IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社不二工機の特許一覧

<>
  • 特開-膨張弁 図1
  • 特開-膨張弁 図2
  • 特開-膨張弁 図3
  • 特開-膨張弁 図4
  • 特開-膨張弁 図5
  • 特開-膨張弁 図6
  • 特開-膨張弁 図7
  • 特開-膨張弁 図8
  • 特開-膨張弁 図9
  • 特開-膨張弁 図10
  • 特開-膨張弁 図11
  • 特開-膨張弁 図12
  • 特開-膨張弁 図13
  • 特開-膨張弁 図14
  • 特開-膨張弁 図15
  • 特開-膨張弁 図16
  • 特開-膨張弁 図17
  • 特開-膨張弁 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022147972
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】膨張弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/68 20060101AFI20220929BHJP
   F25B 41/335 20210101ALI20220929BHJP
【FI】
F16K31/68 B
F25B41/06 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021049466
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】100100365
【弁理士】
【氏名又は名称】増子 尚道
(72)【発明者】
【氏名】今井 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】西村 康徹
【テーマコード(参考)】
3H057
【Fターム(参考)】
3H057AA04
3H057BB33
3H057BB38
3H057CC05
3H057DD05
3H057EE01
3H057FC07
3H057HH01
3H057HH18
(57)【要約】
【課題】作動流体封止部の腐食を防ぐ。
【解決手段】弁体8を駆動するダイアフラム装置61が、下部筐体22と、下部筐体の上面を覆う上部筐体52と、戻り流路5に連通する冷媒導入室26を下部筐体との間に形成し且つ作動流体を封入する作動流体封入室27を上部筐体との間に形成するように下部筐体と上部筐体との間に配置したダイアフラム24と、作動流体封入室へ作動流体を注入できるように上部筐体の頂上部52aに形成した流体注入口53と、流体注入口を上方から覆うように上部筐体に溶接されて流体注入口を閉塞する閉塞部材54とを有する膨張弁51で、上部筐体の頂上部は、無底無蓋の円錐台状の形状を有し、頂上部の天面のうち少なくとも閉塞部材との接合が行われる溶接部より外側の部分を、外方に向かうにつれ下り勾配となる傾斜面とした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を導入する流入路と冷媒を排出する流出路とに連通する弁室を有する弁本体と、
前記弁室内に備えられた弁座に対して進退動することにより前記冷媒の流量を変更する弁体と、
前記弁体を駆動するダイアフラム装置と、
前記弁本体を貫通して前記冷媒の通過を許容する戻り流路と
を備え、
前記ダイアフラム装置が、
下部筐体と、
当該下部筐体の上面を覆う上部筐体と、
前記戻り流路に連通する冷媒導入室を前記下部筐体との間に形成し且つ作動流体を封入する作動流体封入室を前記上部筐体との間に形成するように前記下部筐体と前記上部筐体との間に配置したダイアフラムと、
前記作動流体封入室へ前記作動流体を注入できるように前記上部筐体の頂上部に形成した流体注入口と、
前記流体注入口を上方から覆うように前記上部筐体に溶接されて前記流体注入口を閉塞する閉塞部材と
を有する
膨張弁であって、
前記頂上部は、無底無蓋の円錐台状の形状を有し、
前記頂上部の天面のうち少なくとも前記閉塞部材との接合が行われる溶接部より外側の部分を、外方に向かうにつれ下り勾配となる傾斜面とした
ことを特徴とする膨張弁。
【請求項2】
前記閉塞部材は、前記流体注入口の周縁が収容される凹部を底面に有するキャップ状部材である
請求項1に記載の膨張弁。
【請求項3】
前記流体注入口の周縁部を当該流体注入口の中心に向け斜め上方に立ち上げ、または、前記流体注入口の周縁部を垂直上方に立ち上げた、急傾斜部を前記上部筐体に備え、
当該急傾斜部が前記凹部に嵌入するようにした
請求項2に記載の膨張弁。
【請求項4】
前記閉塞部材は、無底有蓋の円錐台形の笠状部材である
請求項1に記載の膨張弁。
【請求項5】
前記閉塞部材は、底の無い円錐形の笠状部材である
請求項1に記載の膨張弁。
【請求項6】
前記閉塞部材は、少なくとも底面が平坦な平板部材である
請求項1に記載の膨張弁。
【請求項7】
前記流体注入口の周縁部に、湾曲して上方に突出することにより前記閉塞部材の底面に当接する湾曲天面部を形成し、
当該湾曲天面部に前記溶接部が位置するように前記上部筐体と前記閉塞部材とを接合した
請求項6に記載の膨張弁。
【請求項8】
前記流体注入口の周縁部を当該流体注入口の中心に向け斜め上方に立ち上げ、または、前記流体注入口の周縁部を垂直上方に立ち上げた急傾斜部を前記上部筐体に備える一方、
前記閉塞部材の底面側に当該急傾斜部を収容する溝部を備え、
当該溝部および前記急傾斜部より外側に前記溶接部が位置するように前記上部筐体と前記閉塞部材とを接合した
請求項6に記載の膨張弁。
【請求項9】
前記閉塞部材の平面形状が多角形となるようにした
請求項1から3、および、6から8のいずれか一項に記載の膨張弁。
【請求項10】
前記閉塞部材は、球体である
請求項1に記載の膨張弁。
【請求項11】
下部筐体と、
当該下部筐体の上面を覆う上部筐体と、
作動流体を封入する作動流体封入室を前記上部筐体との間に形成するように前記下部筐体と前記上部筐体との間に配置したダイアフラムと、
前記作動流体封入室へ作動流体を注入できるように前記上部筐体の頂上部に形成した流体注入口と、
前記流体注入口を上方から覆うように前記上部筐体に溶接されて前記流体注入口を閉塞する閉塞部材と
を備えた
ダイアフラム装置であって、
前記頂上部は、無底無蓋の円錐台状の形状を有し、
前記頂上部の天面のうち少なくとも前記閉塞部材との接合が行われる溶接部より外側の部分を、外方に向かうにつれ下り勾配となる傾斜面とした
ことを特徴とするダイアフラム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機などの冷凍サイクル装置に使用される膨張弁に係り、特に、膨張弁に備えられるダイアフラム装置に作動流体を装填する開口部の封止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
カーエアコンのような冷凍サイクル装置では、エバポレータ(蒸発器)の能力を十分に引き出すために膨張弁が備えられる。図17はこのような膨張弁を示すものであるが、同図に示すように膨張弁1は、エバポレータ44の出口側配管の冷媒温度に感応してコンデンサ(凝縮器)42からエバポレータ44に供給される冷媒の流れを絞り、最適流量に制御するもので、レシーバタンク43を介してコンデンサ42から送られる冷媒が流入する流入路3と、エバポレータ44へ冷媒を送出する流出路4との間に備えられた弁体8により冷媒の流量が調整される。なお、弁体8は、弁室6内に形成された弁座7に対して進退動可能に支持され、作動棒9を介してダイアフラム装置21により駆動される。
【0003】
弁体8を作動させるダイアフラム装置21は、中心部に開口10を有し弁本体2の上面に固定される皿状の下部筐体22と、下部筐体22の上面を覆う蓋状の上部筐体23とを有するとともに、下部筐体22と上部筐体23との間に挟持させたダイアフラム24を有する。そして、ダイアフラム24を挟んで装置上側の内部空間、つまりダイアフラム24と上部筐体23とにより形成される空間は、作動流体(例えば作動ガス)を封入する作動流体封入室27とされる。また、ダイアフラム24の下面には、作動棒受け部材25を介して作動棒9の上端が接続され、作動棒9の下端は弁体8に当接している。
【0004】
一方、ダイアフラム24を挟んで装置下側の内部空間、つまりダイアフラム24と下部筐体22とにより形成される空間は、上述した下部筐体22の中心部の開口10を通じて戻り流路5と連通した冷媒導入室26となっている。戻り流路5は、エバポレータ44からコンプレッサ(圧縮機)41に送られる冷媒を通過させる流路で、戻り流路5から冷媒導入室26に流入する冷媒の温度と圧力に従って作動流体封入室27内の作動流体の圧力と体積が変化する。
【0005】
そして、作動流体封入室27内の作動流体の圧力が減少すると、冷媒導入室26の圧力との差に応じてダイアフラム24が上方へ引き上げられ、作動棒9がダイアフラム24に従動して上方に移動することによって弁体8が弁座7に向け進行し冷媒流量が絞られる。逆に、作動流体の圧力が上昇すると、冷媒導入室26の圧力との差に応じてダイアフラム24が下方へ押し下げられ、作動棒9がダイアフラム24に従動して下方に移動することによって弁体8が弁座7から後退し冷媒流量が増加する。このようにして膨張弁1では、エバポレータ44から膨張弁1に戻る冷媒の温度と圧力に対応して、膨張弁1からエバポレータ44に供給される冷媒の量が調整される。
【0006】
ダイアフラム装置21の作製にあたっては、ダイアフラム24を挟持するように下部筐体22と上部筐体23とを重ね合わせ、作動流体封入室27から作動流体が、また冷媒導入室26から冷媒がそれぞれ外部に漏れ出ることがないように両部材(下部筐体22と上部筐体23)を溶接して接合する。さらに、作動流体封入室27への流体の装填は、上部筐体23の天面頂上部23aに設けた開口(流体注入口)28を通じて行うが、装填完了後、当該開口28に金属製のプラグ(栓状の閉塞部材)29を差し込み、これを上部筐体23に溶接することにより当該開口28を閉塞する。
【0007】
また、このようなダイアフラム装置を備えた膨張弁を開示するものとして下記特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8-226567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、従来の膨張弁では、図18図17の符号C部分の拡大図である)に示すようにプラグ29と上部筐体23との間の溝部分に水分(例えば結露水)等の腐食因子31が溜まり、これが原因となって溶接部30が腐食し、作動流体封入室内の作動流体が漏れてしまうことがあった。
【0010】
一方、このような腐食を防ぐために上記特許文献1記載の発明では、溶接部の周囲に接着剤等の腐食防止材を充填し、当該溝部分(凹部)に水が溜まらないようにする。
【0011】
ところが、当該文献記載の発明では、溶接作業とは別に腐食防止材の充填作業が必要となり、膨張弁(ダイアフラム装置)の製造工程数が増える難がある。また、接着剤等の腐食防止材が経年劣化し、劣化した箇所から腐食因子が浸入するおそれもある。
【0012】
したがって、本発明の目的は、製造工程数を増やすことなく、作動流体封止部の腐食を防止できる新たな封止構造を得る点にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決し目的を達成するため、本発明に係る膨張弁は、冷媒を導入する流入路と冷媒を排出する流出路とに連通する弁室を有する弁本体と、弁室内に備えられた弁座に対して進退動することにより冷媒の流量を変更する弁体と、弁体を駆動するダイアフラム装置と、弁本体を貫通して冷媒の通過を許容する戻り流路とを備え、前記ダイアフラム装置が、下部筐体と、下部筐体の上面を覆う上部筐体と、戻り流路に連通する冷媒導入室を下部筐体との間に形成し且つ作動流体を封入する作動流体封入室を上部筐体との間に形成するように下部筐体と上部筐体との間に配置したダイアフラムと、作動流体封入室へ作動流体を注入できるように上部筐体の頂上部に形成した流体注入口と、流体注入口を上方から覆うように上部筐体に溶接されて流体注入口を閉塞する閉塞部材とを有する膨張弁であって、前記頂上部は、無底無蓋の円錐台状の形状を有し、前記頂上部の天面のうち少なくとも閉塞部材との接合が行われる溶接部より外側の部分を、外方に向かうにつれ下り勾配となる傾斜面とした。
【0014】
本発明に係る膨張弁では、上部筐体の天面に備えられる流体注入口に閉塞部材を溶接することにより接合し、当該流体注入口を塞いで流体封入室を封止するが、流体注入口を配置した蓋体部材頂上部を円錐台状の形状とするとともに、溶接部(蓋体部材と閉塞部材との接合部)より外側の頂上部天面部分を外方に向かうにつれ下り勾配となる傾斜面とする。なお、「外(外方、外側)」とは、上部筐体(流体注入口)の中心軸線から遠ざかる方向(中心軸線に向かう方向とは逆の方向)を意味する。
【0015】
したがって本発明によれば、溶接部より外側に付着した水分等の腐食因子は下り勾配の傾斜面に沿って外方へ(溶接部から遠ざかる方向へ)流れ下り、溶接部側に溜まることがなくなる。これにより溶接部が腐食することを防ぐことが出来る。
【0016】
また本発明の第1の態様では、閉塞部材を、流体注入口の周縁が収容される凹部を底面に有するキャップ状部材により構成する。
【0017】
さらにこの第1の態様では、流体注入口の周縁部を流体注入口の中心に向け斜め上方に立ち上げた急傾斜部、または、流体注入口の周縁部を垂直上方に立ち上げた急傾斜部のいずれかを上部筐体に備え、当該急傾斜部が前記凹部に嵌入するようにしても良い。
【0018】
このような態様によれば、キャップ状の閉塞部材を上部筐体の頂上部に被せて接合するときに上部筐体頂上部の急傾斜部を閉塞部材の凹部に嵌入することで芯出しをしやすく、つまり閉塞部材と上部筐体(流体注入口)の各中心軸線を合わせやすくなり、接合時に閉塞部材が位置ずれすることを防ぎ、閉塞部材を上部筐体に迅速かつ正確に取り付けることが可能となる。
【0019】
また本発明の第2の態様では、閉塞部材を、無底有蓋の円錐台形の笠状部材とする。
【0020】
さらにこの第2の態様では、閉塞部材を、底の無い円錐形の笠状部材により構成しても良い。閉塞部材を平坦な天面がないこのような形状とすれば、周面(円錐面)に沿って水滴等の腐食因子を流し落とすことが出来るから、閉塞部材の表面に腐食因子が溜まることを防ぎ、閉塞部材自体の腐食を防止することも可能となる。
【0021】
なお、上記「円錐形」とは、頂点が尖った厳密な円錐だけを意味するものではなく、例えば頂上(頂点)がドーム状に丸く湾曲した形状であっても同様の目的を達成することが出来るから、本願に言う「円錐形」はこのような形状をも含む概念である。
【0022】
また本発明の第3の態様では、閉塞部材を、少なくとも底面が平坦な平板部材により構成する。
【0023】
さらにこの第3の態様では、流体注入口の周縁部に、湾曲して上方に突出することにより閉塞部材の底面に当接する湾曲天面部を形成し、この湾曲天面部に溶接部が位置するように上部筐体と閉塞部材とを接合するようにしても良い。
【0024】
溶接時に塵やスパッタが発生してこれが流体封入室に混入することを防ぐためである。すなわち、溶接箇所に角張った縁があると塵やスパッタが発生しやすくなるが、上記態様によれば上部筐体の湾曲した天面部に閉塞部材の平坦な底面が接触してこの部分を溶接部とすることが出来るため、塵やスパッタの発生を回避ないし抑制し、流体封入室に異物が混入することを防ぐことが出来る。
【0025】
また同様の理由から、流体注入口の周縁部を当該流体注入口の中心に向け斜め上方に立ち上げた急傾斜部、または、流体注入口の周縁部を垂直上方に立ち上げた急傾斜部のいずれかを上部筐体に備える一方、閉塞部材の底面側に当該急傾斜部を収容する溝部を備え、当該溝部および前記急傾斜部より外側に溶接部が位置するように上部筐体と閉塞部材とを接合するようにしても良い。
【0026】
このような態様によれば、流体注入口と溶接部との間に上記急傾斜部が介在されることとなるから、溶接時に(溶接部で)塵やスパッタが発生することがあっても、これらが流体注入口から流体封入室内に入り込むことを当該急傾斜部により阻止することが可能となる。
【0027】
また本発明では、閉塞部材の平面形状が多角形となるようにしても良い。
【0028】
ダイアフラム装置を膨張弁に取り付けやすくするためである。具体的には、ダイアフラム装置を膨張弁に固定する構造として、ダイアフラム装置の下端部の外周面に雄ねじを形成するとともに、当該雄ねじと噛み合う雌ねじを、ダイアフラム装置を取り付ける膨張弁の弁本体上面部に形成した螺合構造を採用する場合があるが、このような取付構造の場合に、ダイアフラム装置の天面頂上部に固定される閉塞部材を多角形としておけば(例えばボルトの頭のように六角形とする)、弁本体にダイアフラム装置をねじ込んで締め付けるときに汎用の工具(例えば汎用の六角レンチ)で締付作業を行うことが出来るようになり、従来のように当該締付作業時に特殊な機械(例えば専用の外径把持チャック)を用意する手間を省くことが出来る。
【0029】
また本発明では、閉塞部材を球体(球状部材)とすることも可能である。なお、当該球体としては、流体注入口より径が大きな金属球を使用すれば良い。
【0030】
また、本発明に係るダイアフラム装置は、本発明に係る膨張弁と同様に特徴的な作動流体の封止構造を備えたものである。
【0031】
具体的には、当該ダイアフラム装置は、下部筐体と、下部筐体の上面を覆う上部筐体と、作動流体を封入する作動流体封入室を上部筐体との間に形成するように下部筐体と上部筐体との間に配置したダイアフラムと、作動流体封入室へ作動流体を注入できるように上部筐体の頂上部に形成した流体注入口と、流体注入口を上方から覆うように上部筐体に溶接されて流体注入口を閉塞する閉塞部材とを備えたダイアフラム装置であって、前記頂上部は、無底無蓋の円錐台状の形状を有し、前記頂上部の天面のうち少なくとも閉塞部材との接合が行われる溶接部より外側の部分を、外方に向かうにつれ下り勾配となる傾斜面としたものである。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、製造工程数を増やすことなく、作動流体封止部の腐食を防止することが出来る。
【0033】
本発明の他の目的、特徴および利点は、図面に基いて述べる以下の本発明の実施の形態の説明により明らかにする。なお、各図中、同一の符号は、同一又は相当部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る膨張弁(閉弁状態)を示す縦断面図である。
図2図2は、前記第1実施形態に係る膨張弁の上部筐体頂上部および閉塞部材(図1のB部分/溶接前の状態)を拡大して示す縦断面図である。
図3図3は、前記第1実施形態に係る膨張弁の上部筐体頂上部および閉塞部材(図1のB部分/溶接後の状態)を拡大して示す縦断面図である。
図4図4は、前記第1実施形態に係る膨張弁の上部筐体頂上部の変形例を図2と同様に示す縦断面図である。
図5図5は、本発明の第2の実施形態に係る作動流体の封止構造を図2と同様に示す縦断面図である。
図6図6は、前記第2実施形態に係る封止構造(溶接後の状態)を拡大して示す縦断面図である。
図7図7は、前記第2実施形態の変形例に係る封止構造を図5と同様に示す縦断面図である。
図8図8は、本発明の第3の実施形態に係る封止構造(溶接前の状態)を拡大して示す縦断面図である。
図9図9は、前記第3実施形態に係る封止構造(溶接後の状態)を拡大して示す縦断面図である。
図10図10は、前記第3実施形態の変形例に係る封止構造(溶接前の状態)を図8と同様に示す縦断面図である。
図11図11は、前記第3実施形態の別の変形例に係る封止構造(溶接前の状態)を図8と同様に示す縦断面図である。
図12図12は、本発明の第4の実施形態に係る封止構造(溶接前の状態)を図8と同様に示す縦断面図である。
図13図13は、前記第4実施形態に係る封止構造(溶接後の状態)を図9と同様に示す縦断面図である。
図14図14は、前記第4実施形態に係る封止構造で使用する閉塞部材を示す平面図である。
図15図15は、前記第4実施形態に係る封止構造で使用する閉塞部材の変形例を示す平面図である。
図16図16は、本発明の第5の実施形態に係る封止構造(溶接後の状態)を図9と同様に示す縦断面図である。
図17図17は、従来の作動流体封止構造を備えた膨張弁(閉弁状態)を示す縦断面図である。
図18図18は、前記従来の封止構造(図17のC部分)を拡大して示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
〔第1実施形態〕
図1から図4を参照して本発明の第1の実施形態に係る膨張弁について説明する。なお、本発明の特徴は作動流体の封止構造にあり、当該封止構造以外のダイアフラム装置の各部ならびに膨張弁の各部の構成と動作については、従来のダイアフラム装置や膨張弁と同様であるから、前記図17と同一の符号を付して重複する詳細な説明は省略し、本発明に特有の封止構造を中心に述べる。また、図1には前後および左右方向を表す互いに直交する二次元座標を示してあるが、以下の説明はこれらの方向に基いて行う。
【0036】
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る膨張弁51は、冷媒を導入する流入路3と冷媒を排出する流出路4とに連通する弁室6を有する弁本体2と、弁室6内に備えられた弁座7に着座した閉弁状態と弁座7から離間した開弁状態との間で弁座7に対して進退動(上下動)することにより冷媒の流量を変更する弁体8と、弁体支持部材11を介して弁体8を弁座7に向け付勢し弁体8を作動棒9の下端に押し付ける付勢部材(圧縮コイルばね)12と、付勢部材12による付勢力に抗し弁体8を開弁方向(下方)へ移動させる作動棒9と、弁本体2の上面部に固定されて作動棒9を介して弁体8を駆動するダイアフラム装置61と、弁本体2を貫通して冷媒の通過を許容する戻り流路5とを備えている。
【0037】
作動棒9は、弁本体2の内部に垂直方向(上下方向)に延びるように配置し、その上端部を作動棒受け部材25を介してダイアフラム装置61内のダイアフラム24に接続する一方、下端を弁体8に当接させてある。戻り流路5は、弁本体2の上部を水平に(左右方向に)貫通し、エバポレータ44からコンプレッサ41へ送られる冷媒が当該流路5を通過する。また、流入路3には、レシーバタンク43を介してコンデンサ42から送られる冷媒が流入し、この冷媒は弁室6を通って流出路4からエバポレータ44へ送出される。
【0038】
ダイアフラム装置61は、当該装置61の筐体として皿状の下部筐体22と、下部筐体22の上面を覆う蓋状の上部筐体52とを有し、下部筐体22と上部筐体52との間にダイアフラム24を挟持させてある。そして、ダイアフラム24の上側(ダイアフラム24と上部筐体52との間)の内部空間を、作動流体を封入する作動流体封入室27とし、ダイアフラム24の下側(ダイアフラム24と下部筐体22との間)の内部空間を、冷媒を導入する冷媒導入室26とする。下部筐体22の底面中心部には、冷媒導入室26と戻り流路5とを連通させる開口10を備えてある。
【0039】
上部筐体52の頂上部52aは、無底無蓋の円錐台状の形状、別の表現をすればハの字形の縦断面形状を有し、当該頂上部52aの天面を、外方つまり中心軸Aから遠ざかる方向に向け下り勾配となる傾斜面とする。
【0040】
そして、当該頂上部52aの中心軸部に流体注入口53を備える。この流体注入口53は、作動流体封入室27へ作動流体を注入するための開口である。流体注入口53は、従来(図17)のようなプラグ(栓)状の部材29ではなく、底面に凹部54aを有し流体注入口53が備えられた上部筐体52の頂上部52aに被せるように装着するキャップ状の閉塞部材54により閉塞する。閉塞部材54の上部筐体52への接合は、上部筐体52の頂上部52aに閉塞部材54を被せることにより頂上部52aの天面に閉塞部材54の凹部54aの内周面を当接させ、両部材52,54の接触面をプロジェクション溶接により溶融させて接合する。図3中の符号30は当該溶接部(溶接箇所)を示している。
【0041】
なお、本実施形態ならびに後に述べる各実施形態では、閉塞部材を上部筐体52に接合する方法としてプロジェクション溶接を用いるが、接合方法は必ずしも当該方法に限定されず、他の溶接方法あるいは溶接以外の接合方法によることも可能である。
【0042】
従来(図17図18参照)は上部筐体23の頂上部(特に流体注入口28の近傍部)23aは逆円錐台形(縦断面逆ハの字形)であったが、本実施形態ではこれを上述のように円錐台形(縦断面ハの字形)にし、当該頂上部52aに被せるように装着するキャップ状の部材54により流体注入口53を塞ぐようにした。
【0043】
このため本実施形態では、従来とは逆に、溶接部30が上部筐体52と閉塞部材54の隙間部32より上方に位置することとなり(図18に示すように従来は溶接部30が隙間部32より下方に位置していた)、然も当該隙間部32は斜め下方に向くこととなる。したがって本実施形態によれば、溶接部30に腐食因子が浸入し難く、腐食因子は上記下り勾配の傾斜面に沿って外方へ(溶接部30から遠ざかる方向へ)流れ下る。さらに、本実施形態に係る当該構造(上部筐体や封止部材の形状)自体は経年使用によって接着剤等の腐食防止材のように劣化することもない。このように本実施形態(本発明や他の実施形態も同様)によれば、溶接部30の腐食を効果的に防ぐことが出来る。
【0044】
図4は本実施形態の封止構造の変形例を示すものである。同図に示すようにこの変形例では、流体注入口53を形成する上部筐体頂上部52aの縁部を中心軸Aに向け斜め上方に立ち上げた急傾斜部52bを備え、この急傾斜部52bが閉塞部材54の底面凹部54aに嵌入するようにする。
【0045】
このような構造によれば、急傾斜部52bが芯出しの機能、つまり上部筐体52の中心軸Aと閉塞部材54の中心軸を一致させる機能を付与することが出来るから、閉塞部材54を上部筐体52に接合するときに閉塞部材54が位置ずれすることを防ぐことができ、迅速且つ精度良く閉塞部材54を上部筐体52に接合してより確実に流体注入口53を塞ぐことが可能となる。
【0046】
作動流体の封止構造、すなわち上部筐体52の頂上部52a(流体注入口53)および閉塞部材54は、本実施形態以外にも様々な形態を採ることが可能である。これらにつき、本発明の第2から第5の実施形態として以下に説明する。
【0047】
〔第2実施形態〕
図5から図6は本発明の第2の実施形態に係る封止構造を示すものである。同図に示すように本発明の第2の実施形態に係る封止構造は、無底有蓋の(底が無く天面部が有る)円錐台形(笠状)の閉塞部材55を備えたものである。上部筐体52の頂上部52aは、閉塞部材55と同様に笠状の形状を有し、中心部に流体注入口53を備えている。
【0048】
そして、流体注入口53を塞ぐように頂上部52aに閉塞部材55を被せ、閉塞部材55と上部筐体頂上部52aとを溶接する。なお、図6に接合部(溶接部)を符号30で示している。
【0049】
また、本実施形態の閉塞部材55は平坦な天面部55aを有しているが、平坦な天面部55aを備えない構造することも可能である。具体的には、図7に示すように閉塞部材56の全体が山型の、言い換えれば、無底の(底の無い)円錐型の形状を有するようにしても良い。このような形状とすれば、閉塞部材56の上側の面は総て下り勾配の傾斜面となるから、平坦な天面部55a(図5参照)に腐食因子が溜まることがなく、閉塞部材56自体の腐食も防ぐことが出来る。
【0050】
〔第3実施形態〕
図8図9に示すように本発明の第3の実施形態に係る封止構造は、平板(円盤)状の閉塞部材57を備え、流体注入口53を覆うように当該閉塞部材57を上部筐体頂上部52aに載せて流体注入口53の上縁部(上部筐体52の流体注入口53側の縁部)と閉塞部材57の底面とを溶接接合(溶接部30参照)したもので、このような閉塞部材57によって流体注入口53を塞いでも良い。
【0051】
さらに、溶接箇所に角張った縁があるとプロジェクション溶接を行ったときに塵やスパッタが発生しやすく、閉塞部材57の溶接時に流体注入口53から流体封入室27(図1参照)に異物が混入するおそれがある。このような問題を解消するのが、図10図11に示す本実施形態の変形例で、いずれも閉塞部材57に当接して接合が行われる流体注入口53の上縁部を丸め、角張ったエッジを無くしたものである。
【0052】
より具体的には、図10に示す例では、当該上縁部を削って湾曲面(本発明に言う湾曲天面部)52cとして当該湾曲面52cが閉塞部材57の底面に当接するようにした。また、図11に示す例は、流体注入口53を形成する上部筐体52の流体注入口側の縁部52dを下方に曲げることにより上面を湾曲させ、当該湾曲面(本発明に言う湾曲天面部)52cを閉塞部材57の底面に当接させるようにしたものである。
【0053】
いずれの変形例によっても、上部筐体52の湾曲した天面部52cに閉塞部材57の平坦な底面が接触してこの部分を溶接部とすることが出来ることから、塵やスパッタの発生を回避ないし抑制し、流体封入室27に異物が混入することを防ぐことが出来る。
【0054】
〔第4実施形態〕
図12図14に示すように本発明の第4の実施形態に係る封止構造は、上部筐体52の頂上部52aに円盤状の閉塞部材58を被せて流体注入口53を閉塞するものであるが、流体注入口53の周縁部を流体注入口53の中心に向け斜め上方に立ち上げた急傾斜部52eを上部筐体52の頂上部52aに備えるとともに、閉塞部材58の底面側に当該急傾斜部52eを収容する溝部58aを形成し、当該溝部58aおよび急傾斜部52eより外側に溶接部30(図13参照)が位置するように上部筐体52と閉塞部材58とを接合する。
【0055】
このような構造によれば、流体注入口53と溶接部30との間に急傾斜部52eが介在されることとなるから、溶接部30で塵やスパッタが発生することがあっても、これらが流体注入口53から流体封入室27内に入り込むことを急傾斜部52eにより阻止することが出来る。
【0056】
また図15は本実施形態の閉塞部材58の変形例に係る閉塞部材59を示すものであるが、この図に示すように閉塞部材59が多角形(この例の場合は六角形)の平面形状を有するようにしても良い。前述したようにダイアフラム装置21を膨張弁61(弁本体2)に固定する方法として螺合構造を採用する場合があるが、このような場合に、外径把持チャックのような特殊な器具装置を使用することなく、六角レンチのような汎用工具で締付作業を行うことを可能とするためである。
【0057】
なお、前記第1実施形態およびその変形例(図1図4)並びに第3実施形態およびその変形例(図8図11)についても同様に閉塞部材54,57を多角形(例えば六角形)の平面形状を有するようにしても良い。
【0058】
〔第5実施形態〕
図16に示すように本発明の第5の実施形態に係る封止構造は、上部筐体頂上部52aの流体注入口53を塞ぐ閉塞部材として、球状部材60を備えるものである。球状部材60としては、流体注入口53の径より大きな径を有する金属球を使用し、符号30で示すように流体注入口53の上縁と球状部材60との接触部をプロジェクション溶接により溶融させて接合すれば良い。
【0059】
このような構造によっても、溶接部30より外側の頂上部52aの天面は下り勾配の傾斜面となっているから、腐食因子が溜まることが無く、溶接部30の腐食を防ぐことが出来る。
【0060】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で種々の変更を行うことができることは当業者に明らかである。
【0061】
例えば、本発明の特徴は作動流体の封止構造にあるから、当該封止構造以外のダイアフラム装置の各部ならびに膨張弁の各部の構成は、前記実施形態(図1)や従来技術(図17)の膨張弁の説明において述べたものとは異なる様々なものであっても構わない。
【符号の説明】
【0062】
A 中心軸
B,C 作動流体封止部(上部筐体の頂上部)
1,51 膨張弁
2 弁本体
3 流入路
4 流出路
5 戻り流路
6 弁室
7 弁座
8 弁体
9 作動棒
10 開口
11 弁体支持部材
12 付勢部材(圧縮コイルばね)
21,61 ダイアフラム装置
22 下部筐体
23,52 上部筐体
23a,52a 上部筐体の頂上部
24 ダイアフラム
25 作動棒受け部材
26 冷媒導入室
27 作動流体封入室
28,53 流体注入口
29,54,55,56,57,58,59,60 閉塞部材
30 溶接部
31 腐食因子
32 上部筐体と閉塞部材の隙間部
41 コンプレッサ(圧縮機)
42 コンデンサ(凝縮器)
43 レシーバタンク
44 エバポレータ(蒸発器)
52b,52e 急傾斜部
52c 湾曲面
52d 上部筐体の流体注入口側の縁部
54a 凹部
55a 閉塞部材の天面部
58a 溝部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18