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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022148166
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】タイヤプロテクター
(51)【国際特許分類】
   B60C 27/06 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
B60C27/06 C
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021049743
(22)【出願日】2021-03-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000176833
【氏名又は名称】三菱製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】小柳 幸久
(57)【要約】
【課題】建設車両が湿地や軟弱地の地盤を走行するときにスリップや横滑りを防止する。
【解決手段】タイヤプロテクターに用いられるリンク1は、接地面となる底面11と、底面11の周縁11aから高さ方向に上方に延びる側面12とを有し、底面11の輪郭は連結する一対のリング2の方向を長手方向とする形状を有し、底面11には短手方向に延びる複数の第1の溝13、第2の溝14及び第3の溝15が形成され、側面12には底面11に隣接して複数の突起17が配列された突起部16が設けられた接地部10と、接地部10から上方に延び、一対のリング2を挿通して連結するために短軸方向を軸方向とする第1の孔21及び第2の孔22が形成された連結部20と、連結部20から上方に延び、タイヤの表面に接する頂面31を含む装着部30とを有している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のリング及び複数のリンクをネット状に繋いで構成され、タイヤの表面を覆って保護するタイヤプロテクターに用いられ、それぞれ一対のリングを連結するリンクであって、
接地面となる底面と、前記底面の周縁から高さ方向に上方に延びる側面とを含み、前記底面の輪郭は連結する一対のリングの方向を長手方向とする形状を有し、前記底面には短手方向に延びる複数の溝が形成され、前記側面には前記底面に隣接して複数の突起が配列された突起部が設けられた接地部と、
前記接地部から上方に延び、前記一対のリングを挿通して前記底面に平行な平面内で連結するために前記短手方向を軸方向とする一対の孔が形成された連結部と、
前記連結部から上方に延び、タイヤの表面に接する頂面を含む装着部と
を含むリンク。
【請求項2】
前記底面は、前記長手方向及び前記短手方向をそれぞれ長軸及び短軸とする略ひし形状の形状を有する請求項1に記載のリンク。
【請求項3】
前記突起部の突起は、高さ方向に延びる請求項1又は2に記載のリンク。
【請求項4】
前記突起部の突起は、高さ方向に延びる稜を形成する請求項3に記載のリンク。
【請求項5】
前記側面には、高さ方向に前記突起部が形成された範囲より上方の所定の範囲に複数の突起が配列された第2の突起部がさらに形成され、前記第2の突起部の突起は、前記突起部の突起の直上の位置を避けて形成された請求項1から4のいずれか一項に記載のリンク。
【請求項6】
前記第2の突起部の突起は、高さ方向に延びる請求項5に記載のリンク。
【請求項7】
前記第2の突起部の突起は、高さ方向に延びる稜を形成する請求項6に記載のリンク。
【請求項8】
前記第2の突起部の突起は、略ドーム状の形状を有する請求項5に記載のリンク。
【請求項9】
前記突起部は前記側面の上端に達し、前記突起は前記上端まで延びる請求項1から4のいずれか一項に記載のリンク。
【請求項10】
前記溝は、断面がV字状である請求項1から9のいずれか一項に記載のリンク。
【請求項11】
前記溝には、前記溝が延びる範囲の少なくとも一部に溝に沿って延びる突起が形成された請求項1から10のいずれか一項に記載のリンク。
【請求項12】
前記溝に沿って延びる突起は、前記溝に沿って延びる稜が形成する請求項11に記載のリンク。
【請求項13】
前記頂面は、前記長手方向及び前記短手方向をそれぞれ長軸及び短軸とする略ひし形状の形状を有する請求項1から12のいずれか一項に記載のリンク。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載のリンクの連結部の一対の孔に一対のリングを挿通して連結された複数のリンク及びリングによってネット状に構成されたタイヤプロテクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建設車両のタイヤの表面を覆ってタイヤを保護するタイヤプロテクターに用いられるリンク及びタイヤプロテクターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、不整地での作業に使用される建設車両においては、タイヤが早期に摩耗したり、転がっている鋭利な石によってタイヤがカットされたりバーストしたりするタイヤトラブルが発生することがあった。このようなタイヤトラブルを防止するため、ネット状に繋がれた鉄製のリング及びリンクでタイヤの表面を覆って保護するタイヤプロテクターが提供されている(特許文献1)。特許文献2に記載されたタイヤプロテクターでは、スリップなどを防止するために、リンクのひし形状を有する接地面にスパイク機能を発揮させるように凹部又は凸部が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭50-108102号公報
【特許文献2】特開昭58-152613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、建設機械が湿地や軟弱地の地盤を走行するときには、タイヤプロテクターを装着していても必要なグリップ力が得らえずに、スリップや横滑りが発生して牽引力や登坂力が不足し、安全作業の確保が難しいことがあった。
【0005】
この発明は、上述の実情に鑑みて提案されるものであって、建設機械が湿地や軟弱な地盤を走行するときにもグリップ力を与え、スリップや横滑りを防止し、十分な牽引力や登坂力が得られて安全作業を確保できるようなタイヤプロテクターに用いられるリンク及びタイヤプロテクターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するために、この出願に係るリンクは、複数のリング及び複数のリンクをネット状に繋いで構成され、タイヤの表面を覆って保護するタイヤプロテクターに用いられ、それぞれ一対のリングを連結するリンクであって、接地面となる底面と、底面の周縁から高さ方向に上方に延びる側面とを含み、底面の輪郭は連結する一対のリングの方向を長手方向とする形状を有し、底面には短手方向に延びる複数の溝が形成され、側面には底面に隣接して複数の突起が配列された突起部が設けられた接地部と、接地部から上方に延び、一対のリングを挿通して底面に平行な平面内で連結するために短手方向を軸方向とする一対の孔が形成された連結部と、連結部から上方に延び、タイヤの表面に接する頂面を含む装着部とを有するものである。
【0007】
底面は、長手方向及び短手方向をそれぞれ長軸及び短軸とする略ひし形状の形状を有してもよい。頂面は、長手方向及び短手方向をそれぞれ長軸及び短軸とする略ひし形状の形状を有してもよい。
【0008】
突起部の突起は、高さ方向に延びてもよい。突起部の突起は、高さ方向に延びる稜を形成してもよい。突起部は側面の上端に達し、突起は上端まで延びてもよい。
【0009】
側面には、高さ方向に突起部が形成された範囲より上方の所定の範囲に複数の突起が配列された第2の突起部がさらに形成され、第2の突起部の突起は、突起部の突起の直上の位置を避けて形成されてもよい。第2の突起部の突起は、高さ方向に延びてもよい。第2の突起部の突起は、高さ方向に延びる稜を形成してもよい。第2の突起部の突起は、略ドーム状の形状を有してもよい。
【0010】
溝は、断面がV字状であってもよい。溝には、溝が延びる範囲の少なくとも一部に溝に沿って延びる突起が形成されてもよい。溝に沿って延びる突起は、溝に沿って延びる稜が形成してもよい。
【0011】
この出願に係るタイヤプロテクターは、リンクの連結部の一対の孔に一対のリングを挿通して連結された複数のリンク及びリングによってネット状に構成されてもよい。
【発明の効果】
【0012】
この発明によると、建設機械が湿地や軟弱な地盤を走行するときにもグリップ力を与え、スリップや横滑りを防止し、十分な牽引力や登坂力が得られて安全作業を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施の形態のリンクの斜視図である。
図2】本実施の形態のリンクの四面図である。
図3】本実施の形態のタイヤプロテクターを説明する斜視図である。
図4】第1の変形例のリンクを示す斜視図である。
図5】第1の変形例のリンクを示す四面図である。
図6】第2の変形例のリンクを示す斜視図である。
図7】第2の変形例のリンクを示す四面図である。
図8】比較例のリンクを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。本実施の形態では、複数のリングとそれぞれ一対のリングを接続する複数のリンクとから構成され、ネット状に繋がれてタイヤを覆って保護する鉄製のタイヤプロテクターに用いられるリンク及びタイヤプロテクターについて説明する。本実施の形態では、タイヤプロテクターを装着した建設車両が、沼地や軟弱地盤を走行することを想定している。また、タイヤプロテクターを装着した建設車両が、雪の積もった地面を走行する場合も想定している。
【0015】
図1は、本実施の形態のリンク1を示す斜視図である。図2は、本実施の形態のリンク1を示す四面図である。図2(a)は上面図、図2(b)は正面図、図2(c)は下面図、図2(d)は右側面図である。本実施の形態のリンク1は、地面に接してこのリンク1を支持する接地部10と、接地部10の上方に延び、一対のリングを接続するための一対の孔が形成された連結部20と、連結部20の上方に延び、装着されたタイヤの表面に接してこのリンク1を支持する装着部30とから構成されている。なお、本明細書では、リンク1の構造を説明する便宜のために、接地部10から装着部30に向かう方向を高さ方向として上下方向を示すことにする。
【0016】
接地部10は、底面11と、底面11の周縁11aから上方に延び、底面11を取り囲む側面12とを有している。底面11は、地面に接してこのリンク1を支持することができるような面積を確保している。底面11の輪郭は、連結する一対のリング2の方向を長軸とする略ひし形状の形状を有している。以下では、底面11に限らずこのリンク1の全体について、略ひし形状の長軸及び短軸の方向をそれぞれ長手方向及び短手方向として参照することにする。また、長軸及び短軸も参照することにする。
【0017】
底面11には、短軸に沿って断面がV字状の第1の溝13が形成されている。また、底面11には、第1の溝13を挟んだ両側に、第1の溝13に隣接して短手方向に延びる同じく断面がV字状の第2の溝14及び第3の溝15が形成されている。これら第1の溝13、第2の溝14及び第3の溝15は、周縁11aに達して側面12にそれぞれV字状の切り欠き12aを形成している。底面11の面積の大半は、第1の溝13、第2の溝14及び第3の溝15によって占められている。
【0018】
第1の溝13、第2の溝14及び第3の溝15内には、それぞれの溝に沿って延びるが、底面11の周縁11aまで達することなく、周縁11aとは所定の間隙を有する第1の突起13a、第2の突起14a及び第3の突起15aが形成されている。第1の突起13a、第2の突起14a及び第3の突起15aは、それぞれ溝に沿って延びる稜を形成している。
【0019】
側面12には、底面11に隣接して側面12の下端から所定の高さまでの範囲に、複数の突起17が配列された突起部16が形成されている。突起部16は、側面12において底面11及び切り欠き12aと隣接する4つの突起17を有している。4つの突起17は、底面11の周縁11aに沿って、切り欠き12aを挟んで一定の間隔で形成されている。これらの突起17は、それぞれ高さ方向に沿って延び、それぞれ高さ方向に延びる稜を形成している。
【0020】
側面12には、突起部16の上方に高さ方向について所定の範囲に、複数の突起19が配列された第2の突起部18が形成されている。第2の突起部18は、底面11の周縁11aに沿って突起部16が形成された範囲に含まれる所定の範囲において、周縁11aが延びる方向に略一定の間隔で6つの隣接する突起19を有している。これらの突起19は、それぞれ高さ方向に延び、高さ方向に延びる稜を形成している。
【0021】
ここで、第2の突起部18に形成された突起19は、突起部16に形成された突起17の直上を避けた位置に形成されている。詳しくは、突起部16において側面12に形成された切り欠き12aを挟んで対向する一対の突起17について、底面11の周縁11aに沿う方向に、これら一対の突起17の稜に挟まれる範囲に、第2の突起部18の隣接する2つの突起19がそれぞれ形成されている。このように、突起部16に配列された複数の突起17と、第2の突起部18に配列された複数の突起19とは、互いに底面11の周縁11aに沿う方向について異なる位置に形成されている。例えば、突起部16の複数の突起17と、第2の突起部18の複数の突起19とが、底面11の周縁11aに沿う方向について交互に形成されてもよい。
【0022】
連結部20は、接地部10の上方に高さ方向に所定の範囲にわたって延び、上方の装着部30に達している。連結部20には、一対のリング2を挿通して底面11に平行な平面内で連結することができるように、短手方向を軸方向とする第1の孔21及び第2の孔22が形成されている。第1の孔21及び第2の孔22は、長手方向について短軸に対称な位置に形成され、リング2を挿通できるような所定の径を有している。
【0023】
連結部20において、第1の孔21と第2の孔22との間の柱状部23は、第1の孔21と第2の孔22とにそれぞれ挿通された一対のリング2が所定の範囲で変位することができるように、短手方向について長軸に対称に所定の厚さまで後退して窪みを形成している。窪みの下部には、底面11に略平行なテラス部24が形成され、テラス部24は接地部10の側面12の上端に達している。
【0024】
装着部30は、連結部20の上方に高さ方向に所定の範囲にわたって延びている。装着部30は、底面11に略平行な頂面31を有している。頂面31の輪郭は、底面11と同様に連結する一対のリング2の方向を長軸とする略ひし形状の形状を有している。ただし、頂面31が有する略ひし型状の形状の短軸の長さは、接地部10における短軸の長さよりも短くなっている。頂面31は、装着されたタイヤの表面に対してこのリンク1を支持することができるような面積を確保している。
【0025】
本実施の形態のリンク1は、鉄を材料として用い、鍛造又は鋳造によって作製することができる。鉄に代わって他の材料を使用してもよい。
【0026】
図3は、本実施の形態のタイヤプロテクターを説明する図である。本実施の形態のタイヤプロテクターは、上述した本実施の形態のリンク1を用い、複数のリンク1及びリング2をネット状に繋いで構成したものである。図中には、1つのリング2に4つのリンク1が連結されている。リンク1は、その長手方向がリング2の周方向と略直交し、隣接するリンク1の長手方向とはそれぞれ約90度の角度をなしている。同様にリンク1とリング2を二次元状に連結することにより、ネット状に広がったタイヤプロテクターが構成される。
【0027】
図中において、4つのリンク1の接地部10の底面11が向いている手前側がタイヤプロテクターの地面に接する側の面になる。また、図示されていないが、4つのリンク1の装着部30の頂面31が向かう紙面奥側がタイヤプロテクターのタイヤに装着される側の面になる。タイヤプロテクターは、タイヤのトレッド面においてタイヤの進行方向に対して各リンク1の長手方向が略45度の角度をなすように装着される。建設車両が走行するとき、ドレッド面においてリング2に連結されたリンク1は、タイヤの進行方向に対して長手方向がハの字状に開いて地面に接するようになる。
【0028】
リング2は、鉄製の棒材が曲げ加工され、連結するリンク1の第1の孔21又は第2の孔22に挿通された後で、両端が溶接などにより互いに接合されて環状に形成される。図中には、リング2の接合部2aも示されている。リング2には、鉄に代わって、他の材料を使用してもよい。
【0029】
本実施の形態のタイヤプロテクターのリンク1は、接地部10の底面11に第1の溝13、第2の溝14及び第3の溝15を有している。第1の溝13、第2の溝14及び第3の溝15には、それぞれ溝の方向に延びる第1の突起13a、第2の突起14a及び第3の突起15aが形成され、第1の突起13a、第2の突起14a及び第3の突起15aはそれぞれ溝の方向に延びる稜を形成している。これらの第1の溝13、第2の溝14及び第3の溝15、並びに第1の突起13a、第2の突起14a及び第3の突起15aが形成する凹凸形状によって、底面11は地面に容易に食い込むことができるようになり、地面に対するグリップ力を確保することができる。また、タイヤプロテクターにおいて、リンク1の長手方向はタイヤの走行方向に対して略ハの字状に開いて接地するため、第1の溝13、第2の溝14及び第3の溝15、並びに第1の突起13a、第2の突起14a及び第3の突起15aが形成する凹凸形状を有する底面11は、地面に容易に食い込むことができる。したがって、建設車両が湿地や軟弱地の地盤を走行するときにも、このようなリンク1を有するタイヤプロテクターを装着することによってグリップ力を確保し、スリップや横滑りを防止することができ、延いては牽引力や登坂力を得ることもできる。
【0030】
リンク1は、接地部10の側面12に底面11に隣接して複数の突起17が配列された突起部16を有している。突起部16は底面11に隣接しているため、底面11が地面に深く沈み込まずに、底面11から側面12の僅かな高さまでが地面に沈み込んだ場合にも、底面11に隣接する突起部16が地面に食い込むことにより、地面に対するグリップ力を確保することができる。この場合、底面11に形成された第1の溝13、第2の溝14及び第3の溝15等からもグリップ力が得られるため、このグリップ力も加わってより大きなグリップ力が得られる。したがって、建設車両が湿地や軟弱地の地盤を走行するときに、このようなリンク1を有するタイヤプロテクターを装着することで、接地部10が地面に十分に沈み込むのを待たずにグリップ力を確保することができ、スリップや横滑りを防止することができ、延いては牽引力や登坂力を得ることもできる。例えば、建設車両が湿地や軟弱地の地盤をある程度の速度で走行しても、グリップ力を確保することができる。
【0031】
リンク1において、接地部10の側面12の突起部16の上方に高さ方向について所定の範囲に形成された第2の突起部18に配列された複数の突起19は、側面12の底面11に隣接に形成された突起部16に配列された複数の突起17の直上の位置を避けて形成されている。タイヤプロテクターを装着した建設車両が雪の積もった地面を走行するときに、雪がタイヤプロテクターとタイヤとの間に入り込んで走行が困難になり、入り込んだ雪を手作業で取り除く必要が生じることがあった。リンク1においては、接地部10が地面に積もった雪に沈み込むときに、接地部10の側面12を取り囲んで流動する雪は、側面12の突起部16に配列された高さ方向に延び、高さ方向に延びる稜を形成する複数の突起17にしたがって側面12に沿って高さ方向に上方に導かれるが、突起部16に形成された複数の突起17の直上の位置を避けて形成された第2の突起部18の複数の突起19に突き当たり、側面12から剥離される。このように、接地部10が雪に沈み込むときに側面12に沿って流動する雪は、第2の突起部18によって側面12から剥離され、側面12に沿ってリンクの頂面31を越えてタイヤプロテクターとタイヤとの間に入り込むことが阻止されている。したがって、建設車両が雪の積もった地面を走行するときにも、タイヤプロテクターとタイヤとの間に雪が入り込むことが防止され、雪が積もった地面も安定して走行することができる。
【0032】
リンク1の接地部10の底面11の輪郭は、連結する一対のリング2の方向を長軸とする略ひし形状の形状を有している。底面11の輪郭の略ひし形状の形状は、長手方向に一対のリング2を連結するために第1の孔21及び第2の孔22を有する連結部20の機能を確保するために必要な長さを提供するとともに、短手方向の長さも提供することにより、地面に接してこのリンク1を支持するための面積を確保している。したがって、リンク1は接地面積が確保された底面11で接地することになり、底面11の耐摩耗性が確保される。
【0033】
また、接地部10の側面には、底面11の周縁11aに沿った所定の範囲に、底面11に隣接して複数の突起17が配列された突起部16と、底面11から上方に高さ方向に一定の範囲で底面11の周縁11aに沿った所定の範囲に複数の突起19が配列された第2の突起部18が形成されている。接地部10が地面に沈み込むときには、側面12を取り囲んで流動する土壌は、突起部16及び第2の突起部18によって側面12から剥離する方向に付勢される。したがって、側面12に沿って流動する土壌による側面12の摩耗が低減され、側面12の耐摩耗性が確保される。
【0034】
図4は、第1の変形例のリンク1を示す斜視図である。図5は、第1の変形例のリンク1を示す四面図である。図5(a)は上面図、図5(b)は正面図、図5(c)は下面図、図5(d)は右側面図である。第1の変形例のリンク1は、上述した本実施の形態のリンク1とは、第2の突起部18に配列された複数の突起19の形状と、底面11に形成された溝の本数とが相違している。詳しくは、本実施の形態のリンク1では突起19が高さ方向に延びる稜を形成していたが、第1の変形例の突起19は略ドーム状の形状を形成している。また、本実施の形態では底面11に第1の溝13、第2の溝14及び第3の溝15の3本の溝が形成されていたが、第1の変形例では第4の溝51及び第5の溝52がさらに形成され、全部で5本の溝が形成されている。第1の変形例の他の構成部分については、本実施の形態のリンク1と同様であり、対応する部分は共通の符号を用いて参照することにする。
【0035】
第1の変形例のリンク1は、地面に接してこのリンク1を支持する接地部10と、接地部10の上方に延び、一対のリングを接続するための一対の孔が形成された連結部20と、連結部20の上方に延び、装着されたタイヤの表面に接してこのリンク1を支持する装着部30とから構成されている。
【0036】
接地部10は、底面11と、底面11の周縁11aから上方に延び、底面11を取り囲む側面12とを有している。底面11は、地面に接してこのリンク1を支持することができるような面積を確保している。底面11の輪郭は、連結する一対のリング2の方向を長軸とする略ひし形状の形状を有している。
【0037】
底面11には、短軸に沿って断面がV字状の第1の溝13が形成されている。また、底面11には、第1の溝13を挟んだ両側に、第1の溝13に隣接して短手方向に延びる同じく断面がV字状の第2の溝14及び第3の溝15が形成されている。さらに、第2の溝14に隣接して第1の溝13の反対側、第3の溝15に隣接して第1の溝13の反対側に、同じく断面がV字状の第4の溝51及び第5の溝52がそれぞれ形成されている。これら第1の溝13、第2の溝14、第3の溝15、第4の溝51及び第5の溝52は、周縁11aに達して側面12にそれぞれV字状の切り欠き12aを形成している。底面11の面積の殆どは、第1の溝13、第2の溝14、第3の溝15、第4の溝51及び第5の溝52によって占められている。
【0038】
第1の溝13、第2の溝14及び第3の溝15内には、それぞれの溝に沿って延びるが、底面11の周縁11aまで達することなく、周縁11aとは所定の間隙を有する第1の突起13a、第2の突起14a及び第3の突起15aが形成されている。第1の突起13a、第2の突起14a及び第3の突起15aは、それぞれ溝に沿って延びる稜を形成している。
【0039】
側面12には、底面11に隣接して側面12の下端から所定の高さまでの範囲に、複数の突起17が配列された突起部16が形成されている。突起部16は、側面12において底面11に隣接し、互いに隣接する切り欠き12aに挟まれた4つの突起17を有している。4つの突起17は、底面11の周縁11aに沿って、切り欠き12aと交互に並び、切り欠き12aを挟んで一定の間隔で形成されている。これらの突起17は、それぞれ高さ方向に沿って延び、それぞれ高さ方向に延びる稜を形成している。
【0040】
側面12には、突起部16の上方に高さ方向について所定の範囲に、複数の突起19が配列された第2の突起部18が形成されている。第2の突起部18は、それぞれ側面12の切り欠き12aの略直上の位置に、底面11の周縁11aが延びる方向に略一定の間隔で5つの突起19を有している。これらの突起19は、略ドーム状、又は略半球状の形状を有している。
【0041】
ここで、第2の突起部18に形成された突起19は、突起部16に形成された突起17の直上を避けた位置に形成されている。詳しくは、互いに隣接する切り欠き12aに挟まれた位置に形成された突起部16の突起17は、底面11の周縁11aが延びる方向に、第2の突起部18の隣り合う突起19の略中央に位置している。
【0042】
連結部20は、接地部10の上方に高さ方向に所定の範囲にわたって延び、上方の装着部30に達している。連結部20には、一対のリング2を挿通して底面11に平行な平面内で連結することができるように、短手方向を軸方向とする第1の孔21及び第2の孔22が形成されている。第1の孔21及び第2の孔22は、長手方向について短軸に対称な位置に形成され、リング2を挿通できるような所定の径を有している。
【0043】
連結部20において、第1の孔21と第2の孔22との間の柱状部23は、第1の孔21と第2の孔22とにそれぞれ挿通された一対のリング2が所定の範囲で変位することができるように、短手方向について長軸に対称に所定の厚さまで後退して窪みを形成している。窪みの下部には、底面11に略平行なテラス部24が形成され、テラス部24は接地部10の側面12の上端に達している。
【0044】
装着部30は、連結部20の上方に高さ方向に所定の範囲にわたって延びている。装着部30は、底面11に略平行な頂面31を有している。頂面31の輪郭は、底面11と同様に連結する一対のリング2の方向を長軸とする略ひし形状の形状を有している。ただし、頂面31が有する略ひし型状の形状の短軸の長さは、接地部10における短軸の長さよりも短くなっている。頂面31は、装着されたタイヤの表面に対してこのリンク1を支持することができるような面積を確保している。
【0045】
第1の変形例のリンク1は、鉄を材料として用い、鍛造又は鋳造によって作製することができる。鉄に代わって他の材料を使用してもよい。
【0046】
第1の変形例のタイヤプロテクターのリンク1は、接地部10の底面11に第1の溝13、第2の溝14、第3の溝15、第4の溝51及び第5の溝52を有している。第1の溝13、第2の溝14、第3の溝15、第4の溝51及び第5の溝52には、それぞれ溝の方向に延びる第1の突起13a、第2の突起14a及び第3の突起15aが形成され、第1の突起13a、第2の突起14a及び第3の突起15aはそれぞれ溝の方向に延びる稜を形成している。これらの第1の溝13、第2の溝14、第3の溝15、第4の溝51及び第5の溝52、並びに第1の突起13a、第2の突起14a及び第3の突起15aが形成する凹凸形状によって、底面11は地面に容易に食い込むことができるようになり、地面に対するグリップ力を確保することができる。また、タイヤプロテクターにおいて、リンク1の長手方向はタイヤの走行方向に対して略ハの字状に開いて接地するため、第1の溝13、第2の溝14、第3の溝15、第4の溝51及び第5の溝52、並びに第1の突起13a、第2の突起14a及び第3の突起15aが形成する凹凸形状を有する底面11は、地面に容易に食い込むことができる。したがって、建設車両が湿地や軟弱地の地盤を走行するときにも、このようなリンク1を有するタイヤプロテクターを装着することによってグリップ力を確保し、スリップや横滑りを防止することができ、延いては牽引力や登坂力を得ることもできる。
【0047】
リンク1は、接地部10の側面12に底面11に隣接して複数の突起17が配列された突起部16を有している。突起部16は底面11に隣接しているため、底面11が地面に深く沈み込まずに、底面11から側面12の僅かな高さまでが地面に沈み込んだ場合にも、底面11に隣接する突起部16が地面に食い込むことにより、地面に対するグリップ力を確保することができる。この場合、底面11に形成された第1の溝13、第2の溝14、第3の溝15、第4の溝51及び第5の溝52等からもグリップ力が得られるため、このグリップ力も加わってより大きなグリップ力が得られる。したがって、建設車両が湿地や軟弱地の地盤を走行するときに、このようなリンク1を有するタイヤプロテクターを装着することで、接地部10が地面に十分に沈み込むのを待たずにグリップ力を確保することができ、スリップや横滑りを防止することができ、延いては牽引力や登坂力を得ることもできる。例えば、建設車両が湿地や軟弱地の地盤をある程度の速度で走行しても、グリップ力を確保することができる。
【0048】
リンク1において、接地部10の側面12の突起部16の上方に高さ方向について所定の範囲に形成された第2の突起部18に配列された複数の突起19は、側面12の底面11に隣接に形成された突起部16に配列された複数の突起17の直上の位置を避けて形成されている。タイヤプロテクターを装着した建設車両が雪の積もった地面を走行するときに、雪がタイヤプロテクターとタイヤとの間に入り込んで走行が困難になり、入り込んだ雪を手作業で取り除く必要が生じることがあった。リンク1においては、接地部10が地面に積もった雪に沈み込むときに、接地部10の側面12を取り囲んで流動する雪は、側面12の突起部16に配列された高さ方向に延び、高さ方向に延びる稜を形成する複数の突起17にしたがって側面12に沿って高さ方向に上方に導かれるが、突起部16に形成された複数の突起17の直上の位置を避けて形成された第2の突起部18の複数の突起19に突き当たり、側面12から剥離される。このように、接地部10が雪に沈み込むときに側面12に沿って流動する雪は、第2の突起部18によって側面12から剥離され、側面12に沿ってリンクの頂面31を越えてタイヤプロテクターとタイヤとの間に入り込むことが阻止されている。したがって、建設車両が雪の積もった地面を走行するときにも、タイヤプロテクターとタイヤとの間に雪が入り込むことが防止され、雪が積もった地面も安定して走行することができる。
【0049】
リンク1の接地部10の底面11の輪郭は、連結する一対のリング2の方向を長軸とする略ひし形状の形状を有している。底面11の輪郭の略ひし形状の形状は、長手方向に一対のリング2を連結するために第1の孔21及び第2の孔22を有する連結部20の機能を確保するために必要な長さを提供するとともに、短手方向の長さも提供することにより、地面に接してこのリンク1を支持するための面積を確保している。したがって、リンク1は接地面積が確保された底面11で接地することになり、底面11の耐摩耗性が確保される。
【0050】
また、接地部10の側面には、底面11の周縁11aに沿った所定の範囲に、底面11に隣接して複数の突起17が配列された突起部16と、底面11から上方に高さ方向に一定の範囲で底面11の周縁11aに沿った所定の範囲に複数の突起19が配列された第2の突起部18が形成されている。接地部10が地面に沈み込むときには、側面12を取り囲んで流動する土壌は、突起部16及び第2の突起部18によって側面12から剥離する方向に付勢される。したがって、側面12に沿って流動する土壌による側面12の摩耗が低減され、側面12の耐摩耗性が確保される。
【0051】
図6は、第2の変形例のリンク1を示す斜視図である。図7は、第2の変形例のリンク1を示す四面図である。図7(a)は上面図、図7(b)は正面図、図7(c)は下面図、図7(d)は右側面図である。第2の変形例のリンク1は、上述した本実施の形態のリンク1とは第2の突起部18が形成されず、側面12の上端まで突起部16が形成されている点において相違している。詳しくは、本実施の形態のリンク1では側面12の所定の高さまで突起部16が形成され、突起部16の上方に第2の突起部18が形成されていたが、第2の変形例では突起部16は側面12の上端まで形成されている。第2の変形例の他の構成部分については、本実施の形態のリンク1と同様であり、対応する部分は共通の符号を用いて参照することにする。
【0052】
第2の変形例のリンク1は、地面に接してこのリンク1を支持する接地部10と、接地部10の上方に延び、一対のリングを接続するための一対の孔が形成された連結部20と、連結部20の上方に延び、装着されたタイヤの表面に接してこのリンク1を支持する装着部30とから構成されている。
【0053】
接地部10は、底面11と、底面11の周縁11aから上方に延び、底面11を取り囲む側面12とを有している。底面11は、地面に接してこのリンク1を支持することができるような面積を確保している。底面11の輪郭は、連結する一対のリング2の方向を長軸とする略ひし形状の形状を有している。
【0054】
底面11には、短軸に沿って断面がV字状の第1の溝13が形成されている。また、底面11には、第1の溝13を挟んだ両側に、第1の溝13に隣接して短手方向に延びる同じく断面がV字状の第2の溝14及び第3の溝15が形成されている。これら第1の溝13、第2の溝14及び第3の溝15は、周縁11aに達して側面12にそれぞれV字状の切り欠き12aを形成している。底面11の面積の大半は、第1の溝13、第2の溝14及び第3の溝15によって占められている。
【0055】
第1の溝13、第2の溝14及び第3の溝15内には、それぞれの溝に沿って延びるが、底面11の周縁11aまで達することなく、周縁11aとは所定の間隙を有する第1の突起13a、第2の突起14a及び第3の突起15aが形成されている。第1の突起13a、第2の突起14a及び第3の突起15aは、それぞれ溝に沿って延びる稜を形成している。
【0056】
側面12には、底面11に隣接して側面12の下端から上端まで、複数の突起17が配列された突起部16が形成されている。突起部16は、側面12において底面11及び切り欠き12aと隣接する4つの突起17を有している。4つの突起17は、底面11の周縁11aに沿って、切り欠き12aを挟んで一定の間隔で形成されている。これらの突起17は、それぞれ高さ方向に沿って延び、それぞれ高さ方向に延びる稜を形成している。
【0057】
連結部20は、接地部10の上方に高さ方向に所定の範囲にわたって延び、上方の装着部30に達している。連結部20には、一対のリング2を挿通して底面11に平行な平面内で連結することができるように、短手方向を軸方向とする第1の孔21及び第2の孔22が形成されている。第1の孔21及び第2の孔22は、長手方向について短軸に対称な位置に形成され、リング2を挿通できるような所定の径を有している。
【0058】
連結部20において、第1の孔21と第2の孔22との間の柱状部23は、第1の孔21と第2の孔22とにそれぞれ挿通された一対のリング2が所定の範囲で変位することができるように、短手方向について長軸に対称に所定の厚さまで後退して窪みを形成している。窪みの下部には、底面11に略平行なテラス部24が形成され、テラス部24は接地部10の側面12の上端に達している。
【0059】
装着部30は、連結部20の上方に高さ方向に所定の範囲にわたって延びている。装着部30は、底面11に略平行な頂面31を有している。頂面31の輪郭は、底面11と同様に連結する一対のリング2の方向を長軸とする略ひし形状の形状を有している。ただし、頂面31が有する略ひし型状の形状の短軸の長さは、接地部10における短軸の長さよりも短くなっている。頂面31は、装着されたタイヤの表面に対してこのリンク1を支持することができるような面積を確保している。
【0060】
第2の変形例のリンク1は、鉄を材料として用い、鍛造又は鋳造によって作製することができる。鉄に代わって他の材料を使用してもよい。
【0061】
第2の変形例のタイヤプロテクターのリンク1は、接地部10の底面11に第1の溝13、第2の溝14及び第3の溝15を有している。第1の溝13、第2の溝14及び第3の溝15には、それぞれ溝の方向に延びる突起13a、第2の突起14a及び第3の突起15aが形成され、突起13a、第2の突起14a及び第3の突起15aはそれぞれ溝の方向に延びる稜を形成している。これらの第1の溝13、第2の溝14及び第3の溝15、並びに突起13a、第2の突起14a及び第3の突起15aが形成する凹凸形状によって、底面11は地面に容易に食い込むことができるようになり、地面に対するグリップ力を確保することができる。また、タイヤプロテクターにおいて、リンク1の長手方向はタイヤの走行方向に対して略ハの字状に開いて接地するため、第1の溝13、第2の溝14及び第3の溝15、並びに第1の突起13a、第2の突起14a及び第3の突起15aが形成する凹凸形状を有する底面11は、地面に容易に食い込むことができる。したがって、建設車両が湿地や軟弱地の地盤を走行するときにも、このようなリンク1を有するタイヤプロテクターを装着することによってグリップ力を確保し、スリップや横滑りを防止することができ、延いては牽引力や登坂力を得ることもできる。
【0062】
リンク1は、接地部10の側面12に底面11に隣接して複数の突起17が配列された突起部16を有している。突起部16は底面11に隣接しているため、底面11が地面に深く沈み込まずに、底面11から側面12の僅かな高さまでが地面に沈み込んだ場合にも、底面11に隣接する突起部16が地面に食い込むことにより、地面に対するグリップ力を確保することができる。この場合、底面11に形成された第1の溝13、第2の溝14及び第3の溝15等からもグリップ力が得られるため、このグリップ力も加わってより大きなグリップ力が得られる。したがって、建設車両が湿地や軟弱地の地盤を走行するときに、このようなリンク1を有するタイヤプロテクターを装着することで、接地部10が地面に十分に沈み込むのを待たずにグリップ力を確保することができ、スリップや横滑りを防止することができ、延いては牽引力や登坂力を得ることもできる。例えば、建設車両が湿地や軟弱地の地盤をある程度の速度で走行しても、グリップ力を確保することができる。
【0063】
リンク1の接地部10の底面11の輪郭は、連結する一対のリング2の方向を長軸とする略ひし形状の形状を有している。底面11の輪郭の略ひし形状の形状は、長手方向に一対のリング2を連結するために第1の孔21及び第2の孔22を有する連結部20の機能を確保するために必要な長さを提供するとともに、短手方向の長さも提供することにより、地面に接してこのリンク1を支持するための面積を確保している。したがって、リンク1は接地面積が確保された底面11で接地することになり、底面11の耐摩耗性が確保される。
【0064】
また、接地部10の側面には、底面11の周縁11aに沿った所定の範囲に、底面11に隣接して複数の突起17が配列された突起部16が形成されている。接地部10が地面に沈み込むときには、側面12を取り囲んで流動する土壌は、突起部16によって側面12から剥離する方向に付勢される。したがって、側面12に沿って流動する土壌による側面12の摩耗が低減され、側面12の耐摩耗性が確保される。
【0065】
図8は、比較例のリンク101を示す図である。図8(a)は斜視図であり、図8(b)は下面図である。比較例のリンク101においては、上述した本実施の形態のリンク1との対応関係を明らかにするため、対応する部分は共通の符号を用いて参照することにする。
【0066】
比較例のリンク101は、地面に接してこのリンク101を支持する接地部10と、接地部10の上方に延び、一対のリングを接続するための一対の孔が形成された連結部20と、連結部20の上方に延び、装着されたタイヤに接してこのリンク101を支持する装着部30とから構成されている。
【0067】
接地部10は、底面11と、底面11の周縁11aから上方に延び、底面11を取り囲む側面12とを有している。底面11の輪郭は、連結する一対のリングの方向を長軸とする略ひし形状の形状を有している。
【0068】
底面11には、長手方向について短軸に対称な位置に、短手方向に延びる断面がU字状の第1の溝61及び第2の溝62が形成されている。側面12には、第1の溝61及び第2の溝62によってU字状の切り欠き12aが形成されている。
【0069】
連結部20は、接地部10の上方に高さ方向に所定の範囲にわたって延び、上方の装着部30に達している。連結部20には、一対のリングを挿通して底面11に平行な平面内で連結することができるように、短手方向を軸方向とする第1の孔21及び第2の孔22が形成されている。第1の孔21及び第2の孔22は、長手方向について短軸に対称な位置に形成され、リングを挿通できるような所定の径を有している。
【0070】
連結部20において、第1の孔21と第2の孔22との間の柱状部23は、第1の孔21と第2の孔22とにそれぞれ挿通された一対のリングが所定の範囲で変位することができるように、短手方向について長軸に対称に所定の厚さまで後退して窪みを形成している。窪みの下部には、底面11に略平行なテラス部24が形成され、接地部10の側面12の上端に達している。
【0071】
装着部30は、連結部20の上方に高さ方向に所定の範囲にわたって延びている。装着部30は、底面11に平行な頂面31を有している。頂面31の輪郭は、底面11と同様に連結する一対のリングの方向を長軸とする略ひし形状の形状を有している。ただし、頂面31における略ひし型状の形状の短軸の長さは、接地部10における短軸の長さよりも短くなっている。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、建設車両などのタイヤを保護するタイヤプロテクターの製造に利用することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 リンク
2 リング
10 接地部
11 底面
12 側面
16 突起部
18 第2の突起部
20 連結部
21 第1の孔
22 第2の孔
30 装着部
31 頂面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2022-04-28
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のリング及び複数のリンクをネット状に繋いで構成され、タイヤの表面を覆って保護するタイヤプロテクターにおいて、
れぞれ一対のリングを連結するリンクであって、
接地面となる底面と、前記底面の周縁から高さ方向に上方に延びる側面とを含み、前記底面の輪郭は連結する一対のリングの方向を長手方向とする形状を有し、前記底面には短手方向に延びる複数の溝が形成され、前記側面には前記底面に隣接して複数の突起が配列された突起部が設けられ、高さ方向に前記突起部が形成された範囲より上方の所定の範囲に亀甲状の外周から盛り上がった形成されたドーム状の複数の突起が配列された第2の突起部が設けられた接地部と、
前記接地部から上方に延び、前記一対のリングを挿通して前記底面に平行な平面内で連結するために前記短手方向を軸方向とする一対の孔が形成された連結部と、
前記連結部から上方に延び、タイヤの表面に接する頂面を含む装着部と
を含むリンクと、
少なくとも3つの前記リンクの孔に挿通されて前記リンクを連結するリングと
を含むタイヤプロテクター
【請求項2】
前記底面は、前記長手方向及び前記短手方向をそれぞれ長軸及び短軸とする略ひし形状の形状を有する請求項1に記載のタイヤプロテクター
【請求項3】
前記突起部の突起は、高さ方向に延びる請求項1又は2に記載のタイヤプロテクター
【請求項4】
前記突起部の突起は、高さ方向に延びる稜を形成する請求項3に記載のタイヤプロテクター
【請求項5】
記第2の突起部の突起は、前記突起部の突起の直上の位置を避けて形成された請求項1から4のいずれか一項に記載のタイヤプロテクター
【請求項6】
前記突起部は前記側面の上端に達し、前記突起は前記上端まで延びる請求項1から4のいずれか一項に記載のタイヤプロテクター
【請求項7】
前記溝は、断面がV字状である請求項1からのいずれか一項に記載のタイヤプロテクター
【請求項8】
前記溝には、前記溝が延びる範囲の少なくとも一部に溝に沿って延びる突起が形成された請求項1からのいずれか一項に記載のタイヤプロテクター
【請求項9】
前記溝に沿って延びる突起は、前記溝に沿って延びる稜が形成する請求項に記載のタイヤプロテクター
【請求項10】
前記頂面は、前記長手方向及び前記短手方向をそれぞれ長軸及び短軸とする略ひし形状の形状を有する請求項1からのいずれか一項に記載のタイヤプロテクター