(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022148029
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04955 20160101AFI20220929BHJP
H01M 8/04537 20160101ALI20220929BHJP
H01M 8/04858 20160101ALI20220929BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20220929BHJP
B60L 1/00 20060101ALI20220929BHJP
B60L 7/14 20060101ALI20220929BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20220929BHJP
B60L 50/75 20190101ALI20220929BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20220929BHJP
B60L 58/40 20190101ALI20220929BHJP
【FI】
H01M8/04955
H01M8/04537
H01M8/04858
H01M8/00 Z
B60L1/00 L
B60L7/14
B60L50/60
B60L50/75
B60L58/12
B60L58/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021049545
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】富本 尚也
【テーマコード(参考)】
5H125
5H127
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AC07
5H125AC12
5H125AC14
5H125BC12
5H125BC25
5H125BD02
5H125BD10
5H125BD14
5H125CB03
5H125EE27
5H125EE44
5H125EE53
5H127AB04
5H127AB29
5H127AC05
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA28
5H127BA33
5H127BA57
5H127BA58
5H127BA60
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB26
5H127BB37
5H127BB39
5H127BB40
5H127CC07
5H127DB91
5H127DB99
5H127DC42
5H127DC90
5H127FF12
(57)【要約】
【課題】燃料電池システムにおいて、蓄電装置が過充電状態になることを抑制しつつ、燃料電池が劣化することを抑制する。
【解決手段】燃料電池FCと、燃料電池FCと車両Veに搭載される負荷Loとの間に接続される蓄電装置Bと、燃料電池FCから供給される電力により駆動する補機と、燃料電池FCの発電及び補機の動作を制御する制御部2とを備えて燃料電池システム1を構成し、制御部2は、車両Veから燃料電池システム1に供給される回生電力が所定電力以上である場合で、かつ、車両Veの加速度が所定加速度以下である場合、燃料電池FCの発電を停止させつつ、燃料電池FCの発電に直接係わらない補機を駆動させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される燃料電池システムであって、
燃料電池と、
前記燃料電池と前記車両に搭載される負荷との間に接続される蓄電装置と、
前記燃料電池から供給される電力により駆動する複数の補機と、
前記燃料電池の発電及び前記補機の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記車両から当該燃料電池システムに供給される回生電力が所定電力以上である場合で、かつ、前記車両の加速度が所定加速度以下である場合、前記燃料電池の発電を停止させつつ、前記燃料電池の発電に直接係わらない前記補機を駆動させる
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池システムであって、
前記制御部は、前記回生電力が前記所定電力以上である場合で、かつ、前記加速度が前記所定加速度以下である場合に前記燃料電池の発電を停止させた後、前記複数の補機のうち、前記蓄電装置の充電量に応じた1以上の前記補機を駆動させる
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の燃料電池システムであって、
前記制御部は、
前記回生電力が前記所定電力以上である場合で、かつ、前記加速度が前記所定加速度以下である場合、カウンタ値をインクリメントし、
前記回生電力が前記所定電力より小さい場合、または、前記加速度が前記所定加速度より大きい場合、前記カウンタ値をデクリメントし、
前記カウンタ値が第1の閾値以上になると、前記燃料電池の発電を停止させつつ、前記燃料電池の発電に直接係わらない前記補機を駆動させる
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項4】
請求項3に記載の燃料電池システムであって、
前記制御部は、前記カウンタ値が第1の閾値より小さい第2の閾値以上になると、前記燃料電池の発電に直接係わらない前記補機を駆動させる準備を行う
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載の燃料電池システムであって、
前記蓄電装置は、キャパシタである
ことを特徴とする燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される燃料電池システムとして、燃料電池から出力される電力を燃料電池の後段に設けられる蓄電装置を介して走行用モータなどの負荷に供給するとともに、負荷から出力される回生電力を蓄電装置に供給するものがある。
【0003】
しかしながら、上記燃料電池システムでは、蓄電装置の容量が比較的小さい場合、蓄電装置が過充電状態になり易くなるという問題がある。
【0004】
そこで、回生電力により蓄電装置が過充電状態になるおそれがある場合、燃料電池の発電に係わる補機を駆動することにより燃料電池から供給される電力を消費させることが考えられる。関連する技術として、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記燃料電池システムでは、蓄電装置が過充電状態になることを抑制するために補機を強制的に駆動させると、特に、酸化剤ガスを燃料電池に供給するための補機など燃料電池の発電に直接係わる補機を強制的に駆動させると、燃料電池の出力が高電位になり燃料電池が劣化するおそれがある。
【0007】
そこで、本発明の一側面に係る目的は、燃料電池システムにおいて、蓄電装置が過充電状態になることを抑制しつつ、燃料電池が劣化することを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る一つの形態である燃料電池システムは、車両に搭載される燃料電池システムであって、燃料電池と、前記燃料電池と前記車両に搭載される負荷との間に接続される蓄電装置と、前記燃料電池から供給される電力により駆動する補機と、前記燃料電池の発電及び前記補機の動作を制御する制御部とを備える。
【0009】
前記制御部は、前記車両から当該燃料電池システムに供給される回生電力が所定電力以上である場合で、かつ、前記車両の加速度が所定加速度以下である場合、前記燃料電池の発電を停止させつつ、前記燃料電池の発電に直接係わらない前記補機を駆動させる。
【0010】
これにより、回生電力が所定電力以上である場合で、かつ、車両の加速度が所定加速度以下である場合、すなわち、車両が下り坂を走行している可能性が高く、蓄電装置が過充電状態になるおそれがある場合、燃料電池の発電を停止させつつ、燃料電池の発電に直接係わらない補機を駆動させることができる。そのため、補機により燃料電池から供給される電力を消費させたとしても、燃料電池の出力が高電位になることを抑えることができ、燃料電池が劣化することを抑制することができる。すなわち、蓄電装置が過充電状態になることを抑制しつつ、燃料電池が劣化することを抑制することができる。
【0011】
また、前記制御部は、前記回生電力が前記所定電力以上である場合で、かつ、前記加速度が前記所定加速度以下である場合に前記燃料電池の発電を停止させた後、前記複数の補機のうち、前記蓄電装置の充電量に応じた1以上の前記補機を駆動させるように構成してもよい。
【0012】
これにより、車両が下り坂を走行している可能性が高く、蓄電装置が過充電状態になるおそれがある場合において、蓄電装置の充電量に応じた1以上の補機の動作制御を適切に行うことができるため、蓄電装置が過充電状態になることを抑制しつつ、燃料電池の劣化を抑制することができる。
【0013】
また、前記制御部は、前記回生電力が前記所定電力以上である場合で、かつ、前記加速度が前記所定加速度以下である場合、カウンタ値をインクリメントし、前記回生電力が前記所定電力より小さい場合、または、前記加速度が前記所定加速度より大きい場合、前記カウンタ値をデクリメントし、前記カウンタ値が第1の閾値以上になると、前記燃料電池の発電を停止させつつ、前記燃料電池の発電に直接係わらない前記補機を駆動させるように構成してもよい。
【0014】
これにより、回生電力や車両の加速度が変動することで燃料電池の発電停止と発電再開が頻繁に繰り返されることを抑制することができるため、燃料電池の発電停止と発電再開が頻繁に繰り返されることで車両の走行に与える影響を抑えることができ、車両の運転者が車両の走行に対して違和感を覚えることを抑制することができる。
【0015】
また、前記制御部は、前記カウンタ値が第1の閾値より小さい第2の閾値以上になると、前記燃料電池の発電に直接係わらない前記補機を駆動させる準備を行うように構成してもよい。
【0016】
これにより、カウンタ値が第1の閾値以上になる前に補機を駆動させる準備を行わない場合に比べて、カウンタ値が第1の閾値以上になった後、すぐに、補機を駆動させて燃料電池から供給される電力を消費させることができるため、蓄電装置が過充電状態になることをさらに抑制することができる。
【0017】
また、前記蓄電装置は、キャパシタにより構成されてもよい。
【0018】
一般に、キャパシタは、二次電池のなかで容量が比較的小さく、充放電特性が優れているため、蓄電装置をキャパシタにより構成することで、燃料電池システムの充放電特性を比較的高くすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、燃料電池システムにおいて、蓄電装置が過充電状態になることを抑制しつつ、燃料電池が劣化することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施形態の燃料電池システムの一例を示す図である。
【
図2】燃料電池から出力される電流と電圧の一例を示す図である。
【
図3】降坂フラグ切替処理時の制御部の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図4】発電制御処理時の制御部の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下図面に基づいて実施形態について詳細を説明する。
【0022】
図1は、実施形態の燃料電池システムの一例を示す図である。
【0023】
図1に示す燃料電池システム1は、フォークリフトなどの産業車両や自動車などの車両Veに搭載され、負荷Loなどに電力を供給する。なお、負荷Loは、車両Veに搭載される走行用モータを駆動するためのインバータなどとする。
【0024】
また、燃料電池システム1は、燃料電池FCと、水素タンクHTと、水素タンク弁HTVと、インジェクタINJと、気液分離機GLSと、水素循環ポンプHPと、排気排水弁EDVと、エアコンプレッサACPと、エア調圧弁ARVと、エアシャット弁ASVと、ラジエタRと、ファンFと、ウォータポンプWPと、インタークーラICと、DCDCコンバータCNVと、蓄電装置Bと、制御部2とを備える。なお、水素タンク弁HTV、インジェクタINJ、水素循環ポンプHP、排気排水弁EDV、エアコンプレッサACP、エア調圧弁ARV、エアシャット弁ASV、ファンF、及びウォータポンプWPは、燃料電池FC(DCDCコンバータCNV)から供給される電力を消費する補機である。特に、水素循環ポンプHP、エアコンプレッサACP、ファンF、及びウォータポンプWPを駆動するためのモータの回転数を増加させるほど、燃料電池FCから供給される電力の消費量が増加するものとする。また、エアコンプレッサACP及びインジェクタINJなどの補機は、燃料電池FCの発電に直接係わる補機とする。また、水素循環ポンプHP、ファンF、及びウォータポンプWPなどの補機は、燃料電池FCの発電に直接係わらない補機とする。すなわち、燃料電池FCの発電に直接係わる補機とは、反応ガス(後述する燃料ガスや酸化剤ガス)を燃料電池FCに追加供給する補機と言い換えることができ、燃料電池FCの発電に直接係わらない補機とは、反応ガスを燃料電池FCに追加供給しない補機と言い換えることができる。
【0025】
燃料電池FCは、互いに直列接続される複数の燃料電池セルにより構成される燃料電池スタックであり、燃料ガス(水素ガスなど)に含まれる水素と酸化剤ガス(空気など)に含まれる酸素との電気化学反応により電気を発生させる。
【0026】
水素タンクHTは、燃料ガスの貯蔵容器である。水素タンクHTに貯蔵された燃料ガスは水素タンク弁HTV及びインジェクタINJを介して燃料電池FCに供給される。
【0027】
水素タンク弁HTVは、燃料電池FCに供給される燃料ガスを減圧する。
【0028】
インジェクタINJは、燃料電池FCに供給される燃料ガスの流量を調整する。
【0029】
気液分離機GLSは、燃料電池FCから排出される燃料ガスと液水とを分離する。
【0030】
水素循環ポンプHPは、気液分離機GLSにより分離された燃料ガスを燃料電池FCに再度供給する。
【0031】
排気排水弁EDVは、気液分離機GLSにより分離された液水を外部に排出する。
【0032】
エアコンプレッサACPは、酸化剤ガスを圧縮しインタークーラIC及びエアシャット弁ASVを介して燃料電池FCに供給する。
【0033】
インタークーラICは、酸化剤ガスをインタークーラICに流れる冷却水などの冷媒と熱交換させる。
【0034】
エアシャット弁ASVは、燃料電池FCに供給される酸化剤ガスを遮断する。
【0035】
エア調圧弁ARVは、燃料電池FCに供給される酸化剤ガスの圧力や流量を調整する。
【0036】
ラジエタRは、燃料電池の発熱により温められた冷媒を外気と熱交換させる。
【0037】
ファンFは、ラジエタRの放熱量を上昇させる。なお、燃料電池システム1は、ラジエタRの入力と出力とを接続するバイパス流路Pを備えているものとする。これにより、燃料電池FCから出力される冷媒をラジエタRを介さずにウォータポンプWPに供給することができるため、ファンFを駆動するためのモータの回転数を増加させてラジエタRの放熱量を上昇させても冷媒が過冷却(オーバークール)状態になることを抑制することができる。
【0038】
ウォータポンプWPは、ラジエタRにより冷却された冷媒をインタークーラICを介して燃料電池FCに供給する。
【0039】
DCDCコンバータCNVは、燃料電池FCの後段に設けられ、燃料電池FCから出力される電力を蓄電装置Bに供給する。なお、DCDCコンバータCNVから出力される電力のうち、補機により電力が消費された残りの電力が蓄電装置Bに供給されるものとする。
【0040】
蓄電装置Bは、DCDCコンバータCNVと負荷Loとの間に設けられ、負荷Loや水素循環ポンプHP、エアコンプレッサACP、ファンF、及びウォータポンプWPなどの補機に電力を供給する。なお、蓄電装置Bをリチウムイオンキャパシタなどのキャパシタにより構成してもよい。一般に、キャパシタは、二次電池のなかで容量が比較的小さく、充放電特性が優れているため、蓄電装置Bをキャパシタにより構成することで、燃料電池システム1の充放電特性を比較的高くすることができる。
【0041】
制御部2は、メモリに記憶されたプログラムから論理演算を行うCPUを含むマイクロコンピュータなどにより構成される。
【0042】
また、制御部2は、通常発電制御時、燃料電池FCにおいて発電される電力が目標電力Ptになるように、水素タンク弁HTV、インジェクタINJ、水素循環ポンプHP、排気排水弁EDV、エアコンプレッサACP、エア調圧弁ARV、エアシャット弁ASV、ファンF、及びウォータポンプWPなどの各種補機をそれぞれ駆動させる。例えば、制御部2は、燃料電池FCの発電開始時、各種補機をそれぞれ駆動させるためのモータの電源をオンにした後、各モータの目標回転数を示す指令値を出力する。
【0043】
また、制御部2は、通常発電制御時、蓄電装置Bの充電量に応じて、目標電力Ptを変化させる。なお、充電量とは、蓄電装置Bの満充電容量に対する現在の容量の割合[%](充電率)、または、蓄電装置Bに電流が流れていないときの蓄電装置Bの電圧[V]とする。
【0044】
また、制御部2は、蓄電装置Bの充電量に応じて、段階的に、目標電力Ptを変化させるように構成してもよい。例えば、充電率SOC1<充電率SOC2<充電率SOC3<充電率SOC4<充電率SOC5<充電率SOC6とし、目標電力Pt1<目標電力Pt2とする場合を想定する。この場合、制御部2は、蓄電装置Bの充電率が充電率SOC3~充電率SOC5の範囲において減少している場合、目標電力Ptとして目標電力Pt1を設定し、蓄電装置Bの充電率が充電率SOC1~充電率SOC3の範囲において減少している場合、目標電力Ptとして目標発電電力Pt2を設定し、蓄電装置Bの充電率が充電率SOC2~充電率SOC4の範囲において増加している場合、目標電力Ptとして目標電力Pt2を設定し、蓄電装置Bの充電率が充電率SOC4~充電率SOC6の範囲において増加している場合、目標電力Ptとして目標電力Pt1を設定する。
【0045】
ここで、
図2は、燃料電池FCから出力される電流と電圧の一例を示す図である。なお、
図2に示す2次元座標の横軸は電流[A]を示し、縦軸は電圧[V]を示し、実線は燃料電池FCから出力される電流と電圧の対応関係を示している。
【0046】
図2に示すように、燃料電池FCから出力される電流が小さくなるほど、燃料電池FCから出力される電圧が大きくなるものとする。また、燃料電池FCから出力される電圧が比較的高くなると、電気化学反応に必要な触媒がイオン化され、燃料電池FCから出力される電圧が次回比較的小さくなったときにイオン化された触媒の結晶が大きくなるため、触媒の粒径が増大するとともに触媒の表面積が低下して燃料電池FCが劣化するおそれがある。
【0047】
そこで、実施形態の制御部2では、燃料電池FCの出力電圧が所定電圧Vc以上になると、DCDCコンバータCNVを強制的に駆動させることで、燃料電池FCからDCDCコンバータCNVに流れる電流を増加させて、燃料電池FCから出力される電圧を低下させる。これにより、信号待ちなどで車両Veが一時停止して燃料電池システム1から負荷Loに流れる電流が比較的小さくなるアイドル時において、燃料電池FCから出力される電圧が比較的大きくなることを抑えることができるため、燃料電池FCが劣化することを抑制することができる。
【0048】
また、車両Veが下り坂を走行しているとき、車両Ve(負荷Lo)から燃料電池システム1に供給される回生電力が比較的大きくなるものとする。また、車両Veが下り坂を走行しているとき、車両Veの速度が一定になるように車両Veのアクセルが運転者により操作されることで、車両Veの加速度が比較的小さくなるものとする。
【0049】
そのため、車両Veから燃料電池システム1に供給される回生電力が比較的大きい場合で、かつ、車両Veの加速度が比較的小さい場合、車両Veが下り坂を走行している可能性が高い。
【0050】
そして、車両Veが下り坂を走行している場合では、比較的長い期間、車両Veから燃料電池システム1に回生電力が供給されることで、蓄電装置Bが過充電状態になる可能性が高くなるという懸念がある。
【0051】
そこで、実施形態の制御部2では、車両Veから燃料電池システム1に供給される回生電力が所定電力以上である場合で、かつ、車両Veの加速度が所定加速度以下である場合、すなわち、車両Veが下り坂を走行している可能性が高く、蓄電装置Bが過充電状態になるおそれがある場合、燃料電池FCの発電を停止させつつ、燃料電池FCの出力電圧が比較的高くならないように、燃料電池FCの発電に直接係わらない補機を強制的に駆動させる。
【0052】
なお、制御部2は、車両Veから燃料電池システム1に出力される電圧と、車両Veから燃料電池システム1に流れる電流との乗算結果を、車両Veから燃料電池システム1に供給される回生電力とする。また、制御部2は、車両Veの速度[km/h]を車両Veに搭載される走行制御部(不図示)から受け取り、単位時間あたりの車両Veの速度の変化量を、車両Veの加速度とする。車両Veの速度は、(走行モータの回転数×タイヤ外径×円周率)/(ギア比×減速比)とする。または、制御部2は、加速度センサにより求められた車両Veの加速度を走行制御部から受け取る。
【0053】
このように、実施形態の制御部2では、車両Veが下り坂を走行している可能性が高く、蓄電装置Bが過充電状態になるおそれがある場合、燃料電池FCの発電を停止させつつ、燃料電池FCの発電に直接係わらない補機を駆動させている。これにより、蓄電装置Bが過充電状態にならないように補機により燃料電池FCから供給される電力を消費させたとしても、燃料電池FCの出力が高電位になることを抑えることができ、燃料電池FCが劣化することを抑制することができる。すなわち、蓄電装置Bが過充電状態になることを抑制しつつ、燃料電池FCが劣化することを抑制することができる。
【0054】
なお、車両Veから燃料電池システム1に供給される回生電力が比較的小さい場合、蓄電装置Bが過充電状態になり難く、燃料電池FCの発電を停止させたり補機を駆動させたりする必要がないため、制御部2は、通常発電制御を継続する。
【0055】
また、車両Veから燃料電池システム1に供給される回生電力が比較的大きいが、車両Veの加速度が比較的大きい場合、平坦な道を走行しているときの車両Veが減速したときに一時的に回生電力が比較的大きくなった可能性が高く、燃料電池FCの発電を停止させたり補機を駆動させたりする必要がないため、制御部2は、通常発電制御を継続する。
【0056】
また、制御部2は、回生電力が所定電力以上である場合で、かつ、車両Veの加速度が所定加速度以下である場合、カウンタ値をインクリメントし、回生電力が所定電力より小さい場合、または、車両Veの加速度が所定加速度より大きい場合、カウンタ値をデクリメントし、カウンタ値が閾値C1th(第1の閾値)以上になると、車両Veが下り坂を走行していると判断して降坂フラグをオンする。また、制御部2は、降坂フラグがオンになると、燃料電池FCの発電を停止させつつ、燃料電池FCの発電に直接係わらない補機を駆動させる。すなわち、制御部2は、回生電力が所定電力以上である場合で、かつ、車両Veの加速度が所定加速度以下である場合、カウンタ値をインクリメントし、回生電力が所定電力より小さい場合、または、車両Veの加速度が所定加速度より大きい場合、カウンタ値をデクリメントし、カウンタ値が閾値C1th以上になると、燃料電池FCの発電を停止させつつ、燃料電池FCの発電に直接係わらない補機を駆動させる。
【0057】
これにより、回生電力や車両Veの加速度が変動することで燃料電池FCの発電停止と発電再開が頻繁に繰り返されることを抑制することができるため、燃料電池FCの発電停止と発電再開が頻繁に繰り返されることで車両Veの走行に与える影響を抑えることができ、車両Veの運転者が車両Veの走行に対して違和感を覚えることを抑制することができる。
【0058】
また、制御部2は、カウンタ値が閾値C1thより小さい閾値C2th(第2の閾値)以上になると、燃料電池FCの発電に直接係わらない補機を駆動させる準備を行うように構成してもよい。
【0059】
これにより、カウンタ値が閾値C1th以上になる前に補機を駆動させる準備を行わない場合に比べて、カウンタ値が閾値C1th以上になった後、すぐに、補機を駆動させて燃料電池FCから供給される電力を消費させることができるため、蓄電装置Bが過充電状態になることをさらに抑制することができる。
【0060】
また、制御部2は、回生電力が所定電力以上である場合で、かつ、車両Veの加速度が所定加速度以下である場合に燃料電池FCの発電を停止させた後、複数の補機のうち、蓄電装置Bの充電量に応じた1以上の補機を駆動させるように構成してもよい。
【0061】
ここで、制御部2が、燃料電池FCの発電停止時において、補機の動作制御として、下記1)~4)の何れか1つの動作制御を行う場合を想定する。
【0062】
1)ウォータポンプWPを駆動するためのモータの回転数を最大回転数にする。
【0063】
2)ウォータポンプWP及び水素循環ポンプHPを駆動するためのモータの回転数を最大回転数にする。
【0064】
3)ウォータポンプWP、水素循環ポンプHP、及びファンFを駆動するためのモータの回転数を最大回転数する。
【0065】
4)ウォータポンプWP、水素循環ポンプHP、及びファンFを駆動するためのモータの回転数を最大回転数にするとともに、エアコンプレッサACPを駆動するためのモータの回転数及び高電位回避のための所定電圧Vcを増加させる。
【0066】
なお、上記4)の動作制御が行われる場合、燃料電池FCから供給される電力の消費量が最も大きく、上記3)の動作制御が行われる場合、燃料電池FCから供給される電力の消費量が2番目に大きく、上記2)の動作制御が行われる場合、燃料電池FCから供給される電力の消費量が3番目に大きく、上記1)の動作制御が行われる場合、燃料電池FCから供給される電力の消費量が最も小さくなるものとする。また、上記1)の動作制御が行われる場合、燃料電池FCの劣化に対する影響度が最も低く、上記2)の動作制御が行われる場合、燃料電池FCの劣化に対する影響度が2番目に低く、上記3)の動作制御が行われる場合、燃料電池FCの劣化に対する影響度が3番目に低く、上記4)の動作制御が行われる場合、燃料電池FCの劣化に対する影響度が4番目に低くなるものとする。また、閾値S1th<閾値S2th<閾値S3th<閾値S4thとする。
【0067】
この場合、制御部2は、回生電力が所定電力以上である場合で、かつ、車両Veの加速度が所定加速度以下である場合に燃料電池FCの発電を停止させた後、蓄電装置Bの充電量が閾値S1th以上である場合、上記1)の動作制御を行い、蓄電装置Bの充電量が閾値S2th以上である場合、上記2)の動作制御を行い、蓄電装置Bの充電量が閾値S3th以上である場合、上記3)の動作制御を行い、蓄電装置Bの充電量が閾値S4th以上である場合、上記4)の動作制御を行う。
【0068】
これにより、燃料電池FCの発電停止時において、蓄電装置Bの充電量が閾値S1th以上である場合、制御部2により上記1)の動作制御が行われるため、燃料電池FCの劣化に対する影響度を最も低くさせながら蓄電装置Bの電力を消費させることができる。また、燃料電池FCの発電停止時において、蓄電装置Bの充電量が閾値S2th以上である場合、制御部2により上記2)の動作制御が行われるため、燃料電池FCの劣化に対する影響度を比較的低くさせながら蓄電装置Bの電力を消費させることができる。また、燃料電池FCの発電停止時において、蓄電装置Bの充電量が閾値S3th以上である場合、制御部2により上記3)の動作制御が行われるため、蓄電装置Bの電力の消費量を比較的大きくさせながら燃料電池FCの劣化に対する影響度を抑えることができる。また、燃料電池FCの発電停止時において、蓄電装置Bの充電量が閾値S4th以上である場合、制御部2により上記4)の動作制御が行われるため、蓄電装置Bの電力の消費量を最も大きくさせながら燃料電池FCの劣化に対する影響度を抑えることができる。
【0069】
このように、車両Veが下り坂を走行している可能性が高く、蓄電装置Bが過充電状態になるおそれがある場合において、蓄電装置Bの充電量に応じた補機の動作制御を適切に行うことができるため、蓄電装置Bが過充電状態になることを抑制しつつ、燃料電池FCの劣化を抑制することができる。
【0070】
図3は、降坂フラグ切替処理時の制御部2の動作の一例を示すフローチャートである。
【0071】
まず、制御部2は、車両Veから燃料電池システム1に供給される回生電力が所定電力以上である場合で、かつ、車両Veの加速度が所定加速度以下である場合(ステップS11:Yes)、カウンタのカウンタ値をインクリメントする(ステップS12)。
【0072】
次に、制御部2は、カウンタ値が閾値C2th(第2の閾値)以上である場合(ステップS13:Yes)、各種補機の駆動を準備する(ステップS14)。
【0073】
次に、制御部2は、カウンタ値が閾値C1th(第1の閾値)以上である場合(ステップS15:Yes)、カウンタ値を閾値C1thと同じ値にし、降坂フラグをオンし(ステップS16)、降坂フラグ切替処理を終了する。
【0074】
一方、制御部2は、車両Veから燃料電池システム1に供給される回生電力が所定電力より小さい場合、または、車両Veの加速度が所定加速度より大きい場合(ステップS11:No)、カウンタのカウンタ値をデインクリメントする(ステップS17)。
【0075】
次に、制御部2は、カウンタ値がゼロ以下である場合(ステップS18:Yes)、カウンタ値をゼロにするとともに降坂フラグをオフし(ステップS19)、降坂フラグ切替処理を終了する。
【0076】
また、制御部2は、カウンタ値が閾値C2thより小さい場合(ステップS13:No)、または、カウンタ値が閾値C1thより小さい場合(ステップS15:No)、または、カウンタ値がゼロより大きい場合(ステップS18:No)、降坂フラグ切替処理を終了する。
【0077】
図4は、発電制御処理時の制御部2の動作の一例を示すフローチャートである。
【0078】
まず、制御部2は、降坂フラグがオフである場合(ステップS21:No)、通常発電制御を行う(ステップS22)。
【0079】
一方、制御部2は、降坂フラグがオンである場合(ステップS21:Yes)、燃料電池FCの発電を停止させる(ステップS23)。
【0080】
次に、制御部2は、蓄電装置Bの充電量が閾値S1th以上になると(ステップS24:Yes)、ウォータポンプWPを駆動するためのモータの回転数が最大回転数になるように指令値を出力する(ステップS25)。
【0081】
次に、制御部2は、蓄電装置Bの充電量が閾値S2th以上になると(ステップS26:Yes)、水素循環ポンプHPを駆動するためのモータの回転数が最大回転数になるように指令値を出力する(ステップS27)。なお、制御部2は、ステップS27において、ウォータポンプWPを駆動するためのモータの回転数を最大回転数にさせる指令値を継続して出力しているものとする。
【0082】
次に、制御部2は、蓄電装置Bの充電量が閾値S3th以上になると(ステップS28:Yes)、ファンFを駆動するためのモータの回転数が最大回転数になるように指令値をする(ステップS29)。なお、制御部2は、ステップS29において、ウォータポンプWP及び水素循環ポンプHPを駆動するためのモータの回転数を最大回転数にさせる指令値を継続して出力しているものとする。
【0083】
そして、制御部2は、蓄電装置Bの充電量が閾値S4th以上になると(ステップS30:Yes)、エアコンプレッサACPを駆動するためのモータの回転数及び高電位回避の所定電圧Vcを増加させる(ステップS31)。なお、制御部2は、ステップS31において、ウォータポンプWP、水素循環ポンプHP、及びファンFを駆動するためのモータの回転数を最大回転数にさせる指令値を継続して出力しているものとする。
【0084】
なお、本発明は、以上の実施の形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更が可能である。
【符号の説明】
【0085】
1 燃料電池システム
2 制御部
Ve 車両
Lo 負荷
FC 燃料電池
HT 水素タンク
HTV 水素タンク弁
INJ インジェクタ
GLS 気液分離機
HP 水素循環ポンプ
EDV 排気排水弁
ACP エアコンプレッサ
ARV エア調圧弁
ASV エアシャット弁
R ラジエタ
F ファン
WP ウォータポンプ
IC インタークーラ
CNV DCDCコンバータ
B 蓄電装置