第8の状態S8~第9の状態S9の板材の側面図である。
図6】第1の実施形態に係るプレス曲げ加工管製造方法の第1の工程P1~第3の工程P3を示す。
図7】第1の実施形態に係るプレス曲げ加工管製造方法の第4の工程P4~第6の工程P6を示す。
図8】第1の実施形態に係るプレス曲げ加工管製造方法の第7の工程P7~第9の工程P9を示す。
図9】第1の実施形態に係るプレス曲げ加工管製造方法の第10の工程P10を示す。
図10】第2の実施形態における板材の加工途中の形状を示す側面図である。
図11】第3の実施形態における板材の加工途中の形状を示す側面図である。
図12】第4の実施形態における板材の加工途中の形状を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
<第1の実施形態>
(プレス機械)
図1は、本実施形態のプレス曲げ加工管製造方法に使用される例示的なプレス機械10の概略正面図である。プレス機械10は、左端及び右端において設置場17に固定されているZ方向(上下方向)に延びた2つのフレーム11を備える。プレス機械10は更に、フレーム11の下側に搭載されて、フレーム11間においてX方向(左右方向)に延びた下テーブル12を備える。プレス機械10は更に、フレーム11に搭載されたサーボモーター等の駆動源13と、駆動源13の動力によりフレーム11に対して上下に移動可能な上テーブル14とを備える。
【0031】
プレス機械10は更に、上テーブル14の下端においてX方向に連続的に、又は、断続的に延びた1つ又は複数の上型15と、下テーブル12の上端においてX方向に連続的に、又は、断続的に延びた1つ又は複数の下型16とを備える。1つの上型15が、複数の型の組み合わせにより構成されていてもよい。1つの下型16が、複数の型の組み合わせにより構成されていてもよい。上型15と下型16との間にはZ方向に空間が設けられている。上型15と下型16との間に加工対象物を入れ、上テーブル14を下テーブル12に向けて下降させると、上型15及び下型16の構成に応じて加工対象物に例えば曲げ、押圧、又は成型といった加工が施される。
【0032】
プレス機械10は図示しないATC装置(auto tool changer)と呼ばれる自動交換装置を備えており、工程に応じてプログラムにより、又は外部からの命令により加工に使用する上型15と下型16との組み合わせを自動的に変更することができる。加工に使用する上型15と下型16との組み合わせは手動により変更可能であってもよい。また、他の例において下テーブル12が固定された上テーブル14に対して相対的に移動可能にされてもよい。また、他の例において下テーブル12と上テーブル14との両方が、互いに相対的に移動可能にされてもよい。
【0033】
(板材)
以下、金属の平板状の板材20(図2)からプレス曲げ加工管50(図5)を製造するプレス曲げ加工管製造方法について説明する。「第1の」、「第2の」といった表現は単に工程又は部材などを識別するための表現であり、別段の指定の無い限り、工程の順序などの何らかの順序を限定するわけではない。
【0034】
板材20はカラー塗装が施されている。カラー塗装が施されている板材20は溶接するとカラー塗装を損なうので、溶接を伴わない本実施形態のプレス曲げ加工管製造方法によりプレス曲げ加工管50(図5)にすることが好ましい。以下の説明において加工前の板材20は長方形の表面をもつ平板である。なお、板材20には、孔が形成されていてもよく、端部に切り欠きが設けられていてもよく、一部に何らかの加工がされていてもよい。他の例において、板材20はカラー塗装が施されていないものであってもよい。
【0035】
図2図4は、プレス曲げ加工管製造方法の実施中における板材20をX方向に沿って同じ側から見た側面図である。図2は第0の状態S0~第2の状態S2における板材20の側面図である。図3は第3の状態S3~第4の状態S4における板材20の側面図である。図4は第5の状態S5~第7の状態S7における板材20の側面図である。図5は第8の状態S8~第9の状態S9における板材20の側面図である。以下、特に断りのない限り、板材20に関する角度及び長さは、X方向に直交する断面で考えたときの角度及び長さを表す。
【0036】
図2の第0の状態S0は、加工前の板材20を示す。板材20は互いに平行な第1の端縁21と第2の端縁22とをもつ。なお、第1の端縁21又は第2の端縁22の一部に平行でない部分が含まれていてもよい。第1の端縁21及び第2の端縁22は、図面に直交する方向に延びている。板材20は、更に第1の端縁21から第2の端縁22まで広がった第1の表面23をもつ。第1の表面23は、加工後にプレス曲げ加工管50(図5)の外面の一部を形成する。板材20は、更に第1の表面23の反対側において第1の端縁21から第2の端縁22まで広がった第2の表面24をもつ。第2の表面24は、加工後にプレス曲げ加工管50(図5)の内面の一部を形成する。
【0037】
プレス曲げ加工管製造方法は、第1の端縁21と第2の端縁22との間に位置する互いに平行な複数の加工帯30(後述の30-1~30-8の符号を付された部分を包含するものであり、30-1~30-8の符号を付された部分を区別せずに単に加工帯30と呼ぶ場合がある)に沿って板材20に曲げを実施することを含む。曲げは、1つ以上の下型16のうちの1つと1つ以上の上型15のうちの1つとの組み合わせにより板材20を挟んで板材20を曲げるプレス加工により実施される。曲げは、第1の表面23から見て凸状に曲げる凸曲げと、第1の表面23から見て凹状に曲げる凹曲げとを含む。
【0038】
図2の第0の状態S0に示すように、板材20に対して破線で区切られた8つの加工帯30が規定される。各加工帯30は一定幅で図面に直交する方向に延びている。なお、説明の便宜上、加工帯30を区切って示す場合があるが、加工帯30の境界が実際に目視可能である必要はない。例えば加工帯30の位置について「AとBとの間」という表現は、特に矛盾が生じない場合、板材20に沿った位置関係を示すか、又は加工前の位置関係を示す場合がある。
【0039】
第1の角部加工帯30-1は、第1の端縁21と第2の端縁22との間に位置する。第2の角部加工帯30-2は、第1の角部加工帯30-1と第2の端縁22との間に位置する。第3の角部加工帯30-3は、第2の角部加工帯30-2と第2の端縁22との間に位置する。第4の角部加工帯30-4は、第3の角部加工帯30-3と第2の端縁22との間に位置する。第1の角部加工帯30-1から第4の角部加工帯30-1を区別せずに単に角部加工帯と呼ぶ場合がある。
【0040】
第1の連結部加工帯30-5は、第1の端縁21と第1の角部加工帯30-1との間に位置する。第2の連結部加工帯30-6は、第1の連結部加工帯30-5と第1の角部加工帯30-1との間に位置する。第3の連結部加工帯30-7は、第4の角部加工帯30-4と第2の端縁22との間に位置する。逆曲げ加工帯30-8は、第2の連結部加工帯30-6と第3の連結部加工帯30-7との間に位置する。
【0041】
他の例において、逆曲げ加工帯30-8は、第2の連結部加工帯30-6と第3の連結部加工帯30-7との間の他の位置にあってもよい。
【0042】
図2の第0の状態S0に示すように、板材20は第1の領域31-1~第9の領域31-9(以下、区別せずに領域31と呼ばれる場合がある)を含む。なお、説明の便宜上、領域31を破線で区切って示す場合があるが、領域31の境界が実際に目視可能である必要はない。
【0043】
第1の領域31-1は、第1の端縁21と第1の連結部加工帯30-5との間をつなぐ形態で広がっている。第2の領域31-2は、第1の連結部加工帯30-5と第2の連結部加工帯30-6との間をつなぐ形態で広がっている。第3の領域31-3は、第2の連結部加工帯30-6と第1の角部加工帯30-1との間をつなぐ形態で広がっている。第4の領域31-4は、第1の角部加工帯30-1と第2の角部加工帯30-2との間をつなぐ形態で広がっている。
【0044】
第5の領域31-5は、第2の角部加工帯30-2と逆曲げ加工帯30-8との間をつなぐ形態で広がっている。第6の領域31-6は、逆曲げ加工帯30-8と第3の角部加工帯30-3との間をつなぐ形態で広がっている。第7の領域31-7は、第3の角部加工帯30-3と第4の角部加工帯30-4との間をつなぐ形態で広がっている。第8の領域31-8は、第4の角部加工帯30-4と第3の連結部加工帯30-7との間をつなぐ形態で広がっている。第9の領域31-9は、第3の連結部加工帯30-7と第2の端縁22との間をつなぐ形態で広がっている。
【0045】
(プレス曲げ加工管製造方法)
図6図9は、プレス曲げ加工管製造方法の工程を説明するための図である。図6図9では、プレス機械10(図1)を同じ側からX方向に見ている。図6は、第1の工程P1~第3の工程P3を示す。図7は、第4の工程P4~第6の工程P6を示す。図8は、第7の工程P7~第9の工程P9を示す。図9は、第10の工程P10を示す。図6図9の左側が、図1の手前側、すなわち、プレス機械10の外側であって、作業者がいる側に対応する。図6図9の右側が、図1の奥側、すなわちプレス機械10の内側に対応する。板材20の曲げの角度は、加工帯30の両側の2つの領域31を仮想的に延長して得られる角度を表す。
【0046】
まず、図2の第0の状態S0の板材20を用意する。本明細書では、第1の上型15-1~第10の上型15-10をまとめて上型15と呼ぶ場合がある。第1の下型16-1~第10の下型16-10をまとめて下型16と呼ぶ場合がある。矛盾が生じない限り1つ以上の上型15が、他の上型15又は下型16と同じであってもよく、1つ以上の下型16が、他の上型15又は下型16と同じであってもよい。
【0047】
次に、図6の第1の工程P1では、まず、第1の連結部加工帯30-5の第1の表面23をオス型である第1の上型15-1に向け、かつ、第2の表面24をメス型である第2の下型16-1に向けた状態で、第2の端縁22に比べて第1の端縁21をプレス機械10の内側に配置する。次に、第1の上型15-1と第2の下型16-1とにより第1の連結部加工帯30-5に沿って板材20に凹曲げを行う。図6の第1の工程P1により、板材20が図2の第1の状態S1になる。第1の状態S1では、第1の領域31-1と第2の領域31-2との間の角度は0度より大きく、かつ90度より小さい。
【0048】
図6の第1の工程P1に続く第2の工程P2では、まず、第2の連結部加工帯30-6の第2の表面24をオス型である第2の上型15-2に向け、かつ、第1の表面23をメス型である第2の下型16-2に向けた状態で、第2の端縁22に比べて第1の端縁21をプレス機械10の内側に配置する。次に、第2の上型15-2と第2の下型16-2とにより第2の連結部加工帯30-6に沿って板材20に凸曲げを行う。図6の第1の工程P1により、板材20が図2の第2の状態S2になる。第2の状態S2では、第2の領域31-2と第3の領域31-3との間の角度は約90度である。
【0049】
第1の工程P1と第2の工程P2とにより、プレス曲げ加工管50(図5)の内部に収容されるための折り返し部41が、第1の端縁21と第2の連結部加工帯30-6との間に形成される。折り返し部41は、第1の領域31-1と第2の領域31-2と第2の連結部加工帯30-6とによりV字状に形成される。
【0050】
図6の第2の工程P2に続く第3の工程P3では、まず、第3の連結部加工帯30-7の第2の表面24をオス型である第3の上型15-3に向け、かつ、第1の表面23をメス型である第3の下型16-3に向けた状態で、第1の端縁21に比べて第2の端縁22をプレス機械10の内側に配置する。次に、第3の上型15-3と第3の下型16-3とにより第3の連結部加工帯30-7に沿って板材20に凸曲げを行う。図6の第3の工程P3により、板材20が図3の第3の状態S3になる。第3の状態S3では、第8の領域31-8と第9の領域31-9との間の角度は約90度である。
【0051】
第3の工程P3により、プレス曲げ加工管50(図5)の内部に収容されて折り返し部41と連結するための突出部42が、第2の端縁22と第3の連結部加工帯30-7との間に形成される。
【0052】
図6の第3の工程P3に続く図7の第4の工程P4では、まず、第1の角部加工帯30-1の第2の表面24をオス型である第4の上型15-4に向け、かつ、第1の表面23をメス型である第4の下型16-4に向けた状態で、第2の端縁22に比べて第1の端縁21をプレス機械10の内側に配置する。次に、第4の上型15-4と第4の下型16-4とにより第1の角部加工帯30-1に沿って板材20に凸曲げを行う。図7の第4の工程P4により、板材20が図3の第4の状態S4になる。第4の工程P4の結果、第4の状態S4に示すように、第1の角部加工帯30-1が、第2の表面24から見て互いに90度をなす第3の領域31-3と第4の領域31-4との間に隣接して配置される。
【0053】
図7の第4の工程P4に続く第5の工程P5では、まず、第4の角部加工帯30-4の第2の表面24をオス型である第5の上型15-5に向け、かつ、第1の表面23をメス型である第5の下型16-5に向けた状態で、第1の端縁21に比べて第2の端縁22をプレス機械10の内側に配置する。次に、第5の上型15-5と第5の下型16-5とにより第4の角部加工帯30-4に沿って板材20に凸曲げを行う。図7の第5の工程P5により、板材20が図4の第5の状態S5になる。第5の工程P5の結果、第5の状態S5に示すように、第4の角部加工帯30-4が、第2の表面24から見て互いに90度をなす第7の領域31-7と第8の領域31-8との間に隣接して配置される。
【0054】
図7の第5の工程P5に続く第6の工程P6では、まず、第3の角部加工帯30-3の第2の表面24をオス型である第6の上型15-6に向け、かつ、第1の表面23をメス型である第6の下型16-6に向けた状態で、第1の端縁21に比べて第2の端縁22をプレス機械10の内側に配置する。次に、第6の上型15-6と第6の下型16-6とにより第3の角部加工帯30-3に沿って板材20に凸曲げを行う。図7の第6の工程P6により、板材20が図4の第6の状態S6になる。第6の工程P6の結果、第6の状態S6に示すように、第3の角部加工帯30-3が、第2の表面24から見て互いに90度をなす第6の領域31-6と第7の領域31-7との間に隣接して配置される。
【0055】
図7の第6の工程P6に続く図8の第7の工程P7では、まず、逆曲げ加工帯30-8の第1の表面23をオス型である第7の上型15-7に向け、かつ、第2の表面24をメス型である第7の下型16-7に向けた状態で、第1の端縁21に比べて第2の端縁22をプレス機械10の内側に配置する。次に、第7の上型15-7と第7の下型16-7とにより逆曲げ加工帯30-8に沿って板材20に凹曲げを行う。図8の第7の工程P7により、板材20が図4の第7の状態S7になる。
【0056】
第7の工程P7の結果、第7の状態S7に示すように、逆曲げ加工帯30-8が、第1の表面23から見て90度より大きい角度をなす第5の領域31-5と第6の領域31-6との間に隣接して配置される。第5の領域31-5と第6の領域31-6との間の角度は、第1の表面23から見て、90度より大きく、例えば約173度である。完成品の表面が過剰にへこむことを防ぐ観点、及び過剰なへこみの修正を省く観点から、第5の領域31-5と第6の領域31-6との間の角度は、90度より大きく180度より小さい範囲内であることが好ましく、例えば、170度より大きく180度より小さい範囲内であることが好ましい。
【0057】
図8の第7の工程P7に続く第8の工程P8では、まず、第2の角部加工帯30-2の第2の表面24をオス型である第8の上型15-8に向け、かつ、第1の表面23をメス型である第8の下型16-8に向けた状態で、第1の端縁21に比べて第2の端縁22をプレス機械10の内側に配置する。次に、第8の上型15-8と第8の下型16-8とにより第2の角部加工帯30-2に沿って板材20に凸曲げを行う。
【0058】
第8の工程P8の実施前には、図4の第7の状態S7に示すように、第4の領域31-4及び第5の領域31-5が水平な状態であり、折り返し部41と突出部42とが比較的離れた状態にある。第8の工程P8の実施中、図8の第8の上型15-8が折り返し部41と突出部42との間を通って、第2の角部加工帯30-2に向かって上から下に挿入される。図8の第8の工程P8により、板材20が図5の第8の状態S8になる。第8の工程P8の結果、第8の状態S8に示すように、第2の角部加工帯30-2が、第2の表面24から見て互いに90度をなす第4の領域31-4と第5の領域31-5との間に隣接して配置される。図8に示すように、第8の工程P8の終了時に第4の領域31-4及び第5の領域31-5は水平から約45度傾いている。
【0059】
第8の工程P8の終了時において、挿入された第8の上型15-8が折り返し部41と突出部42との両方から離隔しているように、逆曲げ加工帯30-8に沿った凹曲げの角度が設定される。第8の工程P8により折り返し部41と突出部42とが比較的近づいた状態となるが、逆曲げ加工帯30-8が存在するので、折り返し部41、突出部42、及び第3の連結部加工帯30-7が第8の上型15-8から完全に離れている。
【0060】
逆曲げ加工帯30-8が存在しない場合には、折り返し部41、突出部42、又は第3の連結部加工帯30-7が第8の上型15-8に強く接触するので、板材20に意図しない曲がりが生じるおそれがあるが、本実施形態では意図しない曲がりが生じない。なお、他の例において、折り返し部41、突出部42、又は第3の連結部加工帯30-7が第8の上型15-8に軽く接触した状態となってもよい。
【0061】
図5の第8の状態S8において、第2の連結部加工帯30-6と第3の連結部加工帯30-7とはおおむね同一の曲率をもつ弧状であり、おおむね同じ大きさをもつ。第1の角部加工帯30-1と第2の角部加工帯30-2と第3の角部加工帯30-3と第4の角部加工帯30-4とはおおむね同一の曲率をもつ弧状であり、おおむね同じ大きさをもつ。
【0062】
第5の領域31-5の長さと第6の領域31-6の長さとは同じである。他の例において、第5の領域31-5の長さが第6の領域31-6の長さより短くてもよい。他の例において、第5の領域31-5の長さが第6の領域31-6の長さより長くてもよい。第8の領域31-8の長さは、第3の領域31-3の長さより短い。
【0063】
図8の第8の工程P8に続く第9の工程P9では、まず、第3の領域31-3の第1の表面23をオス型である第9の上型15-9(上方)に向ける。更に、第5の領域31-5及び第6の領域31-6の第1の表面23を下向きにして、水平な上面をもつ第9の下型16-9に載せる。更に、第1の端縁21に比べて第2の端縁22をプレス機械10の内側に配置する。次に、第9の上型15-9により第3の領域31-3を下方に押して板材20を弾性変形させることにより、折り返し部41の隙間に突出部42を挿入する。折り返し部41の隙間とは、図5の第8の状態S8に示すような、第1の領域31-1と第2の領域31-2との間の空間である。
【0064】
第3の領域31-3のうち、第1の角部加工帯30-1と第2の連結部加工帯30-6との間の中央より、第2の連結部加工帯30-6に近い部分を押すことが好ましい。これは、小さい力で板材20の弾性変形が生じ易く、意図しない板材20の変形を防ぎやすいからである。
【0065】
図8の第9の工程P9に続く図9の第10の工程P10では、まず、第2の角部加工帯30-2を上方に配置し、第4の角部加工帯30-4を下方に配置し、第1の角部加工帯30-1に比べて第3の角部加工帯30-3をプレス機械10の内側に配置する。更に、約90度のL字状に窪んだ表面をもつ第10の上型15-10と、約90度のL字状に窪んだ表面をもつ第10の下型16-10とにより板材20を上下から挟む。結果として、折り返し部41の隙間に突出部42が完全に挿入される。更に、第4の領域31-4に対して、第5の領域31-5及び第6の領域31-6がおおむね90度、又は90度よりわずかに小さい角度に成形される。更に、第7の領域31-7に対して、第8の領域31-8及び第3の領域31-3がおおむね90度に成形される。
【0066】
図8の第9の工程P9及び図9の第10の工程P10(まとめて、閉鎖工程とも呼ばれる)により、第2の連結部加工帯30-6と第3の連結部加工帯30-7とが近づけられて、板材20が筒状に閉じられる。
【0067】
図8の第10の工程P10の結果、図5の第9の状態S9のように角の丸いおおむね正方形(他の例においておおむね長方形であってもよい)の断面をもつプレス曲げ加工管50(図5)が完成する。第1の表面23のうち第1の角部加工帯30-1と第2の連結部加工帯30-6との間の部分と、第1の表面23のうち第4の角部加工帯30-4と第3の連結部加工帯30-7との間の部分とがプレス曲げ加工管50(図5)の1つの平面状の外面を構成するように配置される。すなわち、第3の領域31-3の外面と第8の領域31-8の外面とがおおむね1つの平面に沿って配置されている。
【0068】
第5の領域31-5の外面と第6の領域31-6の外面とはプレス曲げ加工管50(図5)の1つのおおむね平面状の外面を構成する。図5の第9の状態S9では、図の簡略化のため第5の領域31-5の外面と第6の領域31-6の外面とがおおむね1つの平面に沿って広がるように描かれているが、実際には逆曲げ加工帯30-8を中心としてわずかに内側に窪んでいる。第4の領域31-4の外面及び第7の領域31-7の外面は、互いにおおむね平行であり、それぞれプレス曲げ加工管50(図5)の1つの平面状の外面を構成する。
【0069】
図5の第9の状態S9において、第2の領域31-2と第9の領域31-9とはおおむね平行であり、第1の表面23側において互いに接している。第2の領域31-2の長さは第9の領域31-9の長さより短い。第1の領域31-1の長さは第2の領域31-2の長さより短い。第9の領域31-9は、第1の領域31-1と第2の領域31-2との間の隙間に入る長さをもつ。
【0070】
第1の連結部加工帯30-5に曲げを実行する工程を第1の連結部加工工程と呼ぶ(図6の第1の工程P1)。第2の連結部加工帯30-6に曲げを実行する工程を第2の連結部加工工程と呼ぶ(図6の第2の工程P2)。第3の連結部加工帯30-7に曲げを実行する工程を第3の連結部加工工程と呼ぶ(図6の第3の工程P3)。第1の角部加工帯30-1に曲げを実行する工程を第1の角部加工工程と呼ぶ(図7の第4の工程P4)。第4の角部加工帯30-4に曲げを実行する工程を第4の角部加工工程と呼ぶ(図7の第5の工程P5)。第3の角部加工帯30-3に曲げを実行する工程を第3の角部加工工程と呼ぶ(図7の第6の工程P6)。逆曲げ加工帯30-8に曲げを実行する工程を逆曲げ加工工程と呼ぶ(図8の第7の工程P7)。第2の角部加工帯30-2に曲げを実行する工程を第2の角部加工工程と呼ぶ(図8の第8の工程P8)。
【0071】
本実施形態では、第1の連結部加工工程(図6の第1の工程P1)、第2の連結部加工工程(図6の第2の工程P2)、第3の連結部加工工程(図6の第3の工程P3)、第1の角部加工工程(図7の第4の工程P4)、第4の角部加工工程(図7の第5の工程P5)、第3の角部加工工程(図7の第6の工程P6)、及び逆曲げ加工工程(図8の第7の工程P7)が、この順に全て終了した後に第2の角部加工工程(図8の第8の工程P8)が実行される。他の例において、第2の角部加工工程(図8の第8の工程P8)より前の工程が他の順序により実行されてもよい。
【0072】
(形状の説明)
本実施形態のプレス曲げ加工管製造方法により、図2の状態S0に示す金属の板材20から、図5の第9の状態S9に示すようなプレス曲げ加工管50が製造される。板材20は、第1の端縁21と第2の端縁22とをもつ。板材20は、第1の端縁21側に位置する折り返し部41と、第2の端縁22側に位置する突出部42とを含む。板材20は、板材20に沿った位置関係において第1の端縁21と第2の端縁22との間に、曲げ加工された互いに平行な複数の加工帯30を含む。
【0073】
加工帯30は、プレス曲げ加工管50の内部に位置する曲げられた第1の連結部加工帯30-5と、少なくとも部分的にプレス曲げ加工管50の外部に位置する曲げられた第2の連結部加工帯30-6と、少なくとも部分的にプレス曲げ加工管50の外部に位置する曲げられた第3の連結部加工帯30-7とを含む。第2の連結部加工帯30-6と第3の連結部加工帯30-7とが隣接していることにより、板材20が部分的に管状に形成されている。形状維持の観点から第2の連結部加工帯30-6と第3の連結部加工帯30-7とは接触していることが好ましいが、わずかに離れていてもよい。
【0074】
折り返し部41は、プレス曲げ加工管50の内部において第1の端縁21と第1の連結部加工帯30-5とをつなぐ第1の領域31-1と、プレス曲げ加工管50の内部において第1の連結部加工帯30-5と第2の連結部加工帯30-6とをつなぐ第2の領域31-2とを含む。第1の領域31-1と第2の領域31-2との間に隙間が存在する。突出部42は、第3の連結部加工帯30-7と第2の端縁22とをつなぐように延びている。プレス曲げ加工管50の内部において突出部42が隙間内に部分的に位置していることにより、第2の連結部加工帯30-6と第3の連結部加工帯30-7との間隔を広げる方向への動き(図5の上下方向に開閉する動き)が抑制されるように構成されている。形状維持の観点から突出部42は第1の領域31-1と第2の領域31-2との両方に接触しながら挟まれて固定されていることが好ましいが、わずかに離れていてもよい。
【0075】
加工帯30は、板材20のうちプレス曲げ加工管50の外部に露出した部分に、4つの角部加工帯(第1の角部加工帯30-1~第4の角部加工帯30-4)と、逆曲げ加工帯30-8とを含む。プレス曲げ加工管50の外部から見て各角部加工帯30-1が凸曲げされた形状をもつ(すなわち、外部に向かって凸形状である)。プレス曲げ加工管50の外部から見て逆曲げ加工帯30-8がわずかに凹曲げされた形状をもつ(すなわち、内部に向かって凸形状である)。
【0076】
(まとめ)
本実施形態によれば、折り返し部41に突出部42を挿入することにより板材20を筒状に閉じるので、溶接によらなくてもプレス曲げ加工管50(図5)を製造することができる。
【0077】
本実施形態によれば、逆曲げ加工帯30-8に凹曲げが実施されるので、逆曲げ加工帯30-8に凹曲げを実施しない場合に比べた場合、4回の角部加工工程のうちの最後の第2の角部加工工程(図8の第8の工程P8)において、挿入された上型15が板材20に強く接触することを防ぐことができ、結果として意図しない板材20の膨らみを抑制することができる。
【0078】
本実施形態によれば、4回の角部加工工程のうちの最後の第2の角部加工工程(図8の第8の工程P8)の終了時において、挿入された上型15が板材20から離隔しているので、板材20と上型15との強い力による接触を防ぎやすい。
【0079】
なお、他の例において、図6図8の第1の工程P1~第8の工程P8の1つ以上において、上型15と下型16とが入れ替えられ、板材20の上下が反転されてもよい。第2の角部加工工程(図7の第6の工程P6)と第3の角部加工工程(図8の第8の工程P8)とのうちの後に行われる工程において、下型と上型とのうちオス型のパンチである一方が、折り返し部41と突出部42との間から挿入される。そのような後に行われる工程の後に、板材20を弾性変形させて折り返し部41に突出部42を挿入することが実行される。そのような後に行われる工程の終了時において、挿入された下型又は上型が板材20から離隔しているように(又は軽く接触するように)、逆曲げ加工帯30-8に沿った凹曲げの角度が設定される。このような他の例においても、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0080】
また、第1の実施形態で製造されるプレス曲げ加工管50(図5)は4つの角部加工帯(30-1~30-4)をもち長手方向に直交する断面の外形がおおむね四角形である。他の例において、プレス曲げ加工管は3つの角部加工帯をもつ三角形の断面をもつものであってもよく、5つ以上の角部加工帯をもつものであってもよい。角部加工帯の個数回の角部加工工程が実行される。角部加工工程のうちの特定の1つの工程が、第1の連結部加工工程と第2の連結部加工工程と第3の連結部加工工程と他の角部加工工程と逆曲げ加工工程とが全て終了した後に実行される。角部加工工程のうちの上記の特定の1つの工程において、下型と上型との一方が、折り返し部と突出部との間から挿入される。角部加工帯が4つ以外の場合にも、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0081】
<第2の実施形態>
図10は、第2の実施形態における板材120の加工途中の形状を示す側面図である。図10は、図5の第1の実施形態の第8の状態S8に対応する状態における板材120の形状を示す。図5図10とにおいて100の位を除いて同じ数値の符号をもつ構成要素は、特に断りのない限り、局所的に同様の工程により同じ形状に加工される。
【0082】
本実施形態では、第1の実施形態と異なり、第1の角部加工帯130-1と第2の連結部加工帯130-6との間の距離が、第3の連結部加工帯130-7と第4の角部加工帯130-4との間の距離より短い。言い換えると、第3の領域131-3の長さが第8の領域131-8の長さより短い。
【0083】
本実施形態では、第1の連結部加工工程(図6の第1の工程P1と同様)、第2の連結部加工工程(図6の第2の工程P2と同様)、第3の連結部加工工程(図6の第3の工程P3と同様)、第1の角部加工工程(図7の第4の工程P4と同様)、第4の角部加工工程(図7の第5の工程P5と同様)、第2の角部加工工程(図8の第8の工程P8と同様)、及び逆曲げ加工工程(図8の第7の工程P7と同様)が全て終了した後に第3の角部加工工程(図7の第6の工程P6と同様)が実行される。第3の角部加工工程の後、第1の実施形態の図8の第9の工程P9及び図9の第10の工程P10と同様の工程が実施される。
【0084】
第3の角部加工工程(図7の第6の工程P6と同様)の終了時において、挿入された上型(図8の第8の工程P8の第8の上型15-8と同様)が折り返し部141と突出部142との両方から離隔しているように(又は軽く接触するように)、逆曲げ加工帯130-8に沿った凹曲げの角度が設定される。
【0085】
(まとめ)
本実施形態では、板材120を弾性変形させて折り返し部141に突出部142を挿入する工程(図8の第9の工程P9と同様)において、第1の実施形態に比べて大きな力が必要であるが、その他の点では第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0086】
<第3の実施形態>
図11は、第3の実施形態における板材220の加工途中の形状を示す側面図である。図11は、図5の第1の実施形態の第8の状態S8に対応する状態における板材220の形状を示す。図5図11とにおいて100の位を除いて同じ数値の符号をもつ構成要素は、特に断りのない限り、局所的に同様の工程により同じ形状に加工される。第1の実施形態と同様の説明は省略する。
【0087】
本実施形態では、第1の実施形態と同様に、第1の角部加工帯230-1と第2の連結部加工帯230-6との間の距離が、第3の連結部加工帯230-7と第4の角部加工帯230-4との間の距離より長い。言い換えると、第3の領域231-3の長さが第8の領域231-8の長さより長い。
【0088】
更に、本実施形態では、第1の実施形態と異なり、第5の領域231-5の長さが第6の領域231-6の長さより短い。言い換えると、第2の角部加工帯230-2と逆曲げ加工帯230-8との間の距離が、逆曲げ加工帯230-8と第3の角部加工帯230-3との間の距離より短い。
【0089】
第1の連結部加工工程(図6の第1の工程P1と同様)、第2の連結部加工工程(図6の第2の工程P2と同様)、第3の連結部加工工程(図6の第3の工程P3と同様)、第1の角部加工工程(図7の第4の工程P4と同様)、第4の角部加工工程(図7の第5の工程P5と同様)、第3の角部加工工程(図7の第6の工程P6と同様)、及び逆曲げ加工工程(図8の第7の工程P7と同様)が全て終了した後に第2の角部加工工程(図8の第8の工程P8と同様)が実行される。第2の角部加工工程の後、第1の実施形態の図8の第9の工程P9及び図9の第10の工程P10と同様の工程が実施される。
【0090】
(まとめ)
本実施形態によれば、第2の角部加工帯230-2と逆曲げ加工帯230-8との間の距離が、逆曲げ加工帯230-8と第3の角部加工帯230-3との間の距離より長い場合と比べたとき、逆曲げ加工帯230-8の両側に隣接した2つの領域231(すなわち、第5の領域231-5と第6の領域231-6と)のなす角度を同じにしても、第3の連結部加工帯230-7を第2の連結部加工帯230-6から遠ざけることができ、結果として折り返し部241と突出部242との間の空間を大きく開けることができる。
【0091】
言い換えると、第1の表面223側から見た逆曲げ加工帯230-8の両側に隣接した2つの領域231(すなわち、第5の領域231-5と第6の領域231-6と)のなす角度を大きくしても(すなわち平行に近づけた場合でも)、折り返し部241と突出部242との間の空間を大きく開けて、板材220と上型(図8の第8の工程P8の第8の上型15-8と同様)との強い力による接触を防ぎやすくなる。
【0092】
<第4の実施形態>
図12は、第4の実施形態における板材320の加工途中の形状を示す側面図である。図12は、図5の第1の実施形態の第8の状態S8に対応する状態における板材320の形状を示す。図5図12とにおいて100の位を除いて同じ数値の符号をもつ構成要素は、特に断りのない限り、局所的に同様の工程により同じ形状に加工される。第1の実施形態と同様の説明は省略する。
【0093】
本実施形態では、第1の実施形態と異なり、第1の角部加工帯330-1と第2の連結部加工帯330-6との間の距離が、第3の連結部加工帯330-7と第4の角部加工帯330-4との間の距離より短い。言い換えると、第3の領域331-3の長さが第8の領域331-8の長さより短い。
【0094】
更に、本実施形態では、第1の実施形態と異なり、第5の領域331-5の長さが第6の領域331-6の長さより長い。言い換えると、第2の角部加工帯330-2と逆曲げ加工帯330-8との間の距離が、逆曲げ加工帯330-8と第3の角部加工帯330-3との間の距離より長い。
【0095】
本実施形態では、第1の連結部加工工程(図6の第1の工程P1と同様)、第2の連結部加工工程(図6の第2の工程P2と同様)、第3の連結部加工工程(図6の第3の工程P3と同様)、第1の角部加工工程(図7の第4の工程P4と同様)、第4の角部加工工程(図7の第5の工程P5と同様)、第2の角部加工工程(図8の第8の工程P8と同様)、及び逆曲げ加工工程(図8の第7の工程P7と同様)が全て終了した後に第3の角部加工工程(図7の第6の工程P6と同様)が実行される。第3の角部加工工程の後、第1の実施形態の図8の第9の工程P9及び図9の第10の工程P10と同様の工程が実施される。
【0096】
(まとめ)
本実施形態によれば、第2の角部加工帯330-2と逆曲げ加工帯330-8との間の距離が、逆曲げ加工帯330-8と第3の角部加工帯330-3との間の距離より短い場合と比べたとき、逆曲げ加工帯330-8の両側に隣接した2つの領域331(すなわち、第5の領域331-5と第6の領域331-6と)のなす角度を同じにしても、第3の連結部加工帯330-7を第2の連結部加工帯330-6から遠ざけることができ、結果として折り返し部341と突出部342との間の空間を大きく開けることができる。
【0097】
言い換えると、第1の表面323側から見た逆曲げ加工帯330-8の両側に隣接した2つの領域331(すなわち、第5の領域331-5と第6の領域331-6と)のなす角度を大きくしても(すなわち平行に近づけた場合でも)、折り返し部341と突出部342との間の空間を大きく開けて、板材320と上型(図8の第8の工程P8の第8の上型15-8と同様)との強い力による接触を防ぎやすくなる。
【0098】
<第5の実施形態>
第1の実施形態から第4の実施形態まで、主に、上型(例えば図6図8の上型15)はオス型のパンチであり、下型(例えば図6図8の下型16)はメス型のダイであるとして説明されている。本実施形態では、第1の実施形態から第4の実施形態の場合に比べて、第1の連結部加工工程(例えば図6の第1の工程P1)、及び逆曲げ加工工程(例えば図8の第7の工程P7)において上型と下型とが入れ替えられている。
【0099】
すなわち、本実施形態では、第1の連結部加工工程(例えば図6の第1の工程P1)、及び逆曲げ加工工程(例えば図8の第7の工程P7)において、下型がオス型のパンチとされ、上型がメス型のダイとされる。更に、第1の実施形態と同様に、第2の連結部加工工程(例えば図6の第2の工程P2)、第3の連結部加工工程(例えば図6の第3の工程P3)、第1の角部加工工程(例えば図7の第4の工程P4)、第4の角部加工工程(例えば図7の第5の工程P5)、第3の角部加工工程(例えば図7の第6の工程P6)、及び第2の角部加工工程(図8の第8の工程P8)において、下型がメス型のダイとされ、上型がオス型のパンチとされる。
【0100】
(まとめ)
本実施形態によれば、第1の連結部加工工程、第2の連結部加工工程、第3の連結部加工工程、第1の角部加工工程、第2の角部加工工程、第3の角部加工工程、第4の角部加工工程、及び逆曲げ加工工程の全体を通して、第1の表面(例えば図2の第0の状態S0に示す第1の表面23)と第2の表面(例えば図2の第0の状態S0に示す第2の表面24)との上下の入れ替えを無くし、作業を簡単にすることができる。
【0101】
<第6の実施形態>
本実施形態では、第1の実施形態から第4の実施形態の場合に比べて、第2の連結部加工工程(例えば図6の第2の工程P2)、第3の連結部加工工程(例えば図6の第3の工程P3)、第1の角部加工工程(例えば図7の第4の工程P4)、第4の角部加工工程(例えば図7の第5の工程P5)、第3の角部加工工程(例えば図7の第6の工程P6)、及び第2の角部加工工程(図8の第8の工程P8)において上型と下型とが入れ替えられている。
【0102】
すなわち、本実施形態では、第2の連結部加工工程(例えば図6の第2の工程P2)、第3の連結部加工工程(例えば図6の第3の工程P3)、第1の角部加工工程(例えば図7の第4の工程P4)、第4の角部加工工程(例えば図7の第5の工程P5)、第3の角部加工工程(例えば図7の第6の工程P6)、及び第2の角部加工工程(図8の第8の工程P8)において、下型がメス型のダイとされ、上型がオス型のパンチとされる。更に、第1の実施形態と同様に、第1の連結部加工工程(例えば図6の第1の工程P1)、及び逆曲げ加工工程(例えば図8の第7の工程P7)において、下型がオス型のパンチとされ、上型がメス型のダイとされる。
【0103】
(まとめ)
本実施形態によれば、第1の連結部加工工程、第2の連結部加工工程、第3の連結部加工工程、第1の角部加工工程、第2の角部加工工程、第3の角部加工工程、第4の角部加工工程、及び逆曲げ加工工程の全体を通して、第1の表面(例えば図2の第0の状態S0に示す第1の表面23)と第2の表面(例えば図2の第0の状態S0に示す第2の表面24)との上下の入れ替えを無くし、作業を簡単にすることができる。
【符号の説明】
【0104】
10…プレス機械、11…フレーム、12…下テーブル、13…駆動源、
14…上テーブル、15…上型(15-1~15-10…第1の上型~第10の上型)、
16…下型(16-1~16-10…第2の下型~第10の下型)、17…設置場、
20…板材、21…第1の端縁、22…第2の端縁、23…第1の表面、
24…第2の表面、30…加工帯、30-1…第1の角部加工帯、
30-2…第2の角部加工帯、30-3…第3の角部加工帯、
30-4…第4の角部加工帯、30-5…第1の連結部加工帯、
30-6…第2の連結部加工帯、30-7…第3の連結部加工帯、
30-8…逆曲げ加工帯、
31…領域(31-1~31-9…第1の領域~第9の領域)、
41…折り返し部、42…突出部、50…プレス曲げ加工管、
S0~S9…第0の状態~第9の状態、P1~P10…第1の工程~第10の工程、
120…板材、130-1…第1の角部加工帯、130-4…第4の角部加工帯、
130-6…第2の連結部加工帯、130-7…第3の連結部加工帯、
130-8…逆曲げ加工帯、131-3…第3の領域、131-8…第8の領域、
141…折り返し部、142…突出部、220…板材、223…第1の表面、
230-1…第1の角部加工帯、230-2…第2の角部加工帯、
230-3…第3の角部加工帯、230-4…第4の角部加工帯、
230-6…第2の連結部加工帯、230-7…第3の連結部加工帯、
230-8…逆曲げ加工帯、231…領域、231-3…第3の領域、
231-5…第5の領域、231-6…第6の領域、231-8…第8の領域、
241…折り返し部、242…突出部、320…板材、323…第1の表面、
330-1…第1の角部加工帯、330-2…第2の角部加工帯、
330-3…第3の角部加工帯、330-4…第4の角部加工帯、
330-6…第2の連結部加工帯、330-7…第3の連結部加工帯、
330-8…逆曲げ加工帯、331…領域、331-3…第3の領域、
331-5…第5の領域、331-6…第6の領域、331-8…第8の領域、
341…折り返し部、342…突出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12