(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022148172
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】フィルタ巻取装置およびろ材ロール
(51)【国際特許分類】
F24F 8/108 20210101AFI20220929BHJP
F24F 8/80 20210101ALI20220929BHJP
F24F 13/28 20060101ALI20220929BHJP
B01D 46/18 20060101ALI20220929BHJP
G21F 9/02 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
F24F8/108 310
F24F8/80 150
F24F13/28
B01D46/18 B
G21F9/02 551E
G21F9/02 551C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021049752
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】505466642
【氏名又は名称】株式会社東洋ユニオン
(71)【出願人】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】長峰 春夫
(72)【発明者】
【氏名】後藤 貴晴
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 文雄
(72)【発明者】
【氏名】森 益基
(72)【発明者】
【氏名】中村 弘
(72)【発明者】
【氏名】小川 智広
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 辰茂
【テーマコード(参考)】
4D058
【Fターム(参考)】
4D058JA24
4D058JB48
4D058KB11
4D058KB12
4D058KD11
4D058KD13
4D058PA04
4D058PA09
4D058RA01
4D058SA11
(57)【要約】
【課題】メンテナンス時の汚染対策を好適に行うことが可能なフィルタ装置を提供する。
【解決手段】清浄すべき気体Aを取り込む気体流入部2と、気体流入部2から流入した気体Aから粉塵を取り除く集塵手段10と、粉塵が取り除かれた清浄気体を流出させる気体流出部3とを備えたフィルタ装置1において、集塵手段10は、ろ材12をロール状に巻回したろ材ロール13を回転可能に保持する送出部11と、送出部11から送り出されたろ材12を巻き取る巻取部31と、送出部11と巻取部31との間に掛け渡されたろ材12が配置される集塵部51とを備えており、気体流入部2から流入した気体Aが集塵部51のろ材12を通過し、巻取部31は、気体Aの流れの上流側に面するろ材12の集塵面が内側になるようにろ材12を巻き取る駆動回転軸32を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
清浄すべき気体を取り込む気体流入部と、前記気体流入部から流入した前記気体から粉塵を取り除く集塵手段と、前記粉塵が取り除かれた清浄気体を流出させる気体流出部とを備えたフィルタ装置において、
前記集塵手段は、ろ材をロール状に巻回したろ材ロールを回転可能に保持する送出部と、前記送出部から送り出された前記ろ材を巻き取る巻取部と、前記送出部と前記巻取部との間に掛け渡された前記ろ材が配置される集塵部とを備えており、
前記気体流入部から流入した前記気体が前記集塵部の前記ろ材を通過し、
前記巻取部は、前記気体の流れの上流側に面する前記ろ材の集塵面が内側になるように前記ろ材を巻き取る駆動回転軸を備えている
ことを特徴とするフィルタ装置。
【請求項2】
前記集塵手段は、前記気体の流れ方向に間隔をあけて複数設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項3】
前記ろ材の巻取方向後端部には、前記巻取部で巻き取られた巻取ロールの外周を覆う被覆フィルムが連設されている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフィルタ装置。
【請求項4】
前記被覆フィルムの少なくとも巻取方向後端部には、接着剤が設けられている
ことを特徴とする請求項3に記載のフィルタ装置。
【請求項5】
前記巻取部では、前記ろ材を巻き付ける芯材が前記駆動回転軸に着脱可能に設けられており、
前記芯材と前記ろ材と前記被覆フィルムが前記接着剤で一体的に固定された巻取ロールは、前記駆動回転軸から取り外されてそのままの状態で排出可能になっている
ことを特徴とする請求項4に記載のフィルタ装置。
【請求項6】
前記ろ材の上流側および下流側のそれぞれに気圧計が設置されている
ことを特徴とする請求項2に記載のフィルタ装置。
【請求項7】
前記巻取部は、所定時間ごとに一定長さで前記ろ材の巻き取りを行う
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のフィルタ装置。
【請求項8】
複数の前記集塵手段のうち少なくとも一つは、他の前記集塵手段の非使用時に使用される予備の集塵手段である
ことを特徴とする請求項2乃至請求項5のいずれか一項に記載のフィルタ装置。
【請求項9】
芯材と、前記芯材の周囲に巻き付けられた被覆フィルムと、前記被覆フィルムに連設されたろ材とを備えている
ことを特徴とするろ材ロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集塵用のフィルタ巻取装置およびろ材ロールに関する。
【背景技術】
【0002】
気体を清浄するフィルタを備えたフィルタ装置としては、例えば特許文献1に示すものがあった。特許文献1のフィルタ装置は、フィルタの交換回数を軽減させるためにフィルタがロール状に巻かれており、所定時間ピッチでフィルタが巻き取られるようになっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のフィルタ装置では、気体内の埃等を吸着した汚染面が外側になるようにフィルタを巻き取るので、使用後のフィルタを巻き取ってなるローラを作業員が取り扱う際に、作業員が汚染物質に直接触れてしまう虞がった。
このような観点から、本発明は、メンテナンス時の汚染対策を好適に行うことが可能なフィルタ装置およびろ材ロールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決するための本発明は、清浄すべき気体を取り込む気体流入部と、前記気体流入部から流入した前記気体から粉塵を取り除く集塵手段と、前記粉塵が取り除かれた清浄気体を流出させる気体流出部とを備えたフィルタ装置である。前記集塵手段は、ろ材をロール状に巻回したろ材ロールを回転可能に保持する送出部と、前記送出部から送り出された前記ろ材を巻き取る巻取部と、前記送出部と前記巻取部との間に掛け渡された前記ろ材が配置される集塵部とを備えている。前記気体流入部から流入した前記気体が前記集塵部の前記ろ材を通過し、前記巻取部は、前記気体の流れの上流側に面する前記ろ材の集塵面が内側になるように前記ろ材を巻き取る駆動回転軸を備えていることを特徴とする。
本発明のフィルタ装置によれば、集塵面が内側になるようにろ材が巻き取られるので、巻き取ったロールを作業員が取り扱う際に、集塵面に付着した粉塵に直接触れ難い。かかるフィルタ装置を使用すれば、メンテナンス時の汚染対策を好適に行うことができる。
【0006】
本発明のフィルタ装置においては、前記集塵手段は、前記気体の流れ方向に間隔をあけて複数設けられているものが好ましい。このような構成によれば、気体がろ材を複数回通過するので、清浄効率が向上する、さらに、各集塵手段のろ材の目の粗さを変えれば、段階的で効率的な集塵を行うことができる。
【0007】
本発明のフィルタ装置においては、前記ろ材の巻取方向後端部には、前記巻取部で巻き取られた巻取ロールの外周を覆う被覆フィルムが連設されているものが好ましい。このような構成によれば、巻取ロールの外周面が被覆フィルムで覆われるので、作業員が巻取ロールを取り外す際に、集塵面の粉塵により一層触れ難くなる。
【0008】
本発明のフィルタ装置においては、前記被覆フィルムの少なくとも巻取方向後端部には、接着剤が設けられているものが好ましい。このような構成によれば、ろ材と被覆フィルムが巻き取られた外周面において被覆フィルムが接着剤で固定されるので、巻取ロールが一体化され、巻取ロールの扱いが容易になる。
【0009】
本発明のフィルタ装置においては、前記巻取部では、前記ろ材を巻き付ける芯材が前記駆動回転軸に着脱可能に設けられており、前記芯材と前記ろ材と前記被覆フィルムが前記接着剤で一体的に固定された巻取ロールは、前記駆動回転軸から取り外されてそのままの状態で排出可能になっているものが好ましい。このような構成によれば、巻取ロールを取り外してそのまま排出できるので、ろ材の交換および廃棄の作業手間と時間を削減できる。
【0010】
本発明のフィルタ装置においては、前記ろ材の上流側および下流側のそれぞれに気圧計が設置されているものが好ましい。ろ材の集塵面に粉塵が詰まると、ろ材の上流側と下流側との差圧が大きくなるので、ろ材の上流側および下流側のそれぞれに気圧計を設置しておけば、ろ材の目詰まり度合いを把握できるので、ろ材の送出し・巻き取りのタイミングを最適化することができる。
【0011】
本発明のフィルタ装置においては、前記巻取部は、所定時間ごとに一定長さで前記ろ材の巻き取りを行うものが好ましい。このような構成によれば、集塵部を通過する気体の流量を安定させることができる。
【0012】
本発明のフィルタ装置においては、複数の前記集塵手段のうち少なくとも一つは、他の前記集塵手段の非使用時に使用される予備の集塵手段であるものが好ましい。このような構成によれば、一の集塵手段のメンテナンス時等においても、気体の浄化を継続することが可能となる。
【0013】
前記課題を解決するための第二の本発明は、芯材と、前記芯材の周囲に巻き付けられた被覆フィルムと、前記被覆フィルムに連設されたろ材とを備えていることを特徴とするろ材ロールである。
本発明のろ材ロールによれば、芯材を送出部の回転軸に挿通させることで、ろ材ロールを容易に設置することができる。また、ろ材を巻取部で集塵面が内側になるように巻き取った後に、巻取ロールの外周面を被覆フィルムで覆えば、作業員が集塵面の粉塵に触れ難くなる。したがって、使用済みのろ材ロールを交換する際に、汚染対策を好適に行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のフィルタ装置およびろ材ロールによれば、作業員が巻取ロールを交換する際、ろ材の集塵面に付着した粉塵に直接触れ難くなるので、汚染対策を好適に行うことができる。。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係るフィルタ装置を示した概略構成図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るフィルタ装置のろ材の巻取開始状態を示した斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るフィルタ装置のろ材の巻取終了状態を示した斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るフィルタ装置で形成された巻取ロールを示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態に係るフィルタ装置およびろ材ロールについて、添付した図面を参照しながら説明する。まず、フィルタ装置の構成を説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るフィルタ装置を示した概略構成図である。本実施形態では、放射性物質を含む粉塵を気体から取り除く場合を例に挙げて説明する。本実施形態では、フィルタ装置1は、放射性物質を含む被覆層を剥離する工場等において、工場の作業室内の気体を清浄するのに用いられる。このような作業室内の気体(空気)中には、剥離作業に伴って発生した粉塵が浮遊している。
【0017】
図1に示すように、フィルタ装置1は、気体流入部2と、集塵手段10と、気体流出部3とを備えている。フィルタ装置1の下流側には、HEPAフィルタ4を備えた高機能集塵機5が設けられており、高機能集塵機5で二次除染が行われる。フィルタ装置1は、二次除染を行う前に気体内の埃やゴミを取り除く一次除染を行うものである
【0018】
気体流入部2は、洗浄すべき気体を取り込む部分である。気体流入部2は、図示しないポンプを用いて、工場の作業室内の気体Aを送り込む。
集塵手段10は、気体流入部2に連続して設けられており、気体流入部2から流入した気体Aから粉塵を取り除く。集塵手段10は、送出部11と、巻取部31と、集塵部51とを備えている。
送出部11は、ろ材12をロール状に巻回して形成したろ材ロール13を回転可能に保持する部分である。ろ材12は、不織布等の多孔質材料を、長尺の帯状に形成して構成されている。
図2に示すように、ろ材ロール13は、芯材14とろ材12と被覆フィルム15とを備えている。送出部11には、ろ材ロール13を回転可能に保持する回転軸16が設けられている。ろ材ロール13は、回転軸16に着脱可能である。回転軸16は、断面四角形の金属製の棒材にて構成されている。回転軸16は、フリーに回転可能となっており、ろ材ロール13と一緒に回転する。送出部11には、ろ材ロール13から送り出されたろ材12を集塵位置に案内するガイドローラ19,19が設けられている。ろ材12は、ガイドローラ19,19間を通過して、集塵部51の集塵位置に送り出される。
【0019】
芯材14は、ろ材ロール13の芯となる部材であり、断面四角形の角パイプにて構成されている。芯材14の長さ寸法は、ろ材12の上下幅寸法と略同等である。芯材14は、回転軸16に装着され、回転軸16とともに回転する。芯材14の外周には、被覆フィルム15が巻き付けられている。
被覆フィルム15は、巻取部31において巻き取られたろ材12の外周を覆って、ろ材12を外部と区画するものである。被覆フィルム15は、気密性を備えた材料で構成されており、ろ材12の上下幅寸法と同等の幅寸法を備えた帯状に形成されている。被覆フィルム15は、巻き取られたろ材12を少なくとも一周以上覆うことができる長さとなっている。被覆フィルム15の巻取方向前端部には、ろ材12が連設されている。
【0020】
図3に示すように、被覆フィルム15の巻取方向後端部には、縦方向に延在するガイドロッド17が固定されている。ガイドロッド17は、被覆フィルム15の後端部が折れ曲らないように補強するためのものであって、例えば金属製の棒材からなる。ガイドロッド17は、被覆フィルム15の後端部を、ガイドロッド17を包むように折り込んで溶着することで固定されている。被覆フィルム15の後端部は、保持紐18を介して、芯材14と接続されている。保持紐18は、ろ材12の巻取終了時に、被覆フィルム15が芯材14から離間した後に、被覆フィルム15の後端部が下方に落ちないように、送出部11と巻取部31との間でろ材12および被覆フィルム15のテンションを保持するためのものである。保持紐18は、ろ材ロール13の状態では、芯材14に巻き付けられており、ろ材12の巻取終了時に芯材14から送り出される。保持紐18は、芯材14から送り出された後は、被覆フィルム15の後端部との間で張った状態となる。
【0021】
被覆フィルム15の表面には、弱粘性の接着剤が塗布されている。この弱粘性接着剤は、巻取部31において被覆フィルム15がろ材12を覆って巻きついた状態で被覆フィルム15同士を固着するためのシール材であり、ろ材ロール13の状態では被覆フィルム15が剥離可能な粘度を備えている。弱粘性接着剤は、少なくとも被覆フィルム15の巻取方向後端部(ろ材ロール13の状態では内側端部)の表面に塗布されていればよく、被覆フィルム15の表面全体に塗布されてもよい。
【0022】
ろ材12は、複数回の集塵を行うことができる長さを備えている。1回の集塵を行うための長さは、清浄すべき気体が流れる集塵部51の幅寸法と同等である。すなわち、ろ材12は、集塵部51の幅寸法の2倍以上の長さを備えている。ろ材12を長くすることで、ろ材ロール13の交換回数を減らすことができる。
図2に示すように、ろ材12の巻取方向前端部は、上下の出隅部が面取りされて傾斜面が形成されており、前端部に向かって幅狭となるように形成されている。ろ材12の巻取方向前端部には、縦方向に延在するガイドロッド20が固定されている。ガイドロッド20は、ろ材12の前端部が折れ曲らないように補強するためのものであって、例えば金属製の棒材からなる。ガイドロッド20は、ろ材12の高さ寸法から、上下の面取り部に相当する高さ寸法を差し引いた長さ寸法を有している。ガイドロッド20は、ろ材12の前端部を、ガイドロッド20を包むように折り込んで溶着することで固定されている。ろ材12の前端部には、案内紐21が取り付けられている。案内紐21は、ろ材12の巻取開始時に、後記する巻取部31の駆動回転軸32が挿通する芯材34に係止される。
なお、案内紐21は、予めろ材12の前端部に固定されていなくてもよい。この場合、ろ材12の前端部に係止孔を形成するなど、案内紐21を係止可能な構造とすることが好ましい。
【0023】
巻取部31は、送り出されたろ材12を巻き取る部分である。巻取部31には、ろ材12から送り出されたろ材12を巻き取るための駆動回転軸32が設けられている。駆動回転軸32は、巻取部31に設けられた駆動モータ32aによって駆動されるものであって、断面四角形の金属製の棒材にて構成されている。駆動回転軸32は、ろ材12の集塵面(集塵部51内で気体流入部2(気体Aの流れの上流側)に対向する面)が内側になる方向(本実施形態では左回転)に回転する。
芯材34は、駆動回転軸32に着脱可能に装着される部材であり、断面四角形の角パイプにて構成されている。芯材34には、駆動回転軸32が挿通される。芯材34には、案内紐21を係止するための係止部35が設けられている。駆動回転軸32を回転させると芯材34が共に回転し、案内紐21が芯材34に巻回され、さらにろ材12が引っ張られて巻取部31まで案内されて芯材34に巻き取られる。この状態で、ろ材12が送出部11と巻取部31との間で掛け渡され、集塵部51に張られることとなる。
巻取部31には、集塵部51内のろ材12を巻取ロール33の外周部に案内するガイドローラ36,36が設けられている。ろ材12は、ガイドローラ36,36間を通過して、徐々に径が大きくなる巻取ロール33の外周面に案内される。
【0024】
集塵部51は、気体流入部2から流入した気体Aから粉塵を除去する部分である。集塵部51には、送出部11と巻取部31との間で掛け渡されたろ材12が直線状(平面状)に配置されている。気体Aは、集塵部51に配置されたろ材12に対して直交する方向に流されている。気体A中の、ろ材12の孔よりも大きい粉塵はろ材12によって捕捉され、穴よりも小さい粉塵と気体はろ材12を通過する。そして、ろ材12の上流側の表面が粉塵を除去する集塵面となる。
集塵部51は、金網52を備えている。金網52は、ろ材12の下流側に設置されている。金網52は、ろ材12が気体流によって下流側に撓まないようにするための押え材であり、平面状に形成されている。金網52は、気体の流れを阻害しない大きさの網目を備えている。
【0025】
集塵部51で一定時間集塵を行うと、集塵された粉塵によってろ材12の目が詰まって気体の流れが悪くなる。ここで、駆動回転軸32を回転させて、古いろ材12(集塵部51に露出していたろ材12)を巻取部31で巻き取る。これによって、新たなろ材12が送出部11から送り出されて、集塵部51内のろ材12が自動的に更新される。
【0026】
集塵部51内は、ろ材12を介して区画されている。ろ材12の上流側と下流側では気圧差(下流側部分の気圧が小さい)が発生しており、ろ材12の目が粉塵で詰まってくると、気圧差が大きくなる。そこで、本実施形態では、ろ材12の上流側と下流側のそれぞれに気圧計55を設置し、気圧計55で計測される気圧に応じて駆動回転軸32を回転させる。具体的には、ろ材12の目が詰まったと想定される、ろ材12の上流側と下流側との気圧差を予め設定しておき、気圧差が設定値に達したときに、駆動回転軸32を回転させる。駆動回転軸32は、ろ材12を集塵部51の長さ分を巻き取るように回転させる。駆動回転軸32の回転は、駆動モータ32aや気圧計55に接続された制御装置(図示せず)によって自動制御で行う。なお、駆動回転軸32の回転は、気圧差が設定値に達したことを知らせるランプやブザーで確認した作業員が手動で行ってもよい。
【0027】
駆動回転軸32の一回転当たりのろ材12の巻き取り長さは、巻取ロール33の外周径が大きくなるほど長くなる。そこで、本実施形態では、ろ材12の更新回数(何回目の巻取作業か)に応じて、更新一回当たりの駆動回転軸32の回転数を予め設定しておく。具体的には、更新回数が少ないほど巻取ロール33の外周径は小さいので、ろ材12の更新長さ(集塵部51の長さ)の巻き取りに要する駆動回転軸32の回転数は多くなる。そこで更新回数に対応する駆動回転軸32の回転数を算出して制御装置に入力しておき、何回目の更新かに応じて、設定された回転数で駆動回転軸32を回転させる。
なお、更新一回当たりの駆動回転軸32の回転数は、更新回数に応じて設定することに限定されるものではなく、巻取ロール33の外周径に応じて設定してもよい。巻取ロール33の外周径は、センサを設けて直接計測してもよいし、駆動回転軸32の累積回転数に応じて算出してもよい。
【0028】
ろ材12の更新を複数回繰り返すと、巻取部31では、芯材34にろ材12が巻き取られて、巻取ロール33が形成される。巻取ロール33は、内側から芯材34に案内紐21とろ材12が巻回され、最終的に、ろ材12の外周面に被覆フィルム15が巻回される。被覆フィルム15の表面には、弱粘性接着剤が塗布されているため、被覆フィルム15が巻回されると自動的に固定される。保持紐18は、被覆フィルム15の外側に巻き付けて縛るのが好ましい。
【0029】
巻取部31では、芯材34が駆動回転軸32に着脱可能に装着されているので、巻取ロール33は被覆フィルム15で固定されたそのままの状態で容易に取り外することができる。取り外した巻取ロール33は、廃棄用袋等に挿入して廃棄する。
【0030】
図1に示すように、本実施形態では、送出部11と集塵部51と巻取部31とを備えた集塵手段10は、気体Aの流れ方向に間隔をあけて複数(本実施形態では5段)設けられている。すなわち、気体流入部2と気体流出部3との間には、複数列の集塵部51(ろ材12)が配置されている。複数列のろ材12,12・・は、気体Aの流れる方向に間隔をあけて配置されており、気体流入部2から流入した気体Aが複数列のろ材12,12・・を順次通過するようになっている。
5段積層されたろ材12,12・・は、上流側から下流側に向かうに連れて、目の粗さが小さくなるように構成されている。このように構成することで、上流側のろ材12で大きい粉塵を除去でき、下流側に向かうに連れて、徐々に小さい粉塵を段階的且つ効率的に除去することができる。
【0031】
ろ材12の上流側と下流側にはそれぞれ気圧計55が設けられているが、隣り合うろ材12,12の間の気圧計55は共通となっている。つまり、上段側のろ材12と下流側のろ材12との間には、上段側のろ材12の下流側の気圧計および下流側のろ材12の上流側の気圧計として、一つの気圧計55が設けられている。そして、制御装置では、隣り合う気圧計55,55の差圧をそれぞれ算出することで、各ろ材12の集塵状態を推定し、差圧が設定値に達すると、該当する巻取部31の駆動回転軸32を回転させて、ろ材12の更新を行う。
【0032】
本実施形態のフィルタ装置1によれば、集塵面が内側になるように、ろ材12が巻き取られるので、巻取ロール33を作業員が取り扱う際に、取り除いた粉塵に作業員が直接触れ難い。したがって、かかるフィルタ装置では、メンテナンス時の汚染対策を好適に行うことができる。また、巻取ロール33の外周面が被覆フィルム15で覆われるので、ろ材12が被覆され、作業員が巻取ロール33を取り外す際、集塵面の粉塵により一層触れ難くなる。
また、本実施形態のフィルタ装置1では、被覆フィルム15に設けられた接着剤で巻取ロール33の外周面の被覆フィルム15を固定するので、巻取ロール33が一体化され、巻取ロール33の扱いが容易になる。さらに、ろ材12の巻き取りが終了すると同時に巻取ロール33が一体化されるので、固定の作業手間を削減できる。なお、保持紐18で被覆フィルム15の外側を巻いて縛ることで、巻取ロール33を強固に固定できる。
【0033】
巻取部31では、芯材34が駆動回転軸32に着脱可能に取り付けられているので、巻取ロール33の取り外しを容易に行うことができる。そして、巻取ロール33を取り外してそのまま排出できるので、ろ材の交換および廃棄の作業手間と時間を削減できる。
【0034】
集塵手段10が複数段設けられており、気体流入部2から流入した気体Aが複数列のろ材12,12・・を通過するので、清浄効率が向上する。さらに、各集塵手段10のろ材12の目の粗さを下流側に向かうに連れて徐々に細かくすることで、段階的で効率的な集塵を行うことができる。
また、本実施形態では、ろ材12の上流側と下流側の集塵部51,51に、それぞれ気圧計55を設置し、気圧計の計測値から気圧差が発生したことを検知するので、粉塵が詰まった集塵部51内のろ材12を、好適なタイミングで新たなろ材12へ更新することができる。
【0035】
本実施形態のろ材ロール13によれば、芯材14を送出部11の回転軸16に装着するだけで、ろ材ロール13を容易に設置することができる。また、ろ材12を巻取部31で集塵面が内側になるように巻き取った後に、巻取ロール33の外周面を被覆フィルム15で覆うことで、取り除いた粉塵が巻取ロール33の内側になるので外部に露出されることがない。よって、作業員が取り除いた粉塵に直接触れ難くなる。したがって、かかるろ材ロール13においても、メンテナンス時の汚染対策を好適に行うことができる。
【0036】
次に、本発明の実施形態の変形例に係るフィルタ装置を説明する。前記実施形態では、5段の集塵手段10を同時に使って気体Aを浄化する場合を例示したが、一部(少なくとも一つ)の集塵手段10を、残りの集塵手段10の非使用時に使用する予備(バックアップ)の集塵手段としてもよい。すなわち、使用中の集塵手段10のろ材12の最後の巻き取り作業を開始する前に、予備の集塵手段10のろ材ロール13を集塵部51に送出し、その後、使用中の集塵手段10においてろ材12の最後の巻き取りを行う。ろ材ロール13の交換が行われた集塵手段10は、予備の集塵手段となる。このようにすると、使用中の集塵手段10のメンテナンス時(ろ材ロール13の交換時)においても、気体Aの浄化を継続するこが可能となる。
【0037】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定する趣旨ではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。たとえば、前記実施形態では、ろ材12の上流側と下流側との差圧を算出して、巻取部31の駆動回転軸32を回転させるようにしているが、これに限定されるものではない。例えば、駆動回転軸32を、所定時間ごとに所定の回転数で回転させるようにしてもよい。具体的には、ろ材12の粉塵が詰まる時間を予め設定して、制御装置に入力しておき、集塵を開始した時間から設定時間が経過したときに、駆動回転軸32を回転させてろ材12の交換を行うようにする。このような構成によれば、気圧計を設けることなく、単純な構成でろ材を定期的に交換することができる。
【0038】
また、前記実施形態では、集塵部51においてろ材12の下流側に金網52を設けて、ろ材12が下流側に撓むのを防止しているが、これに限定されるものではない。例えば、送出部11の回転軸16を、回転させるのに一定のトルクが必要な構成とし、ろ材12を、駆動回転軸32と回転軸16との間でテンションを持たせた状態で張るようにしてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 フィルタ装置
2 気体流入部
3 気体流出部
10 集塵手段
11 送出部
12 ろ材
13 ろ材ロール
14 芯材
15 被覆フィルム
16 回転軸
31 巻取部
32 駆動回転軸
33 巻取ロール
34 芯材
35 係止部
51 集塵部
52 金網
55 気圧計