(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022014803
(43)【公開日】2022-01-20
(54)【発明の名称】二重床に対する衝撃音レベル低減量の予測方法
(51)【国際特許分類】
G01H 17/00 20060101AFI20220113BHJP
【FI】
G01H17/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020117358
(22)【出願日】2020-07-07
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】591220780
【氏名又は名称】泰成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】石丸 岳史
(72)【発明者】
【氏名】山下 恭弘
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 仁
(72)【発明者】
【氏名】高根 裕貴
【テーマコード(参考)】
2G064
【Fターム(参考)】
2G064AA05
2G064AB02
2G064AB13
2G064BA02
2G064BD02
2G064CC42
2G064CC43
2G064DD02
(57)【要約】
【課題】複雑な手順を必要とせずに衝撃音レベル低減量を予測することが可能な、二重床に対する衝撃音レベル低減量の予測方法を提供する。
【解決手段】基礎面と、床パネルと、床板支持部材を備える二重床に対する衝撃音レベル低減量の予測方法であって、基礎面に直接加わる衝撃力を、衝撃力が床パネル及び床板支持部材によって緩衝される緩衝効果により補正した量である緩衝効果補正量を算出する緩衝効果補正量算出工程と、床パネルに加わる衝撃力によって発生した振動を床パネルの内部で減衰させた量である振動減衰量を算出する振動減衰量算出工程と、床パネルに加わる衝撃力によって発生した振動が床パネルから基礎面へ伝達する際の防振効果量を算出する防振効果量算出工程と、緩衝効果補正量と振動減衰量と防振効果量に応じて衝撃音レベル低減量を算出する衝撃音レベル低減量算出工程を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎面と、前記基礎面の上方に配置された床パネルと、前記基礎面と前記床パネルとの間に配置されて前記床パネルを支持する床板支持部材と、を備える二重床に対する衝撃音レベル低減量の予測方法であって、
前記基礎面に直接加わる衝撃力を、前記衝撃力が前記床パネル及び前記床板支持部材によって緩衝される緩衝効果により補正した量である緩衝効果補正量を算出する緩衝効果補正量算出工程と、
前記床パネルに加わる衝撃力によって発生した振動を床パネルの内部で減衰させた量である振動減衰量を算出する振動減衰量算出工程と、
前記床パネルに加わる衝撃力によって発生した振動が床パネルから前記基礎面へ伝達する際の防振効果量を算出する防振効果量算出工程と、
前記緩衝効果補正量算出工程で算出した緩衝効果補正量と、前記振動減衰量算出工程で算出した振動減衰量と、前記防振効果量算出工程で算出した防振効果量と、に応じて前記衝撃音レベル低減量を算出する衝撃音レベル低減量算出工程と、を備えることを特徴とする二重床に対する衝撃音レベル低減量の予測方法。
【請求項2】
前記緩衝効果補正量算出工程では、前記床パネルの等価ヤング係数と、前記床パネルの等価密度と、前記床パネルの表面に発生する局部変形のばね定数と、前記床パネルの曲げ変形のばね定数と、前記床パネルの断面2次モーメントと、を予め形成した数式に入力して前記緩衝効果補正量を算出することを特徴とする請求項1に記載した二重床に対する衝撃音レベル低減量の予測方法。
【請求項3】
基礎面と、前記基礎面の上方に配置された床パネルと、前記基礎面と前記床パネルとの間に配置されて前記床パネルを支持する床板支持部材と、を備える二重床に対する衝撃音レベル低減量の予測方法であって、
前記基礎面の加振点位置における駆動点インピーダンスと、前記基礎面のうち前記床パネルを施工した範囲内において駆動点インピーダンスレベルの上昇量が最小となる位置における駆動点インピーダンスと、の変化量である駆動点インピーダンスレベル変化量を算出する駆動点インピーダンスレベル変化量算出工程と、
前記床パネルに加わる衝撃力によって発生した振動を床パネルの内部で減衰させた量である振動減衰量を算出する振動減衰量算出工程と、
前記床パネルに加わる衝撃力によって発生した振動が床パネルから前記基礎面へ伝達する際の防振効果量を算出する防振効果量算出工程と、
前記駆動点インピーダンスレベル変化量算出工程で算出した前記駆動点インピーダンスレベル変化量と、前記振動減衰量算出工程で算出した振動減衰量と、前記防振効果量算出工程で算出した防振効果量と、に応じて前記衝撃音レベル低減量を算出する衝撃音レベル低減量算出工程と、を備えることを特徴とする二重床に対する衝撃音レベル低減量の予測方法。
【請求項4】
前記駆動点インピーダンスレベル変化量算出工程では、前記基礎面の等価ヤング係数と、前記基礎面の等価密度と、前記基礎面の等価厚さと、前記基礎面の断面2次モーメントと、を予め形成した数式に入力して前記駆動点インピーダンスレベル変化量を算出することを特徴とする請求項3に記載した二重床に対する衝撃音レベル低減量の予測方法。
【請求項5】
前記衝撃音レベル低減量は、軽量床衝撃音の衝撃音レベル低減量であることを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載した二重床に対する衝撃音レベル低減量の予測方法。
【請求項6】
前記衝撃音レベル低減量は、重量床衝撃音の衝撃音レベル低減量であることを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載した二重床に対する衝撃音レベル低減量の予測方法。
【請求項7】
前記二重床は、乾式二重床であることを特徴とする請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載した二重床に対する衝撃音レベル低減量の予測方法。
【請求項8】
前記振動減衰量算出工程では、前記床パネルの板定数と、前記床パネルの波数と、前記床パネルに対する周辺部の単位長さ当たりのエネルギー吸収率と、前記床パネルの曲げ波伝搬速度と、前記床パネルを面積が等しい円形に置き換えたときの半径と、を予め形成した数式に入力して前記振動減衰量を算出することを特徴とする請求項1から請求項7のうちいずれか1項に記載した二重床に対する衝撃音レベル低減量の予測方法。
【請求項9】
前記防振効果量算出工程では、前記床パネルから前記床板支持部材を介して前記基礎面まで振動が伝達する複数の振動伝達経路の面密度と、前記振動伝達経路のばね定数と、前記振動伝達経路の減衰係数と、前記床パネルの駆動点インピーダンスと、前記床パネルの曲げ剛性と、前記複数の振動伝達経路の数と、を予め形成した数式に入力して前記防振効果量を算出することを特徴とする請求項1から請求項8のうちいずれか1項に記載した二重床に対する衝撃音レベル低減量の予測方法。
【請求項10】
前記床板支持部材は、前記二重床を形成した部屋の壁側に配置した床端側支持部材と、前記床端側支持部材よりも前記部屋の内側に配置した一般側支持部材と、を含み、
前記防振効果量算出工程では、前記床端側支持部材による防振効果量と、前記一般側支持部材による防振効果量と、を合成することで前記防振効果量を算出することを特徴とする請求項1から請求項9のうちいずれか1項に記載した二重床に対する衝撃音レベル低減量の予測方法。
【請求項11】
前記防振効果量算出工程では、前記一般側支持部材の数と前記床端側支持部材の数との割合に応じて前記防振効果量を算出することを特徴とする請求項10に記載した二重床に対する衝撃音レベル低減量の予測方法。
【請求項12】
前記床端側支持部材は、弾性材料を用いて形成された床端側台座を備え、
前記床端側台座は、ばね定数及び振動の減衰比が小さい薄型床端側台座と、前記薄型床端側台座よりもばね定数及び振動の減衰比が大きい厚型床端側台座と、を含み、
前記防振効果量算出工程では、前記薄型床端側台座と前記厚型床端側台座との前記ばね定数及び前記減衰比の違いに応じて前記防振効果量を算出することを特徴とする請求項10又は請求項11に記載した二重床に対する衝撃音レベル低減量の予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎面(スラブ)の上に床パネルを配置して形成した二重床に対し、床パネルに加わる衝撃によって発生する衝撃音レベルの低減量を予測する、衝撃音レベル低減量の推定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
床仕上げ材として二重床を採用する集合住宅等の建物に対し、設計段階等において、二重床を設置した後の二重床に発生する衝撃音の遮音性能を予測する技術として、例えば、特許文献1に開示されている技術がある。
【0003】
特許文献1に開示されている技術では、JIS法実験室において実測したスラブ素面の平均インピーダンスレベルから、インピーダンス下降量を算出する。そして、床面がスラブ素面の状態の重量床衝撃音レベルと二重床を設置した状態の重量床衝撃音レベルとから、加振点nごとの63Hz単独の重量床衝撃音レベル低減量を算出する。さらに、算出した重量床衝撃音レベル低減量及びインピーダンス下降量の値から、一次式における二つの数値を算出して、スラブ素面の平均インピーダンスレベルから加振点nごとのインピーダンス下降量を算出する。そして、加振点nごとのインピーダンス下降量と一次式とから、衝撃音レベル低減量の予測値を得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されている技術では、衝撃音レベル低減量の予測値を得るために、乾式二重床を含む躯体構造についての方程式を導出して解く必要があり、複雑な手順を必要とする。このため、建築現場の作業員等、一般的な建築技術者にとっては実施が困難であるという問題点がある。
【0006】
本発明の課題は、複雑な手順を必要とせずに衝撃音レベル低減量を予測することが可能な、二重床に対する衝撃音レベル低減量の予測方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、基礎面と、基礎面の上方に配置された床パネルと、基礎面と床パネルとの間に配置されて床パネルを支持する床板支持部材と、を備える二重床に対する衝撃音レベル低減量の予測方法である。また、二重床に対する衝撃音レベル低減量の予測方法は、緩衝効果補正量算出工程と、振動減衰量算出工程と、防振効果量算出工程と、衝撃音レベル低減量算出工程を備える。緩衝効果補正量算出工程は、基礎面に直接加わる衝撃力を、衝撃力が床パネル及び床板支持部材によって緩衝される緩衝効果により補正した量である緩衝効果補正量を算出する工程である。振動減衰量算出工程は、床パネルに加わる衝撃力によって発生した振動を床パネルの内部で減衰させた量である振動減衰量を算出する工程である。防振効果量算出工程は、床パネルに加わる衝撃力によって発生した振動が床パネルから基礎面へ伝達する際の防振効果量を算出する工程である。衝撃音レベル低減量算出工程は、緩衝効果補正量算出工程で算出した緩衝効果補正量と、振動減衰量算出工程で算出した振動減衰量と、防振効果量算出工程で算出した防振効果量と、に応じて衝撃音レベル低減量を算出する工程である。
【0008】
また、上記課題を解決するために、本発明の一態様は、基礎面と、基礎面の上方に配置された床パネルと、基礎面と床パネルとの間に配置されて床パネルを支持する床板支持部材と、を備える二重床に対する衝撃音レベル低減量の予測方法である。また、二重床に対する衝撃音レベル低減量の予測方法は、駆動点インピーダンスレベル変化量算出工程と、振動減衰量算出工程と、防振効果量算出工程と、衝撃音レベル低減量算出工程を備える。駆動点インピーダンスレベル変化量算出工程は、基礎面の加振点位置における駆動点インピーダンスと、基礎面のうち床パネルを施工した範囲内において駆動点インピーダンスレベルの上昇量が最小となる位置における駆動点インピーダンスと、の変化量である駆動点インピーダンスレベル変化量を算出する工程である。振動減衰量算出工程は、床パネルに加わる衝撃力によって発生した振動を床パネルの内部で減衰させた量である振動減衰量を算出する工程である。防振効果量算出工程は、床パネルに加わる衝撃力によって発生した振動が床パネルから基礎面へ伝達する際の防振効果量を算出する工程である。衝撃音レベル低減量算出工程は、駆動点インピーダンスレベル変化量算出工程で算出した駆動点インピーダンスレベル変化量と、振動減衰量算出工程で算出した振動減衰量と、防振効果量算出工程で算出した防振効果量と、に応じて衝撃音レベル低減量を算出する工程である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、複雑な手順を必要とせずに衝撃音レベル低減量を予測することが可能な、二重床に対する衝撃音レベル低減量の予測方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】二重床に対する軽量床衝撃音の衝撃音レベル低減量の予測方法が備える工程を示すフローチャートである。
【
図4】緩衝効果補正量算出工程を示すフローチャートである。
【
図5】振動減衰量算出工程を示すフローチャートである。
【
図6】防振効果量算出工程を示すフローチャートである。
【
図7】二重床に対する重量床衝撃音の衝撃音レベル低減量の予測方法が備える工程を示すフローチャートである。
【
図8】インピーダンスレベル変化量算出工程を示すフローチャートである。
【
図9】軽量床衝撃音の衝撃音レベル低減量の予測値と実測値との相関関係を示すグラフである。
【
図10】重量床衝撃音の衝撃音レベル低減量の予測値と実測値との相関関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を参照して、本発明の実施形態を以下に説明する。以下の説明で参照する図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係や、各層の厚さの比率等は、現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚さや寸法は、以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0012】
さらに、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための床板支持部材を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質や、それらの形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。また、以下の説明における「左右」や「上下」の方向は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。よって、例えば、紙面を90度回転すれば「左右」と「上下」とは交換して読まれ、紙面を180度回転すれば「左」が「右」になり、「右」が「左」になることは勿論である。
【0013】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1及び
図2を用いて、二重床1の構成について説明する。
図1中に表すように、二重床1は、基礎面Bの上に配置することで、床面と基礎面Bとの間に空間(床下空間US)を形成する。なお、基礎面Bは、建築物の躯体の一部であり、壁Wや天井(図示せず)と共に、室内空間RSを形成する。すなわち、第1実施形態で説明する二重床1は、乾式二重床である。
また、二重床1は、根太材10と、支持脚20と、床板高さ調節機構30と、床パネルFPを備えている。
【0014】
根太材10は、例えば、角柱形状の木材を用いて形成されており、床板高さ調節機構30よりも壁Wに近い位置へ配置されるとともに、基礎面Bの上方へ、予め設定した高さで支持されている。なお、根太材10を基礎面Bの上方で支持する高さは、支持脚20により設定する。
支持脚20は、基礎面Bと根太材10との間に配置されている。
また、支持脚20は、床端側台座22と、根太材側ねじ軸24を備えている。
【0015】
床端側台座22は、ゴム等の弾性材料を用いて形成されており、基礎面Bの上に設置されている。また、床端側台座22には、上下方向に貫通する貫通孔が形成されている。
なお、図示を省略するが、床端側台座22には、ばね定数及び振動の減衰比が異なる二種類がある。以降の説明では、二種類の床端側台座のうち、ばね定数及び振動の減衰比が小さい台座を、「薄型床端側台座」と記載し、ばね定数及び振動の減衰比が大きい台座を、「厚型床端側台座」と記載する場合がある。
【0016】
薄型床端側台座は、例えば、二重床1を形成する部屋の壁Wに近い部分において、床下空間USに配置される支持脚20に備えられる。
厚型床端側台座は、例えば、二重床1を形成した部屋の開口部に近い部分において、床下空間USに配置される支持脚20に備えられる。
【0017】
根太材側ねじ軸24は、螺旋状のねじ溝が外径面に形成されているとともに、軸方向に貫通する貫通孔が形成されている。根太材側ねじ軸24の上端側は、根太材10の下面へ回転可能に挿入されており、根太材側ねじ軸24の下端側は、床端側台座22へ回転可能に挿入されている。これにより、支持脚20は、根太材側ねじ軸24を回転させることで、根太材10と床端側台座22との距離を変化させて、根太材10を基礎面Bの上方で支持する高さを設定することが可能な構成となっている。
なお、根太材10のうち、根太材側ねじ軸24の上端側を挿入する部分には、根太材10の下面と上面を貫通する貫通孔(図示せず)が形成されている。
【0018】
床板高さ調節機構30は、根太材10よりも壁Wから遠い位置へ配置されている。なお、特に図示しないが、床板高さ調節機構30は、例えば、平面視で正方形のグリッド状となるように、等間隔に配置されている。
また、床板高さ調節機構30は、支持板32と、中間側台座34と、中間側ねじ軸36を備えている。
支持板32は、例えば、板状の木材を用いて形成されており、厚さ方向(板厚方向)を上下に向けて配置されている。また、支持板32は、例えば、支持板32の厚さ方向から見て四辺形(正方形)に形成されている。
【0019】
中間側台座34は、床端側台座22と同様、ゴム等の弾性材料を用いて形成されており、基礎面Bの上に設置されている。また、中間側台座34には、上下方向に貫通する貫通孔が形成されている。
なお、図示を省略するが、中間側台座34には、床端側台座22と同様、ばね定数及び振動の減衰比が異なる二種類がある。以降の説明では、二種類の中間側台座のうち、ばね定数及び振動の減衰比が小さい台座を、「薄型中間側台座」と記載し、ばね定数及び振動の減衰比が大きい台座を、「厚型中間側台座」と記載する場合がある。
【0020】
中間側ねじ軸36は、根太材側ねじ軸24と同様、螺旋状のねじ溝が外径面に形成されているとともに、軸方向に貫通する貫通孔が形成されている。中間側ねじ軸36の上端側は、支持板32へ回転可能に挿入されており、中間側ねじ軸36の下端側は、中間側台座34へ回転可能に挿入されている。これにより、支持脚20は、中間側ねじ軸36を回転させることで、支持板32と中間側台座34との距離を変化させて、支持板32の上に載せる床パネルFPの、基礎面Bからの高さを設定することが可能な構成となっている。
なお、支持板32のうち、中間側ねじ軸36の上端側を挿入する部分には、支持板32を厚さ方向に貫通する貫通孔(図示せず)が形成されている。
【0021】
以上により、根太材10と、支持脚20と、床板高さ調節機構30は、基礎面Bと床パネルFPとの間に配置される床板支持部材を形成している。
また、床板支持部材は、二重床1を形成した部屋の壁側に配置した床端側支持部材と、床端側支持部材よりも部屋の内側に配置した一般側支持部材を含む。床端側支持部材は、根太材10と支持脚20によって形成される。一般側支持部材は、床板高さ調節機構30によって形成される。
【0022】
床パネルFPは、パーティクルボード等を用いて形成されており、根太材10及び支持板32の上に配置されている。また、床パネルFPと壁Wは、接触していない。
床パネルFPを根太材10及び支持板32に固定する際には、例えば、接着剤、釘、ビス、ステープル等を用いることが可能である。
なお、説明のために図示を省略するが、床パネルFPの上には、カーペット等を配置する。
【0023】
(二重床に対する衝撃音レベル低減量の予測方法)
図1及び
図2を参照しつつ、
図3から
図6を用いて、二重床に対する衝撃音レベル低減量の予測方法(以降の説明では、「衝撃音レベル低減量予測方法」と記載する場合がある)について説明する。
衝撃音レベル低減量予測方法は、二重床1に対して、衝撃音レベル低減量を予測する方法である。なお、第1実施形態で説明する衝撃音レベル低減量予測方法は、壁Wを先行して施工した乾式二重床を対象とし、根太材10は壁Wに固定せず、緩衝材等を用いて壁Wと根太材10とのクリアランスを確保し、床下空間USにグラスウールは設置せずに実施する。
【0024】
なお、以降の説明では、乾式二重床の部位を、「一般部」と「床端部」に区別して記載する場合がある。これは、それぞれの部位において、伝達特性の違いを含めた衝撃音レベル低減量を予測するためである。一般部と床端部との区別は、支持脚20と、支持脚20と隣り合う床板高さ調節機構30とが等距離となる線を境界線として設定し、基礎面Bの中央側を「一般部」と定義し、壁Wを「床端部」と定義する。
また、第1実施形態では、衝撃音レベル低減量予測方法によって予測する衝撃音レベル低減量を、軽量床衝撃音の衝撃音レベル低減量とした場合について説明する。
軽量床衝撃音は、例えば、スプーン等の軽量な物体が床パネルFPに落下したときに発生する音であり、足音等の重量床衝撃音とは異なる音である。
【0025】
また、乾式二重床で発生する軽量床衝撃音は、衝撃源(タッピングマシン)の鋼製ハンマーを、床パネルFPの4[cm]上方から自由落下させて床パネルFPと衝突させることで発生する。乾式二重床による緩衝効果を受けた衝撃力は、振動となって床パネルFPの内で減衰しながら平面的に床板全体へ広がる。そして、床板全体に広がった振動は、「一般部の床板高さ調節機構30」と、「床端部の根太材10及び支持脚20」等を経由して基礎面Bへ伝達する。さらに、基礎面Bへ伝達された振動等が基礎面Bの内部で合成され、床衝撃音として下階に音響放射される。
乾式二重床を施工した後の軽量床衝撃音レベルと、基礎面Bが素面時の軽量床衝撃音レベルとの差分で表される軽量床衝撃音レベル低減量は、後述する緩衝効果補正量、振動減衰量、防振効果量で構成される。
【0026】
また、衝撃音レベル低減量予測方法は、
図3に示すように、緩衝効果補正量算出工程(ステップS10)と、振動減衰量算出工程(ステップS20)と、防振効果量算出工程(ステップS30)と、軽量床衝撃音レベル低減量算出工程(ステップS40)を備える。
緩衝効果補正量算出工程は、緩衝効果補正量ΔL
Fを算出する工程である。緩衝効果補正量ΔL
Fは、基礎面Bに直接加わる衝撃力を、衝撃力が床パネルFP及び床板支持部材(根太材10、支持脚20、床板高さ調節機構30)によって緩衝される緩衝効果により補正した量である。
【0027】
振動減衰量算出工程は、振動減衰量ΔLdを算出する工程である。振動減衰量ΔLdは、床パネルFPに加わる衝撃力によって発生した振動を、床パネルFPの内部で減衰させた量である。
防振効果量算出工程は、防振効果量ΔLsumを算出する工程である。防振効果量ΔLsumは、床パネルFPに加わる衝撃力によって発生した振動が、床パネルFPから基礎面Bへ伝達する際の防振効果量である。
【0028】
軽量床衝撃音レベル低減量算出工程は、緩衝効果補正量ΔLFと、振動減衰量ΔLdと、防振効果量ΔLsumに応じて、軽量床衝撃音の衝撃音レベル低減量ΔLLfinを算出する工程である。
なお、緩衝効果補正量ΔLF、振動減衰量ΔLd、防振効果量ΔLsum、軽量床衝撃音の衝撃音レベル低減量ΔLLfinの単位は、全てデシベル[dB]である。
【0029】
(緩衝効果補正量算出工程)
緩衝効果補正量算出工程では、まず、
図4においてステップS11で示すように、各種の定数を算定する。
ステップS11で算定する各種の定数には、床パネルFPの等価ヤング係数E
eff[N/m
2]と、床パネルFPの等価密度ρ
eff[kg/m
3]を含む。これに加え、床パネルFPの表面に発生する局部変形のばね定数k
1[N/m]と、曲げ変形のばね定数k
2[N/m]と、断面2次モーメントI[m
4]を含む。
等価ヤング係数E
effと、等価密度ρ
effと、断面2次モーメントIは、床パネルFPに固有の定数である。
床パネルFPの表面に発生する局部変形のばね定数k
1は、例えば、以下の式(1)と式(2)を用いて算定する。
【0030】
【0031】
【0032】
式(1)における「fn」は、床パネルFPの表面に発生する局部変形の緩衝効果による衝撃周波数[Hz]であり、「E」は、床パネルFPのヤング係数[N/m2]である。
式(2)における「m」は、鋼製ハンマーの質量(0.5[kg])である。
曲げ変形のばね定数k2は、簡易的に求めるために、例えば、複数の支持脚20のスパンに沿った各方向について単純な支持梁の中央点における荷重とたわみの関係について整理して得られる式(3)を用いる。さらに、各方向のばねを、式(4)を用いて並列合成して算定する。
【0033】
【0034】
【0035】
式(3)における「kc」は、単純支持梁の中央点における荷重と変位を質点モデルに置き換えたばね定数[N/m]であり、「L」は、単純支持梁のスパン[m]である。また、式(3)における「P」は、荷重[N]であり、「δ」は、変位[m]である。
式(4)における「kc,X」は、X軸方向をスパンとしたばね定数[N/m]であり、「kc,Y」は、Y軸方向をスパンとしたばね定数[N/m]である。また、式(4)における「IX」は、X軸回りの断面2次モーメント[m4]であり、「IY」は、Y軸回りの断面2次モーメント[m4]である。さらに、式(4)における「LX」は、X軸方向の支持脚スパン[m]であり、「LY」は、Y軸方向の支持脚スパン[m]である。
【0036】
ステップS11で各種の定数を算定した後、ステップS12において、基礎面Bに加わる衝撃力の瞬時値FS(t)[N]と、床パネルFPに加わる衝撃力の瞬時値Fd(t)[N]を算出する。
ステップS12で瞬時値FS(t)と瞬時値Fd(t)を算出した後、ステップS13において、基礎面Bに加わる衝撃力のフーリエスペクトルFf,s(f)[N]と、床パネルFPに加わる衝撃力のフーリエスペクトルFf,d(f)[N]を算出する。
フーリエスペクトルFf,s(f)とフーリエスペクトルf,d(f)の算出は、例えば、半波分の衝撃力波形(質点モデルのばねから伝わる力)を求め、さらに、求めた衝撃力波形をフーリエ変換して算出する。半波分の衝撃力波形は、鋼製ハンマーを床パネルFPの4[cm]上方から自由落下させた時の初速度v0を初期条件(式(5))とし、時間の間隔を1/51200[sec]として求める。
【0037】
【0038】
式(5)における「g」は重力加速度[m/s2]であり、「H」は鋼製ハンマーを落下させる高さ(0.04[m])である。
半波分の衝撃力波形を求める際には、例えば、床パネルFPの緩衝効果を含めた衝撃源の1質点モデルの運動方程式(式(6)及び式(7))を表す差分方程式(式(8)を用いる。
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
式(6)から(8)における「x」は質点の変位[m]であり、「k」は、床パネルFPの表面に発生する局部変形と曲げ変形による緩衝効果を表す質点モデルの、ばね定数[N/m]である。また、式(8)における「n」は時間ステップであり、「Δt」は計算時間の間隔[sec]である。
ステップS13でフーリエスペクトルFf,s(f)とフーリエスペクトルFf,d(f)を算出した後、ステップS14において、基礎面Bに加わる衝撃力暴露レベルFFE,s[dB]と、床パネルFPに加わる衝撃力暴露レベルFFE,d[dB]を算出する。
衝撃力暴露レベルFFE,sと衝撃力暴露レベルFFE,dの算出は、例えば、式(9)を用いて行う。
【0043】
【0044】
式(9)における「t」は時間[sec]であり、「F0」は基準の力[1N]である。また、式(9)における「t1」及び「t2」は衝撃源による衝撃時間を含む時間[sec]であり、「T0」は基準時間[1sec]である。さらに、式(9)における「f1」はバンドパスフィルターの下限の切断周波数[Hz]であり、「f2」はバンドパスフィルターの上限の切断周波数[Hz]である。
ステップS14で衝撃力暴露レベルFFE,sと衝撃力暴露レベルFFE,dを算出した後、ステップS15において、緩衝効果補正量ΔLFを算出する。ステップS15における緩衝効果補正量ΔLFの算出は、基礎面Bに加わる衝撃力暴露レベルFFE,sから、床パネルFPに加わる衝撃力暴露レベルFFE,dを減算して行う(ΔLF=FFE,s-FFE,d)。
【0045】
上述したように、緩衝効果補正量を算出するためには,乾式二重床構造に加わる衝撃力暴露レベルを算出する必要がある。このため、乾式二重床各部の伝達系を非連成とし、衝撃力暴露レベルFFE,dは、床パネルFPの表面に発生する局部変形と曲げ変形による緩衝効果を受けるものとする。そして、防振ゴム(床端側台座22、中間側台座34)の無い状態での測定値、又は、床パネルFPの表面に発生する局部変形と曲げ変形のばねが直列に合成された質点モデルから、衝撃力暴露レベルを算出する。なお,第1実施形態では、質点モデルから算出した値を用いた。また、第1実施形態では、衝撃力に対する緩衝効果に防振ゴムの作用を含めないと定義し、見かけの衝撃周波数として区別する。
【0046】
以上により、緩衝効果補正量算出工程では、床パネルFPの等価ヤング係数Eeffと、床パネルFPの等価密度ρeffと、床パネルFPの表面に発生する局部変形のばね定数k1を予め形成した数式に入力する。これに加え、床パネルFPの曲げ変形のばね定数k2と、床パネルFPの断面2次モーメントIを予め形成した数式に入力する。これにより、緩衝効果補正量ΔLFを算出する。
【0047】
(振動減衰量算出工程)
乾式二重床の床パネルFPの内部内を振動が伝搬する際には、加振点位置の振幅が減衰しながら伝搬していくことによる減衰量を、床面積に応じて算定する必要がある。このため、振動減衰量算出工程では、点加振した時の振動の振幅分布を用い、振動減衰量を加振点位置の振幅がそのまま変わらずに伝搬した場合とのエネルギー比の常用対数を10倍して算出する。
なお、第1実施形態においては,床パネルFPの減衰比h0を、0.1として算出した。これは、フローリングとパーティクルボードの構成においては、125[Hz]帯域の付近でピークとなる周波数の測定結果が、0.9~0.12程度であったことに起因する。
【0048】
振動減衰量算出工程では、まず、
図5においてステップS21で示すように、各種のパラメータを算出する。
ステップS21で算出する各種のパラメータには、床パネルFPの板定数Pと、床パネルFPの波数k
Bと、床パネルFPに対する周辺部の単位長さ当たりのエネルギー吸収率αを含む。これに加え、床パネルFPの曲げ波伝搬速度c
b[m/s]と、床パネルFPを面積が等しい円形に置き換えたときの半径r
eff[m]を含む。
板定数Pの算出は、例えば、式(10)を用いて行う。
【0049】
【0050】
式(10)における「L」は、床パネルFPの周長[m]である。
波数kBの算出は、例えば、式(11)を用いて行う。
【0051】
【0052】
エネルギー吸収率αの算出は、例えば、式(12)を用いて行う。
【0053】
【0054】
式(12)における「S」は、床パネルFPの面積[m2]であり、「f」は周波数[Hz]である。
曲げ波伝搬速度cbの算出は、例えば、式(13)を用いて行う。
【0055】
【0056】
式(13)における「cl」は、縦波の伝播速度[m/s]であり、床パネルFPの等価ヤング係数Eeffを床パネルFPの等価密度ρeffで除算した値の平方根である。また、式(13)における「h」は、床パネルFPの厚さ[m]である。
半径reffの算出は、例えば、式(14)を用いて行う。
【0057】
【0058】
ステップS21で各種のパラメータを算出した後、ステップS22において、加振点の振幅が減衰せずにそのまま伝搬した場合の振動比分布a(0)と、加振点の振幅が減衰しながら伝搬した場合の振動比分布a(r)を算出する。
振動比分布a(0)の算出は、例えば、式(15)を用いて行う。
【0059】
【0060】
式(15)における「J0」はベッセル関数であり、「N0」はノイマン関数であり、「K0」は変形ベッセル関数である。
ステップS22で振動比分布a(0)と振動比分布a(r)を算出した後、ステップS23において、加振点の振幅が減衰せずにそのまま伝搬した場合の振動比エネルギーE0と、加振点の振幅が減衰しながら伝搬した場合の振動比エネルギーEdを算出する。なお、振動比エネルギーE0は、振動比分布a(0)の面積分に応じて算出する。また、振動比エネルギーEdは、振動比分布a(r)の面積分に応じて算出する。
ステップS23で振動比エネルギーE0と振動比エネルギーEdを算出した後、ステップS24において、振動減衰量ΔLdを算出する。
振動減衰量ΔLdの算出は、例えば、式(16)を用い、振動比エネルギーE0と振動比エネルギーEdとの比の常用対数を10倍して行う。
【0061】
【0062】
以上により、振動減衰量算出工程では、床パネルFPの板定数Pと、床パネルFPの波数kBと、床パネルFPに対する周辺部の単位長さ当たりのエネルギー吸収率αを予め形成した数式に入力する。これに加え、床パネルFPの曲げ波伝搬速度cbと、床パネルFPを面積が等しい円形に置き換えたときの半径reffを予め形成した数式に入力する。これにより、振動減衰量ΔLdを算出する。
【0063】
(防振効果量算出工程)
乾式二重床から基礎面Bへの振動伝達経路には、以下の三つの経路(A)~(C)がある。
(A).一部の支持脚
(B).床端部の支持脚ゴム付際根太
(C).出入り口部の支持脚ゴム付際根太又は補強に用いる支持脚
【0064】
第1実施形態では、乾式二重床構造の緩衝効果と、振動を減衰させて床板全体に広がった振動が各伝達経路から基礎面Bへ伝わる際の寄与を、全てのゴム付束の本数に対する、各振動伝達経路におけるゴム付束の本数の割合で表されるものとする。これに加え、振動伝達率の二乗値に乗算した値を全ての振動伝達経路について合成したものを床端部まで含めた、乾式二重床の全体に対する総合防振効果量(防振効果量ΔLsum)として算出する。
【0065】
なお、「一つのゴム付束」は、一組の床端側台座22及び根太材側ねじ軸24と、一組の中間側台座34及び中間側ねじ軸36を示す。
また、第1実施形態では、基礎的な検討を行うために、乾式二重床から基礎面Bへの振動伝達経路として、上述した経路(A)及び(B)を想定する。
防振効果量算出工程では、まず、
図6においてステップS31で示すように、各種のパラメータを算定する。
ステップS31で算定する各種のパラメータには、各振動伝達経路の面密度Miと、ばね定数Kiと、減衰係数Ciと、無限大板の駆動点インピーダンスZfと、床パネルFPの曲げ剛性Bと、各振動伝達経路のゴム付束の本数Niを含む。なお、各振動伝達経路のゴム付束の本数Niは、複数の振動伝達経路の数に対応する。
【0066】
面密度Miは、各振動伝達経路のうち、振動伝達経路番号iの質点モデルの質量[kg/m2](床板の面密度)である。なお、振動伝達経路番号iは、1から始まる整数である(i=1,2,・・・,n)。
ばね定数Kiは、各振動伝達経路のうち、振動伝達経路番号iの質点モデルのばね定数[N/m](単位面積あたりのばね定数)である。
減衰係数Ciは、具体的に、各振動伝達経路のうち、振動伝達経路番号iの質点モデルの減衰係数[kg/s]である。
減衰係数Ciの算定は、例えば、式(17)を用いて行う。
【0067】
【0068】
式(17)における「hi」は、各振動伝達経路のうち、振動伝達経路番号iの質点モデルの減衰比(全ての伝達経路で、0.1)である。
駆動点インピーダンスZfは、具体的に、床パネルFPの駆動点インピーダンス[kg/s]である。
駆動点インピーダンスZfの算定は、例えば、式(18)を用いて行う。
【0069】
【0070】
曲げ剛性Bの算定は、例えば、式(19)を用いて行う。
【0071】
【0072】
本数Niは、二重床1が備える支持脚20と、床板高さ調節機構30の総数である。
ステップS31で各種のパラメータを算定した後、ステップS32において、各振動伝達経路のうち、一つの質点系における防振効果量である第1防振効果量ΔLi[dB]を算出する。
第1防振効果量ΔLiの算出は、例えば、式(20)と式(21)を用いて行う。
【0073】
【0074】
【0075】
式(20)及び式(21)における「τi」は、各振動伝達経路のうち、振動伝達経路番号iの1質点系の振動伝達率である。
ステップS32で第1防振効果量ΔLiを算出した後、ステップS33において、各振動伝達経路の曲げ振動を考慮した、一つの質点系における防振効果量である第2防振効果量ΔLb,i[dB]を算出する。
第2防振効果量ΔLb,iの算出は、例えば、式(22)と式(23)を用いて行う。
【0076】
【0077】
【0078】
式(22)及び式(23)における「τb,i」は、各振動伝達経路のうち、振動伝達経路番号iの曲げ振動を考慮した1質点防振系の振動伝達率である。
ステップS33で第2防振効果量ΔLb,iを算出した後、ステップS34において、第1防振効果量ΔLiと第2防振効果量ΔLb,iとを合成した防振効果量の合成値ΔLB,i[dB]を算出する。
合成値ΔLB,iの算出は、例えば、式(24)を用いて行う。
【0079】
【0080】
ステップS34で防振効果量の合成値ΔLB,iを算出した後、ステップS35において、総合防振効果量ΔLsum(防振効果量ΔLsum)[dB]を算出する。
総合防振効果量ΔLsum(防振効果量ΔLsum)の算出は、例えば、式(25)を用いて行う。
【0081】
【0082】
上述したように、振動伝達経路番号iは、1から始まる整数である(i=1,2,・・・,n)。
このため、ステップS32で算出した第1防振効果量ΔLiは、床端側支持部材(根太材10と支持脚20)による防振効果量と、一般側支持部材(床板高さ調節機構30)による防振効果量に応じた値となる。同様に、ステップS33で算出した第2防振効果量ΔLb,iは、床端側支持部材(根太材10と支持脚20)による防振効果量と、一般側支持部材(床板高さ調節機構30)による防振効果量に応じた値となる。
【0083】
したがって、防振効果量算出工程では、床端側支持部材による防振効果量と、一般側支持部材による防振効果量とを合成することで、防振効果量ΔLsumを算出することとなる。
また、防振効果量算出工程では、一般側支持部材の数と床端側支持部材の数との割合に応じて、防振効果量ΔLsumを算出することとなる。
【0084】
さらに、ステップS32で算出した第1防振効果量ΔLiは、床端側支持部材による防振効果量に応じた値となり、ステップS33で算出した第2防振効果量ΔLb,iは、床端側支持部材に応じた値となる。すなわち、第1防振効果量ΔLiと第2防振効果量ΔLb,iは、薄型床端側台座と厚型床端側台座とのばね定数及び減衰比の違いに応じた値となる。
このため、防振効果量算出工程では、薄型床端側台座と厚型床端側台座とのばね定数及び減衰比の違いに応じて、防振効果量ΔLsumを算出することとなる。
【0085】
以上により、防振効果量算出工程では、床パネルFPから床板支持部材を介して基礎面Bまで振動が伝達する複数の振動伝達経路の面密度Miと、振動伝達経路のばね定数Kiを予め形成した数式に入力する。これに加え、振動伝達経路の減衰係数Ciと、床パネルFPの駆動点インピーダンスZfと、床パネルFPの曲げ剛性Bと、複数の振動伝達経路の数Niを予め形成した数式に入力する。これにより、防振効果量ΔLsumを算出する。
【0086】
(軽量床衝撃音レベル低減量算出工程)
軽量床衝撃音レベル低減量算出工程では、緩衝効果補正量ΔLFと、振動減衰量ΔLdと、防振効果量ΔLsumとを加算して、軽量床衝撃音の衝撃音レベル低減量ΔLLfinを算出する(ΔLLfin=ΔLF+ΔLd+ΔLsum)。
【0087】
(第1実施形態の作用)
以上説明したように、第1実施形態では、上述した各種の条件を考慮して、軽量床衝撃音の衝撃音レベル低減量を算出することが可能である。このため、例えば、顧客の要望する様々な仕様に対して、軽量床衝撃音の衝撃音レベル低減量を算出する予測することが可能となる。
また、通常では、カタログ等に表記している各種の仕様に対して、一つの仕様の試験データしか存在しない場合が多く、様々な候補の遮音性能を調べるためには、試験を行う必要がある。これに対し、第1実施形態では、実用的な予測方法により、軽量床衝撃音の衝撃音レベル低減量を算出することが可能であるため、試験に必要な労力、コスト、時間を大幅に削減することが可能となる。
【0088】
さらに、遮音性能の向上や荷重対策として、二重床1に捨て貼り材を追加した仕様の場合であっても、複層板を単板に換算して演算を行うことで、軽量床衝撃音の衝撃音レベル低減量を算出することが可能となる。
なお、上述した第1実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した第1実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0089】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態の衝撃音レベル低減量予測方法であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)緩衝効果補正量ΔLFを算出する緩衝効果補正量算出工程と、振動減衰量ΔLdを算出する振動減衰量算出工程と、防振効果量ΔLsumを算出する防振効果量算出工程を備える。これに加え、緩衝効果補正量ΔLFと、振動減衰量ΔLdと、防振効果量ΔLsumに応じて、衝撃音レベル低減量を算出する衝撃音レベル低減量算出工程を備える。
このため、例えば、パーソナルコンピュータに予めインストールした表計算ソフト等を用い、各種の数値を入力する手順のみで、衝撃音レベル低減量を予測することが可能となる。
その結果、複雑な手順を必要とせずに衝撃音レベル低減量を予測することが可能な、二重床に対する衝撃音レベル低減量の予測方法を提供することが可能となる。
【0090】
(2)衝撃音レベル低減量が、軽量床衝撃音の衝撃音レベル低減量ΔLLfinである。
その結果、複雑な手順を必要とせずに、例えば、スプーン等の軽量な物体が床パネルFPに落下したときに発生する音等の、軽量床衝撃音のレベル低減量ΔLLfinを予測することが可能となる。
【0091】
(3)二重床1が、乾式二重床である。
その結果、乾式二重床に対して、複雑な手順を必要とせずに、軽量床衝撃音の衝撃音レベル低減量を予測することが可能となる。
【0092】
(4)緩衝効果補正量算出工程では、床パネルFPの等価ヤング係数Eeffと、床パネルFPの等価密度ρeffと、床パネルFPの表面に発生する局部変形のばね定数k1を予め形成した数式に入力する。これに加え、床パネルFPの曲げ変形のばね定数k2と、床パネルFPの断面2次モーメントIを予め形成した数式に入力する。これにより、緩衝効果補正量ΔLFを算出する。
その結果、緩衝効果補正量ΔLFを、物理的な手順や、複雑な手順を必要とせずに算出することが可能となる。
【0093】
(5)振動減衰量算出工程では、床パネルFPの板定数Pと、床パネルFPの波数kBと、床パネルFPに対する周辺部の単位長さ当たりのエネルギー吸収率αを予め形成した数式に入力する。これに加え、床パネルFPの曲げ波伝搬速度cbと、床パネルFPを面積が等しい円形に置き換えたときの半径reffを予め形成した数式に入力する。これにより、振動減衰量ΔLdを算出する。
その結果、振動減衰量ΔLdを、物理的な手順や、複雑な手順を必要とせずに算出することが可能となる。
【0094】
(6)防振効果量算出工程では、床パネルFPから床板支持部材を介して基礎面Bまで振動が伝達する複数の振動伝達経路の面密度Miと、振動伝達経路のばね定数Kiを予め形成した数式に入力する。これに加え、振動伝達経路の減衰係数Ciと、床パネルFPの駆動点インピーダンスZfと、床パネルFPの曲げ剛性Bと、複数の振動伝達経路の数Niを予め形成した数式に入力する。これにより、防振効果量ΔLsumを算出する。
その結果、防振効果量ΔLsumを、物理的な手順や、複雑な手順を必要とせずに算出することが可能となる。
【0095】
(7)防振効果量算出工程では、床端側支持部材による防振効果量と、一般側支持部材による防振効果量とを合成することで、防振効果量ΔLsumを算出する。
その結果、防振効果量ΔLsumを、複雑な手順を必要とせずに算出することが可能となる。
【0096】
(8)防振効果量算出工程では、一般側支持部材の数と床端側支持部材の数との割合に応じて、防振効果量ΔLsumを算出する。
その結果、施工を依頼する顧客等が要望する様々な仕様に応じて、軽量床衝撃音の衝撃音レベル低減量を算出することが可能となる。これにより、例えば、仕様変更による遮音性能の変化を、顧客に提示することが可能となる。
【0097】
(9)防振効果量算出工程では、薄型床端側台座と厚型床端側台座とのばね定数及び減衰比の違いに応じて、防振効果量ΔLsumを算出する。
その結果、施工を依頼する顧客等が要望する様々な仕様に応じて、軽量床衝撃音の衝撃音レベル低減量を算出することが可能となる。これにより、例えば、仕様変更による遮音性能の変化を、顧客に提示することが可能となる。
【0098】
(第1実施形態の変形例)
(1)第1実施形態では、二重床1を、乾式二重床としたが、これに限定するものではなく、二重床1を、乾式二重床以外の構成としてもよい。
【0099】
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、上述した第1実施形態と同様の構成については、説明を省略する場合がある。
二重床1の構成は、上述した第1実施形態と同様である(
図1及び
図2を参照)
【0100】
(衝撃音レベル低減量予測方法)
図1から
図3と、
図5及び
図6を参照しつつ、
図7及び
図8を用いて、衝撃音レベル低減量予測方法について説明する。
衝撃音レベル低減量予測方法は、二重床1に対して、衝撃音レベル低減量を予測する方法である。なお、第2実施形態で説明する衝撃音レベル低減量予測方法は、壁Wを先行して施工した乾式二重床を対象とし、根太材10は壁Wに固定せず、緩衝材等を用いて壁Wと根太材10とのクリアランスを確保し、床下空間USにグラスウールは設置せずに実施する。
【0101】
また、第2実施形態では、衝撃音レベル低減量予測方法によって予測する衝撃音レベル低減量を、重量床衝撃音の衝撃音レベル低減量とした場合について説明する。
なお、第2実施形態では、一例として、衝撃音レベル低減量予測方法を実施する際に、試験体を施工した二種類の施工場所(施工場所A、施工場所B)を用いる場合について説明する。
施工場所Aは、RC壁式構造であり、基礎面Bを、厚さが200[mm]の均質単板スラブを用いて形成する。また、施工場所Aでは、四辺形の床パネルFPに対して、五箇所の加振点を設定する。施工場所Aにおける五箇所の加振点は、平面視における床パネルFPの中心に設定した一箇所の加振点と、床パネルFPの中心からの距離が等しい位置に配置した四箇所の加振点である。
【0102】
施工場所Bは、RCラーメン構造であり、基礎面Bを、厚さが250[mm]の矩形中空合成スラブを用いて形成する。また、施工場所Bでは、四辺形の床パネルFPに対して、五箇所の加振点を設定する。施工場所Bにおける五箇所の加振点は、平面視における床パネルFPの中心に設定した一箇所の加振点と、床パネルFPの中心からの距離が等しく、且つ互いの間隔が等しくなる位置に配置した四箇所の加振点である。
また、乾式二重床で発生する重量床衝撃音は、衝撃源を形成するゴム製のボール(ゴムボール)を、床パネルFPの上方から自由落下させて床パネルFPに衝突させることで発生する。ゴムボールによって乾式二重床に加わった衝撃力は、床パネルFPの内で減衰しながら床板全体へ広がる。そして、床板全体に広がった振動は、「一般部の床板高さ調節機構30」と、「床端部の根太材10及び支持脚20」の防振効果を受けて基礎面Bへ伝達する。
【0103】
なお、ゴムボールを用いて重量床衝撃音を発生させる方法としては、JIS規格の「A 1418-2:2019」を適用した「建築物の床衝撃音遮断性能の測定方法」を用いる。
乾式二重床を施工した後の重量床衝撃音レベルと、基礎面Bが素面時の重量床衝撃音レベルとの差分で表される重量床衝撃音レベル低減量は、振動減衰量、防振効果量で構成される。
また、衝撃音レベル低減量予測方法は、
図7に示すように、駆動点インピーダンスレベル変化量算出工程(ステップS50)と、振動減衰量算出工程(ステップS60)を備える。これに加え、防振効果量算出工程(ステップS70)と、重量床衝撃音レベル低減量算出工程(ステップS80)を備える。
【0104】
駆動点インピーダンスレベル変化量算出工程は、駆動点インピーダンスレベル変化量ΔLmzを算出する工程である。駆動点インピーダンスレベル変化量ΔLMZは、基礎面Bの加振点位置における駆動点インピーダンスと、基礎面Bのうち床パネルFPを施工した範囲内において駆動点インピーダンスレベルの上昇量が最小となる位置における駆動点インピーダンスとの変化量である。
振動減衰量算出工程と防振効果量算出工程は、上述した第1実施形態と同様である。すなわち、ステップS60の処理は、ステップS20の処理と同様であり、ステップS70の処理は、ステップS30の処理と同様である。
【0105】
重量床衝撃音レベル低減量算出工程は、駆動点インピーダンスレベル変化量ΔLmzと、振動減衰量ΔLdと、防振効果量ΔLsumに応じて、重量床衝撃音の衝撃音レベル低減量ΔLHfinを算出する工程である。
なお、駆動点インピーダンスレベル変化量ΔLmz、振動減衰量ΔLd、防振効果量ΔLsum、重量床衝撃音の衝撃音レベル低減量ΔLHfinの単位は、全てデシベル[dB]である。
【0106】
(駆動点インピーダンスレベル変化量算出工程)
駆動点インピーダンスレベル変化量算出工程では、まず、
図8においてステップS51で示すように、各種の定数を算定する。
ステップS51で算定する各種の定数には、基礎面Bの等価ヤング係数E
eff[N/m
2]と、基礎面Bの等価密度ρ
eff[kg/m
3]を含む。これに加え、基礎面Bの等価厚さh
eff[mm]と、基礎面Bの断面2次モーメントI[m
4]を含む。
等価ヤング係数E
effと、等価密度ρ
effと、等価厚さh
effと、断面2次モーメントIは、床パネルFPに固有の定数である。
【0107】
ステップS51で各種の定数を算定した後、ステップS52において、基礎面Bの端部と加振点との距離x[m]と、基礎面Bの曲げ波波長λb[m]を算出する。
ステップS52で距離x曲げ波波長λbを算出した後、ステップS53において、加振点における駆動点インピーダンスレベルの上昇量ΔLZ[dB]を算出する。
加振点における駆動点インピーダンスレベルの上昇量ΔLZの算出は、例えば、以下の手順で行う。
施工場所Aに設定した五箇所の加振点における駆動点インピーダンスレベルの上昇量ΔLZの算出は、例えば、式(26)を用いて行う。
【0108】
【0109】
但し、式(26)において、x/λbが0.486を超えている場合(x/λb>0.486)、ΔLZは「0」と算出する。
施工場所Bに設定した五箇所の加振点における駆動点インピーダンスレベルの上昇量ΔLZの算出は、例えば、式(27)を用いて行う。
【0110】
【0111】
但し、式(27)において、x/λbが0.448を超えている場合(x/λb>0.448)、ΔLZは「0」と算出する。
また、基礎面Bへの振動の入力に対して、乾式二重床を施工した後の重量床衝撃音レベルにおける、基礎面Bの周辺で発生する拘束の影響が低下するため、加振点の位置による重量床衝撃音レベルの違いがない平坦な特性となると考える場合、乾式二重床の加振位置が変化しても、乾式二重床を施工した時の基礎面Bのインピーダンス特性は、加振点の位置によらず同じと考えられる。
【0112】
このとき、インピーダンス特性は、乾式二重床が施工された範囲で、基礎面Bの周辺で発生する拘束の影響が最も少ない点を入力点として計算に用いるものとする。すなわち、全ての支持脚20及び際根太のゴム付束から、基礎面Bへ伝わる振動を全て合成したものがインピーダンス特性に入力され、インピーダンス特性の出力が基礎面Bの振動となることで重量床衝撃音が生じるものと仮定する。
上記の仮定における駆動点インピーダンスレベルの上昇量ΔLZの算出は、例えば、式(28)を用いて行う。
【0113】
【0114】
式(28)における「ΔLZ1」は、加振点から一番目に近い梁による駆動点インピーダンスレベルの上昇量である。また、式(28)における「ΔLZ2」は、加振点から二番目に近い梁による駆動点インピーダンスレベルの上昇量である。
したがって、ステップS53では、上昇量ΔLZ1と上昇量ΔLZ2を合成して、加振点における駆動点インピーダンスレベルの上昇量ΔLZを算出する。
ステップS53で加振点における駆動点インピーダンスレベルの上昇量ΔLZを算出した後、ステップS54において、乾式二重床を施工した範囲における、最小の駆動点インピーダンスレベルの上昇量ΔLZ,min[dB]を算出する。
【0115】
最小の駆動点インピーダンスレベルの上昇量ΔLZ,minの算出は、例えば、式(26)を用いて行う。
なお、式(26)を用いて上昇量ΔLZ,minを算出する際には、x/λbが0.486を超えている場合、駆動点インピーダンスレベルの上昇量ΔΔLZが「0[dB]」と算出されることを利用して、上昇量ΔLZ,minを算出する。
ステップS54で最小の駆動点インピーダンスレベルの上昇量ΔLZ,minを算出した後、ステップS55において、駆動点インピーダンスレベル変化量ΔLmzを算出する。ステップS55における駆動点インピーダンスレベル変化量ΔLmzの算出は、ステップS54で算出した最小の駆動点インピーダンスレベルの上昇量ΔLZ,minから、ステップS53で算出した加振点における駆動点インピーダンスレベルの上昇量ΔLZを減算して行う(ΔLmz=ΔLZ,min-ΔLZ)。
【0116】
以上により、駆動点インピーダンスレベル変化量算出工程では、基礎面Bの等価ヤング係数Eeffと、基礎面Bの等価密度ρeffと、基礎面Bの等価厚さheffと、基礎面Bの断面2次モーメントIを予め形成した数式に入力する。これにより、駆動点インピーダンスレベル変化量ΔLmzを算出する。
【0117】
(重量床衝撃音レベル低減量算出工程)
衝撃音レベル低減量算出工程では、駆動点インピーダンスレベル変化量ΔLmzと、振動減衰量ΔLdと、防振効果量ΔLsumとを加算して、重量床衝撃音の衝撃音レベル低減量ΔLHfinを算出する(ΔLHfin=ΔLmz+ΔLd+ΔLsum)。
【0118】
(第2実施形態の作用)
以上説明したように、第2実施形態では、上述した各種の条件を考慮して、重量床衝撃音の衝撃音レベル低減量を算出することが可能である。このため、例えば、顧客の要望する様々な仕様に対して、重量床衝撃音の衝撃音レベル低減量を算出する予測することが可能となる。
また、通常では、カタログ等に表記している各種の仕様に対して、一つの仕様の試験データしか存在しない場合が多く、様々な候補の遮音性能を調べるためには、試験を行う必要がある。これに対し、第2実施形態では、実用的な予測方法により、重量床衝撃音の衝撃音レベル低減量を算出することが可能であるため、試験に必要な労力、コスト、時間を大幅に削減することが可能となる。
【0119】
さらに、遮音性能の向上や荷重対策として、二重床1に捨て貼り材を追加した仕様の場合であっても、複層板を単板に換算して演算を行うことで、重量床衝撃音の衝撃音レベル低減量を算出することが可能となる。
なお、上述した第2実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した第2実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0120】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態の衝撃音レベル低減量予測方法であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)駆動点インピーダンスレベル変化量ΔLmzを算出する駆動点インピーダンスレベル変化量算出工程と、振動減衰量ΔLdを算出する振動減衰量算出工程と、防振効果量ΔLsumを算出する防振効果量算出工程を備える。これに加え、駆動点インピーダンスレベル変化量ΔLmzと、振動減衰量ΔLdと、防振効果量ΔLsumに応じて衝撃音レベル低減量を算出する衝撃音レベル低減量算出工程を備える。
このため、例えば、パーソナルコンピュータに予めインストールした表計算ソフト等を用い、各種の数値を入力する手順のみで、衝撃音レベル低減量を予測することが可能となる。
その結果、複雑な手順を必要とせずに衝撃音レベル低減量を予測することが可能な、二重床に対する衝撃音レベル低減量の予測方法を提供することが可能となる。
【0121】
(2)衝撃音レベル低減量が、重量床衝撃音の衝撃音レベル低減量ΔLHfinである。
その結果、複雑な手順を必要とせずに、例えば、足音等の、重量床衝撃音の衝撃音レベル低減量ΔLHfinを予測することが可能となる。
【0122】
(3)駆動点インピーダンスレベル変化量算出工程では、基礎面Bの等価ヤング係数Eeffと、基礎面Bの等価密度ρeffと、基礎面Bの等価厚さheffと、基礎面Bの断面2次モーメントIを予め形成した数式に入力する。これにより、駆動点インピーダンスレベル変化量ΔLmzを算出する。
その結果、駆動点インピーダンスレベル変化量ΔLmzを、物理的な手順や、複雑な手順を必要とせずに算出することが可能となる。
【0123】
(4)二重床1が、乾式二重床である。
その結果、乾式二重床に対して、複雑な手順を必要とせずに、重量床衝撃音の衝撃音レベル低減量を予測することが可能となる。
【0124】
(5)防振効果量算出工程では、一般側支持部材の数と床端側支持部材の数との割合に応じて、防振効果量ΔLsumを算出する。
その結果、施工を依頼する顧客等が要望する様々な仕様に応じて、重量床衝撃音の衝撃音レベル低減量を算出することが可能となる。これにより、例えば、仕様変更による遮音性能の変化を、顧客に提示することが可能となる。
【0125】
(6)防振効果量算出工程では、薄型床端側台座と厚型床端側台座とのばね定数及び減衰比の違いに応じて、防振効果量ΔLsumを算出する。
その結果、施工を依頼する顧客等が要望する様々な仕様に応じて、重量床衝撃音の衝撃音レベル低減量を算出することが可能となる。これにより、例えば、仕様変更による遮音性能の変化を、顧客に提示することが可能となる。
【0126】
(第2実施形態の変形例)
(1)第2実施形態では、衝撃音レベル低減量予測方法を実施する際に、試験体を施工した複数種類(二種類)の施工場所での使用例を示したが、これに限定するものではない。
【実施例0127】
<軽量床衝撃音>
以下、同じ構造の二重床を想定し、軽量床衝撃音の衝撃音レベル低減量の予測値と、軽量床衝撃音の衝撃音レベル低減量の実測値との比較結果について説明する。
軽量床衝撃音の衝撃音レベル低減量の予測値は、第1実施形態の衝撃音レベル低減量予測方法を用い、表計算ソフト等を用いて予測した。
軽量床衝撃音の衝撃音レベル低減量の実測値は、実験室において、実際に物理的な手順を用いて測定した。
【0128】
図9に、乾式二重床の使用及び躯体構造(スラブ構造・スパン)が異なる9通りの事例において、軽量床衝撃音の周波数が63[Hz]~1[kHz]の帯域における、予測値と実測値との相関係数を求めた結果を示す。なお、
図9では、予測値を軽量床衝撃音の周波数別にプロットして示し、実測値を実線で示す。
図9に示すように、予測値と実測値の相関係数を求めた結果(
図9において、「R」で示す)は0.97となり、高い相関を示すことが確認された。
【0129】
特に、軽量床衝撃音の周波数が63[Hz]~250[Hz]の帯域における予測値と実測値との差は、全て±5[dB]以内となり、本発明の奏する効果が良好であることが確認された。また、軽量床衝撃音の周波数が500[Hz]の帯域においても、2通りの事例を除けば、同様に、予測値と実測値との差は、全て±5[dB]以内であることが確認された。
さらに、軽量床衝撃音の周波数が63[Hz]の帯域は、一般側支持部材の防振効果量によって、予測値と実測値との相関関係が特に良好であることが確認された。
【0130】
また、求めた相関係数について、帰無仮説、すなわち、「予測値と実測値の相関はない」として検定すると、有意水準が5%で棄却された。このことから、第1実施形態の衝撃音レベル低減量予測方法を用いて予測した衝撃音レベル低減量の予測値と実測値とは、実用上で十分な相関関係が成立していることが確認された。
また、台座の構造等、仕様を変更した複数の事例において、予測値と実測値を比較した場合であっても、仕様によって異なる特徴的な周波数特性に対応して、軽量床衝撃音の衝撃音レベル低減量を予測することが可能であることが確認された。
【0131】
<重量床衝撃音>
以下、同じ構造の二重床を想定し、重量床衝撃音の衝撃音レベル低減量の予測値と、重量床衝撃音の衝撃音レベル低減量の実測値との比較結果について説明する。
重量床衝撃音の衝撃音レベル低減量の予測値は、第2実施形態の衝撃音レベル低減量予測方法を用い、表計算ソフト等を用いて予測した。
重量床衝撃音の衝撃音レベル低減量の実測値は、実験室において、実際に物理的な手順を用いて測定した。
【0132】
図10に、乾式二重床の使用及び躯体構造(スラブ構造・スパン)が異なる9通りの事例において、重量床衝撃音の周波数が63[Hz]~1[kHz]の帯域における、予測値と実測値との相関係数を求めた結果を示す。なお、
図10では、予測値を重量床衝撃音の周波数別にプロットして示し、実測値を実線で示す。
図10に示すように、予測値と実測値の相関係数を求めた結果(
図10において、「R」で示す)は0.90となり、高い相関を示すことが確認された。
【0133】
特に、重量床衝撃音の周波数が250[Hz]~500[Hz]の帯域における予測値と実測値との差は、全て±5[dB]以内となり、本発明の奏する効果が良好であることが確認された。また、重量床衝撃音の周波数が63[Hz]の帯域においても、2通りの事例を除けば、同様に、予測値と実測値との差は、全て±5[dB]以内であることが確認された。さらに、重量床衝撃音の周波数が125[Hz]の帯域においても、1通りの事例を除けば、同様に、予測値と実測値との差は、全て±5[dB]以内であることが確認された。
さらに、重量床衝撃音の周波数が500[Hz]の帯域は、一般側支持部材の防振効果量によって、予測値と実測値との相関関係が特に良好であることが確認された。
また、台座の構造等、仕様を変更した複数の事例において、予測値と実測値を比較した場合であっても、仕様によって異なる特徴的な周波数特性に対応して、重量床衝撃音の衝撃音レベル低減量を予測することが可能であることが確認された。
【0134】
<まとめ>
上述したように、第1実施形態及び第2実施形態の衝撃音レベル低減量予測方法を用いて予測した衝撃音レベル低減量の予測値は、実測値に対して高い相関関係があり、有効性が高いことが確認された。
1…二重床、10…根太材、20…支持脚、22…床端側台座、24…根太材側ねじ軸、30…床板高さ調節機構、32…支持板、34…中間側台座、36…中間側ねじ軸、B…基礎面、FP…床パネル、US…床下空間、W…壁、RS…室内空間