(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022148191
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】ニューマチックケーソンの健康管理システム
(51)【国際特許分類】
E02D 23/04 20060101AFI20220929BHJP
G16H 40/00 20180101ALI20220929BHJP
【FI】
E02D23/04 Z
G16H40/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021049774
(22)【出願日】2021-03-24
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年8月6日にPR TIMESのウェブサイトにて掲載(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000040318.html) 令和3年2月16日~17日に建設技術展2020関東にて展示 令和3年3月8日に日経クロステックのウェブサイトにて掲載(https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/ncr/18/00118/022500002/)
(71)【出願人】
【識別番号】000207780
【氏名又は名称】大豊建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001793
【氏名又は名称】特許業務法人パテントボックス
(72)【発明者】
【氏名】牛谷内 清賢
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 延宏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 元治
(72)【発明者】
【氏名】帷子 幸一
(72)【発明者】
【氏名】菅 浩
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA15
(57)【要約】
【課題】身体情報を自動的に取得でき、かつ、データを蓄積して有効活用できる、健康管理システムを提供する。
【解決手段】ニューマチックケーソンの健康管理システムSHは、作業従事者の身体情報を取得する複数の身体情報取得機器21-25と、取得した複数の身体情報を集約する管理装置20と、を備える、身体情報取得システムSPと、作業室内の圧力を計測する函内圧力計31と、マンロック内の圧力を計測するマンロック内圧力計32と、計測された函内圧力及びマンロック内圧力と作業従事者を特定する情報と時間情報とから構成される高気圧作業履歴情報を集約する別の管理装置30と、を備える、減圧管理システムSDと、身体情報取得システムSPの管理装置20から複数の前記身体情報を受信して記憶するとともに、減圧管理システムSDの管理装置30から函内圧力及びマンロック内圧力を受信して記憶する、サーバー10と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業従事者の身体情報を取得する複数の身体情報取得機器と、取得した複数の身体情報を集約する管理装置と、を備える、身体情報取得システムと、
作業室内の圧力を計測する函内圧力計と、マンロック内の圧力を計測するマンロック内圧力計と、計測された函内圧力及びマンロック内圧力と作業従事者を特定する情報と時間情報とから構成される高気圧作業履歴情報を集約する別の管理装置と、を備える、減圧管理システムと、
前記身体情報取得システムの前記管理装置から複数の前記身体情報を受信して記憶するとともに、前記減圧管理システムの別の前記管理装置から前記高気圧作業履歴情報を受信して記憶する、サーバーと、を備える、ニューマチックケーソンの健康管理システム。
【請求項2】
前記サーバーに記憶された前記身体情報、前記高気圧作業履歴情報を閲覧可能な管理者端末をさらに備える、請求項1に記載された、ニューマチックケーソンの健康管理システム。
【請求項3】
前記減圧管理システムは、作業従事者を特定するための顔認証情報を取得する撮像機器をさらに備える、請求項1又は請求項2に記載された、ニューマチックケーソンの健康管理システム。
【請求項4】
前記サーバーは、異なる複数の作業現場における、作業従事者の前記身体情報、前記高気圧作業履歴情報を、すべて受信して記憶するように構成されている、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載された、ニューマチックケーソンの健康管理システム。
【請求項5】
前記サーバーは、前記身体情報、及び、前記高気圧作業履歴情報に基づいて、作業従事者の健康状態を人工知能の機械学習によって予測する予測機能部をさらに有する、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載された、ニューマチックケーソンの健康管理システム。
【請求項6】
前記身体情報取得システムの前記管理装置は、顔認証情報を取得する前記撮像機器によって撮像された画像に基づいて、個人を特定する機能部をさらに備える、請求項3に記載された、ニューマチックケーソンの健康管理システム。
【請求項7】
前記サーバーは、前記身体情報と前記高気圧作業履歴情報を判定する判断機能部と管理者に警告を送信する警告通知機能部をさらに有する、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載された、ニューマチックケーソンの健康管理システム。
【請求項8】
前記サーバーは、前記身体情報、前記高気圧作業履歴情報、及び、高気圧作業計画情報に基づき、高気圧作業計画の設定に対して、前記身体情報、高気圧履歴、及び、UPTDが管理値を超えた場合に警告を通知するか、または、超えないように補助する機能を備える、請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載された、ニューマチックケーソンの健康管理システム。
【請求項9】
前記サーバーは、前記身体情報、前記高気圧作業履歴情報、及び、高気圧作業計画情報に基づき、管理帳票を自動作成する機能を備える、請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載された、ニューマチックケーソンの健康管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニューマチックケーソン工法を用いた工事において使用される健康管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ニューマチックケーソン工法では、ケーソン下部に設けた作業室に圧縮空気を送り込むことにより、空気の圧力で地下水を排除した状態で掘削作業を行っている。従来は、作業員が高気圧下の作業室内に入って掘削作業を行っていたが、近年は、作業員の健康面を考慮して、地上から遠隔操作できる掘削機を用いた無人化掘削が一般的となっている。
【0003】
一方で、掘削機の点検やメンテナンス、修理、解体等の作業を行うためには、依然として作業室内に作業員が立ち入る必要がある。また、硬質な岩盤の場合等では、無人化掘削では対応できず、作業室内に作業員が入って発破の作業等を行う場合がある。
【0004】
作業室における作業開始前には、作業員は地上からケーソンに設置されたマンロックに入り、作業室と同じ圧力まで加圧した後、マンロックの作業室側のハッチを開けて作業室に移動して作業を行う。作業終了後には、作業室からマンロックに入り、作業室側のハッチを閉めた後に、大気圧まで時間をかけて減圧してから、地上に帰還するようになっている。
【0005】
このとき、減圧を急激に行うと、体内の不活性ガス(窒素ガス)が体外に排出しきれずに気泡となって様々な障害が発生する。これを一般に減圧症という。減圧症を発生させないためには、作業室内の圧力や作業時間等に応じて、減圧速度や停止圧力、停止時間等の減圧管理情報を決定・管理する必要がある。
【0006】
このような減圧管理を実施する減圧管理システムとして、例えば特許文献1には、作業者が携帯型端末を携帯することによって携帯型端末に圧力の経時変化を記録し、記録と減圧管理情報とを照合するようにした技術が記載されている。この特許文献1の構成によれば、管理ミスを防止して作業者の安全性を高めることができる。この他に、この減圧管理システムに基づいて、自動的に高圧室業務日報を作成する技術も存在している。
【0007】
また、バイタルデータを取得して健康状態を判定する技術として、例えば特許文献2には、心拍数、血圧、体温、または呼吸数などのバイタル情報を取得し、健康状態を予測する技術が記載されている。加えて、過去の健康状態に基づいて健康状態を予測する技術も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012-284145号公報
【特許文献2】特開2020-149150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1の減圧管理システムを含む従来のシステムは、身体情報を自動的に取得するものではないうえ、作業現場ごとに独立したシステム構成であったために、データを蓄積して有効活用できるものではなかった。
【0010】
さらに、特許文献2の技術では、ニューマチックケーソン工法のように、地上での作業だけでなく、高気圧下となる作業室での作業が発生する場合、高気圧下での負荷を勘案することができず、健康状態を予測することが困難であった。
【0011】
そこで、本発明は、高気圧下での負荷を勘案することができ、かつ、データを蓄積して有効活用できる、健康管理システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明のニューマチックケーソンの健康管理システムは、作業従事者の身体情報を取得する複数の身体情報取得機器と、取得した複数の身体情報を集約する管理装置と、を備える、身体情報取得システムと、作業室内の圧力を計測する函内圧力計と、マンロック内の圧力を計測するマンロック内圧力計と、計測された函内圧力及びマンロック内圧力と作業従事者を特定する情報と時間情報とから構成される高気圧作業履歴情報を集約する管理装置と、を備える、減圧管理システムと、前記身体情報取得システムの前記管理装置から複数の前記身体情報を受信して記憶するとともに、前記減圧管理システムの前記管理装置から前記函内圧力及び前記マンロック内圧力を受信して記憶する、サーバーと、を備えている。
【発明の効果】
【0013】
このように、本発明のニューマチックケーソンの健康管理システムは、身体情報取得機器と、身体情報を集約する管理装置と、を備える、身体情報取得システムと、函内圧力計と、マンロック内圧力計と、函内圧力及びマンロック内圧力を集約する管理装置と、を備える、減圧管理システムと、身体情報取得システムの管理装置から複数の身体情報を受信して記憶するとともに、減圧管理システムの管理装置から函内圧力及びマンロック内圧力を受信して記憶する、サーバーと、を備えている。このような構成であれば、身体情報を自動的に取得でき、かつ、データを一括して管理することでより多くのデータを蓄積して有効活用できるようになる。また、減圧管理システムとの連携により、高気圧作業履歴情報と身体情報(健康情報)を関連付けることにより、高気圧下による負荷の影響を含んだデータベースを構築し、それをAIに学習させることにより、高気圧下作業を含んだ労働条件での健康状態を予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】健康管理システムのシステム構成を示すブロック図である。
【
図2】閲覧の権限について説明するブロック図である。
【
図3】健康管理システムの制御の流れを説明するフローチャートである。
【
図4】健康管理システムの処理の流れを説明するシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。ただし、以下の実施例に記載されている構成要素は例示であり、本発明の技術範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【実施例0016】
(ニューマチックケーソンの構成)
ここで、ニューマチックケーソンの構成について説明しておく。図示しないが、ニューマチックケーソンの下部には、先端が細くなった刃口が形成されており、この刃口の内面と作業室スラブの下面とに囲まれて作業室が形成されている。作業室内には、少なくとも1台以上の掘削機が配置されており、遠隔操作される掘削機によって地盤を掘削してニューマチックケーソンを沈下させていくようになっている。
【0017】
作業室からは、地上に向かってマテリアルシャフトが延びており、上部にマテリアルロックが設置されている。同様に、作業室からは、地上に向かってマンシャフトが延びており、上部にマンロックが設置されている。この他、作業室やマンロック内に圧縮空気を送り込んだり排気したりするための圧気設備が配置されている。
【0018】
さらに、ニューマチックケーソンに近接する地上には、中央監視室が設置されている。中央監視室では、掘削機、マテリアルシャフト、及びマテリアルロックを介した資材の搬入と掘削した土砂の搬出、マンシャフト及びマンロックを介した作業員の入退室、マンロック内での加圧、減圧等の圧力管理、ケーソンの沈下量、傾斜等の姿勢表示等、全体の監視や管理が行われる。
【0019】
(健康管理システムの構成)
次に、本実施例の健康管理システムSHの構成について説明する。健康管理システムSHは、個人ごとに身体情報を取得する身体情報取得システムSPと、加圧・減圧を管理する減圧管理システムSDと、例えばクラウドサーバーであるサーバー10と、階層構成された閲覧権限を有する管理者端末である管理者PC11と、から構成されている。なお、
図2は階層構造を例示するものであり、各階層は単一のPCであってもよく、複数のPCであってもよい。
【0020】
すなわち、本実施例の健康管理システムSHは、後述するように、身体情報取得システムSPと、減圧管理システムSDと、が連携して、高気圧作業の計画のための減圧表データや入出函時間、加圧時間・作業時間・減圧時間等の高気圧作業履歴のデータを取得し、日々の高気圧作業日報を出力する日報出力機能を有している。さらに、健康管理システムSHは、身体情報を判定して問題があれば、管理者に警告を送信する警告通知機能を有している。
【0021】
(身体情報取得システムの構成)
次に、身体情報取得システムSPの構成について説明する。身体情報取得システムSPは、管理装置20と、身体情報を取得する身体情報取得機器として、体温を計測する体温計21と、血圧を計測する血圧計22と、血中の酸素濃度を測定する酸素濃度測定器23と、血中アルコール濃度を計測するアルコールチェッカー24と、肺機能を検査するスパイロメーター25と、を備えている。管理装置20としては、例えば、携帯型タブレットやPCを用いることができる。
【0022】
そして、身体情報取得システムSPの管理装置20は、それぞれの計測機器(iot機器)から、作業従事者の体温t、血圧p、酸素濃度c、血中アルコール濃度m、肺活量と1秒率(以下では「肺活量等」とする)vなどの計測値をインターネットを介して受信(かつ、一時的に記憶)し、受信した計測値をインターネット経由でサーバー10へ送信する。
【0023】
(減圧管理システムの構成)
次に、減圧管理システムSDの構成について説明する。減圧管理システムSDは、管理装置30(減圧管理システムSDの管理装置20とは別の管理装置)と、作業室内(函内)の圧力を検出する函内圧力計31と、マンロック内の圧力を検出するマンロック内圧力計32と、顔認証情報によって個人を特定するための撮像機器であるカメラ43と、を備えている。この他、減圧管理システムSDは、個人を特定するために、ICタグやICタグリーダなどを備えることも好ましい。管理装置30としては、例えば、携帯型タブレットやPCを用いることができる。また、圧力計31、32による圧力情報と時間から加圧・作業・減圧に要した時間を確認できる。
【0024】
そして、減圧管理システムSDの管理装置30は、函内圧力PN、マンロック内圧力PM、画像(顔認証情報)VIなどの計測値等をインターネットを介して受信(かつ、一時的に記憶)し、受信した計測値等をインターネット経由でサーバー10へ送信する。すなわち、管理装置30は、函内圧力PN及びマンロック内圧力PMと、作業従事者を特定する情報と時間情報とから構成される高気圧作業履歴情報を集約して管理する。
【0025】
(サーバーの構成)
サーバー10は、例えば、クラウドサーバーであり、新規入場者アンケート、高気圧健康診断結果、健康診断結果等の情報を一元的に管理している。さらに、サーバー10は、身体情報取得システムSPの管理装置20から、作業従事者の体温t、血圧p、酸素濃度c、血中アルコール濃度m、肺活量等vなどの計測値を受信して記憶する。また、サーバー10は、減圧管理システムSDの管理装置30から函内圧力PN、マンロック内圧力PM、画像(顔認証情報)VIなどの計測値等を受信して記憶する。
【0026】
さらに、サーバー10は、現場の減圧管理情報(PN、PM、VI)と、現場のそれぞれの作業従事者の身体情報(t、p、c、m、v)と、を関連付けた状態で保持している。すなわち、それぞれの作業従事者のある時点での身体情報が、減圧管理情報と関連付けられて記憶されている。
【0027】
そして、サーバー10は、日々の情報を記憶するとともにグラフ化可能な状態で保持して、管理者PC11から閲覧できるようにする閲覧機能部10a(不図示)を有している。さらに、サーバー10は、高気圧作業の計画のための減圧表データや入出函時間、加圧時間・作業時間・減圧時間等の高気圧作業履歴のデータを取得し、日々の高気圧作業日報を出力する日報出力機能部10b(不図示)を有している。さらに、サーバー10は、身体情報を判定して問題があれば、管理者に警告を送信する警告通知機能部10c(不図示)を有している。
【0028】
加えて、本実施例のサーバー10では、人工知能(AI)の機械学習によって、作業従事者の健康状態を予測する予測機能部10dを有している。すなわち、予測機能部10は、身体情報である、作業従事者の体温t、血圧p、酸素濃度c、血中アルコール濃度m、肺活量等vなどの計測値と、減圧管理情報である、函内気圧PN、マンロック内気圧PM、顔認証情報VIなどの計測値と、の関係性に基づいて、作業従事者の身体情報を予測するようになっている。
【0029】
より具体的に言うと、サーバー10の予測機能部10dは、例えば、複数の作業従事者の身体情報(t、p、c、m、v)と、減圧管理情報(PN、PM、VI)と、を入力層とし、1つ以上の中間層を介在させて、身体情報(t、p、c、m、v)を出力層とする、多層ニューラルネットワークを構築することができる。
【0030】
管理者PC11は、サーバー10の情報を閲覧したり加工したりできるが、各ノードごとに、異なる閲覧の権限が付与されている。例えば、本社PC11Aでは全社の現場情報を閲覧でき、支店PC11Bでは支店内の現場情報を閲覧でき、現場PC11Cでは当該現場の情報のみを閲覧でき、関連会社PC11Dでは自社情報のみを閲覧できるように構成することが好ましい。
【0031】
(制御の流れ)
ここで、
図3のフローチャート、及び、
図4のシーケンス図を用いて、健康管理システムSHを用いた、健康管理制御の流れについて説明する。
【0032】
(1)現場開設
サーバー10に支店管理者がアクセスし、現場名称、現場管理者の名前、メールアドレス等のデータを登録する(ステップS1)。
【0033】
(2)初期データ登録
1.現場管理者がサーバー10にログインして、同グループの従事者と下位グループ(下請け等)の管理者の名前、メールアドレス等のデータを登録する(ステップS2)。
2.下位グループの従事者(下請けの作業員等)については、現場管理者もしくは下位グループの管理者が名前、メールアドレス等のデータを登録する(ステップS2)。
3.登録された従事者(職員及び作業員)に対して、新規入場者登録、健康診断、高気圧健康診断等のデータを登録する(ステップS3)。
【0034】
(3)日々の健康管理
1.作業前に、身体情報を計測する(ステップS4)。具体的には、下記の項目を計測・チェックする。端末(管理装置20)と測定機器は、有線、無線、bluetooth(登録商標)などで接続されており、測定結果のデータを取得することができる。データ取得前に、顔認証又は登録リストから自分の名前を選択するなどして個人が特定される。
・体温測定
・血圧測定
・酸素濃度測定
・アルコールチェック
2.問診表のチェック項目について端末(管理装置20)でチェックする。
3.その他、定期的に測定すべき項目があれば、適宜測定し、データを取得する。
・高気圧健康診断結果は6か月ごと、健康診断結果は1年ごとに新しいデータを入力する。
4.取得したデータ及び問診結果を端末(管理装置20)からサーバー10に送信する(ステップS5)。
【0035】
(4)高気圧作業計画策定(ステップS6)
1.函内に入って作業を行う作業従事者を選定する。
2.減圧管理システムSDに格納された減圧表のデータを参照し、作業気圧と作業予定時間から減圧停止気圧と減圧停止時間を取得して設定する。
・例えば、0.2(MPa)で〇〇時間作業する場合、気圧と時間を設定して該当する減圧停止気圧と減圧停止時間を設定する。
・x1(MPa)でy1(分)停止、x2(MPa)でy2(分)停止・・・。
【0036】
(5)入函前チェック(ステップS7)
1.身体情報・問診を必要に応じて追加する。
・例えば、スパイロメーター25による測定を1週間又は2週間に1度の頻度で実施してデータを取得する。
・高気圧作業前の問診項目をチェックする。
2.身体情報・問診データをあらかじめ設定された管理値と比較して、超えている場合には管理者に警報が通知される。
・管理値には1次管理値と2次管理値があり、1次管理値を超えても管理者の判断で入函することは可能だが、2次管理値を超えた場合には入函することはできない。
3.管理者が入函者の状況を確認し、警報が通知されたら管理者の許可が得られなければ入函できない(ステップS8、S9)。
【0037】
(6)入函・加圧(ステップS10)
1.マンロックに入り、減圧管理システムSDで個人を特定したうえで加圧を開始し、作業気圧まで加圧する。
・ヘリウム混合ガス使用時は、所定の気圧でマスクを付ける。
2.減圧管理システムSDから加圧開始時刻や入函者、作業気圧などのデータがサーバー10に送信される。
【0038】
(7)作業(ステップS11)
1.マンロックから作業室内に移動し、函内で作業を行う。
・ヘリウム混合ガス使用時は、マスクを付けたまま作業を行う。
2.函内圧力PN、作業時間のデータが減圧管理システムSDに記憶される。
【0039】
(8)出函・減圧(ステップS12)
1.マンロックに移動し、減圧管理システムSDで個人を特定したうえで減圧を開始し、大気圧まで減圧する。
・ヘリウム混合ガス呼吸時は所定の気圧でマスクを外す。
・酸素減圧を行う場合には、減圧管理システムSDのガイダンスに従ってマスクの付け外しを行う。
2.大気圧まで減圧したら、減圧を終了し、マンロックから出る。
・減圧終了後に、減圧時の停止圧力や時間、減圧開始時刻、減圧終了時刻、UPTDなどのデータが減圧管理システムSDからサーバー10に送信される。
【0040】
(9)減圧完了後の健康状態管理(ステップS13)
1.体調を確認し、不良であれば、血圧や体温等を測定し、問診を行う(ステップS14)。
・疲労部位の調査シート等の作成。
2.体調不良の状況に応じて対応する(ステップS15)。
・状況に応じて医師に相談する。
・医師の判断を仰ぎながら適宜、病院への搬送又は現場での再圧処置などを行う。
【0041】
(10)管理用帳票出力・データ保存(ステップS16)
1.高気圧作業日誌を自動作成し、出力
2.健康管理状態の時系列データの自動グラフ化
3.健康状態チェックシートのデータを自動的に作表・グラフ化
4.疲労部位調査結果の作表・グラフ化
5.スパイロメーター25による測定結果の一覧表・グラフ化
・グラフの表示・同一人の他現場データを比較して、傾向から今後の方針の参考とする。
・入函を継続するか、又は、しばらく中断させるか、等
6.UPTD記録の一覧表・グラフ化
【0042】
(総合判定の例)
以下では、表1~表3を用いながら、A氏、B氏、C氏についての測定結果と、入函についての総合判定の例について説明する。
【0043】
【0044】
表1に示すように、A氏は、体温tは1次管理値内、血圧pは2次管理値外、酸素濃度cは1次管理値外であるが2次管理値内、血中アルコール濃度mは1次管理値内、肺活量等vは1次管理値外であるが2次管理値内、という状態である。この状態では、血圧pが2次管理値外であるため、総合判定は自動的に「不許可」となる。そうすると、管理者に通知されるとともに、作業従事者本人にもモニタを通じて「2次管理値外なので入函できません。」と表示される。
【0045】
【0046】
表2に示すように、B氏は、体温tは1次管理値内、血圧pは1次管理値外であるが2次管理値内、酸素濃度cは1次管理値外であるが2次管理値内、血中アルコール濃度mは1次管理値内、肺活量等vは1次管理値外であるが2次管理値内、という状態である。この状態では、血圧p、酸素濃度c、及び、肺活量等vが1次管理値外であるため、総合判定は自動的に「要許可」となる。そうすると、管理者に通知されるとともに、作業従事者本人にもモニタを通じて「1次管理値外なので管理者の許可を受けないと入函できません。」と表示される。この場合、作業従事者(要注意者)は、管理者の許可を受ければ入函可能となる。さらに、本実施例の健康管理システムSHによれば、AI(機械学習)を用いたサーバー10の予測機能部10dによって、許可/不許可に関して的確なアドバイスを受けることができるようになっている。
【0047】
【0048】
表3に示すように、C氏は、体温tは1次管理値内、血圧pは1次管理値内、酸素濃度cは1次管理値内、血中アルコール濃度mは1次管理値内、肺活量等vは1次管理値内、という状態である。この状態では、身体情報のすべての要素が1次管理値内であるため、総合判定は自動的に「許可」となる。この場合は、管理者に通知されない。作業従事者は、管理者の許可を受けなくても入函可能となる。
【0049】
(効果の具体例)
次に、本実施例の健康管理システムSHの奏する効果の具体例について説明する。以下では、iot機器利用による効果、データ蓄積及び一元管理による効果、減圧管理システムとの連携による効果、AI利用による効果、に分けて説明する。
【0050】
<iot機器利用による効果>
・測定後に瞬時に判断できる。さらに、要注意者や入函不能者は管理者に通知される。
要注意者であっても、管理者の許可を受ければ入函可能である。さらに、要注意者については、AIによる学習・予測によって、許可/不許可の的確なアドバイスを受けることができる。
【0051】
<データ蓄積及び一元管理による効果>
1)個々人による差異の判別
・通常状態で測定値が高めであったり、低めであったり、個々人による差異がある。
特にスパイロメーター25による呼吸機能検査は、個人による差が大きい。また、注意しないと測定値が低くなる場合がある。
2)データ蓄積と一元管理による効果
・従事者について、過去の履歴データを参照できる。
従来は、現場ごとの管理であったが、一元管理により過去データ(例えば、他の作業現場のデータ)も参照可能となる。さらに、より多くの履歴データを参照することで、個人の傾向を精度よく把握しやすくなるため、より的確な判定ができる。経験の浅い管理者であっても、熟練した管理者に準じた管理が可能となる。
【0052】
<減圧管理システムとの連携による効果>
・高気圧作業計画時に、減圧表のデータを取得できるため、手間や時間が少なくなる。
・転記時のミスによる誤りを削減できる。
・減圧完了後すぐに作業日報を作成できる。
・実際のUPTDの値がすぐにわかるので、計画が立てやすく管理しやすい。
・計画時に、今までの身体情報と高気圧作業履歴情報を元に、UPTD等管理値を超えないように計画を行うことができる。
UPTDには、一週間当たりの規格値と1日当たりの規格値があり、両方を満たす必要がある。具体的には1日当たり600以下、1週間当たり2500以下。1日の規格値ぎりぎりのUPTDでは、1週間に約4日しか働けない。1週間に6日働くとすると、1日当たり約400以下となる。常に400以下で作業していればよいが、問題が生じて400を超えてしまった場合は、超過しないように調整が必要となる。この場合でも、実施例のシステムを利用すれば、イレギュラーをすぐに把握できるので、的確に対応可能である。特に、大深度では、UPTD600以下で減圧表を選定しないと、作業時間が短くなり過ぎる場合があるため、効果が大きいといえる。
【0053】
<AI利用による効果>
・顔認証時に、同時に体調を判定しアドバイスを表示できる。
例えば、「体調が良くないので、入函作業は避けてください」など。AIによる学習の結果、顔の色の変化などと体調の状況を関連付けてアドバイスを行えるようにする。
・体調の予測と対応のアドバイス表示
将来的に体調が悪化する可能性のある従事者をピックアップし、事前にアドバイス表示を行うことができる。
問診結果や健康管理の測定データから体調を予測してアドバイスを行うことができる。例えば、「〇〇氏は、今後、体調の悪化が予測されるので、経過観察を行った方が良い」など。
減圧管理システムSDとも連携し、そのデータを参照することで、高気圧作業の影響を加味した体調予測を行うことができる。
【0054】
(効果)
次に、本実施例のニューマチックケーソンの健康管理システムSHの奏する効果を列挙して説明する。
【0055】
(1)上述してきたように、ニューマチックケーソンの健康管理システムSHは、作業従事者の身体情報を取得する複数の身体情報取得機器21-25と、取得した複数の身体情報を集約する管理装置20と、を備える、身体情報取得システムSPと、作業室内の圧力を計測する函内圧力計31と、マンロック内の圧力を計測するマンロック内圧力計32と、計測された函内圧力及びマンロック内圧力を集約する管理装置30と、を備える、減圧管理システムSDと、身体情報取得システムSPの管理装置20から複数の前記身体情報を受信して記憶するとともに、減圧管理システムSDの管理装置30から函内圧力及びマンロック内圧力を受信して記憶する、サーバー10と、を備えている。このような構成であれば、身体情報を自動的に取得でき、かつ、データを一括して管理することでより多くのデータを蓄積して有効活用できるようになる。すなわち、減圧管理情報と身体情報を一括して受信して記憶するサーバー10であれば、作業従事者の健康状態を、現場の状況を踏まえて総合的に判定することが可能となる。また、減圧管理システムSDとの連携により、高気圧作業履歴情報と身体情報を関連付けることにより、高気圧下による負荷の影響を含んだデータベースを構築し、それをAIに学習させることにより、高気圧下作業を含んだ労働条件での健康状態を予測することができる。
【0056】
(2)また、サーバー10に記憶された身体情報(t、p、c、m、v)、函内圧力PN、及び、マンロック内圧力PMを閲覧可能な管理者端末をさらに備えることで、遠隔地にいる管理者であっても、作業従事者の健康状態を管理できる。
【0057】
(3)さらに、減圧管理システムSDは、作業従事者を特定するための顔認証情報を取得する撮像機器としてのカメラ33をさらに備えることで、作業従事者を自動的に特定して、身体情報・減圧管理情報と、自動的に関連付けることができる。
【0058】
(4)また、サーバー10は、異なる複数の作業現場における、作業従事者の身体情報(t、p、c、m、v)、函内圧力PN、及び、マンロック内圧力PMを、すべて受信して記憶するように構成されているため、異なる作業現場のデータをも取り入れることによって、いっそう精度よく作業従事者の健康状態を判定したり予測したりできるようになる。
【0059】
(5)さらに、サーバー10は、身体情報(t、p、c、m、v)、函内圧力PN、及び、マンロック内圧力PMに基づいて、作業従事者の健康状態を人工知能の機械学習によって予測する予測機能部10dをさらに有することで、作業従事者の健康状態を精度よく予測することができる。さらに、経験の浅い管理者であっても、熟練した管理者に準じた管理が可能となる。
【0060】
以上、図面を参照して、本発明の実施例を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0061】
例えば、実施例では、サーバー10がAIによる予測機能部を備える場合について説明したが、これに限定されるものではなく、サーバー10は各種データのみを記憶・保持するとともに、管理者端末がAIによる予測機能部を有していてもよい。