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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022148122
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】検査装置および検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/956 20060101AFI20220929BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20220929BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
G01N21/956 B
G01N21/27 B
G01N21/64 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021049678
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【弁理士】
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【弁理士】
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】藤原 成章
【テーマコード(参考)】
2G043
2G051
2G059
【Fターム(参考)】
2G043AA03
2G043EA01
2G043EA14
2G043FA02
2G043JA04
2G043JA05
2G043KA02
2G043LA03
2G043NA01
2G051AA68
2G051AB01
2G051BB11
2G051CA04
2G051CB01
2G051CB10
2G051CC12
2G051CC15
2G051EB01
2G059AA05
2G059BB15
2G059EE02
2G059EE07
2G059EE12
2G059FF03
2G059HH02
2G059JJ05
2G059JJ06
2G059JJ07
2G059JJ22
2G059KK04
2G059MM01
(57)【要約】
【課題】ビアホールにおけるスミアとスミア以外の異物とを精度良く判別する。
【解決手段】基板9のビアホールを検査する検査装置1は、光照射部31と、分光測定部33とを備える。光照射部31は、配線層と絶縁層とが交互に積層される積層基板(すなわち、基板9)上のビアホールを含む被検査領域に対して、絶縁層を形成する樹脂に蛍光を発生させる励起光を照射する。分光測定部33は、当該被検査領域からの反射光を受光して反射スペクトルを取得する。これにより、ビアホールおけるスミアとスミア以外の異物とを精度良く判別することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板のビアホールを検査する検査装置であって、
配線層と絶縁層とが交互に積層される積層基板上のビアホールを含む被検査領域に対して、前記絶縁層を形成する樹脂に蛍光を発生させる励起光を照射する光照射部と、
前記被検査領域からの反射光を受光して反射スペクトルを取得する分光測定部と、
を備えることを特徴とする検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の検査装置であって、
前記被検査領域から前記分光測定部に向かう光路上に配置され、前記励起光と異なる波長域の光を前記分光測定部へと導くフィルタ部をさらに備えることを特徴とする検査装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の検査装置であって、
前記被検査領域からの反射光を受光して前記被検査領域の画像である被検査画像を取得する撮像部と、
前記撮像部により取得された前記被検査画像、および、前記分光測定部により取得された前記反射スペクトルを表示する表示部と、
をさらに備えることを特徴とする検査装置。
【請求項4】
請求項3に記載の検査装置であって、
前記被検査領域から前記分光測定部に向かう光路上に配置されるピンホールミラーをさらに備え、
前記分光測定部は、前記被検査領域からの反射光のうち、前記ピンホールミラーのピンホールを通過した光を受光し、
前記撮像部は、前記被検査領域からの反射光のうち、前記ピンホールミラーにて反射した光を受光することを特徴とする検査装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載の検査装置であって、
前記光照射部は、
前記被検査領域に向けて前記励起光を出射する励起光出射部と、
前記被検査領域に向けて白色光を出射する白色光出射部と、
を備えることを特徴とする検査装置。
【請求項6】
請求項5に記載の検査装置であって、
前記光照射部は、前記励起光出射部からの前記励起光、および、前記白色光出射部からの前記白色光を、前記被検査領域に対して同時に照射可能であることを特徴とする検査装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1つに記載の検査装置であって、
前記光照射部は、前記励起光の波長を複数の波長の間で切り替える波長切替部を備えることを特徴とする検査装置。
【請求項8】
基板のビアホールを検査する検査方法であって、
a)配線層と絶縁層とが交互に積層される積層基板上のビアホールを含む被検査領域に対して、前記絶縁層を形成する樹脂に蛍光を発生させる励起光を照射する工程と、
b)前記被検査領域からの反射光を受光して反射スペクトルを取得する工程と、
c)前記反射スペクトルに基づいて前記ビアホールの検査を行う工程と、
を備えることを特徴とする検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板のビアホールを検査する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配線層と絶縁層とが交互に積層される積層基板の製造において、レーザビア加工が行われている。レーザビア加工では、製造途上の積層基板において、最上層である配線層の一部にレーザ光を照射することにより、当該配線層および当該配線層の下側の絶縁層を貫通するとともに、当該絶縁層の下側の配線層を底とするビアホール(viaホールまたはビアとも呼ばれる。)が形成される。ビアホールの内側面には、後続の処理により銅(Cu)等がメッキされ、上下の配線層間における電気的な接続(すなわち、導通状態)が確保される。
【0003】
このようなレーザビア加工では、絶縁層を形成する樹脂の残滓(すなわち、スミア)がビアホールの底面上に残る場合がある。当該スミアは、配線層間における電気的な接続の信頼性低下の要因となる。そこで、積層基板に形成された多数のビアホールに対して励起光を照射し、スミアにて発生する蛍光をフォトダイオード等によって受光することにより、ビアホール内におけるスミアの存否を検査する検査装置が用いられている。当該検査装置においてスミアが検出されると、デスミア処理が行われてスミアが除去される。
【0004】
また、特許文献1では、レーザビア加工による形成途上のビアホール内における樹脂(すなわち、絶縁層の材料)の存否を、ビアホールの加工と並行して確認する技術が提案されている。具体的には、形成途上のビアホールに向けて、ビアホールの加工と並行して励起光を出射し、絶縁層を形成する樹脂にて発生する蛍光をフォトダイオードによって受光することにより、当該ビアホール内の樹脂(すなわち、絶縁層の材料)の存否を確認する。そして、ビアホールの形成が進み、ビアホールからの蛍光の強度が閾値未満まで減少すると、ビアホール内の樹脂が十分に除去された(すなわち、スミアが存在しない)と判断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2017/130555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ビアホール内には、スミア以外の異物も存在する場合があり、スミア以外の異物を除去するためには、デスミア処理とは異なる除去処理が必要になる。しかしながら、当該異物も励起光の照射により蛍光を発生させる場合があり、この場合、上述の検査装置では、スミアとスミア以外の異物とを判別することは困難である。
【0007】
現在は、オペレータが蛍光顕微鏡等でビアホールを目視することにより、ビアホール内の異物がスミアであるか否か等を判別しているが、判別作業に比較的長い時間が必要となる上に、オペレータの熟練度によって判断が異なるおそれがある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、ビアホールにおけるスミアとスミア以外の異物とを精度良く判別することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、基板のビアホールを検査する検査装置であって、配線層と絶縁層とが交互に積層される積層基板上のビアホールを含む被検査領域に対して、前記絶縁層を形成する樹脂に蛍光を発生させる励起光を照射する光照射部と、前記被検査領域からの反射光を受光して反射スペクトルを取得する分光測定部とを備える。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の検査装置であって、前記被検査領域から前記分光測定部に向かう光路上に配置され、前記励起光と異なる波長域の光を前記分光測定部へと導くフィルタ部をさらに備える。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の検査装置であって、前記被検査領域からの反射光を受光して前記被検査領域の画像である被検査画像を取得する撮像部と、前記撮像部により取得された前記被検査画像、および、前記分光測定部により取得された前記反射スペクトルを表示する表示部とをさらに備える。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の検査装置であって、前記被検査領域から前記分光測定部に向かう光路上に配置されるピンホールミラーをさらに備え、前記分光測定部は、前記被検査領域からの反射光のうち、前記ピンホールミラーのピンホールを通過した光を受光し、前記撮像部は、前記被検査領域からの反射光のうち、前記ピンホールミラーにて反射した光を受光する。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の検査装置であって、前記光照射部は、前記被検査領域に向けて前記励起光を出射する励起光出射部と、前記被検査領域に向けて白色光を出射する白色光出射部とを備える。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の検査装置であって、前記光照射部は、前記励起光出射部からの前記励起光、および、前記白色光出射部からの前記白色光を、前記被検査領域に対して同時に照射可能である。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の検査装置であって、前記光照射部は、前記励起光の波長を複数の波長の間で切り替える波長切替部を備える。
【0016】
請求項8に記載の発明は、基板のビアホールを検査する検査方法であって、a)配線層と絶縁層とが交互に積層される積層基板上のビアホールを含む被検査領域に対して、前記絶縁層を形成する樹脂に蛍光を発生させる励起光を照射する工程と、b)前記被検査領域からの反射光を受光して反射スペクトルを取得する工程と、c)前記反射スペクトルに基づいて前記ビアホールの検査を行う工程とを備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、ビアホールにおけるスミアとスミア以外の異物とを精度良く判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1の実施の形態に係る検査装置の構成を示す図である。
図2】制御部を実現するコンピュータの構成を示す図である。
図3】制御部の機能を示すブロック図である。
図4】基板の断面図である。
図5A】励起光を照射した場合の被検査画像を示す図である。
図5B】励起光を照射した場合の反射スペクトルを示す図である。
図6A】白色光を照射した場合の被検査画像を示す図である。
図6B】白色光を照射した場合の反射スペクトルを示す図である。
図7A】励起光および白色光を照射した場合の被検査画像を示す図である。
図7B】励起光および白色光を照射した場合の反射スペクトルを示す図である。
図8A】白色光を照射した場合の被検査画像を示す図である。
図8B】励起光を照射した場合の被検査画像を示す図である。
図9】ビアホールの検査の流れを示す図である。
図10】基板の断面図である。
図11A】励起光を照射した場合の被検査画像を示す図である。
図11B】励起光を照射した場合の反射スペクトルを示す図である。
図12A】白色光を照射した場合の被検査画像を示す図である。
図12B】白色光を照射した場合の反射スペクトルを示す図である。
図13A】励起光および白色光を照射した場合の被検査画像を示す図である。
図13B】励起光および白色光を照射した場合の反射スペクトルを示す図である。
図14】基板の断面図である。
図15】基板の断面図である。
図16】他の検査装置の構成を示す図である。
図17】第2の実施の形態に係る検査装置の構成を示す図である。
図18】第3の実施の形態に係る検査装置の構成を示す図である。
図19】第4の実施の形態に係る検査装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る検査装置1の構成を示す図である。検査装置1は、積層基板9に設けられたビアホール(viaホールまたはビアとも呼ばれる。)を検査する装置である。積層基板9は、例えば、樹脂にて形成された板状またはシート状の基材上に、配線層と絶縁層とが交互に積層された多層基板である。配線層は、銅等の導電性材料により形成された配線パターンである。絶縁層は、ポリイミド等の樹脂により形成され、積層方向にて隣接する配線層間を絶縁する。以下の説明では、積層基板9を、単に「基板9」とも呼ぶ。
【0020】
基板9の上面91には、多数のビアホールが形成されている。当該ビアホールは、最上層の配線層および当該配線層の下側に隣接する絶縁層を貫通するとともに、当該絶縁層の下側に隣接する配線層を底とする穴である。ビアホールの底面には、異物が存在する場合がある。当該異物は、例えば、ビアホールの加工時に生じたスミア(すなわち、絶縁層を形成する樹脂の残滓)である。ビアホールの底面には、スミア以外の異物(例えば、絶縁層を形成する樹脂とは異なる樹脂)が存在する場合もある。
【0021】
検査装置1は、基板9の上面91に設けられたビアホール内に異物が存在する場合、当該異物の検査を行う装置である。検査装置1は、例えば、基板9上の多数のビアホールのうち、外観検査装置等により異物が検出されたビアホールを検査し、当該異物がスミアであるか、スミア以外の異物であるかの判別に利用される。
【0022】
検査装置1は、ステージ21と、ステージ移動機構22と、ヘッド3と、ヘッド移動機構23と、制御部4とを備える。制御部4は、検査装置1の各構成を制御する。なお、後述する図16~19では、制御部4の図示を省略する。
【0023】
ステージ21は、ヘッド3の下方に配置され、水平状態の基板9を下側から保持する。ステージ21は、例えば、基板9の下面を吸着して保持するバキュームチャック、または、基板9の水平方向への移動を機械的に制限するメカニカルチャックである。
【0024】
ステージ移動機構22は、ステージ21をヘッド3に対して水平方向(すなわち、基板9の上面91に略平行な方向)に相対的に移動する移動機構である。図1に示す例では、ステージ移動機構22は、ステージ21を図中の左右方向に直線移動する。ステージ移動機構22の駆動源は、例えば、リニアサーボモータ、または、ボールネジにモータが取り付けられたものである。ステージ移動機構22の構造は、様々に変更されてよい。
【0025】
ヘッド3は、ステージ21上の基板9のビアホールを検査する際には、基板9に光を照射し、基板9からの反射光を受光する。ヘッド3の構造の詳細については後述する。ヘッド移動機構23は、ヘッド3をステージ21に対して水平方向に相対的に移動する移動機構である。図1に示す例では、ヘッド移動機構23は、ヘッド3を紙面に垂直な方向(すなわち、基板9の上面91に略平行、かつ、ステージ移動機構22による移動方向に垂直な方向)に直線移動する。ヘッド移動機構23の駆動源は、例えば、リニアサーボモータ、または、ボールネジにモータが取り付けられたものである。ヘッド移動機構23の構造は、様々に変更されてよい。
【0026】
ヘッド3は、光照射部31と、検出光学系32と、分光測定部33と、撮像部34とを備える。光照射部31、検出光学系32、分光測定部33および撮像部34は、ヘッドハウジング35の内部に収容される。図1では、ヘッドハウジング35を破線にて描き、ヘッドハウジング35の内部の構成を実線にて描く。
【0027】
光照射部31は、基板9上のビアホールを含む被検査領域に対して光を照射する。光照射部31は、励起光出射部311と、白色光出射部312とを備える。励起光出射部311は、基板9の被検査領域に向けて励起光を出射する。励起光とは、基板9の絶縁層を形成する樹脂に蛍光を発生させる波長の光である。励起光出射部311として、例えばLED(Light Emitting Diode)が利用可能である。例えば、励起光出射部311から波長405nmの励起光が出射され、上記絶縁層を形成する樹脂から波長430nmをピークとした波長域の蛍光が発生する。なお、樹脂の種類により、蛍光の波長域、および、蛍光を発生させる励起光の波長は様々に変化する。また、基板9の配線層では、励起光の照射によって蛍光は発生しない。基板9上に異物が存在する場合、当該異物に励起光を照射すると、異物の種類によって蛍光を発生する場合と発生しない場合とがある。異物が蛍光を発生する場合、当該蛍光の波長域は、絶縁層が発生する蛍光の波長域とは異なる。
【0028】
白色光出射部312は、白色光(すなわち、広帯域波長の光)を基板9の被検査領域に向けて出射する。白色光出射部312として、例えばLEDが利用可能である。検査装置1では、励起光出射部311および白色光出射部312のうち一方のみから光を出射することができるとともに、両方から同時に光を出射することもできる。図1では、励起光出射部311および白色光出射部312から出射される光の光軸を一点鎖線にて示す。
【0029】
検出光学系32は、第1コリメータレンズ321と、第2コリメータレンズ322と、ダイクロイックミラー323と、ハーフミラー324と、対物レンズ325と、集光レンズ326と、ピンホールミラー327と、撮像レンズ328とを備える。
【0030】
励起光出射部311から出射された励起光は、第1コリメータレンズ321を介してダイクロイックミラー323へと導かれる。ダイクロイックミラー323は、励起光を反射させ、励起光と異なる波長域の光を透過させる。ダイクロイックミラー323にて反射した励起光は、ハーフミラー324を透過し、対物レンズ325を介して基板9の上面91へと導かれる。励起光は、基板9の上面91上にておよそ集光し、被検査領域に照射される。また、白色光出射部312から出射された白色光は、第2コリメータレンズ322を介してハーフミラー324へと導かれる。白色光は、ハーフミラー324にて反射し、対物レンズ325を介して基板9の上面91へと導かれる。白色光は、基板9の上面91上にておよそ集光し、被検査領域に照射される。
【0031】
被検査領域にて反射された光(すなわち、被検査領域からの反射光)は、対物レンズ325およびハーフミラー324を透過してダイクロイックミラー323へと導かれる。ダイクロイックミラー323は、基板9上の被検査領域から分光測定部33に向かう反射光の光路上に配置されている。ダイクロイックミラー323は、被検査領域からの反射光のうち、励起光を反射し、励起光と異なる波長域の光を透過させる。ダイクロイックミラー323は、励起光と異なる波長域の光を励起光から分離させて分光測定部33へと導くフィルタ部である。ダイクロイックミラー323を透過した光(すなわち、励起光と異なる波長域の光)は、集光レンズ326を介してピンホールミラー327へと導かれる。ピンホールミラー327は、被検査領域から分光測定部33に向かう反射光の光路上に配置されており、基板9の上面91と光学的におよそ共役である。
【0032】
ピンホールミラー327のピンホール327aを通過した光は、分光測定部33へと導かれ、分光測定部33にて受光される。分光測定部33は、受光した光(すなわち、被検査領域からの反射光のうち、励起光と異なる波長域の光)のスペクトルを取得する。以下の説明では、分光測定部33により取得されるスペクトル(すなわち、被検査領域からの反射光のスペクトル)を、「反射スペクトル」とも呼ぶ。分光測定部33により取得された反射スペクトルは、制御部4へと送られる。
【0033】
分光測定部33は、例えば、グレーティング(すなわち、回折格子)331と、分光解析ユニット332とを備える。グレーティング331は、分光測定部33に入射した光を様々な波長の光に分散させる(すなわち、分光させる)光学素子である。分光解析ユニット332は、グレーティング331で分光した複数の波長の光をそれぞれ受光する複数の受光素子を備える。当該受光素子として、例えば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)またはCCD(Charge Coupled Devices)等のラインセンサやイメージセンサが利用可能である。なお、分光測定部33では、グレーティング331に代えて、プリズム等の他の分光器が利用されてもよい。
【0034】
上述のピンホールミラー327にて反射した光は、撮像レンズ328を介して撮像部34へと導かれる。撮像部34は、被検査領域からの反射光のうち、ダイクロイックミラー323を透過し、ピンホールミラー327にて反射した光を受光し、被検査領域の画像である被検査画像を取得する。上述のように、ピンホールミラー327は基板9の上面91とおよそ共役であるため、被検査画像上には、ピンホールミラー327のピンホール327aが黒点として写る。撮像部34により取得された被検査画像は、制御部4へと送られる。撮像部34として、例えば、CMOSまたはCCD等のイメージセンサが利用可能である。
【0035】
図1に示す例では、対物レンズ325を介して基板9の被検査領域に照射される光の光軸が基板9の上面91に対して垂直であり、かつ、当該光軸と被検査領域から対物レンズ325に入射する反射光の光軸とが一致する。すなわち、ヘッド3において、同軸落射照明が実現されている。なお、ヘッド3における検出光学系32の構成は、適宜変更されてよい。また、励起光出射部311、白色光出射部312、分光測定部33および撮像部34の構成等も、適宜変更されてよい。
【0036】
図2は、制御部4を実現するコンピュータ100の構成を示す図である。コンピュータ100は、プロセッサ101と、メモリ102と、入出力部103と、バス104とを備える通常のコンピュータである。バス104は、プロセッサ101、メモリ102および入出力部103を接続する信号回路である。メモリ102は、プログラムおよび各種情報を記憶する。プロセッサ101は、メモリ102に記憶されるプログラム等に従って、メモリ102等を利用しつつ様々な処理(例えば、数値計算や画像処理)を実行する。入出力部103は、操作者からの入力を受け付けるキーボード105およびマウス106、並びに、プロセッサ101からの出力等を表示するディスプレイ107を備える。なお、制御部4は、プログラマブルロジックコントローラ(PLC:Programmable Logic Controller)や回路基板等であってもよく、これらと1つ以上のコンピュータとの組み合わせであってもよい。
【0037】
図3は、コンピュータ100により実現される制御部4の機能を示すブロック図である。図3では、制御部4以外の構成も併せて示す。制御部4は、記憶部41と、移動制御部42と、表示制御部43とを備える。記憶部41は、主にメモリ102により実現され、ビアホールの検査に関する様々な情報を記憶する。記憶部41には、例えば、基板9上の多数のビアホールのうち、検査装置1にて検査を行う必要があるビアホールの位置情報が記憶される。当該位置情報は、例えば、オペレータ等により入出力部103を介して入力される。あるいは、当該位置情報は、当該位置情報を取得した外観検査装置等から制御部4へと送られる。また、記憶部41には、上述のように分光測定部33から制御部4へと送られた反射スペクトル、および、撮像部34から制御部4へと送られた被検査画像も格納される。
【0038】
移動制御部42は、主にプロセッサ101により実現される。移動制御部42は、記憶部41に記憶されている上述のビアホールの位置情報に基づいて、ステージ移動機構22およびヘッド移動機構23を駆動することにより、ヘッド3からの光の照射位置を、当該ビアホールを含む被検査領域上へと移動させる。表示制御部43は、主にプロセッサ101により実現される。表示制御部43は、表示部であるディスプレイ107等を制御することにより、記憶部41に記憶されている上述の反射スペクトルおよび被検査画像をディスプレイ107に表示させる。
【0039】
図4は、ビアホール93を示す基板9の断面図である。図4に示す例では、ビアホール93内にはスミア等の異物は存在せず、当該ビアホール93は、実際には検査装置1の検査対象にはならないが、以下、仮に当該ビアホール93を検査装置1で検査した場合について説明する。図4に示す例では、最上層の配線層94aに、ビアホール93を含み、かつ、ビアホール93よりも大きい開口941が形成されており、当該開口941からビアホール93の周囲の絶縁層95が露出している。また、ビアホール93の底面931では、2層目の配線層94bの上面が露出している。なお、図4では、ビアホール93の底面931を平面として描いているが、他の形状(例えば、周辺部よりも中央が凹む凹面状)であってもよい。
【0040】
図5Aおよび図5Bは、検査装置1において、ビアホール93を含む被検査領域に対して、図1に示す励起光出射部311から励起光を照射した場合に、撮像部34にて取得される被検査画像、および、分光測定部33にて取得される反射スペクトルを示す図である。図5Aに示す被検査画像は、上述のピンホールミラー327のピンホール327aが、ビアホール93の底面931上に位置するように位置合わせされた状態で取得される。後述する他の被検査画像についても同様である。
【0041】
ビアホール93の底面931である2層目の配線層94bにて反射した励起光は、ダイクロイックミラー323にて反射され、分光測定部33および撮像部34には入射しない。このため、図5Aに示す被検査画像では、ビアホール93の底面931は略円状の黒色の領域として写る。なお、実際の被検査画像では、ビアホール93の底面931に、ピンホールミラー327のピンホール327aが黒点として含まれているが、図5Aでは、図の理解を容易にするために、ピンホール327aを白色の点として示している。
【0042】
分光測定部33には、ピンホール327aに対応する領域からの光のみが入射する。図5Aに示す例では、ピンホール327aからの光は励起光であり、上述のようにダイクロイックミラー323にて反射されて分光測定部33には入射しない。したがって、図5Bに示す反射スペクトルは、各波長においてほぼ0を示す。当然に、当該反射スペクトルでは、励起光に対応するピーク(すなわち、波長405nmの位置におけるピーク)は存在しない。
【0043】
ビアホール93の周囲の絶縁層95は、励起光の照射により蛍光を発生させる。当該蛍光は、ダイクロイックミラー323を透過して撮像部34に入射する。このため、被検査画像では、絶縁層95は略円環状の青色の領域として写る。なお、分光測定部33には、上述のように、ピンホールミラー327のピンホール327aに対応する領域からの光のみが入射するため、当該蛍光は入射しない。したがって、図5Bに示す反射スペクトルでは、蛍光に対応するピーク(すなわち、波長430nmの位置におけるピーク)は存在しない。
【0044】
開口941の周囲の配線層94aにて反射した励起光は、ダイクロイックミラー323にて反射され、分光測定部33および撮像部34には入射しない。このため、図5Aに示す被検査画像では、配線層94aは、絶縁層95の周囲の黒色の領域として写る。
【0045】
図6Aおよび図6Bはそれぞれ、検査装置1において、被検査領域に対して白色光出射部312から白色光を照射した場合の被検査画像および反射スペクトルを示す図である。図6Aに示す被検査画像では、ビアホール93の底面931の配線層94b、および、絶縁層95の周囲の配線層94aは、銅であるため赤に近い色にて写る。なお、ビアホール93の底面931の配線層94bは、最上層の配線層94aよりも白色光が届きにくいため、被検査画像において配線層94aよりも暗い赤色にて写る。また、絶縁層95は、配線層94a,94bよりも暗い灰色に近い色にて写る。ビアホール93の底面931の配線層94bにて反射した白色光(ただし、励起光と同じ波長の光を除く。)は、ピンホールミラー327のピンホール327aを通過して分光測定部33に入射する。このため、図5Bに示す反射スペクトルは、銅による白色光の反射スペクトルとほぼ同じスペクトルを示す。
【0046】
図7Aおよび図7Bはそれぞれ、検査装置1において、被検査領域に対して励起光および白色光を同時に照射した場合の被検査画像および反射スペクトルを示す図である。図7Aに示す被検査画像では、ビアホール93の底面931の配線層94b、および、絶縁層95の周囲の配線層94aは、上述のように赤に近い色にて写る。絶縁層95は、蛍光を発生するため、配線層94a,94bよりも明るい白色に近い色にて写る。また、絶縁層95からの蛍光はビアホール93の内部にも照射されるため、図7Aに示す被検査画像では、ビアホール93の底面931の配線層94bは、図6Aに示す被検査画像(すなわち、白色光のみで撮像された被検査画像)よりも明るい赤色にて写る。したがって、ビアホール93の底面931を鮮明に観察することができる。また、図7Aに示す被検査画像では、ビアホール93の底面931と絶縁層95との境界も、図6Aに示す被検査画像よりも明瞭になる。したがって、被検査領域に対して励起光および白色光を同時に照射することにより、白色光のみを照射する場合に比べて、ビアホール93の底面931の観察が容易となる。
【0047】
図7Aに示す例では、ビアホール93の底面931の配線層94bにて反射した白色光および励起光のうち、白色光(ただし、励起光と同じ波長の光を除く。)は、ダイクロイックミラー323およびピンホール327aを通過して分光測定部33に入射するが、励起光はダイクロイックミラー323により反射されて分光測定部33には入射しない。このため、図7Bに示す反射スペクトルは、銅による白色光の反射スペクトルとほぼ同じスペクトルを示す。
【0048】
検査装置1を用いた基板9の検査では、図5A,5B、図6A,6Bおよび図7A,7Bに示す被検査画像および反射スペクトルをオペレータが確認し、ビアホール93に異物が存在しないと判断する。具体的には、例えば、図5B,7Bに示す反射スペクトルにおいて、絶縁層95が発生する蛍光に対応するピーク(すなわち、波長430nmの位置におけるピーク)が存在しないことを確認することにより、ビアホール93の底面931にスミアが存在しないと判断する。また、図6B図7Bに示す反射スペクトルが、予め取得されている基準スペクトル(すなわち、銅による白色光の反射スペクトル)とおよそ一致することを確認することにより、ビアホール93の底面931にスミア以外の異物も存在しないと判断する。さらに、図5A図6A,7Aに示す被検査画像において、目視によりビアホール93に異物が存在しないことを確認する。なお、被検査画像および反射スペクトルを用いた異物存否の判断の手法は、様々に変更されてよい。
【0049】
検査装置1では、白色光のみを照射した場合、被検査画像においてビアホール93の底面931を観察可能な程度の明るさとするためには、例えば、ビアホール93の深さ(すなわち、ビアホール93の上端開口から底面931までの上下方向の距離)は、ビアホール93の当該上端開口の直径の2/3以下が好ましい。これに対し、励起光を照射した場合、上述のように、絶縁層95からの蛍光がビアホール93の内部に照射されることにより、被検査画像においてビアホール93の底面931が明るくなる。このため、ビアホール93の深さが上端開口の直径の2/3よりも大きいビアホール93であっても、底面931の観察が可能となる。
【0050】
図8Aは、上端開口の直径に対して深さが比較的大きい(すなわち、高アスペクト比の)ビアホール93について、白色光のみを照射して当該ビアホール93の底面931を撮像した被検査画像である。図8Bは、当該ビアホール93について、励起光を照射して当該ビアホール93の底面931を撮像した被検査画像である。図8Aでは、ビアホール93の底面931に光がほとんど届かず底面931の位置がぼんやりとわかる程度であるのに対し、図8Bでは、ビアホール93の底面931を比較的明瞭に観察することができる。
【0051】
次に、図9を参照しつつ、検査装置1を用いたビアホールの検査の流れについて説明する。まず、記憶部41に記憶されている検査対象のビアホール(すなわち、何らかの異常が存在するビアホール)の位置情報に基づいて、移動制御部42によりステージ移動機構22およびヘッド移動機構23が駆動され、当該ビアホールがヘッド3の下方に位置する。
【0052】
図10は、当該ビアホール93を示す基板9の断面図である。図10に示す例では、ビアホール93の底面931が、スミア96(すなわち、絶縁層95を形成する樹脂の残滓である異物)により覆われている。
【0053】
図1に示す検査装置1では、ビアホール93を含む被検査領域に対して、励起光出射部311から励起光が照射され(ステップS11)、図11Aおよび図11Bに示す被検査画像および反射スペクトルが取得される(ステップS12)。続いて、励起光出射部311が消灯されるとともに白色光出射部312が点灯され、当該被検査領域に対して白色光が照射される(ステップS13)。そして、図12Aおよび図12Bに示す被検査画像および反射スペクトルが取得される(ステップS14)。その後、励起光出射部311が点灯され、当該被検査領域に対して励起光と白色光とが同時に照射される(ステップS15)。そして、図13Aおよび図13Bに示す被検査画像および反射スペクトルが取得される(ステップS16)。なお、上述の3つの被検査画像および3つの反射スペクトルの取得順序は適宜変更されてよい。
【0054】
次に、オペレータが、図11A,11B、図12A,12Bおよび図13A,13Bに示す被検査画像および反射スペクトルを確認してビアホール93の検査を行う。図11Aに示す被検査画像では、ビアホール93の底面931も、周囲の絶縁層95と略同様に蛍光を発生しており、青く写る。また、図11Bに示す反射スペクトル(すなわち、図11A中のピンホール327aを示す黒点の位置における反射スペクトル)では、上記蛍光に対応する波長430nmの位置にピークが存在する。したがって、オペレータにより、ビアホール93の底面931にスミア96が存在すると判断される。なお、スミア96は絶縁層95よりも薄く、スミア96からの蛍光は絶縁層95からの蛍光よりも弱いため、図11Aに示す被検査画像では、スミア96は絶縁層95の青色よりも暗い青色に写る。
【0055】
オペレータは、上記判断の正否確認のため、図12A,12Bおよび図13A,13Bを確認する。図12Bの反射スペクトルは、上述の基準スペクトル(すなわち、銅による白色光の反射スペクトル)にある程度類似しているが、光量が基準スペクトルよりも小さいことから、スミア96により配線層94bからの反射光量が減少していると判断する。また、図13Aに示す被検査画像において、ビアホール93の底面931が、絶縁層95に類似する明るい白色と、配線層94aに類似する赤に近い色とが混ざった色であることから、配線層94b上にスミア96が存在すると判断される。さらに、図13Bに示す反射スペクトルにおいて、基準スペクトルよりも光量が小さい類似波形と、上記蛍光に対応するピークとが存在することから、配線層94b上にスミア96が存在すると判断される(ステップS17)。
【0056】
上述のビアホール93の検査(ステップS17)では、オペレータによる判断に代えて、検査装置1によりスミア96の検出が自動的に行われてもよい。例えば、図11Bに示す反射スペクトル(すなわち、励起光を照射した場合の反射スペクトル)において、制御部4の表示制御部43等によりピーク波長が求められる。そして、求められたピーク波長と、予め記憶部41に記憶されている蛍光のピーク波長(すなわち、絶縁層95を形成する樹脂から発生する蛍光のピーク波長)とが比較され、両ピーク波長の差が所定の範囲内(例えば、5nm以下)である場合、表示制御部43等によりビアホール93内にスミア96が存在すると判断される。
【0057】
検査装置1では、図14に示すように、ビアホール93の底面931の一部のみにスミア96が存在する場合、例えば、励起光を照射して得られた被検査画像において、ピンホール327aを示す黒点がスミア96上に位置するように、オペレータがステージ移動機構22および/またはヘッド移動機構23を駆動する。その後、上述のように、被検査画像および反射スペクトルに基づくビアホール93の検査が行われる(ステップS11~S17)。
【0058】
図15に示すように、ビアホール93の底面931に、スミア96とは異なる異物97が存在し、当該異物97は上述の励起光により蛍光を発生しない場合、励起光を照射して得られた反射スペクトルにおいて、蛍光に対応するピークは存在しない。また、白色光を照射して得られた被検査画像において、異物97は配線層94bとは異なる色(例えば、黒色)にて表示される。オペレータは、これらの反射スペクトルおよび被検査画像から、スミア96とは異なる異物97がビアホール93に存在すると判断する。
【0059】
また、上記異物97が励起光によって蛍光を発生する場合、当該蛍光のピーク波長は、スミア96からの蛍光のピーク波長(すなわち、430nm)とは異なる。この場合、励起光を照射して得られた反射スペクトルにおいて、異物97からの蛍光に対応するピークは、スミア96からの蛍光に対応するピークとは異なる位置に出現するため、オペレータは、スミア96とは異なる異物97がビアホール93に存在すると判断する。なお、励起光を照射して得られた被検査画像では、異物97からの蛍光が写るが、当該蛍光とスミア96からの蛍光との差異をオペレータが判別することは容易ではない。
【0060】
なお、ビアホール93における異物の存否および異物の種類(すなわち、スミアであるか否か)の判断手法は、様々に変更されてよい。例えば、白色光のみを照射した場合の被検査画像および反射スペクトル、並びに、励起光および白色光を同時に照射した場合の被検査画像および反射スペクトルは、当該判断に用いられず、励起光のみを照射した場合の被検査画像および反射スペクトルから、上述の判断が行われてもよい。あるいは、励起光および白色光を同時に照射した場合の被検査画像および反射スペクトルのみから、上述の判断が行われてもよい。また、励起光のみを照射した場合の被検査画像および反射スペクトル、並びに、励起光および白色光を同時に照射した場合の被検査画像および反射スペクトルから、上述の判断が行われてもよい。さらには、被検査画像を用いることなく、反射スペクトルのみから異物の存否や異物の種類を判断してもよい。当該判断は、上述のように、オペレータにより行われてもよく、検査装置1の表示制御部43等により自動的に行われてもよい。
【0061】
以上に説明したように、基板9のビアホール93を検査する検査装置1は、光照射部31と、分光測定部33とを備える。光照射部31は、配線層94a,94bと絶縁層95とが交互に積層される積層基板(すなわち、基板9)上のビアホール93を含む被検査領域に対して、絶縁層95を形成する樹脂に蛍光を発生させる励起光を照射する。分光測定部33は、当該被検査領域からの反射光を受光して反射スペクトルを取得する。これにより、ビアホール93おけるスミア96とスミア96以外の異物97とを精度良く判別することができる。
【0062】
上述のように、検査装置1は、好ましくは、被検査領域から分光測定部33に向かう光路上に配置され、励起光と異なる波長域の光を分光測定部33へと導くフィルタ部(上記例では、ダイクロイックミラー323)をさらに備える。これにより、被検査領域にて反射した励起光が分光測定部33に入射することを防止することができる。したがって、分光測定部33にて取得される反射スペクトルに、スミア96等からの蛍光と波長が比較的近い励起光のピークが出現することを防止することができる。その結果、反射スペクトルにおける上記蛍光の有無を精度良く判定することができる。なお、上記フィルタ部は、ダイクロイックミラー323には限定されず、励起光を透過させず、励起光と異なる波長域の光のみを分光測定部33へと導くものであれば、様々な構造のものが利用可能である。
【0063】
検査装置1は、撮像部34と、表示部(すなわち、ディスプレイ107)とをさらに備えることが好ましい。撮像部34は、被検査領域からの反射光を受光して当該被検査領域の画像である被検査画像を取得する。ディスプレイ107は、撮像部34により取得された被検査画像、および、分光測定部33により取得された反射スペクトルを表示する。これにより、オペレータが、ビアホール93の状態を容易に視認することができる。その結果、反射スペクトルのみから判断する場合に比べて、ビアホール93の検査精度を向上することができる。
【0064】
上述のように、検査装置1は、被検査領域から分光測定部33に向かう光路上に配置されるピンホールミラー327をさらに備えることが好ましい。この場合、分光測定部33は、被検査領域からの反射光のうち、ピンホールミラー327のピンホール327aを通過した光を受光する。また、撮像部34は、被検査領域からの反射光のうち、ピンホールミラー327にて反射した光を受光する。これにより、ビアホール93の底面931において、ピンホール327aに対応する微小領域の反射スペクトルを取得することができる。また、被検査画像上のピンホール327aに対応する黒点の位置を、ディスプレイ107にて確認しつつ移動させることができるため、ビアホール93の底面931における所望の位置の反射スペクトルを容易に取得することができる。その結果、ビアホール93の検査精度を向上することができる。
【0065】
上述のように、光照射部31は、被検査領域に向けて励起光を出射する励起光出射部311と、被検査領域に向けて白色光を出射する白色光出射部312と、を備えることが好ましい。これにより、ビアホール93の検査を、励起光による測定結果、および、白色光による測定結果の双方に基づいて行うことができるため、検査精度を向上することができる。例えば、励起光で蛍光を発生しない異物であっても、白色光を照射した場合の被検査画像において目視で発見することが可能となる。
【0066】
上述のように、光照射部31は、励起光出射部311からの励起光、および、白色光出射部312からの白色光を、被検査領域に対して同時に照射可能であることが好ましい。これにより、白色光のみでは底面931の鮮明な画像が取得しづらく精度良い観察が難しい高アスペクト比のビアホール93についても、底面931の周囲の絶縁層95からの蛍光を利用して、比較的鮮明な底面931の画像を取得することができる。また、被検査画像において、ビアホール93の底面931と周囲の絶縁層95との境界を明瞭とすることもできる。その結果、ビアホール93の検査精度をさらに向上することができる。
【0067】
上述のように、基板9のビアホール93を検査する検査方法は、配線層94a,94bと絶縁層95とが交互に積層される積層基板(すなわち、基板9)上のビアホール93を含む被検査領域に対して、絶縁層95を形成する樹脂に蛍光を発生させる励起光を照射する工程(ステップS11またはステップS15)と、当該被検査領域からの反射光を受光して反射スペクトルを取得する工程(ステップS12またはステップS16)と、当該反射スペクトルに基づいてビアホール93の検査を行う工程(ステップS17)と、を備える。これにより、上記と同様に、ビアホール93おけるスミア96とスミア96以外の異物97とを精度良く判別することができる。
【0068】
上述の検査装置1では、励起光出射部311は、励起光を出射するLEDを備えているが、他の構造を有していてもよい。例えば、励起光出射部311は、LEDの代わりにLD(Laser Diode)を備えてもよい。また、例えば、図16に示すように、白色光出射部312から出射される白色光から所定の波長の光(例えば、波長405nmの光)を励起光として抽出するバンドパスフィルタ313が、励起光を出射する励起光出射部として光照射部31に設けられてもよい。
【0069】
次に、図17図19を参照しつつ、本発明の第2~第4の実施の形態に係る検査装置1a~1cについて説明する。検査装置1a~1cでは、基板9の被検査領域に照射される励起光の波長を、複数の波長の間で切り替えることが可能である。これにより、絶縁層95(図4参照)を形成する樹脂の種類が異なる複数種類の基板9が検査対象に含まれている場合、当該樹脂の種類に合わせて励起光の波長を切り替える(すなわち、当該樹脂が蛍光を発生する波長の励起光を選択して照射する)ことにより、1台の検査装置1で当該複数種類の基板9の検査を実施することができる。
【0070】
図17に示す検査装置1aは、光照射部31aが波長切替部36aを備える点を除き、図1に示す検査装置1と略同様の構成を備える。以下の説明では、検査装置1aの各構成に、検査装置1において対応する構成と同符号を付す。
【0071】
光照射部31aは、上述の励起光出射部311に加えて、励起光出射部311とは異なる波長の励起光を出射する1つ以上の他の励起光出射部311を備える。図17に示す例では、光照射部31aは、互いに異なる波長の励起光を出射する4つの励起光出射部311を備える。各励起光出射部311は、対応するダイクロイックミラー323および第1コリメータレンズ321と共に、水平方向に移動可能なフレーム37に固定されている。各励起光出射部311と同じフレーム37に固定されるダイクロイックミラー323は、励起光出射部311から出射される励起光を反射させ、当該励起光と異なる波長域の光を透過させる。したがって、4つのダイクロイックミラー323は、反射する光の波長が互いに異なる。
【0072】
波長切替部36aは、励起光出射部311、第1コリメータレンズ321およびダイクロイックミラー323をそれぞれ保持する4つのフレーム37を、水平方向に移動する光出射部移動機構である。波長切替部36aは、4つのフレーム37をそれぞれ独立して移動可能である。検査装置1aでは、検査対象である基板9の絶縁層95を形成する樹脂の種類に合わせて、当該樹脂に蛍光を発生させる波長の励起光を出射する励起光出射部311が選択される。そして、波長切替部36aにより、当該励起光出射部311が固定されているフレーム37が移動され、当該励起光出射部311に対応するダイクロイックミラー323が、基板9の被検査領域と分光測定部33との間の光路上に配置される。また、他の励起光出射部311に対応するダイクロイックミラー323は、被検査領域と分光測定部33との間から光路外へと退避される。これにより、検査対象である基板9に適した波長の励起光が、基板9上の被検査領域に対して照射される。
【0073】
このように、検査装置1aでは、光照射部31aは、励起光の波長を複数の波長の間で切り替える波長切替部36aを備える。これにより、絶縁層95を形成する樹脂の種類に応じて励起光の波長を切り替えることができるため、検査装置1aにおいて複数種類の基板9の検査を実施することができる。すなわち、検査装置1aの汎用性を向上することができる。
【0074】
図18に示す検査装置1bは、光照射部31bが波長切替部36bを備える点を除き、図1に示す検査装置1と略同様の構成を備える。以下の説明では、検査装置1bの各構成に、検査装置1において対応する構成と同符号を付す。
【0075】
波長切替部36bは、フィルタプレート361bと、プレート回転機構362bとを備える。フィルタプレート361bは、複数のフィルタ363bが周状に配置された略円板状の部材である。複数のフィルタ363bは、白色光から互いに異なる所定の波長の光を抽出するバンドパスフィルタである。光照射部31bでは、白色光出射部312から出射された白色光の一部がハーフミラー364bによりフィルタプレート361bへと導かれる。プレート回転機構362bは、フィルタプレート361bを回転させ、複数のフィルタ363bのうち一のフィルタ363bを、ハーフミラー364bにより導かれた白色光の光路上に配置する。プレート回転機構362bは、例えば電動モータである。
【0076】
検査装置1bでは、検査対象である基板9の絶縁層95(図4参照)を形成する樹脂の種類に合わせて、当該樹脂に蛍光を発生させる波長の励起光を白色光から抽出するフィルタ363bが当該光路上に配置される。すなわち、フィルタ363bは、励起光を出射する励起光出射部である。そして、当該フィルタ363bからの励起光は、ミラー368bにより反射されてダイクロイックミラー323へと導かれる。検査装置1bにおけるダイクロイックミラー323は、複数のフィルタ363bからの励起光のうち最も長い波長以下の波長域の光を反射し、当該最も長い波長よりも長い波長域の光を透過するように構成されている。したがって、フィルタ363bからの励起光は、ダイクロイックミラー323により反射されて基板9へと導かれる。これにより、検査対象である基板9に適した波長の励起光が、基板9上の被検査領域に対して照射される。
【0077】
このように、検査装置1bでは、光照射部31bは、励起光の波長を複数の波長の間で切り替える波長切替部36bを備える。これにより、絶縁層95を形成する樹脂の種類に応じて励起光の波長を切り替えることができるため、検査装置1bにおいて複数種類の基板9の検査を実施することができる。すなわち、検査装置1bの汎用性を向上することができる。
【0078】
図19に示す検査装置1cは、光照射部31cが波長切替部36cを備える点を除き、図1に示す検査装置1と略同様の構成を備える。以下の説明では、検査装置1cの各構成に、検査装置1において対応する構成と同符号を付す。
【0079】
波長切替部36cは、分光器365cと、スリット366cと、分光器回転機構367cとを備える。分光器365cは、白色光を様々な波長の光に分散させる(すなわち、分光させる)光学素子である。分光器365cは、例えばプリズムである。検査装置1cでは、白色光出射部312から出射された白色光の一部が、ハーフミラー364cおよびミラー369cにより分光器365cへと導かれる。スリット366cは、分光器365cから所定の方向に出射された光(すなわち、所定の波長の光)のみを励起光として通過させる開口を有する。分光器回転機構367cは、分光器365cを回転させることにより、分光器365cからスリット366cの開口へと向かう光の波長を変更する。分光器回転機構367cは、例えば電動モータである。
【0080】
検査装置1cでは、検査対象である基板9の絶縁層95(図4参照)を形成する樹脂の種類に合わせて、当該樹脂に蛍光を発生させる波長の励起光がスリット366cからダイクロイックミラー323へと導かれる。すなわち、分光器365cおよびスリット366cは、励起光を出射する励起光出射部である。当該励起光は、ダイクロイックミラー323により反射されて基板9へと導かれる。これにより、検査対象である基板9に適した波長の励起光が、基板9上の被検査領域に対して照射される。なお、分光器365cは、グレーティング(すなわち、回折格子)等、他の光学素子であってもよい。
【0081】
このように、検査装置1cでは、光照射部31cは、励起光の波長を複数の波長の間で切り替える波長切替部36cを備える。これにより、絶縁層95を形成する樹脂の種類に応じて励起光の波長を切り替えることができるため、検査装置1cにおいて複数種類の基板9の検査を実施することができる。すなわち、検査装置1cの汎用性を向上することができる。
【0082】
上述の検査装置1,1a~1cでは、様々な変更が可能である。
【0083】
例えば、検査装置1,1a~1cにより検査される基板9の構造は、上述のように、ビアホール93の周囲において絶縁層95が露出するものには限定されず、様々に変更されてよい。
【0084】
波長切替部36a~36cの構造は、図17図19に例示されるものには限定されず、様々に変更されてよい。また、波長切替部36a~36cは省略されてもよい。
【0085】
検査装置1では、励起光と白色光とは必ずしも同時に照射可能である必要はない。また、検査装置1では、基板9の検査に白色光を用いない場合等は、白色光出射部312は省略されてもよい。検査装置1aについても同様である。
【0086】
上述のピンホールミラー327は必ずしも設けられる必要はなく、ハーフミラー等がピンホールミラー327に代えて設けられてもよい。
【0087】
検査装置1において、スミア96の検出が表示制御部43等により自動的に行われる場合、撮像部34および表示部(すなわち、ディスプレイ107)は、必ずしも設けられなくてもよい。検査装置1a~1cについても同様である。
【0088】
検査装置1,1a~1cでは、ダイクロイックミラー323に代えて、励起光と異なる波長域の光を励起光から分離させて分光測定部33へと導く他のフィルタ部が設けられてもよい。また、当該フィルタ部は省略されてもよい。
【0089】
検査装置1,1a~1cでは、例えば、ヘッド移動機構23が省略され、ステージ21を水平方向の2方向(例えば、図1中の左右方向および図1の紙面に垂直な方向)にヘッド3に対して相対的に移動可能なステージ移動機構が設けられてもよい。
【0090】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0091】
1,1a~1c 検査装置
9 基板
31,31a~31c 光照射部
33 分光測定部
34 撮像部
36a~36c 波長切替部
93 ビアホール
94a,94b 配線層
95 絶縁層
107 ディスプレイ
311 励起光出射部
312 白色光出射部
313 バンドパスフィルタ
323 ダイクロイックミラー
327 ピンホールミラー
327a ピンホール
S11~S17 ステップ
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図14
図15
図16
図17
図18
図19