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特開2022-147932道路トンネル火災検知システムおよび道路トンネル火災検知方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147932
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】道路トンネル火災検知システムおよび道路トンネル火災検知方法
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20220929BHJP
   G08B 17/12 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
G08B17/00 C
G08B17/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021049410
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】501170080
【氏名又は名称】株式会社創発システム研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100134669
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 道彰
(72)【発明者】
【氏名】中堀 一郎
(72)【発明者】
【氏名】竹垣 盛一
(72)【発明者】
【氏名】坂口 敏明
【テーマコード(参考)】
5C085
5G405
【Fターム(参考)】
5C085AA01
5C085AA12
5C085AA13
5C085AB08
5C085AB09
5C085BA36
5C085CA04
5C085CA15
5C085FA35
5G405AA01
5G405AA06
5G405AA08
5G405AB01
5G405AB05
5G405AC06
5G405AC07
5G405CA05
5G405CA22
5G405CA31
5G405CA46
5G405FA25
(57)【要約】
【課題】 赤外線撮影カメラや可視光撮影カメラの撮影画像など複数種類の撮影画像を有機的に組み合わせて早期に火災検知できる道路トンネル火災検知システムを提供する。
【解決手段】 道路トンネルの複数の箇所においてそれぞれ設置された複数個の赤外線撮影カメラ110と、複数個の可視光撮影カメラ120と、それらの撮影画像の双方の情報を組み合わせて火災検知を行う組み合わせ型火災検知手段140を備える。赤外線撮影カメラ120のそれぞれに撮影角度を変化させる撮影角度変化装置111、可視光撮影カメラ120のそれぞれに撮影角度を変化させる撮影角度変化装置121を備え、撮影角度を変化させる角度変化信号を伝送する角度変化制御部130を備える。組み合わせ型火災検知手段140が、火点候補検知手段150、火災発生地点候補検知手段160と連動し、複数種類の撮影画像を有機的に組み合わせて早期に火災検知する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路トンネル内の火災発生を検知する道路トンネル火災検知システムであって、
前記道路トンネルの長手方向に沿って、前記道路トンネルの複数の箇所においてそれぞれ設置された複数個の赤外線撮影カメラと、
前記道路トンネルの長手方向に沿って、前記道路トンネルの複数の箇所においてそれぞれ設置された複数個の可視光撮影カメラと、
複数個の前記赤外線撮影カメラの撮影画像と、複数個の前記可視光撮影カメラの撮影画像の双方の情報を組み合わせて火災検知を行う組み合わせ型火災検知手段を備えたことを特徴とする道路トンネル火災検知システム。
【請求項2】
複数個の赤外線撮影カメラの配置において、前記道路トンネル内の走行方向の上流側に撮影角度が設定されたものと、下流側に撮影方向が設定されたものが1対をなして配置されており、
複数個の可視光撮影カメラの配置において、前記道路トンネル内の走行方向の上流側に撮影角度が設定されたものと、下流側に撮影方向が設定されたものが1対をなして配置されており、
前記赤外線撮影カメラと前記可視光撮影カメラが前記道路トンネルに沿って一対ごとに交互に配置されており、前記赤外線撮影カメラの上流側に撮影角度が設定されたものの視野領域と前記可視光撮影カメラの下流側に撮影角度が設定されたものの視野領域が重複し、前記赤外線撮影カメラの下流側に撮影角度が設定されたものの視野領域と前記可視光撮影カメラの上流側に撮影角度が設定されたものの視野領域が重複するように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の道路トンネル火災検知システム。
【請求項3】
複数個の赤外線撮影カメラのそれぞれが、前記赤外線撮影カメラの撮影角度を変化させる撮影角度変化装置を備え、
複数個の可視光撮影カメラのそれぞれが、前記可視光撮影カメラの撮影角度を変化させる撮影角度変化装置を備え、
前記赤外線撮影カメラの前記撮影角度変化装置および前記可視光撮影カメラの前記撮影角度変化装置に対して、撮影角度を変化させる角度変化信号を伝送する角度変化制御部を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の道路トンネル火災検知システム。
【請求項4】
前記組み合わせ型火災検知手段が、複数個の前記赤外線撮影カメラの撮影画像から、所定温度以上の火点候補の存在と、前記火点候補の前記道路トンネル内の推定位置を検知する、火点候補検知手段を備え、
前記火点候補検知手段が検知した前記道路トンネル内の前記火点候補の推定位置に対して、前記角度変化制御部を介してその近隣の前記赤外線撮影カメラの前記撮影角度変化装置に前記撮影角度を調整する火点候補赤外線撮影支援機能を備えたことを特徴とする請求項3に記載の道路トンネル火災検知システム。
【請求項5】
前記組み合わせ型火災検知手段が、複数個の前記赤外線撮影カメラの撮影画像から、所定温度以上の火点候補の存在と、前記火点候補の前記道路トンネル内の推定位置を検知する、火点候補検知手段を備え、
前記火点候補検知手段が検知した前記道路トンネル内の前記火点候補の推定位置に対して、前記角度変化制御部を介してその近隣の前記可視光撮影カメラの前記撮影角度変化装置に前記撮影角度を調整する火点候補可視光撮影支援機能を備えたことを特徴とする請求項3に記載の道路トンネル火災検知システム。
【請求項6】
前記組み合わせ型火災検知手段が、複数個の前記可視光撮影カメラの撮影画像から、前記道路トンネル内の視界変化、通行車両の減速、停止、迂回走行を含む通行乱れによる火災発生地点候補の存在と、前記火災発生地点候補の前記道路トンネル内の推定位置を検出する、火災発生地点候補検知手段を備え、
前記火災発生地点候補検知手段が検知した前記道路トンネル内の前記火災発生地点候補の推定位置に対して、前記角度変化制御部を介してその近隣の前記可視光撮影カメラの前記撮影角度変化装置に前記撮影角度を調整する火災発生候補可視光撮影支援機能を備えたことを特徴とする請求項3に記載の道路トンネル火災検知システム。
【請求項7】
前記組み合わせ型火災検知手段が、複数個の前記可視光撮影カメラの撮影画像から、前記道路トンネル内の視界変化、通行車両の減速、停止、迂回走行を含む通行乱れによる火災発生地点候補の存在と、前記火災発生地点候補の前記道路トンネル内の推定位置を検出する、火災発生地点候補検知手段を備え、
前記火災発生地点候補検知手段が検知した前記道路トンネル内の前記火災発生地点候補の推定位置に対して、前記角度変化制御部を介してその近隣の前記赤外線撮影カメラの前記撮影角度変化装置に前記撮影角度を調整する火災発生候補赤外線撮影支援機能を備えたことを特徴とする請求項3に記載の道路トンネル火災検知システム。
【請求項8】
センターに設置したモニタと、
複数個の前記赤外線撮影カメラの撮影画像と、複数個の前記可視光撮影カメラの撮影画像の双方を対応づけて配列して表示する撮影画像表示手段を備えたことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の道路トンネル火災検知システム。
【請求項9】
前記道路トンネルの長手方向に沿って、所定間隔ごとに温度検出センサが敷設され、前記所定間隔ごとに温度の実測値を所定時間ごとに取得して前記道路トンネル内の温度分布実測データを得るトンネル温度分布実測部と、
前記トンネル温度分布実測部の前記温度分布実測データにおいて、前記温度検出センサ間で所定以上の温度ばらつき発生の存在と、前記温度ばらつき発生の前記道路トンネル内の位置を検知する温度異常検証部を備え、
前記組み合わせ型火災検知手段が、複数個の前記赤外線撮影カメラの撮影画像と、複数個の前記可視光撮影カメラの撮影画像と、前記トンネル温度分布実測部の前記温度検出センサの温度ばらつきデータの情報を組み合わせて火災検知を行うことを特徴とする請求項1から8に記載の道路トンネル火災検知システム。
【請求項10】
道路トンネル内の火災発生を検知する道路トンネル火災検知方法であって、
前記道路トンネルの長手方向に沿って、前記道路トンネルの複数の箇所においてそれぞれ設置された複数個の赤外線撮影カメラで撮影した赤外線撮影画像と、
前記道路トンネルの長手方向に沿って、前記道路トンネルの複数の箇所においてそれぞれ設置された複数個の可視光撮影カメラで撮影した可視光撮影画像を用いて、
それら双方の情報を組み合わせて火災検知を行う組み合わせ型火災検知を行うことを特徴とする道路トンネル火災検知方法。
【請求項11】
複数個の赤外線撮影カメラのそれぞれが、前記赤外線撮影カメラの撮影角度を変化させる撮影角度変化が可能であり、
複数個の可視光撮影カメラのそれぞれが、前記可視光撮影カメラの撮影角度を変化させる撮影角度変化が可能であり、
前記赤外線撮影カメラおよび前記可視光撮影カメラに対して、前記撮影角度を変化させる角度変化信号を伝送して前記角度変化を制御することを特徴とする請求項10に記載の道路トンネル火災検知方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路トンネル内の赤外線撮影画像、可視光撮影画像にもとづいて高い精度で火災の発生を検知することができる道路トンネル火災検知システムおよび道路トンネル火災検知方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、道路トンネルが長距離化しつつあり、道路トンネル内の火災検知が重要な課題となってきた。
道路トンネルでひとたび火災が発生すると、通行車両は逃げ道が少なく、また、有毒ガスが道路トンネル内に充満するおそれがあるため火災を早期に鎮圧する必要がある。そこで、火災発生の早期検知が求められる。
我が国の道路トンネルでは火災から放射される赤外線を検知する火災検知システムが既に広く採用されており、その火災検知時間は30秒とされている。
【0003】
火災を検知するために、道路トンネルの側壁面等の所定間隔ごとに、火災発生を検知する火災検知器などの配備が考えられる。その火災検知器により火災を検知した場合には自動車用道路トンネルを管理する管理センター等に発報される。火災を検知した火災検知器の道路トンネル内での位置が既知であるため、道路トンネル内の火災箇所が概ね把握できる仕組みとなっている。
【0004】
火災検知器には様々なものがある。
例えば、赤外線式火災検知器がある。火災の炎から放射される光を受光素子によって検出し、受光素子で基準値以上の光を検出した場合に火災と検知する。
また、例えば、監視カメラを利用した火災検知器もある(特許文献1参照)。自動車用道路トンネルに配備されている監視カメラを利用して道路トンネル内の画像を撮像し、その画像データに基づいて火災を検出する。
【0005】
しかし、赤外線式火災検知器や監視カメラを利用した火災検知器の場合、火災の早期検知が難しい場合もある。火災の中には、初期段階では炎を発しない煙火災となる場合もある。従来の赤外線式火災検知器や監視カメラを利用した火災検知器の場合、火災による放射光を検出するため、煙火災を検知することができない。さらに、道路トンネル内への黒煙の充満等によって道路トンネル内が視界不良となった場合には炎を発していてもその火災を検知することができない。
【0006】
例えば、可視光撮影カメラの火災検知器がある。道路トンネルに配備されている監視カメラを利用して道路トンネル内の画像を撮像し、その画像データに基づいて火災を検出する。トンネル内の異常、例えば、事故発生、火災発生などを可視光カメラで捉えれば、火災発生または火災発生の前駆状態を捉えられることが期待できる。また、走行車両の走行の異常、例えば、走行車両の減速、停止、走行車両の迂回走行などを可視光カメラで捉えれば、火災発生または火災発生の前駆状態を捉えられることが期待できる。
【0007】
また、例えば、初期段階では炎が小さい煙火災に対しても有効な火災検知器として、温度検知センサを利用した火災検知もある。
温度検知センサを利用した火災検知器は、温度センサによって設置個所の温度上昇を検出し、その検出した温度が基準値以上の場合に火災と検知するものである。
代表的な温度検知センサとしては、ヨーロッパで広く採用されている温度センサケーブルを利用したものがある。既にヨーロッパでは温度ケーブルセンサが広く採用されており使用実績がある。温度センサケーブルは、ケーブル内部に一定間隔(標準5mまたは8m)で組み込まれた半導体温度センサの測定データから火点の位置を特定することができるものである。従来の火災報知器が50m間隔で設置されていたが、温度センサケーブルは5mきざみであるので、より精密な火災制御ができる。
【0008】
図15は、温度検出センサケーブル10の構成例を示す図である。図15は温度センサが組み込まれている部分を拡大して示している。図15に示した構成例では、温度検出センサケーブル10は、ケーブルジャケット11、アルミニウムシールド12、充填材13、温度センサ14、フレキシブルフラットケーブル15、充填材16を備えた例となっている。実際の温度検出センサケーブル10は、例えば、数百mや数キロの長さのケーブルであり、5mきざみに図15に示した温度センサ14が組み込まれている。
【0009】
それぞれの温度センサ13は、設置個所の温度を計測し、その情報が制御装置へと送信される。ここで注目すべき情報は計測温度の過去のある時点からの変化であり、この変化量をもって設置個所に熱源が存在するか否かの推定に用いられる。道路トンネルで火災が発生すると、複数の温度センサ14がロバスト性を持って温度変化を検知するので一定の精度をもって火災検知を行うことができる。さらに、この火災検知システムによれば火災の大きさが大きくなってゆく様も捉えることができる。
このように、従来の温度ケーブルセンサを用いた火災検知にはアルゴリズムも提供されており、欧州で普及しているシステムによれば火災発生から1分以内に高い精度で検知することができるものとなっている(特許文献2)。
【0010】
【特許文献1】特開2004-152134号公報
【特許文献2】特開2018-180676号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
我が国の道路トンネルでは、火災検知時間は30秒とされている。そのため、コスト低減を図りつつも火災検知速度の高速化が求められている。
赤外線撮影カメラの撮影画像から火災で発生する火点を検知することにより火災検知を行う場合、明確に発火して、火点が明瞭に存在する場合は、赤外線撮影カメラの撮影画像において火点を明確に捉えることができ、早期に火災検知が可能な場合がある。
【0012】
しかし、赤外線撮影カメラの撮影画像から火災検知を行う場合にも改善すべき問題がある。
第1の問題は、コストの兼ね合いから道路トンネル内に設置できる赤外線カメラの台数が限られるため、その台数で道路トンネルの距離全体をカバーするためには、カメラ撮影角度が浅くならざるを得ず、比較的撮影視野を遠方に向けてカメラを設置せざるを得ない。しかし、道路トンネル内には多数の走行車両が走行しており、火災などの異常時において、大型トラックなどが前方で停車すれば、火点と赤外線撮影カメラの間に干渉してしまい、火点が存在しても、赤外線撮影カメラの撮影画像では捉えられない、もしくは捉えても全体ではなく、その一部のみが捉えられることが想定される。
第2の問題は、実際の火災の発生において、火災の前駆状態が捉えられないという問題である。道路トンネル内で事故などがあり、まだ明確に大きく発火していなくとも事故現場で火種が燻っているという前駆状態が存在することも多い。この前駆状態では、煙などが立ち上がっていてもまだ明確な火点は存在しないため、赤外線撮影カメラの撮影画像に頼った火災検知では早期の火災検知が難しい。
【0013】
次に、可視光撮影カメラの撮影画像から事故現場に伴う火災発生を検知することにより火災検知を行う場合、まだ火点は発生していなく火災の前駆状態であっても、明確な事故現場を捉えた撮影画像が得られれば、早期に火災検知が可能な場合がある。
しかし、可視光撮影カメラの撮影画像から火災検知を行う場合にも改善すべき点がある。
第1の問題は、やはりコストの兼ね合いから道路トンネル内に設置できる可視光カメラの台数が限られるため、その台数で道路トンネルの距離全体をカバーするためには、カメラ撮影角度が浅くならざるを得ず、比較的撮影視野を遠方に向けてカメラを設置せざるを得ない。しかし、道路トンネル内には多数の走行車両が走行しており、事故発生などの異常時において、大型トラックなどが事故現場の前方で停車すれば、事故現場と可視光撮影カメラの間に干渉してしまい、事故現場を可視光撮影カメラの撮影画像では捉えられない、もしくは捉えても全体ではなく、その一部のみが捉えられることが想定される。
第2の問題は、実際の事故の発生において、事故が発生しているのか、単に車が停車しているのかが判別しにくい場合があるという問題である。道路トンネル内で事故などがあり、車両が横倒しになっているなど明確に異常な状態や、煙が立ち上がっているのであれば事故発生を判断しやすいが、車両が走行方向を向いて停車しているだけでは、まだ明確に火災につながる事故か否か判別しにくく、可視光撮影カメラの撮影画像に頼った火災検知では早期の火災検知が難しい場合もある。
【0014】
次に、温度センサケーブルの検知データから道路トンネル内の温度上昇を捉えることにより、事故の発生に伴う火災発生を推測する場合、まだ火点は発生していなく火災の前駆状態であっても、道路トンネル内の温度上昇が得られれば、比較的早期に火災検知が可能な場合がある。
従来技術において温度センサケーブルを用いつつ火災検知時間を短縮する技術としては、特開2018-180676号公報(特許文献2)がある。これは本出願人が出願した特許出願であり、温度センサケーブルを用いつつ火災検知時間を30秒以内おさめた優れた技術であると評価され、今後の普及が期待されるものである。
図16は特開2018-180676号公報に開示された火災検知システムを示す図である。特開2018-180676号公報に開示された早期火災検知システム10の制御部13は、以下の3つの値を計算する。第1は、各々の温度検出センサ11毎の第1の所定期間における時間積分値の大きさである。第2は、その時間積分値の大きさから火点に最も近い火点センサと仮定された温度検出センサを含む周辺の所定数の温度検出センサ群からなる火点包含センサ群の空間積分値の大きさである。第3は、その空間積分値に占める火点センサと仮定された温度検出センサの検出値の大きさから計算した集中割合の大きさである。制御部113は、これら3つの計算結果から火災の発生を推定するものであり、単純に温度が高温となるエリアを漫然と検出することに比べて時間積分値の大きさとその集中度合いをもって判断するため、早期な火災検知を実現している。
【0015】
特許文献2に示した特開2018-180676号公報に記載された火災検知システムは優れたものであり、比較的小規模な火災の30秒以内という早期検出が可能であると期待されている。しかし、その一方、トンネルなどの諸条件により、空間積分値に占める火点と仮定する温度検出センサの検出値の大きさのしきい値の設定が微妙で難しい場合もあり、しきい値を低くし過ぎると火災でない場合にも火災発生の可能性ありと発報してしまうことがあり得る。逆に、しきい値の設定を高くしすぎると火災発生の場合の発報にその分時間がかかってしまうことがあり得る。
【0016】
本発明は、上記問題に鑑み、赤外線撮影カメラの撮影画像、可視光撮影カメラの撮影画像など、複数種類の撮影画像を集め、双方を有機的に組み合わせて判断する技術、また、大型トラックなどの走行車両が赤外線撮影カメラや可視光撮影カメラの間に干渉している可能性を考慮して撮影角度を動的に変更する技術を適用し、早期に火災検知を実行、推定することができる道路トンネル火災検知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、本発明の道路トンネル火災検知システムは、前記道路トンネルの長手方向に沿って、前記道路トンネルの複数の箇所においてそれぞれ設置された複数個の赤外線撮影カメラと、前記道路トンネルの長手方向に沿って、前記道路トンネルの複数の箇所においてそれぞれ設置された複数個の可視光撮影カメラと、複数個の前記赤外線撮影カメラの撮影画像と、複数個の前記可視光撮影カメラの撮影画像の双方の情報を組み合わせて火災検知を行う組み合わせ型火災検知手段を備えたことを特徴とする道路トンネル火災検知システムである。
上記構成により、赤外線撮影カメラの撮影画像のみに基づく火災検知、可視光撮影カメラの撮影画像のみに基づく火災検知では、それぞれもっていた課題について、双方を組み合わせて火災検知を行う組み合わせ型火災検知手段を用いることにより、火災検知の判断処理時間が短縮でき、火災検知の精度も向上する。
【0018】
上記構成において、複数個の赤外線撮影カメラの配置において工夫を施すことも好ましい。例えば、道路トンネル内の走行方向の上流側に撮影角度が設定されたものと下流側に撮影方向が設定されたものが1対をなした配置とする。また、複数個の可視光撮影カメラの配置において、道路トンネル内の走行方向の上流側に撮影角度が設定されたものと下流側に撮影方向が設定されたものが1対をなした配置とする。このようにそれぞれを対にし、赤外線撮影カメラと可視光撮影カメラが前記道路トンネルに沿って一対ごとに交互に配置する。ここで、赤外線撮影カメラの上流側に撮影角度が設定されたものの視野領域と可視光撮影カメラの下流側に撮影角度が設定されたものの視野領域が重複し、赤外線撮影カメラの下流側に撮影角度が設定されたものの視野領域と可視光撮影カメラの上流側に撮影角度が設定されたものの視野領域が重複するように配置すれば、死角が少なるなるとともに、赤外線撮影画像と可視光撮影画像という2種類の画像を得ることができる。
【0019】
さらに、上記した本発明の道路トンネル火災検知システムにおいて、複数個の赤外線撮影カメラのそれぞれが、前記赤外線撮影カメラの撮影角度を変化させる撮影角度変化装置を備え、複数個の可視光撮影カメラのそれぞれが、前記可視光撮影カメラの撮影角度を変化させる撮影角度変化装置を備え、前記赤外線撮影カメラの前記撮影角度変化装置および前記可視光撮影カメラの前記撮影角度変化装置に対して、撮影角度を変化させる角度変化信号を伝送する角度変化制御部を備えた構成とすることができる。
この赤外線撮影カメラの撮影角度変化装置、可視光撮影カメラの撮影角度変化装置、それらに対する角度変化制御部を備えることにより、組み合わせ型火災検知手段における火災検知処理において、下記の各パターンによって、より火災検知に資する画像を得て、適切な形で複数の情報を組み合わせることができる。
第1のパターンは、組み合わせ型火災検知手段が、複数個の前記赤外線撮影カメラの撮影画像から、所定温度以上の火点候補の存在と、前記火点候補の前記道路トンネル内の推定位置を検知する火点候補検知手段を備え、前記火点候補検知手段が検知した前記道路トンネル内の前記火点候補の推定位置に対して、前記角度変化制御部を介してその近隣の前記赤外線撮影カメラの前記撮影角度変化装置に前記撮影角度を調整する火点候補赤外線撮影支援機能を備えたことを特徴とするパターンである。
この第1のパターンによれば、赤外線撮影カメラの撮影画像から火点の可能性がある赤外線撮影画像が得られたことを契機として、火点候補赤外線撮影支援機能の制御のもと、複数ある他の赤外線撮影カメラの撮影角度を撮影角度変化装置により動的に変化させて、当該火点がある可能性のある箇所を複数の赤外線撮影カメラで集中的に撮影して優良な情報を収集することができる。
【0020】
第2のパターンは、組み合わせ型火災検知手段が、複数個の前記赤外線撮影カメラの撮影画像から、所定温度以上の火点候補の存在と、前記火点候補の前記道路トンネル内の推定位置を検知する火点候補検知手段を備え、前記火点候補検知手段が検知した前記道路トンネル内の前記火点候補の推定位置に対して、前記角度変化制御部を介してその近隣の前記可視光撮影カメラの前記撮影角度変化装置に前記撮影角度を調整する火点候補可視光撮影支援機能を備えたことを特徴とするパターンである。
この第2のパターンによれば、赤外線撮影カメラの撮影画像から火点の可能性がある赤外線撮影画像が得られたことを契機として、火点候補可視光撮影支援機能の制御のもと、複数ある可視光撮影カメラの撮影角度を撮影角度変化装置により動的に変化させて、当該火点がある可能性のある箇所を複数の可視光撮影カメラで集中的に撮影して、赤外線とは異なる可視光で撮影した優良な情報を組み合わせることができる。
【0021】
第3のパターンは、組み合わせ型火災検知手段が、複数個の前記可視光撮影カメラの撮影画像から、前記道路トンネル内の視界変化、通行車両の減速、停止、迂回走行を含む通行乱れによる火災発生地点候補の存在と、前記火災発生地点候補の前記道路トンネル内の推定位置を検出する火災発生地点候補検知手段を備え、前記火災発生地点候補検知手段が検知した前記道路トンネル内の前記火災発生地点候補の推定位置に対して、前記角度変化制御部を介してその近隣の前記可視光撮影カメラの前記撮影角度変化装置に前記撮影角度を調整する火災発生候補可視光撮影支援機能を備えたことを特徴とするパターンである。
この第3のパターンによれば、可視光撮影カメラの撮影画像から火災発生の可能性がある可視光撮影画像が得られたことを契機として、火災発生候補可視光撮影支援機能の制御のもと、複数ある他の可視光撮影カメラの撮影角度を撮影角度変化装置により動的に変化させて、当該火災発生の可能性のある箇所を複数の可視光撮影カメラで集中的に撮影して、優良な情報を収集することができる。
【0022】
第4のパターンは、組み合わせ型火災検知手段が、複数個の前記可視光撮影カメラの撮影画像から、前記道路トンネル内の視界変化、通行車両の減速、停止、迂回走行を含む通行乱れによる火災発生地点候補の存在と、前記火災発生地点候補の前記道路トンネル内の推定位置を検出する火災発生地点候補検知手段を備え、前記火災発生地点候補検知手段が検知した前記道路トンネル内の前記火災発生地点候補の推定位置に対して、前記角度変化制御部を介してその近隣の前記赤外線撮影カメラの前記撮影角度変化装置に前記撮影角度を調整する火災発生候補赤外線撮影支援機能を備えたことを特徴とするパターンである。
この第4のパターンによれば、可視光撮影カメラの撮影画像から火災発生の可能性がある可視光撮影画像が得られたことを契機として、火災発生候補赤外線撮影支援機能の制御のもと、複数ある赤外線撮影カメラの撮影角度を撮影角度変化装置により動的に変化させて、当該火災発生の可能性がある箇所を複数の赤外線撮影カメラで集中的に撮影して、可視光とは異なる赤外線で撮影した優良な情報を組み合わせることができる。
【0023】
さらに、上記した本発明の道路トンネル火災検知システムにおいて、センターに設置したモニタと、複数個の前記赤外線撮影カメラの撮影画像と、複数個の前記可視光撮影カメラの撮影画像の双方を対応づけて配列して表示する撮影画像表示手段を備えた構成とすることができる。
上記構成によって、組み合わせ型火災検知手段による赤外線撮影カメラの撮影画像と可視光撮影カメラの撮影画像を組み合わせた火災検知の結果を分かりやすくセンターのモニタに表示して管理者が把握しやすくなる。
【0024】
さらに、上記した本発明の道路トンネル火災検知システムにおいて、組み合わせ型火災検知手段において組み合わせるデータのバリエーションを増やすことができる。例えば、上記した本発明の道路トンネル火災検知システムにおいて、道路トンネルの長手方向に沿って、所定間隔ごとに温度検出センサが敷設され、所定間隔ごとに温度の実測値を所定時間ごとに取得して道路トンネル内の温度分布実測データを得るトンネル温度分布実測部と、トンネル温度分布実測部の温度分布実測データにおいて、温度検出センサ間で所定以上の温度ばらつき発生の存在と、温度ばらつき発生の道路トンネル内の位置を検知する温度異常検証部を備えた構成とし、前記組み合わせ型火災検知手段が、複数個の前記赤外線撮影カメラの撮影画像と、複数個の前記可視光撮影カメラの撮影画像と、前記トンネル温度分布実測部の前記温度検出センサの温度ばらつきデータの情報を組み合わせて火災検知を行うことを特徴とするものである。
上記構成により、組み合わせ型火災検知手段において組み合わせるデータのバリエーションとして、組み合わせ型火災検知手段が、赤外線撮影カメラの撮影画像と可視光撮影カメラの撮影画像に加えて温度検出センサによる温度データを組み合わせることができ、3者を組み合わせた火災検知を行うことにより、火災検知の精度も向上する。
【0025】
次に、道路トンネル火災検知方法は、道路トンネル内の火災発生を検知する道路トンネル火災検知方法であって、前記道路トンネルの長手方向に沿って、前記道路トンネルの複数の箇所においてそれぞれ設置された複数個の赤外線撮影カメラで撮影した赤外線撮影画像と、前記道路トンネルの長手方向に沿って、前記道路トンネルの複数の箇所においてそれぞれ設置された複数個の可視光撮影カメラで撮影した可視光撮影画像を用いて、それら双方の情報を組み合わせて火災検知を行う組み合わせ型火災検知を行う道路トンネル火災検知方法である。
上記方法により、赤外線撮影カメラの撮影画像のみに基づく火災検知、可視光撮影カメラの撮影画像のみに基づく火災検知では、それぞれもっていた課題について、双方を組み合わせて火災検知を行う組み合わせ型火災検知手法を適用することにより、火災検知の判断処理時間が短縮でき、火災検知の精度も向上する。
さらに、上記道路トンネル火災検知方法において、複数個の赤外線撮影カメラのそれぞれが赤外線撮影カメラの撮影角度を変化させる撮影角度変化を可能とし、複数個の可視光撮影カメラのそれぞれが可視光撮影カメラの撮影角度を変化させる撮影角度変化を可能とし、赤外線撮影カメラおよび可視光撮影カメラに対して、撮影角度を変化させる角度変化信号を伝送して角度変化を制御することが好ましい。
この赤外線撮影カメラの撮影角度変化、可視光撮影カメラの撮影角度変化、それら撮影角度を変化させる角度変化信号を伝送して角度変化を制御することにより、組み合わせ型火災検知手段における火災検知処理において、より火災検知に資する画像を得て、適切な形で複数の情報を組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の道路トンネル火災検知システムによれば、従来の赤外線撮影カメラの撮影画像のみに基づく火災検知や可視光撮影カメラの撮影画像のみに基づく火災検知に比べて、火災検知の判断処理時間が短縮でき、火災検知の精度を向上することができる。
また、本発明の道路トンネル火災検知システムによれば、赤外線撮影カメラの撮影角度変化装置、可視光撮影カメラの撮影角度変化装置、それらに対する角度変化制御部を備えることにより、組み合わせ型火災検知手段における火災検知処理において、より火災検知に資する画像を得て、適切な形で複数の情報を組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の道路トンネル火災検知システム100の構成例を示す図である。
図2】撮影画像表示手段170の第1のパターンの配列によるモニタ180上での表示例を簡単に示す図である。
図3】撮影画像表示手段170の第2のパターンの配列によるモニタ180上での表示例を簡単に示す図である。
図4】赤外線撮影カメラ110-2で捉えた赤外線撮影画像である。
図5】近隣にある赤外線撮影カメラ110-1の撮影角度を火災発生地点候補の推定位置に合わせたモニタ画面を示す図である。
図6】近隣にある可視光撮影カメラ120-1の撮影角度を火災発生地点候補の推定位置に合わせたモニタ画面を示す図である。
図7】実施例2の道路トンネル火災検知システム100-2の構成例を示す図である。
図8図7の火災が発生した場合において撮影された画像の例を簡単に示す図である。
図9】実施例3の道路トンネル火災検知システム100aの構成例を示す図である。
図10】温度検出センサケーブル192の構成例を示す図である。
図11】温度センサケーブル出力の時間・空間の温度変化を示す図である。
図12】監視センターにおけるモニタでの表示例を示す図である。
図13】火災発生直後の監視センターにおけるモニタでの表示例を示す図である。
図14】火災発生が一定時間継続した場合の監視センターにおけるモニタでの表示例を示す図である。
図15】従来技術の温度検出センサケーブル10の構成例を示す図である。
図16】従来技術である特開2018-180676号公報に開示された火災検知システムを示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図面を参照しつつ、本発明の道路トンネル火災検知システムの実施例を説明する。ただし、本発明の範囲は以下の実施例に示した具体的な用途、形状、個数などには限定されないことは言うまでもない。
以下、実施例1として、赤外線撮影カメラ撮影画像と可視光撮影画像を組み合わせた道路トンネル火災検知システム100の構成例を示す。実施例2として赤外線撮影カメラを一対とし、可視光撮影カメラも一対として配置の工夫を行った構成例を示す。実施例3として、赤外線撮影カメラ撮影画像と可視光撮影画像に加え、温度検出センサによる温度検出結果を組み合わせた道路トンネル火災検知システム100aの構成例を示す。
【実施例0029】
以下、本発明の道路トンネル火災検知システム100の構成例を説明する。
図1は、本発明の道路トンネル火災検知システム100の構成例を示す図である。
図1に示すように、道路トンネル火災検知システム100は、赤外線撮影カメラ110、赤外線撮影カメラの撮影角度変化装置111,可視光撮影カメラ120、可視光撮影カメラの撮影角度変化装置121、角度変化制御部130、組み合わせ型火災検知手段140、火点候補検知手段150、火災発生地点候補検知手段160、撮影画像表示手段170、モニタ180を備えた構成となっている。
なお、赤外線撮影カメラの撮影角度変化装置111、可視光撮影カメラの撮影角度変化装置121、角度変化制御部130はオプション構成であり、これら構成がないものも可能である。以下では、これらオプションが組み込まれた構成例として説明する。
【0030】
赤外線撮影カメラ110は、道路トンネルの長手方向に沿って、複数の箇所において設置されている。赤外線撮影カメラ110としては、物体から放射される赤外線を可視化するためのカメラであれば良い。赤外線カメラ110の赤外線撮影画像は、温度の高低を表わすように色彩が付されたサーモグラフィ画像として表示することができる。
この構成例では、各々の赤外線撮影カメラ110には、赤外線撮影カメラの撮影角度変化装置111が搭載されており、角度変化制御部130からの信号に基づいて、各々の赤外線撮影カメラ110の撮影方向を変動させることができる。
赤外線撮影カメラの撮影角度変化装置111は、赤外線撮影カメラ110の撮影方向をサーボモータなどのアクチュエータで変動させるものである。上下方向のみの変動、左右方向のみの変動でも良いし、上下方向と左右方向とも3次元的に変動できるものでも良い。
【0031】
可視光撮影カメラ120は、道路トンネルの長手方向に沿って、複数の箇所において設置されている。可視光撮影カメラ110としては、可視光が撮影できるカメラであれば良いが、可視光カメラ120の可視光撮影画像は、モノクロ画像よりカラー画像の方が火災や事故などの様子を把握するための情報量が多いため、カラー撮影カメラの方が好ましい。
この構成例では、各々の可視光撮影カメラ120にも、可視光撮影カメラの撮影角度変化装置121が搭載されており、角度変化制御部130からの信号に基づいて、各々の可視光撮影カメラ120の撮影方向を変動させることができる。
可視光撮影カメラの撮影角度変化装置121は、可視光撮影カメラ120の撮影方向をサーボモータなどのアクチュエータで変動させるものである。上下方向のみの変動、左右方向のみの変動でも良いし、上下方向と左右方向とも3次元的に変動できるものでも良い。
【0032】
角度変化制御部130は、赤外線撮影カメラ110の撮影角度変化装置111、可視光撮影カメラ120の撮影角度変化装置121に対して、その撮影角度を変化させる角度変化信号を伝送するものである。角度変化信号は、上下方向のみの変動を指示する信号、左右方向のみの変動を指示する信号でも良いし、上下方向と左右方向とも3次元的に変動を指示する信号でも良い。
【0033】
組み合わせ型火災検知手段140は、複数個の赤外線撮影カメラ110の撮影画像と、複数個の可視光撮影カメラ120の撮影画像の双方の情報を組み合わせて火災検知を行う処理を実行する部分である。
この構成例では、組み合わせ型火災検知手段140は、火点候補検知手段150、火災発生地点候補検知手段160を備えている。
【0034】
火点候補検知手段150は、複数個の赤外線撮影カメラ110の撮影画像から、所定温度以上の火点候補の存在と、火点候補の道路トンネル内の推定位置を検知する処理を実行するものである。この火点候補検知手段150を搭載することで、事故などにより火種となる小さな火点が早い段階で映り込めば、組み合わせ型火災検知手段140は火災の発生を早期に予測することができることとなる。
【0035】
火災発生地点候補検知手段160は、複数個の可視光撮影カメラ120の撮影画像から、道路トンネル内の視界変化、通行車両の減速、停止、迂回走行を含む通行乱れによる火災発生地点候補の存在と、火災発生地点候補の道路トンネル内の推定位置を検知する処理を実行するものである。この火災発生地点候補検知手段160を搭載することで、事故などにより火種となる小さな火点はまだないものの、事故の発生を推認できる状態が可視光カメラに早い段階で映り込めば、組み合わせ型火災検知手段140は火災の発生を早期に予測することができることとなる。
【0036】
このように、組み合わせ型火災検知手段140が、火点候補検知手段150と火災発生地点候補検知手段160の両方を搭載しておけば、早期に小さな火点が先に発生している場合でも、まだ火点はないが事故の発生を推認できる状態が先に発生している場合でも、柔軟に組み合わせて判断することができる。
なお、火点候補検知手段150が検知した道路トンネル内の火点候補の推定位置や、火災発生地点候補検知手段160が検知した火災発生地点候補の道路トンネル内の推定位置に対して、角度変化制御部130を介して集中的に近隣にある赤外線カメラ資源、可視光カメラ資源を投入することができる。
【0037】
つまり、組み合わせ型火災検知手段140または火点候補検知手段150が、“火点候補赤外線撮影支援機能”、“火点候補可視光撮影支援機能”を備えることにより、近隣にある赤外線カメラ資源、可視光カメラ資源を効果的に投入できる。
“火点候補赤外線撮影支援機能”は、火点候補検知手段150が検知した道路トンネル内の火点候補の推定位置に対して、角度変化制御部130を介してその近隣の赤外線撮影カメラ110の撮影角度変化装置111に撮影角度を調整するものである。複数の角度から赤外線撮影カメラ110によって火点を観察することで、火点の規模、火点の形状、火点の拡大速度などを把握するための情報量を多く取得することができる。
【0038】
また、同様に、“火点候補可視光撮影支援機能”は、火点候補検知手段150が検知した道路トンネル内の火点候補の推定位置に対して、角度変化制御部130を介してその近隣の可視光撮影カメラ120の撮影角度変化装置121に撮影角度を調整するものである。複数の角度から可視光撮影カメラ120によって火点を観察することで、トンネル内の状況、走行車両の状態、事故の規模、煙の有無などを把握するための情報量を多く取得することができる。
【0039】
次に、組み合わせ型火災検知手段140または火災発生地点候補検知手段160が、“火災発生地点候補赤外線撮影支援機能”、“火災発生地点候補可視光撮影支援機能”を備えることにより、近隣にある赤外線カメラ資源、可視光カメラ資源を効果的に投入できる。
“火災発生地点候補赤外線撮影支援機能”は、火災発生地点候補検知手段160が検知した道路トンネル内の火災発生地点候補の推定位置に対して、角度変化制御部130を介してその近隣の赤外線撮影カメラ110の撮影角度変化装置111に撮影角度を調整するものである。複数の角度から赤外線撮影カメラ110によって観察することで、平常時の赤外線撮影カメラ110の撮影角度では映り込まない火点が、他の赤外線撮影カメラ110の撮影角度からは映り込むこともあり得るため、火点を早期に発見し、火点の規模、火点の形状、火点の拡大速度などを把握するための情報量を多く取得することができる。
【0040】
また、同様に、“火災発生地点候補可視光撮影支援機能”は、火災発生地点候補検知手段160が検知した道路トンネル内の火災発生地点候補の推定位置に対して、角度変化制御部130を介してその近隣の可視光撮影カメラ120の撮影角度変化装置121に撮影角度を調整するものである。複数の角度から可視光撮影カメラ120によって火災発生地点候補を観察することで、実際のトンネル内の状況、走行車両の状態、事故の規模、煙の有無などを把握するための情報量を多く取得することができる。
【0041】
図1の他の構成要素の説明を続ける。
次に、撮影画像表示手段170は、複数個の赤外線撮影カメラ110の撮影画像と、複数個の可視光撮影カメラ120の撮影画像の双方を対応づけて配列してモニタ180上に表示する処理を実行する部分である。
複数個の赤外線撮影カメラ110の撮影画像と、複数個の可視光撮影カメラ120の撮影画像の双方を対応づけた配列には、様々なパターンがあり得る。
【0042】
第1の配列パターンは、モニタ180の表示画面の上側に可視光撮影カメラ120の可視光撮影画像、下側に赤外線撮影カメラ110の赤外線撮影画像を上下に並べ、左右方向には、トンネル内に沿った地点順に上流から下流方向へ順に並べた配列である。この配列であれば、上下とも概ね近しい地点の撮影画像であり、上下を一覧することにより、可視光撮影画像での異常の有無、赤外線撮影画像での火点の有無などを確認することができる。
図2は、撮影画像表示手段170の第1のパターンの配列によるモニタ180上での表示例を簡単に示す図である。
図2に示すように、上側に可視光撮影カメラ120の可視光撮影画像、下側に赤外線撮影カメラ110の赤外線撮影画像が配列されている。センターの保守員が可視光撮影画像と赤外線撮影画像を対応付けつつ一覧するには便利な配列である。
【0043】
第2の配列パターンは、タイムシェアリングにより、可視光撮影カメラ120の可視光撮影画像を収集して並べた画像群と、赤外線撮影カメラ110の赤外線撮影画像を収集して並べた画像群を、所定時間経過ごとに交互に切り替えて表示する配列である。
図3は、撮影画像表示手段170の第2のパターンの配列によるモニタ180上での表示例を簡単に示す図である。
図3の例では、長距離の道路トンネルであり、例えば、設置の可視光撮影カメラ台数が8台、赤外線撮影カメラ台数も8台ある場合を想定している。モニタ180が8分割画像を表示するものであると、上記の第1のパターンでは可視光撮影画像と赤外線撮影画像を4つずつしか一覧できないが、この第2のパターンであれば、まず可視光撮影画像を8つ表示し、所定時間経過後(例えば10秒後)に赤外線撮影画像を8つ表示でき、トンネル全体の一覧性が向上する。
【0044】
上記の2つのパターンに限らず、複数個の赤外線撮影カメラ110の撮影画像と、複数個の可視光撮影カメラ120の撮影画像の双方を対応づけた配列には、他にも様々なパターンがあり得る。
以上が実施例1にかかる道路トンネル火災検知システム100の各構成の簡単な説明である。
【0045】
次に、道路トンネル火災検知システム100の道路トンネル火災検知処理例について、流れを追って説明する。
ここでは、図1に示したように、赤外線撮影カメラ110が、赤外線撮影カメラ110―1と、赤外線撮影カメラ110-2の2台のみ、可視光撮影カメラ120が、可視光撮影カメラ120-1と可視光撮影カメラ120-2の2台のみのごく簡単な例を取り上げて説明する。
図1に示すように、道路トンネル内の所定位置に、赤外線撮影カメラ110―1と、赤外線撮影カメラ110-2、可視光撮影カメラ120-1と可視光撮影カメラ120-2が側壁上部に設置されており、デフォルト時(平常時)のカメラ撮影角度は図示したとおり、前方やや斜め下に向いて設定されている。
【0046】
デフォルト時(平常時)の可視光撮影画像、赤外線撮影画像とも、道路トンネルの平常状態を映したものとなっている(図示せず)。
組み合わせ型火災検知手段140は、センターに対して特に異常の報告や発報をしない。
【0047】
ここで、図4(a)に示す火点1の箇所において小さな事故があり、小さな火点が発生したとする。この火点1は、赤外線撮影カメラ110―1と赤外線撮影カメラ110-2との間であるが、むしろ距離的には赤外線撮影カメラ110―1の方が近いものと仮定する。
【0048】
図5(a)は赤外線撮影カメラ110-1、赤外線撮影カメラ110-2で捉えた赤外線撮影画像である。図4(a)に示すように、赤外線撮影カメラ110-2の赤外線画像において、火点と推認される高温を発生しているものが見える。なお、火点1は距離的には赤外線撮影カメラ110-1の方が近いが、デフォルト状態では赤外線撮影カメラ110-1の撮影角度は前方を向いており、火点1は撮影角度内に入っていない。
図4(a)に示すように、火点候補検知手段150が、この高温発生体を火点候補として捉え、組み合わせ型火災検知手段140に通知する。
ここで、組み合わせ型火災検知手段140は“火点候補赤外線撮影支援機能”により、近隣にある赤外線カメラ資源を火点1の推定位置に投入する。つまり、図4(b)に示すように、火点候補検知手段150が検知した道路トンネル内の火点候補の推定位置に対して、角度変化制御部130を介してその近隣の赤外線撮影カメラ110の撮影角度変化装置111に対して信号を伝送し、その撮影角度を調整する。ここでは、火点1の近隣にある赤外線撮影カメラ110-1の撮影角度変化装置111に対して信号を与えて、赤外線撮影カメラ110-1の撮影角度を火点の推定位置に合わせる。ここでは、赤外線撮影カメラ110-1のデフォルト時(平常時)はトンネルの前方を映しているが、火点1の推定位置が背後であるので、撮影角度変化装置111により赤外線撮影カメラ110-1がくるりと背後に回って撮影角度を後方に合わせる。
【0049】
図5(b)は、左側に赤外線撮影カメラ110-1による赤外線撮影画像、右側に赤外線撮影カメラ110-2による赤外線撮影画像が配列されている。この例では、“火点候補赤外線撮影支援機能”が効果的に働き、赤外線撮影カメラ110-2では小さく映っている火点の様子が赤外線撮影カメラ110-1の撮影画像では大きく映されている。つまり、複数の角度から赤外線撮影カメラ110によって火点を観察することで、火点の規模、火点の形状、火点の拡大速度などを把握するための情報量を多く取得することができることが分かる。
なお、この例では、可視光撮影カメラ120-2においても、事故を想起させるトンネル内の状況が映し出されているとする(図示せず)。火災発生地点候補検知手段160も当該箇所を火災発生地点候補として検知したとする。
【0050】
組み合わせ型火災検知手段140は、さらに“火災発生地点候補可視光撮影支援機能”を備えており、火災発生地点候補検知手段160が検知した道路トンネル内の火災発生地点候補の推定位置(ここでは火点1と同じ位置とする)に対して、図4(b)に示すように、角度変化制御部130を介してその近隣の可視光撮影カメラ120の撮影角度変化装置121に撮影角度を調整する。この例でも、火災発生地点候補の推定位置(ここでは火点1と同じ位置とする)の近隣にある可視光撮影カメラ120-1の撮影角度変化装置121に対して信号を与えて、可視光撮影カメラ120-1の撮影角度を火災発生地点候補の推定位置に合わせる。ここでは、可視光撮影カメラ120-1のデフォルト時(平常時)はトンネルの前方を映しているが、火災発生地点候補の推定位置が背後であるので、撮影角度変化装置121により可視光撮影カメラ120-1がくるりと背後に回って撮影角度を後方に合わせる。
【0051】
図6は、上側の列の左側に可視光撮影カメラ120-1による可視光撮影画像、上側の列の右側に可視光撮影カメラ120-2による可視光撮影画像、さらに、下側の列の左側に赤外線撮影カメラ110-1による赤外線撮影画像、下側の列の右側に赤外線撮影カメラ110-2による赤外線撮影画像が配列されている。この例では、“火点候補赤外線撮影支援機能”および“火災発生地点候補可視光撮影支援機能”ともに効果的に働き、小さく映っていた火点や事故の様子が大きく映されている。
つまり、複数の角度から赤外線撮影カメラ110によって火点を観察することで、火点の規模、火点の形状、火点の拡大速度などを把握するための情報量を多く取得することができることが分かる。また、複数の角度から可視光撮影カメラ120によって火災発生地点候補を観察することで、実際のトンネル内の状況、走行車両の状態、事故の規模、煙の有無などを把握するための情報量を多く取得することができる。
【実施例0052】
実施例2として、赤外線撮影カメラ、可視光撮影カメラの配置の並びを工夫した例を説明する。
図7は、実施例2にかかる道路トンネル火災検知システム100-2の構成例を示す図である。各部の構成は実施例1と同様で良いが、この実施例2においても、赤外線撮影カメラの撮影角度変化装置111、可視光撮影カメラの撮影角度変化装置121、角度変化制御部130はオプション構成であり、実施例2ではこれら構成がない構成例として説明する。
図7において、各々の赤外線撮影カメラ110,可視光撮影カメラ120自体は実施例1のものと同様で良いが、実施例2では、それぞれが対をなしている。
図7に簡単に示すように、複数個の赤外線撮影カメラ110の配置において、道路トンネル内の走行方向の上流側に撮影角度が設定された赤外線撮影カメラ110-1aと、下流側に撮影方向が設定された赤外線撮影カメラ110-1bが1対をなして配置されている。この一対になったものが道路トンネルに沿って並べられている。
また、同様に、複数個の可視光撮影カメラ110の配置において、道路トンネル内の走行方向の上流側に撮影角度が設定された可視光撮影カメラ120-1aと、下流側に撮影方向が設定された可視光撮影カメラ120-1bが1対をなして配置されている。この一対になったものが道路トンネルに沿って並べられている。
【0053】
図7では簡単に1対ずつの赤外線撮影カメラ110-1a,bと、可視光撮影カメラ120-1a,bが図示されているだけであるが、道路トンネルが長距離である場合は、それらが交互に配置されている。つまり、赤外線撮影カメラ110-1a,b→可視光撮影カメラ120-1a,b→赤外線撮影カメラ110-2a,b→可視光撮影カメラ120-2a,b→赤外線撮影カメラ110-3a,b→可視光撮影カメラ120-3a,b・・・と交互に配置してゆく。
【0054】
ここで両者の関係としては、上流側に撮影角度が設定された赤外線撮影カメラの視野領域と、下流側に撮影角度が設定された可視光撮影カメラ120の視野領域が重複するように並べられている。同様に、下流側に撮影角度が設定された赤外線撮影カメラ110の視野領域と、上流側に撮影角度が設定された可視光撮影カメラの視野領域が重複するように並べられている。
図7では、それらの関係の一例として、下流側に撮影角度が設定された赤外線撮影カメラ110-1bの視野領域と、上流側に撮影角度が設定された可視光撮影カメラ120-1aの視野領域が重複するように並べられている。
図7のように視野領域が重複するように配置することにより、死角が少なくなり、かつ、赤外線画像と可視光画像という異なる種類の画像を得ることができ、監視の多様性が確保される。
【0055】
ここで、図7(b)に示すように、火災が発生したものとする。
この火災は、下流側に撮影角度が設定された赤外線撮影カメラ110-1bの視野領域と、上流側に撮影角度が設定された可視光撮影カメラ120-1aの視野領域にあり、両者によってそれぞれ撮影画像を得ることができる。
図8は、図7(b)に示すように火災が発生した場合において撮影された画像の例を簡単に示している。
図8に示すように、火災の様子を捉えた2種類の画像、つまり、下流側に撮影角度が設定された赤外線撮影カメラ110-1bの赤外線撮影画像と、上流側に撮影角度が設定された可視光撮影カメラ120-1aの可視光撮影画像が得られることとなる。組み合わせ型火災検知手段140は、それぞれの赤外線撮影画像と可視光撮影画像から、より多面的、早期、かつ精度の高い火災の有無の判断を行うことが可能となる。
【0056】
なお、上記の構成例について、赤外線撮影カメラの撮影角度変化装置111、可視光撮影カメラの撮影角度変化装置121、角度変化制御部130を組み込まない例として説明したが、それらオプションが組み込まれ、赤外線撮影カメラ110が一対であり、可視光撮影カメラ120が一対であり、カメラそれぞれが、または対全体として、角度変化を行える構成であっても良い。
【実施例0057】
実施例3として、赤外線撮影カメラ撮影画像と可視光撮影画像に加え、温度検出センサによる温度検出結果を組み合わせた道路トンネル火災検知システム100aの構成例を示す。
図9は、実施例3にかかる本発明の道路トンネル火災検知システム100aの構成例を示す図である。
図9に示すように、道路トンネル火災検知システム100は、赤外線撮影カメラ110、赤外線撮影カメラの撮影角度変化装置111,可視光撮影カメラ120、可視光撮影カメラの撮影角度変化装置121、角度変化制御部130、組み合わせ型火災検知手段140、火点候補検知手段150、火災発生地点候補検知手段160、撮影画像表示手段170、モニタ180に加え、トンネル温度分布実測部190を備えた構成となっている。
【0058】
トンネル温度分布実測部190は、温度検出センサ191、温度検出センサケーブル192を備えた構成となっている。
トンネル温度分布実測部190は、各々の温度検出センサ191ごとの実測値を所定時間ごとに取得して道路トンネル内の温度分布実測データを得るものである。
温度検出センサ191の数や配設間隔などは限定されない。
温度検出センサ191は、温度を検知できるセンサである。例えば、半導体温度センサである。温度検出センサケーブル192に所定間隔で設けられている。
【0059】
温度検出センサケーブル192は、道路トンネル内に道路トンネルの長さ方向に沿って敷設されており、ケーブル内部には温度検出センサ191が一定間隔(標準5mまたは8m)で組み込まれ、道路トンネル内の長さ方向の空間的拡がりをもって温度検出センサ191から測定データを収集できるものである。従来の火災報知器が50m間隔で設置されていたが、温度センサケーブルは5mきざみであるので、より精密な火災制御ができる。
【0060】
図10は、温度検出センサケーブル192の構成例を示す図である。図10(b)は温度センサ191が組み込まれている部分を拡大して示している。図10(b)に示した構成例では、温度検出センサケーブル192は、ケーブルジャケット1921、アルミニウムシールド1922、充填材1923、温度検出センサ191、フレキシブルフラットケーブル1925、充填材1926を備えた例となっている。実際の温度検出センサケーブル192は、例えば、数百mや数キロの長さのケーブルであり、5mきざみに図10に示した温度検出センサ191が組み込まれている。
それぞれの温度検出センサ191は設置個所における温度を計測し、それら温度計測データが設置個所の温度データ、つまり、空間的な拡がりと紐付けられ、トンネル温度分布実測部で収集される。
【0061】
トンネル温度分布実測部190は、温度検出センサケーブル192の各々の温度検出センサ191から収集した温度計測データから道路トンネル内の温度分布データを取得する。
また、この例では、組み合わせ型火災検知手段140における温度データの処理は、各々の温度検出センサ191から得られる温度データをトンネル内の空間的な拡がりを考慮したトンネル内の温度分布データとして収集・組立を行うものとして説明する。
【0062】
組み合わせ型火災検知手段140は、図9に示したように、赤外線撮影カメラ110で撮影した赤外線撮影画像と、可視光撮影カメラ120で撮影した可視光撮影画像と、トンネル温度分布実測部190で得た温度分布実測データを比較して検証するものである。
【0063】
以下、実施例3にかかる組み合わせ型火災検知手段140における火災の発生の判断処理の流れについて説明する。
組み合わせ型火災検知手段140は、トンネル温度分布実測部190の温度分布実測データに基づく火災検知処理を行う。
まず、各々の温度検出センサ191ごとの時間積分値の大きさに基づいて、火災発生の可能性のある個所を推測する。
なお、後述するように、本発明の道路トンネル火災検知システム100は、早期火災検知のため、時間積分を行う時間の範囲、つまり第1の所定期間を短く収める代わりに、火災でないのに火災発生の候補として挙がってしまうものを他の評価方法を複数組み合わせて排除してゆく。
【0064】
例えば、火災発生の推定を30秒以内に収めようとすると、時間積分を行う時間の範囲、つまり第1の所定期間を30秒以内とする必要がある。ここでは、一例として第1の所定期間を30秒とする。
この30秒間にわたり、各々の温度検出センサ191の測定結果の時間積分値を求め、その中で第1のしきい値を超えたものを選出する。
ここで、第1のしきい値の設定であるが、道路トンネルの大きさ(横幅)、道路トンネルの高さ、道路トンネルの長さ、季節、時刻、天候、交通量、など、火災発生時の温度上昇の積分値に与える要素が複数あるため、それら諸条件を踏まえて設定する必要がある。
ここでは、以下の道路トンネル火災実験を行い、第1のしきい値を設定する。
【0065】
いま、火点として、断面積70m2の道路トンネル壁面上部に温度センサケーブル(温度検知センサ間隔4m)を取り付けて疑似火災実験を行った。本実験では、面積1m2、容量12リットルの火皿を用いて発煙の少ないノルマルヘプタンを用いた。
疑似火災の火点となる火皿の設置場所は、温度検出センサの番号13直下で道路トンネル中央(センターライン上)となるよう調整した。ここで、疑似火災の火点位置に最も近い温度検出センサを「火点センサ」と略記することがある。
【0066】
図11に温度センサケーブル出力の時間・空間の温度変化を示す。
図11に示すように、初めは穏やかに温度が上昇してゆき、300秒程度に達するとそれ以上の温度上昇はほぼ無くなりほぼ一定の温度を維持している。図11を見ると、火点センサ近辺に大きなピークが見られ、離れた位置ではそれほど温度は上昇していないことが分かる。このことから火点センサ近辺の温度上昇は他の場所より卓越しているため、温度センサケーブル120を用いた火災検知の妥当性が認められる。
【0067】
ここで、所定時間を30秒とすると、温度変化が十分に得られない場合もあり得るため、検知するしきい値を0.3度程度に設定する。
しかし、30秒経過後の火災検知を達成するために、30秒間の温度検出センサ191の温度上昇の積分値が0.3℃を超えたときに火災検知とみなした場合、火災が発生していない他の要因による温度上昇のパターンも火災とみなしてしまうおそれがある。
そのため、トンネル温度分布実測部190の温度分布実測データに基づく30秒間の温度変化(時間積分値)だけでなく、組み合わせ型火災検知手段140は、赤外線撮影カメラ110の赤外線撮影画像、可視光撮影カメラ120の可視光撮影画像、組み合わせ型火災検知手段140、火点候補検知手段150、火災発生地点候補検知手段160を組み合わせて、複合的に火災検知を判断する。
【0068】
次に、撮影画像表示手段170による監視センターにおけるモニタ180での表示例を示す。
図12は、監視センターにおけるモニタでの表示例を示す図である。上側には、左側に可視光カメラ120の可視光撮影画像と、右側に赤外線カメラ110の赤外線撮影画像がセットになって表示されている。下側には道路トンネルに設置されたトンネル温度分布実測部190の温度分布実測データが表示されている。
【0069】
図13は、火災発生直後の監視センターにおけるモニタでの表示例を示す図である。
火災発生により火災発生地点の実温度が上昇し、画面中、トンネル温度分布実測部190の温度分布実測データにその変化が表れている。しかし、上側の右側の赤外線カメラ110の赤外線撮影画像には火点はまだ現れておらず、左側の可視光カメラ120の可視光撮影画像には停車している車両が映っているが、車両から立ち上る煙が見える。この例では、組み合わせ型火災検知手段140の火災発生地点候補検知手段160によって火災発生地点候補が検知され、角度変化制御部130を介して、赤外線撮影カメラの撮影角度変化装置111、可視光撮影カメラの撮影角度変化装置121に信号が伝送され、近隣にある赤外線撮影カメラ110の撮影角度、可視光撮影カメラ120の撮影角度が当該箇所に向くように可動し、トンネル温度分布実測部190以外の赤外線撮影カメラ110と可視光撮影カメラ120の資源が投入される。
【0070】
図14は、火災発生が一定時間継続した場合の監視センターにおけるモニタ180での表示例を示す図である。画面中、トンネル温度分布実測部190の温度分布実測データにその変化が大きく現れており、上側の右側の赤外線カメラ110の赤外線撮影画像には火点が確認でき、さらに左側の可視光カメラ120の可視光撮影画像には停車している車両が事故車であり、車両から立ち上る煙が濃く見えている。図14の時点で組み合わせ型火災検知手段140は、火災発生の確度が高まったと判断し、火災検知の発報と火災発生位置の情報を監視画面機能に送る。その結果、画面右上部に発報表示が点灯される。同時に火災発生位置に最も近い監視カメラが選択され、表示される。この機能により、オペレータに火災の状況を適確に伝え、オペレータの判断を適切に支援することが可能となる。
【0071】
以上示すように、実施例3にかかる本発明の道路トンネル火災検知システム100aは、一定間隔で温度センサが配置されているという構造的な利点を活用し、組み合わせ型火災検知手段140は、トンネル温度分布実測部190の温度分布実測データと、赤外線撮影カメラ110の赤外線撮影画像と、可視光撮影カメラ120の可視光撮影画像を組み合わせることによって早期火災検知することができる。
【0072】
以上、本発明の道路トンネル火災検知システムの構成例における好ましい実施例を図示して説明してきたが、本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変更が可能であることは理解されるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の道路トンネル火災検知システムは、道路トンネル内の道路トンネル火災検知システムとして広く適用することができる。
【符号の説明】
【0074】
100 道路トンネル火災検知システム
110 赤外線撮影カメラ
111 赤外線撮影カメラの撮影角度変化装置
120 可視光撮影カメラ
121 可視光撮影カメラの撮影角度変化装置
130 角度変化制御部
140 組み合わせ型火災検知手段
150 火点候補検知手段
160 火災発生地点候補検知手段
170 撮影画像表示手段
180 モニタ
190 トンネル温度分布実測部
191 温度検出センサ
192 温度検出センサケーブル
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