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特開2022-14830業務用洗浄ノズル管バーリング方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022014830
(43)【公開日】2022-01-20
(54)【発明の名称】業務用洗浄ノズル管バーリング方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 19/08 20060101AFI20220113BHJP
   B21D 28/10 20060101ALI20220113BHJP
   B21D 28/28 20060101ALI20220113BHJP
   B21D 28/24 20060101ALI20220113BHJP
   B21D 28/34 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
B21D19/08 D
B21D28/10 Z
B21D28/28
B21D28/24 C
B21D28/34 F
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020117415
(22)【出願日】2020-07-07
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】520250338
【氏名又は名称】有限会社三愛金型
(74)【代理人】
【識別番号】100160657
【弁理士】
【氏名又は名称】上吉原 宏
(72)【発明者】
【氏名】荒川 忍
【テーマコード(参考)】
4E048
【Fターム(参考)】
4E048EA02
4E048KA01
4E048KA02
4E048KA04
4E048LB03
4E048LB07
(57)【要約】
【課題】
本発明は、小径の管状部材でも長手方向へ複数のフランジの成形を可能とする業務用の食器洗浄機における洗浄ノズルの製造方法及び装置の提供を課題とするものである。
【解決手段】
本発明は、管状部材の長手方向へ連続した複数の洗浄ノズルを設けるためのバーリング方法であって、相互に接触し合う傾斜面を有する二分割構造の内型を、前記管状部材の内部空間に摺動可能に内挿し、打ち抜き及び又はバーリングのためのパンチにより押圧し、洗浄ノズル用フランジを成形し、後に前記内型を前記内部空間から引抜くことを基本構成とし、薄肉の環状部材に複数のフランジを用途に応じて内側、又は外側に成形できる、業務用洗浄ノズル管バーリング方法、及び装置とした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状部材(10)の長手方向へ連続した複数の洗浄ノズル(20)を設けるためのバーリング方法であって、
相互に接触し合う傾斜面(31)を有する二分割構造の内型(30)を、前記管状部材(10)の内部空間(11)に摺動可能に内挿し、
打ち抜き(40)及び又はバーリング(50)のためのパンチ(60)により押圧し、洗浄ノズル用フランジ(70)を成形後に前記内型(30)を前記内部空間(11)から別々に引抜くことを特徴とする業務用洗浄ノズル管バーリング方法(1)。
【請求項2】
前記内型(30)の一方を押し込むことで、前記傾斜面(31)により他方の前記内型(30)に配置した前記パンチ(60)を周方向に対して内側から外側へ押し出して、前記洗浄ノズル用フランジ(70)を前記管状部材(10)の周の外側に凸状に成形をすることを特徴とする請求項1に記載の業務用洗浄ノズル管バーリング方法(1)。
【請求項3】
前記内型(30)の一方には上下に回動する回動機構(32)が設けられ、前記内型(30)の一方を押し込むことで二分割された前記内型(30)の当接部に雌型(33)を形成し、該雌型(33)へ前記パンチ(60)を押圧して
前記洗浄ノズル用フランジ(70)を前記管状部材(10)の周の内側に向かう凹状に成形することを特徴とする請求項1に記載の業務用洗浄ノズル管バーリング方法(1)。
【請求項4】
前記洗浄ノズル用フランジ(70)を前記管状部材(10)の周の内側に向かう凹状に成形した後、該洗浄ノズル用フランジ(70)の外周にOリング受け部をプレスにより成形することを特徴とする請求項3に記載の業務用洗浄ノズル管バーリング方法(1)。
【請求項5】
管状部材(10)の長手方向へ連続した複数の洗浄ノズル(20)を設けるためのバーリング装置であって、
相互に接触し合う傾斜面(31)を有する二分割構造の内型(30)を、前記管状部材(10)の内部空間(11)に摺動可能に内挿し、
打ち抜き(40)及び又はバーリング(50)のためのパンチ(60)により押圧して洗浄ノズル用フランジ(70)を成形後に前記内型(30)を前記内部空間(11)から別々に引抜くことを特徴とする業務用洗浄ノズル管バーリング装置(2)。
【請求項6】
前記内型(30)の一方を押し込むことで、前記傾斜面(31)により他方の前記内型(30)に配置した前記ポンチ(60)を周方向に対して内側から外側へ押し出して、前記洗浄ノズル用フランジ(70)を前記管状部材(10)の周の外側に向かう凸状に成形をすることを特徴とする請求項4に記載の業務用洗浄ノズル管バーリング装置(2)。
【請求項7】
前記内型(30)の一方には上下に回動する回動機構(32)が設けられ、前記内型(30)の一方を押し込むことで二分割された前記内型(30)の当接部に雌型(33)を形成し、該雌型(33)へ前記パンチ(60)を押圧して
前記洗浄ノズル用フランジ(70)を前記管状部材(10)の周の内側に向かう凹状に成形をすることを特徴とする請求項4に記載の業務用洗浄ノズル管バーリング装置(2)。
【請求項8】
前記洗浄ノズル用フランジ(70)を前記管状部材(10)の周の内側に向かう凹状に成形した後、該洗浄ノズル用フランジ(70)の外周にOリング受け部をプレスにより成形することを特徴とする請求項3に記載の業務用洗浄ノズル管バーリング装置(2)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塑性加工技術に関し、詳しくは管状部材に複数個所から水流を噴射するノズルを備えるためのフランジを成型するバーリング技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
業務用の食器洗浄機は日々進化を遂げ、収容室内の食器を満遍なく奇麗に広範囲洗浄することはもちろん、洗浄ノズルや天井に付着した洗剤成分やすすぎ水を残さないようにしたり、洗剤濃度を低減して、使用水量も減少させるなど環境にも考慮するなど、求められる機能は多岐に及ぶものである。このような業務用の食器洗浄機において要ともいえるのが水流を噴射する洗浄ノズルであり、係る洗浄ノズルはメンテナンス面やコスト面に大きく影響するため、飲食店等において使用する業務用となれば極めてその重要性の高い構成部材といえるものである。
【0003】
係る洗浄ノズルは管状部材や平板からプレス成型したアーム状部材に装着されたり、直接成型されるが、この場合において管状部材の軽量化を図るため薄肉鋼管を用いると、ノズルを螺設するためのネジ部の深さが足らず、ナットやフランジを溶接したりしなければならない。しかし、溶接時の熱影響により管状部材の変形やノズルの装着位置精度が不安定となるなどの問題が生じる。そこで、バーリングにより薄肉でもフランジ部を成型し、ネジ部を形成することが有効と考えられる。ところが、バーリングは絞るためのパンチによる押圧が必要なため小径管では加工できず、また、平面にバーリングを施したものでは平面部に水滴が残りやすく好ましくない。
【0004】
なお、バーリング加工は、板金に開けた穴の周囲に立ち上がり(フランジ)をつける加工のことで、フランジ加工とも呼ばれ、板厚の薄い板金に穴を開けてネジをはめ込む場合、穴の開口部に立ち上がりを作ることで、ネジが掛かるネジ山を確保し、はめ込みを強化するものである。バーリング加工の製品は食品業界でよく利用されており、その最大の理由はバーリング加工の滑らかな形状は、詰まりにくく、また、汚れにくいという点にある。さらにRの方が直角で溶接するよりも強度が高いので、修理や修繕のコストを削減でき、衛生面や強度の事を考えると、バーリング加工のメリットは多い。
【0005】
そこで、従来からも、種々の技術提案がなされている。例えば、発明の名称を「分岐マニホールドの製造方法」とする技術が開示されている(特許文献1参照)。具体的には、「分岐継手を接続する継手孔を容易かつ効率良く 形成し、分岐マニホールドを容易に製作する。」ことを課題とし、解決手段として、「分岐マニホールドの製造方法は、筒状の管体に、管体の外周面から内周面に向かってその肉厚方向に貫通する下孔を形成する下孔形成工程と、管体の外周面側において、下孔の周囲に面取加工を施して面取り部を形成する面取り部形成工程と、面取り部が形成された下孔へパンチを挿入して冷間バーリング加工することにより、下孔を拡径するとともに、管体の内周面から径方向内側に突出する筒状部を形成するバーリング加工工程と、バーリング加工された下孔にシール面を形成するシール面形成工程と、を有する。」という発明が公開され公知技術となっている。係る技術は、下穴へパンチを挿入してバーリング加工することにより管状部材の内周面から径方向内側に突出するフランジ部を形成できる点、及び管状部材の長さ方向に間隔を開けた数箇所にバーリングを施す点において、本発明と一部共通する点があるといえる。しかしながら、特許文献1に記載の技術は、管状部材の内側には型が無く、管状部材に空けた下穴の周囲に面取り部を形成し、内径側の下穴に近づくほどその肉厚を小さくし、これによって変形しやすくするものであり、比較的肉厚のある管状部材が対象であって、小径の薄肉管材には向くものではない。また、複数のバーリングについても変形に対する応力により全体の歪が生じるものと考えられる。従って、本発明の課題を解決するに至っていない。
【0006】
また、発明の名称を「薄肉ジョイント部材の製造方法」とする技術が開示されている(特許文献2参照)。具体的には、「製品強度を落としたりコスト高を招いたりすることなく、薄肉でしかもナット側についてはナット機能を十分に担えるジョイント部材の製造方法を提供すること。」を目的課題とし、解決手段として、「2本のパイプをジョイント部材どうしの間に保持し、ボルトナット締結することで前記2本のパイプを連結するパイプ連結用メタルジョイントのナット側薄肉ジョイント部材の製造方法において、素材として低炭素鋼にボロンが添加されたボロン鋼製の薄肉の金属板を用い、バーリング加工を施して筒状体に成形し、その筒状体に転造タップ加工を施してネジ部を形成した後に、焼入れ処理を施すことでナット機能を担わせたことを特徴とする製造方法。」という発明が公開され公知技術となっている。係る技術は、薄肉軽量化や製造工程を減らせる点において本発明と一部共通する。しかしながら、特許文献2に記載の技術は、バーリング加工に焼き入れ処理を施し足り、素材自体にボロンを添加したボロン鋼製の薄肉の金属板を用いるなど課題を解決する技術的手段は異なるものである。また、管材の外周面に突出したフランジを形成することはできても、本発明のように内側へ向かうフランジも形成することができるものではない。
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、本発明者は、小径の管状部材でも内側に内挿する内型を分割構造とし、傾斜面を相互に設ければこれらの問題を解決できるのではないかと着想の下、本発明を完成するに至ったものである
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-165548号
【特許文献2】再表2011/055485号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、小径の管状部材でも長手方向へ複数のフランジの成形を可能とする業務用の食器洗浄機における洗浄ノズルの製造方法及び装置の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、管状部材の長手方向へ連続した複数の洗浄ノズルを設けるためのバーリング方法であって、相互に接触し合う傾斜面を有する二分割構造の内型を、前記管状部材の内部空間に摺動可能に内挿し、打ち抜き及び又はバーリングのためのパンチにより押圧し、洗浄ノズル用フランジを成形し、後に前記内型を前記内部空間から引抜く構成を採用する。
【0010】
また、本発明は、前記内型の一方を押し込むことで、前記傾斜面により他方の前記内型に配置した前記パンチを周方向に対して内側から外側へ押し出して、前記洗浄ノズル用フランジを前記管状部材の周の外側に凸状に成形をする構成を採用することもできる。
【0011】
また、本発明は、前記内型の一方には上下に回動する回動機構が設けられ、前記内型の一方を押し込むことで二分割された前記内型の当接部に雌型を形成し、該雌型へ前記パンチを押圧して前記洗浄ノズル用フランジを前記管状部材の周の内側に向かう凹状に成形する構成を採用することもできる。
【0012】
請求項4
前記洗浄ノズル用フランジを前記管状部材の周の内側に向かう凹状に成形した後、該洗浄ノズル用フランジの外周にOリング受け部をプレスにより成形する構成を採用することもできる。
【0013】
また、本発明は、管状部材の長手方向へ連続した複数の洗浄ノズルを設けるためのバーリング装置であって、相互に接触し合う傾斜面を有する二分割構造の内型を、前記管状部材の内部空間に摺動可能に内挿し、打ち抜き及び又はバーリングのためのパンチにより押圧し、洗浄ノズル用フランジを成形し、後に前記内型を前記内部空間から引抜く構成を採用することもできる。
【0014】
また、本発明は、前記内型の一方を押し込むことで、前記傾斜面により他方の前記内型に配置した前記ポンチを周方向に対して内側から外側へ押し出して、前記洗浄ノズル用フランジを前記管状部材の周の外側に向かう凸状に成形をする構成を採用することもできる。
【0015】
また、本発明は、前記内型の一方には上下に回動する回動機構が設けられ、前記内型の一方を押し込むことで二分割された前記内型の当接部に雌型を形成し、該雌型へ前記パンチを押圧して前記洗浄ノズル用フランジを前記管状部材の周の内側に向かう凹状に成形をする構成を採用することもできる。
【0016】
請求項8
また、本発明は、前記洗浄ノズル用フランジを前記管状部材の周の内側に向かう凹状に成形した後、該洗浄ノズル用フランジの外周にOリング受け部をプレスにより成形する構成を採用することもできる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る業務用洗浄ノズル管バーリング方法及び装置によれば、小径の管状部材であってもバーリング加工によりフランジの成形を施すことができるという優れた効果を発揮する。
【0018】
また、本発明に係る業務用洗浄ノズル管バーリング方法及び装置によれば、タップを立てるのに十分な深さの下穴を管状部材の長手方向に複数設けることができるという優れた効果を発揮する。
【0019】
また、本発明に係る業務用洗浄ノズル管バーリング方法及び装置によれば、従来の、肉厚であった管状部材を薄肉にできることから軽量化が可能になるという優れた効果を発揮する。
また、本発明に係る業務用洗浄ノズル管バーリング方法及び装置において、内型の一方を押し込むことで、傾斜面により他方の内型に配置したパンチを周方向に対して内側から外側へ押し出して、洗浄ノズル用フランジを管状部材の周の外側に凸状に成形をする構成を採用した場合には、をナット等の螺合部材を溶接することなく、バーリングにより十分なネジ有効深さの下穴が得られる洗浄ノズル用フランジを管状部材の外側に設けられるので、熱影響を受けない洗浄ノズル又は洗浄ノズル管を得ることができるという優れた効果を発揮するものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る業務用洗浄ノズル管バーリング方法の基本構成を説明する基本構成説明図である。
図2】請求項2及び請求項5に係る業務用洗浄ノズル管バーリング方法及び装置の構成説明図である。
図3】請求項3及び請求項6に係る業務用洗浄ノズル管バーリング方法及び装置の構成説明図である。
図4】請求項2及び請求項5に係る業務用洗浄ノズル管バーリング方法及び装置の他の実施例を説明する実施例説明図である。
図5】請求項3及び請求項6に係る業務用洗浄ノズル管バーリング方法及び装置を用いた応用例を説明する応用例説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、管状部材の長手方向へ連続した複数の洗浄ノズルを設けるためのバーリング方法であって、相互に接触し合う傾斜面を有する二分割構造の内型を、前記管状部材の内部空間に摺動可能に内挿し、打ち抜き及び又はバーリングのためのパンチにより押圧し、洗浄ノズル用フランジを成形し、後に前記内型を前記内部空間から引抜く構成とすることを最大の特徴とするものである。
以下、図面に基づいて説明する。但し、係る図面に記載された形状や構成に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の創作として発揮する効果の得られる範囲内で変更可能である。
【0022】
図1は、本発明に係る業務用洗浄ノズル管バーリング方法の基本構成を説明する基本構成説明図である。
【0023】
業務用洗浄ノズル管バーリング方法1は、管状部材の長手方向へ連続した複数の洗浄ノズルを設けるためのバーリング方法であって、相互に接触し合う傾斜面を有する二分割構造の内型を、前記管状部材の内部空間に摺動可能に内挿し、打ち抜き及び又はバーリングのためのパンチにより押圧し、洗浄ノズル用フランジを成形し、後に前記内型を前記内部空間から引抜く構成を採用する。具体的には、素材となる管状部材を金型へセットするセット工程Aと、位置決めをする位置決め工程Bと、上型による抑える上型抑え工程Cと、内型の一報を押し込む押し込み工程Dと、上型を取り外す上型取り外し工程Eと、一方の内型を引き抜く引き抜き工程Fと、管状部材のピッチにおけるピッチ送り工程Gからなるものである。
【0024】
業務用洗浄ノズル管バーリング装置2は、業務用の食器洗い機に用いられる洗浄ノズルを取り付けるための管に噴射ノズルを装着するための雌ネジ部の有効ネジ数を確保し、下穴となる部分にフランジを立ち上げるために絞り加工を行うバーリングに関するものである。特に細くて肉厚の薄い管の場合、従来のバーリング加工ではフランジを立ち上げることが難しく、ナットやフランジを溶接してノズルを装着する等の手段を講じていた。しかし、溶接等によると、熱による影響や寸法精度の問題が生じる。本発明に係る業務用洗浄ノズル管バーリング装置2は、これらの問題を解決するものであり、具体的手段として相互に接触し合う傾斜面を有する二分割構造の内型を、前記管状部材の内部空間に摺動可能に内挿し、打ち抜き及び又はバーリングのためのパンチにより押圧し、洗浄ノズル用フランジを成形後に前記内型を前記内部空間から引抜く構成である。
【0025】
管状部材10は、圧力を加えて塑性変形するものであれば特に限定されるものでは無く、プレスによる絞り加工が難しいといわれている薄肉のものや小径の管状であっても対応可能である。素材としては鋼管やステンレス鋼管と、幅広く利用することが可能である。業務用の食器洗い機に用いられる洗浄ノズル管では、通常、ネジ部の関係から3mm以上の厚さを有する鋼管が用いられ、係る鋼管は重量的にも重いものである。これに対し、本発明に係る業務用洗浄ノズル管バーリング方法1、及び装置2に用いられる管状部材10は、例えば、直径30mmから40mm程度で、肉厚が1.2mmと、小径管で薄肉のステンレス鋼管とすることができる。
【0026】
内部空間11は、管状部材10の内側の空洞部の領域を意味し、係る内部空間には分割された内型が挿通される領域となる。なお、係る内部空間には余計な突起物が存在しないことが望ましく、つなぎ目の無いシームレス或いは引き抜き鋼管であればこの点については問題が無くなる。但し、鋼板を円筒状に加工し溶接した後、引き抜き架空などの外観では、継ぎ目が目立たないものや、つなぎ目に突起があっても、例えばリーマ加工等の切削により段差等を取り除けば係る内部空間11は形成可能である。
【0027】
洗浄ノズル20は、ノズル管に所定の間隔において配置される水流の噴射部であり、具体的には小径の孔を設けて水流の噴射状態を決定する部材である。ノズル管内部には水圧が作用しており、小径の断面を有する孔が存在することにより、係る孔からは、大きな断面積から小さな断面積に変化することにより流速を増して、噴射するものである。本発明に係る業務用洗浄ノズル管バーリング方法及び装置に用いられる洗浄ノズル20は、雄ネジ部を有し、係る雄ネジ部を螺合させるための雌ネジ部となるフランジを形成するものである。従来はネジ部を管状部材の肉厚によって成形していたため、どうしても重くなってしまう。そこで、十分な有効ネジを確保しつつ、軽量化を図るために薄肉とする洗浄ノズル20の下穴となるフランジを形成し、係る洗浄ノズル20の雄ネジ部が有効ネジ数で少なくとも3以上が欲しいところである。そのためには、円筒形にフランジ部を立ち上げると立ち上げ高さが○○mmが必要となる。従って、洗浄ノズルの雄ネジ部は少なくとも有効ネジ部で、4.5から5は欲しいところである。なお、あまり雄ネジ部が長すぎると流体抵抗が大きくなって乱流が発生し、綺麗に整流された水流の噴射ができなくなるので注意が必要である。
【0028】
内型30は、管状部材の内部空間に挿入され、二分割構造の内側に配置される金型であり、係る二分割された内型30は何れも傾斜面を有し、一方のスライドして押し出す側の内型30Aが他方の押し出される側の内型30Bとの関係において下型となるものである。具体的には、二つの構成が考えられる。一つは、一方のスライドして押し出す側の内型30Aのスライドにより、他方の押し出される側の内型30Bが押し上げられ、パンチが管状部材の内部から外側に向かって凸状のフランジを形成する構成であり、もう一つは、一方の内型30Aのスライドにより他方の押し出される側の内型30Bと当接して雌型を形成し、ここに外側から内側に向かってパンチを押圧することで凹状のフランジを形成する構成とがある。
【0029】
傾斜面31は、一方のスライドして押し出す側の内型30Aを押し込むことで、他方の押し出される側の内型30Bに配置したパンチ60を周方向に対して内側から外側へ向かって押し出して、洗浄ノズル用フランジ70を管状部材10の周の外側に凸状に成形させる構成と、押し出される側の内型30Bに上下に回動する回動機構32を設け、内型30の一方を押し込むことで二分割された内型30の当接部に雌型33を形成させる構成とがある。
【0030】
打ち抜き40は、通常はバーリングとは別工程として下穴を開けるためにプレスによる穴抜き、或いは切削加工によっても可能であるが、いずれにしても工程数が増えるため、下穴打ち抜きパンチとバーリングパンチを一体化して図に示すような形状の複合型のパンチ60とし、1工程で加工する方法が好適である。この方法(ピアスバーリングと呼ばれる)ではダイはバーリングに対応しているため、大きな穴となり、そのため、下穴打ち抜きはダイの無い状態で加工する形となる。下穴打ち抜きのパンチ60の切れ刃がシャープなうちは、スクラップは通常の穴抜きのように分離して落ちるが、切れ刃の状態が悪くなると、一部が分離せず穴抜きかすがバーリングの縁に付いて残るトラブルが発生することも考え得る。しかし、係る問題は薄肉鋼管の場合では問題とはならず、一体化した複合型のパンチ60を用いることが可能であり、効果的に打ち抜き40を行えるものである。
【0031】
バーリング50は、通常、板金に開けた穴の周囲に立ち上がり(フランジ)をつける加工のことである。フランジ加工とも呼ばれ、板厚の薄い板金に穴を開けてネジをはめ込む場合、穴の開口部に立ち上がりを作り、ネジが掛かるネジ山を確保し、はめ込みを強化するものである。そして、バーリング加工の製品は食品業界でよく利用されており、その最大の理由はバーリング加工の滑らかな形状が、詰まりにくく、また、汚れにくいという点にある。さらにRの方が直角で溶接するよりも強度が高いので、修理や修繕のコストを削減でき、衛生面や強度の事を考えても好適な加工方法といえる。
【0032】
パンチ60は、プレス機等からの押圧により加工物へ押し付け、塑性変形させるための押圧部材である。図面に示したパンチ60は、下穴抜きとバーリングパンチを一体化した複合型のパンチ60を用いる例として示したものである。但し、係る例に限定されることなく、下穴抜き用のパンチ60とバーリング用のパンチ60をそれぞれ使い分けても良い。そしてこの場合は上型や内型によって形成される雌型(ダイ)も使い分けても好適である。
【0033】
洗浄ノズル用フランジ70は、管状部材に開けた穴の周囲に立ち上がり(フランジ)を持たせた部分である。薄肉鋼管等の管状部材に穴を開けてネジをはめ込む場合、穴の開口部に立ち上がりを作ることで、ネジが掛かるネジ山を確保し、はめ込みを強化するものである。
【0034】
図2は、請求項2及び請求項5に係る業務用洗浄ノズル管バーリング方法及び装置の構成説明図である。
一方の、スライドして押し出す側の内型30Aを押し込むことで、傾斜面31により、他方の、押し出される側の内型30Bに配置したパンチ60を周方向に対して内側から外側へ押し出し、洗浄ノズル用フランジ70を管状部材10の周の外側に凸状に成形をする構成である。
【0035】
図3は、請求項3及び請求項6に係る業務用洗浄ノズル管バーリング方法及び装置の構成説明図である
【0036】
回動機構32は、本発明に係る、業務用洗浄ノズル管バーリング方法1、及び装置2において、内型30の一方を押し込むことで二分割された内型30の当接部に雌型33を形成し、雌型33へパンチ60を押圧して洗浄ノズル用フランジ70を管状部材10の周の内側に向かう凹状に成形する構成を採用した場合に押し出される側の内型30Bに設けられる機構であり、これは、バーリング後に管状部材の内側に成形されたフランジに内型が逃げるための逃げ溝34の深さまで首を振らせるために設けられるものである。即ち、連続して複数の洗浄ノズル用フランジ70を設けると型抜きができなくなるからである
【0037】
雌型33は、2分割された内型30が当接することによって、所謂ダイセットとなり、所定のクリアランスをもって押圧するパンチ60と押圧されて管状部材が絞られるフランジ部を受ける部分となる。
【0038】
逃げ溝34は、バーリング後に管状部材の内側に成形されたフランジに対し内型30を引き抜けるように逃がすための溝である。即ち、複数の洗浄ノズル用フランジ70を管状部材の内側に成形すると内型30と当たってしまい、引き抜くことができなくなるため係る溝を設けることと、内型30の二分割構造、及び、回動機構32により、引き抜けるようにするものである。
【0039】
図4は、請求項2及び請求項5に係る業務用洗浄ノズル管バーリング方法及び装置の他の実施例を説明する実施例説明図である。図4の実施例は、別体の洗浄用ノズルを装着するためのネジ部とせず、フランジ自体が洗浄用ノズルとなる構成例である。即ち、管状部材の内側から外側に向かって、膨らませたフランジをノズル本体とし、先端部にその突出した本体の先端部にスリットを入れ、これを洗浄用ノズルとしたものである。係る構成を採用した実施例では、繋ぎ目が無くなだらかで、エッジ部が存在しないため、洗浄後の水切れが良く、ゴミ等の付着の無い業務用洗浄ノズル管とすることができる。
【0040】
図5は、請求項3及び請求項6に係る業務用洗浄ノズル管バーリング方法及び装置を用いた応用例を説明する応用例説明図であり、図5(a)から(b)までが基本的にはフランジを成形するバーリング加工を示し、図5(d)から図5(f)までが、Oリング受け部を加工した状態を示す。係る応用例は、洗浄ノズルに漏れ留めのOリングを装着可能とする構成の業務用洗浄用のノズル管とする例である。係る実施例ではOリング受け部を独立した部品として生産でき、また、ノズル管の素材に対して異種素材とすることもできるので、ステンレスのみならず、真鍮、鉄、砲金など多様である。
【0041】
バーリング下穴12は、図5(b)において、バーリング50前に独立して穴あけ加工する場合のバーリング用下穴である。なお、バーリング下穴加工とバーリング加工を一体のパンチ60で行う場合は、図5(b)の状態が無くなり、図5(c)の構成となる。
【0042】
Oリング受け80は、洗浄ノズル20と洗浄ノズル用フランジ70との間で、水漏れしないように入れるパッキンを装着するための受け部であり、係るOリング受け80を設けることが好適である。
【0043】
なお、前記バーリング加工に際し、管状部材10の両端から中心方向に向かって、プレスをかけながら行うことも好適である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明に係る業務用洗浄ノズル管バーリング方法及び装置によれば、飲食提供事業を営む店舗等に設置される食器洗浄機に用いられる洗浄ノズル製造に貢献するとともに、製造コストを軽減し、メンテナンス性の向上によるランニングコストの削減にも資することから産業上利用可能性は高いと思慮されるものである。
【符号の説明】
【0045】
1 業務用洗浄ノズル管バーリング方法
2 業務用洗浄ノズル管バーリング装置
10 管状部材
11 内部空間
12 バーリング下穴
20 洗浄ノズル
30 内型
30A スライドして押し出す側の内型
30B 押し出される側の内型
31 傾斜面
32 回動機構
33 雌型
34 逃げ溝
40 打ち抜き
50 バーリング
60 パンチ
70 洗浄ノズル用フランジ
80 Oリング受け
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2021-01-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直径30mmから40mmで肉厚が1.2mmのステンレス鋼管による管状部材(10)の長手方向へ連続した複数の洗浄ノズル(20)を備えるためのバーリング方法であって、
相互に接触し合う傾斜面(31)を有する二分割構造の内型(30)を、前記管状部材(10)の内部空間(11)に摺動可能に内挿し、
前記内型(30)の一方を押し込むことで、前記傾斜面(31)により他方の前記内型(30)に配置したピアスバーリング用複合型のパンチ(60)を周方向に対して内側から外側へ押し出し、その際、前記管状部材(10)の外側は上型を用いて押さえられ、
打ち抜き(40)及びバーリング(50)のための前記パンチ(60)により前記洗浄ノズル(20)の雄ネジ部と螺合させるための十分な有効ネジ部を確保する雌ネジを備えさせる洗浄ノズル用フランジ(70)を成形後に、前記内型(30)を前記内部空間(11)から別々に引抜き、前記管状部材(10)の周の外側に凸状に成形をすることを特徴とする業務用洗浄ノズル管バーリング方法(1)。
【請求項2】
直径30mmから40mmで肉厚が1.2mmのステンレス鋼管による管状部材(10)の長手方向へ連続した複数の洗浄ノズル(20)を設けるためのバーリング装置であって、
相互に接触し合う傾斜面(31)を有する二分割構造の内型(30)を、前記管状部材(10)の内部空間(11)に摺動可能に内挿し、
前記内型(30)の一方が押し込まれることで、他方の前記内型(30)に当接し、前記傾斜面(31)により他方の前記内型(30)に配置したピアスバーリング用複合型のパンチ(60)を周方向に対して内側から外側へ押し出し、その際、前記管状部材(10)の外側は上型を用いて押さえられ、
打ち抜き(40)及びバーリング(50)のための前記パンチ(60)により押圧して前記洗浄ノズル(20)の雄ネジ部と螺合させるための十分な有効ネジ部を確保する雌ネジを備えさせる洗浄ノズル用フランジ(70)を成形後に前記内型(30)を前記内部空間(11)から別々に引抜き、前記管状部材(10)の周の外側に凸状に成形をすることを特徴とする業務用洗浄ノズル管バーリング装置(2)。