IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 京セラ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-分級ロータおよび遠心式気流分級機 図1
  • 特開-分級ロータおよび遠心式気流分級機 図2
  • 特開-分級ロータおよび遠心式気流分級機 図3
  • 特開-分級ロータおよび遠心式気流分級機 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022148482
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】分級ロータおよび遠心式気流分級機
(51)【国際特許分類】
   B07B 7/083 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
B07B7/083
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021050190
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003029
【氏名又は名称】弁理士法人ブナ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 徹彌
【テーマコード(参考)】
4D021
【Fターム(参考)】
4D021FA23
4D021GA30
(57)【要約】
【課題】耐摩耗性が高く、かつ、軽い分級ロータおよび遠心式気流分級機を提供する。
【解決手段】本開示に係る分級ロータは、厚み方向に貫通孔を有するセラミックスからなる蓋体と、貫通孔と同一軸上に軸孔を有する底部および底部に接続して複数のスリットを有する周壁部とを有するセラミックスからなる有底円筒状体とを備えてなる。蓋体の下面と、周壁部の端面とは、セラミックスからなる層を介して接合されてなる。本開示に係る遠心式気流分級機は、上記の分級ロータを用いてなる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み方向に貫通孔を有するセラミックスからなる蓋体と、
前記貫通孔と同一軸上に軸孔を有する底部および該底部に接続して複数のスリットを有する周壁部とを有するセラミックスからなる有底円筒状体とを備えてなり、
前記蓋体の下面と、前記周壁部の端面とは、セラミックスからなる層を介して接合されてなる、分級ロータ。
【請求項2】
前記層は、前記有底円筒状体の内周側で、前記層に接続する第1凸部を有する、請求項1に記載の分級ロータ。
【請求項3】
前記第1凸部に存在する閉気孔の平均径は、前記蓋体の前記第1凸部の近傍に存在する閉気孔の平均径の1.5倍以下である、請求項2に記載の分級ロータ。
【請求項4】
前記層は、前記有底円筒状体の外周側で、前記層に接続する第2凸部を有する、請求項1~3のいずれかに記載の分級ロータ。
【請求項5】
前記第2凸部に存在する閉気孔の平均径は、前記蓋体の前記第2凸部の近傍に存在する閉気孔の平均径の1.5倍以下である、請求項4に記載の分級ロータ。
【請求項6】
前記蓋体の下面を含む下層部に存在する閉気孔の平均径は、前記蓋体の上面を含む上層部に存在する閉気孔の平均径よりも小さい、請求項1~5のいずれかに記載の分級ロータ。
【請求項7】
前記有底円筒状体の内底面および内周面ならびに前記蓋体の下面は、焼き放し面である、請求項1~6のいずれかに記載の分級ロータ。
【請求項8】
前記有底円筒状体の外周面は、研削面である、請求項1~7のいずれかに記載の分級ロータ。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の分級ロータを用いてなる、遠心式気流分級機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、分級ロータおよび遠心式気流分級機に関する。
【背景技術】
【0002】
遠心式気流分級機は、内蔵された分級ロータを高速回転させ、高速回転する分級ロータの側部から上板中央の開口部に粉体を含む気流を流し、気流中に含まれる粗粉は、ブレードの回転により生じた遠心力により分級ロータ外部にはじき飛ばし、細粉は遠心力に勝る気流により分級ロータ上板中央の開口部から取り出し、気流中に含まれる粉体を粗粉と細粉とに分級する機構を有する。
【0003】
このような機構に用いられる分級ロータとして例えば、特許文献1では、複数の平板状のブレードを有し、ブレードの両端が放射状のスリットを有する2枚の交換可能なスリット板に挟み込まれ、分級ロータの上板および下板は内部に設けられた支柱により支えられた分級ロータが提案されている。そして、ブレードはセラミックス材料で形成されていることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3103835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1で提案された分級ロータは、セラミックス粉体等の硬質粉体を分級する場合、ブレード以外の金属で形成された部材(例えば、上板、下板等)が摩耗しやすく、また、金属で形成された部材の比率が多くなると重くなるので、回転させるモータにかかる負荷が大きいという問題があった。
【0006】
本開示の課題は、耐摩耗性が高く、かつ、軽い分級ロータおよび遠心式気流分級機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る分級ロータは、厚み方向に貫通孔を有するセラミックスからなる蓋体と、貫通孔と同一軸上に軸孔を有する底部および底部に接続して複数のスリットを有する周壁部とを有するセラミックスからなる有底円筒状体とを備えてなる。蓋体の下面と、周壁部の端面とは、セラミックスからなる層を介して接合されてなる。
【0008】
本開示に係る遠心式気流分級機は、上記の分級ロータを用いてなる。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る分級ロータおよび遠心式気流分級機は、耐摩耗性が高く、かつ、軽い。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の限定されない実施形態の分級ロータを示す斜視図である。
図2図1に示す分級ロータを軸に沿って切断した破断面図である。
図3図2に示す分級ロータにおけるセラミックスからなる層の周辺の拡大図である。
図4】本開示の限定されない実施形態の遠心式気流分級機を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<分級ロータ>
以下、本開示の限定されない実施形態の分級ロータについて、図面を用いて詳細に説明する。但し、以下で参照する各図では、説明の便宜上、実施形態を説明する上で必要な主要部材のみが簡略化して示される。したがって、分級ロータは、参照する各図に示されない任意の構成部材を備え得る。また、各図中の部材の寸法は、実際の構成部材の寸法および各部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。これらの点は、後述する遠心式気流分級機においても同様である。
【0012】
分級ロータ1は、図1図3に示す一例のように、蓋体2および有底円筒状体3を備えてなる。
【0013】
蓋体2は、厚み方向に貫通孔21を有する。貫通孔21は、粉体から分級した細粉を分級ロータ1の外部に取り出すための取り出し孔として機能し得る。粉体としては、例えば、セラミックス粉体等の硬質粉体が挙げられ得る。なお、蓋体2は、円板状であってもよい。
【0014】
有底円筒状体3は、底部31および周壁部32を有する。底部31は、貫通孔21と同一軸S上に軸孔311を有する。軸孔311は、分級ロータ1を回転させるモータの取り付け孔として機能し得る。軸孔311は、蓋体2に向かって突出する筒体312の孔からなってもよい。
【0015】
なお、軸Sは、回転軸と言い換えてもよい。分級ロータ1は、軸Sの周りで回転可能である。また、分級ロータ1は、軸Sに沿って延びる形状であってもよい。
【0016】
周壁部32は、底部31に接続している。周壁部32は、底部31と一体形成品であってもよい。また、周壁部32は、複数のスリット321を有する。スリット321は、分級ロータ1の内部に粉体を含む気流を流すための部位として機能し得る。スリット321は、気流中に含まれる粗粉を分級ロータ1の外部にはじき飛ばすための部位としても機能し得る。
【0017】
スリット321の数は、24以上120以下であってもよい。複数のスリット321は、周壁部32の外周に沿って等間隔に位置してもよい。複数のスリット321は、軸Sに沿って延びていてもよい。
【0018】
ここで、蓋体2は、セラミックスからなる。また、有底円筒状体3は、セラミックスからなる。そして、蓋体2の下面22と、周壁部32の端面322とが、セラミックスからなる層4を介して接合されてなる。これにより、蓋体2、有底円筒状体3および層4がセラミックスからなるので、分級ロータ1の耐摩耗性が高くなり、分級ロータ1を構成する部材から発生する磨耗粉の粉体への混入が抑制される。また、分級ロータ1の全体が軽くなるので、分級ロータ1を回転させるためのモータに与える負荷が低減し、長期間に亘って用いることができる。
【0019】
セラミックスは、酸化アルミニウムを主成分としてもよい。主成分とは、セラミックスを構成する全成分の合計100質量%のうち、最も多い成分のことを意味してもよい。主成分は、例えば、80質量%以上であってもよい。セラミックスの主成分が酸化アルミニウムである場合には、珪素、マグネシウムおよびカルシウムの少なくともいずれかを酸化物として含んでいてもよい。
【0020】
セラミックスを構成する成分は、CuKα線を用いたX線回折装置(XRD)を用いて同定した後、蛍光X線分析装置(XRF)またはICP発光分光分析装置(ICP)を用いて、元素の含有量を求め、同定された成分の含有量に換算すればよい。
【0021】
蓋体2、有底円筒状体3および層4におけるセラミックスは、同じであってもよく、また、異なってもよい。例えば、層4が、蓋体2および有底円筒状体3におけるセラミックスと同じ主成分のセラミックスからなってもよい。この場合には、蓋体2の下面22と周壁部32の端面322とを強固に接合し得る。なお、層4の厚みは、例えば、40μm以上60μm以下程度に設定されてもよい。
【0022】
層4は、有底円筒状体3の内周側で、層4に接続する第1凸部41を有してもよい。第1凸部41があると、層4と蓋体2の下面22との間および層4と周壁部32の端面322との間に粉体が挟まれにくくなり、前後で異なる粉体を分級しても、挟まった粉体が異物として混入するおそれが低減する。なお、第1凸部41の主成分は、層4の主成分と同じであってもよい。
【0023】
第1凸部41に存在する閉気孔の平均径は、蓋体2の第1凸部41の近傍に存在する閉気孔の平均径の1.5倍以下であってもよい。この場合には、第1凸部41に存在する閉気孔が小さいので、第1凸部41の閉気孔を起点としたマイクロクラックの発生と、蓋体2、有底円筒状体3および層4へのマイクロクラックの進展とを抑制することができる。
【0024】
第1凸部41に存在する閉気孔の平均径は、蓋体2の第1凸部41の近傍に存在する閉気孔の平均径の0.8倍以上であってもよい。また、第1凸部41に存在する閉気孔の平均径は、蓋体2の第1凸部41の近傍に存在する閉気孔の平均径よりも小さくてもよい。
【0025】
閉気孔の平均径は、特定の値に限定されない。例えば、第1凸部41に存在する閉気孔の平均径は、0.8μm以上1.7μm以下程度に設定されてもよい。また、蓋体2の第1凸部41の近傍に存在する閉気孔の平均径は、1μm以上2.1μm以下程度に設定されてもよい。
【0026】
第1凸部41および蓋体2の第1凸部41の近傍にそれぞれ存在する閉気孔の平均径の測定は、例えば、走査型電子顕微鏡を用いた断面観察で行ってもよい。測定対象とする蓋体2の一部とこの蓋体2に接する第1凸部41とを含む試料を切り出して、ポリエステル系の樹脂に埋め込んで円柱状の試料とする。ここで、試料の断面は、ダイヤモンド砥粒を用いて鏡面加工してもよい。倍率は、例えば、500倍に設定してもよい。試料の断面を観察の対象とする観察範囲は、例えば、横方向の長さを256μm、縦方向の長さを192μmに設定し、蓋体2と第1凸部41とを分割してもよい。
【0027】
蓋体2の第1凸部41の近傍とは、蓋体2の一部とこの蓋体2に接する第1凸部41の一部とを含む観察範囲を100%とした場合、この観察範囲における第1凸部41の断面積が25%以上50%以下となるようにしたときの蓋体2の残部をいう。蓋体2の残部の断面積もこの観察範囲で25%以上50%以下となるように設定する。
【0028】
分割された観察範囲をそれぞれ解析の対象とし、画像解析ソフト「A像くん(Ver2.52)」(登録商標、旭化成エンジニアリング(株)製)の粒子解析という手法を適用して閉気孔の平均径を求めてもよい。なお、閉気孔の平均径は、円相当径の平均値であってもよい。
【0029】
解析に際し、粒子解析の設定条件である粒子の明度を暗、2値化の方法を手動、しきい値を70~100、小図形除去面積を0.3μm2および雑音除去フィルタを有とする。
【0030】
なお、上述の測定に際し、しきい値は70~100としたが、観察範囲である画像の明るさに応じて、しきい値を調整すればよく、粒子の明度を暗、2値化の方法を手動とし、小図形除去面積を0.3μm2および雑音除去フィルタを有とした上で、画像に現れるマーカーが閉気孔の形状と一致するように、しきい値を調整すればよい。
【0031】
層4は、有底円筒状体3の外周側で、層4に接続する第2凸部42を有してもよい。この場合には、腐食性の高い環境で用いられても、層4が腐食しにくくなるので、蓋体2と有底円筒状体3とが分離するおそれが低減し、長期間に亘って用いることができる。なお、第2凸部42の主成分は、層4の主成分と同じであってもよい。
【0032】
第2凸部42に存在する閉気孔の平均径は、蓋体2の第2凸部42の近傍に存在する閉気孔の平均径の1.5倍以下であってもよい。この場合には、第2凸部42に存在する閉気孔が小さいので、第2凸部42の閉気孔を起点としたマイクロクラックの発生と、蓋体2、有底円筒状体3および層4へのマイクロクラックの進展とを抑制することができる。
【0033】
第2凸部42に存在する閉気孔の平均径は、蓋体2の第2凸部42の近傍に存在する閉気孔の平均径の0.8倍以上であってもよい。また、第2凸部42に存在する閉気孔の平均径は、蓋体2の第2凸部42の近傍に存在する閉気孔の平均径よりも小さくてもよい。
【0034】
例えば、第2凸部42に存在する閉気孔の平均径は、0.8μm以上1.7μm以下程度に設定されてもよい。また、蓋体2の第2凸部42の近傍に存在する閉気孔の平均径は、1μm以上2.1μm以下程度に設定されてもよい。
【0035】
第2凸部42および蓋体2の第2凸部42の近傍にそれぞれ存在する閉気孔の平均径の測定は、例えば、走査型電子顕微鏡を用いた断面観察で行ってもよい。測定対象とする蓋体2の一部とこの蓋体2に接する第2凸部42とを含む試料を切り出して、ポリエステル系の樹脂に埋め込んで円柱状の試料とする。ここで、試料の断面は、ダイヤモンド砥粒を用いて鏡面加工してもよい。倍率は、例えば、500倍に設定してもよい。試料の断面を観察の対象とする観察範囲は、例えば、横方向の長さを256μm、縦方向の長さを192μmに設定し、蓋体2と第2凸部42とを分割してもよい。
【0036】
蓋体2の第2凸部42の近傍とは、蓋体2の一部とこの蓋体2に接する第2凸部42の一部とを含む観察範囲を100%とし、第2凸部42の断面積が25%以上50%以下となるようにした場合の蓋体2の残部をいう。
【0037】
なお、第2凸部42が蓋体2の下面22に接していない(即ち、有底円筒状体3の外周面35と蓋体2の外周面が面一になっている)場合、蓋体2の第2凸部42の近傍とは、蓋体2の外周面と蓋体2の下面とによって形成される隅部と第2凸部42の一部とを含む観察範囲を100%とした場合、この観察範囲における第2凸部42の断面積が25%以上50%以下となるようにしたときの蓋体2の残部をいう。いずれの場合も、蓋体2の残部の断面積がこの観察範囲で25%以上50%以下となるように設定する。
これ以降は、上述した方法と同じ方法を用いて、閉気孔の平均径を求めればよい。
【0038】
蓋体2の下面22を含む下層部23に存在する閉気孔の平均径は、蓋体2の上面24を含む上層部25に存在する閉気孔の平均径よりも小さくてもよい。この場合には、下面22の硬度が上面24の硬度よりも高くなるので、下面22の耐摩耗性が向上する。一方、上面24は下面22よりもモータの回転により、大きな振れが発生しやすいが、その振れを低減することができる。
【0039】
下層部23は、蓋体2の厚み方向における中央2aよりも下面22の側に位置してもよい。上層部25は、蓋体2の厚み方向における中央2aよりも上面24の側に位置してもよい。例えば、蓋体2の厚みは、15mm以上30mm以下程度に設定されてもよい。下層部23に存在する閉気孔の平均径は、2μm以上7μm以下程度に設定されてもよい。上層部25に存在する閉気孔の平均径は、3μm以上8μm以下程度に設定されてもよい。
【0040】
下層部23および上層部25にそれぞれ存在する閉気孔の平均径の測定は、例えば、走査型電子顕微鏡を用いた断面観察で行ってもよい。測定対象とする下層部23、上層部25をそれぞれ含む試料を切り出して、ダイヤモンド砥粒を用いて試料の断面を鏡面加工してもよい。倍率は、例えば、500倍に設定してもよい。試料の断面を観察の対象とする観察範囲は、例えば、横方向の長さを256μm、縦方向の長さを192μmに設定してもよい。
これ以降は、上述した方法と同じ方法を用いて、閉気孔の平均径を求めればよい。
【0041】
有底円筒状体3の内底面33および内周面34ならびに蓋体2の下面22は、焼き放し面であってもよい。焼き放し面であれば、焼き放し面に破砕層がないので、焼き放し面からの脱粒が抑制される。
【0042】
有底円筒状体3の外周面35は、研削面であってもよい。この場合には、外周面35の寸法精度が高い。それゆえ、軸孔311を形成する内周面34に対して、外周面35は円周振れを抑制することができるので、分級ロータ1を回転させた場合、振れを小さくすることができる。
【0043】
分級ロータ1は、特定の大きさに限定されない。例えば、軸Sに沿った方向における分級ロータ1の最大長さは、150mm以上220mm以下程度に設定されてもよい。軸Sに直交する方向における分級ロータ1の最外径は、280mm以上350mm以下程度に設定されてもよい。軸Sに沿った方向におけるスリット321の最大長さは、120mm以上160mm以下程度に設定されてもよい。軸Sに直交する方向におけるスリット321の最大幅は、5mm以上10mm以下程度に設定されてもよい。
【0044】
図1に示すスリット321の断面形状は、矩形状であるが、矩形状以外、レーストラック形状、楕円状であってもよい。
【0045】
次に、本開示の分級ロータの製造方法について、上記の分級ロータ1を製造する場合を例に挙げて説明する。
【0046】
まず、水酸化マグネシウムを酸化物(MgO)に換算して0.3質量%~0.42質量%、酸化珪素を0.03質量%~0.05質量%、炭酸カルシウムを酸化物(CaO)に換算して0.01質量%~0.02質量%、残部が酸化アルミニウムからなる粉末となるように秤量した混合粉末を水等の溶媒とともに回転ミルに投入して、純度が99.5%以上99.99%以下の酸化アルミニウムからなるセラミックスボールで混合する。
【0047】
次に、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールやアクリル樹脂等の成形用バインダを添加した後、混合してスラリーを得る。ここで、成形用バインダの添加量は混合粉末100質量部に対して合計2質量部以上10質量部以下とする。
【0048】
次に、噴霧乾燥装置を用いてスラリーを噴霧乾燥させることにより造粒した顆粒を得る。この顆粒を例えば圧力を80MPa以上100MPaとしてCIP(Cold Isostatic Pressing)法により成形して円板状および円柱状の成形体を得る。これらの成形体に切削加工等を施し、それぞれ蓋体2の前駆体Aおよび有底円筒状体3の前駆体Bを得る。
【0049】
ここで、酸化アルミニウムを主成分とする粉末とセルロース系多糖類と溶媒とを含有するペーストを準備する。
【0050】
具体的には、上記混合粉末に対して、水、エタノール等の溶媒を、体積比で、混合粉末:溶媒=55~60:40~45となるように加え、この溶媒と混合粉末との合計を100質量部とする。この100質量部に対し、8質量部以上20質量部以下のセルロース系多糖類を加え、これらを撹拌装置内の収納容器に入れ、混合・撹拌して、ペーストを得る。
【0051】
ここで、セルロース系多糖類は、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロースおよびカルボキシエチルセルロースの少なくともいずれかである。
【0052】
閉気孔の平均径は、例えば、ペーストを撹拌する際の条件で調整してもよい。例えば、第1凸部41に存在する閉気孔の平均径を、蓋体2の第1凸部41の近傍に存在する閉気孔の平均径の1.5倍以下とする場合には、撹拌装置の回転数を1200rpm以上1600rpm以下とし、回転時間を5分以上15分以下に設定してもよい。また、第1凸部41に存在する閉気孔の平均径を、蓋体2の第1凸部41の近傍に存在する閉気孔の平均径よりも小さくする場合には、回転数を高くして1400rpm以上1600rpm以下、回転時間を5分以上15分以下に設定してもよい。
【0053】
このような撹拌条件の範囲内でペーストを攪拌すると、閉気孔の平均径を上記した関係に調整することが可能となる。上記した点は、第2凸部42に存在する閉気孔の平均径の調整にも適用可能である。
【0054】
上記ペーストを前駆体Aおよび前駆体Bの少なくともいずれかの対向面に塗布した後、対向面同士を向き合った状態にして、前駆体Aおよび前駆体Bを、例えば圧力を20kPa以上40kPa以下として加圧する。このとき、前駆体Bの内周側および外周側で、対向面からペーストをはみ出させてもよい。そして、上記の加圧により、前駆体Aおよび前駆体Bを接続した前駆体を得る。
【0055】
次に、常温で、湿度を調整しながら12時間以上48時間以下保持することによりペーストを乾燥させる。そして、大気雰囲気中で、1500℃以上1700℃以下の温度で、5時間以上8時間以下保持して前駆体を焼成することにより、分級ロータ1を得ることができる。
【0056】
ここで、蓋体2の下面を含む下層部に存在する閉気孔の平均径が蓋体2の上面を含む上層部に存在する閉気孔の平均径よりも小さい分級ロータを得るには、予め前駆体Bを厚く(例えば、蓋体2の厚みの2倍以上)しておき、焼成後、上層部側および下層部側を研削し、その研削代が下層部側よりも上層部側が多くなるようにすればよい。
【0057】
なお、上記の製造方法は、分級ロータ1を製造する方法の一例である。したがって、分級ロータ1が、上記の製造方法によって作製されたものに限定されないことはいうまでもない。
【0058】
<遠心式気流分級機>
次に、本開示の限定されない実施形態の遠心式気流分級機について、上記の分級ロータ1を用いる場合を例に挙げて、図面を用いて説明する。
【0059】
図4に示す一例のように、遠心式気流分級機100(以下、「分級機100」ということがある。)は、分級ロータ1を用いてなる。分級機100は、耐摩耗性が高く、かつ、軽い分級ロータ1を用いてなることから、長期間に亘って安定した分級が可能である。
【0060】
分級機100は、分級ロータ1を内部に収容するケーシング101と、分級ロータ1を回転させるモータ102と、ケーシング101の内部に原料を供給する供給管103と、供給管103よりも下方に位置してケーシング101の内部に圧縮空気を供給する複数のノズル104と、分級ロータ1で分級された細粉をケーシング101の外部へ搬出する搬出管105とを備えてなってもよい。
【0061】
以上、本開示に係る実施形態について例示したが、本開示は上記の実施形態に限定されず、本開示の要旨を逸脱しない限り任意のものとすることができることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0062】
1・・・分級ロータ
2・・・蓋体
21・・・貫通孔
22・・・下面
23・・・下層部
24・・・上面
25・・・上層部
2a・・・中央
3・・・有底円筒状体
31・・・底部
311・・・軸孔
312・・・筒体
32・・・周壁部
321・・・スリット
322・・・端面
33・・・内底面
34・・・内周面
35・・・外周面
4・・・層
41・・・第1凸部
42・・・第2凸部
100・・・遠心式気流分級機
101・・・ケーシング
102・・・モータ
103・・・供給管
104・・・ノズル
105・・・搬出管
S・・・軸
図1
図2
図3
図4