(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022148086
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】下地材用固定金具
(51)【国際特許分類】
E04F 13/08 20060101AFI20220929BHJP
E04F 13/14 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
E04F13/08 101T
E04F13/14 103F
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021049615
(22)【出願日】2021-03-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】500332984
【氏名又は名称】株式会社ヒロコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001922
【氏名又は名称】弁理士法人日峯国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田島 洋
(72)【発明者】
【氏名】小貫 勝代
【テーマコード(参考)】
2E110
【Fターム(参考)】
2E110AA48
2E110AA61
2E110AB04
2E110AB22
2E110BA12
2E110CA07
2E110CA13
2E110CC02
2E110CC25
2E110DA08
2E110DA16
2E110DC36
2E110GA33Y
2E110GA34W
2E110GB01Y
2E110GB13W
2E110GB23Y
2E110GB28W
(57)【要約】
【課題】中空部を有する下地材に穿孔を空けて支持金具を固定する場合に下地材が劣化するのを防止する。
【解決手段】下地材用固定金具は、中空部を有する下地材と、先端に回動可能なハンガーが設けられ前記下地材の裏面まで貫通させず表面から前記中空部まで空けた穿孔にアンカー軸が挿通されるハンガーアンカーと、前記ハンガーアンカーに通してナットで留めることで前記下地材の表面に固定される支持金具と、を有し、前記ハンガーを回動させて前記中空部に係止させた前記ハンガーアンカーの表面側に突出するアンカーボルトを通して前記アンカー軸と前記穿孔との間に介在させる管状の補強材を設ける、ことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空部を有する下地材と、
先端に回動可能なハンガーが設けられ前記下地材の裏面まで貫通させず表面から前記中空部まで空けた穿孔にアンカー軸が挿通されるハンガーアンカーと、
前記ハンガーアンカーに通してナットで留めることで前記下地材の表面に固定される支持金具と、を有し、
前記ハンガーを回動させて前記中空部に係止させた前記ハンガーアンカーの表面側に突出するアンカーボルトを通して前記アンカー軸と前記穿孔との間に介在させる管状の補強材を設ける、
ことを特徴とする下地材用固定金具。
【請求項2】
前記ハンガーアンカーは、前記アンカーボルトに前記ナットの螺合を阻害しない幅で且つ後端側をハンマーで叩落可能に径を細くしたスリットを有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の下地材用固定金具。
【請求項3】
前記支持金具は、前記穿孔と同径の留孔が空けられ、前記ハンガーで押さえられた前記補強材が表面側に出て前記留孔に嵌合される、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の下地材用固定金具。
【請求項4】
前記補強材は、前記アンカーボルトが通過可能な内径を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一に記載の下地材用固定金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空部を有する下地材にアンカーボルトを固定するための下地材用固定金具に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の外壁は、下地材にタイルや石材などを貼り付けることで仕上げられる。仕上方法としては、下地材にモルタルで直接タイル等を貼着する湿式工法や、下地材に固定した支持金具にタイル等を係止して接着剤で貼着する乾式工法などがある。下地材としては、PC(プレキャストコンクリート)板や、ALC(高温高圧蒸気養生された軽量気泡コンクリート)パネルや、ECP(押出成形セメント板)などがある。
【0003】
乾式工法では、例えば、下地材に縦長の支持金具を横方向に間欠的に固定し、そこに横長の支持金具を縦方向に間欠的に固定することで、タイル等を係止する手段を設けている。下地材として中空部を有するECPを用いてアンカーボルトを固定する場合、正面側から通したアンカーボルトを中空部で固定すれば、背面側に貫通させなくて良いが、その反面、背面側であればアンカーボルトを留めやすいが、中空部だと留めにくいという問題がある。
【0004】
特許文献1に記載されているように、中空セメント板の中空部に差し込んだナットを手で押さえて穿孔と位置合わせしながらボルトをねじ込まなければならないという課題を解決した中空セメント板用取付金具の発明も開示されている。また、アンカーボルトの先端に回動可能なハンガーを取り付け、水平にしたハンガーを穿孔から中空部に通すとハンガーが垂直に倒れて中空部内で係止可能となるハンガーアンカーという部材もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ハンガーアンカーの場合、下地材に中空部までハンガーを通すのに必要な大きさの穿孔を空けるとアンカー軸と穿孔の間に隙間が生じ、アンカー軸がぐらつくと共に、穿孔内でアンカー軸を一点で受けた部分に荷重が掛かりボロボロに破壊されてしまう。
【0007】
また、ハンガーを中空部内まで通すためにアンカー軸を長くする必要があり、手前に引いてハンガーを係止した後にアンカー軸が突出して邪魔となる。そのため、余分なアンカー軸を電動工具などで切断しようとすると、火花が発生して火災の原因となるおそれがある。
【0008】
そこで、本発明は、中空部を有する下地材に穿孔を空けて支持金具を固定する場合に下地材が劣化するのを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明である下地材用固定金具は、中空部を有する下地材と、先端に回動可能なハンガーが設けられ前記下地材の裏面まで貫通させず表面から前記中空部まで空けた穿孔にアンカー軸が挿通されるハンガーアンカーと、前記ハンガーアンカーに通してナットで留めることで前記下地材の表面に固定される支持金具と、を有し、前記ハンガーを回動させて前記中空部に係止させた前記ハンガーアンカーの表面側に突出するアンカーボルトを通して前記アンカー軸と前記穿孔との間に介在させる管状の補強材を設ける、ことを特徴とする。
【0010】
また、前記下地材用固定金具において、前記ハンガーアンカーは、前記アンカーボルトに前記ナットの螺合を阻害しない幅で且つ後端側をハンマーで叩落可能に径を細くしたスリットを有する、ことを特徴とする。
【0011】
また、前記下地材用固定金具において、前記支持金具は、前記穿孔と同径の留孔が空けられ、前記ハンガーで押さえられた前記補強材が表面側に出て前記留孔に嵌合される、ことを特徴とする。
【0012】
また、前記下地材用固定金具において、前記補強材は、前記アンカーボルトが通過可能な内径を有する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、中空部を有する下地材に穿孔を空けて支持金具を固定する場合に下地材が劣化するのを防止することができる。下地材に中空部までハンガーアンカーを通すのに必要な大きさの穿孔を空けてもアンカー軸と穿孔の間を補強材で埋めることで、アンカー軸のぐらつきを無くし、穿孔内でアンカー軸の荷重が一点に集中しないようにすることができる。支持金具も補強材に保持されて安定して固定される。また、突出した余分なアンカー軸をハンマー等で叩くだけで簡単に途中から折ることができるので、電動工具などで切断しようとして火花が発生することも無くなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明である下地材用固定金具によって支持金具が取り付けられた下地材を示す平面図である。
【
図2】本発明である下地材用固定金具のハンガーアンカーを示す斜視図である。
【
図3】本発明である下地材用固定金具のハンガーを水平に延ばした状態を示す正面図、平面図及び側面図である。
【
図4】本発明である下地材用固定金具のハンガーを垂直に倒した状態を示す平面図、正面図及び側面図である。
【
図5】本発明である下地材用固定金具を下地材に固定する過程を説明する側面図である。
【
図6】本発明である下地材用固定金具を下地材に固定する過程を説明する側面図である。
【
図7】本発明である下地材用固定金具を下地材に固定する過程を説明する側面図である。
【
図8】本発明である下地材用固定金具を下地材に固定する過程を説明する側面図である。
【
図9】本発明である下地材用固定金具を下地材に固定する過程を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【実施例0016】
まず、本発明である下地材用固定金具について説明する。
図1は、下地材用固定金具によって支持金具が取り付けられた下地材を示す平面図である。
図2~4は、下地材用固定金具のハンガーアンカーの状態を示す斜視図、平面図、正面図及び側面図である。
図5は、下地材用固定金具の補強材を示す斜視図である。
【0017】
なお、表面は、下地材に支持金具が取り付けられてタイル等が乾式工法で貼着される側(正面側)とし、裏面は、下地材が建物の躯体などに固定される側(背面側)とする。また、先端は、ハンガーアンカーが下地材の内部に挿通される側(奥側)とし、後端は、ハンガーアンカーが下地材の表面に突出する側(手前側)とする。
【0018】
図1に示すように、下地材用固定金具は、中空部110を有する下地材100、先端に回動可能なハンガー240が設けられ下地材100の裏面まで貫通させず表面から中空部110まで空けた穿孔120にアンカー軸210が挿通されるハンガーアンカー200、及びハンガーアンカー200に通してナット400で留めることで下地材100の表面に固定される支持金具300等を有する。
【0019】
下地材100は、例えば、上下に貫通する中空部110が複数間欠的に空けられたECP(押出成形セメント板)等がある。外壁の仕上げでは、下地材100に支持金具300を固定し、タイル等を貼着する乾式工法などの方法が採られる。
【0020】
ハンガーアンカー200は、支持金具300を下地材100に固定するために下地材100に打ち込まれる。下地材100には中空部110が存在するので、ハンガーアンカー200を下地材100の表面から裏面まで貫通させず、表面から中空部110まで穿孔120を空ければ良い。
【0021】
下地材100の裏面まで貫通していればナット等で留めやすいが、中空部110だと上面又は下面から届かない位置だとナット等で留めにくいので、アンカー軸210の先端に設けたハンガー240を中空部110内に引っ掛ける。
【0022】
支持金具300は、タイル等を係止、又は他の金具などを係止するために下地材100に固定される部材である。ハンガーアンカー200を支持金具300及び下地材100に通し、ワッシャ等を介してナット400で留めれば良い。
【0023】
図2~4に示すように、ハンガーアンカー200は、アンカー軸210の先端に回動軸230を介して回動可能にハンガー240が取り付けられる。また、アンカー軸210の後端は螺旋状のネジ山が形成されたアンカーボルト220が連設される。
【0024】
アンカーボルト220は、ナット等を螺合させることが可能である。なお、アンカーボルト220の中間部には径を細くしたスリット250が形成される。スリット250は、ナット等の螺合を阻害しない狭い幅で設けられる。アンカーボルト220は、スリット250を超えてナット等を締める又は緩めることが可能である。
【0025】
ハンガー240は、上面とその両側を下垂させた断面が逆凹状の部材をアンカー軸210の上に被せたものである。下垂させた一方から他方まで中間部を渡すように且つアンカー軸210の先端側を貫通させて回動軸230を通す。
【0026】
図2(a)及び
図3に示すように、ハンガー240は、アンカー軸210に対して水平状態にすることが可能で、
図2(b)及び
図4に示すように、自重により90度回動して垂直状態になる。
【0027】
ハンガー240の上面は、回動時にアンカー軸210と干渉しないように中間部の一部を空けても良い。なお、ハンガー240を水平状態にしたときに、又は垂直状態にしたときに、それ以上に回動しないように上支え270で押さえても良い。
【0028】
次に、下地材用固定金具の使用方法について説明する。
図5~8は、下地材用固定金具を下地材に固定する過程を説明する側面図である。
【0029】
図5(a)に示すように、支持金具300を留めるためのハンガーアンカー200を下地材100に取り付けるにあたり、まず、下地材100に穿孔120を空ける。穿孔120は、少なくともハンガーアンカー200を通過させる径が必要となる。ハンガーアンカー200を通過させる支持金具300の留孔と同径にすれば良く、下地材100の表面から中空部110まで貫通させれば良い。
【0030】
図5(b)に示すように、ハンガーアンカー200のハンガー240を水平状態にして、下地材100の表面側から穿孔120に挿通する。ハンガー240が全て中空部110に到達すると、回動軸230を軸としてハンガー240の先端側が下方に回動して垂直状態になる。
【0031】
図6(c)に示すように、ハンガー240が垂直状態になったら、中空部110の内壁に接するまでハンガーアンカー200を手前側に引いて、ハンガー240が穿孔120から抜けないように引っ掛ける。
【0032】
図6(d)に示すように、下地材用固定金具は、ハンガー240を回動させて中空部110に係止させたハンガーアンカー200の表面側に突出するアンカーボルト220を通してアンカー軸210と穿孔120との間に介在させる管状の補強材500を設ける(
図2(c)参照)。
【0033】
補強材500は、穿孔120と同じ外径を有し、アンカーボルト220のネジ山が引っ掛からず通過可能な内径を有する。また、補強材500は、穿孔120の深さ(下地材100の表面から中空部110までの厚さ)よりも長く、先端側がハンガー240で押さえられることで、後端側が下地材100の表面から突出する。
【0034】
図7(e)に示すように、下地材100の穿孔120と、アンカー軸210及びアンカーボルト220との隙間が、補強材500によって埋められ、ハンガーアンカー200がぐらつかないように保持される。
【0035】
支持金具300には穿孔120と同径の留孔310が空けられており、ハンガー240で押さえられた補強材500の後端側が下地材100の表面から出ているので、支持金具300の留孔310に補強材500を嵌め込むように取り付ければ良い。なお、補強材500は、支持金具300の表面より出たときは、ワッシャ等で調整しても良い。
【0036】
図7(f)に示すように、アンカーボルト220にナット400を螺合させる。アンカーボルト220にはスリット250が空いているが、スリット250を超えて螺合を継続可能にネジ山が形成される。
【0037】
図8(g)に示すように、アンカーボルト220に螺合させたナット400を締めてハンガー240と挟み込むことにより、下地材100の表面に支持金具300が固定される。なお、アンカーボルト220のスリット250は、ナット400より手前側にある必要がある。
【0038】
図8(h)に示すように、アンカーボルト220の後端側をハンマー等で叩くことにより、叩落部260を叩き落とす。アンカーボルト220は、スリット250の位置で径が細くなっているので、そこで切断される。
【0039】
アンカーボルト220が下地材100から長く突出していると邪魔となるが、電動カッターなどの工具を使用することなく、叩くだけでスリット250の位置から折れ、容易にアンカーボルト220が短くなる。
本発明によれば、中空部を有する下地材に穿孔を空けて支持金具を固定する場合に下地材が劣化するのを防止することができる。下地材に中空部までハンガーアンカーを通すのに必要な大きさの穿孔を空けてもアンカー軸と穿孔の間を補強材で埋めることで、アンカー軸のぐらつきを無くし、穿孔内でアンカー軸の荷重が一点に集中しないようにすることができる。支持金具も補強材に保持されて安定して固定される。また、突出した余分なアンカー軸をハンマー等で叩くだけで簡単に途中から折ることができるので、電動工具などで切断しようとして火花が発生することも無くなる。
以上、本発明の実施例を述べたが、これらに限定されるものではない。例えば、ECPだけでなく、背面側で作業が困難な壁面にアンカーを通して金具を取り付ける場合にも適用することができる。