(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022148026
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】熟成装置、蓋材、熟成材、および熟成方法
(51)【国際特許分類】
C12H 1/22 20060101AFI20220929BHJP
C12G 3/06 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
C12H1/22
C12G3/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021049541
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】521123954
【氏名又は名称】ここはじめ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166051
【弁理士】
【氏名又は名称】駒津 啓佑
(72)【発明者】
【氏名】大下 弘毅
【テーマコード(参考)】
4B115
4B128
【Fターム(参考)】
4B115MA02
4B128AC15
4B128AG04
4B128AP30
4B128AS19
4B128AT08
(57)【要約】
【課題】 瓶詰めされたあとの酒でも、木樽で熟成されるものと同様に熟成させ、その熟成具合の調節を容易にした熟成装置、蓋材、熟成材、および熟成方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 ワイン300を熟成させる棒状の熟成材110が容器200の開口部から内部に挿入され、蓋部120で、容器200の開口部を閉栓構造を有する閉栓部121が閉塞し、容器200の開口部を外部から閉塞する側で、熟成材110の長手方向の一端側を熟成材保持部122が保持する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に入られた飲料を熟成させる熟成装置において、
前記容器の開口部から内部に挿入されて前記飲料を熟成させる棒状の熟成材と、
前記容器の開口部を閉塞する閉栓構造をと、前記容器の開口部を外部から閉塞する側に、前記熟成材の長手方向の一端側を保持する熟成材保持部と、を有する蓋部、
を備えることを特徴とする熟成装置。
【請求項2】
前記閉栓構造は、
圧入されて前記容器の開口部を閉栓する弾力性を備えた閉栓部材、
を備えていることを特徴とする請求項1記載の熟成装置。
【請求項3】
前記閉栓部材は、
コルク材であること、
を特徴とする請求項2記載の熟成装置。
【請求項4】
前記コルク材は、
前記開口部を閉塞した前記コルク材をソムリエナイフで引き抜く際に、前記ソムリエナイフが有するスクリュー部が噛み合う十分な長さの中実部、
を備えることを特徴とする請求項3記載の熟成装置。
【請求項5】
前記閉栓構造を閉栓又は開栓するために手で把持するための把持部、
を備えることを特徴とする請求項1記載の熟成装置。
【請求項6】
前記熟成材は、
前記蓋部が前記容器の開口部を閉塞した状態で、直立状態の前記容器に入られた飲料に到達する十分な長さ、
を備えることを特徴とする請求項1記載の熟成装置。
【請求項7】
前記熟成材は、
前記蓋部が前記容器の開口部を閉塞した状態で、傾斜状態でのみ前記容器に入られた飲料に到達する長さ、
を備えることを特徴とする請求項1記載の熟成装置。
【請求項8】
前記熟成材は、
オーク材からなること、
を特徴とする請求項1記載の熟成装置。
【請求項9】
内部に入られた飲料を熟成させる容器を閉塞する蓋材において、
前記容器の開口部を閉塞する閉栓構造と、前記容器の開口部を外部から閉塞する側に、前記容器の開口部から内部に挿入されて前記飲料を熟成させる棒状の熟成材の長手方向の一端側を保持する熟成材保持部と、を有する蓋部、
を備えることを特徴とする蓋材。
【請求項10】
容器に入られた飲料を熟成させる熟成材において、
前記容器の開口部を閉塞する閉栓構造を有する蓋部が、前記容器の開口部を外部から閉塞する側に設けられた保持部に長手方向の一端側が保持され、前記容器の開口部から内部に挿入される棒体からなる、
ことを特徴とする熟成材。
【請求項11】
容器に入られた飲料を熟成させる熟成方法において、
前記飲料を熟成させる棒状の熟成材が前記容器の開口部から内部に挿入される工程と、
蓋部で、前記容器の開口部を閉栓構造が閉塞し、前記容器の開口部を外部から閉塞する側で、前記熟成材の長手方向の一端側を熟成材保持部が保持する工程と、
を備えることを特徴とする熟成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熟成装置、蓋材、熟成材、熟成方法に関し、特に容器に入られた飲料を熟成させる熟成装置、蓋材、熟成材、熟成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、酵素などを利用することで商品に旨味や風味を出し、品質を向上させる熟成とよばれる工程が知られている。特にウイスキーやワインなどの酒は、樽で熟成させる樽熟成期間が、ウイスキーやワインなどの価値を決めるときに重要な指標のひとつとなる。
【0003】
しかし、全ての酒が樽熟成されるとは限らない。例えば、テーブルワインは、発酵後に樽熟成されずにそのまま瓶詰めされることが多い。また全ての酒が木でできた木樽の中で熟成させるのではなく、管理面やコスト面で優れたステンレスタンクで熟成されるものもある。
【0004】
具体的には酒を木樽で熟成すると、木樽に含まれるタンニン、ポリフェノール、リグニンなどの成分や木樽の香りが溶け出すことで酒に深みを与え、複雑味をもった味わいになる。このように、木樽では、木樽と酒とが適度に触れ合うことで、酒の旨味が濃縮されて深みのある味わいになる。
【0005】
一方で、ステンレスタンクによる酒の熟成は、木樽とは異なり空気を通すことがない。つまり空気を通すことがないステンレスタンクは酒の酸化を防ぐことができる。このためワインやブドウ由来の本来の味を発揮させたい白ワインの熟成にはステンレスタンクが用いられることが多い。
【0006】
またステンレスタンクは、温度の管理が容易に行える利点もある。さらに、ステンレスタンクは清掃が容易であるため、メンテナンス性がよい。また貯蔵する液量に適したサイズや、スペースに合わせたサイズのタンクが容易に製造できるので、タンクを設置する場所に柔軟性が高い。このためステンレスタンクで熟成させた酒は、早期かつ安価に提供することができる。
【0007】
ところが、ステンレスタンクで熟成させる酒は、木樽で熟成させた酒のように、タンニン、ポリフェノール、リグニンなどの成分や木樽の香りが酒に溶け出すことがない。このためステンレスタンクで熟成させた酒は、木樽で熟成させた酒のように、深みや複雑味をもった味わいの酒に仕上げることは難しい。
【0008】
そこで、ステンレスタンクで熟成させた酒がガラス製容器などに瓶詰めされたあとでも、木樽と同様に木樽の香りや深みを与えることができる熟成方法や醸成材が開発されている(たとえば、特許文献1、2参照)。
【0009】
具体的に、特許文献1では、ウイスキーを熟成、貯蔵に使用する樽材であるオークを木片化し、そのオーク木片をガラス製容器等に入れて、その容器内に蒸留酒を注ぎ入れることで、木樽と同様に木樽の香りや深みを与えることができるウイスキーの製造方法が開示されている。
【0010】
これにより、ガラス製容器内に入れられたオーク木片からリグニンやタンニンが容器内に注ぎ入れられた蒸留酒に溶け出し、溶け出したリグニンやタンニンと蒸留酒とが反応することで、ウイスキー独特の熟成香を有した琥珀色の蒸留酒になる。
【0011】
また、特許文献2では、木楢からなる微小な木質体に形成されるとともに一部が焙煎され、この木質体を透水性バッグに所定量収納したウイスキー醸成材が開発されている。このウイスキー醸成材を、瓶詰めされたウイスキーを含む蒸留酒等に木質醸成材を浸漬することで、短時間で木質体に含まれるリグニンやタンニンが効率よく引き出され、ウイスキー独特の琥珀色と熟成香を醸し出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2002-65239号公報
【特許文献2】特開2015-202105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、特許文献1や特許文献2で開示されたウイスキーの製造方法や、ウイスキー醸成材による熟成方法では、熟成期間を容易に調節できないため、木樽の中で熟成させたものと同じような熟成具合に仕上げることは困難であった。
【0014】
具体的に特許文献1や特許文献2で開示された熟成方法では、ガラス製容器内に木樽の木片を入れてしまうため、容易にガラス製容器内から木樽の木片を取り出すことができない問題がある。
【0015】
ガラス製容器内から木樽の木片を取り出すには、ガラス製容器の開口部から、指や把持具を使って、木樽の木片を取り出さなくてはならない。細いガラス製容器の開口部からガラス製容器内に入れられた木樽の木片を取り出す作業は容易ではない。
【0016】
またガラス製容器に入れた酒を別の容器に移してから木樽の木片を取り出すことも考えられるが、酒を別の容器に移す際に、木樽の木片も一緒に別の容器に移動してしまう恐れもある。
【0017】
このため、ほどよい熟成期間でガラス製容器内に入れた木樽の木片を取り出して、木樽の木片による色付けや香り付けを止めることができない。このため、特許文献1や特許文献2で開示された熟成方法では、熟成期間を容易に調節できない問題があった。
【0018】
さらに、特許文献1や特許文献2で開示された熟成方法では、ガラス製容器内に木樽の木片を入れて熟成させるが、酒より比重が小さい木樽の木片は酒の表面に浮いてしまう問題がある。このため、酒の表面から露出した部分は、酒と接触することがないため、酒に木樽の成分や香りが溶け出すことはない。つまり効率よく酒を熟成させることはできない。
【0019】
酒に浮いている木樽の木片は、やがて酒を吸って沈むことになるが、この沈むタイミングもガラス製容器内に入れられた木樽の木片の種類や使用される木の部位によって異なる。このため、特許文献1や特許文献2で開示された熟成方法では、熟成期間の調節を困難にさせていた。
【0020】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、瓶詰めされたあとの酒でも、木樽で熟成されるものと同様に熟成させ、その熟成具合の調節を容易にした熟成装置、蓋材、熟成材、および熟成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明では上記問題を解決するために、容器に入られた飲料を熟成させる熟成装置において、前記容器の開口部から内部に挿入されて前記飲料を熟成させる棒状の熟成材と、前記容器の開口部を閉塞する閉栓構造と、前記容器の開口部を外部から閉塞する側に、前記熟成材の長手方向の一端側を保持する熟成材保持部と、を有する蓋部を備えることを特徴とする熟成装置が提供される。
【0022】
これにより、飲料を熟成させる棒状の熟成材が容器の開口部から内部に挿入され、蓋部で、容器の開口部を閉栓構造が閉塞し、容器の開口部を外部から閉塞する側で、熟成材の長手方向の一端側を熟成材保持部が保持する。
【0023】
また、本発明では、内部に入られた飲料を熟成させる容器を閉塞する蓋材において、前記容器の開口部を閉塞する閉栓構造と、前記容器の開口部を外部から閉塞する側に、前記容器の開口部から内部に挿入されて前記飲料を熟成させる棒状の熟成材の長手方向の一端側を保持する熟成材保持部と、を有する蓋部を備えることを特徴とする蓋材が提供される。
【0024】
これにより、飲料を熟成させる棒状の熟成材が容器の開口部から内部に挿入され、蓋部で、容器の開口部を閉栓構造が閉塞し、容器の開口部を外部から閉塞する側で、熟成材の長手方向の一端側を熟成材保持部が保持する。
【0025】
また、本発明では、容器に入られた飲料を熟成させる熟成材において、前記容器の開口部を閉塞する閉栓構造を有する蓋部が、前記容器の開口部を外部から閉塞する側に設けられた保持部に長手方向の一端側が保持され、前記容器の開口部から内部に挿入される棒体からなることを特徴とする熟成材が提供される。
【0026】
これにより、飲料を熟成させる棒状の熟成材が容器の開口部から内部に挿入され、蓋部で、容器の開口部を閉栓構造が閉塞し、容器の開口部を外部から閉塞する側で、熟成材の長手方向の一端側を熟成材保持部が保持する。
【0027】
また、本発明では、容器に入られた飲料を熟成させる熟成方法において、前記飲料を熟成させる棒状の熟成材が前記容器の開口部から内部に挿入される工程と、蓋部で、前記容器の開口部を閉栓構造が閉塞し、前記容器の開口部を外部から閉塞する側で、前記熟成材の長手方向の一端側を熟成材保持部が保持する工程とを備えることを特徴とする熟成方法が提供される。
【0028】
これにより、飲料を熟成させる棒状の熟成材が容器の開口部から内部に挿入され、蓋部で、容器の開口部を閉栓構造が閉塞し、容器の開口部を外部から閉塞する側で、熟成材の長手方向の一端側を熟成材保持部が保持する。
【発明の効果】
【0029】
本発明の熟成装置、蓋材、熟成材、熟成方法によれば、飲料を熟成させる棒状の熟成材が容器の開口部から内部に挿入され、蓋部で、容器の開口部を閉栓構造が閉塞し、容器の開口部を外部から閉塞する側で、熟成材の長手方向の一端側を熟成材保持部が保持することにより、熟成材を飲料に触れた状態を維持し、蓋部を開栓することで飲料と熟成材との接触状態が解除されるので、瓶詰めされたあとの酒でも、木樽で熟成されるものと同様に熟成させ、その熟成具合を容易に調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】第1の実施の形態に係る熟成装置を示す斜視図である。
【
図2】ワインが瓶詰めされた容器を第1の実施の形態の熟成装置が閉栓した状態を示す斜視図である。
【
図3】第1の実施の形態の熟成材および蓋部の詳細を示す上下方向の断面図である。
【
図4】熟成材の長さの異なる熟成装置による熟成状態を示す図である。
【
図5】容器に瓶詰めされたワインに到達しない長さで形成された熟成材を備えた熟成装置がワインを熟成させる方法を示す図である。
【
図6】第2の実施の形態に係る熟成装置を示す斜視図である。
【
図7】ワインが瓶詰めされた容器を第2の実施の形態の熟成装置が閉栓した状態を示す斜視図である。
【
図8】第2の実施の形態の熟成材および蓋部の詳細を示す上下方向の断面図である。
【
図9】第2の実施の形態の熟成装置をソムリエナイフで開栓する様子を示す図である。
【
図10】第3の実施の形態に係る熟成装置を示す上下方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
〔第1の実施の形態〕
図1は、第1の実施の形態に係る熟成装置を示す斜視図である。
【0032】
図1に示すように熟成装置100は、例えばステンレスタンクで熟成させた酒がガラス製容器などの、ここでは図示しない容器200に瓶詰めされたあとでも、容器200の中で木樽と同様に木樽の香りや深みを与えることができる熟成装置であって、熟成材110および蓋部120を備えている。
【0033】
なお、本実施の形態では、容器200に貯蔵し、木樽と同様に木樽の香りや深みを与えて熟成させる飲料を酒であるワインとして説明するが、容器200の中で熟成させるものは、ワインに限らず、醸造酒、蒸留酒、混成酒などのアルコール飲料を熟成することができる。また酒を熟成させるだけでなく、水、果汁などの飲料を熟成させるために熟成装置100を用いることもできる。
【0034】
熟成材110は、ここでは図示しないワイン300を熟成させるためのものであって、一般にワインを貯蔵して熟成させるために使用される木樽の原料となる木材を棒状に加工したものである。
【0035】
熟成材110の具体的な原材料は、ヨーロピアンオーク、ホワイトオーク、ミズナラなどのオーク材が例としてあげられる。熟成するワインに色や香りをつけるためには、ポリフェノールの一種であるタンニンが寄与するため、タンニンが含まれる木材が好ましい。
【0036】
熟成材110はオーク材に限るものではなく、熟成する飲料に付けたい香りや色によって、木材の種類は任意に選択することができる。また、加熱処理して炭化させたオーク材を熟成材110として使用することもできる。
【0037】
熟成材110の形状は、容器200の開口部から内部に挿入できるように、棒状に形成される。熟成材110の径が大きいと、ワイン300との接触面積が大きくなるので、短期間でワイン300に色や香り付けをすることができる。
【0038】
また熟成材110の径を小さくすることで、ワイン300との接触面積が小さくなり、長い時間をかけて熟成させることに適している。この熟成材110の径は、熟成するワイン300の種類や好みによって任意に選択することができる。さらに熟成材110の長さも、後述するように、ワイン300との接触面積や熟成期間、熟成方法によって任意に選択することができる。
【0039】
蓋部120は、容器200の開口部を閉栓するとともに、容器200の中に挿入される熟成材110を開口部付近に固定するためのものであって、閉栓部121、熟成材保持部122、把持部123を備えている。
【0040】
蓋部120の材質は、容器200の開口部を閉栓することができれば、どのような材質でもよく、ここでは一般にワイン栓として使用されるコルク材を使用したコルク栓、又はコルクを使用したツイストキャップを例として説明する。この他にも、コルク材のように多孔構造を有する素材や、弾力性を有する素材を選択することもできる。
【0041】
閉栓部121は、容器200の開口部を閉栓するための閉栓構造を備えたものである。具体的には、容器200の開口部の内径よりも大径に形成された弾力性を備えたコルク材であって、この閉栓部121を容器200の開口部に圧入することで容器200の開口部を閉栓密閉することができる。
【0042】
閉栓部121のうち、容器200の開口部から圧入される側である下側には、熟成材110を収容した状態で保持するために形成された凹部である熟成材保持部122が形成される。
【0043】
熟成材保持部122の内径は、閉栓部121に収容される熟成材110外径よりも小径に形成された凹部であって、熟成材110の長手方向の一端が圧入されることで、蓋部120に熟成材110が固定される。
【0044】
熟成材保持部122による熟成材110の収容は、完全に固定することもできるが、熟成材110を着脱自在に固定することもできる。熟成材110が着脱自在に閉栓部121に固定されることで、熟成させるワイン300に付ける香りや色に合わせて選択した熟成材110を付け替えてワイン300を熟成することができる。
【0045】
また熟成材110の長手方向の一端が熟成材保持部122によって保持されているので、熟成材110が容器200の開口部からワイン300の中に入れられても、熟成材110が浮き上がることがない。このため熟成材110とワイン300とが接触する面積を一定にすることができ、安定した熟成環境でワイン300に色付けや香り付けを行うことができる。
【0046】
把持部123は、閉栓部121のうち、熟成材保持部122が形成される側の反対側である上側に設けられた蓋部120を閉栓又は開栓するために利用者が把持するための部分である。
【0047】
蓋部120で容器200の開口部を閉栓するとき、利用者は把持部123を把持して、蓋部120を回転させながら閉栓部121を開口部に圧入する。また容器200の開口部を開栓するとき、利用者は把持部123を把持して、蓋部120を回転させながら閉栓部121を引き抜く。
【0048】
このとき、熟成材110は熟成材保持部122を介して蓋部120に保持されているので、蓋部120を引き抜くと同時に熟成材110も一緒に容器200から取り出すことができる。
【0049】
ワイン300の熟成具合を確認し、適度に色や香り付けがされていれば、熟成材110を熟成材保持部122から取り外し、再び熟成材110が取り外された蓋部120だけで容器200の開口部を閉栓して保存することができる。
【0050】
また色や香り付けが足りない場合には、熟成材保持部122に熟成材110が収容された状態の蓋部120で、再び容器200の開口部を閉栓するだけで、熟成材110によって色や香り付けをする熟成を続けることができる。さらに、好みによって熟成材110を他の熟成材110に付け替えることで、ワイン300に付ける複雑味を楽しむこともできる。
【0051】
このように、本実施の形態の熟成装置100は、熟成材110が蓋部120に固定されているので、熟成材110による熟成具合を確認しながら、任意のタイミングで熟成材110を容易に取り出すことができる。すなわち熟成具合を容易に調節することができるものである。
【0052】
図2は、ワインが瓶詰めされた容器を第1の実施の形態の熟成装置が閉栓した状態を示す斜視図である。
図2に示すように、熟成装置100は容器200の開口部を閉栓した状態で容器200に装着される。
【0053】
これにより、熟成材110は、容器200に瓶詰めされたワイン300と接した状態で蓋部120によって保持されている。このようにワイン300と熟成材110とが接した状態で熟成期間をおくことで、ワイン300に熟成材110による色や香り付けを行うことができる。
【0054】
また熟成装置100を取り外す、つまり開栓することで熟成材110を同時に容器200から取り出すことができるので、瓶詰めされたワイン300と熟成材110との接触状態を容易に解除することができる。
【0055】
これにより、過度な色付けや香り付けを容易に防止することができる。すなわち、瓶詰めされたあとの酒でも、木樽で熟成されるものと同様に熟成させ、その熟成具合の調節を容易に行うことができる。
【0056】
図3は、第1の実施の形態の熟成材および蓋部の詳細を示す上下方向の断面図である。
図3に示すように、閉栓部121のうち、容器200の開口部から圧入される側である下側には、熟成材110を収容した状態で保持するために形成された凹部である熟成材保持部122が形成される。
【0057】
なお、
図3では、熟成材保持部122が閉栓部121部分のみに形成された図で示したが、熟成材保持部122の凹部を上側方向に延長して、把持部123にかかる部分まで熟成材保持部122を形成することもできる。
【0058】
また
図3に示すように、熟成材110は棒状に形成されている。熟成材110の形状は円柱、角柱などによってワイン300と接触する面積を任意に選択することができ、これにより熟成期間や色付け香り付けの度合いを任意に調節することができる。
【0059】
また、
図3では、熟成材保持部122が中実状に形成された図で示したが、熟成材保持部122を中空状に形成すること、又は熟成材保持部122の外側面の全面または一部に縦溝、横溝、螺旋状の溝などを形成することで、ワイン300と接触する面積を任意に選択することができる。
【0060】
図4は、熟成材の長さの異なる熟成装置による熟成状態を示す図である。
図4に示すように、熟成材110の長さは任意に調節することができる。
具体的には、
図4(A)に示すように、熟成材110の長さを容器200の中心部分程度まで届く長さで形成した熟成材110Aが熟成材保持部122に固定され、熟成材110Aが固定された熟成装置で容器200の開口部を閉栓している。
【0061】
また
図4(B)に示すように、熟成材110の長さを容器200の1/3程度の長さで形成した熟成材110Bが熟成材保持部122に固定され、熟成材110Bが固定された熟成装置で容器200の開口部を閉栓している。つまり、熟成材110Aよりも熟成材110Bは短い長さで形成されている。
【0062】
このため、熟成材110Aがワイン300と接する面積よりも、熟成材110Bがワイン300と接する面積のほうが小さい。このように、熟成材110の長さを調節することで熟成材110と300とが接する面積を任意に調節することができる。すなわち、熟成材110の長さを調節することで熟成期間や色付け香り付けの度合いを任意に調節することができる。
【0063】
また
図4(C)に示すように、熟成材110の長さを瓶詰めされたワイン300に到達しない長さで形成した熟成材110Cが熟成材保持部122に固定され、熟成材110Cが固定された熟成装置で容器200の開口部を閉栓している。このように、熟成材110の長さを瓶詰めされたワイン300に到達しない長さで形成した場合の熟成方法については、次の
図5で説明する。
【0064】
図5は、容器に瓶詰めされたワインに到達しない長さで形成された熟成材を備えた熟成装置がワインを熟成させる方法を示す図である。
図5(A)に示すように、熟成材110の長さが瓶詰めされたワイン300に到達しない長さで形成した熟成材110Cが熟成材保持部122に固定され、熟成材110Cが固定された熟成装置で容器200の開口部を閉栓している。
【0065】
このように熟成材110Cが瓶詰めされたワイン300に到達しない長さで形成されている場合は、直立した状態の容器200を傾斜させることで熟成材110Cをワイン300に接触させることができる。
【0066】
このとき熟成装置100は、容器200の開口部を閉栓するための閉栓構造を備えた閉栓部121を備えており、閉栓部121によって容器200の開口部は閉栓密閉されているため、容器200に瓶詰めしたワイン300が外部に流出することはない。
【0067】
このため容器200を保存する状態の傾斜角度は、
図5(B)に示すように水平方向に寝かせて保存することもできるし、直立状態から180度傾斜させた逆さの状態で保存することもできる。
【0068】
図5(B)のように容器200を傾斜させた状態で、所望の熟成期間をおき、色付けや香り付けなどの熟成がすすんだら、傾斜させた容器200を再び直立させることで、
図5(C)のように、瓶詰めされたワイン300と熟成材110との接触状態を容易に解除することができる。
【0069】
このように熟成材110Cが瓶詰めされたワイン300に到達しない長さで形成されている場合は、容器200の直立状態又は傾斜状態によってその熟成具合の調節を容易に行うことができる。
【0070】
〔第2の実施の形態〕
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態の熟成装置は、蓋部の形状が異なる以外は、第1の実施の形態で示した構成とほぼ同様である。このため、上記第1の実施の形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付すなどして適宜その説明を省略する。
【0071】
図6は、第2の実施の形態に係る熟成装置を示す斜視図である。
図6に示すように第2の実施の形態の熟成装置100は、熟成材110および蓋部120を備えている。
【0072】
蓋部120は、容器200の開口部を閉栓するとともに、容器200の中に挿入される熟成材110を開口部付近に固定するためのものであって、閉栓部121、および熟成材保持部122を備えている。
【0073】
閉栓部121は、容器200の開口部を閉栓するための閉栓構造を備えたものである。具体的には、容器200の開口部の内径よりも大径に形成されたコルク材であって、この閉栓部121を容器200の開口部に圧入することで容器200の開口部を閉栓することができる。
【0074】
また閉栓部121は、後述するように、例えばソムリエナイフを用いて開栓する際に、ソムリエナイフのスクリュー部を差し込んで蓋部120を引き抜くために十分な長さの中実部が設けられている。このため、本実施の形態の熟成装置100は、第一の実施の形態の熟成装置100と比較して把持部が存在しない。
【0075】
図7は、ワインが瓶詰めされた容器を第2の実施の形態の熟成装置が閉栓した状態を示す斜視図である。
図7に示すように、熟成装置100は容器200の開口部を閉栓した状態で容器200に装着される。
【0076】
これにより、熟成材110は、容器200に瓶詰めされたワイン300と接した状態で蓋部120によって保持されている。このようにワイン300と熟成材110とが状態で熟成期間をおくことで、ワイン300に熟成材110による色や香り付けを行うことができる。
【0077】
また熟成装置100を取り外す、つまり開栓することで熟成材110を同時に容器200から取り出すことができるので、瓶詰めされたワイン300と熟成材110との接触状態を容易に解除することができる。
【0078】
これにより、過度な色付けや香り付けを容易に防止することができる。すなわち、瓶詰めされたあとの酒でも、木樽で熟成されるものと同様に熟成させ、その熟成具合の調節を容易に行うことができる。
【0079】
図8は、第2の実施の形態の熟成材および蓋部の詳細を示す上下方向の断面図である。
図8に示すように、閉栓部121のうち、容器200の開口部から圧入される側である下側には、熟成材110を収容した状態で保持するために形成された凹部である熟成材保持部122が形成される。
【0080】
また閉栓部121は、後述するように、例えばソムリエナイフを用いて開栓する際に、閉栓部121の上端面からソムリエナイフのスクリュー部を差し込んで蓋部120を引き抜くために十分な長さの中実部Sを備えている。具体的な中実部Sの長さは一般的なコルク栓と同様に3cm~6cm程度が好ましい。
【0081】
図9は、第2の実施の形態の熟成装置をソムリエナイフで開栓する様子を示す図である。
図9(A)に示すように、熟成装置100は容器200の開口部を閉栓した状態で装着される。
【0082】
次に、
図9(B)に示すように、ソムリエナイフNが有するスクリュー部の先端が、閉栓部121の上端面に対して垂直になるように、閉栓部121の長手方向に向けて差し込み、ソムリエナイフNを回転させてスクリュー部を閉栓部121にねじ込む。
【0083】
次に、
図9(C)に示すように、ソムリエナイフNのスクリュー部を閉栓部121に所定の深さまでねじ込んだら、ソムリエナイフNを上方に向けて引き抜く。このとき、閉栓部121は、閉栓部121の上端面からソムリエナイフのスクリュー部を差し込んで蓋部120を引き抜くために十分な長さの中実部Sを備えている。
【0084】
このため、ソムリエナイフNが、熟成材保持部122に到達することはない。つまり熟成材保持部122からソムリエナイフNによって熟成材110が下方に押し出されることがないので、蓋部120は熟成材110を確実に固定することができる。
【0085】
閉栓部121を容器200から引き抜くことで、
図9(D)に示すように、蓋部120に固定された熟成材110が一緒に引き抜かれる。これにより瓶詰めされたワイン300と熟成材110との接触状態を容易に解除することができる。
【0086】
このため過度な色付けや香り付けを容易に防止することができる。すなわち、瓶詰めされたあとの酒でも、木樽で熟成されるものと同様に熟成させ、その熟成具合の調節を容易に行うことができる。
【0087】
〔第3の実施の形態〕
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態の熟成装置は、蓋部の形状が異なる以外は、第1~2の実施の形態で示した構成とほぼ同様である。このため、上記第1~2の実施の形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付すなどして適宜その説明を省略する。
【0088】
図10は、第3の実施の形態に係る熟成装置を示す上下方向の断面図である。
図10に示すように熟成装置100は、熟成材110および蓋部120を備えている。
蓋部120は、容器200の開口部を閉栓するとともに、容器200の中に挿入される熟成材110を開口部付近に固定するためのものであって、閉栓部121、熟成材保持部122、把持部123を備えている。
【0089】
閉栓部121は、容器200の開口部である瓶口に形成されたネジ山に対応するネジ山が内側に形成された閉栓構造を有しており、アルミニウムや樹脂、又はこれらを組み合わせたもので形成されている。具体的な閉栓部121の構造は、一般的にスクリューキャップと呼ばれるものである。
【0090】
閉栓部121の内側には、熟成材110を収容した状態で保持するために形成された凹部である熟成材保持部122が形成される。
熟成材保持部122は例えば樹脂で形成され、熟成材保持部122の内径は、閉栓部121に収容される熟成材110外径よりも小径に形成された凹部であって、熟成材110の長手方向の一端が圧入されることで、蓋部120に熟成材110が固定される。
【0091】
把持部123は、閉栓部121の外側に設けられた蓋部120を回転させて閉栓又は開栓するために利用者が把持するための部分である。
蓋部120で容器200の開口部を閉栓するとき、利用者は把持部123を把持して、蓋部120を右回転させながら閉栓部121を容器200の開口部である瓶口に形成されたネジ山に嵌め込んでいく。
【0092】
また容器200の開口部を開栓するとき、利用者は把持部123を把持して、蓋部120を左回転させながら閉栓部121を容器200の開口部である瓶口に形成されたネジ山から緩めていく。
【0093】
このとき、熟成材110は熟成材保持部122を介して蓋部120に固定されているので、蓋部120を引き抜くと同時に熟成材110も一緒に容器200から取り出すことができる。
【0094】
ワイン300の熟成具合を確認し、適度に色や香り付けがされていれば、熟成材110を熟成材保持部122から取り外し、再び熟成材110が取り外された蓋部120だけで容器200の開口部を閉栓して保存することができる。
【0095】
また色や香り付けが足りない場合には、熟成材保持部122に熟成材110が収容された状態の蓋部120で、再び容器200の開口部を閉栓するだけで、熟成材110によって色や香り付けを続けることができる。さらに、好みによって熟成材110を他の熟成材110に付け替えることで、ワイン300に付ける複雑味を楽しむこともできる。
【0096】
このように、本実施の形態の熟成装置100は、熟成材110が蓋部120に固定されているので、熟成材110による熟成具合を確認しながら、任意のタイミングで熟成材110を容易に取り出すことで、熟成具合を容易に調節することができる。
【符号の説明】
【0097】
100 熟成装置
110、110A、110B、110C 熟成材
120 蓋部
121 閉栓部
122 熟成材保持部
123 把持部
200 容器
300 ワイン
N ソムリエナイフ
S 中実部