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特開2022-148005プレート式熱交換器、及び冷凍サイクル装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022148005
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】プレート式熱交換器、及び冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   F28D 9/02 20060101AFI20220929BHJP
   F28F 9/22 20060101ALI20220929BHJP
   F28F 3/08 20060101ALI20220929BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
F28D9/02
F28F9/22
F28F3/08 311
F25B1/00 304E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021049515
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅利 峻
(72)【発明者】
【氏名】高山 司
【テーマコード(参考)】
3L065
3L103
【Fターム(参考)】
3L065DA17
3L103AA37
3L103BB43
3L103CC02
3L103CC17
3L103CC18
3L103CC30
3L103DD15
3L103DD55
3L103DD57
3L103DD67
3L103DD69
(57)【要約】
【課題】種々の条件に応じて適切な分流を行うこと。
【解決手段】プレート式熱交換器は、複数のプレートを積層して形成され、複数のプレートの積層方向に沿って交互に配置される第1流路および第2流路を有し、第1流路は隣り合うプレート間に第1流体を流通させ、第2流路は隣り合うプレート間に第2流体を流通させる熱交換器本体と、管状に形成される分配管ユニットと、を備える。分配管ユニットは、第1流体が流入する第1冷媒流入口と、第1流体が流入する第2冷媒流入口と、第1流体を分流する第1分流部と、第1冷媒流入口から流入した冷媒を、第1分流部を通過して分流されて分配管ユニット外へ流出する第1冷媒流路と、第2冷媒流入口から流入した冷媒を、第1分流部を通過させずに分配管ユニット外へ流出する第2冷媒流路と、を備え、第1流路、及び第2流路の一方か、又は第1流路、及び第2流路の両方に第1流体が流される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のプレートを積層して形成され、前記複数のプレートの積層方向に沿って交互に配置される第1流路および第2流路を有し、前記第1流路は隣り合うプレート間に第1流体を流通させ、前記第2流路は隣り合うプレート間に第2流体を流通させる熱交換器本体と、
管状に形成される分配管ユニットと、
を備え、
前記分配管ユニットは、
前記第1流体が流入する第1流入口と、
前記第1流体が流入する第2流入口と、
前記第1流体を分流する第1分流部と、
前記第1冷媒流入口から流入した第1流体を、前記第1分流部を通過して分流されて前記分配管ユニット外へ流出する第1流路と、
前記第2冷媒流入口から流入した第1流体を、前記第1分流部を通過させずに前記分配管ユニット外へ流出する第2流路と、
を備え、
前記第1流路、及び前記第2流路の一方か、又は前記第1流路、及び前記第2流路の両方に前記第1流体が流される、
プレート式熱交換器。
【請求項2】
圧縮機と、凝縮器として機能することが可能な第1熱交換器と、膨張装置と、請求項1に記載のプレート式熱交換器を有し蒸発器として機能することが可能な第2熱交換器とを、順に連通する冷媒配管を有し、
前記第1流体は、前記冷媒配管を流通する冷媒であり、
冷凍サイクルの負荷に応じて、前記冷媒を前記第1流路、及び前記第2流路の一方か、又は前記第1流路、及び前記第2流路の両方に流す制御部を備える、
冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記冷凍サイクルの負荷が大きい場合、前記第1流路、及び前記第2流路に前記冷媒を流し、前記負荷が小さい場合、前記第1流路に前記冷媒を流す、
請求項2に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記圧縮機の回転数に基づいて、前記冷凍サイクルの負荷の大きさを判定する、
請求項3に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項5】
前記分配管ユニットは、
前記冷媒を分流する第2分流部を備え、
前記第2分流部は、前記第1分流部、及び前記第2流路を通過した前記冷媒が流入するように構成され、
前記第2分流部は、前記第1分流部より圧力損失が小さい、
請求項3に記載の冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、プレート式熱交換器、及び冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プレート式熱交換器を蒸発器として用いる場合、流体が二層状態の冷媒であるため、プレート間に均等に流体、例えば冷媒を流す技術、いわゆる分流技術が長年研究されている。このような分流技術として、例えば、パイプ形状の軸方向に複数の開口部(分流穴)を設けた技術が知られている。また、例えば、流路に遮蔽板を設け、この遮蔽板により分流をコントロールする技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5946991号公報
【特許文献2】特許第5665983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記技術では、分流穴の径は固定の穴径、遮蔽版の寸法は固定寸法となる。このように固定されているため、ある条件で最適な形状を選択すると、他の条件では最適な条件となる形状にならないという問題があった。
【0005】
実施形態は、条件に応じて適切な分流を行うことができるプレート式熱交換器、及び冷凍サイクル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係る、プレート式熱交換器は、複数のプレートを積層して形成され、前記複数のプレートの積層方向に沿って交互に配置される第1流路および第2流路を有し、前記第1流路は隣り合うプレート間に第1流体を流通させ、前記第2流路は隣り合うプレート間に第2流体を流通させる熱交換器本体と、管状に形成される分配管ユニットと、を備える。前記分配管ユニットは、前記第1流体が流入する第1冷媒流入口と、前記第1流体が流入する第2冷媒流入口と、前記第1流体を分流する第1分流部と、前記第1冷媒流入口から流入した冷媒を、前記第1分流部を通過して分流されて前記分配管ユニット外へ流出する第1冷媒流路と、前記第2冷媒流入口から流入した冷媒を、前記第1分流部を通過させずに前記分配管ユニット外へ流出する第2冷媒流路と、を備える。前記第1流路、及び前記第2流路の一方か、又は前記第1流路、及び前記第2流路の両方に前記第1流体が流れる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係る冷凍サイクル装置の概略的な構成の一例を示す図。
図2】同実施形態に係るプレート式熱交換器の一例を示す斜視図。
図3】同実施形態に係るプレート式熱交換器の一例を示す分解斜視図。
図4図2のA-A線におけるプレート式熱交換器の一例を示す側面断面図。
図5】同実施形態に係る分配管ユニットの一例を示す側面断面図。
図6】同実施形態に係る蒸発温度比較の一例を示す図。
図7】同実施形態に係る分流部の圧損比較の一例を示す図。
図8】同実施形態に係る開閉弁の開閉制御の一例を示すフローチャート。
図9】第2実施形態に係る冷凍サイクル装置の構成の一例を示す図。
図10】第3実施形態に係る分配管ユニットの一例を示す側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、以下の実施形態に記載した内容により発明が限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各部分のサイズ、形状等を実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照数字を付して、詳細な説明を省略する場合もある。
【0009】
本明細書において、直交座標系のX方向、Y方向およびZ方向は、以下のように定義する(参照:図2)。X方向は、プレート式熱交換器10における複数のプレート14の積層方向である。+X方向は、プレート式熱交換器10の第1冷媒入出口11または第2冷媒入出口12に対する冷媒の流入方向である。Z方向は、プレート式熱交換器10の第1冷媒入出口11と第2冷媒入出口12とが並ぶ方向である。+Z方向は、第1冷媒入出口11から第2冷媒入出口12に向かう方向である。例えば、Z方向は鉛直方向であり、+Z方向は上方向である。Y方向は、X方向およびZ方向に直交する方向である。Y方向は、プレート式熱交換器10の第1冷媒入出口11と第2水入出口92とが並ぶ方向である。+Y方向は、第1冷媒入出口11から第2水入出口92に向かう方向である。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態の冷凍サイクル装置の概略的な構成の一例を示す図である。
冷凍サイクル装置1は、圧縮機2と、四方弁3と、第1熱交換器4と、膨張装置5と、第2熱交換器6と、これらに対して順に接続される冷媒配管8と、を有する。冷媒配管8には、R410A、R32、二酸化炭素(CO2)等の冷媒(第1流体)が流通する。冷媒は、相変化しながら冷凍サイクル装置1を循環する。
【0011】
四方弁3は、冷媒配管8における冷媒の流通方向を逆転させる。四方弁3が図1の状態にあるとき、冷媒は、圧縮機2、第1熱交換器4、膨張装置5、第2熱交換器6の順に流通する。このとき、第2熱交換器6は吸熱器(例えば、蒸発器)として機能する。以下では、第2熱交換器6が蒸発器として機能する場合で説明する。この場合における冷媒の流通方向に基づいて、冷媒の流通方向の上流側および下流側が定義される。
【0012】
圧縮機2は、例えば、ロータリ式の圧縮機である。圧縮機2は、内部に取り込まれる低圧の気体冷媒を圧縮して高温・高圧の気体冷媒にする。圧縮機2の上流側には、アキュムレータ(気液分離器)2aが配置される。
【0013】
第1熱交換器4は、放熱器(例えば、凝縮器)として機能する。第1熱交換器4は、圧縮機2から吐出される高温・高圧の気体冷媒から放熱して、高温・高圧の気体冷媒を高圧の液体冷媒にする。第1熱交換器4に隣接して、第1熱交換器4に送風するファン4aが設置される。
【0014】
膨張装置5は、第1熱交換器4から送り込まれる高圧の液体冷媒の圧力を下げ、高圧の液体冷媒を低温・低圧の気液二相冷媒にする。膨張装置5は、後述する制御部50により制御される(図1において制御線の図示は省略している)。
【0015】
第2熱交換器6は、吸熱器(例えば、蒸発器)として機能する。第2熱交換器6は、膨張装置5から送り込まれる気液二相冷媒を低圧の気体冷媒にする。第2熱交換器6において、低圧の気液二相冷媒が気化する際に周囲から気化熱を奪うことで周囲が冷却される。第2熱交換器6を通過した低圧の気体冷媒は、アキュムレータ2aを介して、上述した圧縮機2の内部に取り込まれる。
【0016】
第2熱交換器6を流通する冷媒は、被冷却流体を冷却する。例えば、被冷却流体は水である。第2熱交換器6の内部には、冷媒流路15に加えて、水流路95が形成される。冷媒流路15は冷媒配管8に接続され、水流路95は水配管90に接続される。水配管90には、水を循環させるポンプ98が設けられる。これにより、冷凍サイクル装置1は、チラー(冷却水循環装置)として機能する。なお、被冷却流体は水以外の流体でもよい。
第2熱交換器6は、プレート式熱交換器10である。
【0017】
次に、プレート式熱交換器10について詳細に説明する。
図2は、プレート式熱交換器の一例を示す斜視図である。図3は、プレート式熱交換器の一例を示す分解斜視図である。なお、図3では、分配管ユニット20の図示が省略されている。図4は、図2のA-A線におけるプレート式熱交換器10の一例を示す側面断面図である。図2に示されるように、プレート式熱交換器10は、熱交換器本体10aと、分配管ユニット20と、を有する。
【0018】
熱交換器本体10aは、複数のプレート14を有する。
プレート14は、YZ平面と平行に配置される。プレート14は、Z方向を長手方向としY方向を短手方向とする長方形状に形成される。プレート14は、四隅に円形状の孔を有する。-Y方向および-Z方向の孔は、第1冷媒入出口11である。-Y方向および+Z方向の孔は、第2冷媒入出口12である。+Y方向および+Z方向の孔は、第1水入出口91である。+Y方向および-Z方向の孔は、第2水入出口92である。プレート式熱交換器10が蒸発器として機能するとき、第1冷媒入出口11が冷媒の流入口であり、第2冷媒入出口12が冷媒の流出口である。また、第1水入出口91が水の流入口であり、第2水入出口92が水の流出口である。なお、第2水入出口92が水の流入口であり、第1水入出口91が水の流出口であってもよい。
【0019】
熱交換器本体10aは、複数のプレート14をX方向に積層して形成される。積層された複数のプレート14の周縁部は、接合される。冷媒入出口11,12および水入出口91,92は、X方向に連続する。冷媒入出口11,12および水入出口91,92の-X方向の端部は開口し、冷媒配管8に接続される。図3に示されるように、冷媒入出口11,12および水入出口91,92の+X方向の端部は、端部プレート14zにより閉塞される。
【0020】
-X方向の端部から+X方向にかけて、第1プレート14a,第2プレート14b,第3プレート14cが順に積層される。図4に示されるように、第1プレート14aと第2プレート14bとの間において、冷媒入出口11,12の周縁部が閉塞される。これにより、冷媒入出口11,12を流通する冷媒Rは、第1プレート14aと第2プレート14bとの間を流通しない。逆に、第1プレート14aと第2プレート14bとの間において、水入出口91,92の周縁部には開口が形成される。これにより、図3に示されるように、第1プレート14aと第2プレート14bとの間に水流路95が形成される。
【0021】
一方、第2プレート14bと第3プレート14cとの間において、水入出口91,92の周縁部は閉塞される。これにより、水入出口91,92を流通する水Wは、第2プレート14bと第3プレート14cとの間を流通しない。逆に、図4に示されるように、第2プレート14bと第3プレート14cとの間において、冷媒入出口11,12の周縁部には開口が形成される。これにより、第2プレート14bと第3プレート14cとの間に冷媒流路15が形成される。
【0022】
図3および図4に示されるように、X方向に沿って冷媒流路15および水流路95が交互に配置される。冷媒流路15は、隣り合うプレート14の間に冷媒を流通させる。水流路95は、隣り合うプレート14の間に水を流通させる。冷媒流路15を流通する冷媒と水流路95を流通する水とは、両者間に配置されるプレート14を介して熱交換する。図3に示されるように、プレート14には、ヘリンボーン型(V字型)の凹凸パターン17,18がZ方向に連続して形成される。隣り合うプレート14のV字パターン17,18は、相互に逆向きに形成される。凹凸パターン17,18により、プレート14の表面積が大きくなり、熱交換効率が向上する。
【0023】
冷媒は、冷媒流路15を-Z方向から+Z方向に流通する。重力に逆らって冷媒を流通させることにより、冷媒流路15における冷媒の分流が改善されるので、熱交換効率が向上する。一方で水は、水流路95を+Z方向から-Z方向に流通する。すなわち、冷媒と水とは相互に逆方向に流通する(カウンターフロー)。これにより、冷媒と水とが温度差を有しながら流通するので、熱交換の機会が多くなって熱交換効率が向上する。
【0024】
次に、分配管ユニット20について詳細に説明する。図5は、分配管ユニット20の一例を示す側面断面図である。
図5に示されるように、分配管ユニット20は円管状に形成される。分配管ユニット20は、その中心軸が、X方向に沿うように配置される。分配管ユニット20は、頭部20aと、胴部20bと、を有する。
【0025】
頭部20aは、分配管ユニット20の-X方向の端部に配置される。頭部20aの外径は、第1冷媒入出口11の内径より大きい。頭部20aは、熱交換器本体10aの-X方向に配置される。頭部20aは、溶接等により熱交換器本体10aに固定される。頭部20aは、第1冷媒入出口11の-X方向の端部を閉塞する。頭部20aの-X方向の端部には、第1流体が流入する第1冷媒流入口E1と、第1流体が流入する第2冷媒流入口E2とが設けられる。第1冷媒流入口E1は、膨張装置5と冷媒配管8を介して接続され、また、第2冷媒流入口E2は、膨張装置5と開閉部52及び冷媒配管8を介して接続される。
【0026】
胴部20bは、頭部20aの+X方向に配置される。胴部20bの外径は、第1冷媒入出口11の内径より小さく、X方向に沿って一定である。胴部20bは、第1冷媒入出口11の内部に配置される。胴部20bの+X方向の端部は閉塞される。胴部20bは、-Z方向の端部に複数の貫通孔22を有する。複数の貫通孔22は、分配管ユニット20の管壁に形成され、X方向に並んで配置される。複数の貫通孔22により、分流部(第1分流部)D1が形成される。また、頭部20a及び胴部20bには、第1冷媒流入口E1から流入した冷媒を、分流部D1を通過して分流されて分配管ユニット20外へ流出する第1冷媒流路R1が含まれる。また、頭部20aには、第2冷媒流入口E2から流入した冷媒を、分流部D1を通過させずに分配管ユニット20外へ流出する第2冷媒流路R2が含まれる。これらの第1冷媒流路R1,第2冷媒流路R2は、それぞれ、図1に示されるように、既述の冷媒配管8に連通している。また、分流管ユニット20の穴径は、低負荷条件で十分な圧損を確保することができる穴径とする。具体的には、後述する図7において、IPLVc50条件で性能が良くなる圧損とすることが望ましい。本実施例では、第1冷媒流入口E1の穴径は、第2冷媒流入口E2の穴径よりも大きく形成されており、即ち、第1冷媒流路R1の穴径,第2冷媒流路R2の穴径よりも大きく形成されている。
【0027】
冷媒は、分配管ユニット20の内部(第1冷媒流路R1,第2冷媒流路R2それぞれ)を+X方向に流通する。冷媒は、第1冷媒流路R1においては、胴部20bの+X方向に流通し、分流部D1(複数の貫通孔22)から第1冷媒入出口11に順次吐出される。また、冷媒は、第2冷媒流路R2においては+X方向に流通して、頭部20aから第1冷媒入出口11に吐出される。これにより、冷媒が複数の冷媒流路15に分配されるので、熱交換効率が向上する。冷媒は、分流部D1(複数の貫通孔22)から-Z方向に吐出される。分流部D1(複数の貫通孔22)からの冷媒の吐出方向は、冷媒流路15を-Z方向から+Z方向に流通する冷媒の流通方向と逆方向で重力方向である。これにより、冷媒流路15における冷媒の分流が改善されるので、熱交換効率が向上する。X方向において、複数の貫通孔22は、複数の冷媒流路15と同じ位置に配置されることが望ましいが、それに限る必要はなく、また冷媒流路と貫通孔の数は揃えることが望ましいが、これも必要に応じて可変しても良い。
【0028】
図1に示されるように、冷凍サイクル装置1は、開閉部52(圧力配管52a、及び開閉弁52b)と、制御部50と、を有する。圧力配管52aは、冷媒配管8と分配管ユニット20とを連通する。開閉弁52bは、圧力配管52aに設けられる。膨張装置5と分配管ユニット20との間の冷媒配管8は、開閉弁52aを有しない第1冷媒流路R1と、開閉弁52bが設けられた圧力配管52aを経由する第2冷媒流路R2の二経路を有する。開閉弁52bを閉弁すると、第1冷媒流路R1にのみ冷媒が流れ、分配管ユニット20に冷媒が導入される。開閉弁52bを開弁すると、第1冷媒流路R1及び第2冷媒流路R2に冷媒が流れ、分配管ユニット20に冷媒が導入される。
【0029】
図1に示される制御部50は、CPUなどのプロセッサ、及びメモリを備えるマイクロコンピュータである。制御部50は、CPUなどのプロセッサがメモリに保持されるプログラムを実行することにより実現される。また、制御部50のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などのハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。
【0030】
制御部50は、圧縮機2の運転を制御するとともに、圧縮機2の回転数を監視する。制御部50は、圧縮機2の回転数に基づいて、開閉弁52bの開閉を制御する。制御部50は、本実施形態では、圧縮機2の回転数に応じて(言い換えれば、冷凍サイクル装置の負荷に応じて)、開閉弁52bの開閉を制御する。
【0031】
ここで、分流構造の圧力損失(以下、圧損という。)が大きいプレート式熱交換器と、分流構造の圧損が小さいプレート式熱交換器で試験を行った結果について、図6及び図7を参照して説明する。試験条件は、日本冷凍空調工業会が発行しているJRA4066に記載のIPLVc条件(定格条件)である。図6は、蒸発温度比較の一例を示す図であり、IPLVc条件に対する蒸発温度を示している。具体的には、IPLVc100,75,50,25(言い換えれば、負荷率100%、75%、50%、25%)のそれぞれについて圧損が小さい場合と、大きい場合とを比較している。また、図7は、分流部の圧縮比較の一例を示す図であり、IPLVc条件に対する圧損を示している。具体的には、IPLVc100,75,50,25のそれぞれについて分流部の圧損が小さい場合と、大きい場合とを比較している。
【0032】
図6によると、負荷率100%の条件では圧損が大きいと蒸発温度が低下し、負荷率75%の条件では蒸発温度ほぼ同等、負荷率50%の条件、負荷率25%の条件では圧損が大きいと蒸発温度が増加することがわかる。部分負荷効率であるIPLVcの計算方法では、負荷率75%、50%、25%の条件の性能への寄与率が合計90%である。このため、仕様上の性能を確保するためには圧損の大きい分流構造を選択するべきである。しかし、負荷率100%条件のような高負荷時に蒸発温度が低下すると、プレート式熱交換器の最大能力が低下することになる。例えば、冷媒の温度が目標値に達するまでの時間が長くなる、又は、プレート式熱交換器の設置台数を増加する必要がある、等の問題が生じる。すなわち、プレート式熱交換器が蒸発器として使用される場合の分流構造は、高負荷では圧損が小さくなり、低負荷では圧損が大きくなるようにすることが求められていることがわかる。
【0033】
本実施形態では、冷凍サイクルの負荷に応じて、制御部50が、第1冷媒流路R1に冷媒を流すか、第1冷媒流路R1及び第2冷媒流路R2に冷媒を流すかを制御する。すなわち、制御部50は、負荷が小さいと判定すると、圧損を大きくすべく、第1冷媒流路R1にのみ冷媒を流すよう制御する。負荷が大きいと判定すると、圧損を小さくするべく、第1冷媒流路R1及び第2冷媒流路R2の両方に冷媒を流すよう制御する。なお、冷媒を流す制御はこれに限られず、制御部50が、第2冷媒流路R2に冷媒を流すか、第1冷媒流路R1及び第2冷媒流路R2に冷媒を流すかを制御するようにしてもよい。つまり、制御部50は、第1冷媒流路R1、及び第2冷媒流路R2の一方か、又は第1冷媒流路R1、及び第2冷媒流路R2の両方に冷媒を流すようにすることができる。
【0034】
次に、開閉弁52bの開閉制御について説明する。図8は、制御部50が実行する開閉弁52bの開閉制御の一例を示すフローチャートである。
図8に示すように、冷凍サイクル装置1の運転時に、制御部50は、冷凍サイクルの負荷が大きいか否かを判定する(ST101)。冷凍サイクルの負荷の大きさは、例えば、圧縮機2の回転数が所定回数以上か否かに基づいて、判定すればよい。負荷が大きいと判定した場合(ST101:YES)、例えば、図6において、IPLVc100条件、IPLVc75条件では、制御部50は、開閉弁52bを開く(ST102)。これにより、冷媒は、第1冷媒流路R1及び第2冷媒流路R2の両方に流れる。一方、負荷が大きくない、つまり、負荷が小さいと判定された場合(ST102:NO)、例えば、図6において、IPLVc50条件、IPLVc25条件では、制御部50は、開閉弁52bを閉じる(ST103)。これにより、第2冷媒流路R2からは冷媒が流れず、第1冷媒流路R1から冷媒が流れる。
【0035】
以上のように構成された冷凍サイクル装置1によると、冷凍サイクルの負荷に応じて分配管ユニット20の圧損を選択することができる。このため、冷凍サイクル装置1は、種々の条件に応じて適切な分流を行うことができ、蒸発性能を最大化することができる。
【0036】
より詳細には、冷凍サイクル装置1は、冷凍サイクルの負荷が大きいときに冷媒が第1冷媒流路R1及び第2冷媒流路R2の両方に流れ、冷凍サイクルの負荷が小さいときに冷媒が第1冷媒流路R1から流れるように制御している。これにより、冷凍サイクル装置1の蒸発性能を最大化することができる。
【0037】
(第2実施形態)
第2実施形態は、冷凍サイクル装置の構成が第1実施形態と異なっている。このため、構成の異なる点について説明する。なお、第1実施形態と同一の構成には同一の符号を付すこととする。
【0038】
図9は、第2実施形態の冷凍サイクル装置1の制御構成の一例を示す図である。既述の第1実施形態とは、開閉弁52bに代えて膨張装置5aが設けられている点が異なっている。このように制御部50が膨張装置5,膨張装置5aをそれぞれ個別に冷媒の流量制御をすることができるように構成される(膨張装置5,5aへの制御線の図示は省略している)。このように、冷凍サイクルの負荷に応じて分配管ユニット20の圧損を選択するように構成しても、第1実施形態と同様な効果を奏することができる。さらに、冷凍サイクル装置1は、高負荷時と、低負荷時の冷媒の流路切換えをスムーズにすることが可能になる。
【0039】
(第3実施形態)
第3実施形態は、分配管ユニット20の胴部20bの構成が第1実施形態と異なっている。このため、胴部の構成について詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一の構成には同一の符号を付すこととする。
【0040】
図10は、第3実施形態の分配管ユニットの一例を示す側面断面図である。
図10に示すように、分配管ユニット20は、既述の分流部D1に加え、分流部(第2分流部)D2が設けられている。分流部D2は、複数の貫通穴22aから構成される。複数の貫通穴22aは、本実施形態では、複数の貫通穴22と同様に等間隔で下側に冷媒を流す向きに設けられる。この分流部D2は、分流部D1と接続して使用される。分流部D2の圧損は、分流部D1の圧損より小さくなるように構成される。また、分配管ユニット20内の第1冷媒流路R1、及び第2冷媒流路R2は、いずれも分流部D2を通過した後、第1冷媒入出口11に流入するようになっている。このとき、分配管ユニット20の圧損は、第1冷媒流路R1、及び第2冷媒流路R2の両方に冷媒を流したときに、高負荷時の圧損が良くなるような圧損とする。具体的には、図6におけるIPLVc100という条件で、第2熱交換器6の蒸発性能が良くなる圧損とする。
【0041】
このように、分配管ユニット20は、冷媒を分流する分流部D2を備え、分流部D2は、分流部D1を通過した冷媒が流入するように構成され、さらに、分流部D2は、分流部D1より圧損が小さくなるように構成される。具体的には、分流部D1の貫通穴22に対して、貫通穴22aの穴径を小さくする。このように構成することで、冷凍サイクル装置1は、高負荷時、及び低負荷時ともに第2熱交換器6の蒸発性能を改善することができる。また、冷凍サイクル装置1は、高負荷時の分流をさらに向上させることができる。
【0042】
なお、上記各実施形態において、分配管ユニット20は、第1冷媒流路R1、及び第2冷媒流路R2の2つの流路を設けた構成について説明したが、流路の数は、これに限るものではなく、3つ以上であってもよい。
【0043】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0044】
1…冷凍サイクル装置、2…圧縮機、6…第2熱交換器、8…冷媒配管、20…分配管ユニット、22,22a…貫通穴、50…制御部、52b…開閉弁、D1,D2…分流部、R1…第1冷媒流路、R2…第2冷媒流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10