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特開2022-147966船舶用LNG燃料供給システム及びバンカリングタンクユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147966
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】船舶用LNG燃料供給システム及びバンカリングタンクユニット
(51)【国際特許分類】
   F17C 6/00 20060101AFI20220929BHJP
   B63H 21/38 20060101ALI20220929BHJP
   B63B 25/08 20060101ALI20220929BHJP
   B63B 27/24 20060101ALI20220929BHJP
   B67D 9/00 20100101ALI20220929BHJP
【FI】
F17C6/00
B63H21/38 B
B63B25/08 B
B63B27/24 A
B67D9/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021049460
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000158312
【氏名又は名称】岩谷産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】金枝 敏克
【テーマコード(参考)】
3E083
3E172
【Fターム(参考)】
3E083BB20
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB04
3E172BA06
3E172BB05
3E172BB13
3E172BB17
3E172BD01
3E172BD04
3E172EA03
3E172EA22
3E172EA51
3E172JA08
(57)【要約】
【課題】LNG燃料船の大小に関係なくより短時間でしかも効率よくLNGバンカリングが行えるようにする。
【解決手段】LNG供給者12からLNG燃料船13へLNGを供給する船舶用LNG燃料供給システム11において、LNG供給者12とLNG燃料船13との間を仲立ちするとともに、陸上又は水上で移動可能な載置台41に搭載されたバンカリングタンク42を備える。LNG供給者12として、複数台のタンクローリー12aを用いて、すべてのタンクローリー12aからバンカリングタンク42に向けてLNGを差圧圧送で注入する。同時に、又は時間をずらして、バンカリングタンク42内に注入されたLNGをLNG燃料船13に向けてポンプ43で送り込む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
LNG供給者からLNG燃料船へLNGを供給する船舶用LNG燃料供給システムであって、
前記LNG供給者と前記LNG燃料船との間を仲立ちするとともに、陸上又は水上で移動可能な載置台に搭載されたバンカリングタンクを備え、
前記LNG供給者として、複数台のタンクローリーを用い、
すべての前記タンクローリーから前記バンカリングタンクに向けてLNGを差圧圧送で注入し、
前記バンカリングタンク内に注入されたLNGを前記LNG燃料船に向けてポンプで送り込む
船舶用LNG燃料供給システム。
【請求項2】
前記バンカリングタンクの容量が陸上輸送可能な大きさであるとともに、
前記タンクローリーから前記バンカリングタンクに向けてのLNGの注入と、前記バンカリングタンクから前記LNG燃料船に向けてのLNGの送り込みを同時に行う
請求項1に記載の船舶用LNG燃料供給システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の前記バンカリングタンク、前記バンカリングタンク内に備えられた前記ポンプ、及び前記バンカリングタンクを載置する前記載置台と、
端末に前記タンクローリーと接続される入口側接続口を有し前記バンカリングタンクに向けて延びる複数の導入ラインと、
前記導入ラインから延びて前記バンカリングタンク内の上部に接続されてLNGを噴霧するバイパスラインと、
前記ポンプから延びて端末に前記LNG燃料船と接続される出口側接続口を有する供給ラインを備えた
バンカリングタンクユニット。
【請求項4】
前記バンカリングタンクの前段に複数の前記導入ラインを接続する集合管が備えられ、
前記集合管の端に別のバンカリングタンクユニットの集合管が接続される集合管接続部が設けられ、
前記供給ラインに、別のバンカリングタンクユニットの供給ラインが接続される供給ライン接続部が設けられた
請求項3に記載のバンカリングタンクユニット。
【請求項5】
すべての前記導入ラインにおける前記入口側接続口の後段同士を接続すると共に前記バイパスラインに接続される均圧ラインを設けた
請求項3または請求項4に記載のバンカリングタンクユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、LNG(液化天然ガス)を燃料とするLNG燃料船に対してLNG燃料供給を行う船舶用LNG燃料供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
船舶の排出ガス規制の強化が世界的に進められており、これに伴ってLNGを燃料としたLNG燃料船の普及が求められている。普及させるためにはLNG燃料の供給(LNGバンカリング)をより行いやすくする必要がある。
【0003】
LNGバンカリングには、次の3つの方法がある。すなわち、Lorry to Shipバンカリング、Terminal to Shipバンカリング、Ship to Shipバンカリングである。
【0004】
Lorry to Shipバンカリングは、例えば下記特許文献1、2に開示されているように、タンクローリーからLNG燃料船に対して直接LNGを供給する方法である。つまり、岸壁にタンクローリーを停車し、岸壁に係留中のLNG燃料船にLNG供給ライン(配管)を接続してLNGを移送する。通常、タンクローリーはポンプを有しておらず、タンク加圧方式による差圧圧送でLNGの移送がなされる。
【0005】
しかし、LNG燃料船が大型であって岸壁と船体との間に大きな高低差ができてしまう場合には、適正な差圧を得ることができず、バンカリングに時間がかかるという難点がある。また、タンクローリーのタンク容量には限界があるので、LNG燃料船が大型であれば何十台ものタンクローリーが必要になる。
【0006】
このような方法は、初期投資が少なくて良い点はあるものの、中型や大型のLNG燃料船への燃料供給には不向きで現実的ではなく、この方法の使用は主に小型船に限られていた。
【0007】
Terminal to Shipバンカリングは、岸壁等に係留中のLNG燃料船に対して陸上のLNGターミナルからLNGを供給する方法である。
【0008】
この方法の場合、大型船に対しての燃料供給が可能であるが、既存のLNG基地でLNG燃料供給用の内航出荷バースを持つ基地は少ない。このため、LNG燃料供給用出荷バースを保有する基地周辺を航行する固定航路の船舶向けには有利といえるものの、広く採用できる方法ではない。
【0009】
また、LNG燃料船はLNGターミナルを有する岸壁等に係留されるので、係留した場所が貨物の荷役をする場所と離れている場合には、燃料供給中はLNG燃料船の荷役は不可能である。このため、船舶の貨物輸送効率を上げることはできない。
【0010】
Ship to Shipバンカリングは、岸壁に係留中、又は錨地に停泊中のLNG燃料船に対してLNGバンカリング船を接続してLNG供給を行う方法である。
【0011】
LNGバンカリング船のタンク容量は陸上を走行するタンクローリーと異なり大きくできるので、大型船への燃料供給が可能である。
【0012】
しかし、小型船に対する燃料供給は不経済となってしまう。しかも、LNGバンカリング船に対してLNG燃料を供給するためにLNG基地に内航出荷バースが必要であるが、前述のようにそれを有する基地は少ないため、この方法を採用できる港湾は限られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特表2011-503463号公報
【特許文献2】特許第6427679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
前述のいずれの方法もそれぞれ一長一短があり、LNG燃料船を普及させるために広く採用できる方法ではなかった。
【0015】
そこで、この発明は、LNG燃料船の大小に関係なくより短時間でしかも効率よくLNGバンカリングが行えるようにすることを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
そのための手段は、LNG供給者からLNG燃料船へLNGを供給する船舶用LNG燃料供給システムであって、前記LNG供給者と前記LNG燃料船との間を仲立ちするとともに、陸上又は水上で移動可能な載置台に搭載されたバンカリングタンクを備え、前記LNG供給者として、複数台のタンクローリーを用い、すべての前記タンクローリーから前記バンカリングタンクに向けてLNGを差圧圧送で注入し、前記バンカリングタンク内に注入されたLNGを前記LNG燃料船に向けてポンプで送り込む船舶用LNG燃料供給システムである。
【0017】
この構成では、LNGはLNG供給者であるタンクローリーからバンカリングタンクに注入されたのち、LNG燃料船に向けて送り出される。バンカリングタンクは載置台に搭載されており陸上又は水上で移動可能であり、タンクローリーとLNG燃料船の間において中継として機能し、LNGの受け渡しを行う。つまり、バンカリングタンクをタンクローリーとLNG燃料船の双方に近い位置に置いてLNGの連続した供給を行うほか、一旦タンクローリーの近くでLNGを受け取ったバンカリングタンクをLNG燃料船の近くに移動してからLNG燃料の供給を行うという段階的な方法も取れる。
【0018】
タンクローリーからバンカリングタンクへの差圧圧送は、タンクローリーから大型船に接続する場合とは異なり両者の高さを同じようなレベルにすることができるため、タンク加圧による差圧圧送でも十分円滑に行われる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、移動可能なバンカリングタンクを仲立ちとして採用して、LNG供給者からの受け入れとLNG燃料船への送り出しをそれぞれ円滑に行えるように構成するともとに、バンカリングタンクの大きさはLNGの供給量に影響しない構成である。このため、LNG燃料船の大小に関係なくより短時間でLNGバンカリングを行うことができる。
【0020】
また、タンクローリーが停車できる岸壁等であればそこから直接又は間接にLNGバンカリングを行うことができる。貨物荷役中のLNGバンカリングも可能である。このため、LNG燃料を供給できる範囲や供給できる機会を拡大して、LNG燃料船の普及に大いに貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】船舶用LNG燃料供給システムの概略構成図。
図2】車両に搭載したバンカリングタンクユニットを有する船舶用LNG燃料供給システムを示す概略構成図。
図3】船体に搭載したバンカリングタンクユニットを有する船舶用LNG燃料供給システムを示す概略構成図。
図4】他の例に係るバンカリングタンクユニットの概略構成図。
図5】他の例に係るバンカリングタンクユニットの概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
【0023】
図1に、船舶用LNG燃料供給システム11(以下、「燃料供給システム」という)を示す概略構成図を示す。この燃料供給システム11は、LNG供給者12が有するLNGを、LNGを燃料とするLNG燃料船13に対して供給するためのものであり、LNG供給者12と、LNG燃料船13と、これらの仲立ちとなるバンカリングタンクユニット14とで構成されている。
【0024】
まず、LNG供給者12とLNG燃料船13について簡単に説明したのち、バンカリングタンクユニット14について説明する。
【0025】
LNG供給者12としてはタンクローリー12aを使用する。LNGを移送するタンクローリー12aは公知のものであり、LNGバンカリングに必要な量の供給量が得られるように複数台のタンクローリー12aが用いられる。使用されるタンクローリー12aのタンク容量はすべて同じであっても、互いに相違してもよい。
【0026】
これら複数台のタンクローリー12aに積載されたLNGは、バンカリングタンクユニット14で合流されてからLNG燃料船13に供給される構成である。
【0027】
LNG燃料船13も公知のものであり、燃料タンク13aを有している。燃料タンク13aにはLNG燃料を供給するためのLNG(液体)を通す燃料供給路13bと、ボイルオフガス(気体)を通すガス流路13cを備えている。LNG燃料船13の燃料タンク13aの大きさは特に限定されるものではない。
【0028】
バンカリングタンクユニット14は、陸上又は水上で移動可能な載置台41に搭載されたバンカリングタンク42を有している。バンカリングタンク42は、燃料供給の際に仲立ち又は中継として用いられるタンクであり、超低温であるLNGを貯留できるように真空二重殻貯槽や低温断熱貯槽のような断熱性貯槽で構成されている。バンカリングタンク42の容量は適宜設定され得るが、陸上を移動可能するため載置台41としての車両41a(図2参照)に搭載する場合には、大きさに制限が生じる。
【0029】
バンカリングタンク42の内部、つまりLNGを貯留する部分には、LNGを送り出すためのポンプ43が備えられている。ポンプ43の能力や設置数は、主にバンカリングタンク42の容量に応じて定められる。
【0030】
バンカリングタンク42を載置する載置台41は、陸上移動を可能とする車両41a、また水上移動を可能とする船体41bで構成される。車両41aからなる載置台41は図2に、船体41bからなる載置台41は図3に示している。バンカリングタンク42は載置台41に対して固定的に搭載されるものであっても、分離できるように構成されて、必要に応じて搭載されるものであってもよい。
【0031】
車両41aからなる載置台41は、バンカリングタンク42の容量が陸上輸送可能な大きさであるので、タンクローリー12aの車体(トレーラーシャーシ)と同程度の大きさである。船体41bからなる載置台41には、既存のバージ船を用いることができる。
【0032】
前述したように陸上を移動させるバンカリングタンク42では大きさに制限が生じるが、水上を移動するバンカリングタンク42とする場合には大きさに制限はなく、バンカリングタンク42の容量を陸上で使用するものよりも大きくできる。
【0033】
バンカリングタンク42の前段(入口側)には、バンカリングタンク42にLNGを導入するための複数の導入ライン44が備えられ、後段(出口側)には、LNG燃料船13へ向けてLNGを送り出す供給ライン45が備えられる。
【0034】
導入ライン44は、バンカリングタンク42の容量と接続するタンクローリー12aの台数に見合った本数設けられ、バンカリングタンク42の底部に接続されている。導入ライン44におけるバンカリングタンク42の前段には、複数の導入ライン44を接続する集合管46が設けられて、導入ライン44を通るLNGが集合管46で一旦合流するように構成される。集合管46の口径は導入ライン44の口径よりも大きい。
【0035】
導入ライン44は、タンクローリー12aのLNGをバンカリングタンク42に向けて差圧圧送する流路であり、端末にはタンクローリー12aのLNGを注入する注入管15が接続される入口側接続口47を有している。入口側接続口47のほか、導入ライン44は差圧圧送に必要な機器を備えている。すなわち、端末側から順に、ベントに利用される開閉弁71、安全弁72、圧力計73、窒素によるエアパージのための開閉弁74、仕切弁75、流量を自動調節する流量調整弁ユニット76を備えている。
【0036】
導入ライン44同士を集合させる集合管46には、バンカリングタンク42内の上部に接続されるバイパスライン48が接続されている。バイパスライン48は先端にスプレーノズル49を有している。これは、バンカリングタンク42の気相部分にLNGを噴霧可能にするためであり、必要に応じてLNG噴霧を行うことによってバンカリングタンク42内の温度を下げて内圧をタンクローリー12aのタンクの内圧よりも低くして差圧圧送を行うためである。
【0037】
LNG噴霧のため、バイパスライン48は仕切弁77と流量を自動調節する流量調整弁ユニット78を上流側から順に備えている。
【0038】
供給ライン45は、ポンプ43から延びており、ポンプ43が複数の場合には合流して、端末に出口側接続口50が設けられている。出口側接続口50は、LNG燃料船13へLNGを送り出す送出管16が接続される部分である。
【0039】
供給ライン45の途中には、圧力監視のための圧力計79と安全弁80が設けられている。
【0040】
また供給ライン45と一部平行して、ボイルオフガスを通すガス流路51も備えられている。ガス流路51はバンカリングタンク42の上部の気相部分から延びており、端末には管体17によってLNG燃料船13のガス流路13cと接続される接続口52を有している。
【0041】
なお、前述の圧力計73,79、流量調整弁ユニット76,78などは、図示しない制御部に接続されており、流量調整弁ユニット76,78は必要に応じ自動制御される。
【0042】
以上のように構成された燃料供給システム11では、次のようにしてLNGバンカリングが行われる。
【0043】
まず、図2に示したようにバンカリングタンクユニット14が陸上移動可能な構成である場合について説明する。
【0044】
バンカリングタンクユニット14のバンカリングタンク42の大きさなどを一例として示すと、バンカリングタンク42の容量は、例えば10~20m程度にすることができる。これは、国内のタンクローリー1台分の搭載量(約38m、約15ton)を勘案しての数値である。タンクローリー12aの液払出について付言すると、払出口径は50Aであり、払出最大流量は約36m/hである。このため、タンクローリー12aを例えば8台接続すると仮定すると、タンクローリー12aからの送出量は最大288m/hとなる。
【0045】
前述した大きさのバンカリングタンク42の場合、ポンプ43は吐出し量が150m/h程度のものを2本用いるとよい。これによって、LNG燃料船13への移送量は最大300m/hとなり、大量のLNG燃料供給が行える。
【0046】
LNGバンカリングに際しては、まず、バンカリングタンクユニット14を搭載した車両41aを燃料供給がなされる岸壁に停車させるとともに、その近くに複数台のタンクローリー12aを停車させる。その後、機器設備の準備を行い、LNG燃料船13を接岸させ係留する。
【0047】
続いて、複数台のタンクローリー12aとバンカリングタンクユニット14の複数の入口側接続口47をそれぞれ注入管15で接続する。同様に、バンカリングタンクユニット14の出口側接続口50とLNG燃料船13を送出管16で接続する。ガス流路51の接続口52もLNG燃料船13に対して管体17で接続する。
【0048】
通信ライン(図示せず)を含めてすべての接続が完了した後、窒素ガスまたはタンクローリー12aのガス層のNG(天然ガス)を使ってLNGが通るラインのエアパージを行う。
【0049】
つぎに、ポンプ43を含めてLNGが通るラインのクールダウンを行う。つまり、仕切弁75と流量調整弁ユニット76を開いて導入ライン等に低温のNGと少量のLNGを徐々に流させる。これによってバンカリングタンク42内を含めてLNGが通るラインを冷却する。
【0050】
このあと、LNGの送液を開始して、流量を徐々に増やす。バンカリングタンク42にはLNGが差圧により注入される。
【0051】
LNGの送液開始操作と平行して、バンカリングタンク42内のポンプ43を駆動する。ポンプ43の駆動によりバンカリングタンク42内に注入されたLNGは供給ライン45を通ってLNG燃料船13の燃料タンク13aに送り出される。
【0052】
このとき、LNG燃料船13の燃料タンク13aの内圧は監視され、送液量を含めて送液制御を行う。バンカリングタンク42については圧力計73,79により監視され、それに基づいて流量調整弁ユニット76,78が開閉されて流量調整がなされるとともに、LNG噴霧が行われる。
【0053】
このようにして、タンクローリー12aからバンカリングタンク42に向けてのLNGの注入と、バンカリングタンク42からLNG燃料船13に向けてのLNGの送り込みが同時に行われる。タンクローリー12aからバンカリングタンク42に向けてのLNGの流量と、バンカリングタンク42からLNG燃料船13に向けてのLNGの流量は、いずれか一方が過大にならないようにバランスよく行う。
【0054】
LNG燃料船13への送液量が所定量に達すると送液を完了し、ライン内のLNGをLNG燃料船13の燃料タンク13aに押し込むドレイニングや、ライン内のNGパージを行ってから、バンカリングタンクユニット14を切り離す。
【0055】
LNG燃料船13への送液終了時に、バンカリングタンク42にはLNGが残っていてもよい。
【0056】
バンカリングタンク42にはポンプ43を内蔵しているので、バンカリングタンク42にLNGを残した場合には、送液開始に際してのポンプ43のクールダウンを簡略化できる。
【0057】
またポンプ43は、バンカリングタンク42やタンクローリー12a直近に外付けした場合と比較すると、吸込ヘッドを確保しやすいという利点も有する。
【0058】
以上のようにしてLNGバンカリングがなされるので、LNG燃料船13の大小に関係なく、既存の装置を極力利用して、より短時間でLNGバンカリングを行うことができる。
【0059】
つまり、LNG供給者12がタンクローリー12aであり、タンクローリー12aは特別な装置変更なしにそのまま利用できるので、初期投資を抑えられる。
【0060】
また、バンカリングタンクユニット14は移動式であるので、港内空間を常時占有することはなく、必要に応じた柔軟な使用ができる。
【0061】
さらにLNGバンカリングでは、所望の供給量に見合ったLNGを、移動可能な複数台のタンクローリー12aからバンカリングタンク42に受け入れつつ、同時にLNG燃料船13に送り出す。タンクローリー12aから車両41aに搭載されたバンカリングタンク42への差圧圧送は、両者の高さは同じレベルであるので、差圧不足を生じさせることなく円滑に行える。しかも、タンクローリー12aにLNGが残ることを防止できる。また、バンカリングタンク42からLNG燃料船13への送り出しはポンプ43で行うので、この移送もLNG燃料船13の大きさに関係なく円滑に行える。このため、燃料供給をより短時間で行うことができる。
【0062】
しかも、バンカリングタンク42の大きさはLNGの供給量に影響しない構成である。つまり、バンカリングタンク42の容量がLNG燃料船13の燃料タンク13aよりも小さくても、タンクローリー12aから供給されるLNGを順次LNG燃料船13へ送り出して必要量を供給できる構成であるので、LNG燃料船13の大小に関係なく燃料供給が行える。
【0063】
また、LNGバンカリングはLNG燃料船13が貨物荷役停泊地に係留される場合でも、タンクローリー12aとバンカリングタンクユニット14を配置することができれば、貨物の荷役中でも行える。このため、停泊時間を有効に利用することができ、燃料供給が円滑に行えることと相まって、一連の作業の効率化を図れる。
【0064】
次に、図3に示したようにバンカリングタンクユニット14が水上移動可能な構成である場合について説明する。この説明において前述と同一の事項については説明を省略する。
【0065】
バンカリングタンクユニット14のバンカリングタンク42の大きさなどを一例として示すと、バンカリングタンク42の容量は、例えば200~500m程度にすることができる。これは、前述と同様に国内のタンクローリー1台分の搭載量(約38m、約15ton)を勘案しての数値である。ポンプ43は吐出し量が150~250m/h程度のものを2本用いるとよい。
【0066】
このようなバンカリングタンクユニット14を用いたLNGバンカリングは、バンカリングタンク42に向けてのLNGの注入と、バンカリングタンク42からのLNGの送り込みを同期して連続的に行うのではなく、段階的に行うことができる。
【0067】
すなわち、バンカリングタンクユニット14を船体41bとしてのバージ船に搭載してそのバージ船を、又は予めバンカリングタンクユニット14が備えられた船体41bを、複数台のタンクローリー12aが停車される岸壁に接岸させる。
【0068】
この状態でタンクローリー12aからバンカリングタンク42に対してLNGを差圧圧送により供給する。バージ船搭載のバンカリングタンクユニット14であれば陸上におけるタンクローリー12aからの移送と同様に、高さが同じレベルであり差圧不足を生じさせない。バージ船ではなくその他の船体41bに搭載する場合でも高さを同じレベルにすることはできる。このため、差圧圧送による移送は円滑に行える。
【0069】
バンカリングタンク42に所定量の送液が行われたら、バンカリングタンクユニット14を搭載した船体41bをタグボート(図示せず)で曳航し、停泊中のLNG燃料船13に横付けする。LNG燃料船13は輸送貨物の荷役を行っているものであってもよい。
【0070】
横付けした状態でバンカリングタンクユニット14とLNG燃料船13を接続して、バンカリングタンク42からLNG燃料船13の燃料タンク13aへLNGの移送を行う。
【0071】
なお、二段階で行わずとも、タンクローリー12aをLNG燃料船13の近くに停車できれば、連続的なLNGバンカリングも可能である。
【0072】
以上の構成はこの発明を実施するための一形態であって、この発明は前述の構成のみに限定されるものではなく、その他の形態を採用することもできる。
【0073】
例えば、供給ライン45とガス流路51に流量調整弁ユニット(図示せず)を備えて、LNG燃料船13へのLNG供給の自動化を行ってもよい。
【0074】
また、図4に示したように、集合管46の端に別のバンカリングタンクユニットの集合管が接続される集合管接続部55を設け、供給ライン45に、別のバンカリングタンクユニットの供給ラインが接続される供給ライン接続部56を設けてもよい。
【0075】
なお、図4においては、図1を用いて示した構成と同一の部位については同一の符号を付してその詳しい説明を省略している。
【0076】
このよう構成すると、バンカリングタンクユニット14同士の接続が行え、例えば接続される一つのバンカリングタンクユニット14を他のバンカリングタンクユニット14の中継として機能させるなど、柔軟な使用形態を得られる。
【0077】
図5に示したバンカリングタンクユニット14は、LNGバンカリングに際してエアパージを省略できるように構成したものである。なお、図5においても図1を用いて示した構成と同一の部位については同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0078】
すなわち、バンカリングタンクユニット14は、すべての導入ライン44における入口側接続口47の後段同士を接続すると共にバイパスライン48に接続される均圧ライン58を設けている。均圧ライン58は、導入ライン44をバンカリングタンク42の気相部分につなぐためのものである。均圧ライン58の一端は、導入ライン44における最も端末側に備えられた開閉弁71に接続され、他端はバイパスライン48における仕切弁77の後段に接続される。均圧ライン58の途中にはベント用の開閉弁59が備えられている。
【0079】
また、この均圧ライン58を有効に機能させるため、タンクローリー12aとバンカリングタンクユニット14との着脱可能な接続を行うカップリング60には、接続と同時に通路を開き、分離と共に瞬時に通路を閉じるカップリング、いわゆるクイックカップリングを用いる。
【0080】
このように構成されたバンカリングタンクユニット14では、LNGバンカリングの終了時、LNG燃料船13を切り離したあとで、導入ライン44の仕切弁75とバイパスライン48の仕切弁77を閉じると共に、導入ライン44の開閉弁71を開く。もちろんバイパスライン48の流量調整弁ユニット78は開状態である。
【0081】
すると、すべての導入ライン44の仕切弁75より前段側とバンカリングタンク42の気相部分は連通状態となり、内部のガスは均圧化される。
【0082】
そして、カップリング60がクイックカップリングであるので、タンクローリー12aを切り離してもカップリング60からエアは入らない。このため、次にタンクローリーと接続する際にエアパージ工程を省略できる。
【0083】
しかも、メタンの排出をなくせるので、排ガス規制の観点からも極めて有効である。
【0084】
なお、前述のようにエアパージ工程を省略できるので、図5に例示した構成におけるエアパージのための開閉弁74を省略することも可能であるが、メンテナンスを考慮すると設けておく方がよい。
【符号の説明】
【0085】
11…船舶用LNG燃料供給システム
12…LNG供給者
12a…タンクローリー
13…LNG燃料船
14…バンカリングタンクユニット
41…載置台
42…バンカリングタンク
43…ポンプ
44…導入ライン
45…供給ライン
46…集合管
47…入口側接続口
48…バイパスライン
50…出口側接続口
55…集合管接続口
56…供給ライン接続口
58…均圧ライン
図1
図2
図3
図4
図5