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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022148300
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】配線カバー
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
H02G3/04 018
H02G3/04 037
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021049922
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000150006
【氏名又は名称】日本総合住生活株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001623
【氏名又は名称】弁理士法人真菱国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野村 尚彦
【テーマコード(参考)】
5G357
【Fターム(参考)】
5G357DA06
5G357DC03
5G357DC08
5G357DD06
5G357DD14
(57)【要約】
【課題】低コストで簡単に製造することができると共に、現場加工を含めて施工が容易な配線カバーを提供する。
【解決手段】壁面WWに添わせて設けた配線CAを覆う木製の配線カバー10であって、配線CAの収容空間を構成する、正面板部21および一対の側面板部22から成る断面「コ」字状の外郭形成材20Aと、各側面板部21の内側に添わせて設けた、壁面WWへのビス止めのための一対の取付け補強材30Aと、を有し、外郭形成材30Aは、正面板部21と一対の側面板部22との境界にV溝24を形成した板状のMDF材を、「コ」字に折り曲げて形成されている。
【選択図】 図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面に添わせて設けた配線を覆う木製の配線カバーであって、
配線の収容空間を構成する、正面板部および一対の側面板部から成る断面「コ」字状の外郭形成材と、
前記各側面板部の内側に添わせて設けた、壁面へのビス止めのための一対の取付け補強材と、を有し、
前記外郭形成材は、前記正面板部と一対の前記側面板部との境界にV溝を形成した板状のMDF材を、「コ」字に折り曲げて形成されていることを特徴とする配線カバー。
【請求項2】
前記各取付け補強材は、断面方形のMDF材で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の配線カバー。
【請求項3】
前記外郭形成材の表面には、ポリオレフィンのシートが貼着されていることを特徴とする請求項1または2に記載の配線カバー。
【請求項4】
前記外郭形成材は、前記正面板部の表面を設置面として、埋込み型のコンセントおよび埋込み型の壁スイッチを埋込み設置可能な、幅および高さ寸法を有していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の配線カバー。
【請求項5】
前記外郭形成材の幅が、110mm~300mmであることを特徴とする請求項4に記載の配線カバー。
【請求項6】
壁面のコーナー部に添わせて設けた配線を覆う木製の配線カバーであって、
配線の収容空間を構成する、正面板部および側面板部から成る断面「L」字状の外郭形成材と、
前記側面板部の内側に添わせて設けた、壁面へのビス止めのための取付け補強材と、を有し、
前記外郭形成材は、前記正面板部と前記側面板部との境界にV溝を形成した板状のMDF材を、「L」字に折り曲げて形成されていることを特徴とする配線カバー。
【請求項7】
前記取付け補強材は、断面方形のMDF材で形成されていることを特徴とする請求項6に記載の配線カバー。
【請求項8】
前記外郭形成材の表面には、ポリオレフィンのシートが貼着されていることを特徴とする請求項6または7に記載の配線カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面に添わせて設けた配線を覆う配線カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の配線カバーとして、内側部材と外側部材とを組み合わせて成るものが知られている(特許文献1参照 )。
この配線カバーは、底面体および左右の内壁面体から成る内側部材と、天面体および左右の外壁面体から成る外側部材と、外側部材の表面に施してなる装飾と、を備えている。左右の内壁面体および左右の外壁面体は、それぞれ外側に湾曲した形状を有すると共に、可撓性を有している。これにより、壁面等に貼着した内側部材に対し外側部材が着脱自在に装着され、その内部に複数本の配線が収容される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-180355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような、従来の配線カバーでは、樹脂の成型技術により製造は容易であるが、現場での加工には不向きであった。例えば、露出のコンセントや壁スイッチに、配線カバー内のケーブルを接続する場合、内側部材の内壁面体および外側部材の外壁面体に、長方形や長円径の開口部を形成するが、このような樹脂への加工は煩雑なものとなっていた。
【0005】
本発明は、低コストで簡単に製造することができると共に、現場加工を含めて施工が容易な配線カバーを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の配線カバーは、壁面に添わせて設けた配線を覆う木製の配線カバーであって、配線の収容空間を構成する、正面板部および一対の側面板部から成る断面「コ」字状の外郭形成材と、各側面板部の内側に添わせて設けた、壁面へのビス止めのための一対の取付け補強材と、を有し、外郭形成材は、正面板部と一対の側面板部との境界にV溝を形成した板状のMDF材を、「コ」字に折り曲げて形成されていることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、サドル等で壁面に固定された配線(ケーブル)を、外郭形成材で覆うと共に、一対の取付け補強材を介して、外郭形成材を壁面にビス止め固定することで、壁面の配線が隠蔽された状態となる。
この場合、外郭形成材をMDF材で構成することにより、断面「コ」字状の外郭形成材を、木質材でありながら低コストで簡単に製造することができる。また、木質材(MDF材)の外郭形成材は、現場加工を含めて施工が容易であり、かつ狂いの生じない形状の安定性を有する。
【0008】
この場合、各取付け補強材は、断面方形のMDF材で形成されていることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、MDF材の取付け補強材は、接着剤等により外郭形成材に簡単に接着することができ、取付け補強材を含んで配線カバー自体を低コストで簡単に製造することができる。また、取付け補強材にビス用の下穴を形成する場合や切欠き部を形成する場合に、割れ等が生ずることが無く、簡単且つ精度良く加工を行うことができる。
【0010】
また、外郭形成材の表面には、ポリオレフィンのシートが貼着されていることが好ましい。
【0011】
ポリオレフィンのシート、いわゆるオレフィンシートは、化粧板を形成すべく各色のものが用意されている。
この構成によれば、壁面の色に合わせたラミネートの化粧板を形成し、この化粧板から外郭形成材を、低コストで簡単に製造することができる。また、外郭形成材の耐久性を向上させることができる。
【0012】
また、外郭形成材は、正面板部の表面を設置面として、埋込み型のコンセントおよび埋込み型の壁スイッチを埋込み設置可能な、幅および高さ寸法を有していることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、埋込み型のコンセントや埋込み型の壁スイッチは、必要に応じて、外郭形成材の表面に埋込み設置された状態となる。これにより、コンセント廻りや壁スイッチ廻りがすっきりとしたデザインとなり、内装の意匠性が損なわれることがない。
【0014】
また、外郭形成材の幅が、110mm~300mmであることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、全体として極めて幅広で、柱や梁の一部と見間違えるような設置形態(意匠)となる。このため、一般的なモールに比して目立ち難く、違和感の無い配線カバーを構成することができる。
【0016】
本発明の他の配線カバーは、壁面のコーナー部に添わせて設けた配線を覆う木製の配線カバーであって、配線の収容空間を構成する、正面板部および側面板部から成る断面「L」字状の外郭形成材と、側面板部の内側に添わせて設けた、壁面へのビス止めのための取付け補強材と、を有し、外郭形成材は、正面板部と側面板部との境界にV溝を形成した板状のMDF材を、「L」字に折り曲げて形成されていることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、サドル等で壁面のコーナー部に固定された配線(ケーブル)を、天面に突き当てるようにして外郭形成材で覆うと共に、取付け補強材を介して外郭形成材を壁面にビス止め固定することで、壁面の配線がコーナー部に隠蔽された状態となる。
この場合、外郭形成材をMDF材で構成することにより、断面「L」字状の外郭形成材を、木質材でありながら低コストで簡単に形成することができる。また、木質材(MDF材)の外郭形成材は、現場加工を含めて施工が容易であり、かつ狂いの生じない形状の安定性を有する。
【0018】
この場合、取付け補強材は、断面方形のMDF材で形成されていることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、MDF材の取付け補強材は、接着剤等により外郭形成材に簡単に接着することができ、取付け補強材を含んで配線カバー自体を低コストで簡単に製造することができる。また、取付け補強材にビス用の下穴を形成する場合や切欠き部を形成する場合に、割れ等が生ずることが無く、簡単且つ精度良く加工を行うことができる。
【0020】
また、外郭形成材の表面には、ポリオレフィンのシートが貼着されていることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、壁面の色に合わせたラミネートの化粧板を形成し、この化粧板から外郭形成材を、低コストで簡単に製造することができる。また、外郭形成材の耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態に係るAタイプの4種類の配線カバーであって、A第1配線カバーの斜視図(a)、A第2配線カバーの斜視図(b)、A第3配線カバーの斜視図(c)およびA第4配線カバーの斜視図(d)である。
図2】実施形態に係るBタイプの配線カバーの斜視図である。
図3】配線カバーの製造方法を表した説明図であって、ラミネート工程の説明図(a)、小割カット工程の説明図(b)、V溝カット工程の説明図(c)および曲げ・接着工程の説明図(d)である。
図4】配線カバーの施工手順を説明するための施工例の図であって、施工前における壁面の正面図(a)、施工後における壁面の正面図(b)および断面図(c)である。
図5】配線カバーの施工手順(前半)を表した説明図であって、経路の計測状態を表した図(a)、配線カバーの切断状態を表した図(b)、ビス止め用の下穴の穿孔状態を表した図(c)、切欠き部の形成状態を表した図(d)である。
図6】配線カバーの施工手順(後半)を表した説明図であって、配線器具の設置開口部の形成状態を表した図(e)、配管カバーの設置状態を表した図(f)、コンセントの設置状態を表した図(g)およびビス隠しの状態を表した図(h)である。
図7】台所における配線カバーの施工例を表した説明図であって、改修前の図(a)および改修後の図(b)である。
図8】居室における配線カバーの施工例を表した説明図であって、改修前の図(a)および改修後の図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付の図面を参照して、本発明の一実施形態に係る配線カバーについて説明する。この配線カバーは、改修工事等により生ずる壁面露出配線の保護カバーであるが、カバー自体に埋込み型のコンセントや壁スイッチ等をも設置可能とすべく、一般的のもの(モール)よりも極端に幅広に形成されている。また、このコンセント等が設置された幅広の配線カバーは、結果として目立ち難くく、室内の意匠性をも向上する。本実施形態では、収容する配線ケーブルの多い(2連配線)少ない(1連配線)の関係や、新設するコンセントや壁スイッチにおいて既設のスイッチボックスが利用可能か否か等により、形態の異なる5種類の配線カバーが用意されている。
【0024】
[実施形態]
図1は、5種類の配線カバー10のうちの断面「コ」字状のAタイプカバー10Aであり、図2は、断面「L」字状のBタイプカバー10Bである。また、図1(a)はAタイプカバー10AのうちのA第1カバー10Aa、図1(b)はA第2カバー10Ab、図1(c)はA第3カバー10Ac、図1(d)はA第4カバー10Adである。
【0025】
Bタイプカバー10Bは、配線ケーブルCA(配線)の保護カバーの機能のみを有している。一方、Aタイプカバー10Aは、配線ケーブルCAの保護カバーの機能の他、配線ケーブルCAに連なるコンセントPSや壁スイッチWS等の配線器具の設置ベースの機能を有している。そして、Aタイプカバー10AおよびBタイプカバー10Bは、いずれも壁面WWに直接固定され、壁面WWとの間に配線ケーブルCAの収容空間を構成する。なお、Aタイプカバー10Aは断面「コ」字状であり、Bタイプカバー10Bは断面「L」字状であるが、いずれも定尺は2430mmとなっている。
【0026】
A第1カバー10Aaは、その幅(W)×高さ(H)寸法が115mm×24mmであり、主としてコンセントPSや壁スイッチWS等の1連の配線器具(1連の配線ケーブルCA)を設置する場合にあって、これらコンセントPSや壁スイッチWSにおける既設のスイッチボックスSB(裏ボックス)が利用できる場合に用いられる。すなわち、埋込み型の既設のコンセントPSや既設の壁スイッチWSと同位置に、配線カバー10を介して新たにコンセントPSや壁スイッチWSを設ける場合に、このA第1カバー10Aaが用いられる(図7(b)参照)。
【0027】
A第2カバー10Abは、その幅(W)×高さ(H)寸法が115mm×34mmであり、主としてコンセントPSや壁スイッチWS等の1連の配線器具(1連の配線ケーブルCA)を設置する場合にあって、これらコンセントPSや壁スイッチWSにおける既設のスイッチボックスSBが利用できない場合に用いられる。すなわち、埋込み型の既設のコンセントPSや既設の壁スイッチWSと異なる位置に、配線カバー10を介して新たにコンセントPSや壁スイッチWSを設ける場合、或いはコンセントPSや壁スイッチWSを増設する場合に、このA第2カバー10Abが用いられる(図7(b)参照)。
【0028】
A第3カバー10Acは、その幅(W)×高さ(H)寸法が200mm×24mmであり、主としてインターホンIPやコンセントPS+テレビ端子等の2連の配線器具を設置する場合にあって、これらコンセントPS等において既設のスイッチボックスSBが利用できる場合に用いられる(図7(b)参照)。
【0029】
A第4カバー10Adは、その幅(W)×高さ(H)寸法が200mm×34mmであり、主としてインターホンIPやコンセントPS+テレビ端子等の2連の配線器具を設置する場合にあって、これらコンセントPS等において既設のスイッチボックスSBが利用できる場合に用いられる(図7(b)参照)。
【0030】
Bタイプカバー10Bは、その幅(W)×高さ(H)寸法が39mm×24mmであり、主として壁面WWと天井面SWとの為すコーナー部分において、配線ケーブルCAの保護カバーとして用いられる(図7(b)参照)。
【0031】
[Aタイプカバー]
ここで、図1を参照して、Aタイプカバー10Aの構造について説明する。上述のように、A第1カバー10Aa、A第2カバー10Ab、A第3カバー10AcおよびA第4カバー10Adは、サイズは異なるものの、同一の基本構造を有している。よって以下、A第1カバー10Aa例にAタイプカバー10Aの構造について説明する(図1(a)参照)。
【0032】
図1(a)に示すように、Aタイプカバー10A(A第1カバー10Aa)は、正面板部21および一対の側面板部22から成る断面「コ」字状の外郭形成材20Aと、各側面板部22の内側に添わせて設けた一対の取付け補強材30Aとを有している。そして、これら外郭形成材20Aおよび取付け補強材30Aは、いずれも木質材であるMDF(median density fiberboard)で形成されている。なお、MDFに代えて、外郭形成材20Aおよび取付け補強材30Aをハードボード等の木質材で形成するようにしてもよい。
【0033】
外郭形成材20Aを構成する正面板部21および側面板部22は、壁面WWとの間に配線ケーブルCAの収容空間を構成するものであり、正面板部21と一対の側面板部22との境界にV溝24を形成した4mm厚の板状のMDF材を、「コ」字に折り曲げて形成されている(図3(c)および(d)参照)。また、「コ」字の外郭形成材20Aの表面には、オレフィンシート35(ポリオレフィンのシート)が貼着されている。詳細は後述するが、オレフィンシート35は、Aタイプカバー10Aの製造初期段階で外郭形成材20Aの表面に貼着される。
【0034】
この場合、オレフィンシート35は、多色の製品が市販されており、本実施形態では、施工対象となる壁面WWの色に合わせ同色のものを選択するようにしている。なお、壁面WWが布貼りのものにおいては、オレフィンシート35の上に、同一の布貼りとするようにしている。
【0035】
各取付け補強材30Aは、正面板部21と一対の側面板部22との内側コーナー部分において、側面板部22に添わせ且つ端面が側面板部22の端面と面一となるように貼着されている。また、各取付け補強材30Aは、Aタイプカバー10Aを壁面WWにビス止めする部位であり、ビス止め用に15mmの幅を有している(実施形態のもの(A第1カバー10Aa)は、縦×横=20mm×15mm)。詳細は後述するが、実際のビス止めでは、取付け補強材30Aの幅方向中間位置に、正面板部21を貫通してバカ穴51を形成し(図5(c)参照)、このバカ穴51を介して壁面WWにビス57を螺合しビス止めとする(図6(f)参照)。
【0036】
このようなAタイプカバー10Aは、配線ケーブルCAを収容するだけでなく、コンセントPSや壁スイッチWS等の配線器具の設置ベースの機能を有している。また、結果として、柱や梁の一部を模したものとなっている。このため、実施形態のAタイプカバー10Aは、その幅が115mmおよび200mmであるが、1連から3連までの配線器具を考慮すると、110mm~300mmであることが好ましい。
【0037】
[Bタイプカバー]
次に、図2を参照して、Bタイプカバー10Bの構造について説明する。同図に示すように、Bタイプカバー10Bは、正面板部21および側面板部22から成る断面「L」字状の外郭形成材20Bと、側面板部22の内側に添わせて設けた取付け補強材30Bと、を有している。この場合も、外郭形成材20Bおよび取付け補強材30Bは、木質材であるMDF(median density fiberboard)で形成されている。この場合も、MDFに代えて、外郭形成材20Bおよび取付け補強材30Bをハードボード等の木質材で形成するようにしてもよい。
【0038】
外郭形成材20Bを構成する正面板部21および側面板部22は、主として壁面WWおよび天井面SWとの間に配線ケーブルCAの収容空間を構成するものであり、正面板部21と側面板部22との境界にV溝24を形成した4mm厚の板状のMDF材を、「L」字に折り曲げて形成されている。また、「L」字状の外郭形成材20Bの表面には、オレフィンシート35が貼着されている。この場合も、オレフィンシート35は、Bタイプカバー10Bの製造初期段階で外郭形成材20Bの表面に貼着される。
【0039】
取付け補強材30Bは、正面板部21と側面板部22との内側コーナー部分において、側面板部22に添わせ且つ端面が側面板部22の端面と面一となるように貼着されている。また、取付け補強材30Bは、Bタイプカバー10Bを壁面WWにビス止めする部位であり、ビス止め用に15mmの幅を有している(実施形態のものは、縦×横=20mm×15mm)。
【0040】
[製造方法]
次に、図3を参照して、配線カバー10の製造方法についてAタイプカバー10Aを例に説明する。
配線カバー10の製造方法は、基材の表面にオレフィンシート35を貼るラミネート工程(図3(a))と、このラミネートの化粧板を各種配線カバー10に合わせて小割カットする小割カット工程(図3(b))と、小割カットした化粧板の裏面にV溝24を形成するV溝カット工程(図3(c))と、V溝24の部分で化粧板を折り曲げると共に取付け補強材30Aを接着する曲げ・接着工程(図3(d))と、を備えている。
【0041】
図3(a)のラミネート工程では、外郭形成材20A(20B)となる1220mm×2430mm×4mmのMDF基材41に接着剤を塗布した後、プレスローラでオレフィンシート35を貼着する。すなわち、ポリオレフィンのラミネート化粧板40を形成する。オレフィンシート35は、設置対象となる壁面WWの色彩に合わせた色彩のものが選択される。
【0042】
図3(b)の小割カット工程では、上記のラミネート化粧板40を配線カバー10のサイズに応じて小割カットする。この場合、A第1カバー10Aa用では、115mm+24mm+24mm=163mm幅に小割カットする。同様に、A第2カバー10Ab用では183mm幅に、A第3カバー10Ac用では263mm幅に、A第4カバー10Ad用では283mm幅に、またBタイプカバー10B用では65mmに、小割カットする。
【0043】
一方、取付け補強材30A(30B)用の小割カットでは、1220mm×2430mm×15mmのMDF基材45を用い、これを20mm幅(A第1カバー10Aa用、A第3カバー10Ac用およびBタイプカバー10B用)または30mm幅(A第2カバー10Ab用およびA第4カバー10Ad用)に小割カットする。
【0044】
図3(c)のV溝カット工程では、小割カットされたカット化粧板40aの裏面に、オレフィンシート35を残してV溝24を形成する。すなわち、カット化粧板40aにおいて、正面板部21となる部分と一対の側面板部22となる部分の境界に、溝加工を施す。言うまでもないが、Aタイプカバー10Aでは左右の2箇所にV溝24が形成され、Bタイプカバー10Bでは1箇所にV溝24が形成される。なお、V溝24の溝角度は90°である。
【0045】
図3(d)の曲げ・接着工程では、V溝24を含むカット化粧板40aの幅方向端部における必要箇所に接着剤を塗布すると共に、側面板部22となる幅方向端部を角度90°折り曲げる。併せて、この部分に小割カットされた取付け補強材30Aを導入し、ローラープレスで厚締めする。その後、梱包工程に移行する。
【0046】
なお、上記の製造工程において、ラミネート工程ではラミネートラインを用い、小割カット工程ではランニングソーを用い、V溝カット工程および曲げ・接着工程ではVカットラインを用いることが好ましい。
【0047】
[施工手順]
次に、図4の施工例とその説明図である図5および図6とを参照して、配線カバー10の基本的な施工手順について説明する。
配線カバー10の基本的な施工手順は、
手順1:配線カバー10を設置する経路の寸法を計測する。
手順2:計測した寸法に基づいて配線カバー10を切断する。
手順3:配線カバー10に穴加工および切欠き加工を行う。
手順4:配線カバー10に配線器具のための加工を行う。
手順5:配線カバー10を壁面WWに取り付ける。
手順6:配線器具等を配線カバー10に設置する。
手順7:機能試験を実施すると共に、配線カバー10のビス隠しを行う。
ものとなる。
【0048】
図4の施工例において、図4(a)は、配線カバー10を設置する前の壁面WWの状態を表している。一方、図4(b)および(c)は、配線カバー10を設置した状態の壁面WWの正面図および断面図である。この施工例では、コンクリートの梁Bと壁とが連続する内壁面(壁面WW)に、新たに壁スイッチWSおよびコンセントPSを設置するものであり、配線ケーブルCAの元側は、天井面SWに沿わせるようにして導入(配線)される。梁Bに対し壁面WWはセットバックしており、天井面SWからこれらに添わせて配線ケーブルCAおよび配線カバー10が設置される。
【0049】
床面FWから天井面SWまでの縦方向の配線カバー10には、Aタイプカバー10Aが用いられ、天井面SWに沿って設置される横方向の配線カバー10には、Bタイプカバー10Bが用いられるようになっている。なお、壁スイッチWSは、床面SWから1200mmの高さ位置に、コンセントPSは、床面SWから200mmの高さ位置に設置される。
【0050】
手順1では、同一の配線カバー10について、その経路を直線部分単位で計測する。次に、この計測結果に基づいて、定尺の配線カバー10に墨出し(線引き)を行う。施工例では、コンベックス等により、床面FWから梁Bの下面までの上下寸法、壁面WWからの梁Bの張出し寸法、および梁Bの下面から天井面SWまでの上下寸法、をそれぞれ採寸し(図5(a)参照)、この寸法を定尺の配線カバー10に落とし込む。
【0051】
手順2では、墨出し線に倣って配線カバー10を切断する(図5(b)参照)。切断には、電動丸ノコを用いることが好ましい。また、切断後は、各配線カバー10をその設置位置に当てがって、切断寸法が正しいことを確認することが好ましい。
【0052】
手順3では、配線カバー10の取付け補強材30A(30B)の部分に、ビス止め用のバカ穴51を穿孔する(図5(c)参照)。また、配線カバー10が直角に接合する部分等に切欠き部52を形成する。配線カバー10のビス止め(壁固定)は、仕様上Aタイプカバー10Aでは、1.5m未満は四隅の4箇所、1.5m以上は四隅+中間の6箇所とし、Bタイプカバー10Bでは、1.5m未満は両端部の2箇所、1.5m以上は両端部+中間の3箇所としている。したがっ、壁面に設置のAタイプカバー10Aでは6箇所に、梁Bの下面および正面に設置のAタイプカバー10Aでは各4箇所に、天井下に設置のBタイプカバー10Bでは2箇所に、それぞれ取付け補強材の位置にビス止め用のバカ穴51が形成される(図4参照)。
【0053】
一方、図5(d)に示すように、梁Bの正面のAタイプカバー10Aと、Bタイプカバー10Bとの接続部分では、Aタイプカバー10Aの上端部側面に、Bタイプカバー10Bに連通する方形の切欠き部52が形成される。切欠き部52は、Bタイプカバー10Bの収容部断面に倣って、Aタイプカバー10Aの側面板部22および取付け補強材30Aが切欠きカットされる。また、壁面WWに設置のAタイプカバー10Aと梁Bの下面設置のAタイプカバー10Aとの接続部分では、下面設置のAタイプカバー10Aの端部において、正面板部21が方形に切欠きカットされる。なお、配線カバー10が付鴨居や巾木と交差する場合にも、切欠きカットすることが好ましい。
【0054】
手順4では、配線カバー10(Aタイプカバー10A)に、コンセントPSや壁スイッチWS等の配線器具の設置開口部54を形成する(図6(e)参照)。設置開口部54は、長円形に墨出しし、ノコのまわし引き或いは小判型電動ホルソーで、切り抜くように形成する。
【0055】
手順5では、配線ケーブルCAを収容しながら、配線カバー10を壁面WWにビス止めする。上述のように、隅部を主体に配線カバー10を複数個所に亘って壁面WWにビス止め固定する(図6(f)参照)。複数の配線カバー10は、配線ケーブルCAの元側から先に倣って順に設置してゆくようにする。なお、梁Bの正面設置のAタイプカバー10Aでは、その下端面が開放された状態となる。本実施形態では、各種の配線カバー10に対応して、板状の小口カバー55が用意されており、このAタイプカバー10Aの下端面には、対応する小口カバー55が接着される(図6(f)参照)。
【0056】
固定用のビス57は、頭部が皿型のものを用い、頭部の表面が配線カバー10の表面と面一となるようにねじ込むようにする。なお、ビス止めする壁面WWが、コンクリートの躯体である場合にはプラグを、石膏ボードである場合にはボードアンカーを、木材である場合には木ネジを、それぞれ用いるようにする。
【0057】
手順6では、コンセントPSおよび壁スイッチWSを配線カバー10に設置する。コンセントPSの設置では、予め壁面WWの所定の位置にコンセントPSのスイッチボックスSBを固定し、配線カバー10に設置した後、コンセント本体PSa、プラ枠PSbおよびプレートPSc等を取り付けるようにする(図6(g)参照)。また、壁スイッチWSにおいても、コンセントPSと同様である。なお、埋込み型の既設のコンセントPSや既設の壁スイッチWSと同位置に、配線カバー10を介して新たにコンセントPSや壁スイッチWSを設ける場合には、配線カバー10の表面に対しスイッチボックスSBが深い位置となるため、生ずる間隙(20mm程度)に継枠(図示省略)を設けるようにしている。
【0058】
手順7では、機能試験を実施すると共に、配線カバー10のビス隠しを行う。配線カバー10のビス隠しは、ビス57の皿ネジ頭の表面に、配線カバー10の表面と同色の円形シール58を貼着する(図6(h)参照)。
【0059】
[施工例]
次に、図7および図8を参照して、配線カバー10の施工例について説明する。
図7は、台所・インターホン廻りの施工例である。同図(a)に示すように、既設(施工前)の台所の壁面WWには、インターホンIPが設置されて、またインターホンIPの近傍に埋込み型の壁スイッチWSが設置されている。埋込みボックスEBからのインターホン線IPCは、モール配線の形態で配線され、いったん天井面SWまで配線されてからインターホンIPに至っている。
【0060】
この施工例の改修では、モール配線に沿って新たに配線カバー10を設置すると共に、既設の壁スイッチWSのスイッチボックスSBを生かしつつ、壁スイッチWSを新設する。また、既設のインターホンIPに代えて、モニター付きのインターホンIPを新設する。さらに、開口部(引戸)の上側の壁面WWに大型機器用のコンセントPSを増設する。
【0061】
図7(b)に示すように、既設の埋込みボックスEBから天井面SWに至るインターホン線IPCのモール配線に代えて、この部分には、既設の埋込みボックスEBを生かしつつ、A第1カバー10Aa(115mm×24mm)を設置する。また、インターホンIP廻りは、モニター付きのインターホンIPおよび壁スイッチWSの新設を考慮し、天井面SWから床面FWにかけてA第3カバー10Ac(200mm×24mm)を設置する。A第1カバー10AaとA第3カバー10Acとの間には、天井面SWに沿わせてBタイプカバー10B(39mm×24mm)を設置する。
【0062】
A第3カバー10Acの表面には、新設のモニター付きのインターホンIPおよび新設の壁スイッチWSが設置される。新設の壁スイッチWSは、既設の壁スイッチWSと同位置に設けられ、既設の壁スイッチWSのスイッチボックスSBは、新設の壁スイッチWSに転用される。この場合には、スイッチボックスSBに上記の継枠が装着される。また、大型機器用のコンセントPSの増設では、完全な形での新設となるため、A第2カバー10Ab(115mm×34mm)を設置する。なお、壁スイッチWSの下方にコンセントPSを増設する場合には、A第3カバー10Acに代えて、A第4カバー10Ad(200mm×34mm)が設置されることとなる。
【0063】
図8の施工例は、居室スイッチ・コンセント増設の施工例である。同図(a)に示すように、この居室では、窓の近傍にコンセントPSが1箇所設けられている。この場合には、既設のコンセントPSと同位置に新設のコンセントPSを設置すると共に、引戸の近傍において、壁スイッチWSおよびコンセントPSを増設する。
【0064】
図8(b)に示すように、窓近傍の既設のコンセントPSの位置に新設のコンセントPSを設けるべく、この部分の天井面SWから床面FWにかけてA第1カバー10Aa(115mm×24mm)を設置する。この場合も、既設の壁スイッチWSのスイッチボックスSBを転用しつつ、A第1カバー10Aaに新設の壁スイッチWSを設置する。また、引戸の近傍において、壁スイッチWSおよびコンセントPSを増設すべく、この部分の天井面SWから床面FWにかけてA第2カバー10Ab(115mm×34mm)を設置する。
【0065】
このA第2カバー10Abには、床面FWから200mmの位置にコンセントPSを、また床面FWから1200mmの位置に壁スイッチWSを設置する。そして、A第1カバー10AaとA第2カバー10Abとの間において、天井面SWに沿わせるようにBタイプカバー10B(39mm×24mm)を設置する。
【0066】
以上のように、本実施形態のAタイプカバー10Aによれば、外郭形成材20Aおよび一対の取付け補強材30AがMDF材で形成されているため、木質材でありながら低コストで簡単に製造することができる。また、木質材(MDF材)の外郭形成材20Aおよび取付け補強材30Aは、現場加工を含めて施工が容易であり、かつ狂いの生じない形状の安定性を有する。しかも、埋込み型のコンセントPSや壁スイッチWSを設置することができるだけでなく、幅広で目立ち難くいすっきりしたデザインとなり、室内の意匠性が損なわれることがない。
【0067】
また、本実施形態のBタイプカバー10Bによれば、外郭形成材20Bよび取付け補強材30BがMDF材で形成されているため、木質材でありながら低コストで簡単に製造することができる。また、木質材(MDF材)の外郭形成材20Bおよび取付け補強材30Bは、現場加工を含めて施工が容易であり、かつ狂いの生じない形状の安定性を有する。
【符号の説明】
【0068】
10…配線カバー、10A…Aタイプカバー、10Aa…A第1カバー、10Ab…A第2カバー、10Ac…A第3カバー、10Ad…A第4カバー、10B…Bタイプカバー、20A,20B…外郭形成材、21…正面板部、22…側面板部、24…V溝、30A,30B…取付け補強材、35…オレフィンシート、40…ラミネート化粧板、CA…配線ケーブル、PS…コンセント、WS…壁スイッチ、WW…壁面、SW…天井面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8