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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147954
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】車両構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
B62D25/08 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021049440
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】杉原 也
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BB38
3D203BB39
3D203BC03
3D203CA55
3D203CB03
3D203CB09
3D203CB19
3D203DA39
(57)【要約】
【課題】重量や製造コストが嵩む不具合を抑制しつつ、フード用ヒンジの建付け剛性を合理的な手段によって適切に高めることが可能な車両構造を提供する。
【解決手段】フード用ヒンジ4、フェンダ用ブラケット5、およびエンジンルーム10の側部に位置する車両構成部材3を備えている、車両構造Aであって、車両構成部材3は、第1の起立壁部31の上部に屈曲状に繋がった上壁部34を備えて、この上壁部34にフード用ヒンジ4が取付けられており、上壁部34の一端部34aには、フェンダ用ブラケット5が接合されて、その一部は一端部34aから下向きに延びる第2の起立壁部52とされ、上壁部34の他端部34bには、車両構成部材3および/またはこれとは別の追加の車両構成部材2により形成され、かつ他端部34bから下向きに延びて第2の起立壁部52に対向する第3の起立壁部23が繋がっている。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンルーム用のフードを回転可能に支持するためのフード用ヒンジと、
フロントフェンダパネルの取付けを図るためのフェンダ用ブラケットと、
前記エンジンルームの側部に設けられ、かつ車両前後方向に幅をもって上下高さ方向に延びる第1の起立壁部を有する車両構成部材と、
を備えている、車両構造であって、
前記車両構成部材は、前記第1の起立壁部の上部に屈曲状に繋がって前記第1の起立壁部の幅方向に延びる上壁部を備え、かつこの上壁部に、前記フード用ヒンジが取付けられており、
前記上壁部の前記幅方向の一端部には、前記フェンダ用ブラケットが接合され、かつ前記フェンダ用ブラケットの一部は、前記一端部から下向きに延びる第2の起立壁部とされており、
前記上壁部の前記幅方向の他端部には、前記車両構成部材および/または前記車両構成部材とは別部材である追加の車両構成部材により形成され、かつ前記他端部から下向きに延びて前記第2の起立壁部に対向する第3の起立壁部が繋がって設けられていることを特徴とする、車両構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの車両構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両構造の具体例として、本出願人は、たとえば特許文献1に記載の構造を先に提供している。
同文献に記載の車両構造においては、フロントフェンダパネルの取付けを図るためのフェンダ用ブラケットが、エンジンルームの側部のアッパメンバ(車両構成部材の一例)に取付けられている。また、エンジンルーム用のフードを回転可能に支持するためのフード用ヒンジも、前記アッパメンバに取付けられている。フード用ヒンジの一部は、フェンダ用ブラケットの上側に配置されている。
前記車両構造によれば、歩行者が車両との衝突によってはね上げられ、フードおよびフロントフェンダパネルにその上側から衝突した場合、その衝突荷重の一部は、フェンダ用ブラケットに入力し、このフェンダ用ブラケットは変形する。また、フード用ヒンジに作用する荷重も、フェンダ用ブラケットに入力し、このことによってもフェンダ用ブラケットは変形するようになっている。その結果、フェンダ用ブラケットを、前記衝突荷重に対するエネルギ吸収部材として効果的に機能させることができる。
【0003】
しかしながら、従来においては、次に述べるように、未だ解決すべき課題がある。
すなわち、フード用ヒンジは、フードの重量を負担した状態でフードの円滑な回転動作を生じさせる必要があるため、その建付け剛性を高くする必要がある。
ただし、そのための手段として、フード用ヒンジが取付けられる箇所の部材の板厚を大きくする手段、あるいは補強部材を追加するとった手段を単に採用しただけでは、重量や製造コストが嵩むこととなり、適切でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-203138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、重量や製造コストが嵩む不具合を抑制しつつ、フード用ヒンジの建付け剛性を合理的な手段によって適切に高めることが可能な車両構造を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0007】
本発明により提供される車両構造は、エンジンルーム用のフードを回転可能に支持するためのフード用ヒンジと、フロントフェンダパネルの取付けを図るためのフェンダ用ブラケットと、前記エンジンルームの側部に設けられ、かつ車両前後方向に幅をもって上下高さ方向に延びる第1の起立壁部を有する車両構成部材と、を備えている、車両構造であって、前記車両構成部材は、前記第1の起立壁部の上部に屈曲状に繋がって前記第1の起立壁部の幅方向に延びる上壁部を備え、かつこの上壁部に、前記フード用ヒンジが取付けられており、前記上壁部の前記幅方向の一端部には、前記フェンダ用ブラケットが接合され、かつ前記フェンダ用ブラケットの一部は、前記一端部から下向きに延びる第2の起立壁部とされており、前記上壁部の前記幅方向の他端部には、前記車両構成部材および/また
は前記車両構成部材とは別部材である追加の車両構成部材により形成され、かつ前記他端部から下向きに延びて前記第2の起立壁部に対向する第3の起立壁部が繋がって設けられていることを特徴としている。
【0008】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、フード用ヒンジは、エンジンルームの側部に固定して設けられた車両構成部材の所定の上壁部に取付けられているが、この上壁部は、車両構成部材の第1の起立壁部の上部に屈曲状に繋がって設けられただけの部位ではなく、その両端部には、第2および第3の起立壁部が繋がり、これらの部位によってバックアップされて補強された構成となっている。第1ないし第3の起立壁部は、上壁部の下方領域の三方を囲む枠状の配置となるため、上壁部を補強する効果はより高いものとなる。したがって、フード用ヒンジの建付け剛性を高めることが可能である。
その一方、第1の起立壁部の上部に設けられた上壁部を補強する第2および第3の起立壁部のうち、第3の起立壁部は、第1の起立壁部や上壁部を具備する車両構成部材、またはこれとは別の追加の車両構成部材を用いて構成されているが、第2の起立壁部については、フェンダ用ブラケットを用いて構成しているため、その構成は合理的である。全体の部品点数の増加を抑制し、重量の軽量化、製造コストの低減化などを適切に図ることが可能である。
その他、車両構成部材の第1の起立壁部は、車両前後方向に幅をもって上下高さ方向に起立する部位であるため、前記車両構成部材としては、たとえばカウル内に取付けられたカウルサイドブラケットを好適に用いることが可能である。
【0009】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る車両構造の一例を示す要部概略斜視図である。
図2図1に示す車両構造のフロントフェンダパネルやフードを透視した状態の要部概略斜視図である。
図3図2の概略側面断面図である。
図4図2の矢視IVの概略斜視図である。
図5図2に示す構造の作用の一例を示す要部概略側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0012】
図1に示す車両構造Aは、車両の前部に設けられたエンジンルーム10を覆うためのフード11、フロントピラー12の下部の車両前方側および下方側領域に設けられたフロントフェンダパネル13、およびエンジンルーム10内の車両後方側に位置して車幅方向に延びる凹溝形状のカウル2を備えている。
エンジンルーム10は、本来的には、たとえば内燃機関としてのエンジンに変速機を組み合わせたパワーユニットなどを内部に収容する部位であるが、これに限定されない。車両を電気自動車、あるいはハイブリッド車とする場合、それに応じてエンジンルーム内に配されるパワーユニットの種類は異なったものとなる。
【0013】
図2によく表れているように、カウル2の車幅方向端部の内側には、カウルサイドブラケット3が具備されている(図3図4も参照)。このカウルサイドブラケット3は、本発明でいう「車両構成部材」の具体例に相当し、このカウルサイドブラケット3に、フード用ヒンジ4(図2図4において、網点模様を付した部材)、およびフェンダ用ブラケット5が取付けられている。
各図においては、車両構造Aとして、車幅方向の片側の構造が詳細に示されており、反対側の構造は省略されているが、この反対側の構造は、片側の構造と同様である。
【0014】
フード用ヒンジ4は、図1に示したフード11への取付けが図られるアーム部40,41と、これらアーム部40,41を回転支点42を介して回転可能に支持する固定ベース部43とを備えている。固定ベース部43は、カウルサイドブラケット3の後述する上壁部34に取付けられている。この取付け手段としては、ボルト9を利用したボルト締結手段が採用されており、上壁部34には、それに対応するボルト挿通用穴39が設けられている。ただし、たとえば溶接など、ボルト締結以外の手段を採用することができる。
【0015】
カウルサイドブラケット3は、たとえば金属板にプレス加工を施すことにより構成されており、第1の起立壁部31、上壁部34、および起立片部35a,35bを備えている。第1の起立壁部31は、カウルサイドブラケット3の主要部をなす壁部であって、車両前後方向に適当な幅をもって上下高さ方向に起立した略板状の起立壁部である。この第1の起立壁部31は、その全体の外形およびサイズが、カウル2の内面部に対応したものとされ、カウル2の内側に嵌入した状態でカウル2に接合(溶接)されている。この接合を頑丈にするための手段として、カウルサイドブラケット3には、カウル2の内面部に当接して接合されるフランジ片部36,37がさらに設けられている。これらフランジ片部36,37は、第1の起立壁部31に一体かつ屈曲状に繋がっている。
【0016】
カウルサイドブラケット3の上壁部34は、第1の起立壁部31の上部に屈曲状に繋がって設けられ、第1の起立壁部31の幅方向(車両前後方向)に延びた平面視略矩形の板状の壁部である。この上壁部34には、既述したように、フード用ヒンジ4が取付けられているが、これに加えて、フェンダ用ブラケット5も取付けられている。
【0017】
フェンダ用ブラケット5は、カウルサイドブラケット3と同様に、いわゆる板金製であり、フロントフェンダパネル13との取付けが図られる上板部50、この上板部50から下向きに延びる上下起立板部51、およびこの上下起立板部51に連設されたリブ53,53aなどを備えている。一方、カウルサイドブラケット3の上壁部34の一端部34aには、上向きの起立片部35aが設けられている。この起立片部35aに上下起立板部51が重ねられて溶接されており、このことにより、カウルサイドブラケット3に対するフェンダ用ブラケット5の取付けが図られている。この取付け態様においては、上壁部34の一端部34aに、フェンダ用ブラケット5の上下起立板部51が接合され、かつこの上下起立板部51の一部は、一端部34aから下向きに延びる起立壁部52(第2の起立壁部52)となっている。第2の起立壁部52(リブ53も)は、第1の起立壁部31にも接合(溶接)されている。
【0018】
図3によく表れているように、フェンダ用ブラケット5の上下起立板部51の途中箇所には、上方から所定以上の荷重を受けた場合に、他の部分と比較して折れ変形を生じ易い剛性断点RPが設けられている。この剛性断点RPは、上下起立板部51に屈曲部を設けること、あるいはリブ53aの幅を部分的に小さくすることなどによって設けられている。これに対し、カウルサイドブラケット3の起立片部35aは、その上端高さが、剛性断点RP以下の高さとされ、上下起立板部51の剛性断点RP以下の高さ領域をバックアップしたかたちとなっている。これは、図5を参照して後述する作用を生じさせる。
【0019】
本実施形態においては、カウルサイドブラケット3の上壁部34の他端部34bは、カウル2の上下高さ方向に起立した壁部に接合されており、カウル2の一部(前記壁部のうち、他端部34bの下側領域)は、他端部34bから下向きに延びる起立壁部23(第3の起立壁部23)である。この第3の起立壁部23は、車両前後方向において第2の起立壁部52に対向している。なお、第3の起立壁部23がカウル2の一部であるため、この
カウル2は、本発明でいう「追加の車両構成部材」の具体例に相当する。
上壁部34の他端部34bには、カウル2に接合された上向きの起立片部35bが設けられているが、この起立片部35bは、上壁部34の他端部34bを起点としてその下側に延びる部位ではないため、本発明でいう第3の起立壁部には含まれない。また、カウルサイドブラケット3のフランジ片部36は、上壁部34の他端部34bの下方に位置するものの、他端部34bとは離間しているため、このフランジ片部36も、本発明でいう第3の起立壁部には含まれない。
【0020】
次に、前記した車両構造Aの作用について説明する。
【0021】
まず、フード用ヒンジ4は、カウルサイドブラケット3の上壁部34に取付けられているが、この上壁部34は、カウルサイドブラケット3の第1の起立壁部31の上部に屈曲状に繋がって設けられているだけではない。上壁部34の一端部34aには、第2の起立壁部52が繋がり、かつ他端部34bには、第3の起立壁部23が繋がり、これら第2および第3の起立壁部52,23は相互に対向した構成にある。ここで、第1ないし第3の起立壁部31,52,23は、上壁部34の下方領域の三方を囲む枠状をなしており、上壁部34を効果的に補強する。その結果、フード用ヒンジ4の建付け剛性を十分に高めることができる。
【0022】
フード用ヒンジ4の取付け部位である上壁部34は、カウルサイドブラケット3の第1の起立壁部31の上側部分を屈曲することにより簡易に構成することが可能である。また、上壁部34を補強する第2および第3の起立壁部52,23は、フェンダ用ブラケット5およびカウル2をそれぞれ利用して構成されているが、これらは車両に元々設けられる部材であり、それ専用の部材を別途用いて組み付ける必要はない。このようなことから、車両構造Aの全体の構成を合理的なものとして、全体の部品点数の増加を抑制することができる。したがって、重量の軽量化や製造コストの低減化などを適切に図ることも可能である。
【0023】
歩行者が車両との衝突によってはね上げられ、フード11やフロントフェンダパネル13に衝突することにより、図5に示すように、フェンダ用ブラケット5の上板部50に荷重Fが入力する場合がある。これに対し、フェンダ用ブラケット5には、剛性断点RPが予め設けられているため、この位置でフェンダ用ブラケット5を曲げ変形させ、衝突エネルギを吸収する作用を得ることができる。本実施形態においては、カウルサイドブラケット3の起立片部35aが、フェンダ用ブラケット5に接合され、しかもその高さは、剛性断点RPの高さ以下の高さ(好ましくは、同一高さ、または僅かに低い高さ)とされている。このため、剛性断点RPの位置における曲げ変形が、より確実化される。その一方、フェンダ用ブラケット5に曲げ変形を生じさせるための手段として、剛性断点RPの強度をさほど低くする必要はなくなる。その結果、フェンダ用ブラケット5全体の強度アップを図り、通常走行時におけるフェンダ用ブラケット5のぐらつきなどを適切に防止または抑制することも可能となる。
【0024】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る車両構造の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0025】
上述の実施形態においては、カウル2の一部が、第3の起立壁部23とされているが、本発明はこれに限定されない。本発明でいう第3の起立壁部は、たとえばカウルに代えて、カウルサイドブラケットの一部によって構成し、またカウルサイドブラケットとカウルとのそれぞれの一部を組み合わせて構成してもよい。
【0026】
本発明でいう「車両構成部材」は、カウルサイドブラケットに限定されず、たとえばエ
プロンメンバなどの他の部材とすることができる。本発明でいう「追加の車両構成部材」は、カウルに限定されず、これ以外の部材とすることもできる。
フード用ヒンジやフェンダ用ブラケットの具体的な形状、サイズ、材質などは限定されない。
【符号の説明】
【0027】
A 車両構造
10 エンジンルーム
11 フード
13 フロントフェンダパネル
2 カウル(追加の車両構成部材)
23 第3の起立壁部
3 カウルサイドブラケット(車両構成部材)
31 第1の起立壁部
34 上壁部(カウルサイドブラケットの)
34a 一端部(上壁部の)
34b 他端部(上壁部の)
4 フード用ヒンジ
5 フェンダ用ブラケット
52 第2の起立壁部
図1
図2
図3
図4
図5