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特開2022-148303監視カメラ、画像処理方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022148303
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】監視カメラ、画像処理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/232 20060101AFI20220929BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
H04N5/232
H04N5/225 400
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021049933
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】320008672
【氏名又は名称】i-PRO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古賀 雅士
(72)【発明者】
【氏名】池田 淳
【テーマコード(参考)】
5C122
【Fターム(参考)】
5C122DA11
5C122EA12
5C122FB16
5C122FB17
5C122FB20
5C122FC01
5C122FC02
5C122FG05
5C122FG06
5C122FH11
5C122FH14
5C122FK23
5C122GC07
5C122GC14
5C122GC53
5C122GE08
5C122HB01
5C122HB05
5C122HB07
(57)【要約】
【課題】撮像された被写体の画像の画質を劣化させる現象が発生した場合でも、被写体の画像の画質を改善して観察業務の効率化を図る。
【解決手段】監視カメラは、複数の画素を有して構成され、霧あるいは靄を介して入射される被写体からの光に対応する青色成分信号、赤色成分信号および緑色成分信号のそれぞれを画素ごとに取得する撮像素子と、被写体と撮像素子との間に配置され、被写体からの光のうち特定波長以上の波長を有する特定波長光を通過する光学フィルタと、特定波長光に対応する画素ごとの青色成分信号、赤色成分信号および緑色成分信号と特定波長光に対応する画素ごとの青色成分信号とのうちいずれかに基づいて、被写体の撮像画像を生成して出力するプロセッサと、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素を有して構成され、霧あるいは靄を介して入射される被写体からの光に対応する青色成分信号、赤色成分信号および緑色成分信号のそれぞれを前記画素ごとに取得する撮像素子と、
前記被写体と前記撮像素子との間に配置され、前記被写体からの光のうち特定波長以上の波長を有する特定波長光を通過する光学フィルタと、
前記特定波長光に対応する前記画素ごとの青色成分信号、赤色成分信号および緑色成分信号と前記特定波長光に対応する前記画素ごとの青色成分信号とのうちいずれかに基づいて、被写体の撮像画像を生成して出力するプロセッサと、を備える、
監視カメラ。
【請求項2】
複数の画素を有して構成され、霧あるいは靄を介して入射される被写体からの光に対応する青色成分信号、赤色成分信号および緑色成分信号のそれぞれを前記画素ごとに取得する撮像素子と、
前記被写体からの光に対応する前記画素ごとの赤色成分信号に基づいて輝度信号を生成するとともに、前記被写体からの光に対応する前記画素ごとの青色成分信号、赤色成分信号および緑色成分信号に基づいて特定の色相に対応する色を着色した第1画素信号と前記特定の色相に対応する色が着色されない第2画素信号とを生成するプロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、前記輝度信号と前記第1画素信号と前記第2画素信号とに基づいて、被写体の撮像画像を生成して出力する、
監視カメラ。
【請求項3】
前記撮像素子により撮像される画像の注目領域を特定する第2プロセッサ、をさらに備え、
前記プロセッサは、特定された前記注目領域で前記霧あるいは靄が発生していると判定した場合に、前記注目領域に発生している前記霧あるいは靄の程度に応じて、前記特定波長光に対応する前記画素ごとの青色成分信号、赤色成分信号および緑色成分信号と前記特定波長光に対応する前記画素ごとの青色成分信号とのうちいずれかを選択する、
請求項1に記載の監視カメラ。
【請求項4】
前記撮像素子により撮像される画像の注目領域を特定する第2プロセッサ、をさらに備え、
前記プロセッサは、特定された前記注目領域で前記霧あるいは靄が発生していると判定した場合に、前記輝度信号、前記第1画素信号および前記第2画素信号を生成する、
請求項2に記載の監視カメラ。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記注目領域の画像部分の高域空間周波数の減少量が第1の閾値以上である場合に、前記注目領域に前記霧あるいは靄が発生していると判定する、
請求項3または4に記載の監視カメラ。
【請求項6】
前記第2プロセッサは、学習処理により形成された人工知能を用いた学習済みモデルに基づいて、前記注目領域を特定する、
請求項3または4に記載の監視カメラ。
【請求項7】
前記特定波長は、560±20[ナノメートル]である、
請求項1に記載の監視カメラ。
【請求項8】
前記被写体からの光のうち近赤外光を遮断する第2光学フィルタ、をさらに備え、
前記プロセッサは、所定の条件を満たす場合に、前記第2光学フィルタを通過した光に基づいて、前記被写体の撮像画像を生成する、
請求項1または2に記載の監視カメラ。
【請求項9】
監視カメラにより実行される画像処理方法であって、
前記監視カメラが備える光学フィルタにより、霧あるいは靄を介して入射される被写体からの光のうち特定波長以上の波長を有する特定波長光を通過するステップと、
前記監視カメラが備える複数の画素を有して構成される撮像素子により、前記特定波長光に対応する青色成分信号、赤色成分信号および緑色成分信号のそれぞれを前記画素ごとに取得するステップと、
前記特定波長光に対応する前記画素ごとの青色成分信号、赤色成分信号および緑色成分信号と前記特定波長光に対応する前記画素ごとの青色成分信号とのうちいずれかに基づいて、被写体の撮像画像を生成して出力するステップと、を有する、
画像処理方法。
【請求項10】
コンピュータである監視カメラに、
前記監視カメラが備える光学フィルタにより、霧あるいは靄を介して入射される被写体からの光のうち特定波長以上の波長を有する特定波長光を通過するステップと、
前記監視カメラが備える複数の画素を有して構成される撮像素子により、前記特定波長光に対応する青色成分信号、赤色成分信号および緑色成分信号のそれぞれを前記画素ごとに取得するステップと、
前記特定波長光に対応する前記画素ごとの青色成分信号、赤色成分信号および緑色成分信号と前記特定波長光に対応する前記画素ごとの青色成分信号とのうちいずれかに基づいて、被写体の撮像画像を生成して出力するステップと、を実行させるための、
プログラム。
【請求項11】
監視カメラにより実行される画像処理方法であって、
前記監視カメラが備える複数の画素を有して構成される撮像素子により、霧あるいは靄を介して入射される被写体からの光に対応する青色成分信号、赤色成分信号および緑色成分信号のそれぞれを前記画素ごとに取得するステップと、
前記被写体からの光に対応する前記画素ごとの赤色成分信号に基づいて輝度信号を生成するとともに、前記被写体からの光に対応する前記画素ごとの青色成分信号、赤色成分信号および緑色成分信号に基づいて特定の色相に対応する色を着色した第1画素信号と前記特定の色相に対応する色が着色されない第2画素信号とを生成するステップと、
前記輝度信号と前記第1画素信号と前記第2画素信号とに基づいて、被写体の撮像画像を生成して出力するステップと、を有する、
画像処理方法。
【請求項12】
コンピュータである監視カメラに、
前記監視カメラが備える複数の画素を有して構成される撮像素子により、霧あるいは靄を介して入射される被写体からの光に対応する青色成分信号、赤色成分信号および緑色成分信号のそれぞれを前記画素ごとに取得するステップと、
前記被写体からの光に対応する前記画素ごとの赤色成分信号に基づいて輝度信号を生成するとともに、前記被写体からの光に対応する前記画素ごとの青色成分信号、赤色成分信号および緑色成分信号に基づいて特定の色相に対応する色を着色した第1画素信号と前記特定の色相に対応する色が着色されない第2画素信号とを生成するステップと、
前記輝度信号と前記第1画素信号と前記第2画素信号とに基づいて、被写体の撮像画像を生成して出力するステップと、を実行させるための、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、監視カメラ、画像処理方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、被写体を撮像する撮像素子と、被写体と撮像素子との間に挿入される光学フィルタを赤外光を遮断する第1フィルタと可視光を遮断する第2フィルタとのいずれかに切替可能な切替装置と、撮像された被写体の画像に基づいて、被写体と撮像素子との間に密度の異なる大気が混在する空気層が存在することによって生じるゆらぎ現象(例えばかげろう現象)の有無を判断する判断部と、判断結果に応じて切替装置を制御して光学フィルタの切替を制御する制御部と、を備える撮像装置が開示されている。これにより、撮影画像に含まれるかげろう現象などのゆらぎ現象の影響が軽減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-90152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成では、かげろう現象等のゆらぎ現象が生じていると判断された場合には撮像面全体に対して可視光を遮断する光学フィルタが一律に使用されるため、撮像される被写体の画像が暗くなってしまう。特に監視カメラから見て遠方の被写体(例えば、空港、長距離の橋梁の遠方部、港の地点)を監視する際には、可視光を一律に遮断する光学フィルタが使用されると被写体の部分が全体的に暗くなってしまうため、被写体の状況判別が難しくなる等、観察業務の効率が低下する可能性があった。このため、撮像された被写体の画像の画質を劣化させるような現象(例えば、上述したかげろう現象に限らず、霧あるいは靄等の気象現象も同様)が発生した場合に、撮像される被写体の画像の画質の劣化を抑制する観点において、従来技術に対して改善の余地があったと言える。
【0005】
本開示は、上述した従来の事情に鑑みて案出され、撮像された被写体の画像の画質を劣化させる現象が発生した場合でも、被写体の画像の画質を改善して観察業務の効率化を図る監視カメラ、画像処理方法、およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、複数の画素を有して構成され、霧あるいは靄を介して入射される被写体からの光に対応する青色成分信号、赤色成分信号および緑色成分信号のそれぞれを前記画素ごとに取得する撮像素子と、前記被写体と前記撮像素子との間に配置され、前記被写体からの光のうち特定波長以上の波長を有する特定波長光を通過する光学フィルタと、前記特定波長光に対応する前記画素ごとの青色成分信号、赤色成分信号および緑色成分信号と前記特定波長光に対応する前記画素ごとの青色成分信号とのうちいずれかに基づいて、被写体の撮像画像を生成して出力するプロセッサと、を備える、監視カメラを提供する。
【0007】
また、本開示は、複数の画素を有して構成され、霧あるいは靄を介して入射される被写体からの光に対応する青色成分信号、赤色成分信号および緑色成分信号のそれぞれを前記画素ごとに取得する撮像素子と、前記被写体からの光に対応する前記画素ごとの赤色成分信号に基づいて輝度信号を生成するとともに、前記被写体からの光に対応する前記画素ごとの青色成分信号、赤色成分信号および緑色成分信号に基づいて特定の色相に対応する色を着色した第1画素信号と前記特定の色相に対応する色が着色されない第2画素信号とを生成するプロセッサと、を備え、前記プロセッサは、前記輝度信号と前記第1画素信号と前記第2画素信号とに基づいて、被写体の撮像画像を生成して出力する、監視カメラを提供する。
【0008】
また、本開示は、監視カメラにより実行される画像処理方法であって、前記監視カメラが備える光学フィルタにより、霧あるいは靄を介して入射される被写体からの光のうち特定波長以上の波長を有する特定波長光を通過するステップと、前記監視カメラが備える複数の画素を有して構成される撮像素子により、前記特定波長光に対応する青色成分信号、赤色成分信号および緑色成分信号のそれぞれを前記画素ごとに取得するステップと、前記特定波長光に対応する前記画素ごとの青色成分信号、赤色成分信号および緑色成分信号と前記特定波長光に対応する前記画素ごとの青色成分信号とのうちいずれかに基づいて、被写体の撮像画像を生成して出力するステップと、を有する、画像処理方法を提供する。
【0009】
また、本開示は、監視カメラにより実行される画像処理方法であって、前記監視カメラが備える複数の画素を有して構成される撮像素子により、霧あるいは靄を介して入射される被写体からの光に対応する青色成分信号、赤色成分信号および緑色成分信号のそれぞれを前記画素ごとに取得するステップと、前記被写体からの光に対応する前記画素ごとの赤色成分信号に基づいて輝度信号を生成するとともに、前記被写体からの光に対応する前記画素ごとの青色成分信号、赤色成分信号および緑色成分信号に基づいて特定の色相に対応する色を着色した第1画素信号と前記特定の色相に対応する色が着色されない第2画素信号とを生成するステップと、前記輝度信号と前記第1画素信号と前記第2画素信号とに基づいて、被写体の撮像画像を生成して出力するステップと、を有する、画像処理方法を提供する。
【0010】
また、本開示は、コンピュータである監視カメラに、前記監視カメラが備える光学フィルタにより、霧あるいは靄を介して入射される被写体からの光のうち特定波長以上の波長を有する特定波長光を通過するステップと、前記監視カメラが備える複数の画素を有して構成される撮像素子により、前記特定波長光に対応する青色成分信号、赤色成分信号および緑色成分信号のそれぞれを前記画素ごとに取得するステップと、前記特定波長光に対応する前記画素ごとの青色成分信号、赤色成分信号および緑色成分信号と前記特定波長光に対応する前記画素ごとの青色成分信号とのうちいずれかに基づいて、被写体の撮像画像を生成して出力するステップと、を実行させるための、プログラムを提供する。
【0011】
また、本開示は、コンピュータである監視カメラに、前記監視カメラが備える複数の画素を有して構成される撮像素子により、霧あるいは靄を介して入射される被写体からの光に対応する青色成分信号、赤色成分信号および緑色成分信号のそれぞれを前記画素ごとに取得するステップと、前記被写体からの光に対応する前記画素ごとの赤色成分信号に基づいて輝度信号を生成するとともに、前記被写体からの光に対応する前記画素ごとの青色成分信号、赤色成分信号および緑色成分信号に基づいて特定の色相に対応する色を着色した第1画素信号と前記特定の色相に対応する色が着色されない第2画素信号とを生成するステップと、前記輝度信号と前記第1画素信号と前記第2画素信号とに基づいて、被写体の撮像画像を生成して出力するステップと、を実行させるための、プログラムを提供する。
【0012】
なお、これらの包括的または具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム、または、記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、撮像された被写体の画像の画質を劣化させる現象が発生した場合でも、被写体の画像の画質を改善して観察業務の効率化を図ることができる。
【0014】
本開示の一態様における更なる利点および効果は、明細書および図面から明らかにされる。かかる利点および/または効果は、いくつかの実施形態並びに明細書および図面に記載された特徴によってそれぞれ提供されるが、1つまたはそれ以上の同一の特徴を得るために必ずしも全てが提供される必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施の形態1,2に係る監視カメラシステムのシステム構成例を示す図
図2】実施の形態1,2に係る監視カメラのハードウェア構成例を示すブロック図
図3】実施の形態1に係る監視カメラの動作概要例を示す図
図4A】画像中のほぼ全体エリアにおいて霧あるいは靄が発生している状況を示す図
図4B】画像中の遠方の対象エリアにおいて霧あるいは靄が発生している状況を示す図
図5】実施の形態1に係る監視カメラの動作状態の遷移例を示す図
図6】空間周波数と第1の閾値Aと第2の閾値Bとの関係例を模式的に示す図
図7】実施の形態1に係る監視カメラの霧あるいは靄の発生有無の判定動作手順例を時系列に示すフローチャート
図8】実施の形態1に係る監視カメラの霧あるいは靄が発生している間の画像処理動作手順例を時系列的に示すフローチャート
図9図8の画像処理動作手順により生成された画像の一例を示す図
図10】実施の形態2に係る監視カメラの動作概要例を示す図
図11】実施の形態2に係る監視カメラの霧あるいは靄が発生している間の画像処理動作手順例を時系列的に示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、適宜図面を参照しながら、本開示に係る監視カメラ、画像処理方法、およびプログラムを具体的に開示した実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明あるいは実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるものであり、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1,2に係る監視カメラシステム100のシステム構成例を示す図である。図1に示すように、監視カメラシステム100は、監視カメラ1と、モニタMN1および操作部MH1のそれぞれが接続されるサーバ50と、を含む構成である。監視カメラ1とサーバ50とは、ネットワークNW1を介して互いにデータを送受信可能に接続される。
【0018】
ネットワークNW1は、例えばWi-Fi(登録商標)等の無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)およびWiGig(Wireless Gigabit)のいずれかに準じた無線ネットワークであるが、これらに限定されなくてよい。なお、ネットワークNW1は、USB(Univesal Serial Bus)ケーブル、あるいは有線LANなどの有線ネットワークでもよい。以下の説明において、監視カメラ1により撮像された画像(以下「撮像画像」と称する)には、撮像画像のデータだけでなく、その撮像画像を撮像した監視カメラ1のカメラID(Identification)と撮像日時の情報とが含まれる。
【0019】
監視カメラ1は、被写体(例えば監視カメラ1の設置位置から見た遠方の監視領域の地点)を監視するために、例えば気象台、空港、橋梁、港等の見晴らしの良い屋外の場所に配置される。ただ、監視カメラ1の設置位置は前述した場所に限定されず、屋外であれば道路の路側に設置されたポール(図示略)もしくは駐車場でもよい。監視カメラ1は、既定画角内の被写体(例えば監視カメラ1の設置位置から見た遠方の監視領域)を撮像する。ここで、被写体は、例えば空港、長距離の橋梁の遠方部、港、山岳、街中であるが、これらに限定されなくてもよい。また、監視カメラ1は、人工知能(AI:Artificial Intelligence)を搭載しており、搭載された人工知能を用いて、被写体の撮像画像に霧(きり)あるいは靄(もや)等の画質を劣化させる要因となる気象現象が発生しているか否かを判定する(詳細は後述参照)。
【0020】
監視カメラ1には、学習済みモデルが学習モデルメモリ152に記憶されている(図2参照)。この学習済みモデルは、監視カメラ1に搭載されているAIの機能を特徴付けるパラメータ群である。すなわち、学習済みモデルは、監視カメラ1に搭載されているAIの判定対象である霧あるいは靄の有無を判定するためのパラメータ群である。学習済みモデルは、例えば、霧あるいは靄の有無を判定するためのセグメンテーション技術を使用するためのパラメータ群であってよい。この学習済みモデルは、外部端末(図示略)により生成されて監視カメラ1に予め記憶されている。
【0021】
監視カメラ1は、霧および靄のいずれも発生していない昼間の状態(後述する図5の状態CON1参照)、夜間の状態(後述する図5の状態CON2参照)、霧あるいは靄が発生している昼間の状態(後述する図5の状態CON3参照)のうちいずれかの状態に対応した動作モードで動作する。詳細は図5を参照して後述する。
【0022】
サーバ50は、例えば、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末、あるいは高性能なスペックを有するサーバコンピュータマシン等の情報処理装置である。サーバ50は、ネットワークNW1を介して、監視カメラ1との間でデータ通信する。
【0023】
サーバ50は、通信IF回路51と、プロセッサ52と、メモリ53と、データベース54とを含む構成である。なお、添付図面ではインターフェースを便宜的に「IF」と簡略して記載している。
【0024】
通信IF回路51は、上述したネットワークNW1を介して、監視カメラ1との間でデータ通信する。通信IF回路51は、例えば監視カメラ1によって生成されて送信された撮像画像のデータを受信してプロセッサ52に出力する。
【0025】
プロセッサ52は、例えばCPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphical Processing Unit)もしくはFPGA(Field Programmable Gate Array)を用いて構成される。プロセッサ52は、サーバ50の全体的な動作を司るコントローラとして機能し、サーバ50の各部の動作を統括するための制御処理、サーバ50の各部との間のデータの入出力処理、データの演算処理およびデータの記憶処理を行う。プロセッサ52は、メモリ53に記憶されたプログラムおよびデータに従って動作する。プロセッサ52は、動作時にメモリ53を使用し、プロセッサ52が生成または取得したデータもしくは情報をメモリ53に一時的に保存する。
【0026】
プロセッサ52は、通信IF回路51が受信した撮像画像のデータを受け取ると、その撮像画像に映る被写体の状態を観察するための各種の画像処理もしくは解析処理を実行する。なお、プロセッサ52は、この画像処理もしくは解析処理を、それぞれの処理用に学習されて生成された学習済みモデル(図示略)あるいは後述するデータベース54を用いて実行してもよい。これにより、プロセッサ52は、被写体の状態を高精度に観察できる。なお、プロセッサ52は、画像処理もしくは解析処理の結果を、ネットワークNW1を介して接続された監視カメラ1あるいは他の外部装置(例えば観察の依頼者が所持する端末)に応答してもよいし、モニタMN1に出力(表示)してもよい。
【0027】
メモリ53は、例えばRAM(Random Access Memory)とROM(Read Only Memory)とを用いて構成され、サーバ50の動作の実行に必要なプログラム、更には、動作中に生成されたデータもしくは情報を一時的に保持する。RAMは、例えば、サーバ50の動作時に使用されるワークメモリである。ROMは、例えば、サーバ50を制御するためのプログラムを予め記憶して保持する。
【0028】
データベース54は、例えばHDD(Hard Disk Drive)あるいはSSD(Solid State Drive)を用いて構成される。データベース54は、上述した観察のための画像処理もしくは解析処理の対象となる被写体またはオブジェクトの比較に用いられる各種の照合用データ(図示略)を格納する。
【0029】
モニタMN1は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)あるいは有機EL(Electroluminescence)を用いて構成された表示デバイスである。モニタMN1は、例えばサーバ50で実行された画像処理もしくは解析処理の結果を表示する。なお、モニタMN1は、サーバ50に含まれてもよい。
【0030】
操作部MH1は、例えばマウス、キーボード、タッチパッド、タッチパネルなどのユーザの入力操作を受け付ける入力デバイスである。操作部MH1は、ユーザの入力操作に対応する信号をサーバ50に送る。なお、操作部MH1は、サーバ50に含まれてもよい。
【0031】
図2は、実施の形態1,2に係る監視カメラ1のハードウェア構成例を示すブロック図である。図2には、監視カメラ1の他に、監視カメラ1に挿抜される外部記憶媒体M1も示してある。外部記憶媒体M1は、例えばSDカード等の記憶媒体である。
【0032】
図2に示すように、監視カメラ1は、レンズ11と、レンズ駆動部LM1と、可視光カットフィルタCF1と、IRカットフィルタCF2と、フィルタ駆動部FM1と、撮像素子12と、メモリ13と、プロセッサ14と、AIプロセッサ15と、通信IF回路16と、IR照明部17と、外部記憶媒体IF18と、パンチルト駆動部PTM1と、を含む構成である。
【0033】
撮像部の一例としてのレンズ11は、例えばフォーカスレンズおよびズームレンズを含み、被写体により反射された光である入射光ICL1を入射し、必要に応じて可視光カットフィルタCF1およびIRカットフィルタCF2のうち少なくとも1つを介して撮像素子12の受光面(撮像面)に被写体の光学像を結像する。この入射光ICL1は、例えば昼間の大気中に発生している霧あるいは靄を介して(透過して)入射する光、昼間において霧および靄のいずれも発生していない大気中を介して(透過して)入射する光、もしくは夜間の大気中を介して(透過して)入射する光である。レンズ11には、監視カメラ1の設置場所または撮影用途等に応じて、様々な焦点距離または撮影範囲のレンズを用いることができる。
【0034】
撮像部の一例としてのレンズ駆動部LM1は、プロセッサ14からの制御信号に基づいて、レンズ11に関するカメラパラメータ(例えばフォーカスレンズの位置、ズーム倍率に対応するズームレンズの位置)を調整するようレンズ11を駆動する。
【0035】
撮像部の一例としての可視光カットフィルタCF1は、昼間の大気中に霧あるいは靄が発生していると判定(後述参照)された場合に有効(つまり使用する)となるようフィルタ駆動部FM1により駆動される。可視光カットフィルタCF1は、レンズ11を透過した入射光ICL1(被写体からの光の一例)のうち特定波長(例えば560±20[nm:ナノメートル])以上の波長を有する光を通過する分光特性を有している(図3参照)。なお、昼間の大気中で霧および靄のいずれも発生していないと判定(後述参照)された場合、あるいは夜間では、可視光カットフィルタCF1は、有効とならず開放される(つまり使用されない)ようにフィルタ駆動部FM1により駆動される。
【0036】
撮像部の一例としてのIRカットフィルタCF2は、昼間の大気中で霧および靄のいずれも発生していないと判定(後述参照)された場合に有効(つまり使用する)となるようフィルタ駆動部FM1により駆動される。IRカットフィルタCF2は、可視光(例えば400~760[nm]の波長を有する光)を通過させ、近赤外光(例えば780[nm]以上の波長を有する光)を遮断する分光特性を有している。なお、昼間の大気中で霧あるいは靄が発生していると判定(後述参照)された場合、あるいは夜間では、IRカットフィルタCF2は、有効とならず開放される(つまり使用されない)ようにフィルタ駆動部FM1により駆動される。
【0037】
撮像部の一例としてのフィルタ駆動部FM1は、プロセッサ14からの制御信号に基づいて、可視光カットフィルタCF1およびIRカットフィルタCF2のそれぞれの有効の有無を制御(例えば、該当するフィルタを入射光ICL1の光路上への配置)を調整するよう可視光カットフィルタCF1およびIRカットフィルタCF2のそれぞれを駆動する。
【0038】
撮像部の一例としての撮像素子12は、複数の画素(例えばそれぞれの受光素子上にベイヤ配列のRGBカラーフィルタが設けられた画素)を有して構成され、例えばCCD(Charge Coupled Device)またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサである。撮像素子12は、上述した複数の画素により構成される受光面(撮像面)に受けた光を電気信号に変換するための光電変換を行う。これにより、撮像素子12は、電気信号として、被写体からの光に対応する青色成分信号(B信号)、赤色成分信号(R信号)、緑色成分信号(G信号)のそれぞれを画素ごとに取得することができる。撮像素子12は、受光面に受けた光に応じた電気信号(アナログ信号)をプロセッサ14に出力する。このアナログ信号は、撮像部の一例としてのプロセッサ14により、デジタル形式の撮像画像のデータに変換される。これにより、プロセッサ14によって撮像画像のデータが生成される。
【0039】
メモリ13は、例えばRAMとROMとを用いて構成され、監視カメラ1の動作の実行に必要なプログラム、更には、動作中に生成されたデータもしくは情報を一時的に保持する。RAMは、例えば、監視カメラ1の動作時に使用されるワークメモリである。ROMは、例えば、監視カメラ1を制御するための本開示に係るプログラムを予め記憶して保持する。言い換えると、プロセッサ14は、ROMに記憶されているプログラムを実行することで、コンピュータである監視カメラ1に、本開示に係る画像処理に関する各種の処理を実行可能である。
【0040】
また、メモリ13は、例えばAIプロセッサ15が比較する時に使用する高域空間周波数(図6参照)の変化量の閾値(具体的には、第1の閾値Aおよび第2の閾値B(>第1の閾値A))を保存している。また、メモリ13は、通常時(すなわち霧および靄のいずれも発生していない状態)の観察対象となる被写体(対象エリア)に相当する画素および撮像画像の全域エリアのそれぞれに基づく空間周波数の算出結果のうち既定の高域空間周波数を基準値f1として保存している。既定の高域空間周波数が基準値f1であることは、撮像画像のエッジ部分(言い換えると、撮像画像の鮮明さ)が存在していることを示す。したがって、算出された空間周波数のうち高域空間周波数が基準値f1未満となる場合には、例えば霧あるいは靄等の気象現象によって撮像画像のエッジが不鮮明になっていることを示している。
【0041】
プロセッサ14は、例えばCPU、DSP、GPUもしくはFPGAを用いて構成される。プロセッサ14は、監視カメラ1の全体的な動作を司るコントローラとして機能し、監視カメラ1の各部の動作を統括するための制御処理、監視カメラ1の各部との間のデータの入出力処理、データの演算処理およびデータの記憶処理を行う。プロセッサ14は、メモリ13に記憶されたプログラムおよびデータに従って動作する。プロセッサ14は、動作時にメモリ13を使用し、プロセッサ14が生成または取得したデータもしくは情報をメモリ13に一時的に保存する。
【0042】
また、撮像部の一例としてのプロセッサ14は、撮像素子12から出力された電気信号に既定の信号処理を施すことで、デジタル形式の撮像画像のデータを生成してもよい。プロセッサ14は、生成された撮像画像のデータをAIプロセッサ15に送る。
【0043】
また、プロセッサ14は、タイマTM1を有し、タイマTM1の出力に基づいて現在時刻を把握可能であり、夜間(言い換えると、日没付近~明け方付近)にはIR光の照射を指示する制御信号をIR照明部17に出力する。タイマTM1は、所定の基準時刻からの経過時間(つまり現在時刻)を計時する回路を備え、計時出力(カウント値)をプロセッサ14に送る。これにより、プロセッサ14は、現在時刻を特定できる。
【0044】
また、制御部の一例としてのプロセッサ14は、タイマTM1の出力とAIプロセッサ15の処理結果(例えば、被写体(例えば監視カメラ1の設置位置から見た遠方の監視領域の地点)が見える大気中に霧あるいは靄が発生しているか否かの判定結果)とに基づいて、動作モード(図5参照)を切り替える。図5は、実施の形態1に係る監視カメラ1の動作状態の遷移例を示す図である。図5に示すように、監視カメラ1は、霧および靄のいずれも発生していない昼間の状態CON1、夜間の状態CON2、霧あるいは靄が発生している昼間の状態CON3のうちいずれかの状態に対応した動作モードで動作する。
【0045】
例えば、プロセッサ14は、タイマTM1の出力によって夜間(例えば18:00~6:00までの時間帯)には状態CON2に対応した動作モードで動作することを決定する。つまり、プロセッサ14は、夜間の被写体を撮像するために、可視光カットフィルタCF1およびIRカットフィルタCF2のそれぞれを開放(つまり使用しないこと)とし、IR照明部17(例えばIRLED)によるIR光の照射下でのカラーR(Red)G(Green)B(Blue)信号を用いた被写体の撮像を行う。なお、夜間の時間帯は季節によって異なってもよく、夜間の時間帯を示すデータは季節あるいは月ごとにメモリ13に保存されてよい。撮像素子12の各画素は近赤外光の波長領域でも感度を持っており、IR光を照射することで、プロセッサ14は、暗闇環境でも被写体を撮像することができる。ただし、色を正しく再現することはできないため、プロセッサ14は、被写体のモノクロの画像を生成する。なお、昼間と夜間の判断に関して、タイマTM1を用いず、監視カメラ1が備える照度センサ(図示略)の出力値を用いて行ってもよい。
【0046】
例えば、プロセッサ14は、タイマTM1の出力によって夜間以外の時間帯(つまり昼間、例えば6:00~18:00までの時間帯)には、AIプロセッサ15の処理結果(上述参照)に基づいて、状態CON1あるいは状態CON3を選択した動作モードで動作する。具体的には、プロセッサ14は、被写体(例えば監視カメラ1の設置位置から見た遠方の監視領域の地点)が見える大気中に霧あるいは靄が発生していないとAIプロセッサ15によって判定された場合、状態CON1に対応した動作モードで動作することを決定する。つまり、プロセッサ14は、大気中に霧あるいは靄が発生していない昼間の被写体を撮像するために、IRカットフィルタCF2のみ有効(つまり使用)とし、上述したカラーRGB信号を用いた被写体の撮像を行う。これにより、プロセッサ14は、色再現に影響を与える近赤外光の波長を除去した光を元にカラー画像のデータを得ることができる。
【0047】
また、プロセッサ14は、被写体(例えば監視カメラ1の設置位置から見た遠方の監視領域の地点)が見える大気中に霧あるいは靄が発生しているとAIプロセッサ15によって判定された場合、状態CON3に対応した動作モードで動作することを決定する。つまり、プロセッサ14は、大気中に霧あるいは靄が発生している昼間の被写体を撮像するために、特定波長(上述参照)未満の波長を有する可視光を遮断する可視光カットフィルタCF1のみ有効(つまり使用)とし、上述したカラーRGB信号あるいはB信号を用いた被写体の撮像(図3参照)を行う。これにより、プロセッサ14は、状態CON1に比べて、可視光の光量が減少するものの霧あるいは靄の影響を軽減した高画質な撮像画像のデータを得ることができる。さらに、プロセッサ14は、霧あるいは靄の程度が濃くなければ(例えば高域空間周波数の変化量が図6に示す第2の閾値B未満)、特許文献1で示されている可視光をすべてカットした状態に比べて、光量の減少量を抑えた状態で撮像画像のデータを得ることができる。
【0048】
なお、昼間において大気中の霧あるいは靄が晴れて無くなったとAIプロセッサ15によって判定された場合には、プロセッサ14は、状態CON3から状態CON1に遷移した動作モードで動作する。同様に、昼間において大気中の霧あるいは靄が発生してきたとAIプロセッサ15によって判定された場合には、プロセッサ14は、状態CON1から状態CON3に遷移した動作モードで動作する。
【0049】
第2プロセッサの一例としてのAIプロセッサ15は、例えばCPU、DSP、GPU、FPGAおよびメモリを用いて構成され、AI(人工知能)を用いて、撮像素子12により撮像される被写体の撮像画像のデータの中から、遠方の観察対象となる被写体(対象エリア)に相当する画素を抽出する。AIプロセッサ15は、抽出された画素により構成されるエリアと撮像画像全体とで個々に空間周波数を算出する。AIプロセッサ15は、この空間周波数の算出結果とメモリ13に保存されている閾値(上述参照)との比較に応じて、遠方の観察対象となる被写体(対象エリア)に霧あるいは靄が発生しているか否かを検知および判定する。AIプロセッサ15は、AI演算処理部151と学習モデルメモリ152とを有して構成される。なお、上述した抽出された画素により構成されるエリアと撮像画像全体とでの個々の空間周波数の算出、ならびに、遠方の観察対象となる被写体(対象エリア)に霧あるいは靄が発生しているか否かを検知および判定の各処理は、AIプロセッサ15ではなくプロセッサ14によって実行されてもよく、以下の説明においても同様である。
【0050】
AI演算処理部151は、学習モデルメモリ152に記憶された学習済みモデル(図2参照)に基づいたAI(人工知能)を形成する。例えば、AI演算処理部151は、セグメンテーション技術を使用するためのパラメータ群である学習済みモデルを用いて、撮像素子12により撮像された被写体の撮像画像のデータを入力し、入力された撮像画像のデータの中から遠方の観察対象となる被写体(対象エリア)に相当する画素を検知して抽出する。AI演算処理部151もしくはプロセッサ14は、抽出結果に基づいて、抽出された画素により構成されるエリアと撮像画像全体とで個々に空間周波数を算出するとともに、空間周波数の算出結果とメモリ13に保存されている閾値(上述参照)との比較に応じて、遠方の観察対象となる被写体(対象エリア)に霧あるいは靄が発生しているか否かを判定し、その判定結果をプロセッサ14に返す。
【0051】
ここで、AIプロセッサ15あるいはプロセッサ14による霧あるいは靄の発生の有無、ならびに霧あるいは靄の強度(濃さ)の判定について、図4A図4Bおよび図6を参照して説明する。図4Aは、画像PIC1中のほぼ全体エリアAR1において霧あるいは靄が発生している状況を示す図である。図4Bは、画像PIC2中の遠方の対象エリアAR2において霧あるいは靄が発生している状況を示す図である。図6は、空間周波数と第1の閾値Aと第2の閾値Bとの関係例を模式的に示す図である。図6では、横軸が空間周波数である。つまり、空間周波数の特性Y1,Y2,Y3のそれぞれに対し、既定となる高域空間周波数が算出され、その算出結果がf1(上述参照),f2,f3となっている。
【0052】
大気中に霧あるいは靄等の気象現象が発生している場合、画像PIC1のほぼ全体エリアAR1あるいは画像PIC2の遠方の対象エリアAR2の大気(空気)が霞んで映るため、画像PIC1あるいは画像PIC2の画質が劣化する。AI演算処理部151は、既存のセグメンテーション技術を用いた学習済みモデルに基づいて、AI演算処理部151に入力された画像PIC1中の遠方となる観察対象となる被写体(対象エリア)に相当する画素(例えばほぼ全体エリアAR1)を抽出する。同様に、AI演算処理部151は、既存のセグメンテーション技術を用いた学習済みモデルに基づいて、AI演算処理部151に入力された画像PIC2中の遠方となる観察対象となる被写体(対象エリア)に相当する画素(例えば遠方の対象エリアAR2)を抽出する。
【0053】
AI演算処理部151は、画像PIC1のほぼ全体エリアAR1および全域エリアのそれぞれについて個々に空間周波数を算出し、それぞれのエリアに対応する空間周波数の既定の高域部分(高域空間周波数)f2とメモリ13に保存されている対応するエリアの空間周波数の既定の高域部分(高域空間周波数)の基準値f1との差分(変化量)が、メモリ13に保存されている第1の閾値A以上であるか否かを判定する。AI演算処理部151は、画像PIC1のほぼ全体エリアAR1あるいは全域エリアにおける高域空間周波数の変化量(上述参照)が第1の閾値A以上であると判定した場合に、その画像PIC1中に霧あるいは靄が発生していると判定する。
【0054】
同様に、AI演算処理部151は、画像PIC2の遠方の対象エリアAR2および全域エリアのそれぞれについて個々に空間周波数を算出し、それぞれのエリアに対応する空間周波数の既定の高域部分(高域空間周波数)f2とメモリ13に保存されている対応するエリアの空間周波数の既定の高域部分(高域空間周波数)の基準値f1との差分(変化量)が、メモリ13に保存されている第1の閾値A以上であるか否かを判定する。AI演算処理部151は、画像PIC2の遠方の対象エリアAR2あるいは全域エリアにおける高域空間周波数の変化量(上述参照)が第1の閾値A以上であると判定した場合に、その画像PIC2中に霧あるいは靄が発生していると判定する。
【0055】
学習モデルメモリ152は、例えばRAM、ROM、フラッシュメモリなどのメモリによって構成される。学習モデルメモリ152は、予め学習処理によって作成された霧あるいは靄の検知処理用の学習済みモデルを格納している。AI演算処理部151は、学習モデルメモリ152から学習済みモデルを読み出して、AI演算処理部151に入力された画像中の遠方の観察対象となる被写体(対象エリア)に相当する画素を抽出し、霧あるいは靄の有無を高精度に検知および判定できる。
【0056】
なお、プロセッサ14は、AIプロセッサ15を用いた霧あるいは靄の有無の高精度な検知処理を行う代わりに、例えばタイマTM1の出力(つまり現在時刻)に基づいて霧あるいは靄の有無を簡易的に判定してもよい。これは、例えば監視カメラ1の設置位置の周囲の地域特性に鑑みて霧あるいは靄が発生しやすい時間帯が予め特定可能であれば、現在時刻が霧あるいは靄が発生しやすい時間帯であるか否かでも、簡易的に霧あるいは靄の有無を判定可能となることに基づく。
【0057】
また、サーバ50から撮像画像中の霧あるいは靄が発生すると想定される座標を指定する座標指定通知が監視カメラ1において受信された場合、プロセッサ14またはAIプロセッサ15は、その座標指定通知に含まれる指定座標(例えば撮像素子12あるいはプロセッサ14により生成される撮像画像のデータ上の座標)に限定して霧あるいは靄が発生しているか否かを判定してもよい。
【0058】
通信IF回路16は、ネットワークNW1を介して接続されたサーバ50との間でデータ通信(送受信)を行う。通信IF回路16は、例えばプロセッサ14により生成された撮像画像のデータをサーバ50に送信する。また、通信IF回路16は、サーバ50から霧あるいは靄の発生の有無の座標指定通知(上述参照)を受信した場合、その座標指定通知に含まれる指定座標(上述参照)をプロセッサ14またはAIプロセッサ15に送ってもよい。
【0059】
IR照明部17は、プロセッサ14からの制御信号(例えばIR光の照射開始の指示)に基づいて、撮像エリアに向けて近赤外の波長帯域を有するIR光RD1の照射を開始する。IR照明部17は、プロセッサ14からの制御信号(例えばIR光RD1の照射終了の指示)に基づいて、撮像エリアへのIR光RD1の照射を終了する。また、IR照明部17は、プロセッサ14からの制御信号(例えばIR光RD1の強度の調整の指示)に基づいて、現在照射しているIR光RD1の強度を強めたりもしくは弱めたりして照射する。
【0060】
外部記憶媒体IF18には、SDカードなどの外部記憶媒体M1が挿抜される。
【0061】
パンチルト駆動部PTM1は、プロセッサ14からの制御信号に基づいて、パン回転あるいはチルト回転に関するカメラパラメータ(例えばパン回転量、チルト回転量)を調整して監視カメラ1のパン回転あるいはチルト回転もしくはその両方を実行する。なお、監視カメラ1がパン回転、チルト回転をしない構成である場合には、パンチルト駆動部PTM1は監視カメラ1の構成から省略されてよい。
【0062】
次に、実施の形態1に係る監視カメラ1のプロセッサ14による霧あるいは靄が発生している状態CON3での撮像画像の生成に関する動作概要について、図3および図6を参照して説明する。図3は、実施の形態1に係る監視カメラ1の動作概要例を示す図である。図3に示すグラフGPH1では、横軸が波長[nm]、縦軸が感度を示す撮像素子12の分光感度特性が示されている。グラフGPH1の下部には、色相レンジCLB1と、撮像画像のデータ生成に用いる各種の特性PRY1とが示されている。
【0063】
グラフGPH1によれば、撮像素子12により取得される画素ごとの青色成分信号(以下「B信号」と略記する場合がある)、赤色成分信号(以下「R信号」と略記する場合がある)、緑色成分信号(以下「G信号」と略記する場合がある))は、近赤外光の波長帯域(例えば850[nm]の波長帯域a1)においてそれぞれ同等の感度を有することが示されている。したがって、RGBのカラーフィルタが配列された撮像素子12を用いた場合でも、近赤外光の撮像は可能となる。
【0064】
また、上述したように、可視光カットフィルタCF1は、レンズ11を透過した入射光ICL1(被写体からの光の一例)のうち特定波長(例えば560±20[nm:ナノメートル])以上の波長を有する光を通過する。言い換えると、可視光カットフィルタCF1は、特定波長未満の波長を有する光を遮断する。したがって、特性PRY1に示されるように、可視光カットフィルタCF1が有効である場合、色相レンジCLB1に示される波長帯の波長を有する光(例えばUV光からIR光)がすべて撮像素子12に入射せず、特定波長以上の波長を有する光のみが撮像素子12に入射する。
【0065】
ここで、特定波長は例えば560±20[nm]であるが、霧あるいは靄等の気象現象が発生している場合、特定波長未満の波長を有する光は霧あるいは靄を構成する水蒸気で散乱されやすく、被写体の鮮明な画像を生成する上での障害となってしまう。そこで、実施の形態1では、特定波長以上の波長(例えば560±20[nm]の波長)でかつ、光の波長が長いほど霧あるいは靄を構成する水蒸気で散乱されにくいという特性を利用することで、監視カメラ1は、特定波長以上の波長を有する光に基づいて撮像画像を生成する。これにより、監視カメラ1は、霧あるいは靄が発生している中でも鮮明な撮像画像を生成できる。
【0066】
ただ、特定波長は可視光の波長帯域(例えば400~760[nm])の波長であるため、特定波長以上の波長であって可視光の波長帯域(例えば黄色、オレンジ、赤色の色相に対応する波長帯域)の波長を有する光に基づくR信号、G信号、B信号(つまりRGB信号)を用いて撮像画像を生成することが可能である。
【0067】
このため、監視カメラ1のプロセッサ14は、霧あるいは靄の程度がそれほど濃くなければ(図6参照)、特定波長以上の波長であって、近赤外光の波長帯域に加え、可視光の波長帯域(例えば黄色、オレンジ、赤色の色相に対応する波長帯域)の波長を有する光に基づくRGB信号を用いる分、近赤外光(IR光)だけで撮像するモノクロの撮像画像よりも撮像素子12に届く光量が多くかつ霧あるいは靄が発生していても被写体の様子が鮮明となる撮像画像を生成できる。例えば、プロセッサ14は、画像PIC1のほぼ全体エリアAR1あるいは全域エリアにおける高域空間周波数の変化量(上述参照)が第2の閾値B未満であると判定した場合に、霧あるいは靄の程度がそれほど濃くないとして、特定波長以上の波長であって、近赤外光の波長帯域に加えて可視光の波長帯域(例えば黄色、オレンジ、赤色の色相に対応する波長帯域)の波長を有する光に基づくRGB信号を用いて霧あるいは靄が発生していても被写体の様子が鮮明となるモノクロの撮像画像を生成する。なお、ここでは画像PIC1を例示して撮像画像の生成方法を説明したが、画像PIC2を例示しても同様であるため説明を省略する。
【0068】
一方で、霧あるいは靄の程度が濃い場合(図6参照)には、監視カメラ1は、近赤外光(例えば780[nm]以上の波長帯域)に高い感度を有するが特定波長以上の可視光の波長帯域には殆ど感度を有さないB信号(波長帯域a1参照)のみを用いることで、霧あるいは靄の程度が濃い場合でも被写体の様子が鮮明となる撮像画像を生成できる。例えば、プロセッサ14は、画像PIC1のほぼ全体エリアAR1あるいは全域エリアにおける高域空間周波数の変化量(上述参照)が第2の閾値B以上であると判定した場合に、霧あるいは靄の程度が濃いとして、近赤外光(例えば780[nm]以上の波長帯域)に高い感度を有するが特定波長以上の可視光の波長帯域には殆ど感度を有さないB信号(符号a1参照)のみを用いて霧あるいは靄が発生していても被写体の様子が鮮明となるモノクロの撮像画像を生成する。なお、ここでは画像PIC1を例示して撮像画像の生成方法を説明したが、画像PIC2を例示しても同様であるため説明を省略する。
【0069】
つまり、監視カメラ1のプロセッサ14は、画像PIC1のほぼ全体エリアAR1あるいは全域エリアにおける高域空間周波数の変化量(上述参照)と第2の閾値Bとの大小に応じて、撮像画像の生成方式を使い分ける。これにより、監視カメラ1は、例えばAIプロセッサ15によって検知される霧あるいは靄の程度(例えば濃さ)の状況に応じて、適応的に霧あるいは靄の影響を軽減した高画質な撮像画像を生成できる。
【0070】
次に、実施の形態1に係る監視カメラ1の動作手順例について、図7および図8を参照して説明する。図7は、実施の形態1に係る監視カメラ1の霧あるいは靄の発生有無の判定動作手順例を時系列に示すフローチャートである。図8は、実施の形態1に係る監視カメラ1の霧あるいは靄が発生している間の画像処理動作手順例を時系列的に示すフローチャートである。なお、図7および図8では、霧あるいは靄を便宜的に「霧・もや」と図示している。
【0071】
図7において、AIプロセッサ15は、撮像素子12により撮像された撮像画像のデータを入力する(St1)。AIプロセッサ15は、学習モデルメモリ152から読み出した学習済みモデルを用いて、ステップSt1で入力された被写体の撮像画像のデータの中から、遠方の観察対象となる被写体(対象エリア)に相当する画素を抽出する(St2)。AIプロセッサ15は、ステップSt2で抽出された画素により構成されるエリアとステップSt1で入力された撮像画像全体とでそれぞれ空間周波数を算出する(St3)。つまり、ステップSt3により、例えば遠方の観察対象となる被写体(対象エリア)に相当する画素(例えば図4Aのほぼ全体エリアAR1参照)における空間周波数と、画像PIC1全体における空間周波数とがそれぞれ算出される。
【0072】
ここで、監視カメラ1の現在の画角内の撮像画像中の遠方の観察対象となる被写体(対象エリア)およびその撮像画像全体のそれぞれの通常時(つまり霧あるいは靄が発生していない時)の空間周波数の算出結果が登録されていない場合(St4、YES)、AIプロセッサ15は、ステップSt3での算出結果(つまり、遠方の観察対象となる被写体(対象エリア)に相当する画素(例えば図4Aのほぼ全体エリアAR1参照)における空間周波数、画像PIC1全体における空間周波数の各算出結果)と、ステップSt2で抽出された画素の座標位置を示すエリア情報と、を対応付けてメモリ13に保存する(St5)。ステップSt5の後、AIプロセッサ15の処理はステップSt1に戻る。
【0073】
一方、監視カメラ1の現在の画角内の撮像画像中の遠方の観察対象となる被写体(対象エリア)およびその撮像画像全体のそれぞれの通常時(つまり霧あるいは靄が発生していない時)の空間周波数の算出結果がメモリ13に登録されている場合(St4、NO)、AIプロセッサ15は、既にメモリ13に登録された初期登録時と現時点とでの対象エリアあるいは撮像画像全体の空間周波数の特定の高域空間周波数の変化量(減少量)がメモリ13に保存されている第1の閾値A(図6参照)以上であるか否かを判定する(St6)。高域空間周波数の変化量(減少量)が第1の閾値A未満であるとAIプロセッサ15により判定された場合(St6、NO)、プロセッサ14は、ステップSt1で入力された撮像画像のデータをそのまま出力する(St7)。
【0074】
一方、AIプロセッサ15は、高域空間周波数の変化量(減少量)が第1の閾値A以上であると判定した場合(St6、YES)、ステップSt1で入力された撮像画像中に霧あるいは靄が発生していると判定する(St8)。AIプロセッサ15は、ステップSt8での判定結果をプロセッサ14に返す。なお、ステップSt3~ステップSt8はプロセッサ14で実施されてもよい。
【0075】
図8において、プロセッサ14は、ステップSt8での判定結果に基づいて、可視光カットフィルタCF1を有効としてIRカットフィルタCF2を開放するための制御信号を生成してフィルタ駆動部FM1に送る(St11)。
【0076】
プロセッサ14は、ステップSt11の後、既にメモリ13に登録された初期登録時と現時点(例えばステップSt1で撮像画像のデータが入力された時)とでの対象エリアあるいは撮像画像全体の空間周波数の特定の高域空間周波数の変化量(減少量)がメモリ13に保存されている第2の閾値B(図6参照)以上であるか否かを判定する(St12)。
【0077】
プロセッサ14は、高域空間周波数の変化量(減少量)が第2の閾値B以上であると判定した場合には(St12、YES)、撮像画像のサイズ全体について、撮像素子12により取得される、近赤外光の波長帯域の光に対応するB信号の画素値のみを用いてモノクロの撮像画像のデータを生成する(St13)。
【0078】
一方、プロセッサ14は、高域空間周波数の変化量(減少量)が第2の閾値B未満であると判定した場合には(St12、NO)、撮像画像のサイズ全体について、撮像素子12により取得される、特定波長以上の波長を有する光に対応するRGB信号の画素値を用いてモノクロの撮像画像のデータを生成する(St14)。
【0079】
図9は、図8の画像処理動作手順により生成された画像PIC3の一例を示す図である。図9に示す画像PIC3は、例えば近赤外光の波長帯域の光に対応するB信号の画素値のみ、あるいは特定波長以上の波長を有する光に対応するRGB信号の画素値を用いて生成されている。つまり、いずれにしても霧あるいは靄が発生している状況下で水蒸気で散乱され易い波長帯(例えば特定波長未満の波長)の光は撮像素子12での撮像に使用されないので、遠方の監視領域(例えば対象エリアAR2)が鮮明となる画像PIC3が得られる。
【0080】
以上により、実施の形態1に係る監視カメラ1は、複数の画素を有して構成され、霧あるいは靄を介して入射される被写体からの光に対応する青色成分信号、赤色成分信号および緑色成分信号のそれぞれを画素ごとに取得する撮像素子12と、被写体と撮像素子12との間に配置され、被写体からの光のうち特定波長以上の波長を有する特定波長光(例えば560±20[nm]以上の波長を有する光)を通過する光学フィルタ(例えば可視光カットフィルタCF1)と、特定波長光に対応する画素ごとの青色成分信号、赤色成分信号および緑色成分信号と特定波長光に対応する画素ごとの青色成分信号とのうちいずれかに基づいて、被写体の撮像画像を生成して出力するプロセッサ14と、を備える。
【0081】
これにより、監視カメラ1は、撮像された被写体の画像の画質を劣化させる現象(例えば霧あるいは靄等の気象現象)が発生した場合でも、霧あるいは靄を構成する水蒸気で散乱されやすい波長帯の光(つまり特定波長未満の波長を有する光)を遮断するので、被写体の画像の画質を改善して観察業務(例えば監視カメラ1の設置場所からリモート(遠隔)で遠方の被写体を監視すること)の効率化を図ることができる。
【0082】
また、監視カメラ1は、撮像素子12により撮像される画像の注目領域(例えば遠方の監視エリア)を特定する第2プロセッサ(例えばAIプロセッサ15)をさらに備える。プロセッサ14は、特定された注目領域で霧あるいは靄が発生しているか否かを判定した場合に、注目領域に発生している霧あるいは靄の程度に応じて、特定波長光に対応する画素ごとの青色成分信号、赤色成分信号および緑色成分信号と特定波長光に対応する画素ごとの青色成分信号とのうちいずれかを選択する。これにより、監視カメラ1は、例えばAI演算処理部151によって検知される霧あるいは靄の程度(例えば濃さ)の状況に応じて、適応的に霧あるいは靄の影響を軽減した高画質な撮像画像を生成できる。
【0083】
また、プロセッサ14もしくは第2プロセッサ(例えばAIプロセッサ15)は、注目領域の画像部分の高域空間周波数の減少量(変化量)が第1の閾値A以上である場合に、注目領域に霧あるいは靄が発生していると判定する。これにより、監視カメラ1は、入力された撮像画像における既定の高域空間周波数の減少量と第1の閾値Aとの比較に応じて、観察対象となる注目領域に霧あるいは靄の発生の有無を簡易に判定できる。
【0084】
また、第2プロセッサ(例えばAIプロセッサ15)は、学習処理により形成された人工知能を用いた学習済みモデルに基づいて、注目領域に霧あるいは靄が発生しているか否かを判定する。これにより、監視カメラ1は、既存のAI技術(例えばセグメンテーション技術)を用いて観察対象となる注目領域に霧あるいは靄の発生の有無を高精度かつ簡易に判定できる。
【0085】
また、実施の形態1において、特定波長は例えば560±20[ナノメートル]である。これにより、例えば560±20[nm]未満の波長を有する光が霧あるいは靄を構成する水蒸気で散乱され易いという特性を利用して、監視カメラ1は、霧あるいは靄の影響を軽減した鮮明度の高い撮像画像を生成できる。
【0086】
また、監視カメラ1は、被写体からの光のうち近赤外光を通過する第2光学フィルタ(例えばIRカットフィルタCF2)をさらに備える。プロセッサ14は、所定の条件(例えば昼間において霧および靄のいずれも発生していない状態)を満たす場合に、第2光学フィルタを通過した光に基づいて、被写体の撮像画像を生成する。これにより、監視カメラ1は、昼間に霧および靄のいずれも発生していない状態では、IR光をカットして撮像できるので高精度なカラーRGB信号を用いた撮像画像を生成できる。
【0087】
(実施の形態2)
実施の形態1では、可視光カットフィルタCF1を通過する特定波長(例えば560[nm])以上の波長を有する光のみを用いて霧あるいは靄の影響を軽減可能な撮像画像を生成する例を説明した。実施の形態2では、可視光カットフィルタCF1を使用せず、主に信号処理によって霧あるいは靄の影響を軽減可能な撮像画像を生成する例を説明する。実施の形態2に係る監視カメラ1は、図2に示すハードウェア構成例において可視光カットフィルタCF1が省略された構成を有する。このため、実施の形態2に係る監視カメラ1のハードウェア構成の説明について、実施の形態1と同一の内容の説明は簡略化あるいは省略し、異なる内容について説明する。
【0088】
次に、実施の形態2に係る監視カメラ1のプロセッサ14による霧あるいは靄が発生している状態CON3での撮像画像の生成に関する動作概要について、図10および図6を参照して説明する。図10は、実施の形態2に係る監視カメラ1の動作概要例を示す図である。図10に示すグラフGPH1では、横軸が波長[nm]、縦軸が感度を示す撮像素子12の分光感度特性が示されている。グラフGPH1の下部には、色相レンジCLB1と、撮像画像のデータ生成に用いる各種の特性PRY2とが示されている。なお、図10の説明において、図3と同一の要素については同一の符号を付与して説明を簡略化あるいは省略し、異なる内容について説明する。
【0089】
実施の形態2では、プロセッサ14は、撮像画像のデータを生成する際、霧あるいは靄の影響を軽減した撮像画像の輝度信号を構成するために、実施の形態1で参照して説明した特定波長(例えば560±20[nm])以上の波長を有する光に対応するR信号を選択する。また、プロセッサ14は、撮像画像のデータを生成する際、RGB信号で撮像された撮像画像中の赤色部分にオレンジあるいは赤に着色し、かつ同じ撮像画像中の空、海、山等の青色あるいは緑色の背景部分にはモノクロ(白黒)とすることで、オレンジあるいは赤等の注目色部分にのみ着色した撮像画像を生成する。
【0090】
つまり、実施の形態2では可視光カットフィルタCF1は省略されているため、色相レンジCLB1に示される波長帯の波長を有する光(例えばUV光からIR光)が撮像素子12に入射する。ただ特定波長(例えば560±20[nm])未満の波長を有する光は霧あるいは靄を構成する水蒸気で散乱され易いため、実施の形態2では可視光カットフィルタCF1は使用しないが、プロセッサ14は、撮像画像の輝度信号を構成するために、撮像素子12に入射する光の波長帯のうち特定波長(上述参照)以上の波長を有する光を選択して使用する。具体的には、特定波長(上述参照)以上に高い感度を有するR信号が使用される。
【0091】
また、プロセッサ14は、撮像素子12に入射する光(つまり、色相レンジCLB1に示される波長帯の波長を有する光(例えばUV光からIR光))に対応する信号の色相を確認し、赤色部分にはオレンジあるいは赤で着色し、赤色ではない他の色部分(例えば上述した空、海、山等の青色部分もしくは緑色部分)にはモノクロとする着色処理を施す。これにより、プロセッサ14は、カラーのRGB信号のうち赤色部分等の注目領域(例えば画角内にいる人物が着用しているライフジャケット)に赤色あるいはオレンジ色の着色を付与できて目立たせたり注意喚起を促したりすることが可能な撮像画像を生成できる。
【0092】
次に、実施の形態2に係る監視カメラ1の動作手順例について、図7および図11を参照して説明する。図11は、実施の形態2に係る監視カメラ1の霧あるいは靄が発生している間の画像処理動作手順例を時系列的に示すフローチャートである。なお、監視カメラ1の霧あるいは靄の発生有無の判定動作手順は図7と同一であるため、ここでは説明を省略する。
【0093】
図11において、プロセッサ14は、ステップSt8での判定結果に基づいて、IRカットフィルタCF2を開放するための制御信号を生成してフィルタ駆動部FM1に送る(St21)。プロセッサ14は、撮像素子12により取得された画素ごとのRGB信号のうちR信号(R画素)のみを抽出して撮像画像の輝度信号(輝度レベル)を生成する(St22)。また、プロセッサ14は、撮像素子12により取得された画素ごとのRGB信号の画素値(RGB画素値)をHSV(Hue Saturation Brightness)空間の各値(つまり色相値、彩度値、明度値)に変換する(St23)。
【0094】
プロセッサ14は、ステップSt23において変換された画素ごとの色相値がオレンジあるいは赤の領域であるか否かを判定する(St24)。プロセッサ14は、その画素における色相値がオレンジあるいは赤の領域であると判定した場合には(St24、YES)、その画素について赤色を着色した画素の画像を生成する(St25)。一方、プロセッサ14は、その画素における色相値がオレンジおよび赤のいずれの領域でもないと判定した場合には(St24、NO)、その画素には着色せずにモノクロ(白黒)とした画素の画像を生成する(St26)。
【0095】
プロセッサ14は、ステップSt25あるいはステップSt26の後、全ての画素についてステップSt25あるいはステップSt26の処理を施したか否かを判定する(St27)。全ての画素についてステップSt25あるいはステップSt26の処理を施していないと判定された場合には(St27、NO)、プロセッサ14の処理はステップSt24に戻る。つまり、全ての画素についてステップSt25あるいはステップSt26の処理を施すまで、プロセッサ14は、各画素についてステップSt25あるいはステップSt26の処理を繰り返して実行する。
【0096】
一方、プロセッサ14は、全ての画素についてステップSt25あるいはステップSt26の処理を施したと判定した場合(St27、YES)、全ての画素のそれぞれごとにステップSt25あるいはステップSt26の処理後の画像を合成することで撮像画像のデータ(図9参照)を生成する(St28)。
【0097】
以上により、実施の形態2に係る監視カメラ1は、複数の画素を有して構成され、霧あるいは靄を介して入射される被写体からの光に対応する青色成分信号、赤色成分信号および緑色成分信号のそれぞれを画素ごとに取得する撮像素子12と、被写体からの光に対応する画素ごとの赤色成分信号(R信号)に基づいて輝度信号を生成するとともに、被写体からの光に対応する画素ごとの青色成分信号、赤色成分信号および緑色成分信号に基づいて特定の色相(例えばオレンジあるいは赤)に対応する色(例えば赤色)を着色した第1画素信号(赤色が着色された画素の画像)と特定の色相(例えばオレンジあるいは赤)に対応する色(例えば赤色)が着色されない第2画素信号(例えばモノクロの画素の画像)とを生成するプロセッサ14とを備える。プロセッサ14は、輝度信号と第1画素信号と第2画素信号とに基づいて、被写体の撮像画像を生成して出力する。
【0098】
これにより、監視カメラ1は、撮像された被写体の画像の画質を劣化させる現象(例えば霧あるいは靄等の気象現象)が発生した場合でも、実施の形態1と違って可視光カットフィルタCF1を有さずとも霧あるいは靄を構成する水蒸気で散乱されやすい波長帯の光(つまり特定波長未満の波長を有する光)を遮断するので、被写体の画像の画質を改善して観察業務の効率化を図ることができる。
【0099】
また、監視カメラ1は、撮像素子12により撮像される画像の注目領域(例えば遠方の監視エリア)を特定する第2プロセッサ(例えばAIプロセッサ15)をさらに備える。プロセッサ14は、特定された注目領域で霧あるいは靄が発生している場合に、輝度信号、第1画素信号および第2画素信号を生成する。これにより、監視カメラ1は、例えばAI演算処理部151によって検知される霧あるいは靄が検知された場合に、霧あるいは靄の影響を軽減した高画質な撮像画像を生成できる。
【0100】
また、プロセッサ14もしくは第2プロセッサ(例えばAIプロセッサ15)は、注目領域の画像部分の高域空間周波数の減少量が第1の閾値A以上である場合に、注目領域に霧あるいは靄が発生していると判定する。これにより、監視カメラ1は、入力された撮像画像における既定の高域空間周波数の減少量と第1の閾値Aとの比較に応じて、観察対象となる注目領域に霧あるいは靄の発生の有無を簡易に判定できる。
【0101】
また、第2プロセッサ(例えばAIプロセッサ15)は、学習処理により形成された人工知能を用いた学習済みモデルに基づいて、注目領域に前記霧あるいは靄が発生しているか否かを判定する。これにより、監視カメラ1は、既存のAI技術(例えばセグメンテーション技術)を用いて観察対象となる注目領域に霧あるいは靄の発生の有無を高精度かつ簡易に判定できる。
【0102】
また、監視カメラ1は、被写体からの光のうち近赤外光を通過する第2光学フィルタ(例えばIRカットフィルタCF2)をさらに備える。プロセッサ14は、所定の条件(例えば昼間において霧および靄のいずれも発生していない状態)を満たす場合に、第2光学フィルタを通過した光に基づいて、被写体の撮像画像を生成する。これにより、監視カメラ1は、昼間に霧および靄のいずれも発生していない状態では、IR光をカットして撮像できるので高精度なカラーRGB信号を用いた撮像画像を生成できる。
【0103】
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した各種の実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本開示は、撮像された被写体の画像の画質を劣化させる現象が発生した場合でも、被写体の画像の画質を改善して観察業務の効率化を図る監視カメラ、画像処理方法、およびプログラムとして有用である。
【符号の説明】
【0105】
1 監視カメラ
11 レンズ
12 撮像素子
13、53 メモリ
14、52 プロセッサ
15 AIプロセッサ
151 AI演算処理部
152 学習モデルメモリ
16、51 通信IF回路
17 IR照明部
18 外部記憶媒体IF
50 サーバ
54 データベース
100 監視カメラシステム
FM1 フィルタ駆動部
LM1 レンズ駆動部
M1 外部記憶媒体
PTM1 パンチルト駆動部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11