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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022148221
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】遊技機用回転駆動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
   A63F 7/02 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
A63F7/02 304D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021049818
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】320002913
【氏名又は名称】株式会社イチネン製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南川 直哉
【テーマコード(参考)】
2C088
【Fターム(参考)】
2C088EB78
(57)【要約】
【課題】省スペース化を実現するとともに製造原価を低減可能な遊技機用回転駆動力伝達置を提供する。
【解決手段】 遊技機用回転駆動力伝達装置1は、互いに平行に延びる第1回転中心軸及び第2回転中心軸の周りに回転可能にそれぞれ支持された第1ホイール20及び第2ホイール30と、第1ホイール20と第2ホイール30とを連結し、第1ホイール20の回転力を第2ホイール30に伝達して第2ホイール30を回転させる長尺状のアーム40と、と、思案点においてアーム40の中間部に当接し、当該状態から、アーム40の一端部と他端部とが反対方向へ移動することを許容し、且つ当該状態から前記連結部材の延設方向が前記直線に対して平行な状態を保ったまま前記連結部材が移動することを規制する規制部材と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行に延びる第1回転中心軸及び第2回転中心軸の周りに回転可能にそれぞれ支持された第1回転体及び第2回転体と、
前記第1回転体と前記第2回転体とを連結し、前記第1回転体の回転力を前記第2回転体に伝達して前記第2回転体を回転させる長尺状の連結部材であって、その一端部が、前記第1回転体に対し、前記第1回転中心軸に平行な第3回転中心軸の周りに回転可能に支持されるとともに、その他端部が、前記第2回転体に対し、前記第2回転中心軸に平行な第4回転中心軸の周りに回転可能に支持された連結部材と、
前記第1回転中心軸乃至前記第4回転中心軸の一端側から見て、前記第1回転中心軸乃至第4回転中心軸が、前記第1回転中心軸乃至前記第4回転中心軸に垂直な同一直線上に位置する状態において前記連結部材の中間部に当接し、当該状態から、前記連結部材の一端部と他端部とが反対方向へ移動することを許容し、且つ当該状態から前記連結部材の延設方向が前記直線に対して平行な状態を保ったまま前記連結部材が移動することを規制する規制部材と、
を備えた、遊技機用回転駆動力伝達装置。
【請求項2】
請求項1に記載の遊技機用回転駆動力伝達装置において、
前記連結部材の前記中間部と前記規制部材との当接部位がそれぞれ凸状に湾曲形成されている、遊技機用回転駆動力伝達装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の遊技機用回転駆動力伝達装置において、
前記連結部材は、その長手方向に伸縮可能である、
遊技機用回転駆動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータの回転駆動力を、電動モータから離間した装置(例えば、装飾部品(役物)を駆動する装置)へ伝達する遊技機用回転駆動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1に記載されているように、電動モータの回転駆動力を、当該電動モータから離間した装置(以下、「従動装置」と称呼する。)へ伝達する遊技機用回転駆動力伝達装置が知られている。この遊技機用回転駆動力伝達装置は、複数の歯車から構成された減速装置を含む。この減速装置は、電動モータと従動装置との間に配置されている。すなわち、複数の歯車が、電動モータと従動装置との間にて配列されている。前記配列された複数の歯車のうち、当該配列の一端(初段)の歯車が、電動モータの出力軸に取り付けられ、他端(最終段)の歯車が従動装置に取り付けられている。つまり、電動モータの出力軸の回転駆動力が、複数の歯車を介して、従動装置に伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-110535号公報
【発明の概要】
【0004】
上記のように、特許文献1の遊技機用回転駆動力伝達装置を採用した場合、電動モータと従動装置との間のスペースの大部分が、複数の歯車に占有され、当該スペースに他の部品を配置することができない。また、特許文献1の遊技機用回転駆動力伝達装置の部品点数が多く、遊技機用回転駆動装置の製造原価が高い。とくに、電動モータと従動装置との距離が比較的大きい場合には、上記の問題が顕著になる。
【0005】
本発明の目的は、省スペース化を実現するとともに製造原価を低減可能な遊技機用回転駆動力伝達置を提供することにある。なお、下記本発明の各構成要件の記載においては、本発明の理解を容易にするために、実施形態の対応箇所の符号を括弧内に記載しているが、本発明の各構成要件は、実施形態の符号によって示された対応箇所の構成に限定解釈されるべきものではない。
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る遊技機用回転駆動力伝達装置(1)は、
互いに平行に延びる第1回転中心軸及び第2回転中心軸の周りに回転可能にそれぞれ支持された第1回転体(20)及び第2回転体(30)と、
前記第1回転体と前記第2回転体とを連結し、前記第1回転体の回転力を前記第2回転体に伝達して前記第2回転体を回転させる長尺状の連結部材であって、その一端部が、前記第1回転体に対し、前記第1回転中心軸に平行な第3回転中心軸の周りに回転可能に支持されるとともに、その他端部が、前記第2回転体に対し、前記第2回転中心軸に平行な第4回転中心軸の周りに回転可能に支持された連結部材(40,50)と、
前記第1回転中心軸乃至前記第4回転中心軸の一端側から見て、前記第1回転中心軸乃至第4回転中心軸が、前記第1回転中心軸乃至前記第4回転中心軸に垂直な同一直線上に位置する状態において前記連結部材の中間部に当接し、当該状態から、前記連結部材の一端部と他端部とが反対方向へ移動することを許容し、且つ当該状態から前記連結部材の延設方向が前記直線に対して平行な状態を保ったまま前記連結部材が移動することを規制する規制部材(14L,14R,15L,15R,16,17)と、
を備える。
【0007】
この場合、前記連結部材の前記中間部と前記規制部材との当接部位がそれぞれ凸状に湾曲形成されているとよい。
【0008】
また、この場合、前記連結部材は、その長手方向に伸縮可能であるとよい。
【0009】
本発明に係る遊技機用回転駆動力伝達装置の第1回転体に、例えば、電動モータが接続される。そして、第2回転体に、例えば、遊技機の装飾部品(役物)が直接的に、又は間接的に(所定の駆動装置を介して)接続される。第1回転体が電動モータによって回転駆動され、その回転駆動力が、連結部材を介して、第2回転体に伝達され、第2回転体が回転駆動されて、装飾部品(役物)が動作(回転、揺動など)する。
【0010】
仮に、本発明において規制部材が存在しない場合には、前記第1回転中心軸乃至第4回転中心軸が、同一直線上に位置する状態(以下、「思案点」と称呼する。)から、連結部材の延設方向が前記直線に対して平行な状態を保ったまま前記連結部材が移動(以下、「平行移動」と称呼する。)することが許容される。この場合、第1回転体の回転方向と第2回転体の回転方向は同一である。この場合、連結部材が通過する領域が比較的大きく(複数の歯車を用いた場合と同等)、省スペース化を実現することができない。一方、規制部材が存在しない場合には、思案点から、連結部材の一端と他端が反対方向へ移動(以下、「揺動」と称呼する)することも許容されている。このように、連結部材は、思案点から必ず平行移動するというわけではなく、負荷の大きさ、状態など(役物の重さ、摺動部の摩擦など)によっては、思案点から揺動する場合もある。つまり、この場合、装飾部品(役物)の動作態様が意図しない態様になってしまう虞がある。
【0011】
これに対し、本発明に係る遊技機用回転駆動力伝達装置によれば、規制部材によって、連結部材の平行移動が規制され、連結部材は、所定の角度範囲を往復運動(揺動)する。その際の連結部材の通過領域の範囲は、連結部材が平行移動する場合に比べて小さい。すなわち、本発明に係る遊技機用回転駆動力伝達装置は、省スペース化を実現している。さらに、第2回転体を、常に、第1回転体の回転方向とは反対方向へ回転させることができる。言い換えれば、思案点から連結部材が平行移動することが規制される。よって、本発明に係る遊技機用回転駆動力伝達装置によれば、第2回転体(第2回転体に接続された装飾部品、装置など)を意図通りに駆動できる。また、特許文献1の装置に比べて、本発明に係る遊技機用回転駆動力伝達装置の部品点数が少ないので、その製造原価を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る遊技機用回転駆動力伝達装置が適用されたパチンコ機の正面図である。
図2図1の遊技機用回転駆動力伝達装置の斜視図である。
図3図1の遊技機用回転駆動力伝達装置の正面図である。
図4図1の遊技機用回転駆動力伝達装置の分解斜視図である。
図5】フレームの正面図である。
図6】第1ホイール及び第2ホイールの正面図である。
図7】アームの正面図である。
図8】第1ホイールの回転駆動力がアームを介して第2ホイールに伝達されて、第2第2ホイールが回転する様子を示した図である。
図9】アームが通過する領域を示した図である。
図10】本発明の変形例に係る遊技機用回転駆動力伝達装置の正面図である。
図11】ストッパを備えていない場合の第1ホイール、アーム及び第2ホイールの動作の一例を示した参考図である。
図12図11の例においてアームが通過する領域を示した参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(構成)
本発明の一実施形態に係る遊技機用回転駆動力伝達装置1の構成について説明する。まず、遊技機用回転駆動力伝達装置1が適用された遊技機としてのパチンコ機PMの概略について説明しておく。パチンコ機PMは、図1に示したように、鉛直方向に延びる略直方体状の装置である。以下の説明において、パチンコ機PMの高さ方向(鉛直方向)を上下方向と呼ぶ。また、パチンコ機PMの幅方向を左右方向と呼び、パチンコ機PMの奥行き方向を前後方向と呼ぶ。
【0014】
パチンコ機PMは、同図に示したように、遊技盤PB、遊技球発射装置BSなどを備える。遊技盤PBは、上下方向に延びる略長方形の板状部材である。遊技盤PBは、遊技者に対向するように配置されている。すなわち、遊技盤PBの板厚方向が前後方向に一致している。
【0015】
遊技盤PBの略中央部には、表示装置DDが組み付けられている。表示装置DDとして、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどが用いられる。表示装置DDは、図示しない制御装置に接続されており、制御装置から供給された制御信号に従って画像を表示する。
【0016】
遊技球発射装置BSは、遊技盤PBの下方に配置されている。遊技球発射装置BSは、図示しない遊技球を1球ずつ遊技盤PBへ向けて発射する。
【0017】
遊技機用回転駆動力伝達装置1は、遊技盤PBの後面側に配置されている。遊技機用回転駆動力伝達装置1は、電動モータEMの出力軸の回転駆動力を装飾部品(役物)に伝達して、当該装飾部品を回転させる。なお、遊技機用回転駆動力伝達装置1は、装飾部品を駆動するためのみならず、他の部品、装置などへ回転駆動力を伝達するための装置としても利用可能である。
【0018】
つぎに、遊技機用回転駆動力伝達装置1の構成について説明する。遊技機用回転駆動力伝達装置1は、図2乃至図4に示したように、フレーム10、第1ホイール20、第2ホイール30及びアーム40を備える。
【0019】
フレーム10は、略長方形の板状部材である。フレーム10は、第1ホイール20、第2ホイール30及びアーム40を支持するための支持部材である。フレーム10は、例えば、遊技盤PBの後面側において、その長辺が左右方向に平行であり、且つその短辺が上下方向に平行であるように配置される。フレーム10は、その前面11と遊技盤PBの後面との間に隙間が形成されるように、図示しないスペーサーを介して、遊技盤PBに固定される。
【0020】
フレーム10の前面11に一対の軸部12,13が設けられている。軸部12,13は、前後方向に延設されている。軸部12,13は、左右方向に離間している。その距離d図5を参照)は、例えば、200mmである。
【0021】
さらに、フレーム10の前面には、前後方向にそれぞれ延びる略円柱状のストッパ14L.14R.15L.15Rが設けられている。ストッパ14L,14R,15L,15Rは、後述するアーム40の移動を規制する。ストッパ14L,14Rは、軸部12の中心軸と軸部12の中心軸を含む平面Hの上方に配置されている。一方、ストッパ15L,15Rは、平面Hの下方に配置されている。ストッパ14L,14R,15L,15Rのそれぞれの中心軸と、平面Hとの距離dは同一である。また、ストッパ14L,14Lは、左右方向に対して垂直な平面Vであって、軸部12,13からの距離が等しい位置にある平面Vの左方に配置されている。一方、ストッパ14R,15Rは、平面Vの右方に配置されている。ストッパ14L,14R,15L,15Rのそれぞれの中心軸と、平面Vとの距離dは同一である。
【0022】
第1ホイール20は平歯車である。第2ホイール30は、円板状部材である。第1ホイール20の中央部及び第2ホイール30の中央部に、貫通孔TH20及び貫通孔TH30がそれぞれ形成されている。貫通孔TH20及び貫通孔TH30に、フレーム10の軸部12及び軸部13がそれぞれ挿入されている。すなわち、第1ホイール20及び第2ホイール30は、軸部12,13のまわりに回転可能に支持されている。
【0023】
第1ホイール20の前面21及び第2ホイール30の前面31には、軸部22及び軸部32がそれぞれ設けられている。軸部22及び軸部32の外径は同一である。軸部22及び軸部32は、前後方向に延設されている。第1ホイール20の回転中心軸C20と軸部22の中心軸C22との距離dと、第2ホイール30の回転中心軸C30と軸部32の中心軸C32との距離dとが同一である(図6を参照)。そして、距離dは、距離dと同一である。
【0024】
アーム40は、長尺状の略板状部材である。アーム40は、その板厚方向が前後方向に一致するように配置されている。アーム40の長手方向における一端部及び他端部に、貫通孔TH41及び貫通孔TH42がそれぞれ形成されている(図7を参照)。貫通孔TH41の中心と貫通孔TH42の中心との距離d40が、距離dと同一である。貫通孔TH41の内径と貫通孔TH42の内径は同一である。貫通孔TH41及び貫通孔TH42の内径は、軸部22及び軸部32の外径より少し大きい。貫通孔TH41及び貫通孔TH42に軸部22及び軸部32がそれぞれ挿入されている。すなわち、アーム40は、軸部22のまわりに回転可能に支持されるとともに、軸部32のまわりに回転可能に支持されている。
【0025】
アーム40の長辺を構成する一対の端面S1,S2の長手方向における中央部に凸部P1,P2が設けられている。凸部P1,P2は、アーム40の長手方向に垂直、且つ板厚方向(前後方向)に垂直な方向にそれぞれ突出している。アーム40の前側(又は後側)から見て、凸部P1,P2は、略半円弧状を呈する。
【0026】
アーム40は、合成樹脂製であり、その長手方向に対して力(引っ張り力又は圧縮力)が作用した場合に、少し変形(伸長又は圧縮)可能である。
【0027】
なお、遊技盤PBに対する遊技機用回転駆動力伝達装置1の姿勢は上記態様に限られない。例えば、フレーム10の長辺が左右方向に平行であり、且つフレーム10の短辺が前後方向に平行であるように、遊技機用回転駆動力伝達装置1が遊技盤PBに固定されてもよい。
【0028】
パチンコ機PMにおいて、遊技盤PBの前側に図示しない装飾部品(役物)が配置される。遊技盤PBに図示しない孔部(貫通孔、スリットなど)が設けられ、当該孔部に挿入された部品を介して、装飾部品(役物)と第2ホイール30とが連結される。
【0029】
さらに、フレーム10の後面側に電動モータEMが配置されている(図4を参照)。フレーム10に設けられた図示しない貫通孔を通って、電動モータEMの出力軸が、フレーム10の前側へ突出している。電動モータEMの出力軸に取り付けられた歯車MGが第1ホイール20に噛み合わせられている。本実施形態において、周知のステッピングモータを電動モータEMとして採用している。以下に説明するように、電動モータEMにより、第1ホイール20が回転駆動され、その回転駆動力が、アーム40を介して、第2ホイール30に伝達され、第2ホイール30が回転する。
【0030】
(動作)
上記のように構成された遊技機用回転駆動力伝達装置1の動作について説明する。以下の説明において、第1ホイール20の軸部22及び第2ホイール30の軸部32の回転角度位置θを下記のように定義する。
(a) 軸部22,32の中心軸が、軸部12,13の中心軸の右方に位置する状態の回転角度位置θが「0°」である。
(b)第1ホイール20及び第2ホイール30を前方から見て、それらの反時計回り方向への回転方向は、「回転角度位置θが増大する方向」であり、時計回り方向への回転方向は、「回転角度位置θが減少する方向」である。
【0031】
図8(A)に示した第1の状態(θ=「0°」)において、凸部P1,P2の頂点P1a,P2aが、ストッパ14R,15Rにそれぞれ当接するように、凸部P1,P2の形状及び寸法、並びにストッパ14R,15Rの位置及び寸法が設定されている。
【0032】
第1の状態において、電動モータEMにより、第1ホイール20を、図8(A)において反時計回り方向へ回転させる回転力R1が第1ホイール20に印加されると、同図において、アーム40の左端部に、上方へ向かう力F1が作用する。このとき、アーム40の凸部P1がストッパ14Rに当接している。すなわち、アーム40の中央部が上方へ移動することが規制されている。よって、力F1は、アーム40の凸部P1とストッパ14Rとの当接部を中心として、図8(A)において、アーム40を時計回りに回転させる力(モーメント)として作用する。つまり、アーム40の右端部には、下方へ向かう力F2が作用する。これにより、第2ホイール30を、図8(A)において時計回りへ回転させる回転力R2が、第2ホイール30に作用する。このように、第2ホイール30は、第1ホイール20とは反対方向へ回転し始める。
【0033】
第1ホイール20の回転角度位置θが「0°」から増大すると、アーム40が左方へ移動しつつ、平面Hに対するアーム40の傾斜角度が増大するとともに、第2ホイール30の回転角度位置θが「0°」から減少する。第1ホイール20の回転角度位置θが「90°」に至ったとき、第2ホイール30の回転角度位置が「-90°」に至り、このとき、平面Hに対するアーム40の傾斜角度が最大になり、第2ホイール30の回転角度位置θが「-90°」になる(図8(B)を参照)。
【0034】
第1ホイール20の回転角度位置θが「90°」から増大すると、アーム40は、左方へ移動しつつ、平面Hに対するアーム40の傾斜角度が減少するとともに、第2ホイール30の回転角度位置θが「-90°」からさらに減少して、図8(C)に示した第2の状態に至る。すなわち、第1ホイール20の回転角度位置θが「180°」に至ったとき、第2ホイール30の回転角度位置が「-180°」に至り、このとき、平面Hに対するアーム40の傾斜角度が最小(「0°」)になる。この第2の状態において、凸部P1,P2の頂点P1a,P2aが、ストッパ14L,15Lにそれぞれ当接するように、凸部P1,P2の形状及び寸法、並びにストッパ14L,15Lの位置及び寸法が設定されている。
【0035】
第2の状態において、電動モータEMにより、第1ホイール20を、図8(C)においてさらに反時計回り方向へ回転させる回転力R1が第1ホイール20に印加されると、同図において、アーム40の左端部に、下方へ向かう力F3が作用する。このとき、アーム40の凸部P2の頂点P2aがストッパ15Lに当接している。すなわち、アーム40の中央部が下方へ移動することが規制されている。よって、力F3は、アーム40の凸部P2とストッパ15Lとの当接部を中心として、図8(C)において、アーム40を反時計回り方向へ回転させる力(モーメント)として作用する。つまり、アーム40の右端部には、上方へ向かう力F4が作用する。これにより、第2ホイール30を、図8(C)において時計回り方向へ回転させる回転力R2が、第2ホイール30に作用する。
【0036】
第1ホイール20の回転角度位置θが「180°」から増大すると、アーム40は、右方へ移動しつつ、平面Hに対するアーム40の傾斜角度が増大するとともに、第2ホイール30の回転角度位置θが減少する。第1ホイール20の回転角度位置θが「270°」に至ったとき、第2ホイール30の回転角度位置が「-270°」に至り、このとき、平面Hに対するアーム40の傾斜角度が最大になる(図8(D)を参照)。
【0037】
第1ホイール20の回転角度位置θが「270°」からさらに増大すると、アーム40は、さらに右方へ移動しつつ、平面Hに対するアーム40の傾斜角度が減少するとともに、第2ホイール30の回転角度位置θが減少して、第1の状態に戻る。すなわち、第1ホイール20の回転角度位置θが「0°(360°)」に至ったとき、第2ホイール30の回転角度位置が「-0°(-360°)」に至り、このとき、平面Hに対するアーム40の傾斜角度が最小(「0°」)になる。
【0038】
第1ホイール20が上記の図8を用いて説明した例とは反対方向に駆動される場合には、第1状態において、ストッパ15Rにより、アーム40の中央部の下方への移動が規制され、第2状態において、ストッパ14Lにより、アーム40の中央部の上方への移動が規制される。
【0039】
なお、第1ホイール20は、一方向に回転駆動され続けるだけではなく、所定の回転角度位置θaにて停止され、その位置から、第1ホイール20の回転方向が反転されてもよい。このように第1ホイール20の回転方向が反転された場合には、第2ホイール30の回転方向も反転される。すなわち、第2ホイール30は、常に、第1ホイール20とは反対方向へ回転する。
【0040】
(効果)
仮に、ストッパ14L,14R,15L,15Rが存在しない場合には、第1状態及び第2状態から、アーム40が平面Hに対して平行である状態を保ったまま移動することが許容される。この場合、図11に示したように、第1ホイール20の回転方向と第2ホイール30の回転方向は同一である。この場合、アーム40が通過する領域Zが比較的大きく(複数の歯車を用いた場合と同等)、省スペース化を実現することができない(図9を参照)。加えて、第1の状態及び第2の状態から、アーム40が、必ず、平面Hに対して平行に移動するというわけではなく、負荷の大きさ、状態など(例えば、役物の重さ、摺動部の摩擦力など)によっては、アーム40が図8に示したように移動する場合もある。つまり、この場合、装飾部品(役物)が意図しない方向へ回転(移動)してしまう虞がある。
【0041】
これに対し、本実施形態によれば、ストッパ14L,14R,15L,15Rによって、図11に示したようなアーム40の移動(平行移動)が規制され、アーム40が図9に示したように所定の角度範囲(領域X)を往復運動(揺動)する。この領域Xは、領域Zに比べて小さい。すなわち、本実施形態に係る遊技機用回転駆動力伝達装置1は、省スペース化を実現している。さらに、第2ホイール30を、常に、第1ホイール20の回転方向とは反対方向へ回転させることができる。よって、遊技機用回転駆動力伝達装置1によれば、装飾部品(役物)を意図通りに駆動できる。さらに、特許文献1の装置に比べて、遊技機用回転駆動力伝達装置1の部品点数が少ないので、遊技機用回転駆動力伝達装置1の製造原価を低減できる。
【0042】
なお、厳密には、第1の状態及び第2の状態(図8(A)及び図8(B))における中心軸C22と中心軸C32との距離D1に比べて、その他の状態(例えば、図8(B)及び図8(D))における中心軸C22と中心軸C32との距離D2が少し長い。ここで、本発明は、駆動側の装置から、比較的遠く離れた従動側の装置へ回転駆動力を伝達することを主目的としておいる。本実施形態において、第1ホイール20と第2ホイール30との距離に比べて、中心軸C22及び中心軸C32の回転半径(距離d)が非常に小さい。したがって、平面Hに対するアーム40の傾斜角度の最大値が比較的小さい。よって、距離D1と距離D2との差は僅かである。そのため、第1ホイール20及び第2ホイール30が回転した際、アーム40の長手方向にはほとんど力(引っ張り力又は圧縮力)が作用せず、回転駆動力の伝達性能には、ほとんど影響が無い。
【0043】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0044】
(変形例1)
上記辞し形態では、第1ホイール20における距離dと第2ホイール30における距離dが同一であるが、この距離dが異なっていてもよい。例えば、第1ホイール20における距離dに比べて、第2ホイール30における距離dが大きくてもよい。この場合、第1状態において、凸部P1,P2がストッパ14R,15Rに当接し、第2状態において、凸部P1,P2がストッパ14L,15Lに当接するように、フレーム10においてストッパ14L,14R,15L,15Rを配置するとともに、アーム40において凸部P1,P2を配置すればよい。
【0045】
(変形例2)
例えば、図10に示したように、上記のストッパ14L,14R,15L,15Rに代えて、ストッパ16,17を採用してもよい。ストッパ16,17は、前後方向に延びる略円柱状の部材である。ストッパ16は、平面Hの上方に位置し、ストッパ17は、平面Hの下方に位置している。平面Hからストッパ16,17のそれぞれの中心軸までの距離は同一である。この場合、アーム40に代えて、同図に示したアーム50を採用する。アーム40は、凸部P1,P2を備えているのに対し、アーム50は、凸部P1L,P1R,P2L,P2Rを備える。アーム50のうち、凸部P1L,P1R,P2L,P2Rを除く部位の構成に関しては、アーム40の構成と同一である。以下、凸部P1L,P1R,P2L,P2Rの構成について説明し、その他の構成の説明を省略する。
【0046】
凸部P1L,P1Rは、アーム50の長辺を構成する端面のうちの一方(上側)の端面S1に設けられ、凸部P2L,P2Rは、アーム50の長辺を構成する端面のうちの他方(下側)の端面S2に設けられている。凸部P1L,P1R,P2L,P2Rの形状は、凸部P1,P2と同一である。凸部P1L,P2Lは、アーム50の長手方向に対して垂直である平面V50であって、アーム50の長手方向における中央部に位置している平面V50の左方に位置する。一方、凸部P1R,P2Rは、平面V50の右方に位置している。平面V50から凸部P1L,P2Lの頂点P1La,P2Laまでの距離が距離dと同一であり、平面V50から凸部P1R,P2Rの頂点P1Ra,P2Raまでの距離が距離dと同一である。
【0047】
第1状態において、凸部P1L,P2Lが、ストッパ16,17にそれぞれ当接し、第2状態において、凸部P1R,P2Rが、ストッパ16,17にそれぞれ当接するように構成されている。これによっても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0048】
(変形例3)
アーム40の中間部(例えば、長手方向における中央部から見て右方に少し離れた部位)に、複数の折り返し部(蛇腹状の部位)が設けられていてもよい。これによれば、アーム40が、その長手方向に伸縮し易い。なお、上記実施形態において、アームとストッパとが干渉しないように、各種摺動部に適度なクリアランスが設けられているが、アーム(凸部)とストッパとが多少干渉したとしても、アームの動作が妨げられないように、ストッパがアームによって押圧された際、ストッパが少し弾性変形するように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…遊技機用回転駆動力伝達装置、10…フレーム、12,13…軸部、14L,14R,15L,15R,16,17…ストッパ、20…第1ホイール、22…軸部、30…第2ホイール、32…軸部、40,50…アーム、EM…電動モータ、P1,P1L,P1R,P2,P2L…凸部


図1
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図12