(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022148197
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】電動送風機及びこれを有する電気掃除機
(51)【国際特許分類】
F04D 29/056 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
F04D29/056 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021049781
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】明石 和樹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 則和
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 賢宏
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB26
3H130AB47
3H130AC21
3H130BA13E
3H130BA24E
3H130BA97G
3H130DA02X
3H130DB01X
3H130DB08X
3H130DB15X
3H130DD01X
3H130DJ01X
3H130EA01E
3H130EA01G
3H130EA07E
3H130EA07G
3H130EB01A
3H130EC08Z
(57)【要約】
【課題】電動送風機に内蔵されているモータをコンパクト化するとともに、その回転軸の予圧を確実に維持し、モータの信頼性を向上する。
【解決手段】電動機と、インペラと、電動機及びインペラを収容したファンケーシングと、を含む電動送風機であって、電動機は、回転子と、固定子と、フロントハウジングと、リアハウジングと、を含み、回転子は、回転子コアと、回転軸と、を含み、回転軸には、少なくとも2個の軸受が付設され、軸受は、外輪と、内輪と、転動体と、を含み、フロントハウジングには、軸受保持部材が付設され、軸受保持部材には、小径部が設けられ、回転子コアの外周部には、ばねが配置され、軸受の外輪は、軸受保持部材の小径部を介してばねによる予圧を受ける構成を有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機と、
インペラと、
前記電動機及び前記インペラを収容したファンケーシングと、を含み、
前記電動機は、回転子と、固定子と、フロントハウジングと、リアハウジングと、を含み、
前記回転子は、回転子コアと、回転軸と、を含み、
前記回転軸には、少なくとも2個の軸受が付設され、
前記軸受は、外輪と、内輪と、転動体と、を含み、
前記フロントハウジングには、軸受保持部材が付設され、
前記軸受保持部材には、小径部が設けられ、
前記回転子コアの外周部には、ばねが配置され、
前記軸受の前記外輪は、前記軸受保持部材の前記小径部を介して前記ばねによる予圧を受ける構成を有する、電動送風機。
【請求項2】
前記ばねは、前記フロントハウジングを前記インペラ側に押し付ける構成を有する、請求項1記載の電動送風機。
【請求項3】
前記2個の軸受のうちの1個は、前記回転子コアの前記インペラ側に配置され、
前記回転子コアは、前記2個の軸受の間に配置されている、請求項1記載の電動送風機。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の電動送風機と、
集塵部と、を備えた、電気掃除機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動送風機及びこれを有する電気掃除機に関する。
【背景技術】
【0002】
電気掃除機等に用いられる高速回転するモータのロータにおいては、通常、その回転軸を支持する軸受が2個設けられている。
【0003】
また、軸受は、外輪、内輪及びこれらの間に挟み込まれた転動体(玉又はころ)で構成されている。通常、軸受の内部で転動体が振動すること防止するため、外輪又は内輪に予圧が付与されている。
【0004】
特許文献1には、小型の電気掃除機に用いる電動送風機において、遠心羽根車とロータコアの間に、回転軸を回転自在に支持する2個の軸受を備え、2個の軸受の間には、圧縮された状態でばねが配置され、2個の軸受に予圧を付与しているものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電気掃除機等においては、軽量化の観点から、モータの部品として樹脂製のものが用いられる場合がある。
【0007】
モータの回転軸を支持する軸受が他の部品に接着剤により固定されている場合であって軸受に対する予圧が接着剤を介して付与されている場合、接着剤の経年劣化、軸受に接する樹脂製の部品の膨張・収縮等の影響により、軸受の位置がずれて予圧の維持が困難となるおそれがある。
【0008】
特許文献1に記載の電動送風機のように、2個の軸受の間に配置されたばねにより軸受に予圧を付与する構成においては、確実に予圧が維持されるため、上記のような軸受の位置ずれの問題は生じない。しかしながら、電気掃除機等の更なる軽量化のためには、ばねの配置を含め、コンパクト化が必要となり、ばねをロータコアの外周部に配置して回転軸の長さを短くするような構成が求められている。この場合、軸受に付与する予圧は、ばねから直接作用させることが困難となり、他の部品を介して間接的に行う構成となる。
【0009】
本発明は、電動送風機に内蔵されているモータをコンパクト化するとともに、その回転軸の予圧を確実に維持し、モータの信頼性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の電動送風機は、電動機と、インペラと、電動機及びインペラを収容したファンケーシングと、を含み、電動機は、回転子と、固定子と、フロントハウジングと、リアハウジングと、を含み、回転子は、回転子コアと、回転軸と、を含み、回転軸には、少なくとも2個の軸受が付設され、軸受は、外輪と、内輪と、転動体と、を含み、フロントハウジングには、軸受保持部材が付設され、軸受保持部材には、小径部が設けられ、回転子コアの外周部には、ばねが配置され、軸受の外輪は、軸受保持部材の小径部を介してばねによる予圧を受ける構成を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電動送風機に内蔵されているモータをコンパクト化するとともに、その回転軸の予圧を確実に維持し、モータの信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】本実施形態の電動送風機を示す分解斜視図である。
【
図4A】予圧を受ける前における軸受を示す模式断面図である。
【
図4B】予圧を受けている状態の軸受を示す模式断面図である。
【
図5】本実施形態の電動送風機を軸方向に沿って切断したときの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本実施形態が適用される電気掃除機の一例を示す外観斜視図である。
【0015】
本図に示すように、電気掃除機100は、手元操作スイッチ7等が設けられた掃除機本体2と、延長管5と、吸口体6とを組み合わせて、スティック状に構成されたものである。また、電気掃除機100は、掃除機本体2および吸口体6の駆動用電源である充電式電池24(蓄電池)を備えている。
【0016】
掃除機本体2は、吸引力を発生させる電動送風機1、この電動送風機1の吸引力で集塵した塵埃を収容する集塵部22などを備えている。
【0017】
延長管5の一端は、掃除機本体2の集塵部22と連通するように掃除機本体2の接続口23に接続されている。また、延長管5の他端は、吸口体6に接続されている。また、延長管5は、図示しない通風路が形成されるとともに、充電式電池24と吸口体6のブラシ用の電動機(不図示)とを電気的接続する配線(不図示)を備えている。
【0018】
手元操作スイッチ7を操作すると、本体制御回路(図示せず)が電動送風機1の運転と停止や吸込み力の切り替え、吸口体6に設けられた電動機(図示せず)の運転と停止を制御する。本体制御回路は、掃除機本体2内に設けられている。
【0019】
なお、電気掃除機としては、図示されているスティックタイプの掃除機に限定されず、ハンディタイプの掃除機、キャニスター掃除機(シリンダー式掃除機)、ロボット掃除機などの充電式(コードレスタイプ)の電気掃除機に適用することができる。また、同様の構成を有する電源コード式の掃除機にも適用することができる。
【0020】
図2は、本実施形態が適用される電動送風機を示す分解斜視図である。
【0021】
本図に示すように、電動送風機1は、電動機10(スロットレスモータ)と、インペラ60(羽根車)と、ファンケーシング70(収容部)と、を含む。
【0022】
電動機10は、ロータ30(回転子)と、ステータ40(固定子)と、フロントハウジング51及びリアハウジング52を含むハウジング(収容部)と、を含む。ハウジングは、ロータ30及びステータ40を収容するものである。ハウジングは、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)などの合成樹脂で構成されている。
【0023】
ロータ30は、回転軸31(シャフト)、ロータコア32(回転子コア)、軸受33、34及びバランスリング35、36を含む。
【0024】
回転軸31は、細長い円柱形状のものであり、鉄などの磁性材料によって構成されている。なお、回転軸31は、前記した磁性材料に限定されるものではなく、ステンレス鋼(SUS)などの非磁性材料であってもよい。また、回転軸31には、軸方向の一端にインペラ60が固定される。
【0025】
ロータコア32は、永久磁石によって構成され、回転軸31の周囲に固定されている。また、ロータコア32の軸方向Axの両側には、バランスリング35、36が固定されている。
【0026】
バランスリング35、36は、ロータコア32と同じ径を有し、ロータコア32の軸方向の端面に接するようにして回転軸31に固定されている。また、バランスリング35、36は、ロータコア32の軸方向の長さよりも十分に短い扁平形状を有している。
【0027】
バランスリング35、36の軸方向外側には、軸受33、34が設けられている。軸受33、34は、ボールベアリングなどで構成され、ロータコア32よりも小径に構成されている。また、軸受33、34からは、回転軸31の一部がそれぞれ突出している。回転軸31の軸受33から突出している部分の長さは、回転軸31の軸受34から突出している部分の長さよりも長い。
【0028】
ステータ40は、ロータコア32の外周(径方向の外側)に配置され、ボビン41、ステータコア45(コア部材)及びコイル部材47を含む。なお、ボビン41及びコイル部材47の詳細については後記する。ステータコア45は、電磁鋼板を積層して円筒状に形成され、ボビン41の外周に配置されている。
【0029】
フロントハウジング51は、軸方向Axのフロント側に配置される。リアハウジング52は、軸方向Axのリア側に配置される。ここで、フロント側とは、空気が導入される上流側を意味し、リア側とは、空気が排出される下流側を意味している。
【0030】
フロントハウジング51は、有底円筒状に形成され、空気の導入側(インペラ60が設けられる側)に配置されている。また、フロントハウジング51には、外周部に円筒状に形成された風路R2が形成されている。また、フロントハウジング51の径方向の中心には、回転軸31が挿通される軸孔51aが形成されている。また、フロントハウジング51には、リアハウジング52に係止される係止部51bが形成されている。この係止部51bは、側面視においてコの字状に形成され、フロントハウジング51の縁部よりもリアハウジング52側に向けて突出して形成されている。また、図示省略しているが、係止部51bは、周方向の複数個所(本実施形態では3個所)に形成されている。
【0031】
リアハウジング52は、回転軸31の軸方向Axの中央よりもリア側に配置され、略円筒状に形成されている。また、リアハウジング52は、ロータ30の一部およびステータ40の一部が収容される収容部52aを有している。また、リアハウジング52は、外周部側に円環状の風路R3が形成されている。この風路R3は、前記した風路R2と連通するように構成されている。
【0032】
また、リアハウジング52には、フロントハウジング51の係止部51bを係止する係止突起52bが形成されている。この係止突起52bは、リアハウジング52の外周面の前端部に位置している。
【0033】
インペラ60は、下流側(リア側)に向けて拡径する斜面60aを有し、この斜面60aの外面に、複数の羽根61、62が周方向に間隔を置いて配置されている。斜面60aは、前記した風路R2の内周壁面と略連続するように構成されている。また、インペラ60の先端部には、回転軸31が固定される固定部60bが形成されている。回転軸31は、インペラ60の先端から突出し、回転軸31の先端に形成されたねじ溝にナット90が螺合されることで、インペラ60が回転軸31に固定されるようになっている。
【0034】
羽根61、62は、薄板状に形成され、羽根61が羽根62よりも長く形成されている。また、羽根61、62は、周方向に交互に配置されている。また、羽根61、62は、軸方向Axに対して傾斜して配置され、上流側から下流側に向けて周方向に湾曲するように形成されている。また、羽根61、62は、上流側から下流側に向けてねじれた構造を有している。また、羽根61、62は、いずれも下流側の端部まで延びて形成されている。また、羽根61の上流側の端部は、羽根62の上流側の端部よりも上流側に長く形成されている。
【0035】
ファンケーシング70は、樹脂成形によって略円筒状に構成されている。また、ファンケーシング70は、インペラ60が収容される空洞部71を有する。この空洞部71は、インペラ60の外周形状に沿って上流側から下流側に向けて拡径するように形成されている。
【0036】
また、ファンケーシング70の先端面には、空気が導入される円形の吸込口71aが形成されている。また、ファンケーシング70は、空洞部71の外側に、肉抜き部71bが形成され、成形時のヒケ防止や軽量化が図られている。
【0037】
【0038】
本図に示すロータ30は、回転軸31、ロータコア32及び3個の軸受33、34p、34qを有する。
【0039】
軸受33は、電動送風機としてのフロント側に配置され、軸受保持部材101(エンドブラケット)により支持されている。軸受34p、34qは、リア側に配置されている。軸受34p、34qは、互いに直接接触するように配置されていることが望ましい。
【0040】
図4Aは、予圧を受ける前における軸受を示す模式断面図である。
【0041】
本図においては、軸受33は、外輪33p、内輪33q、及び外輪33pと内輪33qとの間に挟み込まれた転動体33r(玉又はころ)を含む。外輪33pと内輪33qとの間には、隙間33sが生じている。内輪33qは、回転軸31に固定され、回転軸31と一体となって回転する。
【0042】
予圧を受ける前においては、外輪33pと内輪33qとは、回転軸31の方向において同じ位置(座標)となっている。
【0043】
この状態においては、隙間33sの範囲で転動体33rの重心の移動が可能であり、転動体33rが外輪33p又は内輪33qと衝突等をして、振動や騒音が発生する場合がある。
【0044】
図4Bは、予圧を受けている状態の軸受を示す模式断面図である。
【0045】
本図においては、外輪33pが外部から予圧を受けて、図中上方に移動し、転動体33rを押し上げている。このため、外輪33pと内輪33qとは、回転軸31の方向において異なる位置(座標)となっている。
【0046】
従来の軸受は、本図に示す状態とするために、予圧した状態で軸受の外輪を接着剤で固定していた。このように接着剤を用いて固定した場合、接着剤の効果が弱まり、外輪の位置が変化すると、予圧が維持できなくなるおそれがあった。
【0047】
本開示の軸受は、後述のように、軸受保持部材(エンドブラケット)に小径部を設け、軸受の外輪を支持する構成とすることにより、外輪に一定方向の力がかかるようにし、予圧の維持を確実なものとし、軸受の信頼性を高め、軸受における振動や騒音を防止することができる。
【0048】
図5は、電動送風機を軸方向に沿って切断したときの断面図である。
【0049】
本図に示すように、電動送風機1は、電動機10と、インペラ60と、ファンケーシング70と、フロントハウジング51と、リアハウジング52と、を備えている。電動機10は、ロータ30と、ステータ40と、を含む。ロータ30は、回転軸31と、ロータコア32と、バランスリング35、36と、を含む。回転軸31は、フロント側の軸受33とリア側の2個の軸受34p、34qとにより、回転自在に支持されている。すなわち、回転軸31は、3個の軸受33、34p、34qにより支持されている。
【0050】
また、電動送風機1は、軸受33を保持する軸受保持部材101と、軸受34p、34qを保持する軸受保持部材102と、を備えている。軸受保持部材101は、金属製であり、樹脂製のフロントハウジング51とインサート成形によって一体に構成されている。
【0051】
軸受保持部材101は、円筒状に形成され、軸受33の外周側に配置されている。また、軸受保持部材101は、小径部101sを有する。小径部101sは、軸受33の外輪を、ロータ30側からインペラ60側に向かって予圧を維持するように支持している。
【0052】
このような構成とすることにより、軸受33の外輪の位置を固定し、軸受33の信頼性を高め、軸受33における振動や騒音を防止することができる。
【0053】
フロントハウジング51は、樹脂製であるため、温度が高くなると膨張しやすく、その構造上、軸受33をフロント側からリア側に向かって圧迫する場合がある。この場合において、小径部101sを有しない従来の軸受保持部材によっては、軸受33の位置を保持することが困難になる場合がある。
【0054】
軸受保持部材102は、金属製であり、樹脂製のリアハウジング52とインサート成形によって一体に構成されている。
【0055】
軸受保持部材102は、略円筒状に形成され、軸受34p、34qの外周側に配置されている。軸受34p、34qは、回転軸31の方向に重ねて配置されている。
【0056】
ロータコア32は、軸受33と軸受34pとの間に配置されている。
【0057】
これにより、従来の軸受2個の構成に比べ、回転軸31を支持する軸受34qがリア側に1個追加された構成となるため、回転軸31のぶれを防止し、騒音を低減することができる。
【0058】
また、フロントハウジング51内には、コイルばね80(圧縮コイルばね)が配置されている。また、コイルばね80は、ロータコア32の外周部に配置され、伸縮方向が回転軸31の方向を向いている。また、コイルばね80は、フロント側の端部がフロントハウジング51の回転軸31の方向の内壁面51c(前面の裏側の面)に当接し、リア側の端部がステータコア45の端部(端面)に当接している。これにより、ステータコア45が位置決めリブ43cに押し付けられた状態が維持される。
【0059】
まとめると、コイルばね80は、フロントハウジング51をインペラ60側に押し付ける構成を有する。
【0060】
ファンケーシング70には、インペラ60との間に風路R1が形成されている。この風路R1は、フロントハウジング51の風路R2と連通している。風路R2は、リアハウジング52の風路R3と連通している。風路R3は、上流から下流に向けて流路断面積が拡大するように構成されている。
【0061】
また、フロントハウジング51には、風路R2内に静止翼51mが形成され、整流機能が与えられている。また、リアハウジング52には、風路R3内に静止翼52mが形成され、整流機能が与えられている。なお、静止翼51m、52mについては、公知の技術を採用できる。
【0062】
また、フロントハウジング51とリアハウジング52とを組み合わせたときに、フロントハウジング51とリアハウジング52との間に、電動機10の内部と連通する連通孔50sが形成されている。また、連通孔50sは、ステータコア45と対向する位置に形成されている。また、連通孔50sは、ステータコア45のフロント側の端部に位置している。
【0063】
電動送風機1において、吸込口71aから吸い込まれた空気は、風路R1、R2、R3を通って、電動送風機1から排出される。また、リアハウジング52には、コイル部材47から電線を引き出すための孔(不図示)などが形成されている。この場合、連通孔50sの外周側の風路R3が負圧になることで、白抜き矢印で示すように、リアハウジング52から排出した排気風の一部と外気が、不図示の孔を通って電動機10内に戻り、連通孔50sに向けて流れる。このときの戻り空気は、ステータコア45と接触しながら連通孔50sに戻り、連通孔50sから風路R3に戻る。このような空気の流れが発生することで、ステータコア45及びコイル部材47が冷却される。
【0064】
また、前記したように、コイル部材47に熱伝導性のグリスが設けられていると、コイル部材47の熱がグリスを介してステータコア45に伝達されやすくなる。熱を受け取ったステータコア45は、連通孔50sに戻る戻り空気によって冷却される。このようにして、電動機10を効率的に冷却することが可能になり、電動機10としての効率を向上させることができ、電動送風機1の効率も向上させることができる。
【0065】
なお、図示していないが、電動送風機1を掃除機本体2(
図1)に装着して電気掃除機100(
図1)とした場合、電動送風機1から排出された空気は、電動機10を制御する制御基板(不図示)や充電式電池24(
図1)を冷却して、電気掃除機100の外部に排出される。
【0066】
次に、電動機10の動作について説明する。
【0067】
ロータ30の外径側には、永久磁石から成るロータコア32によって直流磁界が形成されている。一方、図示しないインバータにより所定の周波数に変換した三相電力をコイル部材47に給電すると、ステータ40の内径側に回転磁界が形成される。ロータ30の磁極位置に合わせた電流を通電することで、回転磁界と直流磁界との吸引反発により、トルクが発生し、ロータ30が回転駆動する。円筒状(円環状)のステータコア45は、磁束が集中するティース部を有しないため、鉄損が小さくなる。このため、高速領域でも鉄損の小さい高効率な運転を実現することができる。
【0068】
ステータ40は、ロータ30の外周にギャップを介して配置される円筒体42と、この円筒体42の外周に設けられた巻枠部46に設けられたコイル部材47と、巻枠部46の外周に対向して設けられる円筒状のステータコア45と、を備える。巻枠部46は、断面視T字形状の傘部43を有する。これにより、巻枠部46のみでコイル部材47(巻線)とステータコア45の配置が可能になる。このため、製造コストを抑えることができるとともに、部品点数も少なく抑えることができる。
【0069】
また、電動機10において、補強部材44は、非磁性材料によって形成され、ステータコア45と径方向において重ならない位置に配置されている。これにより、補強部材44に回り込む磁路が形成されるのを抑えることができ、全体の効率を向上できる。
【符号の説明】
【0070】
1:電動送風機、2:掃除機本体、10:電動機、21:電動送風機、30:ロータ、31:回転軸、32:ロータコア、33、34p、34q:軸受、33p:外輪、33q:内輪、33r:転動体、35、36:バランスリング、40:ステータ、41:ボビン、42:円筒体、43:傘部、43c:位置決めリブ、44:補強部材、45:ステータコア、46:巻枠部、47:コイル部材、50:ハウジング、50s:連通孔、51:フロントハウジング、52:リアハウジング、60:インペラ、70:ファンケーシング、100:電気掃除機、101、102:軸受保持部材、101s:小径部、Ax:軸方向、R1、R2、R3:風路。