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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022148045
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】熱電変換素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 35/30 20060101AFI20220929BHJP
   H01L 35/32 20060101ALI20220929BHJP
   H01L 35/14 20060101ALI20220929BHJP
   H01L 35/34 20060101ALI20220929BHJP
   H02N 11/00 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
H01L35/30
H01L35/32 A
H01L35/14
H01L35/34
H02N11/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021049568
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蒲生 寛武
(57)【要約】
【課題】素子面直方向の温度差を用いて素子面内方向に温度差を与えることができる熱電変換素子を提供する。
【解決手段】熱電変換素子1は、第1主面2aおよびその反対側の第2主面2bを有し、キャビティ2cを含む基板2と、基板2の第1主面2a上に形成され、平面視において一端部がキャビティ2cの外側に位置し、他端部がキャビティ2c内に位置する熱電変換部材3とを含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面およびその反対側の第2主面を有し、キャビティを含む基板と、
前記基板の第1主面上に形成され、平面視において一端部が前記キャビティの外側に位置し、他端部が前記キャビティ内に位置する熱電変換部材とを含む、熱電変換素子。
【請求項2】
前記基板の第1主面上に配置され、前記熱電変換部材の前記一端部に電気的に接続された第1電極と、
前記基板の第1主面上に配置され、前記熱電変換部材の前記他端部に電気的に接続された第2電極とを含む、請求項1に記載の熱電変換素子。
【請求項3】
前記熱電変換部材に対して前記基板とは反対側に、絶縁層を介して配置された金属膜をさらに含み、
前記金属膜が、前記熱電変換部材の前記他端部に、前記絶縁層よりも熱伝導率の高い絶縁体を介して熱的に接続されている、請求項1または2に記載の熱電変換素子。
【請求項4】
前記熱電変換部材が複数の熱電変換部材を含み、
前記複数の熱電変換部材を電気的に直列に接続する配線と、
前記複数の熱電変換部材の直列回路の一端が電気的に接続される第1電極と、
前記直列回路の他端が電気的に接続される第2電極とをさらに含む、請求項1に記載の熱電変換素子。
【請求項5】
前記複数の熱電変換部材および前記配線に対して前記基板とは反対側に、絶縁層を介して配置された金属膜をさらに含み、
前記金属膜が、前記各熱電変換部材の前記他端部に、前記絶縁層よりも熱伝導率の高い絶縁体を介して熱的に接続されている、請求項4に記載の熱電変換素子。
【請求項6】
前記キャビティが、平面視において、所定方向に間隔をおいて配置された第1辺および第2辺を備えた四角形状を有しており、
前記複数の熱電変換部材が、平面視において、前記第1辺と対して前記キャビティの外側に位置し、他端部が前記第1辺に対して前記キャビティの内側に位置する複数の第1熱電変換部材と、一端部が前記第2辺に対して前記キャビティの外側に位置し、他端部が前記第2辺に対して前記キャビティ内に位置する複数の第2熱電変換部材を含む、請求項4に記載の熱電変換素子。
【請求項7】
前記複数の第1熱電変換部材、前記複数の第2熱電変換部材および前記配線に対して前記基板とは反対側に、絶縁層を介して配置された金属膜をさらに含み、
前記金属膜が、前記各第1熱電変換部材の前記他端部および前記各第2熱電変換部材の前記他端部に、前記絶縁層よりも熱伝導率の高い絶縁体を介して熱的に接続されている、請求項6に記載の熱電変換素子。
【請求項8】
前記キャビティが前記基板の前記第2主面に形成された凹部または前記基板を厚さ方向に貫通する貫通孔である、請求項1~7のいずれか一項に記載の熱電変換素子。
【請求項9】
前記基板がSi基板を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の熱電変換素子。
【請求項10】
前記基板がSi基板と、前記Si基板上に形成されたAlN基板とを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の熱電変換素子。
【請求項11】
前記熱電変換部材が、GaN層とAlGaN層との積層膜、MgZnO層とZnO層との積層膜、GaAs層とAlGaAs層との積層膜、およびLaAlO層とSrTiO層との積層膜のうちから任意に選択された1つの積層膜からなる、請求項1~10のいずれか一項に記載の熱電変換素子。
【請求項12】
前記絶縁層がSiOまたはSiNからなり、前記絶縁体がポリイミドまたはエポキシ樹脂からなる、請求項1~11のいずれか一項に記載の熱電変換素子。
【請求項13】
前記金属膜が、AuまたはCuからなる、請求項1~12のいずれか一項に記載の熱電変換素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
熱電変換素子は、素子に与えられた温度差を起電力に変換することが可能な素子であり、環境への排熱から起電力を得ることができるため、環境負荷が小さい発電手法として注目を集めている。特に近年、AI技術やブロックチェーン技術の発展が著しく、それに伴うコンピュータの消費電力も増大傾向にある。このようなコンピュータからの排熱を電力に変換するために、小型で高性能な熱電変換素子の需要が高まっている。
【0003】
熱電変換素子には、素子面直方向(素子の厚さ方向)の温度差を与えることによって起電力を生じるΠ型熱電変換素子(特許文献2参照)と、素子面内方向(素子の厚さ方向と垂直な方向)の温度差を与えることによって起電力を生じる面内型熱電変換素子(特許文献1参照)とがある。
面内型熱電変換素子は、熱電変換部材を高密度で配置可能であり、Π型熱電変換素子に比べて、高いスケーラビリティを有する。このような特徴を活かした小型で高性能な面内型熱電変換素子は、様々な分野での利用が期待される素子である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-88446号公報
【特許文献2】特開2019-175904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、実際に熱電変換素子を使用する状況(例えば時計等)を考えると、素子面直方向に温度差がある場合が多く、従来の面内型熱電変換素子の構造では、素子面内方向の温度差を与えることは困難であった。
本開示の目的は、素子面直方向の温度差を用いて素子面内方向に温度差を与えることができる熱電変換素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態は、第1主面およびその反対側の第2主面を有し、キャビティを含む基板と、前記基板の第1主面上に形成され、平面視において一端部が前記キャビティの外側に位置し、他端部が前記キャビティ内に位置する熱電変換部材とを含む、熱電変換素子を提供する。
この構成では、素子面直方向の温度差を用いて素子面内方向に温度差を与えることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、この発明の一実施形態に係る熱電変換素子の図解的な平面図である。
図2図2は、図1のII-II線に沿う図解的な断面図である。
図3図3は、電極、配線および熱電変換部材を示す図解的な平面図である。
図4図4は、図2のIV-IV線に沿う方向から見た図解的な平面図である。
図5A図5Aは、図1および図2に示す熱電変換素子の製造工程の一部を示す平面図である。
図5B図5Bは、図5Aの次の工程を示す平面図である。
図5C図5Cは、図5Bの次の工程を示す平面図である。
図5D図5Dは、図5Cの次の工程を示す平面図である。
図5E図5Eは、図5Dの次の工程を示す平面図である。
図5F図5Fは、図5Eの次の工程を示す平面図である。
図6A図6Aは、図1および図2に示す熱電変換素子の製造工程の一部を示す断面図であって、図2の切断面に対応する断面図である。
図6B図6Bは、図6Aの次の工程を示す断面図である。
図6C図6Cは、図6Bの次の工程を示す断面図である。
図6D図6Dは、図6Cの次の工程を示す断面図である。
図6E図6Eは、図6Dの次の工程を示す断面図である。
図6F図6Fは、図6Eの次の工程を示す断面図である。
図6G図6Gは、図6Fの次の工程を示す断面図である。
図6H図6Hは、図6Gの次の工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本開示の実施形態の説明]
本開示の一実施形態は、第1主面およびその反対側の第2主面を有し、キャビティを含む基板と、前記基板の第1主面上に形成され、平面視において一端部が前記キャビティの外側に位置し、他端部が前記キャビティ内に位置する熱電変換部材とを含む、熱電変換素子を提供する。
【0009】
本開示の一実施形態では、前記基板の第1主面上に配置され、前記熱電変換部材の前記一端部に電気的に接続された第1電極と、前記基板の第1主面上に配置され、前記熱電変換部材の前記他端部に電気的に接続された第2電極とを含む。
本開示の一実施形態では、前記熱電変換部材に対して前記基板とは反対側に、絶縁層を介して配置された金属膜をさらに含み、前記金属膜が、前記熱電変換部材の前記他端部に、前記絶縁層よりも熱伝導率の高い絶縁体を介して熱的に接続されている。
【0010】
本開示の一実施形態では、前記熱電変換部材が複数の熱電変換部材を含み、前記複数の熱電変換部材を電気的に直列に接続する配線と、前記複数の熱電変換部材の直列回路の一端が電気的に接続される第1電極と、前記直列回路の他端が電気的に接続される第2電極とをさらに含む。
本開示の一実施形態では、前記複数の熱電変換部材および前記配線に対して前記基板とは反対側に、絶縁層を介して配置された金属膜をさらに含み、前記金属膜が、前記各熱電変換部材の前記他端部に、前記絶縁層よりも熱伝導率の高い絶縁体を介して熱的に接続されている。
【0011】
本開示の一実施形態では、前記キャビティが、平面視において、所定方向に間隔をおいて配置された第1辺および第2辺を備えた四角形状を有しており、前記複数の熱電変換部材が、平面視において、前記第1辺と対して前記キャビティの外側に位置し、他端部が前記第1辺に対して前記キャビティの内側に位置する複数の第1熱電変換部材と、一端部が前記第2辺に対して前記キャビティの外側に位置し、他端部が前記第2辺に対して前記キャビティ内に位置する複数の第2熱電変換部材を含む。
【0012】
本開示の一実施形態では、前記複数の第1熱電変換部材、前記複数の第2熱電変換部材および前記配線に対して前記基板とは反対側に、絶縁層を介して配置された金属膜をさらに含み、前記金属膜が、前記各第1熱電変換部材の前記他端部および前記各第2熱電変換部材の前記他端部に、前記絶縁層よりも熱伝導率の高い絶縁体を介して熱的に接続されている。
【0013】
本開示の一実施形態では、前記キャビティが前記基板の前記第2主面に形成された凹部または前記基板を厚さ方向に貫通する貫通孔である。
本開示の一実施形態では、前記基板がSi基板を含む。
本開示の一実施形態では、前記基板がSi基板と、前記Si基板上に形成されたAlN基板とを含む。
【0014】
本開示の一実施形態では、前記熱電変換部材が、GaN層とAlGaN層との積層膜、MgZnO層とZnO層との積層膜、GaAs層とAlGaAs層との積層膜、およびLaAlO層とSrTiO層との積層膜のうちから任意に選択された1つの積層膜からなる。
本開示の一実施形態では、前記絶縁層がSiOまたはSiNからなり、前記絶縁体がポリイミドまたはエポキシ樹脂からなる。
【0015】
本開示の一実施形態では、前記金属膜が、AuまたはCuからなる。
[本開示の実施形態の詳細な説明]
以下では、本開示の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る熱電変換素子の図解的な平面図である。図2は、図1のII-II線に沿う図解的な断面図である。図3は、電極、配線および熱電変換部材を示す図解的な平面図である。図4は、図2のIV-IV線に沿う図解的な平面図である。
【0016】
説明の便宜上、以下において、図1に示した+X方向、-X方向、+Y方向および-Y方向を用いることがある。+X方向は、平面視において、熱電変換素子1の表面に沿う所定の方向であり、+Y方向は、平面視において、熱電変換素子1の表面に沿う方向あって、+X方向に直交する方向である。-X方向は、+X方向と反対の方向であり、-Y方向は、+Y方向と反対の方向である。+X方向および-X方向を総称するときには単に「X方向」という。+Y方向および-Y方向を総称するときには単に「Y方向」という。
【0017】
熱電変換素子1は、第1主面2aと第1主面2aとは反対側の第2主面2bとキャビティ2cとを有する基板2と、第1主面2a上に形成された複数の熱電変換部材3と、第1主面2a上に複数の熱電変換部材3を覆うように形成された第1絶縁膜4とを含む。
また、熱電変換素子1は、第1絶縁膜4上に形成された第1および第2電極5,6と、第1絶縁膜4上に形成され、複数の熱電変換部材3を直列に接続し、それらの直列回路の一端を第1電極5に、他端を第2電極6に接続する配線7とを含む。
【0018】
さらに、熱電変換素子1は、第2絶縁膜8と、第3絶縁膜9と、金属膜10とを含む。
基板2は、平面視がY方向に長い長方形状の直方体形状を有している。基板2のX方向の長さは、例えば1000μm程度であり、Y方向の長さは、例えば2000μm程度であり、厚さは、110μm程度である。
キャビティ2cは、この実施形態では、基板2の第2主面2bに形成された凹部2cからなる。この実施形態では、凹部2cは、基板2の第2主面2bの中央部に形成されている。凹部2cは、平面視において基板2の4辺と平行な4辺を有する四角形状である。この実施形態では、凹部2cのX方向の長さは700μm程度であり、Y方向の長さは1000μm程度である。
【0019】
キャビティ2cは、基板2を厚さ方向に貫通する貫通孔であってもよい。キャビティ2c内の空気は、基板2に比べて熱伝導率が低い断熱材として機能する。言い換えれば、基板2は、キャビティ2cの内部空間領域に相当する断熱領域を有している。
基板2は、第1基板21と、第1基板21上に形成された第2基板22とからなる。第1基板21における第2基板22とは反対側の表面(第1基板21の下面)が基板2の第2主面2bであり、第2基板22における第1基板21とは反対側の表面(第2基板22の上面)が基板2の第1主面2aである。この実施形態では、凹部2cは、第1基板21の下面から、第2基板22の下面まで掘り下げられた凹部である。つまり、この実施形態では、凹部2cは、第1基板21を厚さ方向に貫通している。凹部2cは、第1基板21の下面から、第1基板21の厚さ途中まで掘り下げられた凹部であってもよい。
【0020】
第1基板21は、例えば、Si基板からなる。第1基板21の厚さは、例えば、50μm~1000μm程度であってもよい。第2基板22は、例えば、AlN(窒化アルミニウム)基板からなる。第2基板22の厚さは、例えば、0.05μm~10μm程度であってもよい。この実施形態では、第1基板21の厚さは、100μm程度であり、第2基板22の厚さは10μm程度である。第2基板22は、エッチングによって凹部2cを第1基板21に形成する際に、エッチングストッパとして機能する。
【0021】
複数の熱電変換部材3は、平面視で第1主面2aのX方向中央に対して-X方向側に配置された複数の第1熱電変換部材3Aと、平面視で第1主面2aのX方向中央に対して+X方向側に配置された複数の第2熱電変換部材3Bとを含んでいる。各第1熱電変換部材3Aおよび各第2熱電変換部材3Bは、平面視でX方向に長い帯状(短冊状)である。この実施形態では、第1熱電変換部材3Aおよび第2熱電変換部材3Bの幅は5μm程度であり、長さは350μm程度である。
【0022】
複数の第1熱電変換部材3Aは、平面視において、第1主面2aのY方向位置に関し、凹部2cの-Y方向端と凹部2cの+Y方向端との間の領域において、Y方向に間隔を空けてストライプ状に配置されている。各第1熱電変換部材3Aは、平面視において、一端部が凹部2cの外側に位置し、他端部が凹部2cの内側に位置している。
各第1熱電変換部材3Aの-X方向端は、平面視において、第1主面2aの-X方向側の辺と、凹部2cの-X方向側の辺との間に位置している。各第1熱電変換部材3Aの-X方向端と、凹部2cの-X方向側の辺との間隔は、10μm以上であることが好ましい。
【0023】
各第1熱電変換部材3Aの+X方向端は、平面視において、凹部2cの-X方向側の辺と凹部2cのX方向中央との間に位置している。平面視において、第1熱電変換部材3Aの+X方向端と凹部2cのX方向中央との距離は、1μm~100μm程度であることが好ましい。
複数の第2熱電変換部材3Bは、平面視において、第1主面2aのY方向位置に関し、凹部2cの-Y方向端と凹部2cの+Y方向端との間の領域において、Y方向に間隔を空けてストライプ状に配置されている。各第2熱電変換部材3Bは、平面視において、一端部が凹部2cの外側に位置し、他端部が凹部2cの内側に位置している。
【0024】
各第2熱電変換部材3Bの-X方向端は、平面視において、凹部2cのX方向中央と凹部2cの+X方向側の辺との間に位置している。平面視において、凹部2cのX方向中央と第2熱電変換部材3Bの-X方向端との距離は、1μm~100μm程度であることが好ましい。
各第2熱電変換部材3Bの+X方向端は、平面視において、凹部2cの+X方向側の辺と第1主面2aの+X方向側の辺との間に位置している。各第2熱電変換部材3Bの+X方向端と、凹部2cの+X方向側の辺との間隔は、10μm以上であることが好ましい。
【0025】
熱電変換部材3は、例えば、GaN層とAlGaN層とが、基板2上にその順番に積層されたGaN/AlGaN層からなる。熱電変換部材3は、MgZnO層とZnO層との積層膜、GaAs層とAlGaAs層との積層膜、LaAlO層とSrTiO層との積層膜等から構成されてもよい。また、熱電変換部材3は、BiTe層から構成されてもよい。熱電変換部材3の厚さは、例えば、0.1μm~100μm程度であってもよい。
【0026】
各第1熱電変換部材3Aの-X方向端部および各第2熱電変換部材3Bの+X方向端部は、後述するように熱電変換素子1を発電装置として使用する場合に例えば高温にされるので、以下において高温側端部という場合がある。また、各第1熱電変換部材3Aの+X方向端部および各第2熱電変換部材3Bの-X方向端部は、熱電変換素子1を発電装置として使用する場合に例えば低温にされるので、以下において低温側端部という場合がある。
【0027】
熱電変換部材3を覆う第1絶縁膜4は、基板2の第1主面2aのほぼ全域に形成されている。第1絶縁膜4には、平面視において、凹部2cのX方向中央部に対応する領域に、Y方向に延びた開口部4aが形成されている。Y方向視において、開口部4aの-X方向側の側面は、第1熱電変換部材3Aの+X方向端面と整合しており、開口部4aの+方向側の側面は、第2熱電変換部材3Bの-X方向端面と整合している。したがって、各第1熱電変換部材3Aの+X方向端面は、開口部4aの-X方向側の側面に露出しており、各第2熱電変換部材3Bの-X方向端面は、開口部4aの+X方向側の側面に露出している。
【0028】
第1絶縁膜4には、各第1熱電変換部材3Aの両端部の上面の一部をそれぞれ露出させる一対の第1コンタクト孔4bが形成されている。同様に、第1絶縁膜4には、各第2熱電変換部材3Bの両端部の上面の一部をそれぞれ露出させる一対の第2コンタクト孔4cが形成されている。
第1絶縁膜4は、例えば、SiO膜、SiN膜等からなる。第1絶縁膜4の厚さは、例えば、0.05μm~5μm程度であってもよい。
【0029】
第1電極5は、平面視正方形状であり、第1絶縁膜4の表面における+Y方向端部の-X方向端寄りの位置に形成されている。第2電極6は、平面視正方形状であり、第1絶縁膜4の表面における+Y方向端部の+X方向端寄りの位置に形成されている。第1電極5および第2電極6は、平面視において、凹部3cよりも+Y方向側に配置されている。
配線7は、第1配線部材7A、複数の第2配線部材7B、第3配線部材7C、複数の第4配線部材7Dおよび第5配線部材7Eを含む。
【0030】
第1配線部材7Aは、第1電極5を、最も+Y方向側にある第1熱電変換部材3Aの-X方向端部に接続する。具体的には、第1配線部材7Aは、第1電極5の-Y方向端の-X方向端よりの位置から-Y方向に延びた帯状である。この実施形態では、第1配線部材7Aは、第1電極5と一体的に形成されている。第1配線部材7Aの-Y方向端部の一部は、最も+Y方向側の第1熱電変換部材3Aの-X方向端部上にある第1コンタクト孔4b内に入り込み、当該第1コンタクト孔4b内で当該第1熱電変換部材3Aの-X方向端部に接続されている。
【0031】
複数の第2配線部材7Bは、複数の第1熱電変換部材3Aを直列に接続する。具体的には、複数の第2配線部材7Bは、隣り合う2つの第1熱電変換部材3Aのうちの+Y方向側の第1熱電変換部材3Aの+X方向端部と、-Y方向側の第1熱電変換部材3Aの-X方向端部とを接続する。各第2配線部材7Bは、平面視において、+X方向に向かって斜め+Y方向に延びた帯状である。
【0032】
隣り合う2つの第1熱電変換部材3Aを接続する第2配線部材7Bの+X方向端部の一部は、+Y方向側の第1熱電変換部材3Aの+X方向端部上にある第1コンタクト孔4b内に入り込み、当該第1コンタクト孔4b内で当該第1熱電変換部材3Aの+X方向端部に接続されている。隣り合う2つの第1熱電変換部材3Aを接続する第2配線部材7Bの-X方向端部の一部は、-Y方向側の第1熱電変換部材3Aの-X方向端部上にある第1コンタクト孔4b内に入り込み、当該第1コンタクト孔4b内で当該第1熱電変換部材3Aの-X方向端部に接続されている。
【0033】
第3配線部材7Cは、最も-Y方向側にある第1熱電変換部材3Aの+X方向端部(以下、「第1接続端部」という場合がある。)を、最も-Y方向側にある第2熱電変換部材3Bの+X方向端部(以下、「第2接続端部」という場合がある。)に接続する。第3配線部材7Cは、第1~第4直線部7C1~7C4からなる。
第1直線部7C1は、平面視帯状であり、第1接続端部から-X方向に向かって斜め-Y方向に延びている。第2直線部7C2は、平面視帯状であり、第1直線部7C1のーX方向端から-Y方向に延びている。第3直線部7C3は、平面視帯状であり、第2直線部7C21の-Y方向側端から+X方向に延びている。第4直線部7C4は、平面視帯状であり、第3直線部7C3の+X方向側端から第2接続端部まで+Y方向に延びている。
【0034】
第1直線部7C1の+X方向端部の一部は、最も-Y方向側の第1熱電変換部材3Aの+X方向端部(第1接続端部)上にある第1コンタクト孔4b内に入り込み、当該第1コンタクト孔4b内で当該第1熱電変換部材3Aの+X方向端部に接続されている。第4直線部7C4の+Y方向端部の一部は、最も-Y方向側の第2熱電変換部材3Bの+X方向端部(第2接続端部)上にある第2コンタクト孔4c内に入り込み、当該第2コンタクト孔4c内で当該第2熱電変換部材3Bの+X方向端部に接続されている。
【0035】
複数の第4配線部材7Dは、複数の第2熱電変換部材3Bを直列に接続する。具体的には、複数の第4配線部材7Dは、隣り合う2つの第2熱電変換部材3Bのうちの-Y方向側の第2熱電変換部材3Bの-X方向端部と、+Y方向側の第2熱電変換部材3Bの+X方向端部とを接続する。各第4配線部材7Dは、平面視において、+X方向に向かって斜め+Y方向に延びた帯状である。
【0036】
隣り合う2つの第2熱電変換部材3Bを接続する第4配線部材7Dの-X方向端部の一部は、-Y方向側の第2熱電変換部材3Bの-X方向端部上にある第2コンタクト孔4c内に入り込み、当該第2コンタクト孔4c内で当該第2熱電変換部材3Bの-X方向端部に接続されている。隣り合う2つの第2熱電変換部材3Bを接続する第4配線部材7Dの+X方向端部の一部は、+Y方向側の第2熱電変換部材3Bの+X方向端部上にある第2コンタクト孔4c内に入り込み、当該第2コンタクト孔4c内で当該第2熱電変換部材3Bの+X方向端部に接続されている。
【0037】
第5配線部材7Eは、最も+Y方向側にある第2熱電変換部材3Bの-X方向端部を、第2電極6に接続する。具体的には、第2配線部材7Eは、平面視において、最も+Y方向側にある第2熱電変換部材3Bの-X方向端部上から+X方向に向かって斜め+Y方向に延びた帯状の第1直線部7E1と、第1直線部7E1の+X方向端から+Y方向に延びた帯状の第2直線部7E2とを含む。
【0038】
この実施形態では、第5配線部材7Eは第2電極6と一体的に形成されており、第5配線部材7E(第2直線部7E2)の+Y方向側端は第2電極6に繋がっている。第1直線部7E1の-Y方向側端部の一部は、最も+Y方向側の第2熱電変換部材3Bの+X方向端部上にある第2コンタクト孔4c内に入り込み、当該第2コンタクト孔4c内で当該第2熱電変換部材3Bの+X方向端部に接続されている。
【0039】
第1電極5、第2電極6および配線7は、Al、Ti、Cu、Au、Pt等からなる。第1電極5、第2電極6および配線7の厚さは、0.05μm~5μm程度であってもよい。
第2絶縁膜8は、平面視において、第1絶縁膜4の開口部4aが存在する領域およびその周辺部を含むY方向に長い矩形領域において、基板2、熱電変換部材3、第1絶縁膜4および配線7の露出面を覆うように形成されている。
【0040】
具体的には、第2絶縁膜8は、第1絶縁膜4の開口部4aの側面および底面(基板2の第1主面2a)と、第1絶縁膜4上面における開口部4aの周縁部と、開口部4aの側面に露出している各第1熱電変換部材3Aの+X方向側端面および各第2熱電変換部材3Bの-X方向側端面を覆っている。さらに、第2絶縁膜8は、各第2配線部材7Bの+X方向側端部の端面、側面および上面と、第3配線部材7Cの第1直線部7C1の+X方向側端部の端面、側面および上面と、第4配線部材7Dの-X方向側端部の端面、側面および上面と、第5配線部材7Eの第1直線部7E1の-X方向側端部の端面、側面および上面とを覆っている。
【0041】
第2絶縁膜8は、基板2、熱電変換部材3および配線7と金属膜10とを電気的に絶縁しつつ、金属膜10と第1および第2熱電変換部材3A,3Bの低温側端部とを熱的に接続するために設けられている。そこで、第2絶縁膜8は、以下のような特徴を有することが好ましい。
第2絶縁膜8は、平面視において、Y方向に長い矩形状である。平面視において、第1熱電変換部材3Aの+X方向端から第2絶縁膜8の-X方向側縁までの距離d1は、1μm以上であることが好ましい。同様に、第2熱電変換部材3Bの-X方向側端から第2絶縁膜8の+X方向側縁までの距離d2は、1μm以上であることが好ましい。
【0042】
第2絶縁膜8の+Y方向側縁は、平面視において、最も+Y方向側にある熱電変換部材3(この実施形態では最も+Y方向側にある第1熱電変換部材3A)の+Y方向側縁のY方向位置と、電極5,6の-Y方向側縁のY方向位置との間に位置することが好ましい。第2絶縁膜8の+Y方向側縁は、平面視において、最も+Y方向側にある熱電変換部材3の+Y方向側縁のY方向位置と、凹部2cの+Y方向側の辺との間に位置することがより好ましい。基板2における凹部2cの周壁は、後述するように発電装置としての使用時に高温となるので、基板2における凹部2cの周壁上に第2絶縁膜8が形成されない方が好ましいからである。
【0043】
同様な理由により、第2絶縁膜8の-Y方向側縁は、平面視において、最も-Y方向側にある熱電変換部材3(この実施形態では最も-Y方向側にある第2熱電変換部材3B)の-Y方向側縁のY方向位置と、凹部2cの-Y方向側の辺との間に位置することがより好ましい。
第2絶縁膜8は、第1絶縁膜4および第3絶縁膜9よりも熱伝導率が高い絶縁材料からなることが好ましい。この実施形態では、第2絶縁膜8は、第1絶縁膜4および第2絶縁膜8よりも熱伝導率が高い絶縁材料からなる。第2絶縁膜8は、例えば、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化シリコン等からなる。第2絶縁膜の厚さは、0.01μm~1μm程度であってもよい。第2絶縁膜8は、本開示における「絶縁体」の一例である。
【0044】
第3絶縁膜9は、第1絶縁膜4上に、配線7の大部分を覆うように形成されている。具体的には、第3絶縁膜9は、平面視において、第1絶縁膜4の表面における電極5、6が形成されている+Y方向側寄りの領域と、第2絶縁膜8が形成されている領域とを除く領域に形成されている。第3絶縁膜9は、平面視において、四角形状であり、X方向中央部に、第2絶縁膜8を露出させる開口部9aが形成されている。第3絶縁膜9の+Y方向端は、平面視において、電極5,6の-Y方向端のY方向位置と、凹部3cの+Y方向端のY方向位置との間に位置している。
【0045】
第3絶縁膜9は、素子面直方向の熱流を抑制するために設けられている。そこで、第3絶縁膜9は、次のような特徴を有していることが好ましい。
第3絶縁膜9は、第1熱電変換部材3Aおよび第2熱電変換部材3Bの少なくとも高温側端部を覆っていることが好ましい。この実施形態では、第1熱電変換部材3Aおよび第2熱電変換部材3Bのうち、低温側端部以下の部分は、第3絶縁膜9によって覆われている。
【0046】
第3絶縁膜9の-Y方向側縁は、平面視において、最も-Y方向側にある熱電変換部材3(この実施形態では最も-Y方向側にある第2熱電変換部材3B)の-Y方向端よりも-Y方向側にあることが好ましい。
第3絶縁膜9は、第2絶縁膜8よりも熱伝導率が低い絶縁材料からなることが好ましい。第3絶縁膜9は、例えば、ポリイミド、エポキシ樹脂等からなる。第3絶縁膜9の厚さは、0.1μm~100μm程度であってもよい。第1絶縁膜4または第1絶縁膜4および第3絶縁膜9は、本開示における「絶縁層」の一例である。
【0047】
金属膜10は、各第1熱電変換部材3Aの+X方向側端部および各第2熱電変換部材3Bの-X方向側端部の熱を効率よく放熱するとともに熱電変換素子1の機械的強度を高めるために設けられている。この実施形態では、金属膜10は、平面視において、基板2の4辺と平行な4辺を有する四角形状である。この実施形態では、金属膜10は、各第1熱電変換部材3Aおよび各第2熱電変換部材3Bの少なくとも低温側端部を含む凹部3cの中央領域において、第2絶縁膜8および第3絶縁膜9の露出面を覆うように形成されている。
【0048】
金属膜10の-X方向側縁と第1熱電変換部材3Aの+X方向側端との間隔は1μm以上であることが好ましく、50μm以上150μm以下が好ましい。言い換えれば、第1熱電変換部材3Aの低温側端を金属膜10が覆っている部分のX方向長さは、第1熱電変換部材3AのX方向長さの1/7以上3/7以下であることが好ましい。
同様に、第2熱電変換部材3Bの-X方向側端と金属膜10の+X方向側縁との間隔は1μm以上であることが好ましく、50μm以上150μm以下が好ましい。言い換えれば、第2熱電変換部材3Bの低温側端を金属膜10が覆っている部分のX方向長さは、第2熱電変換部材3BのX方向長さの1/7以上3/7以下であることが好ましい。
【0049】
金属膜10の+Y方向側縁は、平面視において、最も+Y方向側にある熱電変換部材3(この実施形態では最も+Y方向側にある第1熱電変換部材3A)の+Y方向端のY方向位置と、凹部3cの+Y方向端のY方向位置との間に位置していることが好ましい。基板2における凹部2cの周壁は、後述するように発電装置として使用時に高温となるので、基板2における凹部2cの周壁上に金属膜10が形成されない方が好ましいからである。
【0050】
同様な理由により、金属膜10の-Y方向側縁は、平面視において、最も-Y方向側にある熱電変換部材3(この実施形態では最も-Y方向側にある第2熱電変換部材3B)の-Y方向端と、凹部3cの-Y方向端のY方向位置との間に位置していることが好ましい。
金属膜10は、平面視において、凹部3cの内側に配置されていることが好ましい。
【0051】
金属膜10は、第3絶縁膜9よりも熱伝導率の高い材料からなる。金属膜10は、例えば、金(Au)、銅(Cu)等の金属からなる。金属膜10の厚さは、0.1μm~100μm程度であってもよい。
この熱電変換素子1を発電装置として使用する場合には、素子面直方向(熱電変換素子1の厚さ方向)の温度差が熱電変換素子1に与えられる。例えば、熱電変換素子1の下面側が温められ、熱電変換素子1の上面側が冷やされることにより、熱電変換素子1に素子面直方向の温度差が与えられる。言い換えれば、熱電変換素子1の下面側に高温部が配置され、熱電変換素子1の上面側に低温部が配置されることにより、熱電変換素子1に素子面直方向の温度差が与えられる。
【0052】
熱電変換素子1の下面側の高温の熱は、凹部2c内の空気よりも熱伝導率の高い第1基板21を伝導して、第2基板22の周縁部に伝達される。第2基板22の周縁部に伝達された高温の熱は、主として第2基板22の周縁部を伝導して、第1熱電変換部材3Aの-X方向端部および第2熱電変換部材3Bの+X方向端部に伝達される。
つまり、第1熱電変換部材3Aの-X方向端部および第2熱電変換部材3Bの+X方向端部は、第2基板22の周縁部および第1基板21を介して、熱電変換素子1の下面側の高温部に熱的に接続される。
【0053】
一方、第1熱電変換部材3Aの+X方向端部および第2熱電変換部材3Bの-X方向端部は、第2絶縁膜8および金属膜10を介して、熱電変換素子1の上面側の低温部に熱的に接続される。
これにより、第1熱電変換部材3Aの-X方向端部および第2熱電変換部材3Bの+X方向端部が温められ、第1熱電変換部材3Aの+X方向端部および第2熱電変換部材3Bの-X方向端部が冷やされる。つまり、熱電変換素子1では、素子面直方向の温度差を用いて素子面内方向に温度差を与えることができるようになる。これにより、ゼーベック効果により、各第1熱電変換部材3Aの両端間に電位差(起電力)が発生するとともに、各第2熱電変換部材3Bの両端間に電位差(起電力)が発生する。
【0054】
複数の第1熱電変換部材3Aと複数の第2熱電変換部材3Bとは、配線7によって直列接続されているので、各熱電変換部材3に生じた起電力の総和が熱電変換素子1の起電力として第1電極5と第2電極6との間に現れる。これにより、発電が可能となる。
熱電変換素子1を加熱装置または冷却装置として使用する場合には、熱電変換素子1の第1電極5と第2電極6との間に電圧を印加する。そうすると、ペルチェ効果によって、各第1熱電変換部材3Aの両端間に温度差が発生するとともにおよび各第2熱電変換部材3Bの両端間に温度差が発生する。例えば、各第1熱電変換部材3Aの-X方向端部および各第2熱電変換部材3Bの+X方向端部が高温となり、各第1熱電変換部材3Aの+X方向端部および各第2熱電変換部材3Bの-X方向端部が低温となる。
【0055】
第1熱電変換部材3Aの-X方向端部および第2熱電変換部材3Bの+X方向端部は、熱電変換素子1の下面に熱的に接続され、第1熱電変換部材3Aの+X方向端部および第2熱電変換部材3Bの-X方向端部は、熱電変換素子1の上面に熱的に接続されている。したがって、熱電変換素子1の第1電極5と第2電極6との間に電圧を印加することによって、熱電変換素子1に素子面直方向の温度差を発生させることができる。
【0056】
本実施形態によれば、素子面直方向に温度差がある環境おいて使用でき、かつ小型で高性能の熱電変換素子を実現することができる。
図5A図5Fは、熱電変換素子1の製造工程の一例を示す平面図である。図6A図6Hは、熱電変換素子1の製造工程の一例を示す断面図であり、図2に対応する切断面を示す。
【0057】
まず、図5Aおよび図6Aに示すように、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法、スパッタ法等によって、第1基板21(例えばSi基板)上に第2基板22(例えばAiN基板)が形成される。これにより、第1基板21および第2基板22からなり、第1主面2aおよび第2主面2bを有する基板2が得られる。その後、MOCVD法、スパッタ法等によって、基板2の第1主面2a上に、熱電変換部材3の材料である熱電変換材料層41が形成される。
【0058】
次に、図5Bおよび図6Bに示すように、微細加工プロセスによって、熱電変換材料層41がパターニングされる。これにより、複数の帯状の熱電変換部材3が形成される。複数の熱電変換部材3は、複数の第1熱電変換部材3Aおよび複数の第2熱電変換部材3Bを含む。微細加工プロセスは、フォトリソグラフィ、エッチング、蒸着、リフトオフ等の組合せによって行われる(以下、同じ)。
【0059】
次に、図5Cおよび図6Cに示すように、CVD法、スパッタ法、蒸着法等によって、基板2の第1主面2a上に、各熱電変換部材3を覆うように第1絶縁膜4(例えばSiN)が形成される。フォトリソグラフィおよびエッチングによって、開口部4a、第1コンタクト孔4bおよび第2コンタクト孔4cが形成される。
この後、第1絶縁膜4上に各熱電変換部材3を覆うように例えばAlからなる配線・電極材料膜が形成される。そして、微細加工プロセスによって、配線・電極材料膜がパターニングされる。これにより、第1~第5配線部材7A~7Eを含む配線7と、第1電極5と、第2電極6とが形成される。
【0060】
次に、図5Dおよび図6Dに示すように、平面視において、第1絶縁膜4の開口部4aが存在する領域およびその周辺部を含むY方向に長い矩形領域において、基板2、熱電変換部材3、第1絶縁膜4および配線7の露出面を覆うように、第2絶縁膜8が形成される。第2絶縁膜8は、CVD、スパッタリング、蒸着等によって形成される。図5Dでは、明瞭化のため、第2絶縁膜8が形成されている領域にはドットを付与している。
【0061】
次に、図5Eおよび図6Eに示すように、第1絶縁膜4上に、配線7の大部分を覆うように第3絶縁膜9が形成される。第3絶縁膜9がポリイミドであるとすると、第3絶縁膜9は、例えば次のようにして形成される。すなわち、スピンコーターによってポリイミド材料を第1絶縁膜4上に塗布した後、焼成を行うことにより、ポリイミド膜を形成する。この後、フォトリソグラフィによって、ポリイミド膜をパターニングする。これにより、第2絶縁膜8を露出させる開口部9aを有する第3絶縁膜9が形成される。
【0062】
次に、図5Fおよび図6Fに示すように、第2絶縁膜8の露出面と、第3絶縁膜9の開口部9aの側面と、第3絶縁膜9上面における開口部9aの周辺部を覆うように、金属膜10が形成される。金属膜10は、蒸着法、原子堆積法、電解メッキ法、無電解メッキ法等によって形成される。
最後に、基板2に凹部2cを形成する。凹部2cは、例えば、メタルアシストケミカルエッチングによって形成される。メタルアシストケミカルエッチングでは、図6Gに示すように、基板2の第2主面2bにおける凹部2cを形成すべき領域に金属触媒42が形成される。金属触媒42は、例えば、金または白金である。
【0063】
そして、半製品がエッチング液に浸漬される。エッチング液は、例えば、フッ酸と過酸化水素水との混合液である。これにより、図6Hに示すように、第1基板21がエッチングされる。この際、第2基板22は、エッチングストッパ層として機能する。
第1基板21のエッチングが完了した後、王水を用いて金属触媒が除去される。これにより、基板2に凹部2cが形成される。これにより、図1および図2に示される熱電変換素子1が得られる。
【0064】
本発明はさらに他の形態で実施することもできる。例えば、前述の実施形態では、基板2は、第1基板21と第2基板22とから構成されているが、基板2は、第1基板21のみから構成されもよい。この場合、キャビティ2cは、基板2(第1基板21)を厚さ方向に貫通する貫通孔であってもよいし、基板2(第1基板21)の第2主面2bから基板2(第1基板21)の厚さ中まで掘り下げられた凹部であってもよい。
【0065】
本発明の実施形態について詳細に説明してきたが、これらは本発明の技術的内容を明らかにするために用いられた具体例に過ぎず、本発明はこれらの具体例に限定して解釈されるべきではなく、本発明の範囲は添付の請求の範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0066】
1 熱電変換素子
2 基板
2a 第1主面
2b 第2主面
2c 凹部(キャビティ)
3 熱電変換部材
3A 第1熱電変換部材
3B 第2熱電変換部材
4 第1絶縁膜
4a 開口部
4b 第1コンタクト孔
4c 第2コンタクト孔
5 第1電極
6 第2電極
7 配線
7A 第1配線部材
7B 第2配線部材
7C 第3配線部材
7C1 第1直線部
7C2 第2直線部
7C3 第3直線部
7C4 第4直線部
7D 第4配線部材
7E 第5配線部材
7E1 第1直線部
7E2 第2直線部
8 第2絶縁膜
9 第3絶縁膜
9a 開口部
10 金属膜
21 第1基板
22 第2基板
41 熱電変換材料層
42 金属触媒
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H