(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022014839
(43)【公開日】2022-01-20
(54)【発明の名称】デザイン思考を深化させる意識の統一場の理論的定式化方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/00 20120101AFI20220113BHJP
【FI】
G06Q10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020129734
(22)【出願日】2020-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】519343364
【氏名又は名称】石黒 広洲
(72)【発明者】
【氏名】石黒 広洲
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA00
(57)【要約】 (修正有)
【課題】デザイン思考の遂行に利用できるデザインの方法論を提供する。
【解決手段】一般的には主観的な事柄と理解される意識の社会的な働きを客観的な視点で有効化する思考情報技術を駆使した意識の統一場のモデル化デザインを達成するに際して、領域を跨る諸科学の知見を文理融合的に駆使してデザイン思考論理を展開した上で該知見を活かして三元論理で組立てた機能を構成要素とする図表表現方法を採用する。
【効果】客観性を重視したモデリング・デザイン技法を表現するアプリソフトに組込む事が可能になり、一連の関連発明と相俟って社会的な課題への対応策に取り組む際のデザイン思考と直結した社会システムに対する統合的な知的作業の効果増強や生産性向上が実現出来る。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
社会的な物事に対する文理融合のデザイン思考論理に従う意識を扱う深化型の思考情報技術の実用化を図ることに鑑みて、意識の定義を辞書が規定する自己と外界の夫々の認識による二元構成定義から最新の脳神経科学的知見が示す自己と外界の個々の認識及び外界と自己を同時に認識する三元構成(トライアングル)に意識構成を転換して定義することで、技術的な扱いを深化させ電子計算機のアプリケーションソフトの実装形態を伴って意識の統一場に関する本発明がなされる際に、該深化の実用的な表現構成を有する三次元デザイン思考の骨組みの前提を提示する上で、自然科学の原理である現代物理学原理に於ける基本的な概念を示す量子論と量子力学及び相対性理論へのパラダイム転換の論理と関連する知見を社会思考化してトライアングル状の意識モデルの要素構成に展開することを第一前提とし、本発明と同列のデザイン領域に属する三つの関連先行発明の存在(特許文献1~3)を第二前提とする認識に基づいて、
自己の中核意識を一般的な社会に置ける呼称である自己意識に当て拡張意識をデザイナー自身(自己)の当事者意識及び自己と外界(社会システム)との連帯的な関係性に着目した連帯意識に分節化して理解する先行発明に依ってモデル化した超社会システムの提示を第一与件とし、社会的な物事に関する様々な不都合を削減するための知的行動に関する構想を立てるために必要なモデリング・デザインに際してデザインを担当する人間の当事者意識と他者との連帯意識に関わるデザイン思考の枠組みについて人間の意識の基本構造を中核意識と拡張意識の階層的な組み合わせで表現する脳神経科学の知見を第二与件とし、本発明の先行発明がその存在を示す思考空間上の意識空間の存在そのものを第三与件とし、デザイン遂行に関わる関係性の形と連動した形態の連帯型の当事者意識の働きを少なくとも関心・観察・眼力(洞察)・覚悟(選択)・責任の機能構成で把握し定義する形を第四与件とし、先行発明で定義される格子譜のシステム的構成要素条件を第五与件(格子譜与件)とし、これら明確化した五つの与件に対して個の意識と社会システムとの関係性の形を相対化して理解を進める如く分析をした上で、上記脳神経科学の読み解きに基づいて意識の正当性を確保するための意識構成の枠組みを客観化した意識の統一場の形をモデリング・デザイン技法で構成する思考情報技術とモデル化に関わる実用的な深化型ポイエーシス技術系の意識理論の定式化を行うに際し、
前提として導入した現代物理学原理の社会適用による社会的な物事に関する意識の場の三次元デザイン思考の骨組みとして時空軸面と関係性軸で構成する格子譜与件に従う基盤肢と行為網及び真の実在に対して所定の要素内に現代物理学の三元要素の知見を当て嵌める構造的な社会思考化と、
自然科学系の脳神経科学が説く意識論及び生命科学が説く生命誌に関わる発生論を意識の在り方の基本に置き生存に関わる発生論系の生命誌三律を三元的構成要素に設定した上で三律一つである太陽律に起源を置いた生存の根源に関わる原初状態として合理的な正義の象徴となる真の実在の概念を格子譜与件の定義に従った図表の中心に設定する事と、
先行発明であるデザイン思考関連のデザイン思考エンジンの知見及びデザイン思考エンジンと構想力の論理並びに人文科学領域の西洋哲学である弁証法における止揚の概念を統合したデザイン思考の対象となる超社会システムの記述方法を用いた関係性の場の格子譜上の記述による構造化と可視化の枠組みと、
同じく人文科学領域の東洋哲学に於ける意識面の考え方を社会思考化した華厳五律と老荘哲学の道(どう)の三元要素の論理を夫々所定の要素に組合せて格子譜与件の記述文法に従って所定の構成要素に配置して意識の分析内容を設定するモデリング・デザイン手法の適用によって、当事者意識が主導し思考情報技術的に統合した三次元構成の論理を組立てるデザイン思考で得た意識内容のイメージを描き、
該イメージを電子計算機のアプリケーションソフトの画面上或は通常の紙面上において表現の次元を縮退させた関係性の場を核にしたモデルとして図表化する形式を持つところの格子譜上に文理融合的に統合化した統一場としてモデリングする方法を用いて構造化し可視化を図ることにより、
有機的な超社会システム上で実用的なデザイン思考を駆使する意識の場における思考情報技術により普遍的な形式で客観的に表現してデザイン思考を深化させるモデリング・デザイン手法を用いた意識の統一場の理論的定式化方法。
【請求項2】
請求項1に於ける発生論系の生命誌三律の細目をオパーリン律、ダーウィン律、太陽律に設定して生態系技術であることを強調する考え方或は華厳教学の五律の細目を社会思考化した具体的な要素として意識の原理、関係性の原理、発心(個起点の原理)、階層性(フラクタル構造)、対等の原則に設定して東洋哲学の考えを具体化した構成要素の文理融合的設定法により有機的なモデル表現型のシステム思考を強化するための三元的要素の展開に拠って、
デザイン思考を深化させるモデリング・デザインによる意識の統一場の理論的定式化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明が扱う意識の統一場理論に係る技術は、人間の頭脳内部の思考に係る情報を扱う思考情報技術(Thinking information technology;造語)に属する。従来物事は物(モノ)を中心とする物的世界観の下で物理空間と情報空間のセットで扱われてきたが、人間の思考が係る事柄を扱う場合は事(コト)を中心とする事的世界観の下での意識の役割を組込んだ思考空間と思考情報空間のセットで扱う必要があると指摘される。しかし、後者のコト(事)に関しては科学領域において個別研究から部分的融合の状況にあり、技術開発はまだ緒に就いた段階である。本発明は人間の意識を内包する社会システムに関わる領域の社会技術に関するもので、文理融合の複合技術分野の思考情報技術に属する新しい技術である。開発目標の思考情報技術はデザイン思考の哲学と相俟って有効性が増すものであるが、大方の社会システム技術論ではコトまで含めたデザイン思考哲学に踏み込まない形にあり物的世界観の中で提供される場合が多い。思考情報自体を主として物事のモノに当てはめた形式知の領域である電子計算機の情報処理の延長上にコトを当てはめると、暗黙知と関わってアート性を有する意識の問題にぶつかる。その場合、人間の精神と関わる上で物事の本質の存在の有無も同時に課題となる。そこでは『本質は虚構か』と問われる場合が存在し、この命題を解き明かすことが必要と考えられる。実際のところ構想などのデザイン思考を進めると、外から指摘される前に否応なく技術的な観点でも物的世界と事的世界を融合した物事の実在の本質論に行き当たることになる。本発明では該実在論の観点から最近の脳神経科学の知見(非特許文献3参照)である意識のトライアングル論(三元構成)を与件にした意識の在り方に遡って意識の働く場の原理を解明して明示する。また、無機質な機械系の技術の範疇において、ロボットに意識を持たせることが可能かどうかの命題に取り組む技術開発がその正当性は別として存在する(非特許文献4)が、これは技術の範疇が異なるので参照することは出来ない。つまり意識に関する思考情報技術の処理は有機性を有する領域にあり、生身の人間のアナログ的な成り立ちを考えると、思考情報技術にはアート性が付き纏う。この延長上で意識を主観の問題として敬遠する社会科学の存在は、社会は人間が構築していることを考えると課題が多い(非特許文献10、11参照)。特に意識をどの様に科学するか、脳神経科学の知見と示唆を社会科学に転換する方法が求められる。思考情報技術の開発は緒に就いたばかりであり体系化されていないが、電子計算機が扱う情報技術やAI、ロボットなどの人間の心の働きと関連のある思考結果を意識の在り方と結び付けるだけでなく、社会システムに於ける物事に関わる思考プロセス自体をシステム的に取り扱うことを目的とし、機能的には該物事に関するデザイン思考とその成果である構想を暗黙知から形式知へと転換する(構想知;造語)情報技術となる。先行する一連の発明(特許文献1、2、3参照)と合わせた一歩一歩の積み重ねに依って、人間の幸せと平和な世界を共創するための道具立てを提供する意図の下で発明が為された。つまり、AIやロボットの様な唯物論支配下での機械文明系の情報技術ではなく、人間の意識の階層性と広がりを最大限に活かして人間そして有機的な生命体の存在の意味を確かにすることを意図した技術であり、西洋由来哲学の唯物論的発想と東洋由来哲学の華厳教学や老荘思想を融合した命の原理に基づく生態系文明の技術となる。極めて簡単で身近な例では、社会的な事柄に対する課題への対応策に関するアンケートに関わるプロセス全体が思考情報技術の一つに比定できるが、このレベルでも定式化は浸透していない。デザイン(設計=生成技術)行為が人間の意図に発する特性から上記の様に課題は多い領域ではあるが、意識の在り方、機能、働きに遡って解明し社会的な物事を扱う深化させた技術を開発する事が急務である。しかし、未来のビジョンを描いて人間社会をつくるに必要な思考情報技術を考えると、発明の社会への実装に関しては本発明が新しい領域であり学問的にも文理融合領域に属すことから、科学者、研究者、技術者の意識改革に基づく関連の技術分野を統合的に扱う為の環境構築に加え、用語の概念、本質を捉えた定義、言葉の意味などを含めて知的生産性向上の観点で様々な制度化と合わせた社会実装に対して時間を掛けた浸透方法を考慮する必要が指摘出来る。
【背景技術】
【0002】
上記で説明したデザイン思考領域の技術は、その特性を大別してプラクシス技術(実践)及び生成(ゲネシス)の意を含むポイエーシス技術(非特許文献2のポイエシス=生成技術参照)に分類した時の後者に属するものであり、物事の生成に関わる創造を扱う役割を果たす機能特性を有する。ポイエーシス技術は技術開発の対象となるものであり、科学的な知見と人間の心の在り様に関わるニーズを基にした技術的な観点において、合理的で正義を有する正当性に基づく哲学的な考え方を媒介にした着想と発想に依って組み立てられる必要がある。新しい発想を伴う思考では直感が重視される中で、必然的偶然(セレンディピティ)に基づく思考の流れから形が表出する創造力の賜物がポイエーシス技術である。従って上記で示した領域の技術開発の裏には理系だけでなく文系の知見が必要になり、文理融合にまで意を砕いた知の統合が問われる。特に社会的な物事に対する技術開発とその関連の発明の背景には文理融合のアプローチが顕著に要求されるが、従来この観点が軽視されてきたことへの対応が求められる。そこで文系の知見の中には事的世界に属する非決定論的な性格を見せるアート性を有する事柄が存在し、構想力や創造力更には関係性などに関する哲学などがこれに該当する事に留意する。本発明で明らかにされる様に、上記非決定論的な特性を有する事柄に関しては何れも意識の在り方が関わって来る背景を有するので、共通的な課題として一見主観的に感じられる意識に関して、意識の三元構成に係るトライアングル理論に基づいて意識が働く場を客観的な特性を持たせた形で構成させることを試みたのが、発明のターゲットとなる意識の統一場理論(Grand Consciousness Theory)である。つまり客観的な場の枠組みに従って主観的な意識が自己の精神エネルギーに拠り作動しても意識の働きで外に出て来る行動には客観性が期待できることを意味する論理的な正当性が得られる。言わば弁証法が説く主観と客観との二律背反の止揚を一つの目的とし、意識が作用する止揚の場を定式化する文理融合の複合技術の領域となる。一般的に、正当性を念頭に置いた開発に於ける発想の深さが求められるが、その深さを決める一翼を担う哲学書が日常構想や技術を論じることは稀であるが存在する(非特許文献2など)。また関係性や心の表れである意識の扱いに就いて、人文科学的な観点から華厳教学(東洋の哲学)が人間社会に必須であると説くことに注視すると共に老荘思想への留意の必要がある(非特許文献7参照)。技術自体の根底を成す科学的な知見が示唆する論理を技術開発の対象にするためには、原理(テオリア=セオリー)から示唆を汲み取り社会適用する社会思考化への着眼が重要であり、着眼点を知の統合に向けて如何に方向付けるかが問われることになる。意識の技術的取り扱いは意識それだけで有効化されず、意識の役割や働きが期待される物事に関する思考行為と組み合わさって有効になる。具体的には上記一連のデザイン思考と社会システム論に関わる先行発明の中で、個の意識あるいは当事者意識や連帯意識の形で包括的な言葉(用語)として用いられる。本発明の技術領域に関わる知の統合性を有するレベルの普遍的な技術は存在しないので直接参照は出来ないが、個別の説明に於いては本発明に先行する上記一連の発明(特許文献1、2、3)を公知の知見として参照し、更に関連発明である意識粒子論(特許文献4)と合わせて取り扱うことが重要になる。そのため関連発明の図面引用を中心にするとして、用語に就いては特段の追加説明なしに必要箇所で参照する方法を採用する。
【先行技術文献】
【0003】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許願 2020-21907
【特許文献2】特許願 2020-21908
【特許文献3】特許願 2020-21909
【特許文献4】特許願 整理番号 HISHIR2-T14
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】デザイン論;『デザイン原論』(河北秀也;新曜社)
【非特許文献2】構想力の論理(哲学);『三木清全集第八巻』(三木清;岩波書店)
【非特許文献3】脳神経科学;『意識と自己』(A.ダマシオ著/田中光彦訳;講談社)
【非特許文献4】意識論;『脳の意識、機械の意識』(渡辺正峰;中公新書)
【非特許文献5】意識論;『意識と本質』(井筒俊彦;岩波書店)
【非特許文献6】意識論;「意識と生命」『精神のエネルギー』(H.ベルクソン著/宇波彰訳;第三文明社)
【非特許文献7】華厳教学(哲学);『華厳経をよむ』(木村清孝;NHK出版)
【非特許文献8】華厳教学(哲学);『華厳の思想』(鎌田茂雄;講談社)
【非特許文献9】生命科学;『生命誌とは何か』(中村桂子;講談社)
【非特許文献10】科学;『タオ自然学』(カプラ著/吉福伸逸他訳;工作舎)
【非特許文献11】科学;『ターニング・ポイント』(カプラ著/吉福伸逸他訳;工作舎)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
社会技術に関わる領域に於いて、デザイン思考に基づく構想に関する技術が知的生産性の向上にとって重要な時代に突入していると認識する意識に基づいて課題を探る。社会的な傷病の一つであり国際的な課題となっている気候変動対策を含めたSDGsが、持続可能な開発を目指す産業の在り方を中心に誰も取り残さないことを標語にして人間の心に意識の焦点を当てる状況が存在する。最近の感染症への対応に於いても医学的・経済的な事柄に加え人間の心の問題でも同様の対応を含んでいる。地方創生に於いては「まち・ひと・しごと創生」が謳われ、産業構造の変革を通してしごとを創生する中で、まちやひと(人)にも係って行く姿が描かれている。地方創生に於いて大切な事は、人間の意識の持ち様に直結する消費スタイルやライフスタイルを受止めた対応策としてコトを起こす産業構造や企業の姿勢と構想であり、これを支える政策デザインに戦略的なコト起こしの発想を組込むことである。また大都市への一極的な人口集中が都市の過密を生んでいてグローバル性を伴う感染症対応への脆弱さを露見させると共に、都市への人口一極集中と関連が深い食料自給率や再生エネルギー利用率向上のためには地域資源に敬意を払う意識の働かせ方の中で、地域資源を活用して地方創生に結び付けグローカルな発想と合わせて構想し政策化することが国防上の重要課題となる状況にある。この様な社会的課題に共通するのが人間一人ひとりの感情と情動に係る意識を統合して受け止める産業構造の変革へのリーダシップと知的行動の在り方であり、思考の効果までを視野に入れた対応策の構想(コト)に関わる活動への行政体や企業体・事業体のトップ層の意識体系への関心醸成と方法論の確立である。別の言葉で表現すれば、物的世界観から事的世界観への意識転換であり、物理学に加えて事(コト)の理による相補性を考慮した学術領域の確立要求となる。上記の様な社会的な課題が山積する中で、モノ(物)が中心の社会からコト(事)が重視される社会へ転換される時代背景にも関わらず、コトを起こす契機となる人間の外界である社会システムと人間との関係に於ける人間の意識の扱いが技術的に定式化されていない。すなわち人間の意識を内包する社会システムの定義と記述の方法も不明確であり、「コト」に関する知的活動特にコト起こしを産業化する為のデザインと経営構想策定に対する方法論に課題が存在し時代の要請に応え切れていない。言い換えれば、様々な産業の領域・分野に於いて環境変化に対応するための変革に無理や無駄が生じている。更に、社会問題や経営問題に取組む産業界や個別企業そして自治体・行政体などに於ける様々な不都合に対する社会的課題を削減する対応策の戦略や政策デザインに関わる構想や計画を立てる段階に於いて、意識を有する存在である人間の精神性や心の働きを内包する物事を扱う必要性が知的生産性の議論と相俟って増加している。対応策の基本となるデザイン思考に関わる意識に留意した思考情報技術(Cogito-designology;造語)は、上記の先行発明によって開発され提示済の状況にある。しかし上記の様な時代背景の中で知的な社会システムのデザインに対して利用出来る様な、思考情報技術的な観点から客観的な形で定式化された意識の定型化及び意識作用の場の在り方を扱う統合的な対応策を設計する方法が未だ存在していない。大きな意味での知的生産性の向上にとっての障壁と指摘される解決すべき課題であり、社会のリーダ層や専門家及び専門家のグループに加え普通の担当者でも理解を深め習熟によって操作可能になる道具立て(ツール)として、例えばパソコンのアプリの形態での実現が急務である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の意識の在り方を思考して技術の形にする方法論が不都合な状況に置かれて来た大きな要因は、社会的なシステムのデザイン行為の本質に関する理解不足と、意識自体の本質にまで意を尽くすべきデザイン思考に関わる思考情報技術的な未熟さであると考えられる(非特許文献5参照)。上記で指摘された課題への対応策として、コトに関わって人間の意識の在り様にまで踏み込んだ創造的な知的活動を効果的かつ効率的良く行う為には、知の統合を意識したデザインの道具立て(ツール)が必要であり本発明に先行して為された上記一連の発明がこれに該当する。知的統合のためのデザイン当事者の意図を受止めることを可能にするデザイン思考に基づくツールであるが、コトを視野に入れると上記課題の中で指摘した様に、コトに関わるデザイン思考ではデザイン行為を主導する人間の意識に焦点を当てる必要がある。デザイン対象として個の意識と社会システムに加えて両者の社会的関係の場を含めた三元論に基づく深化した発想が必須になり、上記一連の発明により三次元デザイン思考の定式化が為されている。しかし、意識そのものの基本構造と該意識の働きについての客観的な理解にまで踏み込むと論理が複雑になり過ぎることに鑑みて先行発明では省かれた詳細部分に対して、本発明によって改めて一般的には主観的な事柄と理解される当事者意識の統合的な構造と働きに就いて、領域を跨る諸科学の知見を文理融合的に駆使して論理を展開した枠組みを構成することで、客観性を重視した意識の統一場を構成することを試みて定式化がなされた。技術自体の根底を成す科学的な知見を技術開発の対象にするためには、提示される原理の示唆を汲み取ってその論理を社会適用する為の社会思考化の着眼と手続が重要であり、着眼点を知の統合に向けて如何に方向付けるかが問われる。意識の技術的取り扱いとその働きは意識そのものだけで有効になるのではなく、意識の役割や働きを必要とする物事に関する思考行為と組み合わさって有効になる。具体的には上記一連の先行発明の中で、個の意識の形で包括的に説明された上で用いられるので、意識の役割に関して留意した上で当事者意識に焦点を当てた形で意識が働く場としての意識の統一場のモデル構成(モデリング)を展開する。本発明で参照する意識論に関する文献の中で、意識の働きに関する脳神経科学の最近の知見を説く非特許文献3と現代物理学から老荘思想の道の哲学に目を向けた非特許文献10が注視して意識の哲学領域を説く華厳教学(非特許文献7参照)の知見を再確認しながら細部を分析し、更に生存に関わる生命誌(非特許文献9)を紐解いて当事者の存在の論理を構成する当事者意識にまで論理を広げた上で、科学が示唆するところを社会システムに適用することに工夫が為される。なお本発明で展開する意識の統一場の骨組みには、現代に於けるニュートン力学からの物理原理のパラダイム転換に基づいて現代物理学の知見に組込む際に現代物理学の量子論を基本にした量子力学と相対性理論が適用される。現代物理学の知見から示唆される原理を社会思考化に直接適用するものであるが、先行発明(特許文献1~3)で案出された格子譜で指定される九つの構成要素に対して、上記で社会思考化された内容特性に応じた構成要素の基本構造に当てはめて設定(パラダイム設定)される。更に上記の華厳教学(非特許文献7)が示唆する五つの要件や生命の発生論の知見も三つに法則化され、パラダイム設定と同様に格子譜の構成要素状の適所に当てはめて場が論理的に構成され設計が為される。なお、意識の統一場上で作動する意識自体のモデリングによる定型化に関しては関連発明(特許文献4)において為される。
【0008】
具体的な論理展開の手段を構成する設計のステップは、
図1に示めされる様にまず現代物理学に関して物事の原理的なパラダイム転換への認識及び先行発明の存在を前提として確認し、次に「ステップA;東西の思考法の融合を隔てるミッシングリンクの確認」、「ステップB;社会的課題の捉え方と知的生産性の差異確認」、「ステップC;超社会システムの特性確認(第一与件)」、「ステップD;意識の基本構造の客観的な理解(第二与件)」、第三与件に係る「ステップE;デザイン思考上の意識空間の論理的な意味の分析」を行って意識の統一場の存在(
図4)と当事者意識の働きを分析し本発明の第四与件を設定する。上記四つの与件の下で「ステップF;意識の統一場の論理構造の設計(モデリング・デザイン)」に基づく意識の統一場の設計を行なうに際し、部分ステップである「ステップF1;基本構造の確認;基盤肢、行為網、真の実在(第五与件)」において先行発明を引用して示す
図5の格子譜の超社会システム表現形とその記述文法(詳細は特許文献2、3参照)を第五与件(格子譜与件)として明確化した上で、「ステップF2;科学的知見の構想法的三元分析」を先行発明(特許文献1、2参照)による三次元思考から発想する基盤肢、行為網、真の実在の構成要素を念頭に置いて分析し
図6に三元論の世界として示した後、「ステップF3;ステップF2の三元性を勘案しながら格子譜との関連を整理する」によって思考情報技術の核心を五つの部分ステップに分割して要素分析し社会思考化して
図7で示し「ステップF4;ステップF3による分析結果の図式化;モデリング」の結果を図表化し
図8で示す。
図6と
図7上で論理構成を定形化した分析結果を与件である
図5の格子譜上の各構成要素に対応させ
図7で社会思考化した格子譜要素の分類記号内容に従って定位させることでシステム化された
図8が得られ、科学的知見の論理的或は物理的な構造性を保って客観的な形態の定式化が為される。更に、
図8をベースにして「ステップG;実施例による検証と展開」をモデリング・デザインすることで、意識の統一場を展開した応用への展開と確認を行うことが可能になり様々な課題への対応手段の実用上の基礎が得られる。
上記ステップの構成に関して上記の
図1で示めされる手順を構成する思考とデザイン内容を導く思考情報技術の対象要素と該要素群の関連性の具体的な内容を模式図で判り易く描写したのが「
図2意識の統一場の思考情報技術的な思考論理構成」である。意識の統一場の出力200で示される
図8を描くための思考情報の構成と流れを表現するものであり、意識の統一場100の入力として、物理原理の社会思考化情報10、意識の三元構成(トライアングル)の読み解き結果情報20、連帯型の当事者意識を分析した情報30、生命誌三律情報40、真の実在で示される情報50、デザイン思考エンジン情報60、超社会システム論情報70、華厳教学の五律情報80が
図1で示した各ステップで得られる
図6と
図7が示す現代物理学、超社会システム論、意識論、弁証法、華厳教学、デザイン論の構成と深化型論理から成る三元論構成の思考情報として
図2の意識の統一場100の入力に導かれて格子譜の指定場所に統合され、
図5で示される第五与件である格子譜の記述文法(要約は
図5の八つの注釈に付記)に従ってシステム化されて
図8及び
図9の図表の形にモデリングされる。なお生命誌三律には生命誌に関わる常識的な知見を引用している部分が存在する。意識の統一場100の出力情報200はデザイン思考に於ける統合知の方法論300として準備されている本発明に先行する深化型構想設計法ADDiD(特許文献3参照)の性能を高める参照情報として活用できるものであり、出力情報200は
図2中の意識の動態論400導かれ本発明の実施例の位置付けで説明する
図10の更なる展開の場である
図11の構成に利用することが可能である。
【0009】
上記ステップD、ステップE、ステップFに於ける意識の扱いについて以下に説明する。非特許文献3で提示される脳神経科学の成果を取り込むに際して、意識の基本構造を把握しながら先行発明に於ける
図4で引用する意識空間(意識の統一場)の位置付けを明確にしたあと、意識のトライアングル理論が示唆する自己意識、当事者意識、連帯意識の区分に基づく各意識の働きが把握され当事者意識の働きによる統合の場が構成される。思考情報技術面での未熟さへの対応には、現実の人間を内包する社会の構造自体を個の意識と社会システムとの関係性の場を含めた形で捉えたデザイン思考に関する技術哲学を導入して定義し、該個の意識が想定した物事への思索の形態と思索の力つまり精神的なエネルギーの流れの関係を明確化した上で、当事者意識の働きに関わる脳科学領域の知見を駆使することでデザイン思考の本質的な論理特性を組込んだ形を抽出し、思考の過程に於いて繰り返し使える基本形としての汎用的で客観性を拡充した意識の統一場の創出が為される。なお具体的には該創出の過程に於いて合理的で正義を有する正当性に基づく哲学的な考え方を媒介にした着想と発想が導入される。この為、思考情報技術の開発の裏には理系だけでなく文系の知見が必要になり、文理融合にまで意を砕いた知の統合が為される。非決定論的な性格を見せるアート性を有する事柄に留意し、構想力や創造力更には関係性などに関する哲学的論理を導入する。これら非決定論的な特性を有する論理のいずれも意識の在り方が関わって来るので、共通的な課題として主観的に感じられる意識を客観的な特性を持たせた形で構成させることで意識の統一場理論に論理統合する。一般的に、正当性を念頭に置いた開発に於ける発想の深化が云々されるものとなるが、発想と論理の深さを決めるに一翼を担う哲学書が構想や技術を扱う事は、日常目に触れることは稀であるが存在しないわけではない(非特許文献2など)。また関係性や心の表れである意識に就いて、華厳教学(東洋の哲学)が人間社会に必須であると説く論理に注視し(非特許文献7参照)、五つの規律に整理して社会思考化を行ったあとで導入する。更に、上記思考の在り方の正義を意識した正当性の保証に関わる本質的な論理特性に就いては、デザイン思考の正当性を担保する重要な事柄であり、一連の発明では根拠を生命誌に置く考え方を理論の根底に据えている。既に先行発明(特許文献2、3)に於いても用語としては使用している「真の実在」がこれに該当する。デザインの合理性の根底に太陽律に導かれる人間としての生存を置くのが生態系技術の命の原理に従う在り方に由来するものであり、命の原理の科学的な知見の基本は非特許文献9が説く生命誌に置いている。この考え方は哲学の大きなテーマと受け取れるが、ここでは意識論と合わせて考えることで生きている証である意識の根底に真の実在が定位すると考えて論理を展開する。文理融合の科学の知見を三次元構造のデザイン思考に統合して適切に埋め込むことで、選択図(
図8)で示した当事者意識を核にした客観性を組込んだ意識の統一場が構成出来る。命の原理が主観ではあり得なく客観的である事に加え、科学的な思考実現の観点からは事柄に対する姿勢が本質性、合理性、合目的性、健全性、正統性を担保する論理の組立によって示される事が重要である。
【発明の効果】
【0010】
意識の世界では課題への効果を直接可視的に確認することは困難であり、対応策への論理の展開自体を検証することが必要になる。少なくとも下記の項目が列挙出来ることから、本発明による客観的な諸科学の知見に基づいて対応策のモデルを組み立て、アプリソフトを使用して図表表現した意識の統一場における意識の三元的な働きの客観性を確認出来、懸案の課題解決への道筋を提示するモデリング・デザイン領域の思考情報設計(Cogito-designology;造語)に関わる深化された思考情報技術的効果が提示される。
▲イ▼思考手段の一つである「合成による分析(Analysis by Synthesis)」の事例として具体化が出来ることで、対策の具現化動機を生命原理に基づく「生きる=“つくる”」に準拠することに拠って生態系技術の効果を確認できる。
▲ロ▼意識の統一場の三次元構成を客観的な科学の融合で実現出来たことにより、技術的普遍性が向上するので先行発明(特許文献1、2、3)の有用性が高まると共に、関連発明(特許文献4)で提示される意識粒子と社会意識量子が精神エネルギーに拠って作動する客観的な作動力の場を提供できる。
▲ハ▼同じ理由から複雑な物事への対応策のデザイン思考の展開力が高まる。
▲ニ▼時空面と関係性軸で構成される連帯型デザイン思考空間に於ける関係性軸の意味と働きが明示され、構想法の普遍性が高まる。
▲ホ▼上記▲ニ▼と関連して意識の統一場に於ける動的な展開つまり関係性軸の構成要素の関係性の場への内容の投映が可視化出来て階層性の構造的展開が容易になるので、意識空間のヘリコイド状の構造展開が可能になり応用性が高まる。事例の当事者意識の設計が一例である。この事は先行発明である深化型構想設計法(特許文献3参照)の使い勝手と効果を高める役割も果たす。
▲ヘ▼文理融合の事例提供により経営学、政治学、経済学、政策学等社会科学領域への意識要素のデザインと組込を試みる思考機会の増大機会を提示する。
▲ト▼「当事者意識」を媒介として西洋の哲学である弁証法や唯物論と東洋の哲学である唯識論や道の論理との融合の手掛かりが得られた。この融合は現代物理学からの課題提示への技術的側面見た回答の一翼を担う役割を有する。
【0011】
更に、もう一つ懸案であった「真の実在」への理解を思考空間上で確認することが可能になった。また上記▲ニ▼、▲ホ▼、▲ト▼とも関連があり▲ヘ▼の根拠を与える要素として、論理の本質を掘り下げる役割を有する数理的、物理的且つ現象論的原理に則った思考情報技術分野の以下の効果が指摘出来る。
▲チ▼哲学的な存在である「真の実在」が数理的には時空面と関係性軸の交差点であり、物理情報的には実体性と実存性が構成する面と実在性の交差点として唯物と唯識の二つの論理を統合する形を提示するものであることから、思考情報技術的な三次元思考の統合に係る意味の理解が深まる。
▲リ▼現象論の領域における原因と結果の間の因果関係とその作用の在り方や手段と目的の間の効用の在り方が関係性を媒介として明示できる。
▲ヌ▼意識の働きと物事の本質の関係を感性・悟性・理性の統合機能のはたらきとして思考情報技術で扱うことを可能とする例証が得られた。
▲ル▼日本人の意識が中空構造であると評される事柄に関して、意識論と共に本発明による真の実在の思考情報技術的な理解をキーワードにして、物事の本質に関する思考を掘り下げる契機を提供でき、脳神経科学の知見を意識の働きを媒介として心理学など心の働きの解明に資す例証たり得る。
▲ヲ▼科学領域の脳神経科学的な成果が思考情報技術に転換可能とする例証が得られると共に、科学的な知見が重要視する「自己」の言葉の意味を実用的な役割にまで展開可能にする手掛かりが得られた。
▲ワ▼弁証法の三次元思考による普遍化が実現出来る。身近で一般的な弁証法に例えれば、「自分の人生」か「家族の幸せ」かの選択をTVドラマに於いて二律背反で問いかける場合、ドラマでは脚本家の内面に潜む目に見え辛い考え方や価値観で問いかけを行い思考の次元を明示しない視聴者と内面を共有する合目的的な方法に拠って「止揚」部分を吸収している。しかし社会的な局面での例えば産業構想設計や関連する産業政策デザインに於いては、合目的的な内面的止揚ではなく普遍的で合理的な方法論が求められる。本発明による意識の統一場理論に従った三次元構造の意識の発出に拠って、主観と客観の分断を埋めるに必要とされる「止揚」的行為に係る関係性を核とする合理性の根拠が可視化される。
▲カ▼本発明の様に人間社会のシステムを技術の対象にする時に人文科学である哲学や思想をシステム要素に組込む論理構成が大きな課題となる中で、西洋ではデカルト由来の心身二元論を基本とし、東洋では華厳教学の関係性重視や老荘思想由来の「道;どう=Tao」に論拠を置くなど洋の東西で考え方が大きく異なる状況の中でグローバル化の時代に対応出来る思考論理を組み立てる際に、単に両方の中庸を取るのではなく融合を図って弁証法で言う止揚的世界の統合を図ると共に意識のシステム要素機能の解明を深化させて発想する場への手法的な手掛かりが得られた。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】意識の統一場の定式化と検証の手順を説明する図
【
図2】意識の統一場の思考情報技術的な思考論理構成を示す図
【
図3】個の意識と社会システムの関係性力学モデルを説明する図
【
図4】先行発明から引用した思考空間のデザインモデル構成を示す図
【
図5】先行発明を引用して統合した格子譜の超社会システム表現形を示す図
【
図6】超社会システムに於ける三元論の世界を示す図
【
図7】科学的知見の社会思考化をまとめた表を示す図
【
図9】意識の働きと知の世界の構成概念モデルを示す図
【
図10】自己意識のヘリコイド・ダイナミックモデルを示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
上記解決手段の説明で手順的流れを
図1で示し、
図2の模式図に於いては該手順と関係する情報源及びその出力情報群が意識の統一場100の入力情報として結ばれ意識の統一場を
図8で表現する図表出力200が活用される構成までを示した。
図2に於いて具体的な形がある情報群には番号を付してあるが、与件など考え方を中心にして記述される項目は長方形で囲んだブロック化表現によってそれぞれ情報的な塊であることを示している。発明の具体的なステップは以下の情報操作と処理で説明される如く、科学的な知見からの示唆を社会思考化した技術表現を取ることが随所に行われ、思考情報技術的な処理が為されて意識の統一場理論を具体的に表現する図表が完成する。この図表は電子計算機に於ける市販の表計算ソフトを用いたアプリケーションソフトの形態で適用することにより、先行発明で定義される記述文法の利用と相俟って具体的な思考情報技術として実施出来る。
図8だけ一瞥すると一見当たり前の図表に見える場合があるが、その背後には科学的な論理を背負った深化した理論が存在し実用性と十分性を担保する。
図1に従い、まず大前提の確認から説明を開始する。
【0014】
上記で提示される課題を解決する為、文理融合のデザイン思考論理に従う意識を扱う思考情報技術の深化を伴う実用化を図ることに鑑みて、意識の定義を辞書が規定する自己と外界の夫々の認識による二元構成定義から最新の脳神経科学的知見が示す自己と外界の認識そして外界と自己を同時に認識する三元構成に意識構成を転換して定義することで技術的な扱いを深化させ電子計算機のアプリケーションソフトの実装形態を伴って本発明が為される際、該深化の実用的な表現である複雑な構成を有する三次元デザイン思考の骨組みの前提として自然科学の原理である現代物理学原理に於ける基本的な概念を示す量子論と量子力学及び相対性理論へのパラダイム転換の論理を社会思考化した意識構成に展開する第一前提と本発明と同列のデザイン領域に属する三つの一連の先行発明の存在を第二前提として併合した大前提に基づいて論理展開が為される。一般的に意識に関しては辞書で定義される要素として自己と外界の二元論が存在しこの考え方の延長線上に物理学の古典的な考えに従うニュートン力学的発想が為されるが、この原理では時間、空間、関係性の三元要素で表現される思考空間の論理的な説明と記述は不可能である。百年程前に発明された現代物理学を特徴付ける量子力学と相対性原理へとパラダイムの転換を図ることが必要であり、発明者は専攻である電子工学の領域の知見としてパラダイム転換を受け入れて本発明に利用した。その際に現代物理学が示唆する原理を社会現象に適用して物理的原理の社会思考化を行なった。その動機の一つが量子力学の知見に基づく半導体工学の発展に依るマイクロチップやメモリの一方的な技術発展とAIやロボットなど応用分野の偏りへの懸念であり、特に人間が構築する社会に関する社会科学領域に於けるパラダイム転換への無関心さが懸念の対象になる。意識論でも未だ転換途上にあり、十分にパラダイム転換がなされていない事に鑑み本発明では敢えて意識論を含めた形でのパラダイム転換を図った。この事に関連して現代物理学の領域から意識論による人間の精神活動を考える非特許文献10が説くニュー・サイエンスの方向性の中で人間の精神的活動を心の働きと関連させて東洋哲学の側面に配慮して物理学を考える議論が存在し、非特許文献7(P29~P34)や非特許文献8(P35~P38)が説く華厳教学や非特許文献10が関心を寄せる老荘の道(タオ)の哲学においては物理学との双方向の方向性が紹介され今後の解明の必要性が説かれている事を受けて社会思考化への視点を加える。更に社会技術面(経済、政治、経営、政策など)からの意識論の議論が必要であり、社会科学領域に於いて現代物理学と華厳教学や老荘哲学など東洋哲学との融合化が為されることが望ましい。特に、デザイン思考を媒介とした相対性理論の社会思考化が融合のピボット的役割と機能を果たすことに留意する。
【0015】
次に、
図1が示す本発明を実現する方法を構成する各ステップの中で「ステップA;東西の思考法の融合を隔てるミッシングリンクの確認」では本発明の直面する大きな課題となっている知的生産性向上の根源として重要であると認識してリンクの必要性を確認する。社会的な物事に関する構想や構想の実行を支える政策デザインにおいて、構想の正当性を示す合理的な根拠が必要であるが、統計データは存在しないとしてもこの事の重要性が見過ごされたまま物事が実行される事が多い。正当性の根幹には社会的な共有価値の認識が必要であり、本発明では生命誌の思想の一つと認識できる「生きる=”つくる”」が語る生命原理に基づく世界共通の正統的共有価値の意味が存在すると理解した上で、発生論を中心に置いた正当性を示す正義の根源としての合理性を有する人間の生存を考える。この生存に関わる根源性は余りにも当たり前であるため論理の組立から従来見逃しがちであり科学の不作為の存在が認識出来る。この事に関して、西洋に於けるデカルトの心身分離論やこれを統合した弁証法と唯物論で代表される西洋哲学と東洋哲学の代表である華厳教学及び老荘思想の両方に明確な形で存在するのがある種のミッシングリンクであり、上記で非特許文献7や非特許文献10を引用して理解した通りである。洋の東西をリンクする(結ぶ)為には、発生論に立ち還り生命誌を紐解いてそこに存在する健全性を体現する法則や原理を把握する必要があると考えるのが本発明の根源である。その考え方の上で、生存に関わる”つくる”の基本になるデザイン哲学を提言するデザイン原論に基づく思考と行動を、河北原論(非特許文献1参照)を用いてデザイン哲学の三次元表現化を行った先行発明(特許文献1)に求め、三次元思考の重要さを三木哲学の構想力(非特許文献2参照)を援用して理解する。これらの哲学由来の原理を分析した上で、東西の異質な哲学をリンクして社会思考化に活かす思考情報技術の在り方と表現力の駆使が重要になり、ステップBを経てステップFにまで繋げる。ステップBでは「社会的課題の捉え方と知的生産性の明確化」の工程によってステップAにおける考察の論理を追求し、意識の統一場を構成する主要要素を明確にして再確認する。まず上記で指摘された社会的な重要課題の大きな枠組みで捉える思考の領域としてデザイン思考の理解が重要であり、その先端的要素が先行発明(発明文献2)で明確化されたデザイン思考に於けるデザイン対象として設定されるもので、意識の働きから規定される現実社会の一つの思考モデルとしての超社会システムの考え方である。社会的な物事を構造分析が可能な社会単位の形で捉える発想の下で、曖昧で抽象的な概念で表現される社会の概念では設計が不可能であり、技術の一種であるデザインの対象には出来ないことの意味を理解したことから発明された表現方法が該超社会システムであり、合目的性の観点から設定される構想や政策デザインに合理的な枠組みを与えることで、知的生産性を大幅に向上させる仕掛けになっている。超社会システムと名付けた社会モデルは、上記で生存の歴史を論じる生命誌が示す在るが儘の合理性を認識した結果を根拠にしている思考上のモデルである。該超社会システムの生存の根源は、当事者の意識が感性の助けを借りて認識する「真の実在=Entity bona fide」で理解される生存の原初性(Original position)と命の原理に就いて、社会思考化した生命誌三律すなわち発生論から誘起されるオパーリン律(先行発明の特許文献2参照)、ダーウィン律(ダーウィンの進化論;特許文献2参照)、太陽律つまり本発明で採用した本質性を担保する考え方であり太陽系のビッグバンで地球が生まれた事実と太陽の恵で生存が保証される命の根源を規定する規律で構成した上で、ステップFに於いてその機能が明示され
図2真の実在出力50及び生命誌三律情報40として意識の統一場100に導かれて情報統合が為される。次に、唯識論と称され西洋起源の唯物論とは水と油の関係の如くに理解されがちな華厳教学に関して非特許文献7(P15~P34)の説くところをデザイン思考流に読み解いて社会思考化すると、華厳教学の五律が意識、関係/縁起、発心、階層、対等の五つの観点で以下の如く整理出来る。「華厳律I(意識の論理);存在するものは全て心の表れである」、「華厳律II(関係性の場の原理);小が大であり一つが全てである(梵我一如の縁起)」、「華厳律III(個起点の原理=発心);初めが終わりである」、「華厳律IV(ハイパーネットワークの原理;フラクタル構造/ハイパー性/超自我);対等的な階層構造の示唆」、「華厳律V(対等性の原理);一即多・多即一の社会思考的な解読」がそれである。なお華厳則IからVの読み解きは発明者の理解を含むものであり番号付けは独自の定義であるが、華厳教学が日本文化の健全性の根底にあると考えると、西洋哲学に傾注し過ぎる発想に偏ることなく両者の融合の必要性を感じるのは、上記したニュー・サイエンスの流れと同期する事柄でもある。上記華厳律Iが意識の根底に関わる原理であり、ここから当事者意識がその存在を認知する外界つまり社会システムへの関係性の意識であることが示唆される。華厳律IIは関係性による統合性が全てであることを意味し、本発明で社会の構成要素の相互関連性を示す関係性と関係性の場が中心的な役割明示に示唆を与えている。華厳律IIIは
図5で示す格子譜の起点を個の意識に置くことを示唆し、社会に於いて個の意識を重視して起点とすることを示すと理解でき、これは願いや欲求する心が根源的な意識(この場合は自己意識)であるとする論理に繋がる。華厳律IVは読み解きが見逃されがちであるが、非特許文献8(P37)には明言されており現実の社会の階層構造を在るがまま観察すれば容易に理解出来る原理である。但し現実の社会的階層は前現代性を残している。先行発明(特許文献2)に於ける超社会システムの構造化表現の基本的な骨組みである基盤肢を構成する時間軸*空間軸*関係性軸の普遍性が、階層構造の有効性を示唆する社会原理となる。しかし、華厳教学は技術書ではないため、階層性の可視性には触れているが構造性を三次元で表現していない。西洋哲学の弁証法も正反合の三元性は有しているが、正反の統合としての止揚(合)の次元的な構造は明示しないので、思考情報技術的に如何なる示唆を受止めて社会思考化するかが問われており、上記の如く読み解いて論理の合目的性を満たす。華厳律Vの対等性原理は社会の構成要素間の対等性に加えて階層間の対等性をも示唆するものである。これは老荘の万物斉同の哲学に通じるが、現実の社会においてもこれを理解することが社会の未来性の根幹となる。上記の分析結果は
図2華厳教学の五律情報80として意識の統一場100の入力に導かれる。
【0016】
「ステップC;超社会システムの特性確認(第一与件)」では上記ステップBで確認した超社会システムの特性を確認する為に、
図3に於いてまず一般的な形で個の意識と社会システムの関係性を発見的に分析してモデル的に類別化し関係性力学モデルとして相互比較する中で、超社会システムの特性を明示し
図2超社会システム論情報70として第一与件を得ている。個の意識と社会システムの関係性を思考情報技術によって類別化して理解するための三タイプの関係性力学の特性分析の切り口が、
図3左側の行名で設定した該力学の特性を構成する技術内容の区分であり、
図3上部の列名で設定したタイプ区分は本発明独自の分類であるタイプI(前現代性;残渣)、タイプII(現代性)、タイプIII(未来性)で為されている。発見的な着眼点は個の意識が有する関係性力学であり、三タイプの関係性力学の特性分析結果を図表化して超社会システムの存在を明示可能な関係性の型で図表表現した関係性モデルがタイプ区分のキーポイントである。図中の世界観は関係性の原理を示す諸項目と対応して概念把握されている。本発明が与件3として扱うのは意識論の理論背景を非特許文献3の超越的意識論に取ったタイプIIIの超社会システム概念を有する理性の高度化を伴う連帯型の関係性となる。なおタイプIIIの意識の働きに係る部分はステップDで明らかにされる。
【0017】
「ステップD;意識の基本構造の客観的な理解(第二与件)」では、社会的な物事に関する知的行動としてのデザイン思考の遂行に必要なデザインに関わる人間(デザイナー)の当事者意識と連帯意識に関わる思考の枠組みについて、非特許文献3(『意識と自己』の
図10-1;P401~P404参照)で図表化された人間の意識の基本構造を中核意識と拡張意識の階層的な組み合わせで表現する脳神経科学の知見を採用して第二与件とする。中核意識を一般的な社会に置ける呼称である自己意識に当て拡張意識をデザイナー自身(自己)の当事者意識及び自己と外界(社会システム)との連帯的な関係性に着目した連帯意識に分節化して理解した上記ステップCで明らかにした超社会システムの提示に関連付ける。特に連帯意識が超社会システムの構成に重要である事に加えて、ステップEに於いて後述する様に当事者意識が意識の統一場の構成に重要な役割を果たしている事を理解する。その上で上記非特許文献3の意図を理解しながら発明者の感覚と経験を織り交ぜて読み解いた結果として本発明の第二与件を更に詳しく説明すると、意識の基本的な定義の評価と当事者意識の機能の確認を行い意識の三則の大枠を捉える。非特許文献3(P23~P46)を参照して意識の働きの大枠を読み取り社会思考化すると、自己を認識する意識、外界を認識する意識、そして自己と外界を同時に自己*外界の脳の機能に関わる関係性の形を認識する意識の三元構成(トライアングル)が理解出来る。これに関連する重要な事柄が通常記憶の機能と働き及びワーキングメモリの確認である。まず記憶であるが経験した物事がイメージで記憶されるのではなく、脳内の個々の神経細胞の運動エネルギーの程度で蓄えられており、何らかの摂動エネルギーを与える意識の働きによって脳内にイメージとして浮かび上がって来るものであり、浮び上がる場所が別の臨時的な記憶要素であるワーキングメモリとされる。このワーキングメモリの働きに関しても様々研究されているが、ここでは該ワークングメモリがデザインに関係する思考空間に於ける関係性の場となり、現実の社会に於ける社会的関係の場を思考情報表現する機能を有する事に着眼し理解して社会思考化して活用する。非特許文献3で提示される中核意識を一般的な社会に置ける呼称である自己意識に当て、良心や創造から共生、適応などに展開される拡張意識表象の意味を読み解いた上で上記トライアングルの発想を受止めてデザイナー自身(自己)の当事者意識及び自己と外界(社会システム)との連帯型の関係性の形に着目した連帯意識に分節化して理解する。上記の定義は上記
図3で示した関係性の在り方に係り、
図2連帯型当事者意識情報30の提示条件に連なる。
【0018】
次に、
図1上「ステップE;デザイン思考上の意識空間の論理的な意味の分析」を確認する。「
図4;思考空間のデザインモデル構成(行為系社会単位)」は先行発明(特許文献2)から引用した思考空間上の意識空間300の存在を提示し、意識空間300で注釈し
図4で思考空間上の役割と構成を示した意識の統一場の位置付けを第三与件として確認している。上記ステップDで第二与件の設定と合わせて確認したデザイン遂行に関わる関係性の形と連動した形態の連帯型の当事者意識に関して、その働きを少なくとも関心・観察・眼力(洞察)・覚悟(選択)・責任の機能構成で把握し当事者性を定義する形を第四与件とする。
【0019】
図1上の「ステップF;意識の統一場の論理構造の設計;モデリング・デザイン」では、最初に「ステップF1;基本構造の確認;基盤肢、行為網、真の実在」において意識の統一場の基本構造と表現方法を定義する為に、先行発明(特許文献3)で定義される図表を引用し改定を加えた
図5で示す「格子譜の超社会システム表現形」を用いた格子譜構成を第五与件(格子譜与件)とすることでデザイン思考方法の統一的表現を実現する。更に上記で設定した五つの与件を本発明の枠組みとして設定した上で、個の意識と社会システムとの関係性の形を相対化して理解を進める細部分析を行いながら、上記脳神経科学の読み解きに基づいて意識の正当性を確保するための意識構成の枠組みを客観化した意識の統一場の形を生成し構成するため、
図2で示した要素間の情報の流れを組込んでデザイン思考に関わる実用的な深化型ポイエーシス技術系の意識理論を構築出来るよう、以下で最終準備として要素の適切な配置のための二段階の分析と統合を行う。
【0020】
図1上の「ステップF2;科学的知見の構想法的三元分析」では統一場の要素分析の第一段階とし「
図6超社会システムに於ける三元論の世界」に従って縦軸では構想法の現代物理学、超社会システム論、意識論、弁証法、華厳教学、デザイン論の構成と論理比較を行う。
図6の横軸の次元を第一元、第二元、第三元に設定し、夫々内面的、関係的事柄、外部的を示す内容が組み込まれている。方向性は第二元を核とした論理の流れを矢印で略記した表現であり、第二元を中心にした第一元と第三元の相互作用の二か所の方向性を示す。縦軸上の社会システム論ではシステムの定義とシステムの三次元構成を特許文献3より引用し、現代物理学の量子論、相対性理論、量子力学に関しては後述する。哲学の弁証法の構成は一般常識レベルであり、意識論は第二与件と非特許文献3の内容を整理し三元化したもので、デザイン論の項目は特許文献1~3の内容を整理したものであり、夫々の項目で三元化した内容が分析の上で組み込まれて定義される。なお
図6では論理を深化させるべく幾つかの新しい用語を分野毎に導入しているが、これはデザイン思考の三元性を確保した深化型の論理に関わる概念の定義が必要なことによる。改めて例示すれば、主体・▲道体▼・客体、主観・▲明観▼・客観、能動・▲摂動▼・受動の斜字が指摘出来る。なお道体(Taoject;造語)と明観(めいかん=Taojective)は本発明の造語であり、注釈を含めた意味的な原典は非特許文献10が現代物理学との連続性を説く東洋の老荘思想を引いており摂動は現代物理学の摂動エネルギー論から転用している。また実体性(Actuality)、実在性(Entity)、実存性(Reality)は個別の概念を展開した全体性を示す意識の統合的な物理情報的尺度であり、原意は英英辞典から引いて定義しているが、用語としては学術の領域間で翻訳の関係があって意味が必ずしも同じではなく、日常的な言葉としても更に変動を受けている。本発明及び関連の先行発明において、国際的な議論に資すべく漢字の原意と英語の原意の両方を尊重し意味を掘り下げて使い分けている。
図6中の「注1;弁証法の止揚(アウッフヘーベン)は華厳教学の縁起的な存在感・世界観及び注2と連続的である。」は本発明の視点による論理であり、意識の統一場の客観的モデルの論拠を示す
図7の分析と社会思考化を経て図表化された
図8に集約される。同じく意識の基本的機能に触れる「注3;知性=悟性+理性の理解を分節化して感性、悟性、理性に三元化(カント由来)」では、日常的に使われる知性がカント由来の哲学的解釈では悟性と理性に分節化して思考の機能を三元化した認識によって深化した概念構成を有することに注視する。これらの構造的な仕組みのモデル化は
図9を用いて後述する。
【0021】
次に統一場の要素分析の第二段階として「ステップF3;ステップF2の三元性を勘案しながら格子譜との関連を整理する」においては、まず本発明の第一前提である現代物理学に関して、ステップF3の細部ステップ「▲a▼現代物理学;社会思考化(量子論、量子力学、相対性原理の社会適用)」において大前提として導入した現代物理学原理の社会思考化による社会的な物事に関する意識の場の三次元デザイン思考の骨組みとして、時空軸面と関係性軸で構成する格子譜与件に従う基盤肢と行為網及び真の実在に対して所定の要素内に現代物理学の知見を当て嵌める社会思考化を実施する。現代物理学に関しては発明者の専攻である電子工学に関わる量子力学系の知見に沿って
図7の現代物理学の列の如く分析した結果を記してある。基本は観察理論による動的平衡と量子論のエネルギー準位の概念を思考過程に組込む方法論であるが、
図7で取り上げた本発明の考え方が
図8に集約的に表現される。現代物理学との融合に関する更なる発明の詳細は関連発明(特許文献4)において関連文献を引用して提示される。
図1ステップF3の細部ステップ「▲b▼意識の働き;哲学的な意味と脳の働き(脳神経科学)」に関しては、上記ステップF2の分析結果を適用し整理している。細部ステップ「▲c▼東洋哲学;華厳教学の華厳律と老荘哲学の社会適用(哲学、社会科学)」は三元論構造には該当せず、非特許文献7と非特許文献8が指摘する論理を読み解き次の五つの規律を構成要素として独自に命名し設定していることは上記の通りであり、それらは「華厳律I(意識の論理);存在するものは全て心の表れである」、「華厳律II(関係性の場の原理);小が大であり一つが全てである(梵我一如)」、「華厳律III(個起点の原理=発心);初めが終わりである」、「華厳律IV(ハイパーネットワークの原理=フラクタル構造/ハイパー性/超自我);平等的な階層構造の示唆」、「華厳律V(対等原理);一即多、多即一」であるであると再確認する。華厳律Iは超社会システムの成立と表現の一つの条件であり、量子力学の観察理論に拠る意識の働きで擾乱を発した内部観察結果を示す動的平衡観を生む事と繋がる事柄であり、哲学と物理学を融合した原理と理解出来る(非特許文献10、11参照)。そこから老荘哲学の「道(どう=Tao)」の考えも
図6と
図7の分析と社会思考化の結果を反映して関係性の枠組みの中へ組み込まれる。細部ステップ「▲d▼生命誌;生存に関わる三律の役割分析(生命科学)」に関しては非特許文献9の説くところに加え、学校教育で習得する46億年前のビッグバンによる地球誕生とこれに続く38億年前の原始生命体誕生に発するオパーリンの生命の起源論やダーウィンの進化論などの発生論に則った構成要素であり、特に関係性の場の組立に重要な役割を果たしている。これらの三則は命の原理の根源であり、人間を含めた生命の生存を説明する法則として中心には原初状態を示す真の実在が設定される。細部ステップ「▲e▼論理+哲学+弁証法;三元性の論理と止揚の明確化(数理哲学)」は
図7の論理の列を設定するステップであり、概ね論理学や哲学的な定義も含め日常的に使われる論理的な用語を整理した上で、弁証法の正反を統合する止揚(ドイツ語表現のアウッフヘーベン)が三次元思考の関係性の場において構造化と可視化がイメージ化されている。上記原初状態の概念は非特許文献10や非特許文献11が観る東洋哲学の一つである老荘思想の根底にある道(どう=Tao)の概念が視座に置く無為自然の哲学にリンクしているが、無為自然観は意識の理性の働きから発想されるので本発明に係る意識論とも関連が深い。事的世界は人間の意識に発することから、本発明では意識の源泉である命に係る自然観にまで思考対象を広げている。
【0022】
上記の分析を「ステップF4;ステップF3による分析結果の図式化;モデリング」によって格子譜要素に割り当てて整理し全体像のイメージを得た上で、意識の統一場の要素別タイトルと連携させて格子譜の図表上に特許文献3が定義する文法に従って配してデザイン思考モデル化(モデリング)したのが「
図8 意識の統一場理論(物的世界と事的世界の統合モデル)」である。先行発明であるデザイン思考関連のデザイン思考エンジンの知見及びデザイン思考エンジンと構想力の論理で構成されるデザイン論上の知見に加え、現代物理学のこの領域での常識レベルの知見に同じく自然科学系の脳神経科学が説く意識論及び生命科学が説く生命誌に関わる発生論を意識の在り方の基本に置いた上で生存に関わる発生論系のオパーリン律、ダーウィン律、太陽律及びこの太陽律に起源を置いた生存の根源に関わる原初状態を合理的な正義象徴である真の実在の概念を、格子譜与件の定義に従った図表中心に設定する事に加え、人文科学領域の西洋哲学である弁証法における止揚の概念を統合したデザイン思考の対象となる超社会システムの記述方法を用いた関係性の場の格子譜上の記述による表現の枠組みと、同じく人文科学領域の東洋哲学を代表する華厳教学の意識面の考え方の骨子である梵我一如の生存哲学を社会思考化した意識の原理、関係性の原理、発心(個起点の原理)、階層性(フラクタル構造)、対等の原則から成る華厳五律をそれぞれ適切な要素に組合せて格子譜与件に従って所定の構成要素に配置し、意識の内容を設定する方法を組み合わせて当事者意識が主導して思考情報技術的に統合した三次元構成の論理を組み立てることにより、デザイン思考で得た意識内容のイメージを描き、電子計算機のアプリソフトの画面上或は通常の紙面上において関係性の場の表現の次元を縮退させて図表化する形式を持つ先行発明で得られた格子譜に文理融合的に統合化して記述し図表化する方法を用いて構造化し可視化を図ったデザインモデル化つまりモデリング・デザインにより、科学的な知見を活用した論理で組み立てた普遍的な形式の
図8として客観的に表現され、デザイン思考の場の形で「デザイン思考を深化させる意識の統一場の理論的定式化」つまり意識理論の定式化が為された。
【0023】
上記の解決すべき課題の一環として物的世界観に事的世界観を重畳することへの意識転換の必要性と期待感から、物理学に加えて事理学の確立が指摘されていると理解出来る。しかし事理学の呼称すらまだ認知されていない状況で言葉の持つ意味を正確に記すのは困難であることから、
図8のタイトル下に記した「適者生存に向かうデザイン思考の統合世界モデル;主観と客観の融合」が意味する
図8の発明内容の図表を参照して理解を進める。事的世界観の必要性を紹介する非特許文献7(P32~P33)において本発明の目的の一つである「主観と客観との分断を止揚する」事の重要性が紹介され、このことが「意識対象、意識内容、意識作用」の三項図式の克服を説く哲学者廣松渉の言説を引いて指摘される。内容的には上記
図6の分析に関連する事柄であり、三項図式の実現への一つの回答が、深化型構想設計法(特許文献3)として具現化した本発明を含む一連の発明の目指すものでもある。意識対象が超社会システムに、意識内容が華厳教学の示す発心である個の意識そのものに、意識作用が本発明に依る意識の統一場と関連発明の意識粒子論とその事例的展開の社会意識量子(特許文献4)の思考行為(運動)に該当すると理解できる。留意すべき点は事的世界が現実の社会つまり思考情報技術に於いて単独では存立出来ない事であり、唯識論や唯物論が単独では存立困難であり理屈を捏ねて難解な論理を組立てる事と通底することである。上記主観と客観の融合概念が
図8において当事者意識による明観と定義され、これは人間の相対性を重視する感覚を超越して主客を分別しない絶対的な物事観を表現する立場からアルゴリズム化出来ない論理の存在を示す。言い換えれば、人間の立場や考え方は物事をどの方向から意識するかの状況に拠って様々変化することを意味する理解から、出会いから生起する関係性が主導する事的世界観自体を把握する明観への理解が進展する。
【0024】
図8で構成を定義した意識の働きと知の世界の概念モデルに関して、意識の統一場の立体的構造つまり事理の基本を図表化したのが
図9である。
図9の基本は知識を中心にして語られる物理的な実在の背後に存在する知性と知匠が事的世界観の基本にあるべきであるとする理解に基づく。
図9が表現する「意識の働きと知の世界の構成概念モデル」は、図下部「注;意識の働きと超社会システムの知の構造」の如く意識に係る変数である感性、悟性、理性と知の関数としての知匠と知性の関係をモデリング・デザインの手法で構造化、可視化したものであり、基本的な時空面上に立体的に描写を展開している。
図8で示した意識の統一場の基本とし、
図9を併合する事で知の統合的理解を深めることが出来る。点線の矢印は個の内面から外界(社会システム)に向けた方向性を表現している。なお図の中心に位置する真の実在の意味が今まで以上に明確になっており、第一に真の実在は時間軸(X軸)*空間軸(Y軸)*関係性軸(Z軸)の原点である物理的・数学的な意味つまり「今ここに居る/在る」の意味が存在し、第二に意識の機能である感性*悟性*理性の交点を示し、第三に意識の尺度の観点から実体性*実存性*実在性の特性的尺度の原初(基準点)でもある事が判明した。真の実在があってこそ、理性の示す超社会システムが「どちらへ向かう」べきかの基準を定める合理性な根拠となる正義の象徴としての意味が明確になり、そこから命の原理である生存つまり「今ここに居る」事の意味とリンクするアルゴリズム化出来ない超社会システムの存在意義が明らかになる。
【0025】
上記
図6や
図7の細目に関して視点を追加し
図8を構成してモデリングすることは、記述文法的な論理を維持した上で行なう限り格子譜に習熟すれば論理的な飛躍なしに行える。例えば
図7の華厳教学の列には空白の行が存在するが内容的に存在しない訳ではないので、哲学的な解明や読み解きを加えて追加することや現状の華厳律I~Vの解釈を分解したり追加したりして訂正を加えることは老荘思想など哲学領域との共同で可能になる。また
図7の現代物理学の列の解釈と適用に関しても、更に専門的な原理解釈を伴ってバージョンアップする事も、
図8の枠組みが明示された現状では有効性が増大する方向に組込むことで容易に行えることは明らかである。更に本発明で基本的構造を明らかにした主観と客観との二項背反的な分断の止揚が、現代物理学を媒介とした東洋哲学との融合で可能になるとする論理に関しては、更なる検証が必要であるとしても嚆矢となる方向性は示された。何れにしても三元論或は三項図式の思考法は、三次元思考空間上で為されることに拠って構造化され可視化が実現出来ると理解される事が重要である。そしてその図表による2.5次元表現(下記実施例のヘリコイド機能参照)が格子譜を用いてデザインされた構想譜である。音楽領域で五線譜と楽譜の対比で用いられる用語の慣例に従えば構想譜を構譜と略記する事が出来、デザイン領域で構図と称される概念と通底する用語として使用することが出来る。なお格子譜上で表現した
図8の構想譜表現による個別要素の統合化モデルは、
図6や
図7の個別要素の分析を前提としているが、意識対象を変えて分析を行うことは本発明による論理構造を把握すれば容易に行なえることは明らかであり、この面からも先行発明による深化型構想設計法(特許文献3参照)の普遍性を有するデザイン思考の方法論であるモデリング・デザンの有効性が確かめられる。
【実施例0026】
図8で示す意識の統一場の構造は、
図2で示した如く普遍性を有した形で展開の可能性があり、関係性軸の展開を用いた意識の変動論400に結び付く。意識の変動論を図表で表現する「
図9 自己意識のヘリコイド・ダイナミックモデル」は、自己意識を核とする螺旋状の意識の統一場が関係性軸を時空面に投影した提灯状のジャバラ構造を畳み込んだ2.5次元表現のヘリコイド機能を有することを示すダイナミックな動態モデルである。
図9の概念はあくまで
図8からの展開であり、自己意識を代表する「▲a▼真の実在」と上位概念の「▲b▼意識の統一場」を核にして、「▲c▼意識の超越場」と「▲d▼当事者意識」、意識による精神性の統合を示す「▲e▼心のダイナミックス」、多様な資本を駆動力とする行為統合を示す「▲f▼連帯的社会のダイナミックス」、未来像構築の「A-エンジン」をを駆動力にした「▲g▼適者生存の戦略的構想モデル」に展開されるがこれは例示であって唯一ではない。意識モデルを構成する動態の代表事例として▲d▼当事者意識を設定し、「
図11 物事の主体としての当事者意識の設計(作動モデル)」で取り上げて本発明の実施例を説明している。
図11では自己の精神性と身体性を超えた新たな連帯的世界を創造する有機体的な存在の実在性の論理を組立てる中で、あるべき姿を設計ルールに従って展開した結果をモデルで表現する。中心となる関係性の場はすぐ下位の超越性の場であり、要素項目▲1▼~▲5▼、▲A▼~▲E▼によって当事者意識の在り方がデザインされているが、細部の文章的説明は格子譜の文法で容易に解釈出来るので煩雑さを避けて省略する。なお
図8と
図11は論理的には相似形を成す。
本発明の役割を上記で的確に把握した上で有効に活用する為には、第一に三次元デザイン思考法のモデリング表現に慣れる事が必要であり、更に思考情報技術関連の用語に関するリテラシーも重要になる。また基本となる意識の構成と働きそのものが平坦ではなく『意識と自己』の著者自身が著書の中で意識に取り組むための留意点を指摘している(同書P23「意識に取り組む」の項参照)。指摘される事柄の要点は内容の複雑さと人間の頭脳の逐次処理の関係を論理的に追いかけることの困難さであり、複雑さを誘引する根源は三元的な要素の存在とこれら要素の相互の関係性にまで思考が及ぶことに留意することを求めている。特に発明書が記述する論理は一方的であることから、注意深く論理を追うことが肝要である。また、三次元思考自体の各要素が足し算ではなく掛け算的な作用や効用を為す構造を有するので、個々の要素概念が有する指定された意味を恣意的に扱うことは許されず、特許文献3で規定される記述文法を外れた要素の記述はデザインの全体性を損なう事に留意すべきである。なおアプリ的な方法論としての扱いに於いて重要な事柄が技術的扱いの習熟度である。参考になるのがソフトウェアに関わる知的生産性には能力と習熟度によって10倍の開きが出るとも指摘されることであり、この生産性の差異についてはソフトウェア領域の技術的経験の背景から実感する事柄である。更に、用語や言葉には簡単に解決出来ない極めて深刻な留意点が存在する。本発明の実用化に際しては、本発明の内容や図表の記述文法までを包含する用語辞典などが必要になるが、本発明の説明では用語や言葉の意味に関する一般的な辞書の定義を包含しながら学問領域を超越したグローバルな観点から再定義することに留意した。基準となるのは現代物理学が発展的にニュートン力学を包含出来ていることの知識であり、キーになるのは相対性と絶対性の意味の区別と考える。重要な事柄は人間の命と個の存在は絶対的なものであると理解する処に原初状態を置くことであり、西田哲学の善に通じる。
社会的な傷病或は課題が複雑過ぎて方向性の見えない物事への構想や事業戦略、更には多面的な要素を有する産業構造の変革とこれを支える戦略的な政策のデザインなどに関わる社会のトップ層のソリューション志向への決意次第の意味があるとしても、その決意自体を支える産業の基本となる「コト」に関わるデザイン思考の技術とこれに基づくシステム構築法が明確になったことには、社会をマクロに捉えて個々の知恵を統合化する為の産業上の使用可能性が確認出来た上で、以下の様な事的世界観や事理学的論理への意義が存在する。つまり、人間のコトに関わる行動が意識の持ち様に関わって来る中で、各組織のトップとこれを支える企画やコンサルタント的な役割を有する社会のリーダ層のデザイン思考の行方には、地域や国の産業や経済の将来が掛かっている。物事の判断や意志決定の根拠の方向性を決める根源となる意識の働きに意識のトライアングルの論理を組込むことで、客観的な事的世界観の構成法が明らかになって社会全体の在り方と統合報への理解が進み、個別に存在する様々な知見やノウハウを統合的施策の策定に活かす可能性が見えて来たことを指摘しておきたい。
1)産業の基本となる価値を創出できる技術に関して、開発技術の本質つまりポイエーシス技術の成り立ちである科学と哲学の融合による知の統合の方法論の存在を示し意識の重要性に視線を向ける契機を提供できると共に、技術開発の在り方の構造化と可視化の情報が客観性を有して提供できる。
2)事業構想や産業構造変革に必要なソリューション型リーダシップの発揮の根拠となるトップ層の当事者意識の表現に正当性を担保する枠組みを準備することで、物事の構想や政策デザインの本質を押さえた正統性の確保が可能となる。
3)人間社会に於ける消費スタイルやライフスタイルの変化と多様化を取り込んだ産業構造変革や地方創生に貢献するための経済活動に対して、人間の意識にまで踏み込んでその行動の本質を押さえた健全性を組込むことで、無駄や無理な行動を避けることが可能になり知的生産性を向上できる。
4)Win-Winに向かう国際協調例えば感染症等への防疫対策とこれに関わる教育・雇用・文化への対応策、気候変動などSDGs対応、貿易や経済摩擦の緩和、産業構造のグローバル展開の調整など意識が大きく作用する領域において、主観的に受け取られがちな意識の働きを意識の統一場理論を基本にした客観的な作用に転換することで、普遍性を有する価値体系に誘導する論理を構築出来る可能性と機会が高まる。
5)パソコンのアプリケーションソフト領域におけるグループウェア開発に於いて、グループに参加する関係者の主観的な意識を引き出して統合化する中で、コンセンサス(合意)を図る為の客観的な方向性を抽出する意識の在り方のモデル化に人間の本質に沿った仕組みを組込むに際して、上記の利用可能性▲2▼や▲3▼と連動した発想によって本発明による意識の統合場理論の論理の応用がグループウェアの有効性向上に効果的に作用する。その成果は思考的に上位の構想設計法にも適用可能である。
6)複雑系が指摘される社会システム論の隘路を意識論の側からクリアー出来たので、様々な社会システム論への展開が容易になる。