(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022014843
(43)【公開日】2022-01-20
(54)【発明の名称】圧着名刺及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B42D 15/02 20060101AFI20220113BHJP
【FI】
B42D15/02 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020131070
(22)【出願日】2020-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000105280
【氏名又は名称】ケイディケイ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】木村 義和
(72)【発明者】
【氏名】土屋 雅人
【テーマコード(参考)】
2C005
【Fターム(参考)】
2C005UA02
2C005UA08
(57)【要約】
【課題】受取手に内部情報の記載を容易に知らしめ剥離開封を促し、コスト的にも安価な圧着名刺を提供すると共に加工に際しても歩留りがなく、素人でも簡単に大量生産することが可能な圧着名刺の製造方法を提供する。
【解決手段】折り線を介して連接された複数の葉片を巻き折り又は観音開き折り或いはそれらの組み合わせからなる折り形態に折畳み剥離可能に一体化した圧着名刺であり、折り畳みにより生じる任意の対向面間の一部分で疑似接着媒体同士が対向し剥離可能に接着されると共に他の部分では接着されずフリーな状態な圧着名刺により解決される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り線を介して連接された複数の葉片を巻き折り又は観音開き折り或いはそれらの組み合わせからなる折り形態に折畳み剥離可能に一体化した圧着名刺であり、折り畳みにより生じる任意の対向面間の一部分で疑似接着媒体同士が対向し剥離可能に接着されると共に他の部分では接着されずフリーな状態であることを特徴とした圧着名刺。
【請求項2】
折り線を介して連接された複数の葉片を巻き折り又は観音開き折り或いはそれらの組み合わせからなる折り形態に折畳み剥離可能に一体化した圧着名刺の製造方法において、折り畳みにより生じる任意の対向面間の一部分で疑似接着媒体同士が対向し剥離可能に接着されると共に他の部分では接着されずフリーな状態の圧着名刺の製造方法であり、
折り線を介して複数の葉片が連接された名刺シートが印刷されたシートの一方の面に、折り畳みにより生じる任意の対向面間の一部分で疑似接着媒体同士が対向するように疑似接着媒体を形成する疑似接着媒体の形成工程と、
疑似接着媒体が形成されたシートを折り畳む折り畳み工程と、
折り畳まれたシートに加圧或いは加熱・加圧処理を施して対向面間の疑似接着媒体同士が対向する部分を剥離可能に接着一体化する接着工程とからなる圧着名刺の製造方法であり、
縦方向及び横方向の余白を切除する切除工程を前記各工程の任意の箇所に配置することにより製造工程中で個別の名刺シート切り出す或いは最終的に完成した圧着名刺を切り出すことを特徴とした圧着名刺の製造方法。
【請求項3】
シートが連続シートであることを特徴とした請求項2に記載の圧着名刺の製造方法。
【請求項4】
シートが枚葉シートであることを特徴とした請求項2に記載の圧着名刺の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は複数の葉片を折り畳み剥離可能に一体化した圧着名刺の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の名刺は、単に1枚の用紙の表裏面に情報が印刷されているのみであった。しかし最近圧着技術の発達により、例えば特開平10-297149号及び実用新案登録第3103699号等に開示される名刺が発明、考案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-297149号公報
【特許文献2】実用新案登録第3103699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記引用文献1の発明及び2の考案による名刺は、対向する葉片間の剥離可能な接着の実現に2層以上のフィルムを接着面の対向面間に介在させる方法や、ヒートシール剤を混入した接着剤や感圧接着剤を塗布する方法、UVニスを塗布する方法等を採用している。即ち、何れの場合も対向する疑似接着予定面に前記疑似接着媒体が層として形成されている。
【0005】
そして対向面間を全面的に既述の疑似接着媒体により剥離可能に接着すると共に、開封に際しての剥離の端緒として、葉片の幅の相違により形成される段差やコーナー部分をカットすることにより生じる段差を利用するものである。
【0006】
ところで前記疑似接着であるが、所持中に自然剥離することなく良好に密着一体化している必要がある。そのため仮に開封端緒に剥離を促す目印や文言が記載されていたとしても、一枚物の名刺と錯覚されて内部に情報が記載されていることを見落とされてしまう恐れがある。せっかくのインパクトある名刺であるがそのまま捨てられては意味がない。
【0007】
また対向する疑似接着予定面に全面的に疑似接着媒体を形成する必要があるためコスト的にも高価なものとなり経済的ではない。
【0008】
さらに葉片数が増えて折り畳みが複雑になると、圧着名刺の両面にスポット的に疑似接着媒体を形成する必要が生じる。その場合表裏面の疑似接着予定面に疑似接着媒体が形成されたシートが複数枚重ね合わされると、接着工程以外の工程でも圧力や熱が加えられることがあるため、加工工程中に対向面が接着してしまい後続の加工工程への移行が不可能になる。
【0009】
さらにまた表裏面にスポット的に疑似接着媒体が形成されたシートは重ね合わせれば合わせるほどその最上面に凹凸が発生するため、折り工程や切除工程で加工の精度が低下して製品にずれや破損が生じる。
【0010】
本発明は上記問題に鑑み、受取手に内部情報の記載を容易に知らしめ剥離開封を促し、コスト的にも安価な圧着名刺を提供すると共に加工に際しても歩留りがなく、素人でも簡単に大量生産することが可能な圧着名刺の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明の圧着名刺は、折り線を介して連接された複数の葉片を巻き折り又は観音開き折り或いはそれらの組み合わせからなる折り形態に折畳み剥離可能に一体化した圧着名刺であり、折り畳みにより生じる任意の対向面間の一部分で疑似接着媒体同士が対向し剥離可能に接着されると共に他の部分では接着されずフリーな状態であることを特徴としている。
【0012】
また、上記目的を達成するために本発明の圧着名刺の製造方法は、折り線を介して連接された複数の葉片を巻き折り又は観音開き折り或いはそれらの組み合わせからなる折り形態に折畳み剥離可能に一体化した圧着名刺の製造方法において、折り畳みにより生じる任意の対向面間の一部分で疑似接着媒体同士が対向し剥離可能に接着されると共に他の部分では接着されずフリーな状態の圧着名刺の製造方法であり、折り線を介して複数の葉片が連接された名刺シートが印刷されたシートの一方の面に、折り畳みにより生じる任意の対向面間の一部分で疑似接着媒体同士が対向するように疑似接着媒体を形成する疑似接着媒体の形成工程と、疑似接着媒体が形成されたシートを折り畳む折り畳み工程と、折り畳まれたシートに加圧或いは加熱・加圧処理を施して対向面間の疑似接着媒体同士が対向する部分を剥離可能に接着一体化する接着工程とからなる圧着名刺の製造方法であり、縦方向及び横方向の余白を切除する切除工程を前記各工程の任意の箇所に配置することにより製造工程中で個別の名刺シート切り出す或いは最終的に完成した圧着名刺を切り出すことを特徴としている。
【0013】
本発明の圧着名刺の製造方法では、連続シート或いは枚葉シートに印刷されている名刺シートの余白部分を切除工程で切除するが、個別の圧着名刺に切り出す時期に格別な制限はない。例えば切り出した後に折り畳み剥離可能に接着しても良く、また段階的に切り出しながら接着した後に最終的に残った余白を切除しても構わず、さらに何も切除せずに折り畳み、接着した後に全ての余白部分を切除しても構わない。
【0014】
本発明の圧着名刺の製造方法では、単位名刺シートの折り線部分に折りミシンや折り筋等の公知の折り手段を形成しても構わないが、その形成時期に格別な制限はない。例えば疑似接着媒体の形成工程の上流側及び/又は下流側で形成しても構わない。即ち疑似接着媒体の形成工程の上流側で既に折り手段の形成が完了した状態で疑似接着媒体を形成しても、或いは疑似接着媒体が形成されてから折り手段を形成しても良く、さらに疑似接着媒体の形成工程の上流側と下流側に分け段階的に形成しても構わない。
【0015】
本発明の圧着名刺及びその製造方法に使用される資材は、例えば上質紙、マット紙、コート紙等の通常の用紙、合成紙、不織布或いは樹脂フィルムシート等を好適に使用することができる。
そして折り畳まれた対向面同士を剥離可能に接着、いわゆる疑似接着に使用する疑似接着媒体は、大きく以下の3種類に分けられる。
1)後糊方式
印刷後の用紙の疑似接着予定面に疑似接着性のUVニスを塗布して疑似接着性の被膜 を形成したもの。前記疑似接着性の被膜同士を対向させて加圧或いは加熱・加圧処理 を施すと剥離可能に接着する。エマルジョン型の弱粘着剤を塗布するものもある。
2)先糊方式
印刷前の用紙の疑似接着予定面に、合成ゴム或いは天然ゴム等を主成分とした疑似接 着性の媒体を塗布して含侵させたもの。乾燥後に印刷・印字を行い、疑似接着予定面 同士を対向させて加圧処理を施すと剥離可能に接着する。
3)フィルム方式
印刷後の用紙の疑似接着予定面に疑似接着性のフィルムシートを被覆(ラミネート) して、前記疑似接着性のフィルムシート同士が対向するように折り合わせ、加熱或い は加熱・加圧処理を施すと剥離可能に接着する。なお、フィルム方式には対向する疑 似接着予定面に予め被覆しておいて、折り合わせた後に剥離可能に接着する全面貼り 方式と、折り畳んだ用紙の疑似接着予定面間に予め疑似接着している積層フィルムを 挟み込み、用紙とフィルム間を接着して剥離可能に一体化する挟み込み方式の二種類 がある。
何れの疑似接着媒体も疑似接着媒体同士が対向して加圧或いは加熱・加圧等の処理を 施さない限り剥離可能に接着することはなく、仮に疑似接着媒体以外の紙表面等を対 向させて前記処理を施したとしても接着することはない。
【発明の効果】
【0016】
本発明の圧着名刺によれば、受取人は全面接着されていない部分を有するフリーな葉片の感触から、受け取った名刺が一枚物ではなく内部に情報が隠されている構造であることを容易に察知できるため、確実に剥離展開して内部の情報を確認する。そのため圧着名刺の効果を十分発揮することができる。
【0017】
また複雑な折り畳みであっても、本来両面に形成すべき疑似接着媒体がシートの片方の面だけでよく、従って疑似接着媒体の使用量が少なくて済むので経済的である。
【0018】
さらにその製造方法においては既述の通りシートの片方の面にのみに疑似接着媒体を形成すればよいため、加工工程中にシートを重ねる必要があったとしても対向した疑似接着媒体同士が接着してしまう等の支障が起こらない。
【0019】
またシートを重ねても両面に疑似接着媒体を部分的に形成した際の凹凸が少ないため、切除工程や折り畳み工程においても支障が起こらず加工の精度が向上する。そのため歩留りがなく素人でも簡単に大量の圧着名刺を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】(A)は圧着名刺M1、M2及びM3の共通平面図、(B)は(A)におけるI-I線断面図である。
【
図2】(A)は剥離展開後の圧着名刺M1(名刺シートt1)の表面図、(B)は裏面図である。なお名刺シートt1の裏面には疑似接着フィルムシートGが被覆された状態である。
【
図3】(A)は連続シートS1の表面図、(B)は裏面図である。
【
図4】連続シートS1の裏面に疑似接着フィルムシートGが被覆された状態を示す平面図である。
【
図5】(A)は2葉片を折り線3から連続的に折り畳んだ連続シートS1の平面図、(B)は(A)におけるII-II線断面図である。
【
図6】(A)は枚葉シートS2の表面図、(B)は裏面図である。
【
図7】枚葉シートS2の裏面に疑似接着フィルムシートGが被覆された状態を示す平面図である。
【
図8】(A)は縦方向の余白が切除されると共に2葉片を折り線3から連続的に折り畳んだ枚葉シートS2の平面図、(B)は(A)におけるIII-III線断面図である。
【
図9】(A)は実施例4の巻き三つ折り圧着名刺M2の断面図、(B)は実施例5の観音開き折り(四つ折り)圧着名刺M3の断面図である。
【
図10】(A)は剥離展開後の圧着名刺M2(名刺シートt2)の表面図、(B)は裏面図である。なお名刺シートt2の裏面には疑似接着フィルムシートGが被覆された状態である。
【
図11】(A)は剥離展開後の圧着名刺M3(名刺シートt3)の表面図、(B)は裏面図である。なお名刺シートt1の裏面には疑似接着フィルムシートGが被覆された状態である。
【
図12】(A)は実施例1と異なる態様の圧着名刺m1の断面図、(B)は実施例4と異なる態様の圧着名刺m2の断面図、(C)は実施例5と異なる態様の圧着名刺m3の断面図である。
【
図13】(A)は圧着名刺m1の剥離展開後の表面図、(B)は裏面図である。
【
図14】(A)は圧着名刺m2の剥離展開後の表面図、(B)は裏面図である。
【
図15】(A)は圧着名刺m3の剥離展開後の表面図、(B)は裏面図である。
【
図16】(A)は圧着名刺M4の断面図、(B)は(A)と異なる態様の圧着名刺m4の断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下本発明を図面に沿って分かりやすく説明する。
なお、以下の実施例では、疑似接着媒体として取り扱いが極めて容易なフィルム方式の中の全面貼り方式を採用している。
【0022】
本発明で用いられる疑似接着フィルムシートとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、二軸延伸ポリプロピレン或いはポリエステル等の基材の一方の面に公知の感熱接着剤層を形成し、残るもう一方の面に疑似接着層を形成したサーマルラミネートに対応したもの等を好適に使用することができる。前記疑似接着フィルムシートは、印刷物の疑似接着予定面に被覆して疑似接着層が対向するように折り畳み、加圧或いは加熱・加圧等の処理を施すと剥離可能に接着される。
【0023】
なお本実施例で使用する疑似接着フィルムシートGは、基材に厚さ15μmの二軸延伸ポリプロピレンを用い、その一方の面に公知の感熱接着剤を12μmの厚さに形成し、残るもう一方の面に厚さ0.1μmの疑似接着層を形成したものである。また圧着名刺Mの葉片に使用する用紙は4/6版換算で110kgのマット紙を採用している。
【実施例0024】
[圧着名刺M1]
図1(A)は本発明の圧着名刺の製造方法で製造される圧着名刺M1、M2及びM3の共通平面図である。そしてそのI-I線断面図が同図(B)の場合、第一葉片1及び第二葉片2が折り線3から二つ折りに折り畳まれた態様の圧着名刺M1となる。この二つ折り態様の圧着名刺M1は、第一葉片1及び第二葉片2の対向面間に介在する疑似接着フィルムシートGの間から剥離して、
図2(A)及び(B)に示すように平面に展開することができ、その後透明或いは半透明の疑似接着フィルムシートを透して内部に隠されていた情報を視認することができる。なお剥離展開前は、折り線3に沿って疑似接着フィルムシートG同士が部分的に接着しているため、持ち運び等により不用意に開いて展開することはなく、受取人が意識的に剥離することにより初めて展開されるものである。
【0025】
既述の構成の圧着名刺M1は、第一葉片1側に被覆されている疑似接着フィルムシートGの部分が、対向する第二葉片2に被覆された疑似接着フィルムシートGと剥離可能に接着しているため、その他の部分はフリーな状態で接着していない。従って受取人は見た目だけではなく前記フリー部分の感触から、仮に二つ折りの構成を意識していなくても一枚物ではなく折り畳まれたものであることを直感的に察知することができる。
既述の構成の連続シートS1は、例えば横方向の切取線4から蛇腹状に折り畳まれてブロック状に積み重ねられたり或いはロール状に巻き取られたりして、加工工程の最上流に配置されると下流の疑似接着フィルムシートの被覆工程へ順次送り込まれる。
そして接着工程を通過した長尺シートS1は、次に第二の切除工程により横方向の切取線4から個別の圧着名刺M1に切り出されて最終製品に仕上げられる。なお前記第二の切除工程は接着工程の上流側に配置されていても構わず、その場合長尺シートS1の状態から個別の名刺シートt1に切り出され接着されて最終製品の圧着名刺M1に仕上げられることになる。
既述の通り第一の切除工程及び第二の切除工程の配置に格別な制限はなく、製造する圧着名刺の葉片構成、加工システムの都合或いは作業の容易さ等の各種条件により適宜選択すればよいのである。