(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022148117
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】保護カバー、光デバイス及び保護カバーの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/02 20060101AFI20220929BHJP
H01S 5/022 20210101ALI20220929BHJP
【FI】
H01L23/02 F
H01L23/02 J
H01S5/022
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021049669
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】592205159
【氏名又は名称】山村フォトニクス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390001535
【氏名又は名称】旭栄研磨加工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100163212
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156535
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】中山 正彦
(72)【発明者】
【氏名】生沼 貴久
(72)【発明者】
【氏名】谷口 正尚
(72)【発明者】
【氏名】木元 航
(72)【発明者】
【氏名】平林 三記央
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173MC15
5F173ME02
5F173ME22
5F173ME31
5F173ME44
(57)【要約】
【課題】透過体の透過性が良好な保護カバー、光デバイス及び保護カバーの製造方法を提供する。
【解決手段】開口部63を有する板状の金属製の枠体6と、光透過性の非晶材または結晶材からなる透過体7と、を備え、光素子2が搭載されたベース3に固定される蓋状の保護カバー5であって、透過体7は、その外側面が開口部63を構成する枠体の内側面6aに全周に亘り固定されており、保護カバー5のベース3側の面5bは、透過体7と枠体6とが面一の研磨面に形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する板状の金属製の枠体と、光透過性の非晶材または結晶材からなる透過体と、を備え、光素子が搭載されたベースに固定される蓋状の保護カバーであって、
前記透過体は、その外側面が前記開口部を構成する前記枠体の内側面に全周に亘り固定されており、
前記保護カバーの前記ベース側の面は、前記透過体と前記枠体とが面一の研磨面に形成されていることを特徴とする保護カバー。
【請求項2】
前記透過体は、前記枠体の前記ベースとは反対側の面を覆って面一に延びていることを特徴とする請求項1に記載の保護カバー。
【請求項3】
前記透過体は、前記枠体の外側面を覆ってさらに延びていることを特徴とする請求項2に記載の保護カバー。
【請求項4】
前記保護カバーの前記ベース側の面は、表面粗度がRa≦100nmとなっていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の保護カバー。
【請求項5】
前記保護カバーの前記ベース側の面は、うねりが10λ以下となっていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の保護カバー。
【請求項6】
光素子と、前記光素子が搭載されたベースと、前記光素子を覆うように前記ベースに固定される請求項1ないし5のいずれかに記載の保護カバーと、から構成されることを特徴とする光デバイス。
【請求項7】
開口部を有する金属製の枠体と、光透過性の非晶材または結晶材からなる透過体と、を備え、光素子が搭載されたベースに固定される蓋状の保護カバーの製造方法であって、
溶融された透過部品に対して開口部を有する枠部品を埋設させて固定する固定ステップを有していることを特徴とする保護カバーの製造方法。
【請求項8】
前記枠部品の前記ベース側の面を研磨するステップを有していることを特徴とする請求項7に記載の保護カバーの製造方法。
【請求項9】
前記枠部品の前記ベース側の面と前記透過部品の前記ベース側の面を同一の研磨手段により面一に研磨することを特徴とする請求項8に記載の保護カバーの製造方法。
【請求項10】
前記固定ステップは複数の前記枠部品を前記透過部品に埋設させるものであって、
前記透過部品を切断し前記各保護カバーに切断するステップを有していることを特徴とする請求項7ないし9のいずれかに記載の保護カバーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光透過性の非晶材または結晶材を用いた保護カバー、光デバイス及び保護カバーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
赤外光、可視光、紫外光等を発光ないし受光する光デバイスには、LED(Light Emitting Diode)、LD(Laser Diode)等の光デバイス用素子(単に光素子ともいう。)が用いられており、これら光素子は蓋状の保護カバーにより覆われて外部から保護されている。保護カバーは、裏表に貫通する開口部を備えた金属製の枠体と、窓部を塞ぐように封着される光透過性を有する透過体(非晶材または結晶材)により構成されている。透過体は、加熱により溶融させた低融点ガラスを溶材として枠体に封着されることが一般的に行われている。
【0003】
例えば、特許文献1の保護カバーは、中央部に上下に貫通する開口部を備えた平板状の枠体と、開口部を塞ぐように枠体に固定される透過体と、を備え、外部からの光を受光する光素子である圧電振動片が搭載され光素子を囲繞する断面コ字状のベースの上端に固定され、光素子を保護している。透過体は、その外縁下面が枠体の内縁上面に低融点ガラスを溶材として封着されている。また、透過体の外縁は枠体の外縁よりも小さく形成されており、保護カバーは、枠体の外縁を利用してシーム溶接によりベースの上端に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-281545号公報(第5頁、第1図)
【0005】
特許文献1のような保護カバーにあっては、透過体と枠体とが上下に重なって封着されており、透過体と枠体との間に段差が形成されているため、封着時に低融点ガラスが該段差箇所まで流動し、すなわち透過体の有効エリア側に流れることがあるため、有効透過領域が狭くなることがあった。また、透過体と枠体との境界部分に残存する低融点ガラスの表面にウィスカーが発生し、透過体の透過性に影響を与える虞があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、透過体の透過性が良好な保護カバー、光デバイス及び保護カバーの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の保護カバーは、
開口部を有する板状の金属製の枠体と、光透過性の非晶材または結晶材からなる透過体と、を備え、光素子が搭載されたベースに固定される蓋状の保護カバーであって、
前記透過体は、その外側面が前記開口部を構成する前記枠体の内側面に全周に亘り固定されており、
前記保護カバーの前記ベース側の面は、前記透過体と前記枠体とが面一の研磨面に形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、保護カバーのベース側の面が透過体と枠体とに亘って面一の研磨面に形成されているので、広い有効透過領域を確保しつつ透過体の面精度が高いことから正確な入射光や均一な透過光を得ることができる。また、保護カバーのベース側の面における枠体と透過体との境界部分に凹凸が形成されていないことから、凹凸にゴミが溜まりにくくなっている。
【0008】
前記透過体は、前記枠体の前記ベースとは反対側の面を覆って面一に延びていることを特徴としている。
この特徴によれば、枠体のベースとは反対側の面は透過体により覆われているので、枠体と透過体との境界部分に凹凸が形成されることを確実に防止できるとともに、保護カバーの表面側は透過体のみが露出しており一層ごみの影響を受けにくい。また、透過体と枠体との接触面積が大きくなるため、透過体と枠体との接合強度が高い。
【0009】
前記透過体は、前記枠体の外側面を覆ってさらに延びていることを特徴としている。
この特徴によれば、枠体の内側面、ベースとは反対側の面、外側面の三面が透過体により囲われるので、枠体の熱変形を規制できる。
【0010】
前記保護カバーの前記ベース側の面は、表面粗度がRa≦100nmとなっていることを特徴としている。
この特徴によれば、保護カバーのベース側の面が平滑であり、透過体の透過性が良好である。
【0011】
前記保護カバーの前記ベース側の面は、うねりが10λ以下となっていることを特徴としている。
この特徴によれば、保護カバーのベース側の面が平滑であり、透過体の透過性が良好である。
【0012】
光デバイスは、光素子と、前記光素子が搭載されたベースと、前記光素子を覆うように前記ベースに固定される前記保護カバーと、から構成されることを特徴としている。
この特徴によれば、ベースに搭載された光素子が保護カバーにより覆われるので、光素子を保護することができる。また、保護カバーのベース側の面が透過体と枠体とに亘って面一の研磨面に形成されているので、広い有効透過領域を確保しつつ透過体の面精度が高いことから正確な入射光や均一な透過光を得ることができる。また、保護カバーのベース側の面における枠体と透過体との境界部分に凹凸が形成されていないことから、凹凸にゴミが溜まりにくくなっている。
【0013】
開口部を有する金属製の枠体と、光透過性の非晶材または結晶材からなる透過体と、を備え、光素子が搭載されたベースに固定される蓋状の保護カバーの製造方法であって、
溶融された透過部品に対して開口部を有する枠部品を埋設させて固定する固定ステップを有していることを特徴としている。
この特徴によれば、溶融された透過部品に対して枠部品を埋設させたことにより、開口部を構成する枠部品の内側面と透過部品の外側面との間に微小な隙間が形成されることが防止される。
【0014】
前記枠部品の前記ベース側の面を研磨するステップを有していることを特徴としている。
この特徴によれば、枠部品のベース側の面を研磨することにより、枠部品のベース側の面がベース側に露出し、透過部品のベース側の面を利用してベースに確実に固定することができる。
【0015】
前記枠部品の前記ベース側の面と前記透過部品の前記ベース側の面を同一の研磨手段により面一に研磨することを特徴としている。
この特徴によれば、同一の研磨手段により枠部品及び透過部品のベース側の面が面一に形成されるので、広い有効透過領域を確保しつつ透過体の面精度が高いことから正確な入射光や均一な透過光を得ることができる。また、保護カバーのベース側の面における枠体と透過体との境界部分に凹凸が形成されていないことから、凹凸にゴミが溜まりにくくなっている。
【0016】
前記固定ステップは複数の前記枠部品を前記透過部品に埋設させるものであって、
前記透過部品を切断し前記各保護カバーに切断するステップを有していることを特徴としている。
この特徴によれば、複数の枠部品を1つの透過部品に埋設させて一体化させた状態で透過部品を各保護カバーに切断することができるので、各枠部品に対して透過部品を個別に埋設させる必要がなく、かつ切断作業を行いやすく、保護カバーを効率的に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施例1における光デバイスを示す正面視断面図である。
【
図2】(a)は実施例1における保護カバーの平面図、(b)はA-A断面図である。
【
図3】(a)は実施例1における透過部品に枠部品を配置した状態を示す概略断面図、(b)は透過部品と枠部品を固定した状態を示す概略断面図である。
【
図4】実施例1における透過部品に枠部品が接合された集合基板を示す平面図である。
【
図5】(a)は表面側の研磨ステップを示す概略断面図、(b)は裏面側の研磨ステップを示す概略断面図、(c)は透過部品を切断して保護カバーに分割した状態を示す概略断面図である。
【
図6】(a)は本発明の実施例2における保護カバーの平面図、(b)はB-B断面図である。
【
図7】(a)は実施例2における透過部品に枠部品を配置した状態を示す概略断面図、(b)は透過部品と枠部品が固定された状態を示す概略断面図である。
【
図8】(a)は
図7(b)の状態から表面及び裏面を面一に研磨した状態を示す概略断面図、(b)は透過部品を切断した状態を示す概略断面図である。
【
図9】(a)は本発明の実施例3における保護カバーの平面図、(b)はC-C断面図である。
【
図10】(a)は実施例3における透過部品に枠部品及び治具を配置した状態を示す概略断面図、(b)は透過部品と枠部品が固定された状態を示す概略断面図、(c)は(b)の状態から保護カバーを形成した状態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る保護カバー、光デバイス及び保護カバーの製造方法を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0019】
実施例1に係る保護カバー、光デバイス及び保護カバーの製造方法につき、
図1から
図6を参照して説明する。
【0020】
図1に示されるように、光デバイス1は、光素子としての複数の光デバイス用素子2と、断面視コ字状を成す有底筒状のセラミックス基板であるベース3と、ベース3の貫通孔に配設・固定されるとともに図示しないワイヤによって光デバイス用素子2にそれぞれ電気接続されている端子4と、ベース3に溶接固定されて光デバイス用素子2を保護する保護カバー5と、から主に構成されている。尚、光素子は、レーザ等に用いられる発光素子又はイメージセンサ等に用いられる受光素子であって、発光するものも受光するものも含む。
【0021】
図1及び
図2に示されるように、保護カバー5は、中央に開口部63を有する矩形状の枠体6と、開口部63を塞いで窓部を構成する光透過性の非晶材としての板状の透過体7と、を備えている。尚、以下、保護カバー5のベース3側の面を裏面5b側、ベース3と反対側の面を保護カバー5の表面5aとして説明する。
【0022】
尚、窓部を構成する透過体7として、光透過性の非晶材を使用する場合、外部の大気等の侵入を遮って光デバイス用素子2を保護するとともに、光デバイス用素子2の発光する光又は受光する光を透過するものであればよく、代表的な非晶材として、ホウ珪酸系ガラス、石英ガラス等があげられる。ここで、光源が発光する光又は受光する光は、例えば波長150nmから6000nmの光であって、光透過性の非晶材は、用途に応じて赤外光、可視光、紫外光等を透過するものから適宜選択すればよい。尚、透過体7は、光透過性を有する非晶材を用いることが好ましいが、光透過性を有する結晶材を使用してもよい。
【0023】
本実施例では、透過体7として、光透過性の非晶材であるホウ珪酸系ガラスを採用した場合を例に説明する。尚、ホウ珪酸系ガラスの軟化点は約820℃である。
【0024】
図1及び
図2に示されるように、枠体6は、ベース3の上端である被固定面31に溶接固定されるとともに、中央に形成される開口部63まで平面状に延びる平板状を成している。
【0025】
尚、枠体6は、例えばニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、ステンレススチール(SUS)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、鉄-ニッケル-コバルト合金(Fe-Ni-Co合金)、鉄-ニッケル合金(Fe-Ni合金)等、その材料は問わないが、機械的強度を有する観点、熱膨張係数の観点等からFe-Ni-Co合金又はFe-Ni合金であることが好ましい。また、枠体6は、単一の金属部品から構成されてもよいし、金属構造体にめっき被膜が被覆されたものでもよい。
【0026】
本実施例では、枠体6として、単一の鉄-ニッケル-コバルト合金の薄板を採用した場合を例に説明する。
【0027】
透過体7は、開口部63を構成する枠体6の内側面6aの全周に亘って固定される基部71と、基部71の表面及び枠体6の表面6bを覆って延びる表層部72と、を備えている。表層部72の表面(すなわち保護カバー5の表面5a)は水平方向に面一に形成されており、基部71の裏面71a及び枠体6の裏面6c(すなわち保護カバー5の裏面5b)は水平方向に面一に形成されている。保護カバー5の表面5aと保護カバー5の裏面5bとは、平行に形成されている。
【0028】
保護カバー5の製造方法を説明する。
図3(a)に示されるように、透過体7の材料となる透過部品73を用意する。このとき、透過部品73の表面73aを下方に配置し、透過部品73の裏面73bを上方に配置する。
【0029】
次いで、
図3(b)に示されるように、透過部品73の裏面73b上に複数の枠部品62をそれぞれ配置するとともに、図示しない加熱炉内で透過部品73に対して各枠部品62を押圧しながら加熱して透過部品73を一旦軟化させ、冷却することにより透過部品73と各枠部品62とを接合する(固定ステップ)。すなわち、固定ステップは、複数の枠部品62を透過部品73に埋設させる工程である。尚、加熱温度は、少なくとも透過部品73が軟化する温度であればよく、枠部品62が軟化しない温度が好ましい。
【0030】
これにより、
図4に示されるように、1つの透過部品73に対して複数の枠部品62が平面方向に離間した状態で並んで接合された集合基板5Aが形成される。尚、
図3(b)に示されるように、透過部品73と各枠部品62とが接合された状態にあっては、枠部品62の表面、両側面の三面に亘って隙間なく透過部品73が接合される。さらに、枠部品62の裏面及び両側面の一部は透過部品73の裏面73bよりも僅かに上方に配置されている。このように、枠部品62が透過部品73に埋設される量が小さいので、枠部品62の埋設により透過部品73が水平方向に押し延ばされることを抑制でき、各枠部品62同士を近付けて配置することができる。
【0031】
尚、本実施例では、透過部品73の裏面73b上に各枠部品62を押圧しながら加熱して埋設する形態を例示したが、透過部品73の裏面73bに各枠部品62を嵌合可能な溝を形成し、該溝に各枠部品62を嵌合させた状態で押圧しながら加熱して埋設させてもよい。これによれば、各枠部品62が透過部品73に位置決めした状態で埋設させることができるため、埋設時に隣接する枠部品62のピッチがずれることを防止できる。
【0032】
次いで、
図5(a)に示されるように、透過部品73の表面73aを面一となるように研磨するステップ(以下、表面側の研磨ステップという。)を行う。
【0033】
具体的には、表面側の研磨ステップは、ポリッシャ等の所定の研磨手段(図示略)を用いて透過部品73の表面73a全面に亘って行われ、これにより面一の表面73a’を有する透過部品73’が形成される。枠部品62の表面には、透過部品73’が配置されている。すなわち、枠部品62の表面は透過部品73’(表層部72)に覆われた状態となる。
【0034】
尚、透過部品73の表面73aと枠部品62の表面における表面粗度はRa≦100nm好ましくはRa≦1nmとなっており、透過部品73の表面73aと枠部品62の表面におけるうねりは、10λ(6328nm)好ましくは1λ(632.8nm)以下となっている。
【0035】
次いで、
図5(b)に示されるように、透過部品73’の裏面73bと枠部品62の裏面とを面一となるように研磨するステップ(以下、裏面側の研磨ステップという。)を行う。
【0036】
具体的には、裏面側の研磨ステップは、表面側の研磨ステップと同じ研磨手段(図示略)を用いて透過部品73’の裏面73bと枠部品62の裏面とに亘って研磨が行われる。したがって、透過部品73’の裏面73b’と枠部品62’の裏面とに亘って同一の粗さ(Ra≦10nm好ましくはRa≦1nm)、うねり(10λ(6328nm)好ましくは1λ(632.8nm)以下)の研磨面が面一に形成され、透過部品73の裏面73bと枠部品62の裏面との間の境界部分の馴染みが良く、該境界部分に段差や凹み等の凹凸がなく透過部品73’と枠部品62’が水平方向に滑らかに連なっている。これにより、所望の厚みの透過部品73’’が形成される。
【0037】
また、枠部品62’の内側面は透過部品73’の外側面に隙間なく接合されているので、枠部品62’と透過部品73’との接合強度が高い。尚、枠部品62’の内側面は透過部品73’の外側面に隙間なく接合されていることが好ましいが、少なくとも枠部品62’の裏面と透過部品73’との裏面が面一になっていることが重要であり、枠部品62’の内側面と透過部品73’の外側面とが一部接合されない箇所があってもよい。
【0038】
尚、本実施例では、表面側の研磨ステップを行った後、裏面側の研磨ステップを行う形態を例示したが、研磨ステップの順番は逆であってもよい。さらに尚、表面側の研磨ステップと裏面側の研磨ステップとで同一の研磨手段を用いる形態を例示したが、別々の研磨手段を用いてもよい。
【0039】
また、本実施例では、説明の便宜上、表面側の研磨ステップでは枠部品62及び透過部品73を上方から研磨し、裏面側の研磨ステップでは枠部品62及び透過部品73を下方から研磨する形態を例示したが、これに限られず、例えば、枠部品62及び透過部品73の研磨する面を上方に向け、表面側の研磨ステップ及び裏面側の研磨ステップにおいて常に上方から研磨するようにしてもよい。
【0040】
次に、
図5(c)に示されるように、各枠部品62’の外側面に沿って透過部品73’’を切断する切断ステップを行う。これにより、枠体6及び透過体7を備えた保護カバー5が複数形成される。本実施例の切断ステップでは、各枠部品62の外側面に沿って透過部品73を切断するため、枠体6の外側面6dにほとんど透過部品73’’が残存していない。尚、枠体6の外側面6dよりも外側の透過部品73’’を切断し、枠体6の外側面6dに透過部品73’’が残存する形態であってもよい。さらに尚、枠体6の外側面6dが一部研磨されていてもよい。
【0041】
次いで、保護カバー5とベース3との封着について説明する。
図1に戻って、光デバイス1を構成するベース3は、セラミックスにより有底筒状に形成されており、枠体6の裏面6cと溶接される矩形枠状の被固定面31を備えている。被固定面31の内側には略矩形枠状の開口部32が形成されている。この開口部32は保護カバー5により閉塞されて、光源である光デバイス用素子2を取り囲む空間を形成している。尚、ベース3の開口部32は、保護カバー5により閉塞可能な形状であれば、その形状は略矩形枠状に限らない。
【0042】
ベース3の被固定面31と枠体6とは、いわゆるロウ付けにより溶接固定される。詳しくは、ベース3の被固定面31と枠体6との間に図示しない低融点のロウ材である金-錫はんだ8(Au-Snはんだ8)を挟んだ状態とし、図示しない加熱炉に入れ、厚み方向に荷重を加えながら300℃まで加熱した状態で3分間保持することで、Au-Snはんだ8を溶融させてベース3の被固定面31と枠体6とを連続的に溶接させる。このように、光デバイス1は、光デバイス用素子2がベース3と保護カバー5により密封状に囲まれるため、光デバイス用素子2を保護することができる。
【0043】
以上説明したように、保護カバー5は、保護カバー5の裏面5bが透過体7と枠体6とに亘って面一の研磨面に形成されているので、広い有効透過領域を確保しつつ透過体7の面精度が高いことから正確な入射光や均一な透過光を得ることができる。
【0044】
また、保護カバー5の裏面5bにおける枠体6と透過体7との境界部分に凹凸が形成されておらず、また低融点ガラスによる溶着ではないので保護カバー5の裏面5bにおける枠体6と透過体7との境界部分にウィスカーが形成されず、面精度が高いことから正確な入射光や均一な透過光を得ることができ、透過体7の透過性が良好な状態を維持できる。このことから、凹凸やウィスカーにゴミが溜まり、該ゴミが経年により化学変化することにより透過体を劣化させ、透過体の透過性に影響を与える虞を回避できる。
【0045】
また、透過体7を溶材として透過体7の基部71の外側面と枠体6の内側面とが固定されており、低融点ガラスを用いない構成となっているので、透過体7と枠体6との封着時に透過体7の有効エリア側に低融点ガラスが流れ、有効透過領域が狭くなる虞がない。
【0046】
また、透過体7は、枠体6の表面を覆って面一に延びている。これによれば、枠体6の表面は透過体7により覆われているので、枠体6と透過体7との境界部分に凹凸が形成されることを確実に防止できるとともに、保護カバー5の表面5a側は透過体7のみが露出しており一層ごみの影響を受けにくい。
【0047】
また、透過体7と枠体6との接触面積が大きくなるため、透過体7と枠体6との接合強度が高い。例えば、光デバイス1の使用時に発生する熱や使用環境における熱等により、透過体7と枠体6とにそれぞれ熱変形が生じても接合状態を保つことができる。
【0048】
また、保護カバー5の製造方法は、溶融された透過部品73に対して開口部63を有する枠部品62を埋設させて固定する固定ステップを有している。これによれば、溶融された透過部品73に対して枠部品62を埋設させことにより、枠体6の内側面と透過体7の外側面との間に微小な隙間が形成されることが防止される。特に、裏面側の枠体6の内側面と透過体7の外側面との間に微小な隙間が形成されることが防止される。
【0049】
また、枠部品62の裏面を研磨するステップを有し、枠部品62の裏面を研磨することにより、枠部品62の裏面がベース3側に露出し、枠部品62の裏面を利用してベース3に確実に固定することができる。
【0050】
また、枠部品62の裏面と透過部品73の裏面73bを同一の研磨手段により面一に研磨されるので、枠部品62の裏面と透過部品73の裏面73bとの馴染みがよく、保護カバー5の裏面5bの平滑度が高く、広い有効透過領域を確保しつつ透過体の面精度が高いことから正確な入射光や均一な透過光を得ることができる。また、保護カバー5の裏面5bにおける枠体6と透過体7との境界部分に凹凸が形成されていないことから、凹凸やウィスカーにゴミが溜まりにくくなっており、透過体7の透過性が良好な状態を維持できる。このことから、凹凸やウィスカーにゴミが溜まり、該ゴミが経年により化学変化することにより透過体を劣化させ、透過体の透過性に影響を与える虞を回避できる
【0051】
また、固定ステップは複数の枠部品62を透過部品73に埋設させるものであって、各保護カバー5に切断するステップを有している。これによれば、複数の枠部品62を1つの透過部品73に埋設させて一体化させた状態で透過部品73を切断し、保護カバー5を形成することができるので、各枠部品62に対して透過部品73を個別に埋設させる必要がなく、かつ切断作業を行いやすく、保護カバー5を効率的に製造できる。
透過体70は、開口部630を構成する枠体60の内側面60aの全周に亘って固定される基部710と、基部710の表面及び枠体60の表面60bを覆って延びる表層部720と、表層部720の外縁から枠体60の外側面60dを覆って延びる側部740と、を備えている。この保護カバー50は、実施例1の保護カバー5同様に、保護カバー50の表面50aと裏面50bとは、平行に且つ面一に形成されている。
このように、枠体60の内側面60a、表面60b、外側面60dの三面が透過体70により囲われるので、透過体70よりも熱変形しやすい枠体60が光デバイスの使用時に発生する熱や使用環境における熱等により熱変形することを規制できる。また、枠体60と透過体70との接触面積が大きいので、枠体60と透過体70との接合強度が高い。
そして、図示しない加熱炉内で透過部品730に対して枠部品620を押圧しながら加熱して透過部品730を一旦軟化させ、透過部品730に対して枠部品620を埋設した後、冷却することにより透過部品730と枠部品620とを接合する固定ステップを行う。このとき、枠部品620の裏面は透過部品730の裏面730bと水平方向に同じ位置、または裏面730bよりも下方に配置される。