(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022148196
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】ヘッドランプの支持構造
(51)【国際特許分類】
B62J 6/027 20200101AFI20220929BHJP
B62J 6/026 20200101ALI20220929BHJP
B62J 6/025 20200101ALI20220929BHJP
B62J 17/02 20060101ALI20220929BHJP
B62J 17/086 20200101ALI20220929BHJP
【FI】
B62J6/027
B62J6/026
B62J6/025
B62J17/02
B62J17/086
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021049780
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】西山 雄大
(57)【要約】
【課題】ヘッドランプを安定して支持すると共に、取付作業及び光軸調整作業を容易にする。
【解決手段】ヘッドランプ(50)の支持構造には、車体前方に光軸を向けたヘッドランプと、ヘッドランプの周囲を覆うランプカバー(30)と、車体フレームに固定されたランプブレース(60)と、が設けられている。ランプブレースには左右方向に延びた支持軸(66)が設けられ、ヘッドランプに設けられた受け部(54)が支持軸に揺動可能に支持されている。ランプカバーの下部には調整ボルト(80)が前後にスライド可能な長孔(42)が形成され、当該長孔を通じて調整ボルトがヘッドランプに仮締め可能に形成されている。ヘッドランプがランプカバーに取り付けられた状態で、当該ランプカバーがランプブレースに取付可能になっている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームの前部に支持されたヘッドランプの支持構造であって、
車体前方に光軸を向けたヘッドランプと、
前記ヘッドランプの周囲を覆うランプカバーと、
前記車体フレームに固定されたランプブレースと、を備え、
前記ランプブレースには左右方向に延びた支持軸が設けられ、前記ヘッドランプに設けられた受け部が前記支持軸に揺動可能に支持されており、
前記ランプカバーの下部には調整ボルトが前後にスライド可能な長孔が形成され、当該長孔を通じて前記調整ボルトが前記ヘッドランプに仮締め可能に形成されており、
前記ヘッドランプが前記ランプカバーに取り付けられた状態で、当該ランプカバーが前記ランプブレースに取付可能であることを特徴とするヘッドランプの支持構造。
【請求項2】
前記ランプカバーの上部には前記ヘッドランプの後傾を規制する規制部が形成され、前記ヘッドランプの上面から突き出した凸状部が前記規制部に対向していることを特徴とする請求項1に記載のヘッドランプの支持構造。
【請求項3】
前記受け部が前記支持軸に支持された状態で、前記規制部と前記凸状部に隙間が空けられていることを特徴とする請求項2に記載のヘッドランプの支持構造。
【請求項4】
前記受け部が前記ヘッドランプの後面から突き出していることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のヘッドランプの支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドランプの支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鞍乗型車両のヘッドランプとして、ハンドルカバーに対して光軸調整可能に取り付けられたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。ヘッドランプの上部はハンドルカバーの上面にクリップ止めされており、ヘッドランプの下部はハンドルカバーの下面の長孔に調整ボルトでネジ止めされている。調整ボルトが緩んだ状態で、ハンドルカバーの長孔に沿って調整ボルトがスライドされることで、調整ボルトが取り付けられたヘッドランプが動かされる。ヘッドランプの上部を支点にして、ハンドルカバーに対してヘッドランプが上下に揺動されることで光軸調整が実施されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年のヘッドランプの大型化等に伴ってヘッドランプの重量が増加している。このため、特許文献1に記載のハンドルカバーだけでは大型のヘッドランプを支持することは難しい。また、特許文献1では車体フレームにハンドルカバーが組付けられた状態で、ハンドルカバーにヘッドランプが取り付けられている。このため、ハンドルカバーに対して下側から調整ボルトを差し込む際に、ハンドルカバーから下方に突き出した調整ボルトが前輪やフロントフェンダ等の周辺部材に干渉して、調整ボルトの締緩作業が阻害されるという問題があった。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、ヘッドランプを安定して支持すると共に、取付作業及び光軸調整作業を容易にするヘッドランプの支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様のヘッドランプの支持構造は、車体フレームの前部に支持されたヘッドランプの支持構造であって、車体前方に光軸を向けたヘッドランプと、前記ヘッドランプの周囲を覆うランプカバーと、前記車体フレームに固定されたランプブレースと、を備え、前記ランプブレースには左右方向に延びた支持軸が設けられ、前記ヘッドランプに設けられた受け部が前記支持軸に揺動可能に支持されており、前記ランプカバーの下部には調整ボルトが前後にスライド可能な長孔が形成され、当該長孔を通じて前記調整ボルトが前記ヘッドランプに仮締め可能に形成されており、前記ヘッドランプが前記ランプカバーに取り付けられた状態で、当該ランプカバーが前記ランプブレースに取付可能であることで上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様のヘッドランプの支持構造によれば、ランプカバーの長孔を通じて調整ボルトがヘッドランプの下部に仮締めされた状態で、ヘッドランプの受け部がランプブレースの支持軸に支持され、ランプカバーがランプブレースに取り付けられる。ヘッドランプがランプカバーとランプブレースに支えられるため、ヘッドランプが安定的に支持される。ランプブレースへのランプカバーの取付前に、ヘッドランプに調整ボルトが仮締めされているため、ランプカバーの周辺部材によって調整ボルトの締緩作業が阻害されることがない。調整ボルトが緩められ、長孔に沿って調整ボルトが前後にスライドされることで、支持軸を支点にしてヘッドランプが揺動されて光軸調整を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施例の鞍乗型車両の車両前部の側面図である。
【
図2】本実施例の鞍乗型車両の車両前部の前面図である。
【
図3】本実施例のヘッドランプ周辺の前面図である。
【
図4】本実施例のヘッドランプ周辺の斜視図である。
【
図5】
図2のヘッドランプのA-A線に沿って切断した断面図である。
【
図6】本実施例のヘッドランプの取付作業の一例を示す模式図である。
【
図7】本実施例のヘッドランプの光軸調整作業の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様のヘッドランプの支持構造は、車体フレームの前部でヘッドランプを支持している。ヘッドランプは車体前方に光軸を向けており、ヘッドランプの周囲はランプカバーによって覆われている。車体フレームにはランプブレースが固定されており、ヘッドランプがランプカバーに取り付けられた状態で、当該ランプカバーがランプブレースに取付可能になっている。ランプカバーの下部には調整ボルトが前後にスライド可能な長孔が形成され、ランプカバーの長孔を通じて調整ボルトがヘッドランプの下部に仮締めされる。この状態で、ランプカバーがランプブレースに取り付けられると、ランプブレースの左右方向に延びた支持軸にヘッドランプの受け部が揺動可能に支持される。ヘッドランプがランプカバーとランプブレースに支えられるため、ヘッドランプが安定的に支持される。ランプブレースへのランプカバーの取付前に、ヘッドランプに調整ボルトが仮締めされているため、ランプカバーの周辺部材によって調整ボルトの締緩作業が阻害されることがない。調整ボルトが緩められ、長孔に沿って調整ボルトが前後にスライドされることで、支持軸を支点にしてヘッドランプが揺動されて光軸調整を実施することができる。
【実施例0010】
以下、添付図面を参照して、本実施例のヘッドランプの支持構造が適用された鞍乗型車両について説明する。
図1は本実施例の鞍乗型車両の車両前部の側面図である。
図2は本実施例の鞍乗型車両の車両前部の前面図である。また、以下の図では、矢印FRは車両前方、矢印REは車両後方、矢印Lは車両左方、矢印Rは車両右方をそれぞれ示している。
【0011】
図1及び
図2に示すように、スクータタイプの鞍乗型車両1は、アンダーボーン型の車体フレーム10に車体外装として各種カバーを装着して構成されている。車体フレーム10の前部は、ヘッドパイプ11と、このヘッドパイプ11から下方に延びたダウンチューブ12とを有している。ヘッドパイプ11の後方にはリアレッグシールド13が配置され、ヘッドパイプ11の前方にはフロントレッグシールド14が配置されている。リアレッグシールド13の下端から後方にフートボード15が延在しており、リアレッグシールド13とフートボード15によって乗員の足置き空間が形成されている。
【0012】
フロントレッグシールド14の上半部はヘッドランプ50の周囲を覆うランプカバー30になっている。フロントレッグシールド14の下半部は左右に分かれており、この下半部からヘッドパイプ11に支持された一対のフロントフォーク21の下部が前方に突き出している。フロントフォーク21の下部には前輪22が回転可能に支持され、前輪22の上方はフロントフェンダ23によって覆われている。フロントレッグシールド14のランプカバー30はボディカバー24によって外側から覆われており、フロントレッグシールド14の下部は一対のサイドカバー25によって外側から覆われている。
【0013】
この鞍乗型車両1には比較的大型のヘッドランプ50が使用されているため、ランプカバー30だけではヘッドランプ50の荷重を支えることが難しい。特にランプカバー30が樹脂製である場合には、ランプカバー30だけでヘッドランプ50を支えるために、補強リブ等によってランプカバー30の強度を高めなければならない。そこで、本実施例のヘッドランプ50の支持構造では、車体フレーム10に金属板状のランプブレース60(
図4参照)が固定されており、このランプブレース60とランプカバー30によってヘッドランプ50の荷重が安定的に支えられている。
【0014】
また、詳細は後述するが、ヘッドランプ50の光軸調整(エイミング)を実施するため、ヘッドランプ50の下部にはランプカバー30が調整ボルト80によって共締めされている。この場合、ヘッドランプ50の取付方法としては、ヘッドランプ50とランプカバー30が部組されて、このヘッドランプ50とランプカバー30の組品がランプブレース60に取り付けられる方法が考えられる。また、ヘッドランプ50の他の取付方法としては、先にヘッドランプ50がランプブレース60に取り付けられて、後からランプカバー30がランプブレース60に取り付けられる方法が考えられる。
【0015】
ヘッドランプ50とランプカバー30の組品がランプブレース60に取り付けられる方法では、ランプカバー30にヘッドランプ50が完全に固定されていると、ヘッドランプ50を動かして光軸調整することが難しい。ヘッドランプ50とランプカバー30が別々にランプブレース60に取り付けられる方法では、ヘッドランプ50及びランプカバー30がランプブレース60に取り付けられた後に、ヘッドランプ50に対して下方から調整ボルト80が差し込まれる。このため、ヘッドランプ50の下方に位置するフロントフェンダ23等によって調整ボルト80の締緩作業が阻害される場合がある。
【0016】
そこで、本実施例のヘッドランプ50の支持構造では、ヘッドランプ50とランプカバー30の下部に調整ボルト80が仮締めされ、ヘッドランプ50の上部がランプカバー30に後方から支えられることでヘッドランプ50とランプカバー30が部組されている。ヘッドランプ50とランプカバー30が完全に固定されていない状態で、ランプカバー30とヘッドランプ50の組品がランプブレース60に取り付けられる。ヘッドランプ50及びランプカバー30がランプブレース60に取り付けられた後に、調整ボルト80が緩められてヘッドランプ50の光軸調整を容易に実施することが可能になっている。
【0017】
以下、
図3から
図5を参照して、ヘッドランプの周辺構成について説明する。
図3は本実施例のヘッドランプ周辺の前面図である。
図4は本実施例のヘッドランプ周辺の斜視図である。なお、
図4の斜視図ではランプブレースからヘッドランプ及びランプカバーを取り外した状態を示している。
図5は
図2のヘッドランプのA-A線に沿って切断した断面図である。
【0018】
図3及び
図4に示すように、ランプカバー30には前面開口31が形成されており、前面開口31からヘッドランプ50のランプレンズ52が前方に露出されている。ランプカバー30は、ヘッドランプ50の上縁に沿った上枠部32と、ヘッドランプ50の下縁に沿った下枠部33と、ヘッドランプ50の両側縁から側方に広がる一対の側面部34とを有している。上枠部32の左右方向の中央には、前縁から後方に向かって高くなるように側面視台形状の膨出部35が形成されている。膨出部35の前面は、ランプカバー30にヘッドランプ50を部組する際にヘッドランプ50の後傾を規制する規制部36になっている。
【0019】
膨出部35の斜面には上部開口37が形成されており、上部開口37の上縁から内側にボディカバー24(
図1参照)用の掛止突起38が突き出している。上部開口37を挟んだ上枠部32の左右2箇所が一対の固定ボルト39でランプブレース60に固定される。一対の側面部34には取付部41が形成されており、この取付部41が不図示の固定ボルトでランプブレース60に固定されている。下枠部33の左右方向の中央には光軸調整用の調整ボルト80が前後にスライド可能な長孔42(特に
図5参照)が形成され、長孔42を通じて調整ボルト80がヘッドランプ50の下部に仮締め可能に形成されている。
【0020】
図4及び
図5に示すように、ヘッドランプ50は、車体前方に光軸を向けるようにして、ランプカバー30の前面開口31の内側に配置されている。ヘッドランプ50は、ランプハウジング51の前面にランプレンズ52が取り付けられている。ランプレンズ52の内側にはLED(Light Emitting Diode)やバルブ等の発光体(不図示)が設けられている。ランプハウジング51の上面から凸状部53が突き出しており、ランプハウジング51の凸状部53がランプカバー30の規制部36に前後方向で対向している。ランプハウジング51の凸状部53がランプカバー30の規制部36に突き当たることでヘッドランプ50の後傾が規制される。
【0021】
ヘッドランプ50の後面には、ランプブレース60に支持される一対の受け部54が設けられている。一対の受け部54はヘッドランプ50の後面上側の左右2箇所から突き出しており、一対の受け部54の先端には側面視C字状の支持溝55が形成されている。ランプハウジング51の外縁から受け部54がはみ出さないため、ランプカバー30に受け部54が干渉することがなく、ヘッドランプ50及びランプカバー30がコンパクトに形成される。なお、一対の受け部54はランプハウジング51の上端よりも下方かつランプハウジング51の下端よりも上方に位置していればよい。
【0022】
ヘッドランプ50の下面には、調整ボルト80が固定される固定部56が設けられている。固定部56はヘッドランプ50の下面から突き出しており、固定部56は断面視にて後面を開放したボックス状に形成されている。固定部56の底壁57は、後方に向かって低くなるように、ランプカバー30の下枠部33に沿って傾いている。固定部56の底壁57には下枠部33の長孔42に連なる貫通穴が形成されており、この貫通穴を挟み込むように固定部56の底壁57にはスピードナット等の固定具(不図示)が装着されている。長孔42を通じて調整ボルト80が固定具に仮締めされることで、ヘッドランプ50がランプカバー30に取り付けられる。
【0023】
ランプブレース60は、ヘッドパイプ11の延在方向の中間位置に固定されている。ランプブレース60のブレース本体61はヘッドパイプ11から前方に延びており、ブレース本体61の先端側には左右に分かれて一対の分岐部62が形成されている。ブレース本体61の基端側の上面にはバッテリホルダ71が設けられており、バッテリホルダ71内にはバッテリ72が収容されている。ブレース本体61の先端側の一対の分岐部62には、底壁を上に向けた角型U字状のブラケット63が設けられている。一対のブラケット63の上底壁にはランプカバー30の上枠部32が一対の固定ボルト39で固定される。
【0024】
一対のブラケット63にはL字状のアーム64が設けられている。アーム64は、ブラケット63から左右方向外側に延びた後に、ランプカバー30の一対の側面部34に向かって延びている。一対のアーム64の前端には、一対の側面部34の取付部41を内側から支持する支持板65が設けられている。一対の支持板65にはブッシュ等のクッション材を介して一対の側面部34の取付部41が固定ボルト(不図示)で固定される。ヘッドランプ50とランプカバー30に調整ボルト80が仮締めされた状態で、ランプブレース60に対してランプカバー30が固定ボルト39で取り付けられている。
【0025】
一対のブラケット63の対向面から左右方向内側に一対の支持軸66が延びており、一対の支持軸66によって一対の受け部54が揺動可能に支持されている。一対の受け部54の支持溝55は後方を開放したC字状であるため、ランプブレース60に対してランプカバー30が前方から取り付けられることで、一対の支持溝55に一対の支持軸66が入り込んで一対の支持軸66に一対の受け部54が軸支される。このように、ヘッドランプ50の下部はランプカバー30に調整ボルト80で仮締めされ、ヘッドランプ50の後部はランプブレース60によって後方から揺動可能に支持されている。
【0026】
このとき、ランプブレース60の支持軸66の回転中心からヘッドランプ50の凸状部53の後面までの前後距離D1は、ランプブレース60の支持軸66の回転中心からランプカバー30の規制部36の前面までの前後距離D2よりも大きい。このため、ヘッドランプ50の受け部54がランプブレース60の支持軸66に支持された状態で、ヘッドランプ50の凸状部53とランプカバー30の規制部36に隙間が空けられている。ヘッドランプ50の光軸調整時には、規制部36と凸状部53の隙間によって支持軸66を支点にしたヘッドランプ50の所定角度(例えば、上方へ2度、下方へ3度)の揺動が許容される。
【0027】
また、ランプブレース60の一対の支持軸66の上方にはランプカバー30の掛止突起38が位置している。これにより、一対の支持軸66と掛止突起38を基準にして、ランプブレース60とランプカバー30の互いの位置が合わせ易くなっている。ランプカバー30には上枠部32を覆うようにボディカバー24が取り付けられている。ボディカバー24の内面から突き出した突出部75がランプカバー30の上部開口37に入り込み、突出部75の掛止穴76に掛止突起38が入り込むことで、ランプカバー30にボディカバー24が掛け止めされる。これにより、ボディカバー24及びランプカバー30の剛性が高められている。
【0028】
図6及び
図7を参照して、ヘッドランプの取付作業及び光軸調整作業について説明する。
図6は本実施例のヘッドランプの取付作業の一例を示す模式図である。
図7は本実施例のヘッドランプの光軸調整作業の一例を示す模式図である。
【0029】
図6(A)に示すように、ランプカバー30に対してヘッドランプ50が取り付けられる。この場合、ランプカバー30の前面開口31の内側にヘッドランプ50が配置され、ヘッドランプ50の下側の固定部56とランプカバー30の下枠部33が位置合わせされる。そして、下枠部33の長孔42に調整ボルト80が下方から挿し込まれ、固定部56の固定具に対して調整ボルト80が仮締めされる。調整ボルト80はランプカバー30からヘッドランプ50が脱落しない程度の強さで締め付けられ、ランプカバー30に対してヘッドランプ50の多少の揺動が許容されている。
【0030】
ランプカバー30にヘッドランプ50が取り付けられると、ヘッドランプ50の上側の凸状部53とランプカバー30の上枠部32の規制部36が対向する。固定部56の底壁57及びランプカバー30の下枠部33は、断面視にて後方に向かって低く傾いているため、ランプカバー30に対してヘッドランプ50が後傾し易くなっている。ヘッドランプ50が後傾しても、凸状部53が規制部36に当ることで、ヘッドランプ50がランプカバー30によって後方から支えられている。よって、ヘッドランプ50の揺動(ガタツキ)が抑えられた状態で、ランプカバー30がランプブレース60に近づけられている。
【0031】
図6(B)に示すように、ランプカバー30にヘッドランプ50が取り付けられた状態で、ランプブレース60に対してランプカバー30が取り付けられる。この場合、ランプカバー30の掛止突起38が一対の支持軸66の真上になる位置まで、ランプカバー30がヘッドランプ50と共にランプブレース60に近づけられる。これにより、ヘッドランプ50の一対の受け部54の支持溝55がランプブレース60の一対の支持軸66に位置合わせされ、ランプカバー30の上枠部32及び一対の取付部41(
図4参照)がランプブレース60の一対のブラケット63及び一対の支持板65(
図4参照)に位置合わせされる。
【0032】
一対の支持軸66が一対の受け部54の支持溝55に入り込むと、一対の支持軸66によってヘッドランプ50が僅かに前方に押し戻される。支持軸66の回転中心からの凸状部53及び規制部36までの前後距離D1、D2(
図5参照)の違いによって、ヘッドランプ50の凸状部53がランプカバー30の規制部36から離されて、凸状部53と規制部36の間にヘッドランプ50の光軸調整用の隙間Cが形成される。この隙間Cが維持されたまま、上枠部32が一対の固定ボルト39(
図4参照)で一対のブラケット63に固定され、一対の取付部41が一対の固定ボルト(不図示)で一対の支持板65に固定される。
【0033】
このように、ヘッドランプ50の下部がランプカバー30にネジ止めされ、ヘッドランプ50の上部はランプブレース60によって後方から支えられている。ヘッドランプ50が重量物であっても、ランプカバー30の荷重がランプカバー30及びランプブレース60によって安定的に支えられる。また、調整ボルト80の仮締めによってヘッドランプ50がランプカバー30に取り付けられ、ヘッドランプ50が光軸調整可能な状態でランプカバー30がランプブレース60に取り付けられている。ランプカバー30がランプブレース60に取り付けられると、ヘッドランプ50の光軸調整が実施される。
【0034】
図7(A)に示すように、ランプカバー30の下方にフロントフェンダ23等の周辺部材が配置されており、周辺部材によってランプカバー30の下方空間は狭く形成されている。上記したように、ランプカバー30がランプブレース60に取り付けられる前に、ヘッドランプ50とランプカバー30に調整ボルト80が仮締めされている。ランプカバー30の下方の狭い空間に調整ボルト80が大きく突き出さないため、ドライバー等の工具のツールラインが確保されて調整ボルト80の締緩作業の作業性が向上されている。よって、周辺部材に阻害されることなく、工具によって調整ボルト80が容易に緩められる。
【0035】
図7(B)に示すように、調整ボルト80が緩められると、ランプカバー30の長孔42に沿って調整ボルト80が前後にスライドされる。調整ボルト80はヘッドランプ50に取り付けられているため、ランプブレース60の一対の支持軸66を支点にしてヘッドランプ50が揺動される。ヘッドランプ50の凸状部53とランプカバー30の規制部36の隙間Cによってヘッドランプ50の揺動が許容されている。ヘッドランプ50が揺動されて光軸L1が調整されると、工具によって調整ボルト80が強く締め付けられる。調整ボルト80の本締めによってランプカバー30に対してヘッドランプ50が固定される。
【0036】
以上、本実施例によれば、ランプカバー30の長孔42を通じて調整ボルト80がヘッドランプ50の下部に仮締めされた状態で、ヘッドランプ50の受け部54がランプブレース60の支持軸66に支持され、ランプカバー30がランプブレース60に取り付けられる。ヘッドランプ50がランプカバー30とランプブレース60に支えられるため、ヘッドランプ50が安定的に支持されている。ランプブレース60へのランプカバー30の取付前に、ヘッドランプ50に調整ボルト80が仮締めされているため、ランプカバー30の周辺部材によって調整ボルト80の締緩作業が阻害されることがない。調整ボルト80が緩められ、長孔42に沿って調整ボルト80が前後にスライドされることで、支持軸66を支点にしてヘッドランプ50が揺動されて光軸調整を実施することができる。
【0037】
なお、本実施例では、ヘッドランプが重量物である一例について説明したが、ヘッドランプが軽量であっても、ヘッドランプをランプカバーとランプブレースで支えることで、ヘッドランプを安定的に支持することができる。
【0038】
また、本実施例では、ヘッドランプの凸状部とランプカバーの規制部が突き当たることでヘッドランプの後傾が規制されているが、ヘッドランプには凸状部が形成されていなくてもよい。例えば、ヘッドランプの後面がランプカバーから下方に突き出した規制部に対向して、ヘッドランプの後面とランプカバーの規制部が突き当たることでヘッドランプの後傾が規制されてもよい。
【0039】
また、本実施例では、フロントレッグシールドの上部がランプカバーになっているが、フロントレッグシールドとランプカバーが別体に形成されていてもよい。また、ランプカバーは複数のカバー部材によって形成されていてもよい。
【0040】
また、本実施例では、車体フレームにランプブレースが着脱可能に固定されているが、車体フレームとランプブレースが一体に形成されていてもよい。
【0041】
また、本実施例では、ランプカバーがヘッドランプの周囲を覆っているが、ランプカバーはヘッドランプの全周を覆っていなくてもよい。ランプカバーは少なくともヘッドランプの下方及び両側方を覆っていればよい。
【0042】
また、本実施例では、ヘッドランプに一対の受け部が設けられ、ランプブレースに一対の支持軸が設けられたが、受け部及び支持軸の個数は特に限定されない。また、本実施例では受け部にC字状の支持溝が形成されているが、受け部は支持軸に揺動可能に支持可能であれば、受け部の支持溝の溝形状は特に限定されない。
【0043】
また、本実施例のヘッドランプの支持構造は上記のスクータタイプの車両に限らず、他のタイプの鞍乗型車両に採用されてもよい。また、鞍乗型車両は自動二輪車に限定されず、エンジンが搭載された乗り物であればよい。なお、鞍乗型車両とは、運転者がシートに跨った姿勢で乗車する車両全般に限定されず、運転者がシートに跨らずに乗車するスクータタイプの車両も含んでいる。
【0044】
以上の通り、本実施例のヘッドランプ(50)の支持構造は、車体フレーム(10)の前部に支持されたヘッドランプの支持構造であって、車体前方に光軸を向けたヘッドランプと、ヘッドランプの周囲を覆うランプカバー(30)と、車体フレームに固定されたランプブレース(60)と、を備え、ランプブレースには左右方向に延びた支持軸(66)が設けられ、ヘッドランプに設けられた受け部(54)が支持軸に揺動可能に支持されており、ランプカバーの下部には調整ボルト(80)が前後にスライド可能な長孔(42)が形成され、当該長孔を通じて調整ボルトがヘッドランプに仮締め可能に形成されており、ヘッドランプがランプカバーに取り付けられた状態で、当該ランプカバーがランプブレースに取付可能である。この構成によれば、ランプカバーの長孔を通じて調整ボルトがヘッドランプの下部に仮締めされた状態で、ヘッドランプの受け部がランプブレースの支持軸に支持され、ランプカバーがランプブレースに取り付けられる。ヘッドランプがランプカバーとランプブレースに支えられるため、ヘッドランプが安定的に支持される。ランプブレースへのランプカバーの取付前に、ヘッドランプに調整ボルトが仮締めされているため、ランプカバーの周辺部材によって調整ボルトの締緩作業が阻害されることがない。調整ボルトが緩められ、長孔に沿って調整ボルトが前後にスライドされることで、支持軸を支点にしてヘッドランプが揺動されて光軸調整を実施することができる。
【0045】
本実施例のヘッドランプの支持構造において、ランプカバーの上部にはヘッドランプの後傾を規制する規制部(36)が形成され、ヘッドランプの上面から突き出した凸状部(53)が規制部に対向している。この構成によれば、ヘッドランプの下部にランプカバーが仮締めされると、ヘッドランプの上部の凸状部がランプカバーの規制部に対向する。ヘッドランプが後傾しても、凸状部が規制部に当ってヘッドランプがランプカバーによって後方から支えられる。よって、ヘッドランプのガタツキが抑えられた状態でランプカバーランプブレースに取り付けることができる。
【0046】
本実施例のヘッドランプの支持構造において、受け部が支持軸に支持された状態で、規制部と凸状部に隙間(C)が空けられている。この構成によれば、ヘッドランプの光軸調整時には、規制部と凸状部の隙間によって支持軸を支点にしたヘッドランプの揺動が許容される。
【0047】
本実施例のヘッドランプの支持構造において、受け部がヘッドランプの後面から突き出している。この構成によれば、ランプカバーに受け部が干渉することがなく、ヘッドランプ及びランプカバーがコンパクトに形成される。
【0048】
なお、本実施例を説明したが、他の実施例として、上記実施例及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0049】
また、本発明の技術は上記の実施例に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。