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特開2022-148138基板分析用ノズル、物質回収装置、物質回収方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022148138
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】基板分析用ノズル、物質回収装置、物質回収方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/28 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
G01N1/28 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021049705
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】315002243
【氏名又は名称】ユナイテッド・セミコンダクター・ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】特許業務法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中津 正人
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AA13
2G052AB26
2G052AC28
2G052AD06
2G052AD32
2G052AD46
2G052CA22
2G052CA24
2G052FD10
2G052JA01
(57)【要約】
【課題】物質回収装置の規模を縮小する。
【解決手段】基板の表面に付着した分析対象の物質を回収液により回収する基板分析用ノズル10が提供される。基板分析用ノズル10は、管の先端の先端部に開口11aが設けられた回収部11と、回収部11の周囲に設けられた側面部12aと、側面部12aと回収部11の側面部11bとの間に、側面部11b,12aのそれぞれに当接されているとともに開口11aよりも孔の開口面積径が小さい複数の開口が設けられた底部12bと、を有し、少なくとも底部12bが疎水性をもつ周囲部12と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に付着した分析対象の物質を回収液により回収する基板分析用ノズルにおいて、
管の先端の先端部に第1の開口が設けられた回収部と、
前記回収部の周囲に設けられた第1の側面部と、前記第1の側面部と前記回収部の第2の側面部との間に、前記第1の側面部と前記第2の側面部のそれぞれに当接されているとともに前記第1の開口よりも孔の開口面積が小さい複数の第2の開口が設けられた底部と、を有し、少なくとも前記底部が疎水性をもつ周囲部と、
を有する基板分析用ノズル。
【請求項2】
前記底部は、前記複数の第2の開口が形成された平面状の疎水性部材により形成されている、請求項1に記載の基板分析用ノズル。
【請求項3】
前記疎水性部材は、網状の部材である、請求項2に記載の基板分析用ノズル。
【請求項4】
前記底部を覆うように配置された蓋部材を、さらに有する請求項1乃至3の何れか一項に記載の基板分析用ノズル。
【請求項5】
前記周囲部を加熱する加熱体を、さらに有する請求項1乃至4の何れか一項に記載の基板分析用ノズル。
【請求項6】
前記周囲部の前記第1の側面部から突出し前記底部に対して傾斜するように前記第1の側面部に当接された平板による底面部と、前記底面部と前記第1の側面部とに当接された第3の側面部と、を含む突出部を、さらに有する請求項1乃至5の何れか一項に記載の基板分析用ノズル。
【請求項7】
前記先端部は、円筒形状、逆円錐の先端が除去された形状、または上部が円筒形状で下部が逆円錐の先端が除去された形状である、請求項1乃至6の何れか一項に記載の基板分析用ノズル。
【請求項8】
前記周囲部は、前記底部において液体を保持する請求項1乃至7の何れか一項に記載の基板分析用ノズル。
【請求項9】
前記複数の第2の開口の開口面積は、前記底部に導入される前記液体を前記複数の第2の開口から下方に流出させずに前記底部において保持可能な大きさである、請求項8に記載の基板分析用ノズル。
【請求項10】
前記液体は、前記基板の表面上に形成された膜を除去する蒸気を発生させる薬液である請求項8または9に記載の基板分析用ノズル。
【請求項11】
前記薬液は、前記膜が酸化膜または窒化膜の場合、フッ化水素酸であり、前記膜がシリコン系膜の場合、フッ化水素酸と硝酸の混合液であり、前記膜が金属膜または金属酸化膜の場合、塩酸または硝酸であり、前記膜が両性金属膜または両性金属酸化膜の場合、アルカリ溶液である、請求項10に記載の基板分析用ノズル。
【請求項12】
基板の表面に付着した分析対象の物質を回収液により回収する基板分析用ノズルであって、管の先端の先端部に第1の開口が設けられた回収部と、前記回収部の周囲に設けられた第1の側面部と、前記第1の側面部と前記回収部の第2の側面部との間に、前記第1の側面部と前記第2の側面部のそれぞれに当接されているとともに前記第1の開口よりも孔の開口面積が小さい複数の第2の開口が設けられた底部と、を有し、少なくとも前記底部が疎水性をもつ周囲部と、を含む前記基板分析用ノズルと、
前記基板分析用ノズルを保持するアームと、
前記アームを駆動することで前記基板分析用ノズルを、前記基板上で走査させる駆動装置と、
を有する物質回収装置。
【請求項13】
管の先端の先端部に第1の開口が設けられた回収部と、前記回収部の周囲に設けられた第1の側面部と、前記第1の側面部と前記回収部の第2の側面部との間に、前記第1の側面部と前記第2の側面部のそれぞれに当接されているとともに前記第1の開口よりも孔の開口面積が小さい複数の第2の開口が設けられた底部と、を有し、少なくとも前記底部が疎水性をもつ周囲部と、を含む基板分析用ノズルが、
前記周囲部に導入される液体から生じる蒸気によって基板の表面上に形成された膜を除去し、
前記基板の表面に付着した分析対象の物質を、前記第1の開口を介して前記基板に接触する回収液により回収する、
物質回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に付着した分析対象の物質を回収する基板分析用ノズル、物質回収装置及び物質回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造時において、シリコンウェハなどの基板が金属や有機物など物質が付着することにより汚染されると、デバイス特性に影響が生じる可能性がある。そのため、汚染源となるこれらの物質を回収し、汚染の程度などを分析することが行われる。
【0003】
汚染源を回収するために、基板上に液体を滴下し汚染源をその液体に移動させるノズルが知られている。なお、基板に滴下した液体が広がってしまうと、液体の回収が困難となるため、前もって基板表面に形成されている親水性を有する酸化膜などの除去が行われる。
【0004】
従来、2重管構造のノズルを用いて、酸化膜などを除去するためのガスを外管から基板に吹き付けながら、内管により保持した液体により基板表面の汚染源を回収する技術があった(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-232182号公報
【特許文献2】特開平10-10018号公報
【特許文献3】特開2016-57230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の2重管構造のノズルを用いた技術では、ノズルの外部に気化装置が必要となり、物質回収装置の規模が大きくなってしまう問題がある。
1つの側面では、本発明は、物質回収装置の規模を縮小可能な基板分析用ノズル、物質回収装置及び物質回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの実施態様では、基板の表面に付着した分析対象の物質を回収液により回収する基板分析用ノズルにおいて、管の先端の先端部に第1の開口が設けられた回収部と、前記回収部の周囲に設けられた第1の側面部と、前記第1の側面部と前記回収部の第2の側面部との間に、前記第1の側面部と前記第2の側面部のそれぞれに当接されているとともに前記第1の開口よりも孔の開口面積が小さい複数の第2の開口が設けられた底部と、を有し、少なくとも前記底部が疎水性をもつ周囲部と、を有する基板分析用ノズルが提供される。
【0008】
また、1つの実施態様では、基板の表面に付着した分析対象の物質を回収液により回収する基板分析用ノズルであって、管の先端の先端部に第1の開口が設けられた回収部と、前記回収部の周囲に設けられた第1の側面部と、前記第1の側面部と前記回収部の第2の側面部との間に、前記第1の側面部と前記第2の側面部のそれぞれに当接されているとともに前記第1の開口よりも孔の開口面積が小さい複数の第2の開口が設けられた底部と、を有し、少なくとも前記底部が疎水性をもつ周囲部と、を含む前記基板分析用ノズルと、前記基板分析用ノズルを保持するアームと、前記アームを駆動することで前記基板分析用ノズルを、前記基板上で走査させる駆動装置と、を有する物質回収装置が提供される。
【0009】
また、1つの実施態様では、管の先端の先端部に第1の開口が設けられた回収部と、前記回収部の周囲に設けられた第1の側面部と、前記第1の側面部と前記回収部の第2の側面部との間に、前記第1の側面部と前記第2の側面部のそれぞれに当接されているとともに前記第1の開口よりも孔の開口面積が小さい複数の第2の開口が設けられた底部と、を有し、少なくとも前記底部が疎水性をもつ周囲部と、を含む基板分析用ノズルが、前記周囲部に導入される液体から生じる蒸気によって基板の表面上に形成された膜を除去し、前記基板の表面に付着した分析対象の物質を、前記第1の開口を介して前記基板に接触する回収液により回収する、物質回収方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
1つの側面では、本発明は、物質回収装置の規模を縮小できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施の形態の基板分析用ノズルの一例を示す上面図である。
図2】本実施の形態の基板分析用ノズルの一例を示す斜視図である。
図3】基板分析用ノズルの製造例を説明する斜視図である。
図4】蓋部材及び加熱体の一例を示す平面図である。
図5】蓋部材及び加熱体を含む基板分析用ノズルに回収液及びVPD液を供給した例を示す図である。
図6】物質回収方法及び物質回収装置の一例を示す図である。
図7】物質回収時における基板分析用ノズルと基板と基板保持部の側面図である。
図8】液体保持部の底部として採用する疎水性部材についての実験例を示す図である。
図9】パンチングシート上のフッ酸による熱酸化膜のエッチング実験を示す図である。
図10】熱酸化膜のエッチング実験の結果を示す図である。
図11】液体保持部の底部の面積とエッチング時間との関係を示す図である。
図12】ウェハ膜種に応じた薬液種類の例を示す図である。
図13】膜の分解以外の処理とその処理に用いられる薬液種類の例を示す図である。
図14】回収部の第1の変形例を示す図である。
図15】回収部の第2の変形例を示す図である。
図16】液体保持部の底部の変形例を示す図である。
図17】基板分析用ノズルの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明を実施するための形態を、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施の形態の基板分析用ノズルの一例を示す上面図である。また、図2は、本実施の形態の基板分析用ノズルの一例を示す斜視図である。
【0013】
基板分析用ノズル10は、半導体装置の製造時において、シリコンウェハなどの基板の表面に付着した分析対象の物質(たとえば、基板の汚染源となる金属や有機物など)を回収液により回収するノズルである。
【0014】
本実施の形態の基板分析用ノズル10は、図1及び図2に示されているように、回収部11、周囲部12、突出部13を有する。
回収部11は、管状であり、管の先端部に開口11aが設けられている。先端部の形状は、図1図2の例では円筒形状であるが、これに限定されるものではない(後述の図14図15参照)。また、図1の例では、回収部11の外形は、平面視で円形となっているがこれに限定されるものではなく、楕円形であってもよいし、四角形などであってもよい。
【0015】
物質回収時には、管の上方の開口から回収液が導入され、管の下方の先端部の開口11aを介して回収液が基板表面に接触する。
たとえば、回収液は、回収される物質にSi(シリコン)が含まれる場合、フッ化水素酸(以下、フッ酸と呼ぶ)と過酸化水素水の混合液が用いられる。フッ酸の濃度は濃くてもよいが、物質の回収後の回収液が導入される分析装置の劣化を防ぐため、ある程度薄くすることが望ましい。フッ酸の濃度は、おおむね1~3%が望ましい。
【0016】
過酸化水素水を用いる理由は以下の通りである。物質を回収する際に、基板の表面を酸化しない場合、金属不純物が十分回収されないため、酸化性液体を加えることが望ましい。酸化性液体として、中性であり、また、不純物が少ないものを入手しやすい過酸化水素水が用いられる。過酸化水素の濃度は、おおむね2~4%が望ましい。
【0017】
一方、回収液に含まれる金属不純物量は、実施される分析の内容に応じたものとすることが望ましい。たとえば、微量分析が行われる場合、回収液に含まれる各金属が10ppt程度より少ないことが望ましい。
【0018】
周囲部12は、回収部11の周囲に設けられた側面部12a(周囲部12の外壁)と、側面部12aと回収部11の側面部11b(回収部11の外壁)との間に、側面部11b,12aのそれぞれに当接されている底部12bを有する。
【0019】
底部12bには、開口11aよりも孔の開口面積が小さい複数の開口が設けられている。また、周囲部12において、少なくとも底部12bは疎水性をもつ。
底部12bが疎水性を有していることで、底部12bに比較的大きい開口面積の複数の開口が設けられていても、側面部11b,12aの間の底部12bの上に液体を導入したときに、液体が複数の開口から下方に流出せず、液体の表面張力により保持される。
【0020】
底部12bに設けられた複数の開口の開口面積は、底部12bに導入される液体を複数の第2の開口から下方に流出させずに底部12bにおいて保持可能な大きさである。液体を保持可能な複数の開口の開口面積は、使用される液体の種類、使用時の気圧、底部12bの形状などに応じて、事前の実験などによって決定される(後述の実験例(図8図9)参照)。
【0021】
なお、底部12bの複数の開口のそれぞれの形状は、円形に限られず、ダイヤ、正方形、長方形、五角形を含む多角形などであってもよい。
底部12bは、たとえば、複数の開口が形成された平面状の疎水性部材により形成されている。平面状の疎水性部材の一例として、網状のPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)がある。
【0022】
なお、底部12bは平面状に限定されず、凹凸があってもよく(たとえば、後述の図16参照)、液体を保持可能な構成になっていればよい。
また、図1の例では、周囲部12の外形は、平面視で円形となっているがこれに限定されるものではなく、楕円形であってもよいし、四角形などであってもよい。
【0023】
上記のように、周囲部12は液体を保持する機能を有しているため、以下、液体保持部12と呼ぶことにする。
液体保持部12が保持する液体は、気相分解により、基板表面に形成されている親水性を有する膜を除去する蒸気(エッチングガス)を発生させる薬液(以下VPD(Vapor Phase Decomposition)液という)である。たとえば、基板表面に酸化膜が形成されている場合、VPD液として、フッ酸が用いられる。
【0024】
フッ酸は、ある程度濃くないと膜を除去するエッチング時間が遅くなるため、20%より濃い濃度であることが望ましい。濃度が50%のフッ酸は入手しやすいが、これより濃い濃度のものを用いてもよい。
【0025】
また、VPD液は、直接、基板には接触しないため、回収液に比べて、金属不純物が多く含まれていてもよい。
突出部13は、液体保持部12の側面部12aから突出し底部12bに対して傾斜するように側面部12aに当接された平板による底面部13aと、底面部13aと側面部12aに当接された側面部13bと、を含む。このような突出部13は、VPD液を液体保持部12の底部12bに注ぎ込むために用いられる。そのため、以下では、突出部13を注ぎ口13と呼ぶことにする。
【0026】
液体保持部12に保持されるVPD液は、このような注ぎ口13を設けずに、底部12bに対して上方から直接導入されるようにしてもよい。しかし、上記のような注ぎ口13を設けることで、VPD液の導入時に液はねなどによって液体保持部12からVPD液がこぼれ出すことを防止できる。
【0027】
底面部13aの傾斜の角度は、急すぎると液体保持部12の底部12bに液体が注ぎ込まれる際に液はねが生じ、液体保持部12からこぼれ出す可能性があるため、これを考慮して適宜決定される。
【0028】
なお、図1図2の例では、側面部12aの一部にコの字型の切り欠きが形成されており、注ぎ口13に対して開放状態となっているが、このような形態に限定されるわけではない(たとえば、後述の図17参照)。
【0029】
上記のような基板分析用ノズル10は、たとえば、以下のように製造可能である。
図3は、基板分析用ノズルの製造例を説明する斜視図である。
たとえば、図3に示すように、回収部11、液体保持部12の側面部12a、底部12bとなる疎水性部材12b1、注ぎ口13が、それぞれ別々に作製された後に、溶着により一体化される。
【0030】
液体保持部12の底部12bとなる疎水性部材12b1の外径は、液体保持部12の側面部12aの内径よりも広く作製されており(たとえば、側面部12aの外径と同程度)、疎水性部材12b1の上に側面部12aが溶着される。
【0031】
また、疎水性部材12b1の中央部には、孔径が、回収部11の側面部11bの外径よりも狭く、開口11aの孔径以上の開口12b2が作製されている。そして、疎水性部材12b1の上に、開口11aと開口12b2の中心をあわせるように、回収部11が溶着される。
【0032】
また、注ぎ口13は、側面部12aのコの字型の切り欠き部分に溶着される。
上記のように、回収部11、液体保持部12、注ぎ口13のそれぞれが溶着される場合、回収部11、液体保持部12及び注ぎ口13は同じ材質であることが望ましい。
【0033】
液体保持部12に保持されるVPD液がフッ酸である場合、回収部11、液体保持部12、注ぎ口13の材質として、フッ酸に対して安定な材料であるフッ素系樹脂を用いることができる。特に限定されるわけではないが、フッ素系樹脂として、疎水性が高く、変形しにくいPTFEを用いることが望ましい。
【0034】
なお、基板分析用ノズル10の製造方法は、上記の例に限定されない。1つの疎水性部材から加工して、基板分析用ノズル10の全てまたは一部が作製されるようにしてもよい。
【0035】
なお、基板分析用ノズル10は、以下のような蓋部材や加熱体を有していてもよい。
図4は、蓋部材及び加熱体の一例を示す平面図である。また、図5は、蓋部材及び加熱体を含む基板分析用ノズルに回収液及びVPD液を供給した例を示す図である。
【0036】
蓋部材15は、図4のように中央部に開口15aを有している。このような開口15aはなくてもよいが、開口15aを設けることで、図5のように蓋部材15を付けたまま回収部11に対して回収液20の導入及び回収が可能である。
【0037】
また、VPD液21の注ぎ口13からの供給も蓋部材15を付けたまま可能である。図5の例では、VPD液21が、容器22から注ぎ口13を介して液体保持部12の底部12bに注がれている。
【0038】
また、図5のように、蓋部材15は、液体保持部12の底部12bを覆うように配置されている。これにより、液体保持部12に保持されているVPD液21が気化することにより発生した蒸気が、基板分析用ノズル10の上方に抜けていくことを抑制できる。
【0039】
さらに、図4及び図5のように加熱体(たとえば、ヒータ)15bは、たとえば、蓋部材15に組み込まれている。加熱体15bにより、液体保持部12を加熱することで、液体保持部12に保持されているVPD液21の気化を促進させることができる。
【0040】
次に、上記のような基板分析用ノズル10を用いた物質回収方法の例を説明する。
図6は、物質回収方法及び物質回収装置の一例を示す図である。また、図7は、物質回収時における基板分析用ノズルと基板と基板保持部の側面図である。
【0041】
図6に示すように、物質回収装置30は、基板分析用ノズル10と、基板分析用ノズル10を保持するアーム32と、アーム32を駆動することで基板分析用ノズル10を基板35上で走査させる駆動装置31を有する。アーム32の先端は、基板分析用ノズル10の液体保持部12の側面部12aの形状に応じて、基板分析用ノズル10を保持できるような構成となっている。
【0042】
基板分析用ノズル10は、図7に示すように、基板35の表面に対して所定の距離(d)だけ離れた位置で、基板35上で走査される。dは、たとえば、0.1~3mm程度である。また、図7に示すように、基板35は、基板保持部36上に搭載される。基板保持部36は、回転可能であり、物質回収時には基板35を回転させる。
【0043】
上記のような構成において、たとえば以下のような手順で物質回収が行われる。
まず、前述の図5に示したように、容器22から注ぎ口13を介して、VPD液21が液体保持部12の底部12bに導入される。
【0044】
その後、駆動装置31は、アーム32を駆動することで基板分析用ノズル10を基板35の中央部に移動させる。
液体保持部12に保持されたVPD液21が気化することで、図7に示すように蒸気40(エッチングガス)が発生し、基板35の表面に形成されている図示しない膜が除去される。
【0045】
そして、図5に示したように、回収部11の管の上方の開口から回収液20が導入され、管の下方の先端部の開口11aを介して回収液20が基板35の表面に接触する。これにより、基板35の表面に付着した物質の回収が開始される。
【0046】
基板保持部36は基板35を回転させ、駆動装置31は、アーム32を駆動して基板分析用ノズル10を基板35の中央部から周辺部に走査させる。これにより、膜の除去とともに物質の回収が同時に連続的に行われる。
【0047】
基板分析用ノズル10が基板35の端部に達したとき、駆動装置31はアーム32の駆動を停止する。
その後、回収液20が、回収部11から、たとえば、シリンジポンプなどにより採取され、分析装置にかけられる。
【0048】
上記のように、基板分析用ノズル10は、液体保持部12の底部12bにおいて、VPD液21を保持でき、保持されたVPD液21が気化することにより発生する蒸気40が底部12bの複数の開口から下方に抜けて、基板35の表面の膜を除去する。このため、基板分析用ノズル10の外部に、エッチングガスを発生させるための気化装置を設けなくてもよくなり、物質回収装置30の規模を縮小できる。気化装置を設けた場合、配管などによって規模が大きくなってしまうためである。また、気化装置を設けなくてもよくなるため、コストが削減される。
【0049】
さらに、従来のように、2重管構造のノズルを用いた場合、内管と外管の間に狭所空間が生じるためメンテナンスが容易ではないが、本実施の形態の基板分析用ノズル10では、底部12bの面積を比較的広く作製することで、メンテナンスも容易となる。なお、底部12bの面積を広くすることで、基板35の表面の膜の除去にかかる時間を短縮することができる。
【0050】
(実験例)
図8は、液体保持部の底部として採用する疎水性部材についての実験例を示す図である。
【0051】
図8では、厚みが0.5mmで、孔径が0.75mmの複数の開口(たとえば、開口50a)が孔ピッチ=1.0mmで形成されているPTFE製のパンチングシート50の上に、濃度50%、0.4mlのフッ酸51を滴下した例が示されている。この場合、PTFEが有する疎水性により、フッ酸51はパンチングシート50の下方には落ちなかった。
【0052】
図9は、パンチングシート上のフッ酸による熱酸化膜のエッチング実験を示す図である。
図9では、シリコンウェハ上に形成された膜厚100nmの熱酸化膜52の上に太さ2mmのOリング53(図10参照)が配置され、Oリング53上に上記のフッ酸51が滴下されたパンチングシート50が載せられている。
【0053】
図10は、熱酸化膜のエッチング実験の結果を示す図である。
図10には、図9の状態で12秒経過後、Oリング53上からパンチングシート50を取り除いたときの様子が示されている。エッチング部分54において、熱酸化膜52が除去され、シリコンウェハが露出していることが確認された。
【0054】
以上の結果から、上記のようなパンチングシート50を、液体保持部12の底部12bとして用いることができることがわかった。
(処理速度について)
物質回収を速く行うためには、基板分析用ノズル10の基板35上での走査速度は速い方がよい。しかしながら、走査速度が速すぎると、回収液が回収部11の先端部の開口11aから外れてしまう。そのため、走査速度は3cm/秒程度であることが好ましい。
【0055】
開口11aの孔径を1cmとした場合、回収速度は、3cm/秒となる。直径30cmの基板35の面積は706.5cmであるため、物質回収にかかる時間は約3.9分である。
【0056】
物質回収に上記の時間を要するため、基板35の表面全体のエッチングが完了する時間であるエッチング時間は、上記の時間よりも短くしなくてもよい。
図9図10に示した実験では、厚さが100nmの熱酸化膜52から2.5mm(Oリング53の太さ(=2mm)+パンチングシート50の厚み(=0.5mm))上方に離れた位置にフッ酸51がある場合、12秒でエッチングが完了した。このため、液体保持部12の底部12bとして、上記のパンチングシート50を用い、基板35と底部12bとの距離(図7のd)を2mmとした場合、底部12bの面積とエッチング時間との関係は以下のようになる。
【0057】
図11は、液体保持部の底部の面積とエッチング時間との関係を示す図である。なお、図11において、Dは底部12bの直径である。液体保持部12の側面部12aの直径は、(D+0.4)cmである。また、回収部11の側面部11bの直径は1.4cm、開口11aの直径は1cmである。
【0058】
図11に示されているように、エッチング時間は、D=7cmのときは物質回収にかかる時間(約3.9分)とほぼ同じである。このため、底部12bの直径は、D=7cm程度とすればよい。
【0059】
なお、図11には、基板35上に形成される自然酸化膜(厚みは1nm程度)をエッチングする場合の、液体保持部12の底部の面積とエッチング時間との関係についても示されている。図11に示すように、基板35上に形成される自然酸化膜を除去する場合、D=3cmの場合、4.3分、D=4cmの場合、2.1分となるため、物質回収にかかる上記の時間を考慮すると、D=3cm以上とすればよい。
【0060】
ところで、上記の説明では、基板35上に形成される酸化膜を分解(除去)するために、VPD液21として、フッ酸を用いる例を説明したが、膜の種類(ウェハ膜種)によって異なる薬液種類のVPD液21が用いられる。
【0061】
図12は、ウェハ膜種に応じた薬液種類の例を示す図である。
フッ酸は、ウェハ膜種が酸化膜だけではなく、窒化膜を分解する場合にも用いられる。ポリシリコン、エピシリコンなどのシリコン系膜を分解する場合、フッ酸と硝酸の混合液が用いられる。金属膜や金属酸化膜を分解する場合、塩酸または硝酸が用いられる。
【0062】
両性金属膜や両性金属酸化膜を分解する場合、アルカリ溶液が用いられる。また液体保持部12は、膜の分解以外の用途にも用いることができる。
図13は、膜の分解以外の処理とその処理に用いられる薬液種類の例を示す図である。
【0063】
基板35の表面の乾燥には、IPA(IsoPropyl Alcohol)が用いられる。基板35の表面の加湿には、純水が用いられる。基板35の表面への有機溶剤の塗布には、有機溶剤が用いられる。
【0064】
ただし、IPAや有機溶剤は純水やフッ酸などと比べて表面張力が小さい。そのため、液体保持部12に保持させる液体としてIPAや有機溶剤についても用いられる場合、液体保持部12の底部12bの開口の孔径を、フッ酸や純水を用いる場合よりも小さくすることが望ましい。
【0065】
(変形例)
前述のように、回収部11は、図1図2のような円筒形状に限定されない。たとえば、以下のような形状であってもよい。
【0066】
図14は、回収部の第1の変形例を示す図である。
図14に示されている回収部60の先端部は、逆円錐の先端が除去された形状となっている。除去された先端に形成されている開口60aが、図1図2に示した回収部11の開口11aに対応している。
【0067】
図15は、回収部の第2の変形例を示す図である。
図15に示されている回収部61の先端部は、上部が円筒形状で下部が逆円錐の先端が除去された形状となっている。除去された先端に形成されている開口61aが、図1図2に示した回収部11の開口11aに対応している。
【0068】
液体保持部12の底部12bは、前述のパンチングシートなどの平面状に限定されず、たとえば、以下のような形状であってもよい。
図16は、液体保持部の底部の変形例を示す図である。
【0069】
図16に示されている底部70には、平面部分から上方に突出している複数の突出部(たとえば、突出部71)が設けられている。各突出部には開口(たとえば、開口71a)が設けられている。図16の例では、開口の径は、上方から下方にいくほど大きくなっている。
【0070】
なお、上記のような複数の突出部は、平面部分の下方に突出するように設けられていてもよい。開口の径の大きさなどの条件によりVPD液を保持することが可能であれば、そのような構成であってもよい。
【0071】
また、図1図2の例では、液体保持部12の側面部12aには、注ぎ口13との当接部分にコの字型の切り欠きが形成されていたが、以下のような構成であってもよい。
図17は、基板分析用ノズルの変形例を示す図である。図17において、図1図2に示した要素と同じ要素については同じ符号が付されている。
【0072】
基板分析用ノズル80において、液体保持部81の側面部81aには、注ぎ口13との当接部分に、複数の開口を有する開口部81a1が設けられている。
このような、開口部81a1を設けることで、VPD液が急激に底部12bに流れ込むことが抑制され、液はねを防止できる。
【0073】
以上、実施の形態に基づき、本発明の基板分析用ノズル、物質回収装置及び物質回収方法の一観点について説明してきたが、これらは一例にすぎず、上記の記載に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0074】
10 基板分析用ノズル
11 回収部
11a 開口
11b,12a,13b 側面部
12 周囲部(液体保持部)
12b 底部
13 突出部(注ぎ口)
13a 底面部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17