(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022148299
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】発振装置及びそれを備える送信機
(51)【国際特許分類】
H03L 7/06 20060101AFI20220929BHJP
H03L 7/181 20060101ALI20220929BHJP
H03K 5/26 20060101ALI20220929BHJP
H03K 3/01 20060101ALI20220929BHJP
H03L 7/085 20060101ALN20220929BHJP
【FI】
H03L7/06 220
H03L7/181
H03K5/26 F
H03K3/01
H03L7/085
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021049921
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】中川原 圭太郎
【テーマコード(参考)】
5J039
5J106
5J300
【Fターム(参考)】
5J039JJ05
5J039JJ15
5J039KK01
5J039KK23
5J039MM16
5J039NN01
5J106AA04
5J106BB01
5J106CC03
5J106CC33
5J106CC34
5J106DD17
5J106GG03
5J106HH01
5J106KK05
5J300AA22
5J300DD08
5J300EE00
(57)【要約】 (修正有)
【課題】クロック信号の周波数の誤差を補正する精度の向上を図ることができる発振装置及びそれを備える送信機を提供する。
【解決手段】送信機1において、発振装置11は、カウンタ部111と、誤差算出部113と、判定部115と、補正部117と、発振器119と、を有する。カウンタ部111は、受信機13から入力されるタイムパルス信号PLSの周期毎に発振器が発振するクロック信号CKのパルス数をカウントする。誤差算出部113は、発振器の所望の発振クロック数に対するカウンタ部がカウントしたパルス数の誤差を算出する。判定部115は、誤差算出部の算出結果に基づいて、カウンタ部がカウントしたパルス数に誤差が生じているか否かを判定する。補正部117は、カウンタ部がカウントしたパルス数PNに誤差が生じていることを示す判定結果が判定部から入力された場合、誤差算出部から入力される算出結果を発振器119に出力する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数が制御可能なクロック信号を発振する発振部と、
外部から入力される基準信号の周期毎に前記発振部が発振する前記クロック信号のパルス数をカウントするカウンタ部と、
前記発振部の所望の発振クロック数に対する前記カウンタ部がカウントした前記パルス数の誤差を算出する誤差算出部と、
前記誤差算出部の算出結果に基づいて、前記カウンタ部がカウントした前記パルス数に誤差が生じているか否かを判定する判定部と、
を備える発振装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記基準信号及び前記クロック信号が同位相であると判定した場合は前記パルス数に誤差が生じていないと判定する
請求項1に記載の発振装置。
【請求項3】
前記基準信号の位相と前記クロック信号の位相とのずれが、前記基準信号及び前記クロック信号の少なくとも一方の出力タイミングの精度の範囲内である場合には、前記判定部は、前記基準信号及び前記クロック信号が同位相であると判定する
請求項2に記載の発振装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記基準信号の複数の周期のそれぞれに対して前記誤差算出部で算出された前記算出結果に基づいて、前記誤差が生じているか否かを判定する
請求項1から3までのいずれか一項に記載の発振装置。
【請求項5】
前記判定部が前記パルス数に誤差が生じていると判定した場合に、前記発振部が発振する前記クロック信号の周波数を補正する補正部を備える
請求項1から4までのいずれか一項に記載の発振装置。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一項に記載の発振装置を備え、前記発振装置から出力される前記クロック信号を用いて送信信号を生成する送信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振装置及びそれを備える送信機に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の基地局を有する無線システムでは、1つの基地局から送信される電波の届く範囲が基地局によって限られている。
図6(a)は、このような無線システムRS5の一例を模式的に示す図である。
図6(a)に示すように、無線システムRS5では、必要とする通信範囲をカバーするために複数の基地局を設置し、基地局BS51の電波が届く範囲ZE51の一部と、基地局BS51と隣り合う基地局BS52の電波が届く範囲ZE52の一部とが重なり合う干渉範囲IZE5が生じる。
【0003】
このため、基地局BS51及び基地局BS52が同一周波数の送信波を用いて種々の情報を送信しようとする場合、お互いの周波数にずれがあると干渉範囲IZE5において、基地局BS51から送信される送信波と基地局BS51から送信される送信波とが干渉した信号にひずみが発生してしまう。
【0004】
図6(b)は、干渉範囲IZE5を除く範囲ZE51及び範囲ZE52並びに干渉範囲IZE5において、受信機としての端末装置MTが受信する信号波形の一例を模式的に示す図である。
図6(b)中の「SG51」は、基地局BS51から送信されて干渉範囲IZE5を除く範囲ZE51(以下、単に「範囲ZE51」と称する)に到達する信号の波形を模式的に示している。
図6(b)中の「SG52」は、基地局BS52から送信されて干渉範囲IZE5を除く範囲ZE52(以下、単に「範囲ZE52」と称する)に到達する信号の波形を模式的に示している。
なお、基地局BS51から送信された周波数と基地局BS52から送信された周波数は図の通りずれた状態である。
【0005】
干渉範囲IZE5に到達した信号SG51と信号SG52は干渉する。このため、
図6(b)に示すように、信号SG51の周波数と信号SG52の周波数との間に周波数ずれがあると、信号SG51と信号SG52が干渉して生成された信号SGI5の信号波形にひずみが生じる。端末装置MTは、干渉範囲IZE5に存在して例えば基地局BS51から送信される信号SG51を受信するように動作している場合、信号SG51に対して波形歪が生じた信号SGI5を受信する。このため、端末装置MTは、基地局BS51から送信される信号SG51を受信できなかったり、信号SG51を受信できたとしても基地局BS51が送信した情報を正確に受信できなかったりする可能性がある。
【0006】
そこで、従来の無線システムでは、隣り合う基地局において、異なる周波数の送信波を使用したり送信時刻をずらしたりすることによって、基地局から送信される信号を干渉範囲に存在する端末装置が受信できるようにしている場合がある。このような無線システムでは、信号を送受信するために複数のチャネル(広い周波数帯域幅)を必要としたり、送信時間が長くなったりするという問題が生じる。
【0007】
このような問題を解決するために、従来の無線システムは、複数の基地局において周波数のずれがあったとしても同一周波数とみなせる周波数精度の高い送信波(以下では高精度の同一周波数の送信波ともいう)が用いられるこれにより、当該無線システムは、送信される信号が干渉する干渉範囲でも端末装置が当該信号を受信できるようになる。
【0008】
そのために送信機で用いられる原発振器で発振される発振クロック数を基準信号の周期毎にカウントし、原発振器に求められる発振クロック数とのずれ(誤差)分を積算し、積算した値を基に発振クロックの周波数を補正して発振クロックの精度を高める技術が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
複数の基地局に設けられた無線装置のそれぞれに、特許文献1に開示されているような技術を適用することにより、高精度の同一周波数の送信波による信号を同時刻に送信することが可能になる。しかしながら、従来の技術は、発振クロック信号の周波数の誤差を十分に補正できない場合があるという問題を有している。
【0011】
本発明の目的は、発振クロック信号の周波数の誤差を補正する精度の向上を図ることができる発振装置及びそれを備えた送信機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の一態様による発振装置は、周波数が制御可能なクロック信号を発振する発振部と、外部から入力される基準信号の周期毎に前記発振部が発振する前記クロック信号のパルス数をカウントするカウンタ部と、前記発振部の所望の発振クロック数に対する前記カウンタ部がカウントした前記パルス数の誤差を算出する誤差算出部と、前記誤差算出部の算出結果に基づいて、前記カウンタ部がカウントした前記パルス数に誤差が生じているか否かを判定する判定部と、を備える。
【0013】
また、上記目的を達成するために、本発明の一態様による送信機は、上記一態様による発振装置を備え、前記発振装置から出力される前記クロック信号を用いて送信信号を生成する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様によれば、クロック信号の周波数の誤差を補正する精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態による送信機が適用される無線システムを説明するための図である。
【
図2】本発明の一実施形態による発振装置及び送信機の概略構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】本発明の一実施形態による発振装置に備えられたカウンタ部を説明するための図である。
【
図4】本発明の一実施形態による発振装置に備えられたカウンタ部に入力される基準信号及びクロック信号の位相を説明するための図である。
【
図5】本発明の一実施形態による発振装置に備えられたカウンタ部でカウントされたクロック信号のクロック数に誤差について説明するための図である。
【
図6】従来の無線システムを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態による発振装置及びそれを備えた送信機について
図1から
図5を用いて説明する。まず、本実施形態による送信機1の適用例として無線システムRS1について
図1を用いて説明する。
【0017】
図1(a)は、無線システムRS1の概略構成の一例を示す図である。
図1(a)に示すように、無線システムRS1は、全球測位衛星システム(Global Navigation Satellite System:GNSS)衛星SLから送信される位置測位のためGNSS信号を受信する複数(
図1では2つ)の基地局BS1,BS2を備えている。無線システムRS1において、無線システムRS1は、必要とする通信範囲をカバーするように基地局BS1及び基地局BS2が設けられ、そのため、基地局BS1から送信される電波の届く範囲ZE1の一部と、基地局BS2から送信される電波の届く範囲ZE2の一部とが重なる範囲である干渉範囲IZE12が生じる。
【0018】
基地局BS1及び基地局BS2はそれぞれ、本実施形態による送信機1を備えている。詳細は後述するが、基地局BS1に備えられた送信機1は、GNSS衛星SLから送信されたGNSS信号をアンテナ17で受信し、受信した信号を、送信機1の発振装置の基準信号に用いる。基地局BS1は、送信機1から出力される送信信号に基づく信号SG1を範囲ZE1に存在する端末装置MTに向けて送信する。同様に、基地局BS2に備えられた送信機1は、GNSS衛星SLから送信されるGNSS信号をアンテナ17で受信し、受信した信号を、送信機1の発振装置の基準信号に用いる。基地局BS2は、送信機1から出力される送信信号に基づく信号SG2を範囲ZE2に存在する端末装置MTに向けて送信する。
【0019】
図1(b)は、無線システムRS1において基地局BS1及び基地局BS2それぞれの通信範囲ZE1,ZE2及び干渉範囲IZE12において端末装置MTが受信する信号波形の一例を模式的に示す図である。
図1(b)中の「SG1」は、基地局BS1から送信されて干渉範囲IZE12を除く範囲ZE1(以下、単に「範囲ZE1」と称する)に到達する信号の波形を模式的に示している。
図1(b)中の「SG2」は、基地局BS2から送信されて干渉範囲IZE12を除く範囲ZE2(以下、単に「範囲ZE2」と称する)に到達する信号の波形を模式的に示している。
【0020】
信号SG1及び信号SG2は、それぞれの間で周波数のずれがあったとしても同一周波数とみなせる高精度の同一周波数の送信信号であり、それを実現するために高い周波数精度を有するクロック信号に基づいて生成されている。このため、
図1(b)に示すように、信号SG1及び信号SG2は、同位相かつ同一周波数の信号、つまり高精度の同一周波数の送信信号とみなせる。このため、干渉範囲IZE12に到達した信号SG1及び信号SG2は干渉するものの同位相かつ同一周波数の信号が重なり合うだけなので、
図1(b)に示すように、干渉範囲IZE12に到達した信号SGI12は波形歪の発生が防止され、振幅が大きくなる。これにより、端末装置MTは、干渉範囲IZE12に存在して例えば基地局BS1から送信される信号SG1を受信するように動作している場合、信号SG1に対して波形歪が生じていない信号SGI12を受信できる。
【0021】
<送信機の構成>
次に、本発明の一実施形態による基地局の送信機の概略構成について
図2を用いて説明する。
図2に示すように、本実施形態による送信機1は、例えばGNSS衛星SL(
図2では不図示、
図1参照)から送信されるGNSS信号を受信するアンテナ17、アンテナ17で受信されたGNSS信号に含まれる時刻情報に基づいて、高精度な1PPS(PPS:Pulse Per Second)のタイムパルス信号(基準信号の一例)PLSを生成する受信機13、受信機13から出力されるタイムパルス信号PLSに基づいて所定のクロック信号CKを生成し、出力する発振装置11、発振装置11から出力されるクロック信号CKに基づいて送信波CWを生成する位相同期回路(Phase Locked Loop:PLL)15を備えている。さらに、送信機1は、PLL15に接続された出力端子19を備えている。
【0022】
受信機13は、GNSS衛星SLから受信したGNSS信号に含まれる高精度な1秒間隔のタイムパルス信号PLSを生成する。GNSSの受信機13は、モジュール化して実現されている。
発振装置11は、本発明の一実施形態による発振装置であり、詳細は後述する。
【0023】
PLL15は、発振装置11から出力されるクロック信号CKに同期し、かつ所定の送信周波数の送信波(搬送波)CWを生成するようになっている。PLL15で生成された送信波CWは、出力端子19から送信機1の外部(本実施形態では基地局に設けられたアンテナ(不図示))に出力される。
【0024】
このように、送信機1は、本発明の一実施形態による発振装置11から出力されるクロック信号CKを用いて送信波CW(送信信号の一例)を生成するようになっている。
【0025】
基地局BS1,BS2(
図1(a)参照)は、送信機1から出力される送信波CWを用いて種々の情報を含む信号をそれぞれの通信範囲ZE1,ZE2に存在する端末装置MTに向けて送信する。送信波CWは、送信機1に備えられた発振装置11において必要に応じて周波数が補正されたクロック信号CKに基づく信号である。このため、基地局BS1から送信される信号と、基地局BS2から送信される信号とは、同位相かつ同一周波数の信号となる。これにより、基地局BS1から送信されて干渉範囲IZE12(
図1(a)参照)に到達する信号と、基地局BS2から送信されて干渉範囲IZE12に到達する信号とは、干渉しても同位相かつ同一周波数の信号が重なり合うだけなので、干渉範囲IZE12において波形歪が生じない(
図1(b)SGI12参照)。その結果、干渉範囲IZE12に存在する端末装置MT(
図1(a)参照)は、基地局BS1及び基地局BS2から送信される信号の一方を受信することができる。
【0026】
<発振装置の構成>
次に、本発明の一実施形態による発振装置の概略構成の一例について
図2から
図5を用いて説明する。
図2に示すように、本実施形態による発振装置11は、周波数が制御可能なクロック信号CKを発振する発振器(発振部の一例)119、受信機13(外部に相当する装置の一例)から入力されるタイムパルス信号PLSの周期毎に発振器119が発振するクロック信号CKのパルス数をカウントするカウンタ部111、発振器119の所望する発振クロック数に対するカウンタ部111がカウントしたパルス数の誤差を算出する誤差算出部113、誤差算出部113の算出結果に基づいてカウンタ部111がカウントしたパルス数に誤差が生じているか否かを判定する判定部115、判定部115がパルス数に誤差が生じていると判定した場合に、発振器119が発振するクロック信号CKの周波数を補正する補正部117を備えている。
【0027】
カウンタ部111、誤差算出部113、判定部115及び補正部117は、例えばFPGA(Field-Programmable Gate Array)や特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)などによって実現され、このFPGAやASICの機能ブロックである。
【0028】
発振器119は、例えば恒温槽付水晶発振器(Oven Controlled Xtal Oscillator:OCXO)である。発振器119は例えば、水晶発振回路を恒温槽に挿入することによって水晶振動子の周囲を一定温度に保つ構造を有している。これにより、発振器119は、発振するクロック信号CKの周波数を高精度に制御することが可能になり、高安定化が図られている。発振器119は、クロック信号CKの周波数を変更することが可能な構成を有している。
【0029】
カウンタ部111は、受信機13からのタイムパルス信号PLSと、発振器119が出力するクロック信号CKが入力される。
【0030】
図3は、カウンタ部111を説明する図であって、カウンタ部111のカウント動作を模式的に示している。
図3中の「PLS」は、受信機13からカウンタ部111に入力されるタイムパルス信号の信号波形を示している。
図3中の「CK」は、発振器119からカウンタ部111に入力されるクロック信号の信号波形を示している。
図3中の「PN」は、カウンタ部111がカウントするクロック信号CKのパルス数を示している。
【0031】
カウンタ部111は、タイムパルス信号PLSが受信機13から入力される(すなわちタイムパルス信号PLSがローレベルからハイレベルになる立ち上がりをトリガして)と、クロック信号CKのパルス数PNのカウンタ値を0(ゼロ)にリセットし、その後、クロック信号CKが例えば立ち上がるたびにパルス数PNをカウントアップする。また、カウンタ部111は、タイムパルス信号PLSの周期毎に、発振器119から入力されるクロック信号CKのパルス数PNを1からn(nは自然数)までカウントアップする。
【0032】
タイムパルス信号PLSは、例えば1秒間隔でカウンタ部111に入力される。また、発振器119から出力されるクロック信号CKの所望の周波数(以下、「標準周波数」と称する場合がある)は、例えば19.2MHzである。この場合、
図3に示すように、カウンタ部111は、タイムパルス信号PLSが入力されると、クロック信号CKのパルス数PNのカウンタ値を0(ゼロ)にリセットし、その後、クロック信号CKの立ち上がりをトリガにしてパルス数PNをカウントアップする。さらに、カウンタ部111は、次のタイムパルス信号PLSが入力されるまでの1秒間、クロック信号CKの立ち上がりをトリガにしてパルス数PNを1ずつカウントアップする。このため、カウンタ部111は、標準周波数のクロック信号CKが発振器119から入力される場合、タイムパルス信号PLSの1周期ごとに19200000個のクロック信号CKをカウントしてパルス数PNを1から19200000までカウントアップする動作を繰り返すことになる。
【0033】
図2に戻って、カウンタ部111は、受信機13からタイムパルス信号PLSが入力されるたびに、リセット直前のパルス数PNを誤差算出部113に出力する。
【0034】
誤差算出部113は、発振器119の所望する標準周波数のクロック数(以下、標準クロック数と呼ぶことがある)を記憶部(不図示)に記憶している。誤差算出部113は、標準クロック数とカウンタ部111から入力されるパルス数PNとの差を誤差として算出する。誤差算出部113は例えば、カウンタ部111から入力されるパルス数PN(すなわちカウンタ部111がカウントしたパルス数PN)を標準クロック数から減算して誤差を算出する。誤差算出部113は、算出結果(すなわち誤差の値)を判定部115及び補正部117に出力する。
【0035】
ここで、判定部115におけるパルス数PNの誤差を判定する原理について
図4及び
図5を用いて説明する。
図4は、カウンタ部111に入力されるタイムパルス信号PLS及びクロック信号CKの位相を説明するための図である。
図4中の「PLS」は、受信機13からカウンタ部111に入力されるタイムパルス信号の信号波形を示している。
図4中の「CK(0)」は、タイムパルス信号PLSの立ち上がりと同じ位相で発振器119からカウンタ部111に入力されるクロック信号CKの信号波形を示している。以下、同じ位相で入力されるタイミングを「標準タイミング」と称する場合がある。
図4中の「CK(+)」は、標準タイミングよりも早いタイミングで発振器119からカウンタ部111に入力されるクロック信号CKの信号波形を示している。すなわち、クロック信号CK(+)は、クロック信号CK(0)よりも位相が進んだ状態の信号である。
図4中の「PN(+)」は、クロック信号CK(+)に示すタイミングで発振器119からクロック信号CKが入力された場合にカウンタ部111がカウントするクロック信号CKのパルス数を示している。
図4中の「CK(-)」は、標準タイミングよりも遅いタイミングで発振器119からカウンタ部111に入力されるクロック信号CKの信号波形を示している。すなわち、クロック信号CK(-)は、クロック信号CK(0)よりも位相が遅れた状態の信号である。
図4中の「PN(-)」は、クロック信号CK(-)で示すタイミングで発振器119からクロック信号CKが入力された場合にカウンタ部111がカウントするクロック信号CKのパルス数を示している。
【0036】
受信機13から出力されるタイムパルス信号PLS及び発振器119から出力されるクロック信号CKは、いずれもアナログ信号である。アナログ信号は、どのように出力タイミングを調整しようとも、多少のタイミング誤差が発生してしまう。上述のとおり、タイムパルス信号PLSは、GNSS衛星から送信される信号を用いて生成されており、極めて時間精度の高い信号である。しかしながら、タイムパルス信号PLSに発生する出力タイミングの誤差を無くすことは困難である。同様に、クロック信号CKは、水晶振動子の周囲を一定温度に保つ構造を有し周波数精度が高精度に制御された発振器119によって発振される信号である。しかしながら、クロック信号CKに発生する出力タイミングの誤差や周波数の誤差を無くすことは困難である。
【0037】
これにより、タイムパルス信号PLS及びクロック信号CKは、それぞれの出力タイミング精度の範囲内で所望の出力タイミングに対してばらついて出力されてしまう。つまり、タイムパルス信号PLSの位相に対するクロック信号CKの位相が、所望の範囲内の位相(以下、「標準位相」と称する場合がある)に対してずれてしまう場合がある。
【0038】
ここで、
図4に示すように、クロック信号CKが標準タイミングである時刻t1にカウンタ部111に入力されるように発振器119が制御されていたとする。この場合、クロック信号CKは、クロック信号CK(0)で示すように位相が時刻t1に合ったり、クロック信号CK(+)で示すように位相αだけ進んだり、クロック信号CK(-)で示すように位相αだけ遅れたりする。
【0039】
このため、時刻t1においてタイムパルス信号PLSが受信機13からカウンタ部111に入力され、かつクロック信号CKがクロック信号CK(+)に示すタイミングでカウンタ部111に入力されたとする。この場合、標準位相に対して位相αだけ進んだ位相に対応する時刻t1(+)において、タイムパルス信号PLSの信号レベルはローレベルで(パルス数PNのカウント値をリセットされない状態)、クロック信号CKが立ち上がる。このため、カウンタ部111は、時刻t1(+)において、パルス数PNを1だけカウントアップして「n」とカウントする。時刻t1(+)と、時刻t1(+)の次にクロック信号CKが立ち上がる時刻t2(+)との間の時刻t1において、タイムパルス信号PLSのパルスが入力されるので、カウンタ部111は、パルス数PNを「0」にリセットし、時刻t2(+)においてパルス数PNを「1」とカウントする。さらに、時刻t2(+)の次にクロック信号CKが立ち上がる時刻t3(+)で、カウンタ部111は、時刻t3(+)においてパルス数PNを1だけカウントアップして「2」とカウントする。
【0040】
一方、時刻t1においてタイムパルス信号PLSが受信機13からカウンタ部111に入力され、かつクロック信号CKがクロック信号CK(-)に示すタイミングでカウンタ部111に入力されたとする。カウンタ部111は、時刻t1においてパルス数PNのカウンタ値を「0」にリセットされる。そして、標準位相に対して位相αだけ遅れた位相に対応する時刻t1(-)において、カウンタ部111は、クロック信号CKの立ち上がりでパルス数PNを「1」とカウントし、時刻t2(-)においてパルス数PNを1だけカウントアップして「2」とカウントする。さらに、時刻t2(-)の次にクロック信号CKが立ち上がる時刻t3(-)においてパルス数PNを1だけカウントアップして「3」とカウントする。
【0041】
しかし、カウンタ部111に入力されるタイムパルス信号PLSに対してクロック信号CK(0)の標準タイミングで入力された場合であったとしても、時刻t1におけるクロック信号CKの立ち上がり点のパルスについては、ジッタなどの入力タイミングのばらつきによって、カウンタ部111がカウントするか否かでクロック信号CKのパルス数PNが1クロックだけ異なる場合がある。換言すると、カウンタ部111に入力されるタイムパルス信号PLSに対してクロック信号CKの位相が標準位相であったとしても、クロック信号CKの位相ずれによって、カウンタ部111はカウントするクロック信号CKのパルス数PNが1クロックだけ異なる場合がある。
【0042】
このため、発振器119のクロック信号CKの周波数が標準周波数と同一に制御された結果、カウンタ部111に入力されるタイムパルス信号PLSに対してクロック信号CKの位相が標準位相となると、カウンタ部111には、クロック信号CKの立ち上がりタイミングばらつき(すなわち位相ばらつき)を起因とするパルス数PNのカウント誤差が生じる。このような、タイムパルス信号PLSに対して発振器119のクロック信号CKの位相が同位相となるタイミングによるクロック信号CKのカウントの誤差は、その誤差をゼロにするように補正することが極めて困難である。このため、受信機13から入力されるタイムパルス信号PLSの位相に対して発振器119から入力されるクロック信号CKの標準タイミング(すなわち標準位相)が同一である場合にカウンタ部111が、タイムパルス信号PLSの立ち上がりによるパルス数PNをリセット直後のクロック信号CKの立ち上がりでパルス数PNをカウント開始するのか、タイムパルス信号PLSの立ち上がり後に入力されるクロック信号CKの2つ目の立ち上がりでパルス数PNをカウント開始するのかを制御することは極めて困難である。
【0043】
図4では、発振器119からカウンタ部111に入力されるクロック信号CKの標準タイミングに対するタイミングずれ(すなわち標準位相に対する位相ずれ)について説明したが、受信機13からカウンタ部111に入力されるタイムパルス信号PLSが標準タイミング(すなわち標準位相)に対してずれた場合にも、カウンタ部111でカウントされるパルス数PNに誤差が生じる場合がある。
【0044】
ここで、カウンタ部111のカウント誤差について
図5を用いて説明する。
図5(a)は、受信機13から出力されるタイムパルス信号PLS及び発振器119から出力されるクロック信号CKのいずれも標準タイミング(すなわち標準位相)でカウンタ部111に入力される状態を模式的に示している。すなわち、
図5(a)は、カウンタ部111に入力されるタイムパルス信号PLSとクロック信号CKのそれぞれの立ち上がりタイミングが同時である状態を模式的に示している。
図5(b)は、発振器119から出力されるクロック信号CKが、標準タイミングでカウンタ部111に入力される状態において、クロック信号CKのカウントがずれる状態を模式的に示している。
図5(c)は、
図5(a)に示す状態に加えて、標準周波数よりも高い周波数のクロック信号CKが発振器119からカウンタ部111に入力される状態を模式的に示している。
【0045】
図5中の「PLS」は、カウンタ部111に受信機13から入力されるタイムパルス信号を示している。
図5中の「CK」は、カウンタ部111に発振器119から入力されるクロック信号CKを示している。
図5では、理解を容易するため、タイムパルス信号PLS及びクロック信号CKは、立ち上がりタイミング(すなわち立ち上がりにおける位相)のみを上向き直線矢印によって図示されている。
図5中の「PN」は、カウンタ部111がカウントするクロック信号CKのパルス数を示している。
【0046】
図5(a)に示すように、タイムパルス信号PLSの一周期にそれぞれ相当する期間T1、期間T2及び期間T3において、カウンタ部111に入力されるタイムパルス信号PLS及びクロック信号CKのそれぞれの立ち上がりタイミング(すなわち立ち上がりにおける位相)が同一であるとする。この場合、カウンタ部111はタイムパルス信号PLSの立ち上がりをトリガにしてパルス数PNを「0」にリセット後、タイムパルス信号PLSの立ち上がりと同時に立ち上がるクロック信号CKの次に入力されるクロック信号CKの立ち上がりにおいてパルス数PNを「1」とカウントする。これにより、カウンタ部111は、入力されるタイムパルス信号PLS及びクロック信号CKのそれぞれが同時に立ち上がると、期間T1、期間T2及び期間T3のいずれにおいてもクロック信号CKのパルス数PNをn個とカウントする。このように、カウンタ部111に入力されるタイムパルス信号PLS及び発振器119の立ち上がりタイミング(すなわち立ち上がりにおける位相)がタイムパルス信号PLSの各周期において同一である場合には、カウンタ部111が各周期においてカウントするクロック信号CKのパルス数PNは同一となる。また、この場合にカウンタ部111がカウントするパルス数PNは、標準クロック数と同数となる。
【0047】
図5(b)に示すように、期間T1及び期間T3において、カウンタ部111に入力されるタイムパルス信号PLS及びクロック信号CKのそれぞれの立ち上がりタイミング(すなわち立ち上がりにおける位相)が同一であるとする。一方、
図5(b)中に曲線CLで囲んで示すように、期間T2では、発振器119のクロック信号CKがジッタにより位相が早くなることによって、本来入力されるはずのクロック信号CK(破線上向き矢印参照)が期間T1において入力されたとする(実線上向き矢印参照)。さらに、期間T1,T2,T3のいずれにおいてもクロック信号CKの周波数は標準周波数であるとする。この場合、カウンタ部111は、期間T1ではクロック信号CKのパルス数PNをn+1個とカウントし、期間T2ではクロック信号CKのパルス数PNをn-1個とカウントし、期間T3ではクロック信号CKのパルス数PNをn個とカウントする。このように、カウンタ部111に入力されるクロック信号CKの立ち上がりタイミング(すなわち立ち上がりにおける位相)がばらつくことによって、クロック信号CKの周波数が標準周波数であったとしても、カウンタ部111がタイムパルス信号PLSの一周期においてカウントするクロック信号CKのパルス数PNが異なってしまう。
【0048】
図5(c)に示すように、期間T1、期間T2及び期間T3において、カウンタ部111に入力されるタイムパルス信号PLS及びクロック信号CKのそれぞれの立ち上がりタイミング(すなわち立ち上がりにおける位相)が同一であり、かつクロック信号CKの周波数が標準周波数よりも高いとする。この場合、カウンタ部111は、期間T1、期間T2及び期間T3のいずれにおいても、クロック信号CKのパルス数PNをn+β個(βはクロック信号CKの周波数に応じた自然数)とカウントする。このように、カウンタ部111に入力されるタイムパルス信号PLS及び発振器119の立ち上がりタイミング(すなわち立ち上がりにおける位相)が各周期において同一であり、かつクロック信号CKの周波数が標準周波数よりも高い場合には、カウンタ部111が各周期においてカウントするクロック信号CKのパルス数PNは同一となる。しかしながら、この場合にカウンタ部111がカウントするパルス数PNは、標準クロック数と異なる。カウンタ部111がカウントするパルス数PNは、クロック信号CKの周波数が標準周波数よりも高い場合は標準クロック数より多くなり、クロック信号CKの周波数が標準周波数よりも低い場合は標準クロック数より少なくなる。
【0049】
図5では、発振器119からカウンタ部111に入力されるクロック信号CKの標準タイミングに対するタイミングずれ(すなわち標準位相に対する位相ずれ)について説明したが、受信機13からカウンタ部111に入力されるタイムパルス信号PLSが標準タイミング(すなわち標準位相)に対してずれた場合にも、カウンタ部111は同様にクロック信号CKのパルス数PNをカウントする。
【0050】
図4及び
図5を用いて説明したように、カウンタ部111がカウントするクロック信号CKのパルス数PNは、発振器119が標準周波数で発振したとしても、クロック信号CK及びタイムパルス信号PLSの少なくとも一方の標準位相に対する位相やクロック信号CKの標準周波数に対する周波数に応じて異なる場合がある。誤差算出部113は、カウンタ部111から入力されるパルス数PNと、標準クロック数との誤差を算出する。このため、誤差算出部113で算出される算出結果は、発振器119が同一の設定に基づいてクロック信号CKを発振したとしても、クロック信号CK及びタイムパルス信号PLSの少なくとも一方の標準位相に対する位相やクロック信号CKの標準周波数に対する周波数に応じて異なる場合がある。
【0051】
図5(a)に示す期間T1,T2,T3では、カウンタ部111がカウントするクロック信号CKのパルス数PNはn個であるため、標準クロック数のn個と同数となる。このため、誤差算出部113で算出される算出結果は、いずれの期間も「0」となる。
図5(b)に示す期間T1では、カウンタ部111がカウントするクロック信号CKのパルス数PNは、n+1個であるため、標準クロック数のn個よりも「1」だけ大きい。このため、誤差算出部113で算出される算出結果は、期間T1では「-1」(=n-(n+1))となる。また、
図5(b)に示す期間T2では、カウンタ部111がカウントするクロック信号CKのパルス数PNは、n-1個であるため、標準クロック数のn個よりも「1」だけ小さい。このため、誤差算出部113で算出される算出結果は、期間T2では「+1」(=n-(n-1))となる。
図5(c)に示す期間T1,T2,T3では、カウンタ部111がカウントするクロック信号CKのパルス数PNは、n+β個であるため、標準クロック数のn個よりも「β」だけ大きい。このため、誤差算出部113で算出される算出結果は、いずれの期間も「-β」(=n-(n+β))となる。
【0052】
図5(c)に示すように、発振器119が標準周波数と異なる周波数のクロック信号CKを発振している場合には、誤差算出部113は、標準周波数に対してクロック信号CKの周波数に誤差が生じていることを示す0以外の値を算出する。
【0053】
これに対し、クロック信号CKの周波数が標準周波数と同一である場合には、発振器119は、クロック信号CKの周波数を変更する必要がない。しかしながら、
図5(b)に示すように、クロック信号CKの周波数が標準周波数と同一であったとしても、カウンタ部111に入力されるタイムパルス信号PLS及びクロック信号CKに位相差が生じることによって、誤差算出部113は、標準周波数に対してクロック信号CKの周波数に誤差が生じていることを示す0以外の値を算出する場合がある。
【0054】
このため、誤差算出部113における算出結果が0以外の値の場合に、発振器119がクロック信号CKの周波数を常に補正してしまうと、当該周波数を変更する必要がない場合にも補正してしまい、周波数の誤補正が生じてしまう。
【0055】
そこで、本実施形態による発振装置11では、判定部115は、タイムパルス信号PLSの複数の周期(本実施形態では例えば2周期)のそれぞれに対して誤差算出部113で算出された算出結果に基づいて、カウンタ部111がカウントしたパルス数PNに誤差が生じているか否かを判定する。判定部115は例えば、誤差算出部113から入力される算出結果を記憶する記憶部(不図示)を有している。判定部115は、第一記憶領域に記憶された算出結果と、誤差算出部113から入力された算出結果とを比較した結果に基づいて、カウンタ部111がカウントしたパルス数PNに誤差が生じているか否かを判定する。
【0056】
具体的には、判定部115は、比較対象の2つの算出結果を比較した結果、いずれも「0」であると判定したとする。この場合、判定部115は、タイムパルス信号PLS及びクロック信号CKのいずれも標準タイミング(すなわち標準位相)でカウンタ部111に入力されている状態(すなわち
図5(a)に示す状態)であり、カウンタ部111がカウントしたパルス数PNに誤差が生じていないと判定する。このように、判定部115は、タイムパルス信号PLS及びクロック信号CKが同位相であると判定した場合はクロック信号CKのパルス数PNに誤差が生じていないと判定する。
【0057】
また、判定部115が比較対象の2つの算出結果を比較した結果、一方の値及び他方の値の正負が異なるか、一方の値及び他の方の値が「0」であり残余の値が「+1」または「-1」であったとする。この場合、判定部115は、タイムパルス信号PLSに対してクロック信号CKの位相が標準タイミングにおいて立ち上がりタイミング(すなわち立ち上がりにおける位相)がずれている状態(
図5(b)に示す状態)であり、クロック信号CKの周波数の補正が不要と判定する。このように、判定部115は、タイムパルス信号PLS及びクロック信号CKが完全に同位相でない(すなわち、出力タイミングの精度の範囲内において位相のずれがある)場合でも、当該同位相の場合と同様に、カウンタ部111がカウントしたパルス数PNに誤差が生じていないと判定する。つまり、判定部115は、タイムパルス信号PLSに対してクロック信号CKの位相が標準タイミングにおいて同位相と見做す。これにより、タイムパルス信号PLSの位相とクロック信号CKの位相とのずれが、タイムパルス信号PLS及びクロック信号CKの少なくとも一方の出力タイミングの精度の範囲内である場合には、判定部115は、タイムパルス信号PLS及びクロック信号CKが同位相であると判定する。
【0058】
さらに、判定部115は、比較対象の2つの算出結果を比較した結果、いずれも正の値又は負の値であると判定したとする。この場合、判定部115は、クロック信号CKの周波数が標準周波数からずれている状態(すなわち
図5(c)に示す状態)であり、カウンタ部111がカウントしたパルス数PNに誤差が生じていると判定する。
【0059】
このように、判定部115は例えば、タイムパルス信号PLSの連続する2つの周期のそれぞれにおいて誤差算出部113で算出された算出結果を比較することにより、カウンタ部111がカウントしたパルス数PNに誤差が生じているか否かを判定することができる。判定部115は、判定結果を補正部117(
図2参照)に出力する。
【0060】
図2に戻って、補正部117は、誤差算出部113から出力される算出結果と、判定部115から出力される判定結果とが入力される。例えば、補正部117は、カウンタ部111がカウントしたパルス数PNに誤差が生じていることを示す判定結果が判定部115から入力された場合、誤差算出部113から入力される算出結果をクロック信号CKの周波数を補正するための補正値として発振器119に出力する。一方、補正部117は、カウンタ部111がカウントしたパルス数PNに誤差が生じていないことを示す判定結果が判定部115から入力された場合、誤差算出部113から入力される算出結果ではなく、クロック信号CKの周波数を補正が不要であることを示す補正値(例えば「0」)を発振器119に出力する。発振器119は、補正部117から出力される補正値が入力される。
【0061】
発振器119は、補正部117から入力される補正値に基づいてクロック信号CKの周波数を変更する。発振器119は、クロック信号CKの周波数を補正が不要であることを示す補正値が補正部117から入力された場合には、現状の発振周波数を維持してクロック信号CKを発振し続ける。一方、発振器119は、誤差算出部113での算出結果が補正値として補正部117から入力された場合には、当該補正値に応じてクロック信号CKの周波数を変更する。例えば、「-1」の補正値は、現状のクロック信号CKの周波数が1クロック分だけ標準周波数よりも高いことを示している。このため、発振器119は、補正部117から入力される補正値が「-1」である場合には、1クロック分だけ周波数が低くなるようにクロック信号CKの周波数を制御する。また、例えば、「+1」の補正値は、現状のクロック信号CKの周波数が1クロック分だけ標準周波数よりも低いことを示している。このため、発振器119は、補正部117から入力される補正値が「+1」である場合には、1クロック分だけ周波数が高くなるようにクロック信号CKの周波数を制御する。このように、発振器119は、クロック信号CKの周波数が標準周波数に対してずれた場合にだけ、クロック信号CKの周波数を変更できる。
【0062】
以上説明したように、本実施形態による発振装置11は、周波数が制御可能なクロック信号CKを発振する発振器119と、受信機13から入力されるタイムパルス信号PLSの周期毎に発振器119が発振するクロック信号CKのパルス数をカウントするカウンタ部111と、設定されたクロック数に対するカウンタ部111がカウントしたパルス数の誤差を算出する誤差算出部113と、誤差算出部113の算出結果に基づいて、カウンタ部111がカウントしたパルス数に誤差が生じているか否かを判定する判定部115と、を備えている。
【0063】
このような構成を備える発振装置11は、「受信機から出力される周期の時間の精度が高いタイムパルス信号及び発振器から出力されるクロック信号の少なくとも一方の出力タイミング精度に起因するカウンタ部でのパルス数の誤認識が引き起こすクロック信号の周波数の誤補正」という問題を回避し、クロック信号CKの周波数の誤差を補正する精度の向上を図ることができる。これにより、発振装置11は、発振信号であるクロック信号CKの周波数の精度を保つことができ、特に発振クロックの信号が高周波の場合により高い効果を得られる。
【0064】
また、本実施形態による送信機1は、上記実施形態による発振装置11から出力されるクロック信号CKを用いて送信波CWを生成するようになっている。これにより、送信機1は、クロック信号CKの周波数の誤差を補正する精度の向上を図ることにより、送信波CWの周波数の精度の向上を図ることができる。
【0065】
本発明は、上記実施形態に限らず、種々の変形が可能である。
上記実施形態による発振装置11は、クロック信号CKの立ち上がりタイミングで動作するように構成されているが、本発明はこれに限られない。例えば、発振装置11は、クロック信号CKの立ち下がりタイミングで動作するように構成されていてもよい。この場合、上記実施形態における「クロック信号CKの立ち上がり」を「クロック信号CKの立ち下がり」と読み替えることにより、発振装置11は、上記実施形態による発振装置11と同様に動作し、同様の効果が得られる。
【0066】
上記実施形態による発振装置11では、タイムパルス信号PLSは、信号レベルがローレベルからハイレベルに立ち上がりをトリガにしているが、本発明はこれに限られない。例えば、タイムパルス信号PLSは、信号レベルがハイレベルからローレベルに立ち下がりをトリガにしてもよい。この場合、上記実施形態における「タイムパルス信号PLSの立ち上がり」を「タイムパルス信号PLSの立ち下がり」と読み替えることにより、発振装置11は、上記実施形態による発振装置11と同様に動作し、同様の効果が得られる。
【0067】
上記実施形態による発振装置11では、判定部115は、タイムパルス信号PLSの2周期における誤差算出部での算出結果を比較するように構成されているが、3周期以上における誤差算出部での算出結果を比較するように構成されていてもよい。
【0068】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0069】
1 送信機
11 発振装置
13 受信機
15 位相同期回路(PLL)
17 アンテナ
19 出力端子
111 カウンタ部
113 誤差算出部
115 判定部
117 補正部
119 発振器
BS1,BS2,BS51,BS52 基地局
CK クロック信号
CW 送信波
IZE5,IZE12 干渉範囲
MT 端末装置
PLS タイムパルス信号
PN パルス数
RS1,RS5 無線システム
SL GNSS衛星
ZE1,ZE2,ZE51,ZE52 通信範囲