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  • 特開-燃料供給装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022148381
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】燃料供給装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 37/00 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
F02M37/00 301R
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021050039
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内藤 敏彦
(57)【要約】
【課題】燃料供給装置において、係止部の取付孔への挿入時における摺動抵抗を低減させる。
【解決手段】燃料供給装置1は、その取付部9の取付孔8に挿入される弾性変形可能な係止片15を有する液面検出器7を備え、係止片15は、それが取付孔8に挿入されたとき、取付部9に係止して係止状態となる係止突起16を先端に備える。取付部9は、前記係止状態を解除する係止解除方向で係止片15と対向する規制片22を備える。規制片22は、取付孔8の周縁から立設されて取付孔8の中央方向へ延び、係止片15を取付孔8に挿入する際に係止片15と当接して取付孔8の中央から離れる方向に撓んで該挿入を許容し、係止突起16が前記係止状態となったときに撓んだ状態から復帰する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンク内の液面に浮かぶフロートにアームを介して接続された回転体の回転位置に基づいて前記燃料タンク内の液面の位置を検出する液面検出器と、前記液面検出器が取り付けられる取付孔を有する取付部とを備える燃料供給装置であって、
前記液面検出器は、前記取付孔に挿入される弾性変形可能な係止片を備え、
前記係止片は、前記取付孔への挿入方向を第1方向とし、前記挿入方向と反対方向を第2方向と定義した場合、前記第1方向と交差する方向で前記取付孔の外方に延びる係止突起を有する係止部を先端に備え、
前記係止突起は、前記係止片が前記取付孔に挿入されたとき、前記取付部の前記第1方向側の面に係止して係止状態となるものであり、
前記取付部は、前記係止突起の前記係止状態を解除する係止解除方向で前記係止部と対向する係止解除規制部を備え、
前記係止解除方向において、前記取付孔の一方の内面から他方の内面までの第1距離は、前記係止部の幅よりも大きく、且つ、前記取付孔の一方の内面から前記係止解除規制部までの第2の距離は、前記係止部の幅よりも小さい燃料供給装置において、
前記係止解除規制部は、弾性変形可能な規制片の一部又は全部を構成し、
前記規制片は、前記取付孔の周縁から立設されて前記取付孔の中央方向へ延び、前記係止部を前記取付孔に挿入する際に前記係止部と当接して前記第2方向視で前記取付孔の中央から離れる方向に撓んで該挿入を許容し、前記係止突起が前記係止状態となったときに撓んだ状態から復帰するものであることを特徴とする燃料供給装置。
【請求項2】
前記規制片は、前記係止部を前記取付孔に挿入する際に前記係止部と当接して撓む方向が前記係止解除方向と交差する交差方向である交差部を備え、
前記交差部は、前記係止状態にある前記係止部が前記係止解除方向に変位する際に該係止部に当接する面であって、前記第2方向視で前記交差方向に沿った面である交差当接面を備えることを特徴とする請求項1に記載の燃料供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液面検出器がスナップフィット方式で取り付けられる燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料タンクの液面検出器が取付部に対してスナップフィット方式で取り付けられる燃料供給装置が知られている(特許文献1参照)。特許文献1の燃料供給装置では、液面検出器として、燃料タンク内の液面に浮かぶフロートにアームを介して接続さるた回転体の回転位置に基づいて燃料タンク内の液面の位置を検出するものが採用される。液面検出器には、これを燃料供給装置の取付部に取り付けるために、スナップフィット方式で取付部に係止される係止部が設けられる。
【0003】
また、この燃料供給装置では、その取付部に、液面検出器の係止部の係止が解除されるのを抑止する係止解除規制部が設けられる。この係止解除規制部は、燃料供給装置が搭載された車両の振動等により燃料供給装置に衝撃が加わり、係止部が係止解除方向に変位しようとする際に係止部と当接して係止部の変位を規制することによって、係止部が取付部から外れるのを抑止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6362264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の燃料供給装置では、液面検出器の取付時にその係止部を取付部の取付孔に挿入する際に、係止部が係止解除規制部と取付孔の内壁とに接触しながら挿入される。このため、この挿入時の接触による摺動抵抗により挿入性が必ずしも良好とは言えず、また、かかる挿入時の摺動によりバリが発生するおそれもある。
【0006】
本発明の目的は、かかる従来技術の課題に鑑み、燃料供給装置において、係止部の取付孔への挿入時における摺動抵抗を低減させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の燃料供給装置は、燃料タンク内の液面に浮かぶフロートにアームを介して接続された回転体の回転位置に基づいて前記燃料タンク内の液面の位置を検出する液面検出器と、前記液面検出器が取り付けられる取付孔を有する取付部とを備える燃料供給装置であって、
前記液面検出器は、前記取付孔に挿入される弾性変形可能な係止片を備え、
前記係止片は、前記取付孔への挿入方向を第1方向とし、前記挿入方向と反対方向を第2方向と定義した場合、前記第1方向と交差する方向で前記取付孔の外方に延びる係止突起を有する係止部を先端に備え、
前記係止突起は、前記係止片が前記取付孔に挿入されたとき、前記取付部の前記第1方向側の面に係止して係止状態となるものであり、
前記取付部は、前記係止突起の前記係止状態を解除する係止解除方向で前記係止部と対向する係止解除規制部を備え、
前記係止解除方向において、前記取付孔の一方の内面から他方の内面までの第1距離は、前記係止部の幅よりも大きく、且つ、前記取付孔の一方の内面から前記係止解除規制部までの第2の距離は、前記係止部の幅よりも小さい燃料供給装置において、
前記係止解除規制部は、弾性変形可能な規制片の一部又は全部を構成し、
前記規制片は、前記取付孔の周縁から立設されて前記取付孔の中央方向へ延び、前記係止部を前記取付孔に挿入する際に前記係止部と当接して前記第2方向視で前記取付孔の中央から離れる方向に撓んで該挿入を許容し、前記係止突起が前記係止状態となったときに撓んだ状態から復帰するものであることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、燃料供給装置が搭載された車両の振動等により係止部が係止解除方向に変位しようとした場合でも、係止部が解除規制部に当接してこの変位が抑制されることにより、取付部に対する係止突起の係止状態を維持し、液面検出器が取付部から外れるのを防止することができる。
【0009】
また、係止片を取付孔に挿入する際に、係止部が規制片に当接するが、この当接により規制片が撓み、係止部と規制片との間の摺動抵抗が低減するので、取付孔に対する係止部の挿入性を向上させることができる。
【0010】
本発明において、前記規制片は、前記係止部を前記取付孔に挿入する際に前記係止部と当接して撓む方向が前記係止解除方向と交差する交差方向である交差部を備え、前記交差部は、前記係止状態にある前記係止部が前記係止解除方向に変位する際に該係止部に当接する面であって、前記第2方向視で前記交差方向に沿った面である交差当接面を備えてもよい。
【0011】
これによれば、燃料供給装置が搭載された車両の振動等により、係止部が係止解除方向に変位して規制片の交差部の交差当接面に当接した場合、係止部が当接する規制片の部位が規制片の撓み方向に向いた面である場合の規制片の係止解除方向への撓み易さに比較して、交差部は係止解除方向に撓み難いので、係止突起の解除を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る燃料供給装置の正面図である。
図2】(a)~(c)は、図1の燃料供給装置の取付部に液面検出器を取り付けるときの様子を時系列的に示す斜視図である。
図3】(a)~(c)は、それぞれ図2(a)~(c)に対応する図であり、(a)~(c)のそれぞれには、前記液面検出器の係止片が係止される前記取付部の部分と該係止片とが、図2のD2方向矢視図(a)-1、(b)-1、(c)-1、その上側のA-A線断面図(a)-2、(b)-2、(c)-2及び左側のB-B線断面図(a)-3、(b)-3、(c)-3により示されている。
図4図3(c)-2のA-A線断面図を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る燃料供給装置を示す。この燃料供給装置1は、燃料タンクの底板2に取り付けられた装置本体3と、燃料タンク内の液面に浮かぶフロート4にアーム5を介して接続された回転体6の回転位置に基づいて燃料タンク内の液面の位置を検出する液面検出器7と、液面検出器7が取り付けられる取付孔8を有する取付部9とを備える。
【0014】
装置本体3には、内部に燃料タンク内の燃料を汲み上げて図視していない内燃機関に圧送するポンプ10と、ポンプ10を駆動するモータ11とが設けられる。モータ11には、一対のリード線12が設けられる。一対のリード線12は、コネクタ13を介して外部電源等と接続されており、モータ11に電力を供給する。ポンプ10は、燃料を汲み上げて、図視していないフィルタユニットを介して内燃機関に供給する。
【0015】
アーム5の一端部は、フロート4に対して水平方向(図1において紙面垂直方向)に延びる軸回りに回転自在に係合し、他端部は、回転体6に対して一体的に回転し得るように接続される。液面検出器7は、燃料の液面の検出信号を、回転体6の回転位置に応じて生成する。液面検出器7は、コネクタ13に接続された一対のリード線14を介して電力が供給され、かつ内燃機関の制御装置に検出信号を出力する。
【0016】
図2(a)~(c)は、燃料供給装置1の取付部9に液面検出器7を取り付けるときの様子を時系列的に示す。図3(a)~(c)は、それぞれ図2(a)~(c)の状態に対応する状態を示す図2のD2方向矢視図とそのA-A線断面図及びB-B線断面図である。
【0017】
これらの図に示すように、液面検出器7は、燃料供給装置1の取付部9の取付孔8に挿入される弾性変形可能な係止片15を備える。ただし、図2(a)~(c)では、液面検出器7については、その係止片15の部分のみが表示されている。図3(a)~(c)では、液面検出器7については、その係止片15の部分と、係止片15が固定されている液面検出器7の部分のみが表示されている。
【0018】
係止片15は、図3(a)に示すように、取付孔8への挿入方向を第1方向D1とし、挿入方向と反対方向を第2方向D2と定義した場合、第1方向D1と交差する方向で取付孔8の外方に延びる係止突起16を有する係止部17を先端に備える。
【0019】
係止突起16は、係止片15が取付孔8に挿入されたとき、取付部9の第1方向D1側の面18に係止して係止状態となるように構成される。取付部9は、係止突起16の係止状態を解除する係止解除方向D3(図3(c)-2、図4参照)で係止部17と対向する係止解除規制部19を備える。
【0020】
図4は、図3(c)-2のA-A線断面図を拡大して示す。図4に示すように、係止突起16の上記係止解除方向D3において、取付孔8の一方の内面20から他方の内面21までの第1距離R1は、係止部17の幅Wよりも大きく、且つ、取付孔8の一方の内面20から係止解除規制部19までの第2の距離R2は、係止部17の幅Wよりも小さい。係止解除規制部19は、弾性変形可能な規制片22の一部又は全部を構成する。
【0021】
規制片22は、取付孔8の周縁から立設されて取付孔8の中央方向へ延び(特に図2(a)参照)、係止部17を取付孔8に挿入する際に係止部17と当接して第2方向D2視(図3(a)参照)で取付孔8の中央から離れる方向に撓んで該挿入を許容し(図2(b)、図3(b)参照)、係止突起16が取付部9の第1方向D1側の面18に係止して係止状態となったときに撓んだ状態から復帰する(図2(c)、図3(c)参照)ように構成される。
【0022】
また、規制片22は、係止部17を取付孔8に挿入する際に係止部17と当接して撓む方向が係止突起16の係止解除方向D3と交差する交差方向である交差部23を備える(図3(b)、図4参照)。交差部23は、係止状態にある係止部17が係止解除方向D3に変位する際に係止部17に当接する面であって、第2方向視D2で交差方向に沿った面である交差当接面24を備える。
【0023】
また、図2(a)に示されるように、液面検出器7には、係止片15に加え、取付部9の固定孔25に挿入されて先端部がスナップフィット式で固定される2つの固定片26が設けられる。これらの固定片26の固定解除方向は、相互に逆方向であり、かつ係止片15の係止解除方向D3と直交している。
【0024】
この構成において、燃料供給装置1の取付部9に液面検出器7を取り付ける際には、図2(a)、図3(a)に示すように、係止片15及び各固定片26の先端部を取付孔8及び固定孔25に位置づける。このとき、係止片15は、係止部17が取付孔8の一方の内面20と当接することにより、他方の内面21の方向に撓む。各固定片26も固定孔25の内面と当接して同様に撓む。
【0025】
次に、係止片15及び各固定片26の先端部を取付孔8及び各固定孔25に対して、第1方向D1に挿入してゆく。このとき、図2(b)、図3(b)に示すように、係止部17が規制片22と当接し、規制片22を図3(b)-1中の矢印方向に押し広げる。このとき、規制片22は係止部17と当接して第2方向D2視で取付孔8の中央から離れる方向に撓むので、該挿入を許容する。
【0026】
さらに、係止片15の係止部17が取付孔8を完全に通過し、液面検出器7の端面27が取付部9に当接するまで、液面検出器7を第1方向D1に押して係止片15及び各固定片26を第1方向D1に移動させる。
【0027】
これにより、図2(c)、図3(c)に示すように、係止片15は撓んだ状態から復帰するので、係止片15の係止突起16が、取付部9の第1方向D1側の面18に係止して係止状態となる。固定片26も同様に、スナップフィット方式で取付部9に対して係止状態となる。これにより、燃料供給装置1の取付部9に対する液面検出器7の取付けが完了する。
【0028】
この取付けが完了した状態では、各規制片22の交差部23の交差当接面24が、係止片15の係止部17の係止突起16と反対側の面における両端かつ先端側の各面部分と対向した状態となっている。
【0029】
このため、液面検出器7に外力が作用し、係止片15が取付部9に対して係止解除方向D3に変位しようとした場合、ある程度変位したとしても、係止片15の上記各面部分が規制片22の交差当接面24と当接するので、それ以上変位することが規制される。したがって、係止片15の係止突起16が取付部9の第1方向D1側の面18から取付孔8の方に逸脱して係止突起16の該面18に対する係止が解除されることはない。
【0030】
以上のように、本実施形態によれば、燃料供給装置1が搭載された車両の振動等により係止部17が係止解除方向D3に変位しようとした場合でも、係止部17が係止解除規制部19に当接してこの変位が抑制されることにより、取付部9に対する係止突起16の係止状態を維持し、液面検出器7が取付部9から外れるのを防止することができる。
【0031】
また、係止片15を取付孔8に挿入する際に、係止部17が規制片22に当接するが、この当接により規制片22が撓み、係止部17と規制片22との間の摺動抵抗が低減するので、取付孔8に対する係止部17の挿入性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0032】
1…燃料供給装置、2…底板、3…装置本体、4…フロート、5…アーム、6…回転体、7…液面検出器、8…取付孔、9…取付部、10…ポンプ、11…モータ、12…リード線、13…コネクタ、14…リード線、15…係止片、16…係止突起、17…係止部、18…面、19…係止解除規制部、20…内面、21…内面、22…規制片、23…交差部、24…交差当接面、25…固定孔、26…固定片、27…端面。
図1
図2
図3
図4