(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022148483
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】分級ロータ用羽根ピン、分級ロータおよび遠心式気流分級機
(51)【国際特許分類】
B07B 7/083 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
B07B7/083
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021050191
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003029
【氏名又は名称】弁理士法人ブナ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 徹彌
【テーマコード(参考)】
4D021
【Fターム(参考)】
4D021FA23
4D021GA02
4D021GA08
4D021GA11
4D021HA01
(57)【要約】
【課題】耐摩耗性が高い分級ロータ用羽根ピン、分級ロータおよび遠心式気流分級機を提供する。
【解決手段】本開示に係る分級ロータ用羽根ピンは、厚み方向に貫通孔を有する円板状の下板と、貫通孔と同一軸上に軸孔を有する円板状の上板とを円周に沿って複数個で結合する、セラミックス柱体からなる。上記の分級ロータ用羽根ピンは、セラミックス柱体が、直胴状の本体部と、本体部の両端部の少なくともいずれかに位置して外径が本体部よりも小さい締結部とを有してもよい。本開示に係る分級ロータは、この分級ロータ用羽根ピンの本体部と締結部との間の段差面と、下板のセラミックス柱体に対向する第1対向面および上板のセラミックス柱体に対向する第2対向面の少なくともいずれかとが、セラミックスからなる層を介して接合されてなる。本開示に係る遠心式気流分級機は、上記の分級ロータを用いてなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み方向に貫通孔を有する円板状の下板と、前記貫通孔と同一軸上に軸孔を有する円板状の上板とを円周に沿って複数個で結合する、セラミックス柱体からなる、分級ロータ用羽根ピン。
【請求項2】
前記セラミックス柱体は、直胴状の本体部と、該本体部の両端部の少なくともいずれかに位置して外径が前記本体部よりも小さい締結部とを有する、請求項1に記載の分級ロータ用羽根ピン。
【請求項3】
請求項2に記載の分級ロータ用羽根ピンの前記本体部と前記締結部との間の段差面と、前記下板の前記セラミックス柱体に対向する第1対向面および前記上板の前記セラミックス柱体に対向する第2対向面の少なくともいずれかとは、セラミックスからなる層を介して接合されてなる、分級ロータ。
【請求項4】
前記層は、前記円周の内周側で、前記層に接続する第1凸部を有する、請求項3に記載の分級ロータ。
【請求項5】
前記第1凸部に存在する閉気孔の平均径は、前記下板および前記上板の少なくともいずれかの前記第1凸部の近傍に存在する閉気孔の平均径の1.5倍以下である、請求項4に記載の分級ロータ。
【請求項6】
前記層は、前記円周の外周側で、前記層に接続する第2凸部を有する、請求項3~5のいずれかに記載の分級ロータ。
【請求項7】
前記第2凸部に存在する閉気孔の平均径は、前記下板および前記上板の少なくともいずれかの前記第2凸部の近傍に存在する閉気孔の平均径の1.5倍以下である、請求項6に記載の分級ロータ。
【請求項8】
前記上板の前記第2対向面を含む内向部に存在する閉気孔の平均径は、前記上板の上面を含む外向部に存在する閉気孔の平均径よりも小さい、請求項3~7のいずれかに記載の分級ロータ。
【請求項9】
前記セラミックス柱体の前記本体部の外周面、前記締結部の外周面、前記下板の前記第1対向面および前記上板の前記第2対向面は、焼き放し面である、請求項3~8のいずれかに記載の分級ロータ。
【請求項10】
請求項3~9のいずれかに記載の分級ロータを用いてなる、遠心式気流分級機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、分級ロータ用羽根ピン、分級ロータおよび遠心式気流分級機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、微粉化および分級機能を有する対面衝突型の高圧気流式粉砕機は、セラミックス粉体を微粉化し、粉体径のバラツキを小さくするために使われている。
【0003】
しかし、このような高圧気流式粉砕機は、粉体同士を高圧気流により衝突させて粉体を微細化することから、粉砕機内の各部品の摩耗が激しく、特に、粉砕された粉体を分級する羽根ピン(棒状体)の摩耗が激しかった。
【0004】
このような問題を解決するために、特許文献1では、ウレタン樹脂から形成された中空円筒部と、この中空円筒部に挿入されて両端部が上板および下板と結合する芯材とを有し、芯材の両端部が、軸方向において中空円筒部よりも外側に配置されるとともに、両端部にビス穴が形成された分級ローター用羽根ピンが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1で提案された、ウレタン樹脂からなる分級ローター用羽根部品は、炭化珪素や炭化硼素等の硬いセラミックス粉体を分級する場合、摩耗が激しいという問題を解決することができなかった。
【0007】
本開示の課題は、耐摩耗性が高い分級ロータ用羽根ピン、分級ロータおよび遠心式気流分級機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る分級ロータ用羽根ピンは、厚み方向に貫通孔を有する円板状の下板と、貫通孔と同一軸上に軸孔を有する円板状の上板とを円周に沿って複数個で結合する、セラミックス柱体からなる。
【0009】
上記の分級ロータ用羽根ピンは、セラミックス柱体が、直胴状の本体部と、本体部の両端部の少なくともいずれかに位置して外径が本体部よりも小さい締結部とを有してもよい。本開示に係る分級ロータは、この分級ロータ用羽根ピンの本体部と締結部との間の段差面と、下板のセラミックス柱体に対向する第1対向面および上板のセラミックス柱体に対向する第2対向面の少なくともいずれかとが、セラミックスからなる層を介して接合されてなる。
【0010】
本開示に係る遠心式気流分級機は、上記の分級ロータを用いてなる。
【発明の効果】
【0011】
本開示に係る分級ロータ用羽根ピン、分級ロータおよび遠心式気流分級機は、耐摩耗性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の限定されない実施形態の分級ロータ用羽根ピンを示す斜視図である。
【
図2】本開示の限定されない実施形態の分級ロータ用羽根ピンおよび分級ロータを示す斜視図である。
【
図3】
図2に示す分級ロータを軸に沿って切断した破断面図である。
【
図4】
図3に示す分級ロータにおけるセラミックスからなる層の周辺の拡大図である。
【
図5】本開示の限定されない実施形態の分級ロータ用羽根ピンを示す斜視図である。
【
図6】本開示の限定されない実施形態の遠心式気流分級機を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<分級ロータ用羽根ピン>
以下、本開示の限定されない実施形態の分級ロータ用羽根ピンについて、図面を用いて詳細に説明する。但し、以下で参照する各図では、説明の便宜上、実施形態を説明する上で必要な主要部材のみが簡略化して示される。したがって、分級ロータ用羽根ピンは、参照する各図に示されない任意の構成部材を備え得る。また、各図中の部材の寸法は、実際の構成部材の寸法および各部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。これらの点は、後述する分級ロータおよび遠心式気流分級機においても同様である。
【0014】
分級ロータ用羽根ピン1(以下、「羽根ピン1」ということがある。)は、
図1~
図4に示す一例のように、厚み方向に貫通孔111を有する円板状の下板11と、貫通孔111と同一軸S上に軸孔121を有する円板状の上板12とを円周に沿って複数個で結合する、セラミックス柱体2からなる。
【0015】
すなわち、羽根ピン1は、材質がセラミックスであって、形状が柱状であるセラミックス柱体2からなる。このような構成によれば、羽根ピン1の耐摩耗性が高くなるため、硬い粉体の分級において磨耗粉の粉体への混入が抑制される。粉体としては、例えば、セラミックス粉体等の硬質粉体が挙げられ得る。
【0016】
セラミックス柱体2の材質であるセラミックスは、酸化アルミニウム、窒化珪素またはサイアロンを主成分としてもよい。主成分とは、セラミックスを構成する全成分の合計100質量%のうち、最も多い成分のことを意味してもよい。主成分は、例えば、80質量%以上であってもよい。セラミックスの主成分が酸化アルミニウムである場合には、珪素、マグネシウムおよびカルシウムの少なくともいずれかを酸化物として含んでいてもよい。セラミックスの主成分が窒化珪素またはサイアロンである場合には、カルシウム、アルミニウムおよびイットリウム等の希土類元素を酸化物として含んでいてもよい。上記した点は、他の部材における材質がセラミックスである場合においても同様である。
【0017】
セラミックスを構成する成分は、CuKα線を用いたX線回折装置(XRD)を用いて同定した後、蛍光X線分析装置(XRF)またはICP発光分光分析装置(ICP)を用いて、元素の含有量を求め、同定された成分の含有量に換算すればよい。
【0018】
セラミックス柱体2の形状は、
図1に示す一例のように、円柱状であってもよい。なお、セラミックス柱体2の形状は、円柱状に限定されない。セラミックス柱体2の形状は、例えば、角柱状等であってもよい。
【0019】
セラミックス柱体2は、直胴状の本体部21と、本体部21の両端部の少なくともいずれかに位置して外径が本体部21よりも小さい締結部22とを有してもよい。この場合には、下板11および上板12が締結部22を挿入する凹部、装着孔等の係合部13を備えていると、締結部22を挿入、固定することができるので、信頼性が向上する。
【0020】
例えば、
図1に示す一例のように、本体部21の両端部に締結部22が位置してもよい。また、締結部22は、凸状であってもよい。締結部22の端部は、平面であってもよい。
【0021】
セラミックス柱体2は、本体部21と締結部22との間に位置する段差面23を有してもよい。段差面23は、平面であってもよい。
【0022】
羽根ピン1は、特定の大きさに限定されない。例えば、軸Sに沿った方向における羽根ピン1の最大長さは、100mm以上180mm以下程度に設定されてもよい。軸Sに直交する方向における羽根ピン1の最外径は、10mm以上50mm以下程度に設定されてもよい。
【0023】
次に、本開示の限定されない実施形態の分級ロータ用羽根ピン1A(以下、「羽根ピン1A」ということがある。)について、図面を用いて説明する。以下では、羽根ピン1Aにおける羽根ピン1との相違点について主に説明し、羽根ピン1と同様の構成を有する点については詳細な説明を省略する場合がある。
【0024】
羽根ピン1Aは、
図5に示す一例のように、直胴状の本体部21を有するセラミックス柱体2からなる。すなわち、羽根ピン1Aにおけるセラミックス柱体2は、締結部22を有していない。羽根ピン1Aは、形状が比較的簡単なことから、製造しやすい。
【0025】
<分級ロータ>
次に、本開示の限定されない実施形態の分級ロータについて、上記の羽根ピン1を備えてなる場合を例に挙げて、図面を用いて説明する。
【0026】
分級ロータ10は、
図2~
図4に示す一例のように、厚み方向に貫通孔111を有する円板状の下板11と、貫通孔111と同一軸S上に軸孔121を有する円板状の上板12と、下板11および上板12を円周に沿って複数個で結合する、セラミックス柱体2からなる羽根ピン1とを備えてなる。分級ロータ10は、耐摩耗性が高い羽根ピン1を備えてなることから、長期間に亘って安定した分級が可能である。
【0027】
貫通孔111は、粉体から分級した細粉を分級ロータ10の外部に取り出すための取り出し孔として機能し得る。また、軸孔121は、分級ロータ10を回転させるモータの取り付け孔として機能し得る。軸孔121は、上方に向かって突出する筒体122の孔からなってもよい。
【0028】
なお、軸Sは、回転軸と言い換えてもよい。分級ロータ10は、軸Sの周りで回転可能である。また、分級ロータ10は、軸Sに沿って延びる形状であってもよい。
【0029】
下板11および上板12の材質としては、例えば、セラミックス、石英、ステンレス鋼、超硬合金等が挙げられ得る。下板11および上板12がセラミックスからなる場合には、分級ロータ10の耐摩耗性が高くなるため、硬い粉体の分級において磨耗粉の粉体への混入が抑制される。また、分級ロータ10の全体が軽くなるので、分級ロータ10を回転させるためのモータに与える負荷が低減し、長期間に亘って用いることができる。
【0030】
下板11および上板12は、羽根ピン1の締結部22を挿入する係合部13を備えてもよい。また、羽根ピン1の数は、24以上120以下であってもよい。複数の羽根ピン1は、円周に沿って等間隔に位置してもよい。複数の羽根ピン1は、軸Sに沿って延びていてもよい。
【0031】
分級ロータ10は、羽根ピン1の本体部21と締結部22との間の段差面23と、下板11のセラミックス柱体2に対向する第1対向面112および上板12のセラミックス柱体2に対向する第2対向面123の少なくともいずれかとが、セラミックスからなる層14を介して接合されてなってもよい。例えば、
図4に示す一例のように、段差面23と第1対向面112および段差面23と第2対向面123が、それぞれ層14を介して接合されてなってもよい。
【0032】
段差面23と、第1対向面112および第2対向面123の少なくともいずれかとが、層14を介して接合されてなる場合には、段差面23と第1対向面112の間および段差面23と第2対向面123の間の少なくともいずれかが、分級している間、粉体が挟まりにくくなり、各面が損傷しにくくなる。
【0033】
下板11および上板12がセラミックスからなる場合には、セラミックス柱体2、下板11、上板12および層14におけるセラミックスは、同じであってもよく、また、異なってもよい。例えば、段差面23と第1対向面112とを接合する層14が、セラミックス柱体2および下板11におけるセラミックスと同じ主成分のセラミックスからなってもよい。この場合には、段差面23と第1対向面112とを強固に接合し得る。また、段差面23と第2対向面123とを接合する層14が、セラミックス柱体2および上板12におけるセラミックスと同じ主成分のセラミックスからなってもよい。この場合には、段差面23と第2対向面123とを強固に接合し得る。なお、層14の厚みは、例えば、40μm以上60μm以下程度に設定されてもよい。
【0034】
層14は、円周の内周側で、層14に接続する第1凸部141を有してもよい。第1凸部141があると、円周の内周側で、層14と下板11との間および層14と上板12との間に粉体が挟まれにくくなり、前後で異なる粉体を分級しても、挟まった粉体が異物として混入するおそれが低減する。
【0035】
第1凸部141に存在する閉気孔の平均径は、下板11および上板12の少なくともいずれかの第1凸部141の近傍に存在する閉気孔の平均径の1.5倍以下であってもよい。この場合には、第1凸部141に存在する閉気孔が小さいので、第1凸部141の閉気孔を起点としたマイクロクラックの発生と、層14および羽根ピン1へのマイクロクラックの進展とを抑制することができる。
【0036】
第1凸部141に存在する閉気孔の平均径は、下板11および上板12の少なくともいずれかの第1凸部141の近傍に存在する閉気孔の平均径の0.8倍以上であってもよい。また、第1凸部141に存在する閉気孔の平均径は、下板11および上板12の少なくともいずれかの第1凸部141の近傍に存在する閉気孔の平均径よりも小さくてもよい。
【0037】
閉気孔の平均径は、特定の値に限定されない。例えば、第1凸部141に存在する閉気孔の平均径は、0.8μm以上1.7μm以下程度に設定されてもよい。また、下板11および上板12の少なくともいずれかの第1凸部141の近傍に存在する閉気孔の平均径は、1μm以上2.1μm以下程度に設定されてもよい。
【0038】
第1凸部141と、下板11および上板12の少なくともいずれか(以下、下板11および上板12の少なくともいずれかを環状円板ともいう。)ととの第1凸部141の近傍にそれぞれ存在する閉気孔の平均径の測定は、例えば、走査型電子顕微鏡を用いた断面観察で行ってもよい。測定対象とする環状円板の一部と、この環状円板に接する第1凸部141とを含む試料を切り出して、ポリエステル系の樹脂に埋め込んで円柱状の試料とする。ここで、試料の断面は、ダイヤモンド砥粒を用いて鏡面加工してもよい。倍率は、例えば、500倍に設定してもよい。試料の断面を観察の対象とする観察範囲は、例えば、横方向の長さを256μm、縦方向の長さを192μmに設定し、下板11と第1凸部141とを分割してもよく、また、上板12と第1凸部141とを分割してもよい。
【0039】
環状円板の第1凸部141の近傍とは、環状円板の一部とこの環状円板に接する第1凸部141の一部とを含む観察範囲を100%とした場合、この観察範囲における第1凸部41の断面積が25%以上50%以下となるようにしたときの環状円板の残部をいう。
【0040】
この分割された観察範囲をそれぞれ解析の対象とし、画像解析ソフト「A像くん(Ver2.52)」(登録商標、旭化成エンジニアリング(株)製)の粒子解析という手法を適用して閉気孔の平均径を求めてもよい。なお、閉気孔の平均径は、円相当径の平均値であってもよい。
【0041】
解析に際し、粒子解析の設定条件である粒子の明度を暗、2値化の方法を手動、しきい値を70~100、小図形除去面積を0.3μm2および雑音除去フィルタを有とする。
【0042】
なお、上述の測定に際し、しきい値は70~100としたが、観察範囲である画像の明るさに応じて、しきい値を調整すればよく、粒子の明度を暗、2値化の方法を手動とし、小図形除去面積を0.3μm2および雑音除去フィルタを有とした上で、画像に現れるマーカーが閉気孔の形状と一致するように、しきい値を調整すればよい。
【0043】
層14は、円周の外周側で、層14に接続する第2凸部142を有してもよい。この場合には、腐食性の高い環境で用いられても、層14が腐食しにくくなるので、下板11および上板12の少なくともいずれかと羽根ピン1とが分離するおそれが低減し、長期間に亘って用いることができる。
【0044】
第2凸部142に存在する閉気孔の平均径は、下板11および上板12の少なくともいずれかの第2凸部142の近傍に存在する閉気孔の平均径の1.5倍以下であってもよい。この場合には、第2凸部142に存在する閉気孔が小さいので、第2凸部142の閉気孔を起点としたマイクロクラックの発生と、層14および羽根ピン1へのマイクロクラックの進展とを抑制することができる。
【0045】
第2凸部142に存在する閉気孔の平均径は、下板11および上板12の少なくともいずれかの第2凸部142の近傍に存在する閉気孔の平均径の0.8倍以上であってもよい。また、第2凸部142に存在する閉気孔の平均径は、下板11および上板12の少なくともいずれかの第2凸部142の近傍に存在する閉気孔の平均径よりも小さくてもよい。
【0046】
例えば、第2凸部142に存在する閉気孔の平均径は、0.8μm以上1.7μm以下程度に設定されてもよい。また、下板11および上板12の少なくともいずれかの第2凸部142の近傍に存在する閉気孔の平均径は、1μm以上2.1μm以下程度に設定されてもよい。
【0047】
第2凸部142および環状円板の第2凸部142の近傍にそれぞれ存在する閉気孔の平均径の測定は、例えば、走査型電子顕微鏡を用いた断面観察で行ってもよい。測定対象とする環状円板の一部とこの環状円板に接する第2凸部142とを含む試料を切り出して、ポリエステル系の樹脂に埋め込んで円柱状の試料とする。ここで、試料の断面は、ダイヤモンド砥粒を用いて鏡面加工してもよい。倍率は、例えば、500倍に設定してもよい。試料の断面を観察の対象とする観察範囲は、例えば、横方向の長さを256μm、縦方向の長さを192μmに設定し、下板11と第2凸部142とを分割してもよく、また、上板12と第2凸部142とを分割してもよい。
【0048】
環状円板の第2凸部142の近傍とは、環状円板の一部と、この環状円板に接する第2凸部142の一部とを含む観察範囲を100%とし、第2凸部142の断面積が25%以上50%以下となるようにした場合の環状円板の残部をいう。
【0049】
なお、第2凸部142が下板11の上面および上板12の下面の少なくともいずれかに接していない(即ち、本体部21の外周面の一部と下板11の上面および上板12の下面の少なくともいずれかとが面一になっている)場合、環状円板の第2凸部142の近傍とは、蓋体2の外周面と蓋体2の下面とによって形成される隅部と第2凸部142の一部とを含む観察範囲を100%とした場合、この観察範囲における第2凸部142の断面積が25%以上50%以下となるようにしたときの環状円板の残部をいう。いずれの場合も、環状円板の残部の断面積がこの観察範囲で25%以上50%以下となるように設定する。
これ以降は、上述した方法と同じ方法を用いて、閉気孔の平均径を求めればよい。
【0050】
上板12の第2対向面123を含む内向部124に存在する閉気孔の平均径は、上板12の上面125を含む外向部126に存在する閉気孔の平均径よりも小さくてもよい。この場合には、第2対向面123の硬度が上面125の硬度よりも高くなるので、第2対向面123の耐摩耗性が向上する。一方、上面125は第2対向面123よりもモータの回転により、大きな振れが発生しやすいが、その振れを低減することができる。
【0051】
内向部124は、上板12の厚み方向における中央12aよりも第2対向面123の側に位置してもよい。外向部126は、上板12の厚み方向における中央12aよりも上面125の側に位置してもよい。上記した上板12の厚みは、軸孔121を除いた状態の上板12の厚みであってもよい。軸孔121を除いた状態の上板12の厚みは、15mm以上30mm以下程度に設定されてもよい。また、内向部124に存在する閉気孔の平均径は、2μm以上7μm以下程度に設定されてもよい。外向部126に存在する閉気孔の平均径は、3μm以上8μm以下程度に設定されてもよい。
【0052】
内向部124および外向部126にそれぞれ存在する閉気孔の平均径の測定は、例えば、走査型電子顕微鏡を用いた断面観察で行ってもよい。測定対象とする内向部124、外向部126をそれぞれ含む試料を切り出して、ダイヤモンド砥粒を用いて試料の断面を鏡面加工してもよい。倍率は、例えば、500倍に設定してもよい。試料の断面を観察の対象とする観察範囲は、例えば、横方向の長さを256μm、縦方向の長さを192μmに設定してもよい。
これ以降は、上述した方法と同じ方法を用いて、閉気孔の平均径を求めればよい。
【0053】
セラミックス柱体2の本体部21の外周面211、締結部22の外周面221、下板11の第1対向面112および上板12の第2対向面123は、焼き放し面であってもよい。焼き放し面であれば、焼き放し面に破砕層がないので、焼き放し面からの脱粒が抑制される。
【0054】
分級ロータ10は、特定の大きさに限定されない。例えば、軸Sに沿った方向における分級ロータ10の最大長さは、150mm以上220mm以下程度に設定されてもよい。軸Sに直交する方向における分級ロータ10の最外径は、280mm以上350mm以下程度に設定されてもよい。
【0055】
なお、
図2などに示す一例においては、分級ロータ10が羽根ピン1を備えてなるが、このような形態に限定されない。例えば、分級ロータ10は、羽根ピン1Aを備えてなってもよい。この場合には、分級ロータ10は、本体部21における両端部の少なくともいずれかと、第1対向面112および第2対向面123の少なくともいずれかとが、層14を介して接合されてなってもよい。
【0056】
次に、本開示の分級ロータの製造方法について、下板11および上板12がセラミックスからなり、段差面23と第1対向面112および段差面23と第2対向面123が、それぞれ層14を介して接合されてなる分級ロータ10を製造する場合を例に挙げて説明する。
【0057】
まず、水酸化マグネシウムを酸化物(MgO)に換算して0.3質量%~0.42質量%、酸化珪素を0.03質量%~0.05質量%、炭酸カルシウムを酸化物(CaO)に換算して0.01質量%~0.02質量%、残部が酸化アルミニウムからなる粉末となるように秤量した混合粉末を水等の溶媒とともに回転ミルに投入して、純度が99.5%以上99.99%以下の酸化アルミニウムからなるセラミックスボールで混合する。
【0058】
次に、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールやアクリル樹脂等の成形用バインダを添加した後、混合してスラリーを得る。ここで、成形用バインダの添加量は混合粉末100質量部に対して合計2質量部以上10質量部以下とする。
【0059】
次に、噴霧乾燥装置を用いてスラリーを噴霧乾燥させることにより造粒した顆粒を得る。この顆粒を例えば圧力を80MPa以上100MPaとしてCIP(Cold Isostatic Pressing)法により成形して円柱状の成形体を得る。この成形体に切削加工等を施し、下板11の前駆体A、上板12の前駆体Bおよび羽根ピン1の前駆体Cを得る。
【0060】
ここで、酸化アルミニウムを主成分とする粉末とセルロース系多糖類と溶媒とを含有するペーストを準備する。
【0061】
具体的には、上記混合粉末に対して、水、エタノール等の溶媒を、体積比で、混合粉末:溶媒=55~60:40~45となるように加え、この溶媒と混合粉末との合計を100質量部とする。この100質量部に対し、8質量部以上20質量部以下のセルロース系多糖類を加え、これらを撹拌装置内の収納容器に入れ、混合・撹拌して、ペーストを得る。
【0062】
ここで、セルロース系多糖類は、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロースおよびカルボキシエチルセルロースの少なくともいずれかである。
【0063】
閉気孔の平均径は、例えば、ペーストを撹拌する際の条件で調整してもよい。例えば、第1凸部141に存在する閉気孔の平均径を、下板11および上板12の第1凸部141の近傍に存在する閉気孔の平均径の1.5倍以下とする場合には、撹拌装置の回転数を1200rpm以上1600rpm以下とし、回転時間を5分以上15分以下に設定してもよい。また、第1凸部141に存在する閉気孔の平均径を、下板11および上板12の第1凸部141の近傍に存在する閉気孔の平均径よりも小さくする場合には、回転数を高くして1400rpm以上1600rpm以下、回転時間を5分以上15分以下に設定してもよい。
【0064】
このような撹拌条件の範囲内でペーストを攪拌すると、閉気孔の平均径を上記した関係に調整することが可能となる。上記した点は、第2凸部142に存在する閉気孔の平均径の調整にも適用可能である。
【0065】
上記ペーストを前駆体Aおよび前駆体Cの少なくともいずれかの対向面と、前駆体Bおよび前駆体Cの少なくともいずれかの対向面に塗布した後、対向面同士を向き合った状態にして、前駆体Aおよび前駆体Bを、例えば圧力を20kPa以上40kPa以下として加圧する。このとき、円周の内周側および外周側で、対向面からペーストをはみ出させてもよい。そして、上記の加圧により、前駆体A、前駆体Bおよび前駆体Cを接続した前駆体を得る。
【0066】
次に、常温で、湿度を調整しながら12時間以上48時間以下保持することによりペーストを乾燥させる。そして、大気雰囲気中で、1500℃以上1700℃以下の温度で、5時間以上8時間以下保持して前駆体を焼成することにより、分級ロータ10を得ることができる。
【0067】
ここで、上板の第2対向面を含む内向部に存在する閉気孔の平均径が上板の上面を含む外向部に存在する閉気孔の平均径よりも小さい分級ロータを得るには、予め前駆体Bを厚く(例えば、上板の厚みの2倍以上)しておき、焼成後、上層部側および下層部側を研削し、その研削代が内向部側よりも外向部側が多くなるようにすればよい。
【0068】
なお、上記の製造方法は、分級ロータ10を製造する方法の一例である。したがって、分級ロータ10が、上記の製造方法によって作製されたものに限定されないことはいうまでもない。
【0069】
<遠心式気流分級機>
次に、本開示の限定されない実施形態の遠心式気流分級機について、上記の分級ロータ10を用いる場合を例に挙げて、図面を用いて説明する。
【0070】
図6に示す一例のように、遠心式気流分級機100(以下、「分級機100」ということがある。)は、分級ロータ10を用いてなる。分級機100は、耐摩耗性が高い羽根ピン1を備える分級ロータ10を用いてなることから、長期間に亘って安定した分級が可能である。
【0071】
分級機100は、分級ロータ10を内部に収容するケーシング101と、分級ロータ10を回転させるモータ102と、ケーシング101の内部に原料を供給する供給管103と、供給管103よりも下方に位置してケーシング101の内部に圧縮空気を供給する複数のノズル104と、分級ロータ10で分級された細粉をケーシング101の外部へ搬出する搬出管105とを備えてなってもよい。
【0072】
以上、本開示に係る実施形態について例示したが、本開示は上記の実施形態に限定されず、本開示の要旨を逸脱しない限り任意のものとすることができることはいうまでもない。
【0073】
例えば、上記の実施形態では、下板11が貫通孔111を有し、上板12が軸孔121を有する場合を例にとって説明したが、下板11および上板12における互いの構成を逆にしてもよい。すなわち、上板12が貫通孔111を有し、下板11が軸孔121を有してもよい。
【0074】
また、上記の実施形態では、締結部22が凸状であるが、締結部22は凹状であってもよい。この場合には、下板11および上板12が、凹状の締結部22に挿入する凸部等の係合部13を備えていてもよい。なお、締結部22が本体部21の両端部に位置する場合には、一方の締結部22が凸状であり、他方の締結部22が凹状であってもよい。
【0075】
また、上記の実施形態では、段差面23と、第1対向面112および第2対向面123の少なくともいずれかとの接合に、セラミックスからなる層14を用いているが、これに代えて、他の材質からなる層を用いてもよい。他の材質からなる層としては、例えば、エポキシ樹脂等の合成樹脂からなる層、ガラスからなる層等が挙げられ得る。
【符号の説明】
【0076】
1・・・分級ロータ用羽根ピン
2・・・セラミックス柱体
21・・・本体部
211・・・外周面
22・・・締結部
221・・・外周面
23・・・段差面
10・・・分級ロータ
11・・・下板
111・・・貫通孔
112・・・第1対向面
12・・・上板
121・・・軸孔
122・・・筒体
123・・・第2対向面
124・・・内向部
125・・・上面
126・・・外向部
12a・・・中央
13・・・係合部
14・・・層
141・・・第1凸部
142・・・第2凸部
100・・・遠心式気流分級機
101・・・ケーシング
102・・・モータ
103・・・供給管
104・・・ノズル
105・・・搬出管
S・・・軸