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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022148148
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】積層コイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/29 20060101AFI20220929BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
H01F27/29 123
H01F17/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021049717
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】生出 章彦
(72)【発明者】
【氏名】吉野 真
(72)【発明者】
【氏名】岡田 知生
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 英輝
(72)【発明者】
【氏名】長田 誠治
(72)【発明者】
【氏名】海老名 和広
(72)【発明者】
【氏名】小田 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】阿部 孝
(72)【発明者】
【氏名】柴田 成雄
(72)【発明者】
【氏名】岩井 和夫
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AA01
5E070AB10
5E070CB02
5E070CB13
5E070EA01
5E070EB04
(57)【要約】
【課題】コイルと外部電極との接続性の向上が図られた積層コイル部品を提供する。
【解決手段】積層コイル部品10においては、引出導体30は、素体12の端面12a、12bから露出して、端面12a、12bに設けられた外部電極14A、14Bと接続されている。引出導体30により素体12の端面12a、12bに引き出した場合は、素体12の側面12c~12fに引き出された場合に比べて、引出面積を容易に拡大することができる。そのため、引出導体30を介してコイル20と外部電極14A、14Bとを接続することで、コイル20と外部電極14A、14Bとの間の高い接続性が実現される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数の層を含み、前記複数の層の積層方向に対して平行な第1方向において互いに対向する一対の端面を有する焼成素体と、
前記焼成素体内に設けられ、前記第1方向に対して平行なコイル軸を有するコイルと、
前記焼成素体の端面にそれぞれ設けられた一対の外部電極と、
前記コイルの端部と前記焼成素体の端面との間にそれぞれ設けられ、前記コイルの端部と電気的に接続されるとともに前記焼成素体の端面から露出して前記外部電極と接続される一対の引出導体と
を備え、
前記引出導体が、第1端部と、該第1端部より前記端面側に位置するとともに前記第1方向から見て前記第1端部とは位置ズレしている第2端部とをそれぞれ有し、前記第1方向において重なり合う複数の引出層を含み、
前記第1方向において隣り合う引出層同士は、一方の引出層の前記第1端部と他方の引出層の前記第2端部とが重なり合っている、積層コイル部品。
【請求項2】
前記複数の引出層は、前記第1方向から見てそれぞれI字状を呈し、ジグザグに重なり合っている、請求項1に記載の積層コイル部品。
【請求項3】
前記第1方向における前記引出導体の長さが、前記第1方向における前記焼成素体の長さの5%以上であり、かつ、前記コイルの内径以下である、請求項1または2に記載の積層コイル部品。
【請求項4】
前記引出導体が、前記焼成素体の端面に露出する第1引出層と、該第1引出層と前記コイル側において重なり合う第2引出層とを含み、前記第1方向から見たときの前記第1引出層の面積が前記第2引出層の面積より大きい、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層コイル部品。
【請求項5】
前記焼成素体が印刷積層構造を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の積層コイル部品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、積層構造を有する素体内に、積層方向に対して平行なコイル軸を有するコイルが設けられた積層コイル部品が知られている。下記特許文献1には、印刷法を用いて、コイルを構成する導体パターンを形成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-31423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術に係る積層コイル部品においては、図12、13に示すように、コイル20を構成するコイルパターン21、22、および、コイル20の各端部を素体12の側面(すなわち、素体12の積層方向に対して平行に延びる面)に引き出す引出導体30Aは、印刷法によって形成されている。そのため、コイル20の引出面積は、引出導体30Aを構成する導体パターンの断面積と略同じである。
【0005】
発明者らは、コイルの引出面積について研究を重ね、コイルの引出面積を大きくして、コイルと外部電極との接続性を高める技術を新たに見出した。
【0006】
本発明の一側面は、コイルと外部電極との接続性の向上が図られた積層コイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る積層コイル部品は、積層された複数の層を含み、複数の層の積層方向に対して平行な第1方向において互いに対向する一対の端面を有する焼成素体と、焼成素体内に設けられ、第1方向に対して平行なコイル軸を有するコイルと、焼成素体の端面にそれぞれ設けられた一対の外部電極と、コイルの端部と焼成素体の端面との間にそれぞれ設けられ、コイルの端部と電気的に接続されるとともに焼成素体の端面から露出して外部電極と接続される一対の引出導体とを備え、引出導体が、第1端部と、該第1端部より端面側に位置するとともに第1方向から見て第1端部とは位置ズレしている第2端部とをそれぞれ有し、第1方向において重なり合う複数の引出層を含み、第1方向において隣り合う引出層同士は、一方の引出層の第1端部と他方の引出層の第2端部とが重なり合っている。
【0008】
上記積層コイル部品において、コイルの端部に接続された引出導体は、焼成素体の端面から露出して、該端面に設けられた外部電極と接続されている。引出導体により焼成素体の端面に引き出した場合は、素体の側面に引き出された場合に比べて、引出面積を容易に拡大することができ、コイルと外部電極との間の高い接続性を実現することができる。
【0009】
他の側面に係る積層コイル部品は、複数の引出層は、第1方向から見てそれぞれI字状を呈し、ジグザグに重なり合っている。
【0010】
他の側面に係る積層コイル部品は、第1方向における引出導体の長さが、第1方向における焼成素体の長さの5%以上であり、かつ、コイルの内径以下である。
【0011】
他の側面に係る積層コイル部品は、引出導体が、焼成素体の端面に露出する第1引出層と、該第1引出層とコイル側において重なり合う第2引出層とを含み、第1方向から見たときの第1引出層の面積が第2引出層の面積より大きい。
【0012】
他の側面に係る積層コイル部品は、焼成素体が印刷積層構造を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の種々の側面によれば、コイルと外部電極との接続性の向上が図られた積層コイル部品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係る積層コイル部品を示す斜視図である。
図2図1に示した素体の内部導体を示した斜視図である。
図3図1に示した積層コイル部品のIII-III線断面図である。
図4図2、3に示したコイルの積層構造を示した斜視図である。
図5図4に示したコイルを製造する際の各工程を示した図である。
図6図4に示したコイルを製造する際の各工程を示した図である。
図7図2、3に示した引出導体の積層構造を示した斜視図である。
図8図7に示した引出導体を製造する際の各工程を示した図である。
図9図7に示した引出導体を製造する際の各工程を示した図である。
図10図7に示した引出導体を示した概略断面図である。
図11】異なる形態の引出導体の積層構造を示した概略断面図である。
図12】従来技術に係る積層コイル部品の内部導体を示した斜視図である。
図13図12に示したコイルの積層構造を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しつつ本発明を実施するための形態を説明する。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
【0016】
図1~3を参照して、実施形態に係る積層コイル部品の構成について説明する。図1に示すように、実施形態に係る積層コイル部品10は、素体12および一対の外部電極14A、14Bを備えて構成されている。
【0017】
素体12は、略直方体状の外形を有し、素体12の延在方向において互いに対向する一対の端面12a、12bを有する。素体12は、端面12a、12bの対向方向に延在して端面12a、12b同士を結ぶ4つの側面12c~12fをさらに有する。本実施形態においては、側面12dは、積層コイル部品10が実装された際に実装基体と対向する実装面であり、側面12dと対向する側面12cは、実装された際に頂面となる。素体12の寸法は、端面12a、12bの対向方向に関する寸法を長さ、側面12e、12fの対向方向に関する寸法を幅、側面12c、12dの対向方向に関する寸法を厚さとすると、一例として長さ1.6mm×幅0.8mm×厚さ0.8mmである。
【0018】
一対の外部電極14A、14Bは、素体12の端面12a、12bにそれぞれ設けられている。本実施形態において、外部電極14Aは、端面12aの全領域と、端面12aと隣り合う領域の側面12c~12fとを一体的に覆っている。同様に、外部電極14Bは、端面12bの全領域と、端面12bと隣り合う領域の側面12c~12fとを一体的に覆っている。各外部電極14A、14Bは、1層または複数層の電極層で構成されている。各外部電極14A、14Bを構成する電極材料には、たとえばAg等の金属材料を採用することができる。
【0019】
素体12は、磁性体16の内部に内部導体18が設けられた構成を有する。素体12は積層構造を有する。磁性体16は、後述する複数の磁性体層16L、16Rが端面12a、12bの対向方向に積層された積層構造を有する。以下の説明では、端面12a、12bの対向方向を、素体12の積層方向または第1方向とも称す。
【0020】
磁性体16は、たとえばフェライト等の磁性材料で構成されている。磁性体16は、磁性体層16L、16Rとなる磁性体ペースト(たとえば、フェライトペースト)を複数重ねて焼成することで得られる。すなわち、素体12は、磁性体ペーストが印刷された磁性体層16L、16Rが積層された印刷積層構造を有し、焼成された磁性体層16L、16Rが積層された焼成素体である。素体12を構成する磁性体層16L、16Rの層数は、一例として30層である。各磁性体層16L、16Rの厚さは、一例として30μmである。実際の素体12では、複数の磁性体層16L、16Rは、その層間の境界が視認できない程度に一体化されている。
【0021】
内部導体18は、一つのコイル20と、一対の引出導体30とを備えて構成されている。内部導体18のコイル20および引出導体30はいずれも、素体12の積層方向に関する積層構造を有する。図2に示すように、本実施形態では、コイル20は円筒状の外形を有する。
【0022】
コイル20は、図3に示すように、素体12の積層方向に対して平行なコイル軸Zを有し、コイル軸Z周りに巻回されている。本実施形態において、素体12の積層方向におけるコイル20の長さは1.3mmである。素体12の積層方向に関し、コイル20の長さは、素体12の長さの50~90%の範囲となるように設計され得る。また、本実施形態において、コイル20の内径は0.20~0.40mmであり、一例として0.35mmである。
【0023】
コイル20は、複数のコイル層21、22を含む。コイル20を構成するコイル層21、22は、たとえばAg等の金属を含む導電材料で構成されている。コイル20は、印刷法によって形成される。具体的には、コイル20は、コイル層21、22となる導電ペースト(たとえば、Agペースト)を磁性体層16L、16Rとなる磁性体ペースト上に塗布して焼成することにより得られる。各コイル層21、22の厚さは、一例として20μmである。
【0024】
図4は、素体12のコイル20部分の積層構造を示した分解斜視図である。図4に示すように、内部導体18のコイル20の部分においては、コイル20を構成するコイル層21、22と、素体12を構成する磁性体層16L、16Rとが、交互に積層されている。
【0025】
コイル層21、22はいずれも素体12の積層方向から見てC字状(またはU字状)を呈する。素体12の積層方向から見て、コイル層21とコイル層22とはコイル軸Zに関して点対称または回転対称の関係を有する。コイル層21およびコイル層22はいずれも、コイル20の3/4ターン分を構成している。素体12の積層方向において、コイル層21とコイル層22とは交互に並んでいる。素体12の積層方向において隣り合うコイル層21とコイル層22とは、端部同士が重なり合って接合されており、コイル軸Zを囲むコイル20の1ターンを構成している。
【0026】
図5および図6は、印刷法によってコイル20を形成する際の手順を示した図である。
【0027】
図5(a)に示すように、まず、ベースとなる磁性体層上にコイル層22となる導電ペーストを印刷する。コイル層22は、左半面の上側に第1端部22aを有し、右半面の下側に第2端部22bを有する。
【0028】
次に、図5(b)に示すように、左半面に、磁性体層16Lとなる磁性体ペーストを印刷する。それにより、コイル層22の端部22a、22bのうち、第1端部22aのみが磁性体ペーストに覆われる。
【0029】
そして、図5(c)に示すように、コイル層21となる導電ペーストを印刷する。コイル層21は、右半面の下側に第1端部21aを有し、左半面の上側に第2端部21bを有する。右半面に位置するコイル層21の第1端部21aは、磁性体層16Lから露出するコイル層22の第2端部22bと重なり合って接合される。左半面に位置するコイル層21の第2端部21bは磁性体層16L上に設けられる。そのため、コイル層21の第1端部21aと第2端部21bとは、素体12の積層方向に関して異なる高さ位置にある。より詳しくは、第2端部21bが、第1端部21aよりも端面12a側(図5の紙面手前側)に位置している。
【0030】
さらに、図5(d)に示すように、右半面に、磁性体層16Rとなる磁性体ペーストを印刷する。それにより、コイル層21の端部21a、21bのうち、第1端部21aのみが磁性体ペーストに覆われる。
【0031】
続いて、図6(a)に示すように、再度、コイル層22となる導電ペーストを印刷する。左半面に位置するコイル層22の第1端部22aは、磁性体層16Rから露出するコイル層21の第2端部21bと重なり合って接合される。右半面に位置するコイル層22の第2端部22bは磁性体層16R上に設けられる。そのため、コイル層22の第1端部22aと第2端部22bとは、素体12の積層方向に関して異なる高さ位置にある。より詳しくは、第2端部22bが、第1端部22aよりも端面12a側(図6の紙面手前側)に位置している。
【0032】
そして、図6(b)に示すように、再度、左半面に磁性体層16Lとなる磁性体ペーストを印刷する。それにより、コイル層22の端部22a、22bのうち、第1端部22aのみが磁性体ペーストに覆われる。
【0033】
さらに、図6(c)に示すように、コイル層21Aとなる導電ペーストを印刷する。コイル層21Aは、上述したコイル層21と略同じ構成を有し、コイル層21とは第2端部21bの位置のみ異なる。コイル層21Aの第2端部21bは、後述する引出導体30との接続のために位置調整されている。コイル層21Aの第2端部21bは、左半面の略中間(図6(c)における上下方向の略中間)に位置している。コイル層21Aの第1端部21aは、磁性体層16Lから露出するコイル層22の第2端部22bと重なり合って接合される。コイル層21Aの第2端部21bは磁性体層16L上に設けられる。コイル層21Aにおいても、コイル層21と同様に、第1端部21aと第2端部21bとが素体12の積層方向に関して異なる高さ位置にある。
【0034】
その後、図6(d)に示すように、再度、右半面に磁性体層16Rとなる磁性体ペーストを印刷する。それにより、コイル層21Aの端部21a、21bのうち、第1端部21aのみが磁性体ペーストに覆われる。
【0035】
上述した図5(c)のコイル層21、図5(d)の磁性体層16R、図6(a)のコイル層22、および、図6(b)の磁性体層16Lの印刷積層により、コイル20の1ターンが形成される。これらを1セットとして、複数セット繰り返すことで、複数ターンで構成されたコイル20が形成される。
【0036】
一対の引出導体30は、図3に示すように、コイル20と素体12の端面12a、12bとの間にそれぞれ設けられている。各引出導体30は、コイル20の端部とそれぞれ電気的に接続されるとともに素体12の端面12a、12bから露出して外部電極14A、14Bと接続される。本実施形態において、素体12の積層方向における引出導体30の長さは0.15mmである。素体12の積層方向に関し、引出導体30の長さは、素体12の長さの5~25%の範囲となるように設計され得る。
【0037】
図7は、素体12の引出導体30部分の積層構造を示した分解斜視図である。図7に示すように、引出導体30は、端面12a、12bから露出する露出層31および複数の引出層32を含み、これらが積層されて形成されている。各引出導体30を構成する露出層31および引出層32は、たとえばAg等の金属を含む導電材料で構成されている。各引出導体30は、コイル20同様、印刷法によって形成される。具体的には、各引出導体30は、露出層31および引出層32となる導電ペースト(たとえば、Agペースト)を磁性体層16L、16Rとなる磁性体ペースト上に塗布して焼成することにより得られる。露出層31および引出層32のそれぞれの厚さは、一例として20μmである。
【0038】
内部導体18の引出導体30の部分においては、引出導体30を構成する引出層32と、素体12を構成する磁性体層16L、16Rとが、交互に積層されている。露出層31は、最上位に位置する引出層32の上に設けられている。
【0039】
露出層31は、素体12の積層方向から見て円形を呈し、コイル20のコイル軸Z上に位置している。引出層32はいずれも素体12の積層方向から見てI字状を呈し、コイル20のコイル軸Z上に位置している。本実施形態において、引出層32は同一寸法を有する。複数の引出層32は、素体12の積層方向から見て全体的に重畳している。複数の引出層32は、素体12の積層方向において並んでおり、隣り合う引出層32は端部32a、32b同士が重なり合って接合されている。
【0040】
素体12の積層方向から見て、露出層31の面積は、引出層32の面積より大きくなるように設計されている。特に、露出層31は、最上位に位置する引出層32よりも面積が大きくなるように設計されている。
【0041】
図8および図9は、印刷法によって引出導体30を形成する際の手順を示した図である。
【0042】
まず、図8(a)に示すように、図6(d)に示したコイル層21A上に、引出層32となる導電ペーストを印刷する。図8、9において、I字状を呈する引出層32は、左右方向に延びており、左端部32aと右端部32bを有する。引出層32の左端部32aは、磁性体層16Rから露出するコイル層21の第2端部21bと重なり合って接合される。引出層32の右端部32bは磁性体層16R上に設けられる。引出層32において、左端部32aと右端部32bとは素体12の積層方向に関して異なる高さ位置にある。より詳しくは、右端部32bが、左端部32aよりも端面12a側(図8の紙面手前側)に位置している。
【0043】
次に、図8(b)に示すように、左半面に磁性体層16Lとなる磁性体ペーストを印刷する。それにより、引出層32の端部32a、32bのうち、左端部32aのみが磁性体ペーストに覆われる。
【0044】
そして、図8(c)に示すように、再度、引出層32となる導電ペーストを印刷する。引出層32の右端部32bは、磁性体層16Lから露出する引出層32の右端部32bと重なり合って接合される。引出層32の左端部32aは磁性体層16L上に設けられる。そのため、引出層32の左端部32aと右端部32bとは素体12の積層方向に関して異なる高さ位置にある。より詳しくは、磁性体層16L上に位置する左端部32aが、右端部32bよりも端面12a側(図8の紙面手前側)に位置している。
【0045】
さらに、図8(d)に示すように、右半面に磁性体層16Rとなる磁性体ペーストを印刷する。それにより、引出層32の端部32a、32bのうち、右端部32bのみが磁性体ペーストに覆われる。
【0046】
続いて、図9(a)に示すように、再度、引出層32となる導電ペーストを印刷する。引出層32の左端部32aは、磁性体層16Rから露出する引出層32の左端部32aと重なり合って接合される。引出層32の右端部32bは磁性体層16R上に設けられる。そのため、磁性体層16R上に位置する右端部32bが、左端部32aよりも端面12a側(図9の紙面手前側)に位置している。
【0047】
そして、図9(b)に示すように、再度、左半面に磁性体層16Lとなる磁性体ペーストを印刷する。それにより、引出層32の端部32a、32bのうち、左端部32aのみが磁性体ペーストに覆われる。
【0048】
さらに、図9(c)に示すように、再度、引出層32となる導電ペーストを印刷する。引出層32の右端部32bは、磁性体層16Lから露出する引出層32の右端部32bと重なり合って接合される。引出層32の左端部32aは磁性体層16L上に設けられる。そのため、磁性体層16L上に位置する左端部32aが、右端部32bよりも端面12a側(図9の紙面手前側)に位置している。
【0049】
上述した図8(c)の引出層32、図8(d)の磁性体層16R、図9(a)の引出層32、および、図9(b)の磁性体層16Lの印刷積層により、互いに接合された引出層32の対が形成される。これらを1セットとして、複数セット繰り返すことで、複数の引出層32の対を含む引出導体30を形成することができる。
【0050】
その後、図9(d)に示すように、露出層31となる導電ペーストを印刷する。露出層31の周囲は磁性体ペーストで埋められてもよい。
【0051】
図10は、素体12の端面12aにおいて露出した引出導体30を示す断面図である。素体12の端面12bにおける引出導体30については、素体12の端面12aにおける引出導体30と同様であるため、その説明は省略する。
【0052】
図10に示すように、複数の引出層32は、交互に積層された磁性体層16Rと磁性体層16Rとの間にそれぞれ介在する。そのため、各引出層32の左端部32aと右端部32bとは素体12の積層方向に関して異なる高さ位置にあり、複数の引出層32はジグザグに重なり合っている。引出導体30においては、図10の矢印で示すように、電流の経路もジグザグになる。図10では、複数の引出層32が蛇腹状に重なるように示している。複数の引出層32はZ字状に連続して重なっていてもよい。
【0053】
上述したとおり、積層コイル部品10は、積層された複数の磁性体層16R、16Lを含み、複数の磁性体層16R、16Lの積層方向に対して平行な第1方向において互いに対向する一対の端面12a、12bを有する素体12(焼成素体)と、素体12内に設けられ、第1方向に対して平行なコイル軸Zを有するコイル20と、素体12の端面12a、12bにそれぞれ設けられた一対の外部電極14A、14Bと、コイル20の端部と素体12の端面12a、12bとの間にそれぞれ設けられ、コイル20の端部と電気的に接続されるとともに素体12の端面12a、12bから露出して外部電極14A、14Bと接続される一対の引出導体30とを備える。そして、各引出導体30は複数の引出層32を含み、各引出層32は、左端部32aと右端部32bとを有する。左端部32aと右端部32bとは、第1方向に関して異なる高さ位置にあり、かつ、第1方向から見て互いに位置ズレしている。第1方向において隣り合う引出層32同士は、一方の引出層32の積層方向上側に位置する端部32a、32b(第2端部)と他方の引出層32の積層方向下側に位置する端部32a、32b(第1端部)とが重なり合っている。
【0054】
上記積層コイル部品10においては、引出導体30は、素体12の端面12a、12bから露出して、端面12a、12bに設けられた外部電極14A、14Bと接続されている。引出導体30により素体12の端面12a、12bに引き出した場合は、素体12の側面12c~12fに引き出された場合に比べて、引出面積を容易に拡大することができる。たとえば、素体12の端面12a、12bから露出する引出導体30の露出層31は、素体12の積層方向から見たときの面積(すなわち、引出面積)を容易に拡大することができ、引出層32またはコイル層21、22の断面積に対して面積拡大を図ることができる。そのため、引出導体30を介してコイル20と外部電極14A、14Bとを接続することで、コイル20と外部電極14A、14Bとの間の高い接続性が実現される。
【0055】
なお、積層コイル部品10の引出導体30は、電極ボリュームの低減が図られている。図11に、比較のために、複数のビア導体33で構成された引出導体30Aを示す。各ビア導体33は、素体12を構成する磁性体層16Aに貫設されている。複数のビア導体33は、素体12の積層方向に沿って直線状に並んでいる。引出導体30Aでは、図11の矢印で示すように電流の経路も直線状になる。図11に示した引出導体30Aでは、各ビア導体33は磁性体層16Aの貫通孔を埋めるように設けられるため、各ビア導体33が比較的大きなボリュームを有する。そのため、複数のビア導体33が結合された引出導体30Aの電極ボリュームが大きくなってしまう。この場合、焼成時におけるビア導体33と磁性体層16Aとの収縮差に起因するクラックが生じやすい。一方、積層コイル部品10の引出導体30は、引出層32が磁性体層16R、16Lを貫通する構成ではないため、比較的ボリュームが小さい。そのため、積層コイル部品10においてはクラックの抑制が図られている。
【0056】
また、積層コイル部品10においては、第1方向における引出導体30の長さが、第1方向における素体12の長さの5%以上であり、かつ、コイル20の内径以下となるように設計されている。
【0057】
さらに、積層コイル部品10においては、引出導体30が、素体12の端面に露出する露出層31(第1引出層)と、露出層31とコイル20側において重なり合う最上位の引出層32(第2引出層)とを含み、第1方向から見たときの露出層31の面積が最上位の引出層32の面積より大きくなるように設計されている。
【0058】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。たとえば、引出導体30の露出層31は、1層に限らず、複数層で構成されていてもよい。引出導体30は、露出層31を含まず、複数の引出層32で構成された態様であってもよい。引出導体30の引出層32は、1対であってもよく、複数対であってもよい。コイル20は、素体12の積層方向から見て、円環状であってもよく、矩形環状または楕円環状であってもよい。
【符号の説明】
【0059】
10…積層コイル部品、12…素体、12a、12b…端面、14A、14B…外部電極、16R、16L…磁性体層、20…コイル、21、22…コイル層、30…引出導体、31…露出層、32…引出層、Z…コイル軸。
図1
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図10
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図13