(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022148019
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】吹付機、吹付機を動作させる方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
E02D 17/20 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
E02D17/20 104B
E02D17/20 102G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021049531
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】390036504
【氏名又は名称】日特建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】森▲崎▼ 慎也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 夏利
(72)【発明者】
【氏名】三上 登
(72)【発明者】
【氏名】窪塚 大輔
【テーマコード(参考)】
2D044
【Fターム(参考)】
2D044DA39
2D044DC05
(57)【要約】
【課題】従来行われていた作業員による操作を自動で行うことが可能な吹付機、吹付機を動作させる方法、及びプログラムを提案する。
【解決手段】吹付機1は、材料投入口2を有する上釜3と、連結口4によって上釜3と連通するとともに材料排出口15を有する下釜13と、連結口4を開閉する中蓋17と、中蓋17を、連結口4が開く開位置と連結口4が閉じる閉位置との間で移動させる駆動部18と、中蓋17を開位置から閉位置に向けて移動させる際の駆動部18の駆動力を、所定値以下に設定する駆動力調整手段22と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料投入口を有する上釜と、
連結口によって前記上釜と連通するとともに材料排出口を有する下釜と、
前記連結口を開閉する中蓋と、
前記中蓋を、前記連結口が開く開位置と当該連結口が閉じる閉位置との間で移動させる駆動部と、
前記中蓋を前記開位置から前記閉位置に向けて移動させる際の前記駆動部の駆動力を、所定値以下に設定する駆動力調整手段と、を備える吹付機。
【請求項2】
前記中蓋が前記閉位置に移動したことを検出するセンサと、
前記中蓋を前記開位置から前記閉位置に移動させた際に、所定時間内に前記センサで当該中蓋が当該閉位置に移動したことを検知できない場合は、当該中蓋を当該開位置に移動させるように前記駆動部を制御する第一制御部と、を備える請求項1に記載の吹付機。
【請求項3】
コンプレッサと、
前記コンプレッサからの加圧した空気を前記下釜に供給して当該下釜の内部を加圧する下釜加圧路と、
前記コンプレッサからの加圧した空気を前記上釜に供給して当該上釜の内部を加圧する上釜加圧路と、
前記上釜加圧路に設けられる比例制御弁と、
前記比例制御弁に対し、前記上釜に加圧した空気を供給し始める段階の開口度よりも供給を始めてから所定時間経過した段階での開口度が小さくなるように制御を行う第二制御部と、を備える請求項1又は2に記載の吹付機。
【請求項4】
材料投入口を有する上釜と、
連結口によって前記上釜と連通するとともに材料排出口を有する下釜と、
前記連結口を開閉する中蓋と、
前記中蓋を、前記連結口が開く開位置と当該連結口が閉じる閉位置との間で移動させる駆動部と、
前記中蓋を前記開位置から前記閉位置に向けて移動させる際の前記駆動部の駆動力を、所定値以下に設定する駆動力調整手段と、を備える吹付機を動作させる方法であって、
前記駆動部を駆動させることによって前記中蓋を前記閉位置から前記開位置へ移動させて、前記連結口を介して前記上釜に収容された材料を前記下釜に供給する第一ステップと、
所定時間経過後、前記駆動力調整手段によって所定値以下になった前記駆動部の駆動力でもって前記中蓋を前記開位置から前記閉位置に向けて移動させる第二ステップと、を含む方法。
【請求項5】
前記吹付機は、
前記中蓋が前記閉位置に移動したことを検出するセンサと、
前記駆動部を制御する第一制御部と、を備え、
前記中蓋を前記開位置から前記閉位置に移動させた際に、所定時間内に前記センサで当該中蓋が当該閉位置に移動したことを検知できない場合は、前記第一制御部によって、当該中蓋を当該開位置に移動させるように前記駆動部を制御する第三ステップと、を含む請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記吹付機は、
コンプレッサと、
前記コンプレッサからの加圧した空気を前記下釜に供給して当該下釜の内部を加圧する下釜加圧路と、
前記コンプレッサからの加圧した空気を前記上釜に供給して当該上釜の内部を加圧する上釜加圧路と、
前記上釜加圧路に設けられる比例制御弁と、
前記比例制御弁の開口度を制御可能な第二制御部と、を備え、
前記比例制御弁に対して前記第二制御部によって、前記上釜に加圧した空気を供給し始める段階の開口度よりも供給を始めてから所定時間経過した段階での開口度が小さくなるように制御する第四ステップと、を含む請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
材料投入口を有する上釜と、
連結口によって前記上釜と連通するとともに材料排出口を有する下釜と、
前記連結口を開閉する中蓋と、
前記中蓋を、前記連結口が開く開位置と当該連結口が閉じる閉位置との間で移動させる駆動部と、
前記中蓋を前記開位置から前記閉位置に向けて移動させる際の前記駆動部の駆動力を、所定値以下に設定する駆動力調整手段と、を備える吹付機に対し、
コンピュータに、
前記駆動部を駆動させることによって前記中蓋を前記閉位置から前記開位置へ移動させて、前記連結口を介して前記上釜に収容された材料を前記下釜に供給する第一ステップと、
所定時間経過後、前記駆動力調整手段によって所定値以下になった前記駆動部の駆動力でもって前記中蓋を前記開位置から前記閉位置に向けて移動させる第二ステップと、を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、法面等への各種吹付工事に使用可能な吹付機、吹付機を動作させる方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
法面等の保護や崩壊防止を目的として、従前より各種の吹付工事(例えばモルタル吹付工、吹付法枠工、植生基材吹付工等)が行われている。このような吹付工事には、特許文献1、2に示されている如き吹付機が使用される。
【0003】
一般にこの種の吹付機は、材料投入口を有する上釜と、連結口によって上釜と連通するとともに材料排出口を有する下釜と、連結口を開閉する中蓋とを備えている。そして下釜を加圧することによって、材料排出口につなげられたホースから法面に向けて吹付材(モルタル等)が吹き付けられる。また下釜に収容した吹付材を補充するには、材料投入口から上釜内に各種材料を投入した後、材料投入口を閉じて上釜を加圧し、上釜と下釜の圧力が等しくなった状態で中蓋を移動させて連結口を開き、上釜の材料を下釜に落下させるようにしている。なお、上釜と下釜には攪拌機が設けられていて、内部の材料を均一に撹拌するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3250589号公報
【特許文献1】特許第6755634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで従来の吹付機は、作業員がその場で操作を行って運転することが一般的である。これは、吹付機の操作が作業員の経験に基づく感覚に頼る部分が多いことに起因している。例えば連結口を開いて上釜の材料を落下させた後、中蓋を移動させて連結口を閉じるにあたっては、全ての材料が落下するまでの時間がばらつくことが多いため、作業員は、吹付機からの音や振動を頼りに上釜の材料が落下し終えたことを感じ取って、中蓋を閉じる操作を行っている。
【0006】
仮に上釜の材料が全て落下していない状態で連結口を閉じると、上釜の中に材料が残った状態で新たな材料が供給されることになる。すなわち、上釜に収容できる材料の許容量を超えてしまい、材料投入口から材料が溢れる等の不具合が生じるおそれがある。またこの場合は、下釜に供給される材料が不足することになるため、吹付工事の途中で吹付材が噴射できなくなり、工事の中断を招くことにもなる。
【0007】
このように従来の吹付機は、上記のような不具合を防止するべく、作業者が吹付機の状態を確認しながら行わなければならない操作があるため、自動化での運転を行うことが困難であった。
【0008】
このような従来の問題点に鑑み、本発明では、従来行われていた作業員による操作を自動で行うことが可能な吹付機を提案することを目的とする。併せてこの吹付機を動作させる方法、及びこの吹付機に関連するプログラムも提案する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、材料投入口を有する上釜と、連結口によって前記上釜と連通するとともに材料排出口を有する下釜と、前記連結口を開閉する中蓋と、前記中蓋を、前記連結口が開く開位置と当該連結口が閉じる閉位置との間で移動させる駆動部と、前記中蓋を前記開位置から前記閉位置に向けて移動させる際の前記駆動部の駆動力を、所定値以下に設定する駆動力調整手段と、を備える吹付機である。
【0010】
このような吹付機は、前記中蓋が前記閉位置に移動したことを検出するセンサと、前記中蓋を前記開位置から前記閉位置に移動させた際に、所定時間内に前記センサで当該中蓋が当該閉位置に移動したことを検知できない場合は、当該中蓋を当該開位置に移動させるように前記駆動部を制御する第一制御部と、を備えることが好ましい。
【0011】
このような吹付機は、コンプレッサと、前記コンプレッサからの加圧した空気を前記下釜に供給して当該下釜の内部を加圧する下釜加圧路と、前記コンプレッサからの加圧した空気を前記上釜に供給して当該上釜の内部を加圧する上釜加圧路と、前記上釜加圧路に設けられる比例制御弁と、前記比例制御弁に対し、前記上釜に加圧した空気を供給し始める段階の開口度よりも供給を始めてから所定時間経過した段階での開口度が小さくなるように制御を行う第二制御部と、を備えることが好ましい。
【0012】
また本発明は、材料投入口を有する上釜と、連結口によって前記上釜と連通するとともに材料排出口を有する下釜と、前記連結口を開閉する中蓋と、前記中蓋を、前記連結口が開く開位置と当該連結口が閉じる閉位置との間で移動させる駆動部と、前記中蓋を前記開位置から前記閉位置に向けて移動させる際の前記駆動部の駆動力を、所定値以下に設定する駆動力調整手段と、を備える吹付機を動作させる方法であって、前記駆動部を駆動させることによって前記中蓋を前記閉位置から前記開位置へ移動させて、前記連結口を介して前記上釜に収容された材料を前記下釜に供給する第一ステップと、所定時間経過後、前記駆動力調整手段によって所定値以下になった前記駆動部の駆動力でもって前記中蓋を前記開位置から前記閉位置に向けて移動させる第二ステップと、を含む方法でもある。
【0013】
このような方法において、前記吹付機は、前記中蓋が前記閉位置に移動したことを検出するセンサと、前記駆動部を制御する第一制御部と、を備え、前記中蓋を前記開位置から前記閉位置に移動させた際に、所定時間内に前記センサで当該中蓋が当該閉位置に移動したことを検知できない場合は、前記第一制御部によって、当該中蓋を当該開位置に移動させるように前記駆動部を制御する第三ステップと、を含むことが好ましい。
【0014】
このような方法において、前記吹付機は、コンプレッサと、前記コンプレッサからの加圧した空気を前記下釜に供給して当該下釜の内部を加圧する下釜加圧路と、前記コンプレッサからの加圧した空気を前記上釜に供給して当該上釜の内部を加圧する上釜加圧路と、前記上釜加圧路に設けられる比例制御弁と、前記比例制御弁の開口度を制御可能な第二制御部と、を備え、前記比例制御弁に対して前記第二制御部によって、前記上釜に加圧した空気を供給し始める段階の開口度よりも供給を始めてから所定時間経過した段階での開口度が小さくなるように制御する第四ステップと、を含むことが好ましい。
【0015】
また本発明は、材料投入口を有する上釜と、連結口によって前記上釜と連通するとともに材料排出口を有する下釜と、前記連結口を開閉する中蓋と、前記中蓋を、前記連結口が開く開位置と当該連結口が閉じる閉位置との間で移動させる駆動部と、前記中蓋を前記開位置から前記閉位置に向けて移動させる際の前記駆動部の駆動力を、所定値以下に設定する駆動力調整手段と、を備える吹付機に対し、コンピュータに、前記駆動部を駆動させることによって前記中蓋を前記閉位置から前記開位置へ移動させて、前記連結口を介して前記上釜に収容された材料を前記下釜に供給する第一ステップと、所定時間経過後、前記駆動力調整手段によって所定値以下になった前記駆動部の駆動力でもって前記中蓋を前記開位置から前記閉位置に向けて移動させる第二ステップと、を実行させるためのプログラムでもある。
【発明の効果】
【0016】
本発明の吹付機は、連結口が開く開位置と連結口が閉じる閉位置との間で中蓋を移動させる駆動部と、中蓋を開位置から閉位置に向けて移動させる際の駆動部の駆動力を所定値以下に設定する駆動力調整手段とを備えている。すなわち、駆動力調整手段を適宜調整しておくことによって、上釜から材料が落下している途中で中蓋を開位置から閉位置に向けて移動させても、中蓋は落下する材料の抵抗によって閉位置には移動しない。このため、上釜の中に材料が残った状態で新たな材料が供給されたり、下釜に供給される材料が不足したりする等の不具合を防止することが可能となり、作業者による中蓋操作によらずに噴出器を自動で運転することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る噴出器の一実施形態に関し、その構成を模式的に示した図である。
【
図2】
図1に示す噴出器の駆動部(中蓋駆動部)及び制御部(第一制御部、第二制御部)等を示した図である。
【
図3】
図1に示す噴出器の動作フローを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明に係る吹付機とともに、この吹付機を動作させる方法、及びこの吹付機に関連するプログラムの一実施形態について説明する。
【0019】
図1は、本発明に係る吹付機の一実施形態に関し、その構成を模式的に示した図である。本実施形態の吹付機1は、上部に材料投入口2を有する上釜3を備えている。上釜3の下部には、連結口4が設けられている。また上釜3の上部には、材料投入口2を取り囲むホッパー5が設けられている。
【0020】
ホッパー5には、吹付工事の目的に応じた吹付材の素材となる各種の材料が供給される。例えば吹付材としてモルタルやコンクリートが使用される場合には、砂等の骨材、セメント、水がホッパー5に供給される。なお、水を供給するための送水管を上釜3に接続し、この送水管を通して水を供給するようにしてもよい。また骨材、セメント、水をそれぞれホッパー5に供給してもよいし、これらをミキシングして供給してもよい。上釜3の内部には、攪拌機(上釜攪拌機6)が設けられていて、上釜3に供給された材料は、上釜攪拌機6によって均一に撹拌される。
【0021】
また本実施形態の吹付機1は、材料投入口2を開閉するための上蓋7を備えている。本実施形態の上蓋7は、
図1で実線及び仮想線で示すように揺動するように構成されていて、不図示の駆動部(上蓋駆動部)によって、仮想線で示した開位置と実線で示した閉位置との間で移動する。なお上蓋駆動部として使用されるものに限定はなく、各種の流体(気体、液体)を利用するシリンダ(エアシリンダ、油圧シリンダ)でもよいし、電気を利用するモータでもよい。
【0022】
上釜3には、コンプレッサ8につながる上釜加圧路9が接続されている。上釜加圧路9は、コンプレッサ8からの加圧した空気を上釜3に供給するものであって、これにより上釜3の内部は加圧される。また上釜3には、内部の圧力を測定する上釜圧力センサ10が設けられている。上釜圧力センサ10は、
図2に示す制御部11に電気的に接続されている。なお、制御部11についての詳細な説明は後述する。また図示は省略するが、上釜3又は上釜加圧路9には、加圧された上釜3の圧力を大気圧に戻すための排気手段が設けられている。後述するように排気手段は、制御部11によって所定のタイミングで上釜3の空気を排気する。
【0023】
本実施形態の上釜加圧路9には、比例制御弁12が設けられている。比例制御弁12は、上釜加圧路9の開き具合(開口度)を最も小さい状態(上釜加圧路9が閉じられてコンプレッサ8からの空気が上釜3に供給されない状態)から、最も大きい状態(上釜加圧路9の開き具合が最大となってコンプレッサ8からの空気が上釜3に最も多く供給される状態)まで変化させることができる。比例制御弁12は、
図2に示す制御部11に電気的に接続されていて、制御部11からの指令に基づいて開口度を変化させる。
【0024】
上釜3の下部には、下釜13が設けられている。下釜13は、連結口4によって上釜3と連通している。下釜13の内部にも攪拌機(下釜攪拌機14)が設けられている。下釜13の下部には、材料排出口15が設けられていて、材料排出口15には、法面等に向けて吹付材(モルタル等)を吹き付けるためのホース16が取り付けられる。
【0025】
また吹付機1は、連結口4を開閉するための中蓋17を備えている。中蓋17は、
図1で実線及び仮想線で示すように揺動するように構成されている。中蓋17には駆動部(中蓋駆動部)が取り付けられていて、中蓋駆動部によって中蓋17は、仮想線で示した開位置と実線で示した閉位置との間で移動する。中蓋駆動部は、上蓋駆動部と同様にエアシリンダや油圧シリンダ、モータ等、各種利用可能である。本実施形態の中蓋駆動部はエアシリンダ18であって、空気を供給することによりロッド19が前進又は後退する。中蓋17は、ロッド19が前進することによって閉位置に移動し、ロッド19が後退することによって開位置に移動する。
【0026】
図2に示すようにエアシリンダ18には、エアシリンダ18内に空気を供給する流路が2つ設けられている(閉側空気路20、開側空気路21)。閉側空気路20から空気を供給することにより、ロッド19が前進して中蓋17を閉位置に向けて移動させることができる。また開側空気路21から空気を供給することにより、ロッド19を後退させて中蓋17を開位置に向けて移動させることができる。
【0027】
閉側空気路20には、レギュレータ22が設けられている。レギュレータ22は、閉側空気路20を流れる空気の圧力を調整する機能を備えていて、これによりロッド19が前進する際の駆動力を調整することができる。なおレギュレータ22は、本明細書等における「駆動力調整手段」に相当する。
【0028】
上述した閉側空気路20と開側空気路21は、
図2に示す制御弁23を介して上述したコンプレッサ8につながっている。制御弁23は、上述した制御部11に電気的に接続されていて、制御部11からの指令に基づいて、コンプレッサ8からの加圧した空気の送り先を閉側空気路20と開側空気路21の何れかに切り換えるものである。なお制御弁23は、閉側空気路20と開側空気路21の何れか一方に加圧した空気を供給する際は、何れか他方は外界に連通させて空気が排気される機能も有する。
【0029】
またエアシリンダ18には、2つのセンサ(中蓋閉位置検出センサ24、中蓋開位置検出センサ25)を備えている。中蓋閉位置検出センサ24は、ロッド19が前進端に移動したか否かを検出するものであって、これにより中蓋17が閉位置に移動したか否かを間接的に検出する。また中蓋開位置検出センサ25は、ロッド19が後退端に移動したか否かを検出するものであって、これにより中蓋17が開位置に移動したか否かを間接的に検出する。中蓋閉位置検出センサ24と中蓋開位置検出センサ25は、上述した制御部11に電気的に接続されていて、中蓋閉位置検出センサ24と中蓋開位置検出センサ25から出力される信号は、制御部11に伝達される。
【0030】
図1に示すように下釜13には、コンプレッサ8につながる下釜加圧路26が接続されている。すなわちコンプレッサ8には、上述した上釜加圧路9と下釜加圧路26の両方が接続されている。下釜加圧路26は、コンプレッサ8からの加圧した空気を下釜13に供給するものであって、これにより下釜13の内部は加圧されるため、下釜攪拌機14によって撹拌された材料をホース16の先端から噴射することができる。また下釜13には、内部の圧力を測定する下釜圧力センサ27が設けられている。下釜圧力センサ27は、制御部11に電気的に接続されている。
【0031】
そして制御部11は、吹付機1に各種動作を実行させるにあたってその制御を行う機能を有する。制御部11は、例えばPLC(プログラマブルロジックコントローラ)やPC(パーソナルコンピュータ)等のコンピュータで具現化される。なお、コンピュータの内部記憶装置やこれに接続される外部記憶装置には、吹付機1の動作を制御するプログラムが記憶されていて、制御部11はこのプログラムに基づいて吹付機1の動作を制御する。なお制御部11は、本明細書等における「第一制御部」と「第二制御部」に相当する。
【0032】
次に、本実施形態の吹付機1を動作させる方法について、
図3に示した動作フローを参照しながら説明する。なお以下の説明は、既に吹付機1の動作は実行されていて、上釜3に材料が供給される直前の状態にあるものとする。またこのとき下釜13では、コンプレッサ8からの加圧した空気が下釜加圧路26から供給されて内部が加圧されていて、ホース16から吹付材が噴射されているものとする。
【0033】
まず、
図1に示した上蓋7を、不図示の上蓋駆動部によって仮想線で示した開位置に移動させ、材料投入口2を開口する(
図3の工程S1)。そして吹付材の材料を、ホッパー5から上釜3に投入する(
図3の工程S2)。材料を投入した後は、上蓋駆動部によって、上蓋7を
図1に実線で示した閉位置に移動させ、材料投入口2を閉じた状態にする(
図3の工程S3)。
【0034】
次いで、上釜加圧路9からコンプレッサ8の加圧した空気を上釜3に供給する。上述したように上釜加圧路9には比例制御弁12が設けられていて、本実施形態においては、制御部11からの指令に基づいて比例制御弁12の開口度を変化させながらコンプレッサ8の加圧した空気を上釜3に供給するようにしている。ここで、比例制御弁12を備えていない従来の吹付機が抱えていた問題点について説明する。
【0035】
従来の吹付機も一般に、上釜に材料を供給して材料投入口を閉じた後、コンプレッサからの加圧した空気を上釜加圧路から上釜に供給するようにしている。また本実施形態の吹付機1と同様に従来の吹付機でも、同一のコンプレッサで下釜と上釜の両方に加圧した空気を供給するようにしている。ところで従来の吹付機には、作業員が上釜加圧路を開閉するための手動用バルブが設けられていることが一般的である。これは、例えばON-OFF弁のように上釜加圧路を開いた状態又は閉じた状態の何れかに変えるものを使用すると、閉じられていた上釜加圧路を開いた状態に切り換えた際に上釜が急激に加圧され、それに起因して下釜に供給される空気の圧力が低下してしまい、ホースから噴射される吹付材の量が不安定になる現象が生じることによる。すなわち従来の吹付機では、上釜に加圧した空気を供給する際は、作業員がバルブを適宜操作して、下釜の圧力が変動しないように調整を行っていた。
【0036】
一方、本発明者が検討を重ねたところ、上釜加圧路9に比例制御弁12を設け、上釜3に加圧した空気を供給し始める段階の開口度(A%)よりも、供給を始めてから所定時間経過した段階での開口度(B%)が小さくなるように比例制御弁12を制御することによって、コンプレッサ8の加圧した空気を上釜3に供給しても、下釜13の圧力は大きく変わらず、吹付材が安定して噴出できることが確認された。すなわち、制御部11によって比例制御弁12の開口度をこのように変えることで、作業員の操作によらずとも吹付材を安定して噴出させることができる。本実施形態では、上釜3に加圧した空気を供給し始める段階の比例制御弁12の開口度が80%程度となるように制御部11から指令を送り(
図3の工程S4)、供給を始めてから約2秒経過した後、制御部11から比例制御弁12の開口度が50%程度となるように指令を送り(
図3の工程S5)、以後、この状態を保って上釜3の加圧を行っている。なお上記の開口度及び時間は一例であって、適宜変更可能である。
【0037】
制御部11は、上釜圧力センサ10と下釜圧力センサ27からの信号に基づいて、上釜3の圧力が下釜13の圧力と実質的に等しくなったかの確認を行っている。なお、上釜3の圧力が下釜13の圧力と実質的に等しいとは、上釜3の圧力が下釜13の圧力と同一になる場合に限られず、上釜3の圧力が下釜13の圧力に対して所定範囲に収まる場合も含む。そして工程S5の後、上釜3の圧力が下釜13の圧力と同程度に達していない場合(
図3の工程S6でNO)は、制御部11は上釜3の圧力と下釜13の圧力の確認を継続する。一方、上釜3の圧力が下釜13の圧力と実質的に等しくなったと判断される場合(
図3の工程S6でYES)は、制御部11は下記の工程S7を実行する。
【0038】
上釜3の圧力が下釜13の圧力と実質的に等しくなったと判断されると、制御部11は、
図2に示した制御弁23に対し、コンプレッサ8からの加圧した空気が開側空気路21に供給されるように指令を送る。これにより、エアシリンダ18のロッド19が後退して、中蓋17が開位置に向けて移動する(
図3の工程S7)。このとき制御部11は、中蓋開位置検出センサ25からの信号を確認していて、この信号に基づいて中蓋17が開位置に移動完了したか否かを検出している。
【0039】
中蓋17が開位置に向けて移動すると、連結口4が開くため、上釜攪拌機6で撹拌されていた上釜3の材料は、下釜13に向けて落下する。そして制御部11は、中蓋17が開位置に移動してから所定の時間(一例として60秒程度)経過した後、制御弁23に対して、コンプレッサ8からの加圧した空気が閉側空気路20に供給されるように指令を送る。これにより、エアシリンダ18のロッド19が前進して、中蓋17が閉位置に向けて移動する(
図3の工程S8)。
【0040】
上述したように閉側空気路20には、レギュレータ22が設けられている。本実施形態のレギュレータ22は、エアシリンダ18に向けて供給される空気の圧力を、一般的にエアシリンダを駆動させる際に設定される圧力(通常は0.5MPa程度)よりも低い状態(一例として0.2MPa程度)にしている。なおレギュレータ22によって、閉側空気路20からエアシリンダ18に供給される圧力は、上釜3から材料が落下していない状態では中蓋17は閉位置まで移動する一方、上釜3から材料が落下している途中では、中蓋17は落下する材料の抵抗を受けて閉位置まで移動せずに途中で停止するように調整されている。
【0041】
ここで制御部11は、工程S8を実行後、所定時間(一例として2秒程度)経過したタイミングで中蓋閉位置検出センサ24からの信号を確認し、中蓋17が閉位置に移動完了したか否かを確認している(
図3の工程S9)。中蓋17が閉位置に移動完了していることが確認できた場合は(
図3の工程S9でYES)、制御部11は上述した不図示の排気手段を動作させて、上釜3の空気を排気して内部の圧力を大気圧まで戻す工程を実行する(
図3の工程S10)。その後、制御部11は、上述した工程S1からの各工程を順次実行する。
【0042】
一方、所定時間経過したタイミングで中蓋閉位置検出センサ24からの信号を確認できない場合(
図3の工程S9でNO)、制御部11は、上述した内部記憶装置等に記憶されているカウンタ数Nを1繰り上げる動作を実行する(
図3の工程S11)。ここでカウンタ数Nは、所定時間経過したタイミングで中蓋閉位置検出センサ24からの信号を確認できない場合の回数であり、当初のカウンタ数Nは0に設定されている。従って、所定時間経過したタイミングで中蓋閉位置検出センサ24からの信号を確認できない場合、これが1回目であれば、カウンタ数Nは1になる。
【0043】
そしてカウンタ数Nが3以下の場合(
図3の工程S12でYES)、制御部11は、上述した工程S7を再び実行し、制御弁23に対して、コンプレッサ8からの加圧した空気が開側空気路21に供給されるように指令を送る。これにより、途中で停止していた中蓋17を開位置に向けて移動させることができるため、上釜3からの材料の落下を継続させることができる。なお、本実施形態ではカウンタ数Nが3以下であるかを判断するようにしているが、この基準は適宜変更可能であって、例えば2以下でもよい。
【0044】
なお、再び工程S7を実行して所定時間経過した後、制御部11は、工程S8を再度実行して中蓋17を閉位置に向けて移動させる。更に制御部11は、工程S8を実行後、所定時間経過したタイミングで中蓋閉位置検出センサ24からの信号を確認し、中蓋17が閉位置に移動完了していることが確認できた場合は(
図3の工程S9でYES)、上述した工程S10を実行する。なおこのとき、カウンタ数Nはリセットされ、当初の0に設定される。
【0045】
一方、工程S8を再度実行して中蓋17を閉位置に向けて移動させても、所定時間経過したタイミングで中蓋閉位置検出センサ24からの信号を確認できない場合、制御部11は、カウンタ数Nを更に1繰り上げる。そして、カウンタ数Nが3以下である場合(
図3の工程S12でYES)、制御部11は再度工程S7からの工程を実行し、カウンタ数Nが3より大である場合は、所定のエラー処理(例えば吹付機1の動作を停止するとともに、吹付機1に設けた不図示の表示部にエラーが生じている旨表示する、或いは吹付機1に設けた不図示のブザーからアラーム音を発生させる等)を実行する。
【0046】
このように本実施形態の吹付機1によれば、上釜3から材料が落下している途中では、中蓋17が閉位置まで移動することがないため、従来必要であった作業員による中蓋17の操作によらずに自動で運転することができる。また中蓋17の動作に不具合がある場合は、自動的にエラー処理が行われるため、作業員が常時吹付機1のそばにいる必要もない。
【0047】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、上記の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。また、上記の実施形態における効果は、本発明から生じる効果を例示したに過ぎず、本発明による効果が上記の効果に限定されることを意味するものではない。
【0048】
例えば本実施形態において、中蓋17を開位置から閉位置に向けて移動させる際のエアシリンダ18の駆動力を所定値以下に設定する駆動力調整手段は、レギュレータ22であったが、駆動力調整手段は中蓋17を駆動させる駆動部に応じて適宜選択される。例えばモータを駆動部に使用する際は、モータの駆動力(トルク)を所定範囲にすることができるアンプが駆動力調整手段として機能する。
【0049】
また、本実施形態において中蓋17が閉位置や開位置に移動したか否かを検出する手段は、エアシリンダ18に設けた中蓋閉位置検出センサ24と中蓋開位置検出センサ25であったが、中蓋17の閉位置の近傍や開位置の近傍にセンサを配置して、中蓋17の位置を直接的に検出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1:吹付機
2:材料投入口
3:上釜
4:連結口
5:ホッパー
6:上釜攪拌機
7:上蓋
8:コンプレッサ
9:上釜加圧路
10:上釜圧力センサ
11:制御部(第一制御部、第二制御部)
12:比例制御弁
13:下釜
14:下釜攪拌機
15:材料排出口
16:ホース
17:中蓋
18:エアシリンダ(駆動部)
19:ロッド
20:閉側空気路
21:開側空気路
22:レギュレータ(駆動力調整手段)
23:制御弁
24:中蓋閉位置検出センサ(センサ)
25:中蓋開位置検出センサ
26:下釜加圧路
27:下釜圧力センサ