(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022148384
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】蓄電モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6566 20140101AFI20220929BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20220929BHJP
H01M 10/6557 20140101ALI20220929BHJP
H01M 10/658 20140101ALI20220929BHJP
H01M 10/635 20140101ALI20220929BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20220929BHJP
H01M 10/647 20140101ALI20220929BHJP
H01M 10/6563 20140101ALI20220929BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20220929BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20220929BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20220929BHJP
【FI】
H01M10/6566
H01M10/615
H01M10/6557
H01M10/658
H01M10/635
H01M10/625
H01M10/647
H01M10/6563
H01M50/204 401H
H01M10/613
H01M50/209
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021050043
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】大森 保
【テーマコード(参考)】
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031CC09
5H031KK03
5H031KK08
5H040AA01
5H040AA03
5H040AA28
5H040AA29
5H040AS04
5H040AS06
5H040AS07
5H040AT02
5H040AT06
5H040AY05
5H040AY10
5H040DD08
5H040DD26
(57)【要約】
【課題】蓄電セルの冷却効率及び加熱効率の双方を確保でき、かつ冷却と加熱との切り替えを迅速に実施できる蓄電モジュールを提供する。
【解決手段】蓄電モジュール1は、複数の蓄電セル3を第1の方向に配列した配列体2を含んで構成されており、各蓄電セル3において少なくとも第1の方向に延在する一対の側面3c,3cに設けられたヒータ21と、蓄電セル3,3間において第1の方向に直交する第2の方向に冷却用気体Gを流通させる複数の流路Kと、一対の側面3c,3cのそれぞれに対向配置され、各流路Kの開口端形状に応じた形状の複数のスリット23aを有するスライド板23と、を備え、スライド板23が第1の方向にスライドすることで、流路Kの開閉状態が切替自在となっている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の蓄電セルを第1の方向に配列した配列体を含んで構成された蓄電モジュールであって、
前記各蓄電セルにおいて少なくとも前記第1の方向に延在する一対の側面に設けられたヒータと、
前記蓄電セル間において前記第1の方向に直交する第2の方向に冷却用気体を流通させる複数の流路と、
前記一対の側面のそれぞれに対向配置され、前記各流路の開口端形状に応じた形状の複数のスリットを有するスライド板と、を備え、
前記スライド板が前記第1の方向にスライドすることで、前記流路の開閉状態が切替自在となっている蓄電モジュール。
【請求項2】
前記各流路の開口端形状に応じた形状の複数のスリットを有するスリット板を更に備え、
前記ヒータは、少なくとも前記スリット板と前記各蓄電セルの前記一対の側面との間に挟み込まれて保持されている請求項1記載の蓄電モジュール。
【請求項3】
前記スリット板は、断熱性を有する材料によって構成されている請求項2記載の蓄電モジュール。
【請求項4】
前記複数の蓄電セルのセル温度と外気温とに基づいて、前記スライド板のスライドによる前記流路の開閉状態を制御する制御部を更に備える請求項1~3のいずれか一項記載の蓄電モジュール。
【請求項5】
前記スライド板には、前記流路が開状態となるときに前記各ヒータの回路同士を切断し、前記流路が閉状態となるときに前記ヒータの回路同士を導通する接触端子が設けられている請求項1~4のいずれか一項記載の蓄電モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境対応の促進といった観点から、リチウムイオン二次電池等の蓄電モジュールをパック化して搭載した自動車や産業車両の開発が進められている。蓄電モジュールでは、電池性能の維持や安全性の確保の観点から、電池の温度管理が非常に重要となっている。例えば電池の充電には、発熱を伴うことが一般的であり、充電時の発熱量は、充電電流の二乗で増加する。電池の温度上昇は、電池の寿命を低下させる要因となり得るため、電池の高温状態が持続しないように冷却を行う必要がある。一方、電池の温度が過剰に低下した場合、電池の充電及び放電の性能が低下することが考えられる。このため、電池が低温状態に晒される環境下では、電池が適切に機能するように加熱を行う必要がある。
【0003】
例えば特許文献1では、複数の電池セルを一方向に配列した電池スタックを収容ケース内に配置した電池パックが記載されている。この従来の電池パックでは、収容ケースの側壁部に電池スタックに対応した開口部が設けられており、当該開口部を吸気ダクトと接続することで、収容ケース内に冷却用の外気を取り込めるようになっている。また、収容ケース内には、電池セルを加熱するヒータが設けられている。ヒータは、収容ケースの底部と電池セルの底部との間に設けられた閉じた空間内に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の電池パックでは、ヒータによって生じた熱が収容ケースの底部と電池セルの底部との間の閉じた空間から逃げにくくなっているため、一定の加熱効率の向上が見込まれる。しかしながら、この従来の電池パックの構成では、冷却用経路と加熱用経路とが切り離されているため、冷却と加熱との切り替えに時間を要することが考えられる。一方で、冷却用経路と加熱用経路とを単純に合わせてしまうと、冷却効率或いは加熱効率の一方又は双方が損なわれてしまうことが考えられる。
【0006】
本開示は、上記課題の解決のためになされたものであり、蓄電セルの冷却効率及び加熱効率の双方を確保でき、かつ冷却と加熱との切り替えを迅速に実施できる蓄電モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面に係る蓄電モジュールは、複数の蓄電セルを第1の方向に配列した配列体を含んで構成された蓄電モジュールであって、各蓄電セルにおいて少なくとも第1の方向に延在する一対の側面に設けられたヒータと、蓄電セル間において第1の方向に直交する第2の方向に冷却用気体を流通させる複数の流路と、一対の側面のそれぞれに対向配置され、各流路の開口端形状に応じた形状の複数のスリットを有するスライド板と、を備え、スライド板が第1の方向にスライドすることで、流路の開閉状態が切替自在となっている。
【0008】
この蓄電モジュールでは、配列体において蓄電セル間の流路に冷却用気体を流通させている。蓄電セルに冷却用気体を直接接触させることで、蓄電セルを高い効率で冷却できる。また、各蓄電セルの側面にヒータを直接設けることで、蓄電セルを高い効率で加熱できる。さらに、この蓄電モジュールでは、スライド板のスライドによって冷却用気体の流路の開閉状態が切替自在となっている。冷却の際は流路を開くことで冷却用気体の流通を妨げず、加熱の際は流路を閉じることでヒータの熱が流路から外部に逃げることを抑制できる。これにより、蓄電セルの冷却効率及び加熱効率の双方を確保でき、かつ冷却と加熱との切り替えを迅速に実施できる。
【0009】
蓄電モジュールは、各流路の開口端形状に応じた形状の複数のスリットを有するスリット板を更に備え、ヒータは、少なくともスリット板と各蓄電セルの一対の側面との間に挟み込まれて保持されていてもよい。この場合、冷却用気体の流通を妨げることなく、簡単な構成でヒータを確実に保持できる。
【0010】
スリット板は、断熱性を有する材料によって構成されていてもよい。これにより、加熱の際にヒータの熱が流路から外部に逃げることを抑制できる。したがって、蓄電セルの加熱効率を更に高めることができる。
【0011】
蓄電モジュールは、複数の蓄電セルのセル温度と外気温とに基づいて、スライド板のスライドによる流路の開閉状態を制御する制御部を更に備えていてもよい。この場合、蓄電セルの温度と外気温とに基づいて、蓄電セルの温度調節を最適なタイミングで切り替えることができる。
【0012】
スライド板には、流路が開状態となるときに各ヒータの回路同士を切断し、流路が閉状態となるときにヒータの回路同士を導通する接触端子が設けられていてもよい。この場合、スライド板のスライドとヒータの回路同士の導通及び切断の切り替えとを連動させることができる。したがって、ヒータの駆動回路を別途設ける必要がなくなり、蓄電モジュールの省スペース化及び低コスト化が図られる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、蓄電セルの冷却効率及び加熱効率の双方を確保でき、かつ冷却と加熱との切り替えを迅速に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本開示の一側面に係る蓄電モジュールの基本構成を示す分解斜視図である。
【
図3】
図2に示した配列体をx方向から見た場合の模式的な断面図である。
【
図4】
図2に示した配列体をz方向から見た場合の模式的な断面図である。
【
図5】スライド板を駆動させた場合の
図2の配列体の状態を示す斜視図である。
【
図6】蓄電モジュールの機能的な構成要素を示すブロック図である。
【
図7】判断部で用いられる判断テーブルの一例を示す図である。
【
図8】変形例に係る蓄電モジュールの配列体をz方向から見た場合の模式的な断面図である。
【
図9】スライド板を駆動させた場合の
図8の配列体の状態を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本開示の一側面に係る蓄電モジュールの好適な実施形態について詳細に説明する。
【0016】
図1は、本開示の一側面に係る蓄電モジュールの基本構成を示す分解斜視図である。
図1に示す蓄電モジュール1は、例えば電気自動車やハイブリッド車などの車両や電動式の産業車両に電力源として搭載される装置である。蓄電モジュール1は、車両等への搭載にあたり、例えば不図示の筐体内に収容されていてもよい。筐体内では、蓄電モジュール1が複数列或いは複数段に配列されていてもよい。
【0017】
蓄電モジュール1は、
図1に示すように、複数の蓄電セル3を含んで構成された配列体2と、配列体2を蓄電セル3の配列方向に挟む一対のエンドプレート4,4と、配列体2を配列方向に拘束する第1のバンド5A及び第2のバンド5Bと、配列体2における蓄電セル3,3間等に配置された複数のセパレータ6とを含んで構成されている。
図1では、配列体2における蓄電セル3の配列方向をx方向(第1の方向)とし、蓄電セル3の幅方向をy方向(第2の方向)とし、蓄電セル3の高さ方向をz方向(第3の方向)としている。
【0018】
蓄電セル3は、例えばリチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池である。蓄電セル3は、非水系の電解液が注入されたケース11内に電極組立体を収容して構成されている。ここでは、ケース11は、配列方向について扁平な直方体形状をなしている。電極組立体は、正極、負極、及びセパレータを所定の順序で積層したものである。本実施形態では、例えば袋状のセパレータ内にシート状の正極が収容されており、この正極が収容された状態の袋状のセパレータとシート状の負極とが交互に積層されることで、電極組立体が構成されている。
【0019】
蓄電セル3における高さ方向の一方の側面(以下、頂面3aと称す)には、一対の電極端子12,12が設けられている。一方の電極端子12は、正極端子であり、他方の電極端子12は、負極端子である。配列体2においては、各蓄電セル3は、一対の電極端子12,12の向きを揃えた状態で配列されている。また、配列方向に隣り合う蓄電セル3,3では、電極端子12,12の正負が反転した状態となっている。配列体2では、一の蓄電セル3の正極端子をバスバー13によって隣り合う一方の蓄電セル3の負極端子に接続すると共に、一の蓄電セル3の負極端子をバスバー13によって隣り合う他方の蓄電セル3の正極端子に接続することにより、各蓄電セル3が電気的に直列に接続されている。
【0020】
一対のエンドプレート4,4は、配列体2における配列方向の両端部に配置されている。エンドプレート4は、例えば金属によって形成されている。エンドプレート4は、例えば蓄電セル3のケース11と比べて配列方向についてやや扁平な直方体形状をなしている。また、第1のバンド5A及び第2のバンド5Bは、いずれも金属によって板状に形成されている。本実施形態では、第1のバンド5Aは、蓄電セル3の高さ方向の他面側において配列方向に延在しており、第2のバンド5Bは、蓄電セル3の高さ方向の一面側において配列方向に延在している。
【0021】
第1のバンド5Aは、蓄電セル3のケース11の幅と同程度の幅で蓄電セル3における高さ方向の他方の側面(以下、底面3bと称す)側に配置されている。第2のバンド5Bは、蓄電セル3の電極端子12,12間の間隔よりも小さい幅で蓄電セル3の頂面3a側に配置されている。第1のバンド5A及び第2のバンド5Bの配列方向の両端部は、ボルト(不図示)などを用いて一対のエンドプレート4,4にそれぞれ固定されている。第1のバンド5A及び第2のバンド5Bが一対のエンドプレート4,4同士を締結することにより、配列体2には、配列方向に拘束荷重が付加されている。
【0022】
セパレータ6は、配列体2において、蓄電セル3,3間及び蓄電セル3とエンドプレート4との間に配置されている。セパレータ6は、例えば絶縁性を有する樹脂によって板状に形成されている。セパレータ6の主面部6aを配列方向から見た場合の形状は、蓄電セル3のケース11を配列方向から見た場合の形状と対応している。これにより、蓄電セル3,3同士、及び蓄電セル3とエンドプレート4との間が電気的に絶縁されている。
【0023】
セパレータ6は、配列方向に張り出す脚部6bを有している。蓄電セル3,3間に配置されたセパレータ6では、セパレータ6の主面部6aにおける第1のバンド5A側の縁部から配列体2における配列方向の両側に脚部6bがそれぞれ張り出している。蓄電セル3とエンドプレート4との間に配置されたセパレータ6では、セパレータ6の主面部6aにおける第1のバンド5A側の縁部から配列体2における配列方向の内側に脚部6bが張り出している。脚部6bが蓄電セル3と第1のバンド5Aとの間に位置することにより、蓄電セル3と第1のバンド5Aとの間が電気的に絶縁されている。
【0024】
セパレータ6は、冷却用気体Gの流路Kを形成するためのリブ6cを有している。本実施形態では、リブ6cは、主面部6aの両面においてセパレータ6の高さ方向に配列されている。各リブ6cは、例えば断面矩形状をなし、セパレータ6の幅方向に延在している。蓄電セル3,3間に配置されたセパレータ6では、リブ6cの先端がセパレータ6と隣り合う蓄電セル3,3に当接することにより、蓄電セル3,3間に冷却用気体Gの流路Kが形成されている。
【0025】
図1の例では、流路Kは、蓄電セル3の幅方向に冷却用気体Gを流通させる。蓄電セル3とエンドプレート4との間に配置されたセパレータ6においても主面部6aにリブ6cを設け、蓄電セル3とエンドプレート4との間に冷却用気体G(
図4及び
図5参照)の流路Kを形成してもよい。ここでは、冷却用気体Gは、例えば空気(外気)である。冷却用気体Gの導入にあたっては、例えば蓄電モジュール1を収容する筐体に吸気口及び排気口が設けられている。冷却用気体Gは、吸気口から筐体内に取り込まれ、流路Kを蓄電セル3の幅方向に進行した後、排気口から筐体外に排出される。筐体内には、冷却用気体Gの流れを形成するためのファン34(
図6参照)が配置されていてもよい。ファン34は、例えば蓄電セル3,3間と排気口との間の流路に配置されている。
【0026】
続いて、上述した配列体2の構成について更に詳細に説明する。
図2は、配列体の詳細構成を示す斜視図である。
図3は、
図2に示した配列体をx方向から見た場合の模式的な断面図であり、
図4は、同配列体をz方向から見た場合の模式的な断面図である。説明の便宜上、
図3及び
図4では、セパレータ6の図示を省略している。
図2~
図4に示すように、蓄電モジュール1の配列体には、蓄電セル3の温度調節を行うための機構として、ヒータ21と、上述した流路Kと、スリット板22と、スライド板23とが設けられている。
【0027】
ヒータ21は、例えば板状ヒータによって構成されている。ヒータ21は、各蓄電セル3において、蓄電セル3の配列方向(x方向:第1の方向)に沿って延在する一対の側面3c,3cに設けられている。ここでは、側面3c,3cは、蓄電セル3の幅方向の幅方向(y方向:第2の方向)の一対の側面である。本実施形態では、ヒータ21は、各蓄電セル3において、側面3c,3c及び底面3bの全体にわたって設けられている。ヒータ21の幅は、蓄電セル3の厚さ(配列方向の幅)とほぼ等幅となっており、配列体2をy方向から見た場合に、ヒータ21と流路Kとが重ならないようになっている。
【0028】
スリット板22は、例えばフェノール樹脂などの断熱性を有する材料によって構成されている。スリット板22は、配列体2の幅方向の一対の側面と対向する一対の側板22a,22aと、配列体の底面と対向する底板22bとを有している。スリット板22は、ヒータ21を取り囲むように配列体2の幅方向の側面及び底面の全体にわたって設けられている。これにより、ヒータ21は、スリット板22と蓄電セル3の一対の側面3c,3cとの間に挟み込まれて保持されている。スリット板22の側板22a,22aには、各流路Kの開口端Ka(
図4参照)の形状に応じた形状の複数のスリット22cが設けられている。ここでは、スリット22cの形状は、流路Kを形成するセパレータ6の形状を除いた蓄電セル3,3間の形状に対応しており、スリット板22は、複数のスリット22cの位置が各流路Kの開口端Kaの位置と一致するように配置されている。したがって、配列体2をy方向から見た場合に、各スリット22cから各流路Kが常に見通せるようになっている。
【0029】
スライド板23は、例えばフェノール樹脂などの材料によって構成されている。スライド板23は、スリット板22の側板22a,22aの外側にそれぞれ配置され、当該側板22a,22aに当接している。スライド板23には、スリット板22と同様に、各流路Kの開口端Kaの形状に応じた形状の複数のスリット23aが設けられている。このスライド板23は、不図示の駆動手段及びリンク機構に接続され、配列体2における蓄電セル3の配列方向(x方向:第1の方向)にスライド自在となっている。
【0030】
スライド板23が蓄電セル3の配列方向にスライドすることで、流路Kの開閉状態が切替自在となっている。スライド板23のスリット23aの位置がスリット板22のスリット22cの位置と一致している場合、スリット22c,23aが連通し、流路Kが開状態となる(
図2参照)。一方、スライド板23のスリット23aの位置がスリット板22のスリット22cの位置と一致していない場合、スリット22c,23aが連通せず、流路Kが閉状態となる(
図5参照)。
【0031】
図6は、蓄電モジュールの機能的な構成要素を示すブロック図である。同図に示すように、蓄電モジュール1は、当該蓄電モジュール1の動作を統括的に管理するBMU(Battery Management Unit)31を有している。ECUは、CPU(CentralProcessing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、CAN(Controller AreaNetwork)通信回路等を有する電子制御ユニットである。BMU31では、例えばROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムをCPUで実行することにより、各種の機能が実現される。
【0032】
蓄電モジュール1は、上述した冷却用気体G及びヒータ21を用いた蓄電セル3の温度調節を行うにあたり、セル温度検出センサ32と、外気温検出センサ33とを有している。セル温度検出センサ32は、配列体2に含まれる各蓄電セル3の温度(セル温度)を検出するセンサである。セル温度検出センサ32は、各蓄電セル3に対して設けられ、検出結果を示す情報をBMU31に常時或いは周期的に出力する。外気温検出センサ33は、蓄電モジュール1の周辺の外気温を検出するセンサである。外気温検出センサ33は、例えば蓄電モジュール1を収容する筐体の外部に設けられ、検出結果を示す情報をBMU31に常時或いは周期的に出力する。
【0033】
BMU31は、機能的な構成要素として、判断部36と、判断テーブル格納部37と、温度調節制御部38とを備えている。判断部36は、セル温度と外気温とに基づいて、保温、冷却、加熱のいずれの調節モードを実施するかを判断する部分である。判断部36は、セル温度検出センサ32及び外気温検出センサ33から検出結果を示す情報を受け取ると、判断テーブル格納部37に格納されている判断テーブルを参照し、蓄電モジュール1に適用する調節モードを判断する。判断部36は、判断結果を示す情報を温度調節制御部38に出力する。判断部36は、例えば配列体2に含まれる各蓄電セル3の温度のうち、最高温のセル温度及び最低温のセル温度の2つを抽出する。判断部36は、抽出した2つのセル温度のうち、適温(例えば25℃)から遠い方のセル温度を調節モードの判断に用いる。
【0034】
温度調節制御部38は、判断部36の判断結果に基づいて、ヒータ21、スライド板23、及びファン34の駆動を制御する部分である。温度調節制御部38からの制御信号に基づいて、ヒータ21のON/OFF、スライド板23による流路Kの開閉、及びファン34のON/OFFが制御される。これにより、判断部で判断された調節モードに基づく蓄電セル3の保温、冷却、加熱が実施される。
【0035】
図7は、判断部で用いられる判断テーブルの一例を示す図である。同図の例では、判断テーブルTには、セル温度が適温、高温、低温のいずれであるか、及び外気温が常温、高温、低温のいずれであるかの組み合わせに基づいて、蓄電モジュール1に適用する調節モードが定められている。ここでは、セル温度の適温の範囲は15℃以上35℃未満であり、高温の範囲は35℃以上であり、低温の範囲は15℃未満である。また、外気温の常温の範囲は15℃以上35℃未満であり、高温の範囲は35℃以上であり、低温の範囲は15℃未満である。
【0036】
セル温度が適温の範囲である場合、保温モードが適用される。保温モードは、セル温度を維持するモードである。保温モードが適用された場合、スライド板23によって流路Kが閉状態となり、これに連動してファン34がOFFとなり、ヒータ21もOFFとなる。保温モードでは、冷却用気体Gによる冷却もヒータ21による加熱も行われず、セル温度が維持される。セル温度が高温である場合、冷却モードが適用される。冷却モードは、セル温度を降温させるモードである。冷却モードが適用された場合、スライド板23によって流路Kが開状態となり、これに連動してファン34がONとなる一方、ヒータ21はOFFとなる。冷却モードでは、冷却用気体Gによる冷却が行われ、セル温度を迅速に降温できる。
【0037】
セル温度が低温である場合、加熱モードが適用される。加熱モードは、セル温度を昇温するモードである。セル温度が低温であって、外気温が常温又は高温である場合、スライド板23によって流路Kが開状態となり、これに連動してファンがONとなり、ヒータ21もONとなる。この場合、ヒータ21による加熱と高温である外気を流路Kを流通させることによって、蓄電セル3を迅速に昇温できる。セル温度が低温であって、外気温も低温である場合、スライド板23によって流路Kが閉状態となり、これに連動してファンがOFFとなり、ヒータ21はONとなる。この場合、流路Kを閉じた状態でヒータ21による加熱が行われ、セル温度を迅速に昇温できる。
【0038】
以上説明したように、蓄電モジュール1では、配列体2において蓄電セル3,3間の流路Kに冷却用気体を流通させている。蓄電セル3,3に冷却用気体Gを直接接触させることで、蓄電セル3を高い効率で冷却できる。また、各蓄電セル3の側面3cにヒータ21を直接設けることで、蓄電セル3を高い効率で加熱できる。さらに、この蓄電モジュール1では、スライド板23のスライドによって冷却用気体Gの流路Kの開閉状態が切替自在となっている。冷却の際は流路Kを開くことで冷却用気体Gの流通を妨げず、加熱の際は流路Kを閉じることでヒータ21の熱が流路Kから外部に逃げることを抑制できる。これにより、蓄電セル3の冷却効率及び加熱効率の双方を確保でき、かつ冷却と加熱との切り替えを迅速に実施できる。
【0039】
本実施形態の蓄電モジュール1では、各流路Kの開口端Kaの形状に応じた形状の複数のスリット22cを有するスリット板22が更に設けられている。そして、ヒータ21は、少なくともスリット板22と各蓄電セル3,3の一対の側面3c,3cとの間に挟み込まれて保持されている。このような構成により、冷却用気体Gの流通を妨げることなく、簡単な構成でヒータ21を確実に保持できる。また、本実施形態では、スリット板22は、断熱性を有する材料によって構成されている。これにより、加熱の際にヒータ21の熱が流路Kから外部に逃げることを抑制できる。したがって、蓄電セル3の加熱効率を更に高めることができる。
【0040】
さらに、本実施形態の蓄電モジュール1では、複数の蓄電セル3のセル温度と外気温とに基づいて、スライド板23のスライドによる流路Kの開閉状態を制御する温度調節制御部38が設けられている。これにより、蓄電セル3の温度と外気温とに基づいて、蓄電セル3の温度調節を最適なタイミングで切り替えることができる。
【0041】
本開示は、上記実施形態に限られるものではない。例えば
図7には、判断部36で用いられる判断テーブルの一例を示したが、当該判断テーブルの内容は、これに限られるものではない。例えば上記実施形態では、ヒータ21がスリット板22と各蓄電セル3の一対の側面3c,3cとの間に挟み込まれて保持されているが、スリット板22は、必ずしも配置されていなくてもよい。
【0042】
判断テーブルTにおける冷却モード及び加熱モードでは、セル温度と外気温との関係で、流路K、ヒータ21、ファン34の動作をより細かく設定してもよい。例えばセル温度及び外気温の双方が高温又は低温である場合、外気温とセル温度との大小関係に基づいて制御を切り替えてもよい。例えばセル温度及び外気温がいずれも高温であって外気温がセル温度以上である高い場合、スライド板23によって流路Kを閉状態とし、これに連動してファン34をOFF、ヒータ21をOFFとしてもよい。例えばセル温度及び外気温がいずれも高温であって外気温がセル温度未満である場合、スライド板23によって流路Kを開状態とし、これに連動してファン34をON、ヒータ21をOFFとしてもよい。
【0043】
また、例えばセル温度及び外気温がいずれも低温であって外気温がセル温度以上である場合、スライド板23によって流路Kを開状態とし、これに連動してファン34をON、ヒータ21をONとしてもよい。例えばセル温度及び外気温がいずれも低温であって外気温がセル温度未満である場合、スライド板23によって流路Kを閉状態とし、これに連動してファン34をOFF、ヒータ21をONとしてもよい。
【0044】
図8に示すように、スライド板23には、流路Kが開状態となるときに各ヒータ21の回路21a同士を切断し、流路Kが閉状態となるときにヒータ21の回路21a同士を導通する接触端子40が設けられていてもよい。
図8の例では、各ヒータ21の回路21aは、蓄電セル3の側面3cとスリット板22との間からスリット板22におけるスリット22cの内壁面に沿って引き出されている。また、接触端子40は、スライド板23の内面側(スリット板22側)において、スリット23aを除いた領域に設けられている。接触端子40は、当該領域において隣り合うスリット23a,23aを結ぶように設けられている。
【0045】
図8に示すように、スライド板23のスリット23aの位置がスリット板22のスリット22cの位置と一致している場合、すなわち、流路Kが開状態となる場合には、各ヒータ21の回路21aと接触端子40とが非導通となり、各ヒータ21がOFFとなる。一方、
図9に示すように、スライド板23のスリット23aの位置がスリット板22のスリット22cの位置と一致していない場合、すなわち、流路Kが閉状態となる場合には、各ヒータ21の回路21aが接触端子40によって導通し、各ヒータ21がONとなる。このような構成を採用する場合、スライド板23のスライドとヒータ21の回路21a同士の導通及び切断の切り替えとを連動させることができる。したがって、ヒータ21の駆動回路を別途設ける必要がなくなり、蓄電モジュール1の省スペース化及び低コスト化が図られる。
【符号の説明】
【0046】
1…蓄電モジュール、2…配列体、3…蓄電セル、3c…側面、21…ヒータ、21a…回路、22…スリット板、22c…スリット、23…スライド板、23a…スリット、31…BMU(制御部)、40…接触端子、G…冷却用気体、K…流路。