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特開2022-148271フィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維の製造方法
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  • 特開-フィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022148271
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】フィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D01F 2/00 20060101AFI20220929BHJP
   D01D 5/40 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
D01F2/00 Z
D01D5/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021049887
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】青柳 いずみ
(72)【発明者】
【氏名】緑川 正敏
【テーマコード(参考)】
4L035
4L045
【Fターム(参考)】
4L035BB46
4L035DD13
4L035FF05
4L045AA14
4L045BA05
4L045BA34
4L045BB16
(57)【要約】
【課題】繊維長が長く、かつ高度にフィブリル化しており、かつ地合いが均一な不織布が得られるフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維の製造方法を提供する。
【解決手段】水中に溶剤紡糸セルロース繊維を分散させたスラリーを、叩解機により処理し、平均繊維長が0.50mm~2.30mmのフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維を得るフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維の製造方法において、スラリー濃度が0.50質量%未満であることを特徴とする、フィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中に溶剤紡糸セルロース繊維を分散させたスラリーを、叩解機により処理し、平均繊維長が0.50mm~2.30mmのフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維を得るフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維の製造方法において、スラリー濃度が0.50質量%未満であることを特徴とする、フィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学素子用セパレータ、ワイパー、濾材、フィルタ等に求められる、緻密な不織布を製造する技術として、溶剤紡糸セルロース繊維をフィブリル化したフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維を、湿式抄造法により抄造した不織布が提案されている(例えば、特許文献1~5参照)。なお、湿式抄造法により抄造した不織布は湿式不織布と呼ばれる。
【0003】
フィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維の各用途において、フィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維を含む製品の強度や緻密性、抄造装置上における湿潤ウェブの取り扱い性を向上するためには、フィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維の繊維長は長いことが好ましい。また、フィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維のフィブリル化が高度に進行していることが好ましい。
【0004】
しかし、通常のフィブリル化処理においては、繊維の切断とフィブリル化は並行して進行するため、高度にフィブリル化しており、かつ繊維長の長いフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維を得ることは困難であった。
【0005】
セルロース繊維の叩解においては、水中にセルロース繊維を分散させたスラリーが低濃度の場合には、短繊維化が優位に働くため、フィブリルが発生し難く、高濃度の場合には、短繊維化よりもフィブリル化が優位に進行するという知見が知られている。この場合の低濃度とは、2~3%程度、高濃度は5%以上と想定されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0006】
この知見を応用した技術として、初期に高濃度で処理を行い、次いで濃度を下げて処理を行うことで、高度にフィブリル化しており、かつ繊維長の長いフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維を得る技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、高濃度で叩解処理を行うことにより、繊維が絡み合い、抄造した際に不織布の地合いが均一にならないという問題点や、スラリー濃度を途中で変化させる必要があることから、複雑な叩解方法であるという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公報第2017/057335号パンフレット
【特許文献2】特開2017-168696号公報
【特許文献3】特開2016-001672号公報
【特許文献4】特開2015-179619号公報
【特許文献5】特開2012-195162号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】James P.Casey著、大江礼三郎・臼田誠人翻訳監修、「紙及びパルプ 製紙の化学と技術 第二巻」中外産業調査会、1984年2月29日発行、P.32~33
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、繊維長が長く、かつ高度にフィブリル化しており、かつ地合いが均一な不織布が得られるフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、下記発明によって解決された。
【0011】
水中に溶剤紡糸セルロース繊維を分散させたスラリーを、叩解機により処理し、平均繊維長が0.50mm~2.30mmであるフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維を得るフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維の製造方法において、スラリー濃度が0.50質量%未満であることを特徴とする、フィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明のフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維の製造方法によれば、繊維長が長く、高度にフィブリル化しており、かつ地合いが均一な不織布が得られるフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施例1~4及び比較例1の平均繊維長と変法濾水度の関係を示している。平均繊維長を横軸、変法濾水度を縦軸として、表1のデータをグラフ化したものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、水中に溶剤紡糸セルロース繊維を分散させたスラリーを、叩解機により処理し、平均繊維長0.50mm~2.30mmのフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維を得るフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維の製造方法であって、スラリー濃度が0.50質量%未満であることを技術的特徴とする。この技術的特徴により、高度にフィブリル化しており、かつ平均繊維長の長いフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維が得られると言う、有利な効果が得られる。本発明において、スラリー濃度を0.50質量%未満にすることで平均繊維長が長くなる理由は、以下のように推定される。すなわち、スラリー濃度が低いことによって繊維に与えられる大きな衝撃作用が小さくなり、繊維の切断が起こり難くなる一方、繊維を切断させずにフィブリル化のみを進める小さな衝撃作用については、大きな衝撃作用程低下しないという理由が推定される。
【0015】
溶剤紡糸セルロース繊維とは、植物パルプを、セルロースを溶解することができる溶剤に溶解させ、濾過して不純物を除去した後、湿式紡糸によって紡糸することで得られる繊維である。セルロースを溶解する溶剤としては、例えば、N-メチルモルフォリン-N-オキサイド、N-メチルピペリジン-N-オキサイド、イオン液体などが挙げられる。
【0016】
フィブリル化とは、繊維が、その長軸方向を維持したまま微細な繊維に分割されることを言い、分割された繊維の少なくとも一部が繊維径1μm以下となることを指す。
【0017】
本発明は、平均繊維長0.50mm以上、より好ましくは平均繊維長0.80mm以上、さらに好ましくは平均繊維長1.10mm以上のフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維を得るために使用される。平均繊維長0.50mm未満で、高度にフィブリル化されたフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維を製造することは、従来公知の技術で可能であって、本発明を採用する動機が無い。一方、平均繊維長0.50mm以上(特には0.80mm以上又は1.10mm以上)で、高度にフィブリル化されたフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維を簡便な工程で得ることは、従来公知の技術では困難であって、本発明の製造方法が好ましく適用される。また、本発明は、平均繊維長2.30mm以下、より好ましくは平均繊維長2.00mm以下のフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維を得るために使用される。平均繊維長が2.30mmを超えて、高度にフィブリル化されたフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維を本発明により製造することは可能であるが、このようなフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維は繊維同士の絡まりが生じ易く、地合いが均一な不織布を得ると言う本発明の課題が達成され難くなる。
【0018】
なお、本発明において「高度にフィブリル化している」とは、yを変法濾水度、xを平均繊維長とした時に、0.50≦x≦2.30の範囲において、0≦y≦99.289x-250.68x+270.55x-24.5であることを指している。
【0019】
また、変法濾水度が0mLに達した後、更に叩解機による処理を行うと、繊維が著しく短繊維化してメッシュを通りすぎるようになり、変法濾水度が逆に上昇し始める。このように、変法濾水度が逆上昇し始めた状態では、高度にフィブリル化しており、かつ繊維長が長い繊維が得られると言う本発明の効果は得られないから、好ましくない。
【0020】
本発明において、製造されるフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維の平均繊維長を調整するためには、処理時間を調整する、叩解機のクリアランスを狭くする等の方法がある。フィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維の平均繊維長は、処理時間の経過と共に短くなるため、所望の平均繊維長が得られた時点で処理を終了することで、所望の平均繊維長が得られる。また、叩解機のクリアランスを狭くすることで、同一の処理時間でも平均繊維長の短いフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維が得られる。
【0021】
本発明のフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維の製造方法には、叩解機を用いる。叩解機としてはディスクリファイナーやコニカルリファイナー、高圧ホモジナイザー、石臼グラインダー、ビーターなどが挙げられる。これらの中でもディスクリファイナーやコニカルリファイナーが、最も効率良くフィブリル化することができるという観点から好ましい。
【0022】
本発明において、水中に溶剤紡糸セルロース繊維を分散させたスラリーを、叩解機により処理する際のスラリー濃度は0.50質量%未満であり、0.45質量%以下であることがより好ましく、0.40質量%以下であることがさらに好ましい。スラリー濃度が0.50質量%以上の場合は、高度にフィブリル化しており、かつ平均繊維長の長いフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維が得られると言う、本発明の効果が得られない。また、本発明において、水中に溶剤紡糸セルロース繊維を分散させたスラリーを、叩解機により処理する際のスラリー濃度は0.05質量%以上であることが好ましく、0.10質量%以上であることがより好ましく、0.20質量%以上であることがさらに好ましい。繊維の時間当たり処理量を増やし、また、繊維の処理に必要なエネルギー量を減らすためには、スラリー濃度は高い方が好ましく、また、スラリー濃度を必要以上に低下させても、高度にフィブリル化しており、かつ繊維長の長いフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維が得られると言う本発明の効果が、更に顕著に発現するわけではないからである。
【0023】
セルロース繊維のフィブリル化の進行度合いは、濾水度、すなわち水中にセルロース繊維を分散させたスラリーからの水の濾別のされ易さを測定することによって、評価することができる。フィブリル化されていない繊維のスラリーは、スラリーから水が容易に濾別され、高い濾水度を示す。フィブリル化が進行した繊維のスラリーは、スラリーから水が容易に濾別され難く、低い濾水度を示す。本発明においては、変法濾水度、すなわちふるい板として線径0.14mm、目開き0.18mmの80メッシュ金網を用い、試料濃度を0.1質量%にした以外はJIS P8121-2:2012に準拠した測定方法を用いる。
【0024】
本発明において、JIS P8121-2:2012に規定されるカナダ標準濾水度測定法をそのまま用いず、前記のふるい板、試料濃度を用いる理由は以下の通りである。本発明で製造されるフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維のように、変法濾水度が480mL以下となるような繊維の濾水度を、JIS P8121-2:2012に規定される試料濃度0.3質量%で測定した場合、スラリーの流動性が低く、再現性良く濾水度を測定することが極めて困難であるため、試料濃度を0.1質量%にする。また、本発明で製造されるフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維のように、JIS P8121-2:2012の適用対象として想定されている天然セルロース繊維と比較して繊維長の短い繊維の濾水度を、JIS P8121-2:2012に規定されるふるい板で測定した場合、大量の繊維がふるい板を通じて流出してしまい、水の濾別のされ易さ、及び水の濾別のされ易さから推定されるフィブリル化の進行度合いという本来の意義で濾水度を測定することが不可能であるため、ふるい板として線径0.14mm、目開き0.18mmの80メッシュ金網を用いる。
【0025】
本発明において高度にフィブリル化された溶剤紡糸セルロース繊維の変法濾水度は、好ましくは0~480mLであり、より好ましくは0~420mLであり、さらに好ましくは15~175mLであり、特に好ましくは70~120mLである。フィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維の変法濾水度が高すぎる場合、当該フィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維を含む製品の強度や緻密性が不十分になる場合がある。またフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維の変法濾水度が低すぎる場合、当該フィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維を含む製品が緻密になりすぎ、当該製品を電気化学素子用セパレータとして使用する場合、抵抗の低い電気化学素子が得られなくなる場合がある。
【0026】
本発明により製造されたフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維は、単独で又は他の繊維と混合して、湿式抄造法による不織布製造に用いることができる。本発明により製造されたフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維を含む不織布は、従来公知の方法で製造されたフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維を含む不織布と比較して、欠陥が少なく、強度や緻密性が高いため、リチウムイオン電池、アルミニウム電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ等の電気化学素子用セパレータ等の用途に好ましく使用される。
【実施例0027】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。
【0028】
[叩解ライン]
攪拌翼を備えた容量600Lの分散タンクと、ローター直径140mm、ローター回転速度3000rpmのコニカルリファイナーからなる叩解ラインを用いた。本叩解ラインでは、分散タンクから流出したスラリーが、流量100L/minでコニカルリファイナーに供給され、コニカルリファイナーで叩解処理されたスラリーは分散タンクに還流される。この操作を所定時間継続することでスラリーを叩解するが、その間スラリーは分散タンクとコニカルリファイナーの間を循環する。
【0029】
<実施例1>
実施例1-1
前記叩解ラインの分散タンク内で、繊度1.25dtex、繊維長4mmの溶剤紡糸セルロース繊維(レンチング社製、商品名:テンセル(登録商標))を、スラリー濃度0.10質量%で10分間分散し、均一なスラリー300kgを調製した。次に、コニカルリファイナーのクリアランス(ローターとステーターの回転面の距離)を3.00mm以上とした状態で、分散タンクとコニカルリファイナー間でスラリーの予備循環を10分間行った。次いでコニカルリファイナーのクリアランスを0.3mmにして6分間フィブリル化処理を行い、実施例1-1のフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維を得た。
【0030】
実施例1-2
フィブリル化処理時間を12分間にした以外は実施例1-1と同様の方法でフィブリル化処理を行い、実施例1-2のフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維を得た。
【0031】
実施例1-3
フィブリル化処理時間を20分間にした以外は実施例1-1と同様の方法でフィブリル化処理を行い、実施例1-3のフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維を得た。
【0032】
実施例1-4
フィブリル化処理時間を40分間にした以外は実施例1-1と同様の方法でフィブリル化処理を行い、実施例1-4のフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維を得た。
【0033】
実施例1-5
フィブリル化処理時間を60分間にした以外は実施例1-1と同様の方法でフィブリル化処理を行い、実施例1-5のフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維を得た。
【0034】
<実施例2>
実施例2-1
スラリー濃度を0.33質量%にした以外は実施例1-1と同様の方法でフィブリル化処理を行い、実施例2-1のフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維を得た。
【0035】
実施例2-2
フィブリル化処理時間を12分間にした以外は実施例2-1と同様の方法でフィブリル化処理を行い、実施例2-2のフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維を得た。
【0036】
実施例2-3
フィブリル化処理時間を20分間にした以外は実施例2-1と同様の方法でフィブリル化処理を行い、実施例2-3のフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維を得た。
【0037】
実施例2-4
フィブリル化処理時間を40分間にした以外は実施例2-1と同様の方法でフィブリル化処理を行い、実施例2-4のフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維を得た。
【0038】
実施例2-5
フィブリル化処理時間を60分間にした以外は実施例2-1と同様の方法でフィブリル化処理を行い、実施例2-5のフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維を得た。
【0039】
<実施例3>
実施例3-1
スラリー濃度を0.45質量%にした以外は実施例1-1と同様の方法でフィブリル化処理を行い、実施例3-1のフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維を得た。
【0040】
実施例3-2
フィブリル化処理時間を12分間にした以外は実施例3-1と同様の方法でフィブリル化処理を行い、実施例3-2のフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維を得た。
【0041】
実施例3-3
フィブリル化処理時間を20分間にした以外は実施例3-1と同様の方法でフィブリル化処理を行い、実施例3-3のフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維を得た。
【0042】
実施例3-4
フィブリル化処理時間を40分間にした以外は実施例3-1と同様の方法でフィブリル化処理を行い、実施例3-4のフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維を得た。
【0043】
実施例3-5
フィブリル化処理時間を60分間にした以外は実施例3-1と同様の方法でフィブリル化処理を行い、実施例3-5のフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維を得た。
【0044】
<実施例4>
実施例4-1
フィブリル化処理時のコニカルリファイナーのクリアランスを0.5mmとし、フィブリル化処理時間を20分間とした以外は、実施例2-1と同様にして、実施例4-1のフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維を得た。
【0045】
実施例4-2
フィブリル化処理時間を40分間にした以外は実施例4-1と同様の方法でフィブリル化処理を行い、実施例4-2のフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維を得た。
【0046】
実施例4-3
フィブリル化処理時間を60分間にした以外は実施例4-1と同様の方法でフィブリル化処理を行い、実施例4-3のフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維を得た。
【0047】
実施例4-4
フィブリル化処理時間を80分間にした以外は実施例4-1と同様の方法でフィブリル化処理を行い、実施例4-4のフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維を得た。
【0048】
実施例4-5
フィブリル化処理時間を100分間にした以外は実施例4-1と同様の方法でフィブリル化処理を行い、実施例4-5のフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維を得た。
【0049】
<比較例1>
比較例1-1
スラリー濃度を0.60質量%にした以外は実施例4-1と同様の方法でフィブリル化処理を行い、比較例1-1のフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維を得た。
【0050】
比較例1-2
フィブリル化処理時間を40分間にした以外は比較例1-1と同様の方法でフィブリル化処理を行い、比較例1-2のフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維を得た。
【0051】
比較例1-3
フィブリル化処理時間を60分間にした以外は比較例1-1と同様の方法でフィブリル化処理を行い、比較例1-3のフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維を得た。
【0052】
比較例1-4
フィブリル化処理時間を80分間にした以外は比較例1-1と同様の方法でフィブリル化処理を行い、比較例1-4のフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維を得た。
【0053】
比較例1-5
フィブリル化処理時間を100分間にした以外は比較例1-1と同様の方法でフィブリル化処理を行い、比較例1-5のフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維を得た。
【0054】
【表1】
【0055】
[平均繊維長の測定]
本発明において、フィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維の平均繊維長は、ファイバークオリティーアナライザーFQA-360(OpTest Equipment Inc.社製)を使用して測定した「長さ加重平均繊維長」である。本測定装置では、測定する繊維の外郭の長さを測定する。
【0056】
表1及び図1に示した通り、同一又はほぼ同一の平均繊維長が得られた条件で比較して、フィブリル化処理におけるスラリー濃度が0.50質量%未満である実施例1、2、3及び4により得られたフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維は、フィブリル化処理におけるスラリー濃度が0.50質量%以上である比較例1により得られたフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維よりも、変法濾水度が低い、すなわちフィブリル化が高度に進行している。
【0057】
フィブリル化処理におけるスラリー濃度が0.10質量%である実施例1-1~1-5においては、平均繊維長1.79mmとなる実施例1-2において、既に変法濾水度が140mLまで低下し、フィブリル化が非常に高度に進行している。そして平均繊維長が0.98mmとなる実施例1-5においては、変法濾水度が16mLまで低下し、非常に高度にフィブリル化が進行している。
【0058】
フィブリル化処理におけるスラリー濃度が0.33質量%である実施例2-1~2-5においても、平均繊維長1.83mmとなる実施例2-2において、変法濾水度が190mLまで低下し、フィブリル化が高度に進行している。平均繊維長が1.03mmとなる実施例2-5においては、変法濾水度が27mLまで低下し、非常に高度にフィブリル化が進行している。
【0059】
フィブリル化処理におけるスラリー濃度が0.45質量%である実施例3-1~3-5においても、平均繊維長1.60mmとなる実施例3-3において、変法濾水度が115mLまで低下し、フィブリル化が高度に進行している。平均繊維長が1.11mmとなる実施例3-5においては、変法濾水度が43mLまで低下し、非常に高度にフィブリル化が進行している。
【0060】
フィブリル化処理におけるスラリー濃度が0.33質量%であり、クリアランスを0.5mmにした実施例4-1~4-5においても、平均繊維長1.75mmとなる実施例4-1において、既に変法濾水度が79mLまで低下し、フィブリル化が高度に進行している。平均繊維長が0.52mmとなる実施例4-5においては、変法濾水度が30mLまで低下し、非常に高度にフィブリル化が進行している。実施例2と実施例4を比較すると、実施例4ではクリアランスが広いため、同一の処理時間では平均繊維長が若干長く保たれ、叩解の進行が抑制されている。このようにクリアランスの幅と叩解時間を変化させることで、叩解の進行を調整することができる。
【0061】
一方、フィブリル化処理におけるスラリー濃度が0.60質量%である比較例1-1~1-5においては、平均繊維長1.91mmとなる比較例1-1において、変法濾水度が270mLであり、フィブリル化が高度には進行していない。平均繊維長は0.81mmである比較例1-4においては、変法濾水度が81mLであり、同程度の変法濾水度である実施例4-1の平均繊維長1.75mmと比較すると明確に短かった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明のフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維の製造方法によって得られたフィブリル化溶剤紡糸セルロース繊維は、湿式不織布に利用でき、気体又は液体用フィルタ、衛生用品、医療用シート、ワイパー、特に、リチウムイオン電池、アルミニウム電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ、固体電解コンデンサ、ハイブリッドコンデンサ等の電気化学素子用セパレータに好適に利用できる。
図1