(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022014838
(43)【公開日】2022-01-20
(54)【発明の名称】モデリング・デザイン技法による意識粒子の設計の定式化と定形化の方法
(51)【国際特許分類】
G16Z 99/00 20190101AFI20220113BHJP
【FI】
G16Z99/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020129733
(22)【出願日】2020-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】519343364
【氏名又は名称】石黒 広洲
(72)【発明者】
【氏名】石黒 広洲
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049DD06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】モデリング・デザイン技法による意識粒子の設計の定式化と定形化の方法を提供する。
【解決手段】意識粒子をシステムは、客観性を重視したモデリング・デザイン技法によりモデル化して表現する意識を定形化し、意識粒子を核にした応用である社会意識量子へのモデル展開による検証に拠って意識の定式化と定形化を図る。
【効果】これにより、社会システムの把握と社会的な課題への対応策に取り組む際の人間の思考行為と直結した共創による新しい価値創生や知的な作業の効果増強及びその結果としての生産性が向上する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
文理融合のデザイン思考の論理に従って意識を扱う思考情報技術の実用化を図ることに鑑みて、意識の定義を辞書が規定する自己と外界の夫々の認識による二元構成定義から最新の脳神経科学的知見が示す自己と外界の認識そして外界と自己を同時に認識する三元構成に意識構成を転換して定義することで技術的な扱いを深化させ電子計算機のアプリケーションソフトの実装形態を伴って本発明がなされる際に、該意識の実用的な表現である自己意識、当事者意識、連帯意識の働きから構成される思考情報技術が作用する三次元デザイン思考のモデル化の構造的な枠組みに対して自然科学の原理である現代物理学の基本的な概念を構成する量子論と量子力学及び相対性理論へのパラダイム転換の論理と知見の示唆を社会適用して社会思考化し量子の運動とエネルギー準位の論理を意識構成に展開することをあるべき前提とし、
社会的な物事に関する様々な不都合を削減するための知的行動に関する構想の策定に必要なモデリング・デザインに際して、その表現上の枠組みに先行発明の引用で得られる格子譜を適用することを第一与件とし、意識に関する科学的知見の確認と知見の示唆を社会適用した社会思考化から思考上のミッシングリンクをまとめた結果を第二与件に、デザインを担当する人間の当事者意識と他者との連帯意識に関わるデザイン思考の枠組みについて人間の意識の基本構造を中核意識と拡張意識の階層的な組み合わせで表現する脳神経科学の知見を引用し構造化して上記第一与件である格子譜で表現する図式を第三与件にした上で、
意識粒子の形をモデル化して構造と機能を組込むモデリング・デザインに際して、第三与件の科学的知見の思考情報的な示唆と第二与件の格子譜の構成要件との役割と働きを整合出来る様に構成要素の分析及び軸と場の考え方の対応を前提である全体的枠組みとしてのパラダイム上で取り込み、第三与件の要素群をモデル表現の図表上に合成して合理的な三次元構造の意識粒子モデルを構成する如く思考情報技術を駆使して設計する三次元思考モデルを用いたモデリング・デザイン技法による意識粒子の設計の定式化と定形化の方法。
【請求項2】
請求項1において第三与件の要素である当事者意識が司るワーキングメモリ上の関係性の場に於いて、同じく第三与件の要素である中核自己を第一与件の格子譜上の関係性の場の核を成す真の実在機能に設定した上で、関係性の場に就いて思考エネルギーを有してワーキングメモリ上で作動する中核自己意識の働く場とし、量子論由来の観察力と平衡観を時間軸とし頭脳内の思考に関わる記憶機能と言語機能を知的空間軸及び中核自己意識内の▲5▼悟性的な働きを関係性の機能とする中核意識粒子の基盤肢要素とし、自己意識、イメージ保持、否定イメージ、連帯意識及び中核自己意識内の▲E▼理性的な働きを関係性の機能とする中核意識粒子の行為網要素となる様に構成し、
更に該中核意識粒子を上位の関係性の場に設定し外界との関係を視野に置く内面との接点、観察と注意、反発と挑戦、外界との接点から成る逐次処理の上位行為網を構成した意識作動力で働く構造をモデリング・デザイン技法の活用によって構成した上で、
上記上位行為網の四つの要素の内容に第二与件である諸科学の知見をそれぞれの要素の分析に拠って割り当てることで合理的な思考情報技術の適用による三次元構造の意識粒子モデルを構成し、
更に獲得した外部への当事者意識作動力を駆使して第一与件である格子譜を表現図表とするモデリング・デザインの手法を展開し、
上記の統合を期した設計の考え方に則り意識粒子を関係性の核に設定した上で物的世界と事的世界を融合した世界観に沿って構成される社会のヒトの世界、サマの世界、コトの世界、モノの世界、エンの世界五つの世界を統合した全体性を有し、社会的な役割としてはミッション、コンテクスト、エンゲージメント、コンセンサス、コミットメントの五つの機能で夫々構成する統合的な役割を担う基本構成としての社会単位を成す展開方法を組込むことにより、
社会意識量子の図式が描けることを実証する如く構成された意識粒子のモデル化を実現して三次元思考モデルを表現するモデリング・デザイン技法による意識粒子の設計の定式化と定形化の方法。
【請求項3】
上記請求項1及び請求項2における意識粒子のモデル化を実現して三次元思考モデルを表現する際に定義され組込まれる外界への展開機能の存在を前提にして超社会システムに適用する様に活用し、
意識の社会化を構造的に定義すると共に逐次階層化して構造を設計し意識の働きをより広い世界に作用させることにより、
提示された意識粒子モデルの展開形となる如く構造化、可視化した社会意識量子モデルや共創概念モデルへの階層的展開を可能にするモデリング・デザイン技法による意識粒子の設計の定式化と定形化の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明が扱う意識のモデル化による意識の定式化と定形化の設計技術は、思考情報をモデル化して表現する思考情報技術(Thinking information technology;造語)に属する。従来物事は物(モノ)を中心とする物的世界観の下で物理空間と情報空間のセットで扱われてきたが、デザインや設計の様に人間の思考を扱う場合は事(コト)を中心とする事的世界観の下で意識の機能と働きの仕組みを組込んだ思考空間と思考情報空間とをセットにし意識粒子を定義した上でシステム的に技術を扱う必要がある分野と指摘出来る。しかし、後者に関しては科学領域において個別から部分的融合の状況にあり、技術開発はまだ緒に就いた段階である。産業の分野で意識が問われるのは例えば産業構造の変革(コト)に係る政策デザインや社会的な課題解決への事業的なコト起こしの必要性に対するリーダ層や企画や政策当事者の自己意識に基づく問題意識と、課題解決への当事者意識更には関係者との新しい関係性を築く連帯意識など幅広い在り方とを認識した上で、一人ひとりが自らの上記諸意識を自律的に制御することが求められる。当然それぞれの分野の担当者に於いてもリーダの意識と同期する努力が求められることから、社会的課題が山積する現代において経済や社会の多くの領域で意識の問題に対する新しい技術的方法論は極めて重要な事柄となる。
本発明は上記の事的世界観下で扱われる人間の意識を内包する社会システムに関わる領域の社会技術に関する文理融合の複合技術分野に於いて、人間の意識自体を扱う思考情報技術に属する新しい情報技術である。この思考情報技術は何かを作り出す為のデザイン思考の哲学と相俟って有効性が増すが、社会システムに係る大方の技術論ではデザイン思考哲学に踏み込まない場合が多く技術的な課題となっている。思考情報自体を主として社会的な物事のモノ(物)に係る形式知の領域である電子計算機の情報処理の延長上に物事のコト(事)を当てはめると、暗黙知と関連するアート性を有する意識の問題にぶつかる。つまり意識に関する思考情報技術の処理は有機性を有する領域にあり、生身の人間の頭脳のアナログ的な成り立ちを考えると、この技術にはアート性が付き纏うことを意味する。アート性を有するイメージ故に意識を主観の問題として敬遠する社会科学の存在は、人間が社会を構築していることを考えると課題が多い。常識的な社会心理学的な知見の適用から超越し、意識を社会との係りの中でどの様に科学するか、脳神経科学や現代物理学の意識や記憶に関する知見と示唆を社会科学や社会技術に転換する方法が求められる。事的世界観は物的世界観と相補的な関係にあるので、物理学の原理の同時性を外さない形態での適用は欠かせない。この点を考慮した形で既に先行発明や意識の統一場理論に関する関連発明で意識の役割と働きに就いての思考情報技術の開発はなされているが、開発は緒に就いたばかりであり社会技術領域の技術論として括れる体系化はされていない。
上記の技術論は電子計算機が扱う情報技術やAI、ロボットなどの人間の心の働きと関連のある思考結果を意識の在り方と結び付けるだけでなく、社会システムに於ける物事に関わる課題解決への道を探る思考プロセス自体を意識の形態を含めて取り扱うことを目的とする技術の必要性を意味する。デザイン(設計=生成技術)は人間の意図に発する特性から上記の様に課題は多い領域ではあるが、未だに完全には定形化されていない意識に就いて科学的知見を駆使して形を有する形態として捉え、その在り方と働きをコトに係る技術的観点に遡って解明した上で、意識を一つの実体ある関係性を核にした粒子として捉えてその構造、機能、役割、運動と働きまでを含めた形で定形化した三次元思考モデルを設計(モデリング・デザイン=Modeling Design)し、システム的に扱える技術開発をする事が急務な領域である。しかし、該技術開発対象が社会に目を向けた意識の働きに拠って未来のビジョンを描き人間社会の未来を共創する方法を探る為に必要な思考情報技術である事を考えると、発明成果の社会システムへの実装に関しては本発明が新しい領域に属するだけでなく学問的にも文理融合領域に属すことになり、個別の科学的分析は進展していても複合的な思考情報分野の科学者、研究者、技術者自体が概ね存在しないことへの懸念がある。更に三次元思考の概念、用語の概念、本質を捉えた定義、言葉の意味などを含めたリテラシー向上を勘案した上で、知的生産性向上の観点で様々な制度化と合わせた社会への浸透方法を改めて考慮する課題も指摘出来る。上記の技術分野上の課題に対処する為の普遍性を実装した電子計算機のアプリケーションソフトの形で技術を実現するなど使い勝手を確保することが求められる中で、上記の様な発展途上の技術領域として合理的な手法をもって実現することが求められる。
【背景技術】
【0002】
意識に関して脳神経科学と量子論の融合までは研究されているが、社会科学との融合には至っていない。一方で脳神経科学的な意識を心理学的な観点で捉える教育分野など人文科学での扱いまでは研究されているが、やはり社会科学的な融合までは届かない。認知科学においては意識を生み出す脳のメカニズム解明の観点で脳神経科学との融合が研究されているが、社会に於ける人間の行動とは直接結びついていない。従って現代が情報社会とは言っても科学的な成果が思考情報的な観点の技術開発に結びついていない。思考情報技術分野は50年以上前に科学的理論がほとんど存在しない状況に於けるパターン認識技術へのチャレンジが文字認識と音声認識の分野で着手され、指紋認識、顔認識、網膜認識などに進展して来た技術の発明状況に類似した歴史的背景を持つ開発環境の初期状態にある。上記で説明したデザイン思考領域の技術は、その特性を大別してプラクシス技術(実践)及び生成(ゲネシス)の意を含むポイエーシス技術(非特許文献2参照)に分類した時の後者に属するものであり、物事の生成に関わる創造を扱う役割を果たす機能特性を有する。ポイエーシス技術は技術開発の対象となるものであり、科学的な知見と人間の心の在り様に関わるニーズを基にした技術的な観点において、合理的で正義を有する正当性に基づく哲学的な考え方を媒介にした着想と発想に依って組み立てられモデル化して表現されることで実用化が可能になる。しかし人間の意識が係る領域の技術はまだ十分な積み上げが為されていない事が背景に存在する前提の認識が必要である。本発明で明らかにされる様に、非決定論的な特性を有する事柄に関しては何れも意識の在り方が関わって来る背景を有するので、共通的な課題として一見主観的に感じられる意識に関して、意識の機能と働きを客観的な特性を持たせた形で定形化させることを試みたのが、発明のターゲットとなる三次元思考モデル技法を駆使した意識粒子(Consciousness Primitive)のモデル化である。意識の技術的取り扱いは意識それだけで有効化されず、意識の役割や働きが期待される物事に関する思考行為と組み合わさって有効になる。具体的には関連発明(特許う文献4)で提示される意識の統一場の法則に従った意識作動力を有した上で、本発明に係る意識粒子の実施例で示す社会意識量子(Socio-consciousness Quantum Model)のモデル化に加え、上記一連のデザイン思考に関わる先行発明の中で個の意識あるいは自己意識、当事者意識、更には連帯意識の形で包括的な言葉(用語)として用いられている。本発明の技術領域に関わる意識を粒子で扱うレベルの普遍的な複合技術は存在しないので直接参照は出来ないが、個別の領域に関わる科学的知見を公知の与件として分析して参照し示唆を得ることが重要になる。なお上記「個の意識」の個の意味自体に関しての留意点が存在し、本発明だけでなく関連発明(特許文献1~4)においても「個」の扱いが重要である。個は個人だけでなく組織化されない塊としての個人グループや組織化された個別の各団体を意味した形で論理を組み立てることが可能であり、個の上位の組織が個からみた社会システムであるとの理解が必要なことを以下の説明に際しての用語的な留意点とする。
【先行技術文献】
【0003】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許願 2020-21907
【特許文献2】特許願 2020-21908
【特許文献3】特許願 2020-21909
【特許文献4】特許願 整理番号 HISHIR2-T15
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】脳神経科学;『意識と自己』(A.ダマシオ著/田中光彦訳;講談社)
【非特許文献2】物理学;『量子力学と意識の役割』(竹本忠雄監訳;たま出版)
【非特許文献3】物理学;『脳と心の量子論』(治部眞里、保江邦夫;講談社)
【非特許文献4】認知科学;『意識認知科学』(苧坂直行編著;共立出版)
【非特許文献5】物理哲学;『断片と全体』(ボーム著/佐野正博訳;工作舎)
【非特許文献6】哲学;「意識と生命」『精神のエネルギー』(H.ベルクソン著/宇波彰訳;第三文明社)
【非特許文献7】科学;『精神と物質』(シュレーディンガー著/中村量空訳;工作舎)
【非特許文献8】科学;『タオ自然学』(カプラ著/吉福伸逸他訳;工作舎)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
意識粒子の概念と構造を解明し技術的な方法論を明らかにする為には、社会的倫理を含め全体性を確保した価値創生の社会技術の開発が求められ、この要求に対処するには意識が働き場としての社会の中での意識の在るべき姿を分析しておく必要がある事を念頭に置いて諸要素を把握する。つまり解決すべき課題は単なる技術開発ではなく、社会的なソリューションを求めた文理融合の観点で科学と哲学を融合する学際的な共創技術領域の開発になる。従って科学的な知見と人間の心の在り様に関わる知見の融合を基にした技術は、合理的な正義を根拠とする正統性に基づく哲学的な考え方を媒介にした着想と発想に依って組み立てられる必要がある。現状では、脳神経科学的な意識を心理学的な観点で捉える人文科学或は社会科学での扱いまでは研究されているが、社会心理学的見地に頼る姿勢を卒業した上で脳神経科学との融合に就いて現代物理学を媒介した社会科学的な融合に届かせる様な段階にはない。本発明が開発対象とする意識論の領域では、心の動きの要である記憶と意識の問題は量子論との融合にまで知見が展開される状況を取り込んでいるが、社会的な物事への展開と定式化は為されていない状況であり、この状況の打破が求められることは上記で触れた。更にアート性を有する如くの事柄イメージに基づいて意識を主観の問題として敬遠する社会科学の存在は、人間が社会を構築していることを考えると課題が多く理論に基づく客観的な方法論による意識の定形化が必須である。特に意識をどの様に科学するか、脳神経科学や現代物理学の意識や記憶に関する知見と示唆を社会科学に転換する方法が求められる。既に先行発明や意識の統一場理論に関する関連発明で意識の役割と働きに就いての思考情報技術の開発はなされているが三次元思考モデル技法としての開発は緒に就いたばかりであり、技術分野として括れる体系化はされていないので進展が求められる。
その為未だ定型化されていない意識に就いて実体的機能を有し意識の統一場で運動する粒子状の構造体として捉え、その在り方と働きをコトに係る技術的観点に遡って解明した上で、意識を一つの実体ある粒子としてシステム的に扱い共創行為に耐える形態を組込んで技術開発をする事が急務である。しかし、地球環境の保全や世界平和への未来ビジョンを描いて価値ある人間社会の未来を創る方法を探る為に必要な思考情報技術を考えると、該技術の社会システムへの実装に関しては本発明が新しい領域に属するだけでなく学問的にも文理融合領域に属すことから上記で指摘した様な人的要素に懸念があり、更に知的生産性向上の観点で様々な制度化と合わせた共創に基づく社会への浸透方法を改めて考慮する社会実装的な課題も指摘出来る。この観点から、ここ数年日本学術会議において人文・社会科学と自然科学との融合領域での課題と対策が議論されている状況があるが、物的世界観からの脱却に到っていないことが課題的な例として指摘出来る。結局のところ人文・社会科学の中心的テーマである人間を起点としたコトに係る事的世界観への転換が出来ていないことが指摘される。この課題の解決に向かうためには、アプリソフト上で扱える定形化に加え、意識の定型化つまり意識粒子モデルの構成と意識粒子論自体の構築過程と手順を明らかにし、更に社会的機能を含めた形の社会意識量子モデルの提示によって事的世界への理解の深化手段と社会的な共創力への視座を準備しておくことが重要と捉えて対処する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
課題は大きく、それだけに手段確立には課題の技術的な問題の解決も含めた周到な準備が求められる。脳と意識の働きに関する科学的な取り組みは脳神経科学だけでなく現代物理学や認知科学の領域においても上記の如く様々取り組まれてきたが、学問の領域にも流れが存在し1980年代から2000年前後にかけて大きな波があり、その後世代交代やフェーズ的な変化が生じ人材面でも変化の様相が見られる。その中で分析を中心とした科学が立てた理論を実験のフェーズに移行した場合もあるが、学際的な交流の薄さと相俟って人文科学や社会科学など外の領域からは進行状況が見辛く新しい価値の創生にも時間を要する。その為物理的原理が実用に供されるまでに半世紀を必要とする場合があり、技術開発に活用するのは容易ではない。その上コト(事)に係る技術の領域では社会技術そのものへの必要性認知すら薄く、部品的要素の確立に就いても使う立場にある経営や政策策定の現場では技術化が困難な為に、工学的な分野と比べると学術的にもリンクが薄く実用化の道は遠い。社会技術をエンジニアリングの切り口で捉えた議論もされたが、思考の次元が低いため実用化に至っていない。結局現場で為される工夫レベルによる社会技術は個人の才覚に任されている状況にあり、人間的要素の多さと関連して知的生産性の個人差が大きい。この様な認識の下で無いものねだりではなく現状手に入る個別の科学的知見を分析した上で、ミッシングリンクを発見し先行発明と融合した三次元思考の普遍的統合方法を用いて編み出したアプリの形で定式化を図った技術的手法を提供し、新しい価値の共創が可能な状況を創り出す事に拠って上記の状況を脱する手掛かりを得る必要がある。
一方経済的な論理からは半世紀も待てないことから社会倫理をスキップして人間性を軽視する傾向が強く、学術と産業の相克問題が出現して目先の技術開発が先行する傾向があり、最近ではAIの活用にその傾向が顕著である。科学的に最も解明が困難とされる意識は最後の聖域と見做され機械技術化への関心が存在するが、人間性の根幹であることから取り扱いに留意した上で倫理問題を組込んだ技術開発が求められる。つまり社会経済的なインパクトを人間の側から吸収すること抜きに技術開発が語られることを避けたい。その上で上記の様に意識の在り方を思考して技術の形にする方法論が不都合な状況に置かれて来た大きな要因は、科学が分析主体による客観性を追求した関係があって分析結果の統合に注力していないところが大きいと認識される。ここでは「統合(合成)による分析(Analysis by Synthesis)」の手法で推論を交えて意識構成の技術的な理論を追求する際に、意識に係る科学的な知見をデザイン思考の論理を踏まえた分析と統合の操作を行なう中で意識の概念を量子場で運動する三次元構造のモデル化(モデリング・デザイン)によって定形化した粒子で捉え、先行発明と融合した形の公理的な原理の下で普遍的な構造化を図り、構造化した意識粒子を事的世界の下での実体的なモデルの形態を有するシステム要素に仕立てると共に、システムを構成する社会単位の役割を果たす社会意識量子モデルへの展開の可能性を組込むことを確認して意識のモデル化つまりモデリング・デザイン技法による定形化を組込んだ定式化を図る。
【0008】
本発明は具体的には
図1に示す意識粒子のモデリング・デザイン手順に従って為される。つまり意識粒子の定形化とこの形を得るための意識論的な大前提そしてステップA~ステップDで構成される科学的な知見が有する論理構築の流れの中で、主観的とされる意識を客観的な論拠を持つモデル化の方法論としてパソコンなどの電子計算機のアプリソフトの形で普遍的な形態で設計して定形化するべくモデリング・デザイン技法により全体設計の定式化が為される。
流れの細部を説明すると、
図1「大前提;粒子の在り方の確認と認識」に関して、意識論に対する古典物理学から現代物理学への原理転換を認識する為に、まず意識と自己の関係を解明する脳神経科学領域の非特許文献1を参照すると『意識とは有機体がそれ自身とその周囲を自覚することだが(非特許文献1;P11)、その基本的なレベルから最も複雑なレベルまで、対象と自己が一体化した統一的な心的パターンである(同じくP21)。心と行動の関係或は背後にある機構に関係しており、心と行動は有機体の脳の内側にある脳との密接な関係にもとづく。心、行動、脳のトライアングルが明らかになっている(同じくP24)。私的な心、公の行動、脳の機能の三つの複雑な関連付けが理論的に合体される意識の構造が在りそうであり構造的仮説を提示する(同じくP26~P27)。』の知見が示す様に、意識は有機体である一人ひとりの個が他と独立して個々の脳内に個別に保有するもので三つの構成要素を有する構造体として理解出来る。この三つの要素は『意識を持つ生物は、自動調節の世界(基本的ホメオスタシス;原自己)と、生起以前の状況に対する新しいイメージを生み出す世界(創造の世界)を結び付けることが出来る(同じくP393)。意識が有益なのは、意識が個的な有機体の命に認識(注意と関心)を集中させているからである(同じくP394)。』及び『自己の意識を包含する意識の状態が生存にとって不可欠であり、行動と認知の装置全体が自己保存に向かい、最終的に願わなければならない他の有機体との協力へ向かう(同じくP395)。』が示す基本的な知見と非特許文献1(P23~P46)の本文中の詳細記述とを参照して意識の働きの大枠を読み取り社会適用すると、自己を認識する意識、外界を認識する意識、そして自己と外界を同時に自己*外界の脳の機能に関わる関係性の形を認識する意識の三形態(トライアングル)が理解出来る。この三形態の内容を実用面から簡潔に表現すると、意識は外界との関係性に於いては自己意識、当事者意識、連帯意識の三つの主要素から構成されると読み解ける。なお当事者意識と連帯意識は内容を読み解いて本発明流に再定義した簡易表現を採用する。次に自己の認識に始まる上記の様な三形態をとる有機的な構造体としての意識の特性はアルゴリズム化が出来ず意識は剛体ではないためニュートン力学で説明できない事が問題として指摘出来るので、物理学の原理に関してパラダイムを転換した量子論に基づく現代物理学の適用を大前提として採用する必要がある。その上で量子論を心に適用した非特許文献3が『心とは記憶を蓄えた脳組織から絶え間なく生み出される光量子の凝集体であり、場の量子論によって記述されるその物理的運動が意識である。』と理論化して説くところを基本に考えれば、意識は運動を表現出来る形を有すると共に形は構造を持つことに留意することになる。運動と形は相対性原理に拠って変換可能であり、形(構造体)は運動エネルギーを有する一方で、摂動エネルギーに拠ってエネルギー準位を変え逆に思考エネルギーを消費して形を変える事が理解される。この様にパラダイム転換の論理と知見の示唆を社会適用して社会思考化することが前提となって三元的な意識の働きが展開出来ることになる。有機的な構造体の表現方法が次の問題であり、意識の形を物理的に表現出来ないことから概念をモデル化することが求められると共にモデルの表現方法の確保が必要となり、更に運動体自体が運動する場所(場)が必要になる。意識が思考過程の機能であり上記の如く新しいイメージを生み出す世界つまり創造の世界を描く機能を実現すべきことを考慮すると、先行発明(特許文献1~3)で提示されたデザイン思考エンジンと深化型構想設計法の機能そのものが適用できると理解される。従って意識の三形態を吸収した上で、思考情報技術が作用する三次元デザイン思考のための表現方法である先行発明(特許文献1~3)を引用して注釈を付加した第一与件である「
図2格子譜のシステム表現形」で示す格子譜を活用することが有効になる。
図2には引用した記述文法の要約を示す注1~注8が付されていてデザイン上及び思考操作上の利便性に資する。
図4~
図8の表現法の構造と文法は
図2と同様に横軸に時間軸概念要素、縦軸に空間軸的要素が配置される。基本構造は時空軸と関係性軸で構成される物理空間を思考空間に投影したものであり、核となる真の実在が基盤肢と行為網の各要素群を意識の働きで束ねている特性を有する。上記
図5の如く第三与件の要素である当事者意識が司る頭脳内のワーキングメモリ上の関係性の場に於いて同じく第三与件の要素である中核自己を第一与件の格子譜上の関係性の場の核を成す真の実在機能に設定した上で、関係性の場▲R▼に就いてエネルギー準位的性格の思考エネルギーを有してワーキングメモリ上で作動する中核自己意識の働く場とし、量子論由来の観察力と平衡観を時間軸とし頭脳内の思考に関わる記憶機能と言語機能を知的空間軸及び中核自己意識内の▲5▼悟性的な働きの関係性機能とする中核意識粒子の基盤肢要素とし、自己意識、イメージ保持、否定イメージ、連帯意識及び中核自己意識内の▲E▼理性的な働きの関係性機能とする中核意識粒子の行為網要素となる様に構成し、更に該中核意識粒子を上位の関係性の場に設定し外界との関係を視野に置く内面との接点、観察と注意、反発と挑戦、外界との接点、から成る逐次処理の上位行為網を構成した意識作動力で働く構造がモデリング・デザイン的に構成された上で、上記上位行為網の四つの要素の内容に第二与件である諸科学の知見を夫々の要素の分析に拠って割り当てて合理的な思考情報技術の適用による三次元構造の意識粒子モデルを構成した上で、更に獲得した外部への当事者意識作動力を駆使して第一与件である格子譜を表現図表とするモデリング・デザインの手法を展開し、意識粒子を関係性の核に設定した上で社会の物的世界と事的世界を融合した世界観に沿って構成されるヒトの世界、サマの世界、コトの世界、モノの世界、エンの世界五つの世界を統合した全体性を有し、社会的な役割としてはミッション、コンテクスト、エンゲージメント、コンセンサス、コミットメントの五態の機能で構成する統合的な役割を担う基本構成としての社会単位を成す社会意識量子の図式が描けることを実証出来る意識粒子のモデル化(モデリング・デザイン技法)を図る三次元思考モデル技法による意識粒子の定式化と定式化の成果としての定形化が可能になる。
【発明の効果】
【0009】
意識に関して科学的に全てが解明され理論化されている訳ではない状況にある一方で、日常的には領域や分野において様々な意味を有した形で使われるのが言葉としての実態である。社会科学的には敬遠されて聖域化される中で、心や精神、魂や気など様々な表現の日常語でもあり気軽に使われていることから、科学の領域では扱いが難しいとも言える。しかし産業で使われる技術は、必ずしも全て理論化されていなくても論理的に矛盾が無く実用性において顕著であれば経済的な効用が期待できる。その一例が背景技術で説明した人間の頭脳に於ける思考形態を模したパターン認識技術である。該技術は思考上の処理方式の生成に係るポイエーシス技術(開発技術)に属する思考情報技術を用いて必要な手順を踏んだ上で思考モデルとして構成されたものである。ポイエーシス技術による本発明に依って機能が可視化されて定形化に至った意識粒子モデルは、関連発明(特許文献4)で定形化された意識の統一場において価値創生の働きが有効になる事を考慮した上で、両者は補完的な役割を果たすことを認識して三次元思考モデル技法で構成される意識理論を深化させ実用性を高めたものである。意識粒子モデルは社会適用を考慮した社会意識量子モデルに実施例として実装され、更に共創力に展開されて実用性の検証が為された結果以下の様な効果が期待できる。
1)人間の行動は意識が働いて為される事柄であり、意識の在り方と働かせ方を根本から理解しておくことが物事を成す際に重要であり、事的世界上で必須となる要素である。従って意識の定形化は社会のビジョンや構想を担うリーダ層や政策や企画策定に係る専門家にとっては必須の事柄と言えるが、上記の様な常識的理解で事(コト)が為される傾向にあり、知的生産性だけでなく価値創生の成果までが危ぶまれ学術会議もこれを指摘している。つまり思考結果は可視化された形が無いと良否の判断に確定性が示せない。社会の中枢と現場の間の齟齬の要因となる。本発明及びその実施例の成果が示す思考の枠組みを採り入れることで、漠然とした意味ではなく定型化された形で意識を自ら客観的に使いこなすことが可能になり望ましい状況が得られる。この事を考えると、事的世界観の学術展開は産業界の側から学術の在り方への提言として為されることも必要であり、学術的な可能性や有用を云々する議論ではなく、必須であるとの意識転換の上で事理学(造語)確立への強力な推進が求められると指摘出来る根拠が得られた。
2)意識は思考上の機能であるが意識が感情や情動の形で物事と関わり社会的な機能を果たすことから、定形化した形態の意識の理解は命の在り方そして生存へのリテラシーを高める意識理解の展開力強化を媒介として作用する社会的効用を有する。人間は意識を失うもしくは気を失う(気絶する)と外界とのコミュニケーションすら取れなくなることを考えれば、自ずと重要さが明確になる。つまり意識の粒子概念を可視化した図表による定形化は、生存・再生や適応・共生に対する意識機能を根底とする事的世界への入り口として重要な役割を果たす。
3)外界に対する意識の根源に良心を置く行動原理によって意識粒子が組み立てられることから、万一良心に欠けた行動が出現した場合その原因を意識の論理分析に遡って明らかにして対処し、健全性や正統性を有する行動に是正し新しい価値創生に資する手掛かりを得ることに繋がる効用を有する。
4)意識の思考上の姿を可視化することにより、統合的な観点で活用できるだけでなく、物事の細部の在り方の把握に対して統合による分析(Analysis by Synthesis)の手法を用いることが可能になり、今まで以上に多面的に思考を解明する手掛かりが獲得されると共に細部要素間の機能や働きの価値創生に向けた共創的相互作用の推進にも資する有用性が得られる。
【0010】
次に科学的知見から示唆を受ける経過の中で得た学術的な観点での論理的な成果を掲げ、参照した科学的知見に敬意を表しながら意識の定形化に係る学術的な観点から見た効果を列挙する。
5)意識の理論的な観点を組込んだ定式化が示す知見は、学術体系の再構築に資する重要な視点を有することに触れると、まず自然科学の根本原理は物理学であり物的世界観或は唯物論的思考体系が確立され個々の領域が医学や様々な分野の工学などに分化し技術開発が為されている。一方で人文・社会科学の領域では物理学の直接的な適用が困難な中で、一部の分野では自然科学との融合意識の中で既に現代物理学の知見の活用がなされ始めているがまだ主流ではない。人間の意識が関わる事的世界を物理学の原理で全てこなすことは困難であり、一部に物理学からの取組がなされてきたが論文を基本とした議論に留まり技術開発には至っていない。意識粒子モデルの多面的な意識機能の働きを含めた定形化は、意識の統一場理論及び社会単位としての社会意識量子モデルの明示と相俟って、事的世界の背後に控える事理学的な原理の在り方に繋がる示唆が観察できる。従って事理学の定式化概念からは未だ道遠しの見方がある中で、本発明が事理の解明の嚆矢となり得る。コトの根源である生命誌由来の生命原理の吸収を考慮すると、生存と再生及び棲み分けと適応に関する意識の基本機能の確認と可視化、この可視化を通した意識理解の深化、そして得られた理解の深化に基づく意識機能の展開力の把握がコト(事)に係る人間の情動の作用把握に資することから、行為の根源明示に有用な事が理解され人間の良心に基づく行動の原理が得られる。
6)物理学信奉の唯物論的スタイルから事的世界観を導入して唯識論まで思考の幅を広げるスタイルへの意識転換には文化的な要素が重要な位置を占めることから、日本人の精神構造の基本と言われる多神教的判断力に配慮した論理的な裏付けを伴うデザイン哲学の導入が必須であり、逆に日本が国際貢献出来る領域でもあるる。また日本には「物事」なる言葉が存在し日常的に使われていることから、モノとコトを融合して考える文化があるとも言える。関連発明(特許文献4)で体系化した意識の統一場の論理の下で本発明の基本である連帯的関係性と連帯思考を司る意識粒子の定型化を支える思考情報技術の活用効果に就いて、技術領域の対応を超えた主張であると受け止める批判が出るとしたら、これは科学と産業との連携の在り方への批判に繋がるものであり不毛の議論に行き着く。本発明の効果はこの様な議論に終止符を打ち物理学と今後定式化すべき事理学を融合した多面的な論理展開への糸口を提供するものであるが、この糸をどの様に手繰っていくかの方向性は既に先行発明(特許文献1~3)で提示済である。
7)本発明に係る意識の定型化の三つのモデルである自己意識モデル、意識粒子モデル、社会意識量子モデルにおいて、最初の自己意識モデルは物理空間である頭脳内の実体性を脳神経科学の成果に示唆を受けてモデル化した思考空間の転換役割を担うものであり、自己意識モデルの連続線上で思考情報技術に拠って残り二つの思考情報空間上のモデルが形成出来ることで上記事的発想への橋渡しが可能になる。上記で示した意識粒子モデルと意識の統一場(特許文面4)に加えて、思考の面で物理空間から思考情報空間に空間展開するデザイン思考エンジン(特許文献1)を導入し、該エンジンのデザイン対象を超社会システムで定義(特許文献2)した上でデザインのためのビジュアル言語を定め(特許文献3)て全体を統合的に活用することにより、物事のコトに関するデザイン思考が構造化と可視性を伴って円滑かつ効果的に遂行出来て、事的世界観下でのプロセスとしての物事の扱いに就いて構造的な可視化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】意識粒子のモデリング・デザイン手順を説明する図
【
図4】自己意識モデル(自己意識概念の物理構成モデル)の図
【
図7】“つくる”への社会的共創力のコミュニケーション構成モデルの図
【
図8】共創の仕組み(”つくる&おこす”のプロセスモデル)を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
上記大前提である全体的な枠組みに従った
図1の定式化手順の「ステップA;科学的知見の確認とリスト化からミッシングリンクをまとめる」のステップから発明の実施がなされる。ステップAの科学的知見の元は非発明文献2~6であり、細部ステップ▲1▼~▲6▼で構成される項目の分析結果は
図3に表形式でまとめて本発明の第二与件とする。補足説明を加えれば「▲1▼量子力学と意識の役割;現代物理学から意識を探る」においては、物理学と超心理学の立場からの意識の役割に対する議論が中心であり、意識の枠組みを理解する視点を提供すると共に意識が現代物理学の枠組みを導入すべきと示唆し、社会的な事柄との思考上の接点も提供する。この中で現在のノイマン型電子計算機の生みの親であるノイマンが意識の構造と処理の基本が電子計算機の基本構造と処理形態と類似的に発想出来るヒントを示しているのが興味深い。次に「▲2▼脳と心の量子論;量子場とワーキングメモリの確認」は記憶に係る機能の物理的な研究成果の説明をしており、量子場のヒントを与えてくれる。しかし、記憶の対象は非特許文献1で紹介される頭脳内のワーキングメモリの機能が中心であり、次の「▲3▼意識の認知科学;一元論と二元論の分析」に於ける二元論と対比して理解する要素が強い。▲2▼と▲3▼から得られる示唆で重要な事柄が通常記憶の機能と働き及びワーキングメモリの確認である。まず記憶に関しては経験した物事がイメージで記憶されるのではなく、脳内の個々の神経細胞の運動エネルギーの程度で蓄えられており、何らかの思考エネルギーを与える意識の働きによって脳内にイメージとして浮かび上がって来るものであり、浮び上がる場所が別の臨時的な記憶要素であるワーキングメモリとされる。このワーキングメモリの働きに関しても様々研究されているが、ここでは該ワークングメモリがデザインに関係する思考空間に於ける関係性の場となり、現実の社会に於ける社会的関係の場を思考情報表現する機能を有する事を理解して社会適用して活用する。次の「▲4▼断片と全体;全体的世界観における東洋思想の対比」は物理学者による哲学的な論点を含むが、意識を波動で捉えその流れに世界菅を導入する観点が大きな示唆と検証的視点を与えてくれる。「▲5▼精神のエネルギー;「意識と生命」から読み解く」においては、哲学者も意識に関して紀元前から関心を示して来たが、生命との関係を切り口に意識を分析する視点は有機体の活きる力を意識に基づいて精神的に発揮する思考エネルギーの考えを発想する上で重要な観点を与える。次は量子力学の基本理論であるシュレーディンガー方程式を提示したご本家による「▲6▼精神と物質;東洋の梵我一如の物理学的理解」であり、▲5▼のボームの論理と合わせて理解すると示唆の質が向上する。両物理学者が東洋の思想として身近な処では華厳教学と呼ばれる哲学に関心を寄せるのは西洋の思想に行き詰まりを感じる故と明言していることに注視する。上記▲1▼~▲6▼をまとめた
図3上の注書きにある「分類コードは格子譜リンク(▲r▼は関係性論理レベル)」の意味は分析した各項目に付したもので、
図2を与件とした格子譜上の各構成要素の記号とリンクしている。但し小文字▲r▼は関係性の論理に限って記述されている事を示し、大文字▲R▼は格子譜の記述文法で関係性の場の概念を示し論理と機能の両面を代表する記述であるが、
図3中では概ね論理のみが取り上げられていて機能面がミッシングリンクとして指摘出来る。なお概ね
図3の分析結果の元になる文献の後から意識に係る非特許文献1が出版されていることから非特許文献1以降の議論が待たれるが、本発明では発明者自身の知見を加えることでカバーしている。なお上記の文献類は数学的な表現がほとんど無く、論者が意識の役割を社会的な応用面にある程度配慮している様子が理解出来る。
さて
図3のまとめ部分が重要であり特に分類コード▲R▼と▲r▼を付した項目に関連するミッシングリンクなる発想に触れると、大きく「▲イ▼相互作用の場の認識」、「▲ロ▼表現/つくる場の定式化」、「▲ハ▼意識現象の対象定義」の三つの視点が欠如要素として浮かび上がる。▲イ▼は上記知見の分析のほとんどのケースで関心が示されていない事柄であり、相互作用の必要性までは認識されるが場の必要性に言及されていないのは、一元論は分析志向的現象で論外として二律背反的な二元論までしか届かない思考体系が背後にあるので、意識論(非特許文面1)が説く意識の三態論(トライアングル)を扱うことが難しい。また意識論の論者自身が場の概念を強調していないと感じる。頭脳内のワーキングメモリを記憶スペースとするか、記憶を操作して処理をする思考エネルギーによる実体性を有するプロセッサの一部と理解するかに関連がある。東洋の華厳教学は関係性を重視するが、思考における「関係性の場」の発想は明示されていない。現代物理学の場の理論に対するミッシングリンクの一つと認識できる。▲ロ▼は▲イ▼と関連する論点であり、相互作用の結果を表現したり創造作用によって何かを作ったりする機能発揮の場を意味するので、▲イ▼と同様な経過で失われた要素となる。追い打ちを掛けるのが分析志向の科学の姿勢であり、技術の領域である「つくる」機能への視線そのものの欠如とも関わる。更に▲ハ▼は▲イ▼や▲ロ▼の場で生まれた思考情報結果を形式知の形でモデル化する時の記述に係る事柄であり、やはり「つくる」とも関連するが、▲ハ▼も意識の大きな機能である創造作用との行き違いを含めた欠如であり、ある種の意識の社会的関心への断絶を示すミシングリンクと指摘出来る。これらのミッシングリンクを埋めて意識と社会的な事柄をリンクした上で、本発明の成果を第一与件である
図2の図表を用いたモデル化で形式知表現を行い後述の
図5や
図6のモデルとして示す。背後にミッシングリンクを埋める根拠が存在し、それは先行発明(特許文献1)で提供されるデザイン原論(河北原論)に基づくデザイン哲学とこれを技術に展開したデザイン思考エンジンである。
【0013】
次に「ステップB;意識の形としての構成(意識のトライアングルからの発想)」が重要課題となるが、非特許文献1(ダマシオ著『意識と自己』の
図10-1;P401~P404参照)で示される意識の流れの表現を引用し、同文献の各所に分散する論理記述を読み解き必要箇所に組み込むことで、意識の基本構造を客観的に理解するために描いた
図4の疑似三次元表現(2.5次元)に拠って意識のヘリコイド状の基本構造をモデル化して再定義する。
図4は意識の核となる基本的な命のホメオスタシスから良心そして拡張意識までの階層的なヘリコイド構造を、時空面と関係性軸で構成される三次元思考空間を疑似三次元表現する
図2の格子譜上にモデル化した図表である。自己意識モデルつまり自己意識概念の物理構成モデルを示す
図4上の中核意識を一般的な社会に置ける呼称である自己意識に当て良心、創造、共生、適応などに展開される拡張意識表象の意味を読み解いた上で、上記トライアングルの発想を受止めてデザイナー自身(自己)の当事者意識及び自己と外界(社会システム)との連帯的な関係性に着目した連帯意識に分節化して理解する。
図4上の自己意識構造の定義は与件である
図2で示す格子譜によるデザイン思考表現と記述文法を適用したモデル化であり、上記非特許文献1の意図を理解しながら発明者の感覚と経験を織り交ぜて読み解いた結果としての本発明の第三与件となる。なお
図4に付された八つの注書きによって
図4の成立過程が明記されるが、「注8自伝的自己とその働きは老荘思想に於ける無為自然の状態と関連する」には非特許文献8(P17~P50参照)が指摘する現代物理学と東洋の神秘主義の思想の接点が組み込まれており、脳神経科学が進展した現代では神秘ではなく非特許文献1で明示される「自伝的自己とその働き」が脳の自然状態つまり言語が働く前の状態概念である「今ここの作用(自己の感覚)に基づく心的パターンの生成」を意味することが一義的に理解される。前記非特許文献8(P17~P50参照)が提示する老荘が説く道(タオ)は、
図4上の拡張意識表象が係る「どちらへ向かう」の方向性を連帯つまり自己中心を脱しより広い世界に意識を向ける事と連続した考え方と理解出来るので、現代物理学から見た東洋思想に係る非特許文献8の主張が脳神経科学の成果を体現する
図4に表現出来ている事も与件であり、
図5の意識粒子モデルに引き継がれる。
【0014】
図1の「ステップ▲C▼;粒子の形としての構造と機能の定形化」は上記三つの与件とこれらに関連する上記の考察内容を念頭に入れながら、技術的要素を統合した本発明の実現形態を示すものである。まず細部ステップ「▲a▼構成要素の分析及び軸と場の考え方」においては、
図4で分析した知見の分類と格子譜の要素定義とを組み合わせ一部重複する項目を整理する。軸の要素は基盤肢▲1▼~▲5▼と行為網▲A▼~▲E▼そして場の要素▲r▼と▲R▼は上記のミッシングリンクの議論を踏まえて関係性の場に整理して割り当てる。量子論的な留意点は時間軸上の構成要素であり、観察力と観察の結果得られる平衡観の構成である。また、物理空間上の意識構成の
図4で示す基本的なホメオスタシスは中核自己を含む中核意識として
図5で示す実体的な真の実在を代表し、自己が「今ここ」に居るのを認識した事柄に結び付く。細部ステップ▲a▼の結果を用いて次の細部ステップ「▲b▼要素群を合成して合理的な意識粒子モデルを図式化する」に拠って
図2の格子譜を利用した「
図5意識粒子モデルの構成と機能」を得る。
図5に於いて第三与件の要素である当事者意識が司る頭脳内のワーキングメモリ上の関係性の場に於いて同じく第三与件の要素である中核意識を第一与件の格子譜上の関係性の場の核を成す真の実在機能に設定した上で量子論由来の▲1▼観察力と▲2▼平衡観を時間軸とし頭脳内の思考に関わる▲3▼記憶機能と▲4▼言語機能を知的空間軸とした中核意識粒子の基盤肢要素とし、▲A▼自己意識、▲B▼イメージ保持、▲C▼否定イメージ、▲D▼連帯意識を中核意識粒子の行為網要素と為る様に構成し、更に該中核意識粒子を上位の関係性の場に設定し外界との関係を視野に置く▲a▼内面との接点、▲b▼観察と注意、▲c▼反発と挑戦、▲d▼外界との接点、から成る逐次処理の上位行為網を構成することで、この行為網を作動力とする意識粒子がモデリング・デザイン的に構成出来る。▲a▼~▲d▼の内容は第二与件である諸科学の知見をそれぞれの要素の分析に拠って割り当てた
図3のリスト上の配分に照らして引用することで
図5の思考空間上の意識粒子モデルが得られ、思考情報技術の適用で与件である格子譜を表現図表とするモデリング・デザインによるシステム表現の手法が提示された。すなわち関係性の場の中心機能となる
図4の拡張意識(良心含む自己意識)を引用し、外界との相互作用を重視した形態のモデルとしれ再構成した
図5の中核意識粒子は量子場に於けるエネルギー準位を有し、内面との接点、観察と洞察、反発と挑戦、外界との接点で示した行為網要素が示す意識作動力による行為的操作が関係性の場のエネルギー準位を上げて行くことで、外部への当事者意識作動力を獲得する図式が描け、意識粒子としてのモデル化による意識の定形化が整うと共に社会を五つの要素の統合で表現する
図6の社会意識量子モデルへの展開に繋がる。
【0015】
本発明で命名した意識粒子の名称は、人間一人ひとりが個別に所有する外界から独立した個の意識を一つの関係性を核に有する形ある粒子として区分し定形化したものであり、機能を大別すると自己その物を認識する自己意識、自己と外界との関係性を同時に認識する当事者意識、そして外界に対しての良心、創造、適応、共生など高次の理性を伴う連帯意識から構成され、且つ粒子としての運動と運動体としての思考エネルギーの定義と働きは現代物理学の原理に従うものとする。用語的には意識粒子は意識子の呼称もあり得るが、意識の形自体は内部に場を有することから量子論で理解出来なく、この意識は量子場である意識の統一場上で運動し社会的活動の統合的な意識作動力となる要素として理解する。従って粒子の名称は同様な意味を有する別の呼称として連子、統子、構子、関子など様々掲げられるとしても、これらは本質的な事柄ではなく構造と関わって意味的な定義が優先される形で構成されている。
【実施例0016】
「
図6 社会意識量子モデル(社会単位)」は超社会システム型の社会単位の構成に意識粒子を適用した普遍的且つ実用的な実施例であり、中心に量子モデルの核となる意識粒子を配置したデザインで設計し構成される。
図5と同様に
図3で示された知見の社会的部分を引用した上で、
図6のモデルは物的世界と事的世界を融合した世界観に沿って構成されており、ヒトの世界、サマの世界、コトの世界、モノの世界、エンの世界で構成される五つの世界を統合した全体性を示し、社会的な役割としてはミッション、コンテクスト、エンゲージメント、コンセンサス、コミットメントの五つの操作的機能で構成する五態満足の世界を呈する統合的な役割と働きを担う基本構成を有する行為網から成る社会単位(Social Primitive)を構成している。
図6の基盤肢は▲1▼命の論理、▲2▼適応の論理、▲3▼質の認識、▲4▼量の認識、▲5▼当事者意識の認識から構成され、基本的な尺度は夫々▲a▼生命観・倫理観、▲b▼社会観・連帯観、▲c▼人生観・価値観、▲d▼自然観・世界観、▲e▼人間観・文明観とする。当然▲a▼~▲e▼は夫々代表的な尺度を示し一言で表現される内容以上のものを意味するのは明らかで、図では重要な要素に限って代表的な内容を記述しモデル表現上更なる細部は省略する。この部分は
図6の普遍的な表現から展開される社会的な観点の意識が対象とする内容、例えば産業、産業構造、産業の六次化、地方創生、観光、暮し・ライフスタイル、少子化、教育、学術、芸術・文化、医療、防衛・防疫・防災、公共、環境など未来社会の課題となる物事に係る事柄であり、起点となる当事者意識に発する問題・課題意識に係るミッションの内容や場のコンテクストによって大きく変化する部分となる。変化の幅がある事柄の一つが上記▲d▼世界観であり自己、家族、仲間、地域、社会、世界、地球、専門領域・文化圏など意識の持ち様や経験で大きく変化し、もう一つが▲c▼価値観であり個人特有な事柄、共創に依って創り出す新しい価値、社会の共通的価値観となり得る「持続可能性、快適性、連帯的対等性」の三点セットなどまで幅広いシステム構成が想定できる。
本発明の目的の一つである「モノとコトに係る事柄の手段的融合」は関係性の場に於ける当事者意識の働きに依って実現するもので、基盤となるのは時間軸系が発生論に準拠して健全性を示す命と適応の論理であり、知的空間軸系は物事の本質的な正統性に準拠する質の論理と量の論理に設定してモデルが構築されている。意識の働きはエネルギーの発生と交換そしてエネルギー準位の変化に作用すると共に、記憶の覚醒、記憶の操作、記憶の書換にも作用し自己の内面への当事者意識作動力をも発揮する。
図6は上記で判明する様に普遍性を追求しているため抽象的な表現になっているが、日常性の中で意味を把握すれば一般的な個人の意識の本音の部分と社会システム側の構成員である個人の本音が同じ目的に向かう関係性を有した中でぶつかり合いコンセンサスを作り上げるプロセス上の意識の流れを想定している。コンセンサスの上でコミットメントが発出されるに際して、物的世界観を中心とした共生意識に係るプラクシス技術に加え、事的世界観を相補的に適用した形態で為される新しい価値共創の仕掛けの組込が重要な要素となる。もう一つ重要な要素が当事者意識による内部観察であり、一般に言われる俯瞰的な視座が現場を無視した形で最初に出て来ることは避けなければならない。最もリスクが高く物事遂行上の生産性を低下させる要素が社会システム側の都合に終始することである。必須となるのは個起点の連帯意識と個と社会システムとの対等性意識の認識であり、
図6でモデル化された社会意識量子の構成はこの必須点をクリアーして設計されている。