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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022148030
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
A01B69/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021049546
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】馬場 馨一
(72)【発明者】
【氏名】藤井 俊也
(72)【発明者】
【氏名】渡部 翔太
【テーマコード(参考)】
2B043
【Fターム(参考)】
2B043AA10
2B043AB15
2B043AB19
2B043AB20
2B043BA03
2B043BB01
(57)【要約】
【課題】乗降時の作業者と作業機調整操作具との直接的な身体接触を防止してスムーズな乗降移動を可能にすると共に、無理な姿勢をとることなく、対地作業機の調整操作並びに後方確認動作を容易にすることができる作業車両を提供する。
【解決手段】走行車体3の後輪2を覆うフェンダ6に設けられるレバーガイド15の前端部側に、車両を調整操作する作業機調整操作具13を配置すると共に、該作業機調整操作具13の前部側に、操縦席5bの乗降路17bを介して乗降する作業者と作業機調整操作具13との直接的な接触から保護する操作具保護部21を配置した。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(3)の後輪(2)を覆うフェンダ(6)に設けられるレバーガイド(15)に、車両の操作レバーを前後揺動操作可能に設けると共に、上記レバーガイド(15)の前部側に車両を調整操作する調整操作具(13)を配置した作業車両において、
前記レバーガイド(15)のレバーガイド前端部側に作業機調整操作具(13)を配置すると共に、該作業機調整操作具(13)の前部側に、乗降路(17b)を介して乗降する作業者と作業機調整操作具(13)との直接的な接触から保護する操作具保護部(21)を配置したことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記レバーガイド(15)のレバーガイド前端部側と操作具保護部(21)との間に操作具設置凹部(20)を形成し、該操作具設置凹部(20)内に作業機調整操作具(13)を配置した請求項1記載の作業車両。
【請求項3】
前記操作具保護部(21)の上部に他の車両制御用操作部(14)の制御操作を表示可能な平坦状面の操作面(23)を設けると共に、該操作面(23)を操縦席(5b)側に向けて構成した請求項1又は2記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、操縦席の側方で、後輪を覆うフェンダの上部に設けられるレバーガイド(レバーガイド)に、対地作業機の上下高さ位置を選択操作するポジションコントロールレバー又は対地作業機の深さ自動制御位置を選択操作する深さ自動レバー等の操作レバーをレバーガイドに沿って前後揺動操作可能に設け、且つレバーガイドの前部側に操作スイッチとしての対地作業機の対地位置調整操作用の作業機調整操作具(耕深設定ダイヤル等)を有するフェンダレバーガイド構造を備えるトラクタが、特許文献1に示されるように既に公知である。
上記トラクタのフェンダレバーガイド構造は、レバーガイドをフェンダの上部で操縦席に隣接させて配置すると共に、作業機調整操作具を組付けた箱型のスイッチボックスを上記レバーガイドの右側に並列状に取付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-25292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に示されるフェンダレバーガイド構造は、スイッチボックスをフェンダ上面にブラケットを介し、スイッチボックスのフェンダ下面への突出を抑制して取付けるため、操縦席側の操作レバーの存在に支障されることなく操作スイッチの操作ができる利点がある。
然しながら、上記操作スイッチを有する箱型のスイッチボックスは、レバーガイドの前部位置で外方(右側)に並べた状態で配置し、且つフェンダ面から離れた高い位置に取付けられているため、作業者がステップフロアを乗降移動する際に、身体や着衣がスイッチボックスや操作スイッチに接触し易く、スムーズな乗降動作が妨げられること、及び操作スイッチに接触した場合には誤操作を伴う等の欠点がある。
さらに、レバーガイドの外方側でフェンダ面から離れた高い位置に設けられる操作スイッチは、右腕の肘を曲げて上げた状態でスイッチ操作を行う窮屈な動作や、首を下向きに急角度に曲げ略直下に位置する操作スイッチを見下ろし視認をする等の、無理な姿勢でのダイヤル操作を必要とすること、及びこの操作姿勢において、後方の耕耘作業機等の対地作業機及び後方作業の視認を同時に行う際には、上記無理な姿勢のまま上体を外方(右方)に傾けて振り返りながら後方視認することになるので、後方確認動作に困難性を伴い操作性が損なわれ誤操作を生じ易い等の課題もある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明は、第1に、走行車体3の後輪2を覆うフェンダ6に設けられるレバーガイド15に、車両の操作レバーを前後揺動操作可能に設けると共に、上記レバーガイド15の前部側に車両を調整操作する調整操作具13を配置した作業車両において、
前記レバーガイド15のレバーガイド前端部側に作業機調整操作具13を配置すると共に、該作業機調整操作具13の前部側に、乗降路17bを介し乗降する作業者と作業機調整操作具13との直接的な接触から保護する操作具保護部21を配置したことを特徴としている。
第2に、前記レバーガイド15のレバーガイド前端部側と操作具保護部21との間に操作具設置凹部20を形成し、該操作具設置凹部20内に作業機調整操作具13を配置したことを特徴としている。
第3に、前記操作具保護部21の上部に他の車両制御用操作部14の制御操作を表示可能な平坦状面の操作面23を設けると共に、該操作面23を操縦席5b側に向けて構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に係る発明によれば、走行車体の後輪を覆うフェンダに設けられるレバーガイドに、車両の操作レバーを前後揺動操作可能に設けると共に、上記レバーガイドの前部側に車両を調整操作する調整操作具を配置した作業車両であって、前記レバーガイドのレバーガイド前端部側に作業機調整操作具を配置すると共に、該作業機調整操作具の前部側に、乗降路を介し乗降する作業者と作業機調整操作具との直接的な接触から保護する操作具保護部を配置したことにより、
作業機調整操作具は、その前部側でフェンダの前側下り斜面から乗降路側に向けて突出する操作具保護部によって、乗降時の作業者との直接的な身体接触を防止しスムーズな乗降移動を可能にすることができる。また作業機調整操作具は、乗降路側に臨むフェンダの前側位置に操作し易く設けることができるため、作業者は着座姿勢において無理な姿勢をとることなく、対地作業機の調整操作並びに後方確認動作を適正且つ容易に行うことができる。
請求項2に係る発明によれば、前記レバーガイドのレバーガイド前端部側と操作具保護部との間に操作具設置凹部を形成し、該操作具設置凹部内に作業機調整操作具を配置したことにより、
作業機調整操作具は、操作具設置凹部からの突出高さを大きくすることなく外周壁によって保護されるように取付けられるので、乗降及び運転時に作業者との不慮の接触による誤操作も防止され、また作業機調整操作具の前側に立設される操作具保護部は、前記凹部外周壁高さにより前方上方への突出量を抑え、乗降時に作業者と操作具保護部との強い接当を回避した乗降を行うことができると共に、乗降路の狭い小型トラクタ等にも好適化できる。
請求項3に係る発明によれば、前記操作具保護部の上部に他の車両制御用操作部の制御操作を表示可能な平坦状面の操作面を設けると共に、該操作面を操縦席側に向けて構成したことにより、
操縦席に着座している作業者が、操作面全体の視認を誤りなく容易に行うことができると共に、操縦席側に向けた操作面のスイッチ類の操作を行い易くし誤操作を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明を適用したトラクタの左側面図である。
図2】操縦部の要部構成を示す前方斜視図である。
図3】操縦部の要部構成を示す右側面図である。
図4図3の要部構成を示す断面図である。
図5図4の構成を分解して示す分解斜視図である。
図6】右レバーガイドと操作具保護部の構成を示し、図(a)は右レバーガイドに操作具保護部を組付けた全体斜視図、図(b)は図(a)の左側面図、図(c)は図(a)の正面図、図(d)は図(b)の前側要部の構成を示す平面図である。
図7】操作面の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示す走行車両としてのトラクタ1は、左右一対の前輪2aと後輪2等の車輪によって支持される走行車体3と、該走行車体3の前側に設置されたエンジン(図示せず)の上面側をカバーするボンネット4と、その後方に操縦ハンドル5aと操縦席5b等からなる操縦部5を配置し、走行機体の後方に図示しない昇降リンクを介して耕耘作業部等の作業機を昇降可能に設置している。
【0009】
図示例のトラクタ1は、エンジン動力をメカニカルトランスミッション変速機構を介して走行変速をするMT仕様によって構成しており、その操縦部5には左右外側において、各後輪2の前方から上方に至る範囲を円弧状に覆う左右で対をなす金属製のフェンダ6を、在来のものと同様な設置構造によって走行車体3の両側に立設して操縦席5b側と区画している。
【0010】
上記左右のフェンダ6は、その上面外側にオペレータが乗降時に掴み使用することができるアシストバー6aを突設していると共に、後部側に座席5bの背後を囲う下向きコ字状をなす安全フレーム3aを立設している。この安全フレーム3aの基部側には、その取付手段とスペースを利用してフェンダ6の上面側に各種の容器形状をなす器物収納部7を構成している。
この器物収納部7は、例えばオペレータが所持する携帯電話や日用品又はメンテナンス用の工具や備品等の収納及び仮置き保管等を利便性よく行うことができる。
【0011】
また側面視で円弧状をなす左右のフェンダ6は、その上面側に複数の操作レバーを後述するように各別に操作案内可能に設置できる合成樹脂製のレバーガイド15としての左側ガイドカバー15Lと右側ガイドカバー15Rとが、左フェンダ6と右フェンダ6の円弧上面側に沿って凹入成形される取付面部7aに対し、従来のものと同様な取付構造によって組付け構成される。
上記左側ガイドカバー15Lは、その前後に形成されるH状の変速パターンからなる各ガイド溝に、主変速操作レバー8と、作業機等のPTO軸を回転変速するPTO変速レバー9とを配置し、その内方側のガイド溝には副変速レバー8aを配置している。
【0012】
一方、右側ガイドカバー15Rは、前記昇降リンクを介して耕耘作業部他各種の対地作業機を昇降操作するポジションコントロールレバー10と、対地作業機の高さ(耕耘深さ等)の自動制御を行う高さ(深さ)自動レバー11とを、車両の操作レバーとして在来型トラクタと同様なレバー設置構造によって前後揺動操作可能に左右に並べて配設し、各レバーを案内移動させるレバーガイドとしてのポジションガイド溝15aと深さ自動ガイド溝15bは、前後方向に長いガイド孔として左右に並べて形成すると共に、レバーガイド部適所にはガイド表記部を設けている。
そして、右側ガイドカバー15Rの前下部側になるレバーガイド端部には、本発明に係る作業機調整操作部12を後述する構成によって設置する一方で、対地作業機の各種制御を調整操作する作業機調整操作具13、並びに他の車両制御用操作部14等を、その保護と運転操作性の向上を図りながら耕耘等の各対地作業機を行い易くしている。
【0013】
この構成を備える操縦部5は、操縦ハンドル5aと座席5bとの間に敷設されるフロアステップ17と、座席5bの前方下方側で図示しないトランスミッションケース部の上方を覆うステップ中央カバー17a等からなるフロア構造となし、操縦ハンドル5aの下方側左右にクラッチペダル18とブレーキペダル19を配置し、該ブレーキペダル19の後方外方側に足踏み操作用のアクセル19aを配置している。これによるフロアステップ17は、操縦席5bの前部で左右のフェンダ6と操縦ハンドル5a及びボンネット4の後部との間に作業者が乗降移動をする乗降路17bを形成し、ステップ左右端になる乗降口には一段と低い位置に補助ステップ17cを設けている。
【0014】
次に、図2~7を参照し右フェンダ6に設置される右レバーガイド15Rのレバーガイド構造及び作業機調整操作部12等について説明する。右レバーガイド15Rは従来のものと同様に合成樹脂成形手段によって、フェンダ6の上部円弧面に沿って凹入成形される取付面部6bに対し内嵌可能に製作され、カバー本体裏側に成形される取付面をフェンダ取付面部6b内に位置決めし、フェンダ6の立壁面に接当させた状態で外周側の適所をボルトによって着脱可能に取付固定される。
【0015】
そして、右レバーガイド15Rは、側面視で円弧状カバー部をなし且つ断面視で広幅平坦面状をなすカバー本体15hのレバーガイド部に、ポジションコントロールレバー10を機体内方側で前後揺動操作可能に貫通させる長孔状のポジションガイド溝15aと、深さ自動レバー11を機体外方側で前後揺動操作可能に貫通させる長孔状の深さ自動ガイド溝15bとが形成され、またガイド溝に沿う両者の各表示面には、ポジション制御操作位置と深さ自動制御操作位置とを示す表示手段が設けられ、且つレバーガイド前端部側に前記作業機調整操作具13と、該作業機調整操作具13と乗降路17bを移動する作業者の身体や着衣との直接的な接触(身体接触)を規制する操作具保護部21等からなる作業機調整操作部12を構成している。
【0016】
上記作業機調整操作部12の作業機調整操作具13は、レバーガイド前端から下向きに延長される延長部に対し、縦向きのスイッチ軸を中心に左右方向に調節自在なダイヤル摘み操作型スイッチとなし、ダイヤル部の左右回動動調節操作に基づき、例えば対地作業機がロータリ耕耘型耕耘部である場合に、対地作業機の対地位置(制御姿勢)を左右に傾斜調整をしながら好適な耕耘作業を可能にする。
また上記作業機調整操作具13の前方位置には、乗降路17bを介して乗降移動する際の作業者との直接的な接触を回避させる操作具保護部21を、乗降路17bの乗降口側に位置するフェンダ6の前下り状斜面に対し、作業者が操作し易い低い位置に臨ませて設置することができるようにしている。
【0017】
即ち、作業機調整操作具13は、その前部側にフェンダ6の前側下り斜面に乗降路17bに向けて突出する操作具保護部21を設けているので、乗降移動中の作業者との直接的な身体接触を防止しながら乗降移動を妨げることなく、乗降路17b側に臨むフェンダ6の低い前側位置に設けることができる。これにより作業者は着座姿勢において、従来のもののようにフェンダ6の上で肘曲げをした腕を上げて操作する姿勢と、首を急角度に曲げながら作業機調整操作具13を視認する等の無理な姿勢でのダイヤル操作を強要されることなく、単に右手を右足膝高さ程度に降ろし伸ばすような自然体姿勢のまま、速やかなダイヤル摘みと回動調整操作を楽に適確に行うことができる。
【0018】
そして、この操作姿勢において同時的に行う必要のある、例えば、上体を右方に傾けて振り返りながら後方の対地作業機及び後方作業の視認を行う後方確認動作は、作業者が右手を右足膝高さ程度に降ろした操作姿勢にあるため、そのまま手を離すことなく上体を楽に振り返りながら無理なく視認することができるので、作業機調整操作具13から敢えて手を離すことのない後方確認ができると共に、誤操作を伴うことのない精度の高い対地作業を能率よく行うことができる。
【0019】
さらに、実施形態の作業機調整操作部12は図4図6に示すように、前記レバーガイド前端部側の延長部に対し、作業機調整操作具13を保護状態で取付けることができる所定深さと摘み操作間隔を有する方形状の操作具設置凹部20を一体的に凹入形成し、陥没状になる底板面20aの略中央部に作業機調整操作具13の軸部を貫通状態で取付け、摘み回動操作部(ダイヤル頭部)を操作具設置凹部20からの突出高さを大きくすることなく抑制し、且つ作業機調整操作具13を前後左右の外周壁20bによって保護できるようにしている。
【0020】
これによる摘み回動操作型の作業機調整操作具13は、操作具設置凹部20の底板面20aの操作し易い略中央に外周壁との操作間隔を有し、外周壁20bで保護された状態で取付けられるので、移動時や運転時の作業者と着衣等の不慮の接触とを規制し誤操作を防止することができる。そして、作業機調整操作具13の前側に立設される操作具保護部21(立壁21a等)は、前記凹部外周壁高さも保護壁になるため上方への突出高さを可及的に抑えて前方上方への突出高さを抑えて小さくするので、乗降時に作業者と操作具保護部21との強い接当を回避した乗降動作をスムーズに行えるように構成できる等の利点がある。
【0021】
従って、右レバーガイド15Rのレバーガイド前端部側に作業機調整操作部12を備えるトラクタ1は、乗降時や作業姿勢において作業機調整操作具13との不慮の身体接触を規制することができると共に、身体接触による作業機調整操作具13の誤作動を防止できるため、操作性の向上を図れると共に、オペレータの乗降動作を能率よく速やかに行うことができる。
尚、上記操作具設置凹部20の底板面20aには、必要により水抜き孔を設けることができる。
【0022】
次に、図4図7を参照し作業機調整操作部12の操作具保護部21及び他の車両制御用操作部14の具体構造について詳述する。
実施形態の操作具保護部21は、平面視方形状の断面をなす周壁になる立壁21aと、該立壁21aの上部を閉鎖する天板部としての操作面部21bとにより、台形状をなす保護本体部として合成樹脂成形によって立体的に製作され、この際に操作面部21bは前部を高く後部を低くした平坦面状の傾斜天板部として形成している。この操作面部21bの表面側には、表示手段として後述するような操作内容が表示されるシール状の操作面23dが付設され、天板部の裏側には前記他の車両制御用操作部14の電装基盤25を予め内装した状態で組付け可能に構成される。
【0023】
そして、後方下り傾斜面の操作面部21bには、表面側に例えば、図7に示すようなパターンや模様等を備える操作面23を付設すると共に、該操作面23には必要により、電装基盤25が備える所定部品の対向位置に対し、スイッチ操作孔やランプ表示孔等が設けられる。
一方、操作面部21bの裏面側には、上記孔の穿設位置に対応する箇所に、指押しスイッチ又は操作ダイヤル及び表示ランプ等を所望に配置した電装基盤25が、制御用操作部22に立壁21a内に形成される中空スペースに挿入され、ボルト等の取付手段によって着脱可能に組付けられて、操作具保護部21をユニット部品として製作できるように構成している。
【0024】
また他の車両制御用操作部14を備えるユニット構造の操作具保護部21は、周壁後部の後壁21c側を、前記操作具設置凹部20の前壁側に略面一状態となるように位置決めすることができ、ボルト等の取付手段によってレバーガイド前端部に対し着脱可能に取付けると共に、電装基盤25と作業機調整操作具13等が備えるハーネス26は、右レバーガイド15Rの裏面の後方に沿って配線し、配線端部をフェンダ6の外方に配置される図示しないコントローラに接続できるようにしている。
【0025】
この構成により、他の車両制御用操作部14を備えて右レバーガイド15Rの前部に直列状に配置される操作具保護部21は、図3,図4に示すようにフェンダ6の前下り傾斜面側に対し側面視において、後下りの平坦斜面で形成される操作面部21bが、フェンダ面に対し上向き鋭角θを有するように操縦席5b側に向けて組付けられる。
従って、操縦席5bに着座し操縦ハンドル5aを握り通常運転時の前傾姿勢をとる作業者は、前方向きの運転姿勢から首を下向きや横向きに大きく曲げることなく、右前下方(右足膝方向)に一時的に視点を移すだけの楽な視認動作によって、操作面23の全面を容易且つ確実に視認することができる。
【0026】
つまり、操作面23は着座姿勢における作業者の右膝高さの外方に臨むように配置され、且つ図4,図6に示すように、前部の高さより後部を低くして後方下り傾斜面にする共に、前記上向き鋭角θを有して操縦席5b側を向くように設けた構成にしているので、操縦席5bに着座し前傾運転姿勢にある作業者は、操作面23の全体を平面視的に容易且つ速やかに視認することができると共に、スイッチ類の押し操作を行う際にも、操作面23は指先が見易く且つ滑りを規制した適正な操作を確実にし、誤操作を防止することができる等の特徴がある。
【0027】
上記操作具保護部21に設けられる操作面23は、操作右側面に表示される他の走行制御操作を表す倍速オートブレーキ面23aと、操作中側面の上下に表示されるバックアップ面23bと、旋回アップ面23c等からなる。尚、各操作面において、◎印は押し操作型のスイッチを示し、○印は該スイッチのON・OFF状態を表示するランプを示す。
上記操作面23の倍速オートブレーキ面23aでは、スイッチを1回押すと倍速表示ランプを点灯して、操縦ハンドル5aの操作量によって左右何れかの前輪2aを他方のものより所定の倍速度にして旋回走行させる倍速制御を行うことができる。
【0028】
このスイッチは連続して2回押し操作すると、操縦ハンドル5aの操作量によって左右何れかの後輪2を自動制動しながら、心地旋回走行をさせるオートブレーキ表示ランプを点灯してオートブレーキ制御を行うことができる。
次に、上記バックアップ面23bでは、そのスイッチを押してランプが点灯状態にあるとき、車両のバック操作をすると、これに基づき対地作業機を自動的に上昇制御する。また旋回アップ面23cでは、そのスイッチを押してランプが点灯状態にあるとき、後進操作に基づき対地作業機を自動的に上昇制御することができる。
【0029】
さらに、上記のように構成されて各種の制御用操作を可能にする操作具保護部21は、図5,図6に示すように保護本体部を操作具設置凹部20に対し外方側(右側)に偏位させて立設することが望ましく、この場合には、フェンダ6の立壁側から保護本体部の内方側(左側)立壁21cをより離して取付けることができるため、右レバーガイド15Rの内側前部に位置するコーナー部の突出を抑えて、右側の乗降路17bと操縦席5bに至る側の内側前部コーナー部スペース17fを図6(a)に示すように広く形成させた構造にすることができる。
【0030】
つまり、内側前部コーナー部スペース17fを広くしたことにより、乗降時に身体と接触を生じ易い操作具保護部21の内側前部コーナー部での強い身体接当を回避できるので、乗降路17bと操縦席5bとの移動を楽でスムーズに行うことができると共に、作業機調整操作具13や他の車両制御用操作部14等との接当誤動作の防止と、操作具保護部21も自ずと外方寄りになるため、着座姿勢におけるこの部の視認性も高めることができて誤操作も防止することができる。
【0031】
そして、操作具保護部21を外方側にずらして立設する場合には、該操作具保護部21の後部周壁をなす後壁21c側から内方側に延長されて、作業機調整操作具13の前部側内方を覆う正面視で三角形状をなす内方保護壁27を設けた構造にすると、この場合には操作具設置凹部20の前側壁になる外周壁20bに沿い、その全幅を前記内側前部コーナー部のスペース17fを狭めることなく、且つ操作具保護部21の保護本体部を大型化させることなくコンパクトな態様によって、作業機調整操作具13の前部を広幅に保護することができる。またリブ状の壁体として突設される内方保護壁27は、リブ基部側が操作具保護部21の補強部材になると共に、その広い基部底面を利用しネジ穴等取付部の強度を損なうことなく設けることができる。
【0032】
従って、リブ下部側を操作具設置凹部20の左前側を覆うように突出させる内方保護壁27は、リブ上部側を外方向きの斜面部となして内方側立壁21cに接当させた正面視で三角形状のリブ壁体になるため、作業機調整操作具13の前部を保護しながら、内側前部コーナー部のスペース17fを狭めることなくリブ上部と作業者との大きな接当を回避することができる。
また図示例のフェンダレバーガイド構造は、大型で複雑な合成樹脂成形型を要することなく、右レバーガイド15Rに対し、単一小部品として製作される操作具保護部21を右レバーガイド15Rの前方に配置する、簡潔で安価な構成によってデザインよく構成することができる等の特徴もある。
【0033】
次に、以上のように構成される作業機調整操作部12を備えるトラクタ1の使用態様について説明する。先ず、作業者は乗車時において、片手でアシストバー6aを掴み片足を補助ステップ17bに載せて乗降路17bのステップに搭乗し、操縦ハンドル5aを掴みながら歩行移動をしつつ、身体の向きを正面側に変えて操縦席5bに着座し、操縦ハンドル5aを握りなおし他方の手で必要とされる各種操作レバーを操作し所望の対地作業を行う。また降車時には、上記乗車時とは逆順の動作によって身体の向きを変えながら降車し、所期の対地作業を終える。
【0034】
このように乗降動作が行われるトラクタ1は、操縦ハンドル5aから乗降路17bを介して配設される操縦席5bの側方で、後輪2を覆うフェンダ6の上部に設けられるレバーガイド15に、対地作業機の上下高さ位置を選択操作するポジションコントロールレバー10又は対地作業機の深さ自動制御位置を選択操作する深さ自動レバー11をレバーガイド15に沿って前後揺動操作可能に設け、且つ該レバーガイド15のレバーガイド前端部側に作業機調整操作具13を配置し、その前部側に操作具保護部21を配置したことにより、乗降時に移動する作業者が操作具保護部21に接触したとしても、該操作具保護部21が後方にある作業機調整操作具13との直接的な身体接触を規制するため、作業機調整操作具13が不慮に回動される等の誤操作を防止することができる。
【0035】
従って、これによるフェンダレバーガイド構造は、必要により乗降路17bを可及的に狭めることができると共に、作業機調整操作具13をレバーガイド15のレバーガイド前端部側で操作し易い低い位置に配設することができるため、特に機体の小型化を図りたいトラクタに対し好適化することができる。また作業機調整操作具13は、従来の操作スイッチのように箱型のスイッチボックスをレバーガイドの外方側に高く並べて設けることなく、レバーガイド15の延長方向に略同幅にコンパクトに纏めて配置するので、小幅なフェンダ6に対してもコンパクトに纏めて好適に設けることができ、また作業機調整操作具13と制御用操作部22との判別の明瞭化及び混同操作も回避できるように操作性よく構成することができる。
【0036】
次いで、このようなフェンダレバーガイド構造を備えるトラクタ1は、圃場走行による対地作業として例えば耕耘作業を行う際には、ポジションコントロールレバー10を操作し対地作業機の上下高さ位置を選択操作すると共に、深さ自動レバー11を操作し対地作業機の深さ自動制御位置を選択操作して、対地作業機を適正な作業姿勢に維持し耕耘作業を続行しながら、傾斜地圃場を耕耘する場合に、レバーガイド前端部側に配置される作業機調整操作具13を左右方向に回動調節しながら対地作業機の傾きをリモートコントロールして左右の耕耘深さを一定に制御操作することができる。
【0037】
これによる右レバーガイド15Rのレバーガイド前端部側に配置される操作具保護部21と一体な他の車両制御用操作部14の操作面部21bは、手を下に降ろして行う作業機調整操作具13の前部直近に位置しているため、操縦席5bに着座している作業者からの視認が行い易くなること、また必要により咄嗟に行われる電装基盤25のスイッチ類の操作を、作業機調整操作具13の操作位置から腕を大きく動かすことなく、単に指を伸ばす程度の指操作によって速やか且つ正確行うことができるため、誤操作を防止した各種の制御用操作を行うことができ、対地作業の容易化と作業能率の向上を図ることができる。
【0038】
尚、図示例の操作具保護部21は台形状をなす立体構造として示したが、これに限定することなく例えば、右レバーガイド15Rの前端部又はフェンダ6の前部から突設した板状片にすることができると共に、この場合に平坦状面の操作面23は該板状片の上部に簡潔で安価な構成によってデザイン性よく配置することができる。また操作具設置凹部20は、右レバーガイド15Rの本体部を凹入させることなく、作業機調整操作具13の少なくとも前方又は側方を囲うように立設される外周壁20bを保護周壁にする凹部構造にしてもよい。
また操作具保護部21に設けられる他の制御用操作手段と操作面23は、前記したものに限ることなく必要により、例えば、PTOクラッチを入り切りするPTOスイッチ、操向モードを切替える操向モードスイッチ、並びに耕深設定ダイヤル等を利便性よく設けることができる。
【符号の説明】
【0039】
1 トラクタ(作業車両)
2 後輪(車輪)
3 走行車体
5b 操縦席
6 フェンダ(リヤフェンダ)
10 ポジションコントロールレバー
11 深さ自動レバー
12 作業機調整操作部
13 作業機調整操作具
14 他の車両制御用操作部
15 レバーガイド
15R 右レバーガイド
15a ポジションガイド溝
15b 深さ自動ガイド溝
15h カバー本体
17b 乗降路
20 操作具設置凹部
21 操作具保護部
23 操作面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7