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特開2022-148135最適パラメータ決定システム、光コネクタ製造装置、最適パラメータ決定方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022148135
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】最適パラメータ決定システム、光コネクタ製造装置、最適パラメータ決定方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20220929BHJP
   B29C 45/76 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
G06T7/00 610Z
B29C45/76
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021049702
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000233295
【氏名又は名称】株式会社日立情報通信エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹下 昂希
【テーマコード(参考)】
4F206
5L096
【Fターム(参考)】
4F206AP12
4F206AP20
4F206AQ01
4F206AR032
4F206JA07
4F206JL02
4F206JP01
4F206JP13
4F206JP30
4F206JQ90
5L096AA06
5L096BA03
5L096CA02
5L096DA02
5L096JA11
5L096JA18
5L096KA04
5L096KA15
(57)【要約】
【課題】少ない学習データで、処理負担も少なく、高い精度で最適なパラメータを決定可能な技術を提供する。
【解決手段】最適パラメータ決定システム100は、環境データ210と製品の製造直後の画像データである直後画像データと当該製品の完成時の画像データである完成時画像データとから特徴量を抽出する学習装置130と、製品の製造時の環境データ210と完成時画像データと特徴量とに基づいて、推論モデルを生成し、完成した前記製品の良否を判定し、環境データ210内の予め定めたパラメータの最適値を決定する学習推論装置140と、を備え、環境データ210は、製品の製造に影響を与える1以上の前記パラメータを含む。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境データと製品の製造直後の画像データである直後画像データと当該製品の完成時の画像データである完成時画像データとから特徴量を抽出する学習装置と、
前記製品の製造時の前記環境データと前記完成時画像データと前記特徴量とに基づいて、推論モデルを生成し、完成した前記製品の良否を判定し、前記環境データ内の予め定めたパラメータの最適値を決定する学習推論装置と、を備え、
前記環境データは、前記製品の製造に影響を与える1以上の前記パラメータを含むこと、
を特徴とする最適パラメータ決定システム。
【請求項2】
請求項1記載の最適パラメータ決定システムであって、
前記学習推論装置は、前記特徴量を用いて転移学習を行うことにより、前記推論モデルを生成すること
を特徴とする最適パラメータ決定システム。
【請求項3】
請求項1記載の最適パラメータ決定システムであって、
前記学習装置は、中間層を有する深層学習を実行し、前記特徴量を、当該中間層から得ること
を特徴とする最適パラメータ決定システム。
【請求項4】
請求項3記載の最適パラメータ決定システムであって、
前記学習装置は、前記深層学習にオートエンコーダを用いること
を特徴とする最適パラメータ決定システム。
【請求項5】
請求項1記載の最適パラメータ決定システムであって、
前記製品の製造工程に樹脂を充填する工程を含み、
前記最適値を決定するパラメータは、前記樹脂の充填圧力であり、
前記直後画像データは、前記樹脂の硬化前の画像データであり、
前記完成時画像データは、前記樹脂の硬化後の画像データであること
を特徴とする最適パラメータ決定システム。
【請求項6】
請求項5記載の最適パラメータ決定システムであって、
前記製品は光コネクタであること
を特徴とする最適パラメータ決定システム。
【請求項7】
請求項6記載の最適パラメータ決定システムを備える光コネクタ製造装置。
【請求項8】
製品の製造に影響を与える1以上のパラメータを含む環境データの中の、予め定めた前記パラメータである対象パラメータの最適値を決定する最適パラメータ決定方法であって、
前記環境データと前記製品の製造直後の画像データである直後画像データと前記製品の完成時の画像データである完成時画像データとから特徴量を抽出する学習ステップと、
前記製品の製造時の前記環境データと前記完成時画像データと前記特徴量とに基づいて、推論モデルを生成する推論モデル生成ステップと、
前記推論モデルを用いて、完成した前記製品の良否を判定するとともに、前記対象パラメータの最適値を決定する学習推論ステップと、を備えること
を特徴とする最適パラメータ決定方法。
【請求項9】
コンピュータに
製品の製造に影響を与える1以上のパラメータを含む環境データと前記製品の製造直後の画像データである直後画像データと前記製品の完成時の画像データである完成時画像データとから特徴量を抽出する手順、
前記製品の製造時の前記環境データと前記完成時画像データと前記特徴量とに基づいて、推論モデルを生成する手順、
前記推論モデルを用いて、完成した前記製品の良否を判定するとともに、予め定めた前記パラメータである対象パラメータの最適値を決定する手順、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品製造時のパラメータの最適化技術に関する。特に、樹脂充填時の充填圧力値を最適化する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
成形品を成形するための成形条件を機械学習により調整する技術がある。例えば、特許文献1には、強化学習の機械学習器からなるエージェントによって成形条件を調整する技術が開示されている。特許文献1に開示の技術によれば、「エージェントは、色々な状態における行動に対して報酬を得て価値関数を更新する。学習が進んだ価値関数に基づいて行動を決定する。状態は射出成形機から得られる物理データと、成形品の成形不良の種類を表す不良タイプとを含むようにし、行動は成形条件とする。また報酬は成形不良の不良度合いを表す不良状態で与える。射出成形機システムに機械学習器からなる分類器を設け、成形品の画像データを入力として不良タイプと不良状態とを出力するようにし、これらをエージェントに与える(要約抜粋)」ことによりこれを実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-166702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術は、不良タイプごとに成形品のサンプルを用意したり、大量の疑似画像データを学習データとして用意したりする必要があるとともに、これらとパターンマッチングする必要があるため、最適なパラメータを得るために、処理負担が大きい。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、少ない学習データで、処理負担も少なく、高い精度で最適なパラメータを決定可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の最適パラメータ決定システムは、環境データと製品の製造直後の画像データである直後画像データと当該製品の完成時の画像データである完成時画像データとから特徴量を抽出する学習装置と、前記製品の製造時の前記環境データと前記完成時画像データと前記特徴量とに基づいて、推論モデルを生成し、完成した前記製品の良否を判定し、前記環境データ内の予め定めたパラメータの最適値を決定する学習推論装置と、を備え、前記環境データは、前記製品の製造に影響を与える1以上の前記パラメータを含むこと、を特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、環境によらず、精度よく駐車領域を検出できる。上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の光コネクタ製造装置の使用状況を説明するための説明図である。
図2】(a)は、本発明の実施形態の光コネクタ製造装置の構成図であり、(b)は、本発明の実施形態の最適パラメータ決定システムのハードウェア構成図である。
図3】本発明の実施形態の最適パラメータ決定システムの機能ブロック図である。
図4】本発明の実施形態の学習装置および学習推論装置の機能ブロック図である。
図5】(a)および(b)は、それぞれ、本発明の実施形態の学習モデル生成処理および最適圧力決定処理のフローチャートである。
図6】本発明の実施形態の劣化判定処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお、本発明は、本実施形態に制限されず、本発明の思想に合致するあらゆる応用例がその技術的範囲に含まれる。また、特に明示しない限り、各構成要素は複数でも単数でも構わない。
【0010】
以下、本実施形態では、光コネクタを製造する装置である光コネクタ製造装置を例にあげて詳細を説明する。
【0011】
まず、本実施形態の光コネクタ製造装置900が使用される状況を、図1を用いて説明する。光コネクタ910の生産工程において、コネクタ土台912およびピン913に樹脂911を充填する「樹脂充填プロセス」がある。樹脂911の充填は、機器に充填圧力を設定して行われる。充填後、熱を加えて樹脂を硬化させ(熱硬化プロセス)、硬化後の画像を取得し、硬化後の画像により、光コネクタ910の正常/不良を判定する(検査プロセス)。
【0012】
光コネクタ910には、熱硬化後、樹脂の高さが、樹脂充填直後より低下する特性がある。そして、低下量は、温湿度等の外部条件、樹脂特性(素材・粘度)に依存して変化する。
【0013】
従来、検査プロセスにおいて、正常か不良かの判定を、樹脂効果後の画像を用いて判定している。例えば、樹脂硬化後の光コネクタ910は、本図に示すように、正常と、充填不足による不良と、過充填による不良と、の3種に判定され、分類される。
【0014】
しかしながら、樹脂硬化後の判定であるため、不良と判定された光コネクタ910は、廃棄するしかなく、損失が大きい。また、製造から樹脂硬化までに、所定の期間が経過する。このため、判定により不良数が多く、充填時の樹脂充填圧力(以下、充填圧力と呼ぶ。)が不適切と判定されたとしても、その経過期間分は不適切な充填圧力の状態で製造されてしまう。すなわち、画像判定の結果を、充填圧力設定への迅速なフィードバックができない。本実施形態の光コネクタ製造装置900は、これらの課題を解決する。
【0015】
本実施形態の光コネクタ製造装置900は、これを実現するため、図2(a)に示すように、樹脂充填装置901と最適パラメータ決定システム100と、を備える。
【0016】
樹脂充填装置901は、PLC(Programmable Logic Controller)211を備え、設定された充填圧力で、光コネクタ910に樹脂を充填する。
【0017】
最適パラメータ決定システム100は、樹脂の充填圧力を最適化する。本実施形態では、環境データ210および硬化前後の画像データ220を用いて、生産環境における最適な充填圧力を算出し、それを、生産時の充填圧力にフィードバックする。
【0018】
最適パラメータ決定システム100は、まず、例えば、オートエンコーダ機能を用いて、少ない学習データから、特徴量と予測硬化後画像データとを対応づけた学習済みモデルを生成する。その後、実際の製造時のデータとその学習済みモデルのデータとを用い、転移学習により、推論モデルを生成する。そして、その推論モデルを用いて、製品の良否の判定(検査)をするとともに、その生産環境における最適な充填圧力を算出する。さらに、実際の製品の判定結果(検査結果)の変化を観察し、学習済みモデルを更新することにより、推論モデルを更新する。
【0019】
最初の学習データには、例えば、熱硬化プロセスにおける、環境データ210と、硬化前画像データと、検査プロセスにおける硬化後画像データと、を用いる。環境データ210は、樹脂充填工程に影響を与えるパラメータであり、例えば、充填圧力データ、温湿度データおよび樹脂粘度データを含む。
【0020】
充填圧力データは、樹脂充填装置901内の充填圧力(MPa)データであり、PLC211から得る。
【0021】
温湿度データは、樹脂充填装置901の温湿度データと、外気の温湿度データとを含む。温湿度データは、樹脂充填装置901内および外部に設置された温度センサ、湿度センサ等のセンサ212から得る。
【0022】
樹脂粘度データは、使用している樹脂の粘度である。例えば、一般的な統計データであり、外部装置213から取得する。外部装置213は、外部の記憶装置であってもよいし、ユーザからの入力を受け付ける入力装置であってもよい。
【0023】
画像データ220は、樹脂充填直後に、光コネクタ910を上部から撮影した、硬化前画像データと、樹脂硬化後、光コネクタ910を上部から撮影した硬化後画像データとを含む。これらの画像は、光コネクタ910を撮影するために設けられたカメラ214から得る。
【0024】
次に、本実施形態の最適パラメータ決定システム100の機能を図3および図4を用いて説明する。図3は、本実施形態の最適パラメータ決定システム100の機能ブロック図である。また、図4は、最適パラメータ決定システム100の学習装置130および学習推論装置140それぞれの機能ブロック図である。
【0025】
本図に示すように、最適パラメータ決定システム100は、学習装置130と、最適圧力決定装置150と、学習済みモデル135と、を備える。また、最適圧力決定装置150は、学習推論装置140と、充填圧力設定部161と、推論モデル最適化部162と、データ記憶部163と、を備える。
【0026】
学習装置130は、事前学習を行い、学習済みモデル135を生成する。本実施形態では、事前学習の入力データとして、環境データ210と硬化前画像データ222と硬化後画像データ224とを用いる。環境データ210は、充填圧力と温湿度と樹脂粘度とを含む。硬化前画像データ222は、光コネクタ910の製造直後(樹脂充填直後)の画像データであり、例えば、熱硬化プロセスで得られる。硬化後画像データ224は、光コネクタ910の完成時の画像データであり、例えば、検査プロセスで得られる。これらの入力データは、事前に用意した学習用のデータを用いてもよいし、光コネクタ910の製造の初期段階に得た実際のデータ、通常の製造段階で得た実際のデータを用いてもよい。用いる学習用データ数は、例えば、数10点程度でよい。
【0027】
学習装置130は、環境データ210と硬化前後画像データ222、224とから、特徴量を抽出し、予測硬化後画像データ133を得る。学習装置130は、中間層を有する深層学習を実行し、中間層から特徴量を得る。本実施形態では、学習装置130として、例えば、オートエンコーダを用いる。
【0028】
図4に示すように、学習装置130は、入力データを次元圧縮するエンコーダ131と、その次元圧縮したデータを復元するデコーダ132と、を備え、出力として、予測硬化後画像データ133を得る。
【0029】
エンコーダ131は、環境データ210と硬化前後画像データ222、224とを基に、特徴量を抽出する。学習装置130は、エンコーダ131で次元圧縮したデータ(特徴量)と、予測硬化後画像データ133との組を学習パターンとし、その集合を学習済みモデル135として生成し、学習推論装置140に出力する。
【0030】
なお、ここで用いられる学習用データは、正常なデータとする。基本的に、エンコーダ131で行う処理は、特徴量を抽出するのみであるため、教師なし学習を行う。異常データを用いる場合、ラベルを付し、半教師あり学習を行ってもよい。これにより、後述する学習推論装置140における転移学習の精度を高めることができる。
【0031】
抽出される特徴量は、環境データ210については、含まれる各データ間の相関等である。
【0032】
デコーダ132は、エンコーダ131が抽出した特徴量から画像を復元することにより、予測硬化後画像データ133を生成し、出力する。
【0033】
本実施形態では、学習装置130は、光コネクタ910の製造開始後も継続して所定の時間間隔で、実際の製造時の入力データを取得し、学習済みモデル135を生成する。生成した学習済みモデル135は、生成日時に対応づけて、学習装置130内に記憶する。なお、最新の学習済みモデル135のみ記憶してもよい。
【0034】
最適圧力決定装置150は、環境データ210と硬化後画像データ224と、学習済みモデル135とを用いて最適充填圧力を決定し、PLC211に設定する。
【0035】
学習推論装置140は、実際に光コネクタ910を製造する際の環境データ210と、実際に製造された光コネクタ910の硬化後画像データ224とを含む学習データに、学習済みモデル135を転移して結合し、学習させて推論モデル143(図4参照)を生成する。本実施形態の学習推論装置140は、学習装置130で学習した学習済みモデル135を学習に用い、いわゆる転移学習を実行する。そして、得られた推論モデル143に基づいて、製造された光コネクタ910が正常か不良かを判定する。また、最適な充填圧力を決定し、判定結果および最適な充填圧力(最適充填圧力)145(図4参照)を出力する。学習推論装置140は、検査プロセス時に処理を実行する。
【0036】
そして、学習推論装置140は、判定結果および最適充填圧力145をデータ記憶部163にも記憶する。さらに、その判定結果に対応づけて、その判定を行った際(推論時)の環境データ210も併せて記憶する。
【0037】
学習推論装置140が用いる環境データ210は、実際の製造時にリアルタイムで得た充填圧力と温湿度と樹脂粘度とを含む。硬化後画像データ224は、光コネクタ910の完成時(樹脂硬化後)の画像データであり、例えば、検査プロセスで得られる。
【0038】
学習推論装置140は、図4に示すように、畳み込み処理部141と結合処理部142と判定部144と、を備える。
【0039】
畳み込み処理部141は、硬化後画像データ224に対し、畳み込み処理を施し、特徴量を抽出する。畳み込み処理部141は、畳み込み処理に、例えば、畳み込みネットワーク(CNN:Convolutional Neural Network)を利用する。
【0040】
結合処理部142は、学習済みモデル135と環境データ210と畳み込み処理後の硬化後画像データ224とから推論モデル143を生成する。
【0041】
推論モデル143は、正常時の各入力データの特徴量の組み合わせが学習パターンとして登録されたものである。学習パターンには、その特徴量抽出時に用いた環境データ210も含めてよい。
【0042】
判定部144は、入力データと推論モデル143とから、製造された光コネクタ910の良否を判定するとともに、最適充填圧力を決定する。
【0043】
本実施形態では、判定部144は、入力データから抽出した特徴量の組み合わせ等に合致する学習パターンが、生成した推論モデル143に含まれるか否かで良否を判定する。すなわち、合致する学習パターンがある場合、正常と判定し、異なる特徴である場合、異常と判定する。なお、ここでいう合致は、完全に合致する場合に限定されない。判定には、予め定めた裕度を持たせてもよい。
【0044】
さらに、判定部144は、硬化後画像データ224を解析し、樹脂の高さが予め定められた第一閾値以上である場合、過充填と分類し、予め定められた第二閾値未満である場合、充填不足と分類する。なお、樹脂の高さは、コネクタ土台912の上面からの高さで判定してもよい。
【0045】
正常と判定された場合、判定部144は、現状の充填圧力を最適充填圧力とする。なお、推論モデル143内の合致した、または、最も近い学習パターンの充填圧力を、最適充填圧力としてもよい。
【0046】
不良と判定された場合は、判定部144は、推論モデル143内の最も近い学習パターンの充填圧力を、最適充填圧力とする。
【0047】
なお、最も近い学習パターンは、各比較対象の特徴量の差分の合計が最も小さいもの、あるいは、予め定めた特徴量の差分が最も小さいものなどとする。また、例えば、温湿度、樹脂粘度の条件が近い学習パターンの充填圧力を最適な充填圧力としてもよい。
【0048】
充填圧力設定部161は、学習推論装置140から出力された最適充填圧力を、PLC211に設定する。充填圧力設定部161は、まず、学習推論装置140から出力された最適充填圧力の値と、環境データ210として、現在、実際に設定されている充填圧力値とを比較する。そして、両者が予め定めた閾値以上異なる場合、最適充填圧力をPLC211に設定する。一方、両者の差が閾値未満の場合は、最適充填圧力をPLC211に設定しない。すなわち、現状設定されている充填圧力値がそのまま用いられる。
【0049】
推論モデル最適化部162は、学習推論装置140が使用する推論モデル143の精度が劣化しているか否かの判定を行い、劣化していると判定された場合は、転移学習に用いる学習済みモデル135を更新する。更新に用いる新たな学習済みモデル135は、学習装置130が生成し、記憶装置113に記憶した最新のモデルである。
【0050】
推論モデル最適化部162は、データ記憶部163の情報を用いて、推論モデル143の精度劣化判定を行う。データ記憶部163に記憶された光コネクタ910の良否の判定結果から、不良の割合が、予め定めた閾値を超えた場合、精度劣化と判定し、学習推論装置140に通知する。
【0051】
学習推論装置140は、精度劣化の通知を受け取ると、最新の学習済みモデル135を取得し、それを用いて転移学習を行い、推論モデル143を更新する。
【0052】
精度劣化の判定は、例えば、良否判定が行われる毎に実施されてもよいし、良否判定とは別個独立し、所定の時間間隔で行われてもよい。
【0053】
データ記憶部163は、各種情報(温湿度、充填圧力、画像、判定結果)を記憶するデータベースである。
【0054】
最適パラメータ決定システム100は、例えば、コンピュータ等の情報処理装置で実現される。図2(b)は、本実施形態の最適パラメータ決定システム100のハードウェア構成図である。本図に示すように、本実施形態の最適パラメータ決定システム100は、CPU(Central Processing Unit)111と、メモリ112と、記憶装置113と、入出力インタフェース(I/F)114とを備える。さらに、通信I/F115を備えていてもよい。
【0055】
CPU111は、所定のプログラムにしたがって最適パラメータ決定システム100全体の動作を制御する主制御部(メインプロセッサ)である。マイクロプロセッサユニット(MPU)で実現されてもよい。
【0056】
メモリ112は、CPU111のワーク領域として機能する。メモリ112として、例えば、RAM(Random Access Memory)などの揮発性メモリが用いられる。RAMは、CPU111と一体構成であっても良い。
【0057】
記憶装置113は、CPU111が処理により生成したデータ、処理に利用するデータおよびプログラム等を保存する領域である。ROM、ストレージ(ハードディスク、フラッシュメモリ)等の不揮発性の記憶媒体が用いられる。本実施形態では、例えば、学習済みモデル135や推論モデル143が格納される。また、データ記憶部163は、記憶装置113に構築される。
【0058】
入出力I/F114は、データの入出力のインタフェースである。また、通信I/F115は、通信インタフェースである。本実施形態の最適パラメータ決定システム100は、入出力I/F114または通信I/F115を介して、環境データ210および画像データ220を取得する。
【0059】
なお、最適パラメータ決定システム100は、ネットワーク上のクラウドサーバ等であってもよいし、樹脂充填装置901に接続された情報処理装置内に含まれていてもよい。さらに、学習装置130と、最適圧力決定装置150とは、それぞれ別個独立した情報処理装置やクラウドサーバであってもよい。
【0060】
次に、本実施形態の充填圧力設定処理の流れを説明する。本実施形態の充填圧力設定処理内の学習アルゴリズムは、図4に示すように、特徴量抽出処理フェーズ(Phase1)と転移学習処理フェーズ(Phase2)との2つのフェーズで実施される。
【0061】
まず、学習装置130による学習モデル生成処理の流れを説明する。図5(a)は、本実施形態の学習モデル生成処理の処理フローである。
【0062】
学習装置130は、所定のタイミングで、環境データ210と硬化前後画像データ222、224とを用い、学習済みモデル135を生成し(ステップS1101)、処理を終了する。これは、Phase1の特徴量抽出処理フェーズである。
【0063】
次に、最適圧力決定装置150による処理の流れを生成する。図5(b)は、本実施形態の最適圧力決定処理の処理フローである。
【0064】
まず、学習推論装置140は、学習済みモデル135を取得する(ステップS1201)。そして、学習済みモデル135と、予め定めた期間の環境データ210および硬化後画像データ224とを用いて推論モデル143を生成する(ステップS1202)。
【0065】
その後、学習推論装置140は、入力データを受信する毎に(ステップS1203)、生成した推論モデル143を用いて、良否判定を行うとともに最適充填圧力を算出する(ステップS1204)。
【0066】
そして、充填圧力設定部161は、算出された最適充填圧力に従って、PLC211に充填圧力を設定する(ステップS1205)。
【0067】
その後、推論モデル最適化部162は、推論モデル143が劣化したか否かを判別する(ステップS1206)。
【0068】
劣化したと判定された場合、最適圧力決定装置150は、ステップS1201へ戻り、新たな学習済みモデル135を取得し、処理を繰り返す。
【0069】
一方、劣化したと判定されない場合、最適圧力決定装置150は、終了の指示を受け付けるまで、ステップS1203へ戻り、処理を繰り返す(ステップS1206)。終了の指示を受け付けた場合、最適圧力決定装置150は、処理を終了する。
【0070】
なお、上記ステップS1201~S1204までの処理が、Phase2の転移学習処理フェーズである。
【0071】
なお、ステップS1206の推論モデル最適化部162による、推論モデル143の劣化判定は、この処理の流れの中で行わなくてもよい。上述のように、所定の時間間隔で、独立して行われてもよい。
【0072】
次に、推論モデル最適化部162による劣化判定処理の流れを説明する。図6は、本実施形態の劣化判定処理の処理フローである。
【0073】
推論モデル最適化部162は、データ記憶部163から、所定期間の判定結果を読み出す(ステップS1301)。所定期間は、例えば、前回の判定以降の期間、または、処理開始以降の期間等、予め定めておく。
【0074】
推論モデル最適化部162は、判定結果における、不良率を算出する(ステップS1302)。判定結果の全数をMAとし、そのうち、不良と判定された数をMFとすると、不良率Rは、例えば、R=MF/MAと算出される。
【0075】
推論モデル最適化部162は、不良率Rが、予め定めた閾値Th以上であるか否かを判別する(ステップS1303)。不良率Rが閾値Th以上の場合、劣化したと判定し(ステップS1304)、処理を終了する。一方、不良率Rが閾値Th未満の場合、そのまま処理を終了する。
【0076】
以上説明したように、本実施形態の最適パラメータ決定システム100は、環境データ210と光コネクタ910の製造直後の画像データ(硬化前画像データ222)と完成時の画像データ(硬化後画像データ224)とから特徴量を抽出する学習装置130と、環境データ210と光コネクタ910の完成時の画像データ(硬化後画像データ224)と特徴量とに基づいて、推論モデル143を生成し、完成した光コネクタ910の良否を判定し、充填圧力の最適値を決定する学習推論装置140と、を備える。そして、環境データ210は、樹脂の充填圧力と温湿度と樹脂粘度とを含む。
【0077】
本実施形態の最適パラメータ決定システム100は、環境データ210と画像データ220とを組み合わせて製品の良否を判定したり、最適な充填圧力を算出したりする。このため、画像データのみで良否を判定し、充填圧力の調整を行う場合に比べ、高い精度で最適な充填圧力を算出できる。そして、画像データのみで充填圧力の調整を行う場合に比べ、少ない変更回数で充填圧力を調整できる。
【0078】
また、例えば、本実施形態の光コネクタ910は、樹脂を充填する工程があるため、製造直後(樹脂充填直後)に、その製品の良否(正常か不良か)を判定できない。例えば、充填圧力が不適切であったとしても、樹脂が硬化するまで、その適否を判定することはできない。このため、不適切な場合、損失が大きい。
【0079】
しかしながら、本実施形態の最適パラメータ決定システム100は、製造初期段階の画像データ220と環境データ210とを用いてオートエンコーダで学習した特徴量を転移学習し、推論モデル143を生成する。このように転移学習を行うため、最初の特徴量抽出する学習時は、製造初期段階の画像データ220だけで済む。また、このデータ数は数10点程度で十分である。そして、本実施形態の最適パラメータ決定システム100は、このとき、オートエンコーダを用いるため、正常データのみで高い精度の結果を得られる学習済みモデル135を生成できる。すなわち、学習のための不良データを生成する必要がない。さらに、本実施形態の最適パラメータ決定システム100は、得られた学習済みモデル135を転移学習して推論モデル143を生成するため、少ない学習データで、高精度の推定可能な推論モデル143を得ることができる。このため、本実施形態の最適パラメータ決定システム100は、製造開始後、早い段階からこの推論モデル143を用いた判定および充填圧力の最適化を実行でき、損失の発生を抑えることができる。
【0080】
また、本実施形態の最適パラメータ決定システム100は、精度の劣化の判定を行い、精度が劣化したと判定された場合、転移学習に用いる学習済みモデル135を最新のものに更新する。このため、本実施形態の最適パラメータ決定システム100は、外部環境が変化した場合でも、現行の製造工程を止めることなく、並行して、推定モデルを最適化することができる。
【0081】
以上により、本実施形態の最適パラメータ決定システム100は、簡易な構成で、計算負担を増大させることなく、環境に応じて最適な充填圧力を設定でき、その結果、製品の歩留まりを向上させることができる。
【0082】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。また、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0083】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD等の記録装置、または、ICカード、SDカード、光ディスク等の記録媒体に置いてもよい。また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。例えば実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0084】
100:最適パラメータ決定システム、111:CPU、112:メモリ、113:記憶装置、114:入出力I/F、115:通信I/F、130:学習装置、131:エンコーダ、132:デコーダ、133:予測硬化後画像データ、135:学習済みモデル、140:学習推論装置、141:畳み込み処理部、142:結合処理部、143:推論モデル、144:判定部、145:判定結果、最適充填圧力、150:最適圧力決定装置、161:充填圧力設定部、162:推論モデル最適化部、163:データ記憶部、210:環境データ、211:PLC、212:センサ、213:外部装置、214:カメラ、220:画像データ、222:硬化前画像データ、224:硬化後画像データ、900:光コネクタ製造装置、901:樹脂充填装置、910:光コネクタ、912:コネクタ土台、913:ピン
図1
図2
図3
図4
図5
図6